【実施例】
【0048】
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
プラスミドDNAの抽出にはWizard Plus SV Minipreps(Promega社製)を用いた。アガロースゲルからのDNAの回収にはQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社製)を用いた。
【0050】
実施例1:好熱性微生物由来のDNAメチル化酵素遺伝子発現プラスミドの作製
プラスミドpACYCDuet−1(Novagen社製)のp15A複製起点(p15Aori)およびクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm
r)を含む領域をPCR法(プライマー1F:配列番号1およびプライマー1R:配列番号2)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素BglIIで消化し、DNA ligaseを用いて自己環化させた。得られたプラスミドをpIR101と命名した。
【0051】
QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagen社製)を用いてpIR101に含まれる2ヶ所の制限酵素DraI部位を破壊した。制限酵素DraI部位の破壊には、プライマー2F:配列番号3およびプライマー2R:配列番号4、ならびにプライマー3F:配列番号5およびプライマー3R:配列番号6を用いた。得られたプラスミドをpIR200と命名した。
【0052】
プラスミドpUC19(タカラバイオ株式会社製)に含まれるlacプロモーター領域をPCR法(プライマー4F:配列番号7およびプライマー4R:配列番号8)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化し、pIR101の制限酵素BglII−EcoRI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR102と命名した。
【0053】
pIR102に含まれるlacプロモーター領域をPCR法(プライマー5F:配列番号9およびプライマー5R:配列番号10)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化し、pIR200の制限酵素BglII−EcoRI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR201と命名した。
【0054】
pIR201中に含まれるlacプロモーター領域をPCR法(プライマー6F:配列番号11およびプライマー6R:配列番号12)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化し、pIR200の制限酵素BglII−EcoRI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR202と命名した。
【0055】
QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いてpIR202に制限酵素BamHI部位を導入した。制限酵素BamHI部位の導入には、プライマー7F:配列番号13およびプライマー7R:配列番号14を用いた。得られたプラスミドをpIR203と命名した。
【0056】
大腸菌DH5α株のゲノムDNAを鋳型としてhsp70(dnaK)遺伝子上流のプロモーター領域(dnaK promoter)をPCR法(プライマー8F:配列番号15およびプライマー8R:配列番号16)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素NdeIおよび制限酵素BamHIで消化し、pIR203の制限酵素NdeI−BamHI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR207と命名した。このプラスミドは、p15A複製起点(p15Aori)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm
r)、およびhsp70(dnaK)遺伝子上流のプロモーター領域(dnaK promoter)を含み、プロモーター領域の下流にマルチクローニング部位を有する。プロモーターからマルチクローニング部位までを含む領域は2つのSwaI部位に挟まれている。
【0057】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株(JCM12893)のゲノムDNAには、2つのI型制限修飾系遺伝子群(GK0343−GK0344−GK0346およびGK1380−GK1381−GK1382)が存在する。これらのうちDNAのメチル化に関与するMサブユニット遺伝子(GK0343およびGK1380)ならびにSサブユニット遺伝子(GK0344およびGK1381)をそれぞれPCR法により増幅した。GK0343遺伝子の増幅にはプライマー9F:配列番号17およびプライマー9R:配列番号18を用いた。GK0344遺伝子の増幅には、プライマー10F:配列番号19およびプライマー10R:配列番号20を用いた。GK1380遺伝子の増幅にはプライマー11F:配列番号21およびプライマー11R:配列番号22を用いた。GK1381遺伝子の増幅にはプライマー12F:配列番号23およびプライマー12R:配列番号24を用いた。
【0058】
GK0343遺伝子とGK0344遺伝子との増幅断片を融合PCR法によって連結し、連結した断片をpCR4Blunt−TOPO(Invitrogen社製)ベクターにクローニングした。得られたプラスミドのGK0343−GK0344遺伝子に含まれる2ヶ所のNdeI部位を破壊するために、このプラスミドを鋳型としてPCR(プライマー13F:配列番号25およびプライマー13R:配列番号26)を行い、次いで得られた増幅断片に対してQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて部位特異的変異を導入した。得られたプラスミドからGK0343−GK0344遺伝子領域を制限酵素NdeIおよびBamHIで消化して切り出し、pIR207の制限酵素NdeI−BamHI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR399と命名した。
【0059】
GK1380遺伝子とGK1381遺伝子との増幅断片を融合PCR法によって連結し、連結した断片をpCR4Blunt−TOPOベクターにクローニングした。得られたプラスミドのGK1380−GK1381遺伝子に含まれる2ヶ所のNdeI部位を破壊するために、このプラスミドを鋳型としてPCR(プライマー14F:配列番号27およびプライマー14R:配列番号28)を行い、次いで得られた増幅断片に対してQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて部位特異的変異を導入した。得られたプラスミドからGK1380−GK1381遺伝子領域を制限酵素NdeIおよびBamHIで消化して切り出し、pIR207の制限酵素NdeI−BamHI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR401と命名した。
【0060】
pIR399からGK0343−GK0344遺伝子発現カセットを制限酵素SwaIで消化して切り出した。このカセット断片と制限酵素SpeIで消化したpIR401とを混合し、In-fusion PCR Cloning Kit(Clontech社製)を用いて両DNA断片を連結した。得られたプラスミドをpIR408(
図1(a))と命名した。このプラスミドは、直列に連結されたGK1380−GK1381遺伝子発現カセット(上流:hsdM2S2)とGK0343−GK0344遺伝子発現カセット(下流:hsdM1S1)を有する。
【0061】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAには、2つのI型制限修飾系遺伝子群のほかに1つのII型制限修飾系遺伝子群(GKP08−GKP09)が存在する。これらのうちDNAメチラーゼ遺伝子GKP08をPCR法(プライマー15F:配列番号29およびプライマー15R:配列番号30)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素NdeIおよびBamHIで消化し、pIR207の制限酵素NdeI−BamHI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpIR405と命名した。
【0062】
実施例2:形質転換に用いる発現プラスミドの作製
プラスミドpRK2013(D. H. Figurskiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1979年、第76巻、p. 1648-1652)に含まれるoriT領域をPCR法(プライマー16F:配列番号31およびプライマー16R:配列番号32)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素EcoRIで消化し、プラスミドpSTE33(I. Narumiら、Biotechnol. Lett.、1993年、第15巻、p. 815-820)およびpUCG18(M. P. Taylorら、Plasmid、2008年、第60巻、p. 45-52)の制限酵素EcoRI部位にそれぞれ挿入した。得られたプラスミドをそれぞれpSTE33T(
図1(b))およびpUCG18T(
図1(c))と命名した。
【0063】
2つのオリゴヌクレオチド(プライマー17F:配列番号33およびプライマー17R:配列番号34)を融合PCR法によって連結し、連結した断片を制限酵素BamHIで消化し、pUC19の制限酵素BamHI部位にクローニングした。得られたプラスミドをpLX19と命名した。このプラスミドは2つの制限酵素BamHI部位間にloxP配列を有する。
【0064】
QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、pUC19に制限酵素MunI、FbaIおよびBglII部位を導入した。制限酵素部位の導入には、プライマー18F:配列番号35およびプライマー18R:配列番号36を用いた。得られたプラスミドをpGKE11と命名した。
【0065】
pRK2013に含まれるoriT領域をPCR法(プライマー19F:配列番号37およびプライマー19R:配列番号38)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素PciIで消化し、pGKE11およびpUC19の制限酵素PciI部位にそれぞれ挿入した。得られたプラスミドをそれぞれpGKE11TおよびpUC19Tと命名した。
【0066】
pSTE33に含まれるTK101遺伝子(耐熱性カナマイシン耐性遺伝子)をPCR法(プライマー20F:配列番号39およびプライマー20R:配列番号40)により増幅した。ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAを鋳型としてシグマAプロモーター領域をPCR法(プライマー21F:配列番号41およびプライマー21R:配列番号42)により増幅した。得られた2つのDNA断片を融合PCR法によって連結した。得られたDNAを制限酵素BamHIで消化し、pLX19の制限酵素BamHI部位およびBglII部位にそれぞれクローニングした。得られたプラスミドをそれぞれpLX19−TK101およびpTK19と命名した。
【0067】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAを鋳型としてGK1155遺伝子の上流領域(プライマー22F:配列番号43およびプライマー22R:配列番号44)および下流領域(プライマー23F:配列番号45およびプライマー23R:配列番号46)をそれぞれPCR法により増幅した。得られた上流領域の断片を制限酵素EcoRIおよびBamHIで消化し、pUC19の制限酵素EcoRI−BamHI部位間にクローニングし、得られた下流領域の断片を制限酵素BamHIおよびSphIで消化し、pUC19の制限酵素BamHI−SphI部位間にクローニングした。得られたプラスミドの制限酵素BamHI部位に、pLX19−TK101から制限酵素BamHIで消化して切り出したTK101遺伝子を挿入した。得られたプラスミドの制限酵素EcoRI部位に、プラスミドpRK2013に含まれるoriT領域をPCR法(プライマー16Fおよび16R)により増幅して得られた増幅断片を制限酵素EcoRIで消化し、挿入した。得られたプラスミドをpΔGK1155−1と命名した。
【0068】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAを鋳型としてGK1155遺伝子の上流領域(プライマー22Fおよび22R)および下流領域(プライマー24F:配列番号47およびプライマー23R)をそれぞれPCR法により増幅した。得られた上流領域の断片を制限酵素EcoRIおよびBamHIで消化し、pTK19の制限酵素EcoRI−BamHI部位間にクローニングし、得られた下流領域の断片を制限酵素BamHI−SphIで消化し、pTK19の制限酵素BamHI−SphI部位間にクローニングした。得られたプラスミドをpΔGK1155−2と命名した。
【0069】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAを鋳型としてGK0707遺伝子の上流領域(プライマー25F:配列番号48およびプライマー25R:配列番号49)および下流領域(プライマー26F:配列番号50およびプライマー26R:配列番号51)をそれぞれPCR法により増幅した。得られた上流領域の断片を制限酵素AatIIで消化し、pGKE11の制限酵素AatII部位にクローニングし、得られた下流領域の断片を制限酵素BamHIで消化し、pGKE11の制限酵素BglII部位にクローニングした。次いで、pLX19−TK101から制限酵素BamHIで消化して切り出したTK101遺伝子をpGKE11の制限酵素FbaI部位にクローニングし、pUC19Tから制限酵素PciIで消化して切り出したoriT遺伝子をpGKE11の制限酵素PciI部位にクローニングした。得られたプラスミドをpGAM15と命名した。
【0070】
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株のゲノムDNAを鋳型としてGK0704遺伝子のプロモーター領域をPCR法(プライマー27F:配列番号52およびプライマー27R:配列番号53)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素HindIIIおよびSphIで消化し、pGAM15の制限酵素HindIII−SphI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpGAM31と命名した。
【0071】
ジオバチラス・カウストフィラスATCC8005株のゲノムDNAを鋳型として耐熱性β−ガラクトシダーゼをコードするbgaB遺伝子(H. Hirataら、J. Bacteriol.、1986年、第166巻、p. 722-727)をPCR法(プライマー28F:配列番号54およびプライマー28R:配列番号55)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素PstIおよびBamHIで消化し、pGAM15およびpGAM31の制限酵素PstI−BamHI部位間にそれぞれ挿入した。得られたプラスミドをそれぞれpGAM15−bgaBおよびpGAM31−bgaBと命名した。
【0072】
ジオバチラス・ステアロサーモフィラスATCC12980株のゲノムDNAを鋳型として耐熱性α−アミラーゼをコードするamyE遺伝子(N. Suzukiら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、2009年、第82巻、p. 491-500)をPCR法(プライマー29F:配列番号56およびプライマー29R:配列番号57)により増幅した。得られた増幅断片を制限酵素SphIおよびBglIIで消化し、pGAM15の制限酵素SphI−BamHI部位間に挿入した。得られたプラスミドをpGAM15−BSamyEと命名した。
【0073】
実施例3:DNAメチル化酵素を欠失させるためのプラスミドの作製
大腸菌TOP10株(Invitrogen社製)のゲノムDNAを鋳型としてdam遺伝子の上流領域(プライマー30F:配列番号58およびプライマー30R:配列番号59)および下流領域(プライマー31F:配列番号60およびプライマー31R:配列番号61)をそれぞれPCR法により増幅した。大腸菌ER1821株(New England BioLab社製)のゲノムDNAを鋳型としてmetB遺伝子を含む領域をPCR法(プライマー32F:配列番号62およびプライマー32R:配列番号63)により増幅した。得られた上流領域の断片を制限酵素HindIIIおよびSphIで消化し、pUC19の制限酵素HindIII−SphI部位間に挿入した。次いで、得られたプラスミドの制限酵素SphI−XbaI部位間に、上記で得られたmetB遺伝子を含む領域の断片を制限酵素SphIおよびNotIで消化し、上記で得られた下流領域の断片を制限酵素NotIおよびXbaIで消化し、これらを直列に連結して挿入した。得られたプラスミドをpΔDamと命名した。
【0074】
大腸菌TOP10株のゲノムDNAを鋳型としてdcm遺伝子の上流領域(プライマー33F:配列番号64およびプライマー33R:配列番号65)および下流領域(プライマー34F:配列番号66およびプライマー34R:配列番号67)をそれぞれPCR法により増幅した。大腸菌ER1821株のゲノムDNAを鋳型としてプロモーターを含むlacZ遺伝子をPCR法(プライマー35F:配列番号68およびプライマー35R:配列番号69)により増幅した。得られた上流領域を制限酵素HindIIIおよびSphIで消化し、pUC19の制限酵素HindIII−SphI部位間に挿入した。次いで、得られたプラスミドの制限酵素SphI−XbaI部位間に、上記で得られたプロモーターを含むlacZ遺伝子を制限酵素SphIおよびNotIで消化し、上記で得られた下流領域の断片を制限酵素NotIおよびXbaIで消化し、これらを直列に連結して挿入した。得られたプラスミドをpΔDcmと命名した。
【0075】
実施例4:大腸菌宿主の作製
pΔDamを鋳型としてdam遺伝子欠失用DNA断片をPCR法(プライマー30Fおよび31R)により増幅した。得られたDNA断片に混入する鋳型DNA(pΔDam)を制限酵素DpnIで消化した。得られたDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社製)を用いて精製し、大腸菌ER1793株(New England BioLab社製)に電気穿孔法により導入した。菌体を滅菌水で洗浄し、MM1最少固体培地(0.6%(w/v)Na
2HPO
4、0.3%(w/v)KH
2PO
4、0.05%(w/v)NaCl、0.01%(w/v)チアミン、1mM MgSO
4、0.1mM CaCl
2、33μM FeCl
3、0.004%(w/v)L−トリプトファン、0.002%(w/v)L−ヒスチジン、0.2%(w/v)D−グルコース、1.5%(w/v)寒天末)に塗布し、37℃にて2日間培養した。生育したコロニーの中からアンピシリン感受性株をスクリーニングして、大腸菌IR21株を得た。IR21株のdam遺伝子が欠失していることは、PCR解析および制限酵素マッピングにより確認した。IR21株の遺伝子型は以下のとおりである:F
- fhuA2 Δ(lacZ)r1 glnV44 e14
-(McrA
-) trp-31 his-1 rpsL104(Str
R) xyl-4 mtl-2 metB1 Δ(mcrC-mrr)114::IS10 Δdam::metB。
【0076】
pΔDcmを鋳型としてdcm遺伝子欠失用DNA断片をPCR法(プライマー33Fおよび34R)により増幅した。得られたDNA断片に混入する鋳型DNA(pΔDcm)を制限酵素DpnIで消化した。得られたDNA断片をQIAquick PCR Purification Kitを用いて精製し、大腸菌ER1793株およびIR21株に電気穿孔法によりそれぞれ導入した。菌体を滅菌水で洗浄し、MM2最少固体培地(0.6%(w/v)Na
2HPO
4、0.3%(w/v)KH
2PO
4、0.05%(w/v)NaCl、0.01%(w/v)チアミン、1mM MgSO
4、0.1mM CaCl
2、33μM FeCl
3、0.004%(w/v)L−トリプトファン、0.002%(w/v)L−ヒスチジン、0.002%(w/v)L−メチオニン、0.2%(w/v)ラクトース、0.002%(w/v)5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、1.5%(w/v)寒天末)に塗布し、37℃で2日間培養した。青色を呈するコロニーの中からアンピシリン感受性株をスクリーニングすることで、IR24株ならびにIR27株をそれぞれ得た。両株のdcm遺伝子が欠失して、PCR解析および制限酵素マッピングにより確認した。両株の遺伝子型は以下のとおりである:IR24、Δ(lacZ)r1 glnV44 e14
-(McrA
-) trp-31 his-1 rpsL104(Str
R) xyl-4 mtl-2 metB1 Δ(mcrC-mrr)114::IS10 Δdcm::lacZ;IR27、Δ(lacZ)r1 glnV44 e14
-(McrA
-) trp-31 his-1 rpsL104(Str
R) xyl-4 mtl-2 metB1 Δ(mcrC-mrr)114::IS10 Δdam::metB Δdcm::lacZ。
【0077】
IR27株に接合伝達プラスミドpUB307(P. M. Bennettら、Mol. Gen. Genet.、1977年、第154巻、p. 205-211)(RP1由来プラスミド)を電気穿孔法で導入し、菌体を25μg/mLのカナマイシンおよび6.5μg/mLのテトラサイクリンを含有するLB固体培地に塗布し、37℃にて培養した。生育したコロニーの1つを大腸菌BR27株として得た。
【0078】
IR24株にpUB307を電気穿孔法で導入し、菌体を25μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地に塗布し、37℃にて培養した。生育したコロニーの1つを大腸菌BR24株として得た。
【0079】
BR27株にpIR207を電気穿孔法で導入し、菌体を25μg/mLのカナマイシン、6.5μg/mLのテトラサイクリンおよび12.5μg/mLのクロラムフェノコールを含有するLB固体培地に塗布し、37℃にて培養した。生育したコロニーの1つを大腸菌BR397株として得た。同様にして、BR24株にpIR207、pIR399、pIR401およびpIR408をそれぞれ導入し、得られた大腸菌をそれぞれ大腸菌BR398株、大腸菌BR399株、大腸菌BR401株および大腸菌BR408株と命名した。
【0080】
実施例5:異種メチル化の確認
大腸菌を12.5μg/mLのクロラムフェニコールを含有するLB液体培地で37℃にて24時間培養し、ゲノムDNAを常法に従い抽出した。C. W. Gehrkeら、J. Chromatog.、1984年、第301巻、p. 199-219に記載の方法に従い、ゲノムDNAをモノデオキシヌクレオシドにまで分解し、逆相HPLCを用いてその組成を分析した。実施例4と同様にして、大腸菌IR27株にpIR207を電気穿孔法で導入して得られた大腸菌(以下、このようにして得られた大腸菌を「大腸菌IR27[pIR207]」のように記載することがある)のゲノムDNAからは、既知のいかなるメチル化核酸(5−メチルデオキシシチジン、
5mdC;N−6−メトルデオキシアデノシン、
6mdA;N−4−メチルデオキシシチジン、
4mdC)も検出されなかった。大腸菌IR27[pIR399]のゲノムDNAからは、有意な
6mdAが検出された。そのモル比率は全デオキシアデノシンの0.08%であった。大腸菌IR27[pIR401]およびIR27[pIR408]のゲノムDNAからも、有意な
6mdAが検出された。そのモル比率は、それぞれ全デオキシアデノシンの0.10%および0.21%であった。以上の結果から、pIR399、pIR401およびpIR408にクローン化したジオバチラス・カウストフィラスHTA426株由来のI型メチル化酵素遺伝子群は、大腸菌中で機能的に発現し、宿主大腸菌のDNAを異種メチル化することが示された。
【0081】
同様にして、pIR405を導入して得られた大腸菌を解析したところ、大腸菌IR27[pIR405]のゲノムDNAからは、全デオキシアデノシンの1.9%に相当する
6mdAが検出された。GKP08は、AlwIメチラーゼと58%の遺伝子配列相同性を示すことから、AlwIメチラーゼと同じく「GGATC」配列中のアデニンのN−6−メチル化を触媒すると予想できた。そこで、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株およびIR27[pIR405]のゲノムDNAの制限酵素マッピングを行ったところ、いずれも制限酵素DpnIで消化されたが、制限酵素AlwIでは切断されなかった。以上の結果は、GKP08が「GGATC」配列中アデニンのN−6−メチル化の原因となることを示す。
【0082】
実施例6:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換1:プラスミドの導入
(接合伝達法)
GKP08遺伝子が原因となるN−6−メチル化は、大腸菌におけるDamメチル化に包括されることから、核酸供与体となる大腸菌として、特記のない限りBR24派生株を用いた。適切な抗生物質(25μg/mLカナマイシン、6.5μg/mLテトラサイクリン、12.5μg/mLクロラムフェノコール、25μg/mLアンピシリン)を含有するLB液体培地で核酸供与体を37℃にて一晩前培養し、回収した菌体を、抗生物質を含まないLB液体培地で洗浄した。菌体を光学濁度(OD
600)が約0.1になるように新しいLB液体培地に接種し、光学濁度が0.5になるまで37℃にて振盪培養した。核酸受容体となるジオバチラス・カウストフィラスHTA426株はLB液体培地で55℃にて一晩前培養した。得られた培養液を0.1%(v/v)となるように新しいLB液体培地に接種し、55〜60℃にて、OD
600が0.5になるまで培養した。得られたジオバチラス・カウストフィラス培養液は室温まで冷却した。ジオバチラス・カウストフィラス培養液(9mL)と核酸供与体培養液(1mL)とを混合し、菌体を吸引ろ過により膜フィルター(0.22μm)上に濃縮した。得られた膜フィルターを、菌体回収面がLB固体培地表面に接するように、LB固体培地上に静置した(37℃、一晩)。次いで、膜フィルター上の菌体をLB液体培地に懸濁し、5μg/mLカナマイシンを含有するLB固体培地に塗布し、60℃にて一晩培養し、生育したコロニーを形質転換体として得た。
【0083】
(プラスミドの導入)
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株をpUCG18Tの核酸受容体とし、大腸菌BR397[pUCG18T]、BR398[pUCG18T]、BR399[pUCG18T]、BR401[pUCG18T]およびBR408[pUCG18T]をpUCG18Tの核酸供与体とした接合伝達を行った。接合伝達後のジオバチラス・カウストフィラス菌体をLB固体培地および5μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地にそれぞれ塗布し、60℃にて一晩培養し、生育したコロニー数から接合伝達効率を算出した。結果を以下の表1に示す。
【0084】
同様にして、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株をpSTE33Tの核酸受容体とし、大腸菌BR397[pSTE33T]、BR398[pSTE33T]、BR399[pSTE33T]、BR401[pSTE33T]およびBR408[pSTE33T]をpSTE33Tの核酸供与体とした接合伝達を行った。接合伝達後のジオバチラス・カウストフィラス菌体をLB固体培地および5μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地にそれぞれ塗布し、60℃にて一晩培養し、生育したコロニー数から接合伝達効率を算出した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、pUCG18Tの場合、DNAメチル化酵素としてdamが接合伝達効率(形質転換効率)に支配的に影響を及ぼしていることがわかる。しかし、pSTE33Tの場合、DNAメチル化酵素としてhsdM1S1、hsdM2S2およびdamのすべてが接合伝達効率(形質転換効率)に均等に影響を及ぼしており、3つの酵素が揃うと形質転換効率が高くなることがわかる。
【0087】
pSTE33Tで形質転換されたジオバチラス・カウストフィラスを5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地で60℃にて一晩振盪培養し、培養菌体中に含まれるプラスミドDNAを単離した。得られたプラスミドDNAは、制限酵素マッピング、PCR解析およびDNA配列解析により、pSTE33Tであることを確認した。得られたプラスミドDNAは大腸菌を形質転換できることも確認した。
【0088】
pUCG18Tで形質転換されたジオバチラス・カウストフィラスを5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地で60℃にて一晩振盪培養し、培養菌体中に含まれるプラスミドDNAを単離した。得られたプラスミドDNAは、低コピー数のため、制限酵素マッピングできるほど量がなかったが、PCR解析により、pUCG18Tであることを確認した。得られたプラスミドは大腸菌を形質転換できることも確認した。
【0089】
pUCG18TおよびpSTE33Tで形質転換されたジオバチラス・カウストフィラスを5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地で60℃にて一晩それぞれ振盪培養した。培養菌体中に含まれるプラスミドのコピー数をL. Wuら、J. Gen. Microbiol.、1989年、第135巻、p. 1315-1324に記載の方法に従い解析した。
【0090】
pUCG18TおよびpSTE33Tで形質転換されたジオバチラス・カウストフィラスをLB液体培地で60℃にて一晩それぞれ振盪培養した後、その一部をLB固体培地および5μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地に塗布し、60℃にて一晩それぞれ培養した。生育したコロニー数から各プラスミドの残存率を算出した。
【0091】
実施例7:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換2:2重交叉相同組換えによるGK1155遺伝子の欠失
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株を核酸受容体とし、大腸菌BR408[pΔGK1155−1]を核酸供与体とした接合伝達により、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株にpΔGK1155−1を導入した。接合伝達後の菌体を5μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地上に塗布し、60℃にて一晩培養した。生育したコロニーをMM3最少固体培地(0.03%(w/v)K
2SO
4、0.25%(w/v)Na
2HPO
4・12H
2O、0.1%(w/v)NH
4Cl、0.0003%(w/v)MnCl
2・4H
2O、0.0005%(w/v)CaCl
2・2H
2O、0.0007%(w/v)FeCl
3・6H
2O、0.00004%(w/v)ZnSO
4・7H
2O、0.000001%(w/v)H
3BO
3、0.000005%(w/v)CoCl
2・6H
2O、0.00002%(w/v)CuSO
4・5H
2O、0.000001%(w/v)NiCl
2・6H
2O、0.000025%(w/v)エチレンジアミン四酢酸塩、1%(w/v)D−グルコース、0.1%(w/v)カザミノ酸、10mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−HCl緩衝液、pH7.5、0.04%(w/v)MgSO
4・7H
2O、2%(w/v)寒天末、10μg/mLウラシル)に移し、ウラシル要求性株をスクリーニングした。得られたウラシル要求性株の1つを、MK27株と命名した。MK27株のGK1155遺伝子はTK101遺伝子の挿入により欠失(ΔGK1155::TK101)していることをPCR解析により確認した(
図2)。
【0092】
実施例8:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換3:GK1155遺伝子のマーカーフリー欠失
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株を核酸受容体とし、大腸菌BR408[pΔGK1155−2]を核酸供与体とした接合伝達により、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株にpΔGK1155−2を導入した。接合伝達後の菌体を5μg/mLのカナマイシンを含有するLB固体培地上に塗布し、60℃にて一晩培養した。生育したコロニーの1つをLB液体培地100mLに接種し、60℃にて一晩振盪培養した。得られた培養液の一部(10μl)を新しいLB液体培地100mLに接種し、引き続き60℃にて一晩振盪培養した。同様の操作をさらに2回繰り返した後、培養液の一部をLB固体培地に塗布し、60℃にて一晩培養した。生育したコロニー約1000個をLB固体培地および5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地に接種し、カナマイシン感受性株をスクリーニングした。得られた8株のカナマイシン感受性株をMM3最少固体培地および10μg/mLのウラシルを含有するMM3最少固体培地に塗布し、ウラシル要求性株をスクリーニングした。得られた4株のウラシル要求性株のうち1クローンをジオバチラス・カウストフィラスMK54株と命名した。MK54株のGK1155遺伝子はin−frame欠失(ΔGK1155)していることをPCR解析により確認した(
図3)。
【0093】
実施例9:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換4:異種遺伝子amyEの発現
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株を核酸受容体とし、大腸菌BR408[pGAM15−BSamyE]を核酸供与体とした接合伝達により、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株にpGAM15−BSamyEを導入した。得られた形質転換体の1つをMK42株と命名した。MK42株のゲノムにpGAM15−BSamyE由来の発現カセット(sigAプロモーターとその下流のamyE遺伝子)が組み込まれていることをPCR解析により確認した。MK42株を1%(w/v)可溶性デンプンを含むLB固体培地に塗布し、60℃にて一晩培養した。培地中の未分解デンプンをヨウ素・よう化カリウム液(ナカライテスク)で染色することで、α−アミラーゼ活性の有無を定性的に評価した。
【0094】
MK42株を5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地に接種し、60℃にて24時間培養した。得られた菌体を遠心分離により回収し、2mLの抽出用緩衝液(0.1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸−NaOH緩衝液、pH6.9)に懸濁した後、超音波破砕した。均一化された懸濁液を遠心分離し、上清を粗酵素抽出液として得た。EnzChek Ultra Amylase Assay Kit(Molecular Probes社製)を用いて粗酵素抽出液中のα−アミラーゼ活性を定量した。なお、酵素反応は60℃にて行った。結果を以下の表2に示す。
【0095】
実施例10:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換5:異種遺伝子bgaBの発現
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株を核酸受容体とし、大腸菌BR408[pGAM15−bgaB]を核酸供与体とした接合伝達により、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株にpGAM15−bgaBを導入した。得られた形質転換体の1つをMK39株と命名した。MK39株のゲノムにpGAM15−bgaB由来の発現カセット(sigAプロモーターとその下流のbgaB遺伝子)が組み込まれていることをPCR解析により確認した。MK39株を200μg/mLの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドを含有するLB固体培地に塗布し、60℃にて一晩培養した。コロニーが青色を呈色するか否かでβ−ガラクトシダーゼ活性の有無を定性的に評価した。
【0096】
MK39株を5μg/mLのカナマイシンを含有するLB液体培地に接種し、60℃にて24時間培養した。得られた菌体を遠心分離により回収し、2mLの抽出用緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH5.0)に懸濁した後、超音波破砕した。均一化された懸濁液を遠心分離し、上清を粗酵素抽出液として得た。粗酵素抽出液にp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドを加え、その分解速度を測定することにより、粗酵素抽出液中のβ−ガラクトシダーゼ活性を評価した。なお、酵素反応は60℃にて行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2より、異種遺伝子のamyEおよびbgaBは、ジオバチラス・カウストフィラスに導入された後も、菌体内で維持されるだけでなく、それぞれα−アミラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼの遺伝子を発現することがわかる。また、amyEから発現したα−アミラーゼは、正常にプロセッシングを受けて分泌されることがわかる。
【0099】
実施例11:ジオバチラス・カウストフィラスの形質転換6:誘導型プロモーターによるbgaB遺伝子の発現
ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株を核酸受容体とし、大腸菌BR408[pGAM31−bgaB]を核酸供与体とした接合伝達により、ジオバチラス・カウストフィラスHTA426株にpGAM31−bgaBを導入した。得られた形質転換体の1つをMK61株と命名した。MK61株のゲノムにpGAM31−bgaB由来の発現カセット(GK0704プロモーターとその下流のbgaB遺伝子)が組み込まれていることをPCR解析により確認した。MK61株をMM3最少液体培地、1%(w/v)D−グルコースを含有するMM3最少液体培地、1%(w/v)マルトースを含有するMM3最少液体培地、1%(w/v)可溶性デンプンを含有するMM3最少液体培地、1%(w/v)ミオ−イノシトールを含有するMM3最少液体培地、1%(w/v)D−キシロースを含有するMM3最少液体培地、1%(w/v)L−アラビノースを含有するMM3最少液体培地、および1%(w/v)キシロオリゴ糖を含有するMM3最少液体培地にそれぞれ接種し、60℃にて48時間培養した。実施例10と同様にして、得られた菌体から粗酵素抽出液を調製し、粗酵素抽出液中のβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。Bio-Rad Protein Assay kit(Bio-Rad社製)を用いて粗酵素抽出液中の総タンパク質量を測定した。その際に、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質として用いた。総タンパク質量あたりのβ−ガラクトシダーゼ活性を比活性として求めた。結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3より、マルトースや可溶性デンプンによりbgaBの発現が強く誘導されていることがわかる。このことから、GK0704プロモーターは誘導型プロモーターとして利用できることが明らかとなった。