(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674018
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】パーライト製造方法、無機質発泡材製造方法、及び発泡材製造装置
(51)【国際特許分類】
C04B 14/02 20060101AFI20150129BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20150129BHJP
C04B 14/18 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
C04B14/02 C
C04B38/00 304B
C04B14/18
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-282533(P2010-282533)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-131648(P2012-131648A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】和知 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅朗
【審査官】
植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−281401(JP,A)
【文献】
特開平09−183612(JP,A)
【文献】
特開2007−320805(JP,A)
【文献】
特開2008−019149(JP,A)
【文献】
特開2001−240439(JP,A)
【文献】
特開昭59−174564(JP,A)
【文献】
特開平07−277851(JP,A)
【文献】
実公昭43−015012(JP,Y1)
【文献】
特公昭44−013040(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 14/02
C04B 14/18
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーライト製造方法であって、
パーライト原料をロータリキルンで400〜750℃に加熱するA工程と、
前記A工程で加熱された物を流動層焼成炉で加熱・発泡させるB工程
とを具備することを特徴とするパーライト製造方法。
【請求項2】
A工程における加熱時間が5〜90分である
ことを特徴とする請求項1のパーライト製造方法。
【請求項3】
流動層焼成炉での加熱温度が800〜1200℃である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のパーライト製造方法。
【請求項4】
パーライト原料は、100μm篩通過分が5〜30質量%のものである
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかのパーライト製造方法。
【請求項5】
パーライト原料が、真珠岩、シラス、松脂岩、黒曜石、コーガ石の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかのパーライト製造方法。
【請求項6】
無機質発泡材の製造方法であって、
前記請求項1〜請求項5いずれかのパーライト製造方法において、パーライト原料に代わって前記無機質発泡材の原料が用いられる
ことを特徴とする無機質発泡材の製造方法。
【請求項7】
発泡材製造装置であって、
無機質発泡材の原料を400〜750℃で加熱するロータリキルンと、
前記ロータリキルンで加熱された物を800〜1200℃で加熱・発泡させる流動層焼成炉
とを具備することを特徴とする発泡材製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーライト等の発泡材に関する。
【背景技術】
【0002】
パーライトは、軽量化の為に用いられる軽量化材である。例えば、モルタル、瓦、外壁材にパーライトが混合されることで、前記製品の軽量化が図れる。
【0003】
さて、パーライトは、主として、パーライト原料(例えば、流紋岩(真珠岩や黒曜石など)等の酸性火山岩)を粉砕し、加熱・発泡することで製造されている。加熱・発泡には、これまで、気流焼成炉やロータリキルンが用いられている。加熱・発泡に気流焼成炉が用いられた場合、高温のガス(又は炉内に形成された火炎)とパーライト原料とが、例えば0.1〜30秒程度、接触する。これによって、パーライト原料は発泡してパーライトとなる。加熱・発泡にロータリキルンが用いられた場合、パーライト原料はロータリキルン炉壁に沿って摺動する。この時、パーライト原料は、炉壁からの輻射熱、バーナーフレーム、炉内熱ガスなどの熱を受ける。この熱によって、パーライト原料は発泡してパーライトとなる。
【0004】
ところで、一般的に、パーライト原料が細かな場合には、気流焼成炉が用いられ、パーライトが製造される。パーライト原料が大きな(粗い)場合には、気流による搬送が出来にくいことから、気流焼成炉は用いられないことが多い。気流焼成炉は、例えば縦型の円筒焼成炉で、上部に原料投入口を、下部にバーナーを具備する。従って、気流焼成炉は、一般的に、コンパクトである。そして、上部より投入されたパーライト原料がバーナーにより加熱され、パーライト原料が発泡して軽くなると、発泡したパーライトは下から上への気流に乗って空気搬送され、製品(パーライト)が回収される。前記加熱に際してのパーライト原料への均一な加熱は困難である。従って、一部のパーライト原料は、熱が加わらず、未発泡のまま空気搬送される。逆に、一部のパーライト原料は、熱が加わり過ぎ、発泡時に表面が破裂し、表面に穴が開いたりする。すなわち、発泡の均一性が悪い。かつ、発泡に利用されるエネルギー効率が悪い。
【0005】
パーライト原料が大きな(粗い)場合には、ロータリキルンが用いられて、パーライトが製造される。ロータリキルンは、例えば横型の円筒焼成炉である。前記円筒は傾斜している。円筒が回転することにより、パーライト原料が搬送される。ロータリキルンには、外熱式のものと、内熱式のものとが有る。パーライトの製造には、主に、外熱式ロータリキルンが用いられる。そして、ロータリキルンが用いられた場合、パーライト原料には十分な熱を加えることが出来る。かつ、加熱時間が数分から数十分以上と長い。従って、ロータリキルンが用いられた場合、均一性の高いパーライトが得られる。しかしながら、ロータリキルンで粉状(粒径が小さい)のパーライト原料を焼成した場合、焼成温度(加熱温度)が原料の融点を越えると、ロータリキルン壁面に原料が付着・堆積する。この為、安定した焼成が出来なくなる。従って、粉状のパーライト原料には適用できない。勿論、パーライト原料の粒径が大きなものであっても、粉状のものが含まれている場合には、前記現象が起きる。従って、粉状のものは取り除かれなければならない。この為、一般的には、工程が増えることになる。
【0006】
パーライト等の発泡材は、高強度・低吸水率であることが望まれる。その理由は次の通りである。強度が低いと、破損が起き易い。吸水率が高い(例えば、表面に孔が開いている為、吸水率が高い)と、例えばセメントや水と共に混練された場合、パーライト内部(穴内)に水が侵入する。パーライト内部に侵入して保持された水は外部に放出され難い。この為、軽量化の目的が達成され難い。更には、寒冷地で使用された場合には、パーライト内部の水が凍る。この結果、パーライトが膨張する。そして、損傷が起きる。
【0007】
発泡材(パーライト)の強度を大きくする為には、(1)発泡倍率を小さくする、(2)殻の厚さを厚くすることが考えられる。この為には、低温で焼成する手法が考えられる。低温での焼成は、発泡温度域の幅が狭くなる。この為、一部のパーライト原料に熱が十分には伝わり難い。この為、未発泡の粒子が出来る。よって、均一なパーライトが得られ難い。この問題点を解決する為、高温焼成を行うと、発泡過多になる。表面に穴が開いたりする。
【0008】
パーライト製造技術として、これまで、次のような提案が有る。
【0009】
例えば、特開平7−277851号公報では、一定範囲に粒度調整した真珠岩あるいは松脂岩を、ロータリキルンで、室温〜400℃の温度に予熱し、この後、外熱方式のロータリキルンで、500〜1100℃に加熱して発泡させ、従来の黒曜岩粒状発泡パーライトと同等もしくはそれ以上の品質を有するパーライトの製造方法が提案されている。
【0010】
特開2008−19149号公報では、バルーン形状を成す気密型の低吸水パーライトを製造する方法であって、精石を加熱処理して生成された多数の気泡を有する発泡パーライトを取得する工程と、前記発泡パーライトに対し、新たな工程として加熱により再度外郭表面を溶融させて、前記発泡パーライトの外郭表面に存在する前記気泡の開口孔を塞ぐ外装殻を形成する工程とを有することを特徴とする低吸水パーライトの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−277851号公報
【特許文献2】特開2008−19149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1の技術は、ロータリキルンを用いている。従って、パーライト原料には比較的大きなものしか用いられない。すなわち、粉状の原料が用いられた場合、或いは粉を含む原料が用いられた場合、ロータリキルン内壁に、時間の経過に伴って、原料が付着・堆積する。この結果、操業不能に陥ってしまう。
【0013】
前記特許文献2の技術では、新たな工程として加熱により再度外郭表面を溶融させ、発泡パーライトの外郭表面に存在する気泡の開口孔を塞ぐ外装殻を形成する工程を有することから、製造工程が煩瑣である。
【0014】
従って、本発明が解決しようとする課題は前記問題点を解決することである。すなわち、生産性が高く、かつ、生産コストが低廉であり、更には高強度・低吸水率のパーライト(無機質発泡材)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題は、
パーライト製造方法であって、
パーライト原料を400〜750℃で加熱するA工程と、
前記A工程で加熱された物を流動層焼成炉で加熱・発泡させるB工程
とを具備することを特徴とするパーライト製造方法によって解決される。
【0016】
好ましくは、パーライト製造方法であって、
パーライト原料を400〜750℃で加熱するA工程と、
前記A工程で加熱された物を流動層焼成炉で800〜1200℃に加熱・発泡させるB工程
とを具備することを特徴とするパーライト製造方法によって解決される。
【0017】
好ましくは、前記パーライト製造方法であって、A工程における加熱時間が5〜90分であることを特徴とするパーライト製造方法によって解決される。
【0018】
パーライトの製造に際して、原料としては、例えば真珠岩、シラス、松脂岩、黒曜石、コーガ石の群の中から選ばれる一種または二種以上のものが用いられる。パーライト原料は、好ましくは、100μm篩通過分が5〜30質量%のものである。その平均粒径は、好ましくは100〜500μmである。その密度は、好ましくは、2.0〜2.4g/cm
3である。
【0019】
前記の課題は、
上記パーライト製造方法において、パーライト原料に代わって無機質発泡材の原料が用いられる
ことを特徴とする無機質発泡材の製造方法によって解決される。
【0020】
無機質発泡材の原料は、好ましくは、100μm篩通過分が5〜30質量%のものである。その平均粒径は、好ましくは、100〜500μmである。その密度は、好ましくは、1.8〜2.4g/cm
3である。
【0021】
前記の課題は、
発泡材製造装置であって、
無機質発泡材の原料を400〜750℃で加熱するロータリキルンと、
前記ロータリキルンで加熱された物を800〜1200℃で加熱・発泡させる流動層焼成炉
とを具備することを特徴とする発泡材製造装置によって解決される。
【発明の効果】
【0022】
原料が、例えばロータリキルンで400〜750℃に加熱された後、この加熱された原料が、例えば800〜1200℃に流動層焼成炉で加熱されるようにしたので、高強度・低吸水性の発泡材(パーライト)が生産性良く、かつ、低廉なコストで得られるようになった。特に、100μm篩通過分が5〜30質量%の原料が用いられた場合でも、前記特長が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の発明はパーライト製造方法である。本製造方法は、パーライト原料が400〜750℃で加熱されるA工程を具備する。このA工程における加熱温度は、好ましくは、650℃以下である。加熱時間は、5〜90分である。好ましくは、10分以上である。好ましくは60分以下である。前記A工程は、好ましくは、ロータリキルンを用いて行われる。すなわち、加熱時間が比較的長いことから、ロータリキルンによる処理が好ましい。本製造方法は、前記A工程で加熱された物が流動層焼成炉で加熱・発泡されるB工程を具備する。前記B工程においては、加熱温度は、好ましくは、800〜1200℃である。更に好ましくは、950℃以上である。更に好ましくは、1050℃以下である。本流動層焼成炉による処理時間は、10〜300秒である。パーライトの製造に際して、原料としては、例えば真珠岩、シラス、松脂岩、黒曜石、コーガ石の群の中から選ばれる一種または二種以上のものが用いられる。パーライト原料は、好ましくは、100μm篩通過分が5〜30質量%のものである。その平均粒径は、好ましくは、100〜500μmである。その密度は、好ましくは、2.0〜2.4g/cm
3である。
【0025】
第2の発明は無機質発泡材製造方法である。本製造方法は、前記パーライト製造方法に準じて行われる。無機質発泡材の製造に際して、原料は、好ましくは、100μm篩通過分が5〜30質量%のものである。その平均粒径は、好ましくは、100〜500μmである。その密度は、好ましくは、1.8〜2.4g/cm
3である。無機質発泡材としては、例えば上記原料を微粉砕してSiC等の発泡剤を加えた人工骨材などが挙げられる。勿論、これに限られるものでも無い。
【0026】
第3の発明は発泡材(パーライトを含む)製造装置である。本製造装置は、無機質発泡材の原料を400〜750℃で加熱するロータリキルンを具備する。本製造装置は、前記ロータリキルンで加熱された物を800〜1200℃で加熱・発泡させる流動層焼成炉を具備する。前記ロータリキルンと前記流動層焼成炉とは、好ましくは、連結されている。すなわち、ロータリキルンで予備加熱を受けた原料が、外気に曝されることなく、流動層焼成炉に供給されるように構成されている。
【0027】
前記ロータリキルンは各種タイプのロータリキルンが用いられる。例えば、特開平7−277851号などに記載のロータリキルンが用いられる。その他の公知なロータリキルンも、適宜、用いられる。
【0028】
前記流動層焼成炉も各種タイプの流動層焼成炉が用いられる。例えば、特開2001−240439号公報や特開2002−338280号公報に記載の流動層焼成炉が用いられる。その他のタイプの流動層焼成炉が用いられても良い。例えば、本願発明者の提案の流動層焼成炉を用いることが出来る。この流動層焼成炉は熱媒体を有する。流動層焼成炉は、好ましくは、前記熱媒体を保持する板(例えば、金属或いはセラミック板:分散板 分散板とは媒体を落下させずに保持する。更に、圧力損失により良好な流動層の形成を目的として設置される)を備えている。すなわち、板の上に熱媒体が載せられている。この板の下方側から熱流(流動化ガス)が供給される。従って、前記板体は孔を有する。前記孔から前記熱媒体が落下しないよう前記孔は前記熱媒体の大きさより小さい。前記板の代わりに網であっても良い。すなわち、熱媒体を保持でき、かつ、下から上に向かって熱流が流れて行くことが出来る構造のものであれば如何は問われない。前記熱流の流れによって、焼成品(焼成・発泡品)は、好ましくは、熱媒体層の上側から排出されるよう構成されている。流動層焼成炉で焼成される原料(前記ロータリキルンで予備加熱された原料)の供給口が、流動層焼成炉内に配設されている熱媒体層の横側部に対応して構成されている。前記供給口は、熱媒体層の横側部であれば良いが、好ましくは、出来るだけ下方側の位置である。なぜならば、熱媒体層中を通過する距離がそれだけ長くなり、焼成時間が長くなるからである。前記焼成炉は、一般的には、円筒形である。とは言うものの円筒形に限定されるものでも無い。焼成炉内に配設されている熱媒体の量は、該熱媒体が、高さHで、直径(内径)Dの円筒内に配設されているとした場合、好ましくは、前記H/Dが1〜4であった。前記熱媒体は、好ましくは、平均粒径が0.5〜3mmである。前記熱媒体は、好ましくは、密度が1〜3g/cm
3である。前記流動層焼成炉は、好ましくは、その炉内に、N(Nは2以上の整数:好ましくは3〜5)個の板体が積重・配置されている。板体の配置位置は、好ましくは、焼成帯(焼成域)の上部である。更に好ましくは、フリーボードより上流側(流動層側)の焼成帯である。前記N個の板体は間隔を空けて積重・配置されたものである。好ましくは、3〜15cm(より好ましくは、5〜10cm)程度の間隔を空けて積重・配置されたものである。更に好ましくは、下から(K+1(但し、Kは1以上で(N−1)以下の整数))番目に位置する第(K+1)板体は、下からK番目に位置する第K板体の真上に配置(第(K+1)板体の中心が第K板体の中心の上に存するよう配置)されている。特に好ましくは、N個の板体の中心位置が炉の垂直方向の中心線上に位置するように配置されている。前記N個の板体の中の少なくとも一つは開口を有する。前記N個の板体の中の少なくとも一つは開口を有さない。そして、板体を上記の如くに構成させておくと、炉内における流体の流れがスムーズで、乱れが少ない。その結果、高品質な焼成品が効率良く得られるようになった。本装置において、好ましくは、開口を有する板体は最下部以外に位置する。より好ましくは、最下部以外に位置する全ての板体は開口を有する。この開口は、好ましくは、上側に位置する板体ほど、大きい。すなわち、開口面積は上側ほど大きい。そして、開口を有する板体は、好ましくは、上側に位置するほど外形が大きい。開口は、更に好ましくは、0.9×[第K板体の外形の大きさ]≦[第(K+1)板体の開口の大きさ]≦1.2×[第K板体の外形の大きさ](第K板体とは、下からK(但し、Kは1〜Nの整数)番目に位置する板体)を満たす。最下部に位置する第1板体は、好ましくは、開口を有さない。最下部に位置する第1板体は、好ましくは、その大きさが、炉の断面積の1/10〜4/10(特に、2/10〜3/10)である。すなわち、最下部に位置する第1板体にも開口を設けていると、流動層部に存する熱媒体が飛び出し易い。つまり、流動層における熱媒体が流失(消失)し易い。そして、流動層内での圧力変動や温度差分布が大きなものとなる。これに対して、最下部に位置する第1板体に開口を設けていなかった場合、流動層部に存する熱媒体が効果的に遮蔽されて流失し難く、流動層内での圧力変動や温度差分布が小さい。積重・配置されたN個の板体は、次の条件が満たされているのが好ましい。すなわち、炉壁に沿った方向の光をN個の板体に照射した場合、前記N個の板体による光の投影面積が炉の断面積の9/10以上(更には、95/100以上)である。尚、この値は100/100であっても良い。しかしながら、この値が100/100と言うことは、外形が一番大きな板体は炉壁に接していることである。そうすると、板体配置の作業性が劣る。従って、実際には、100/100未満である。
【0029】
そして、上記実施形態で説明された技術が用いられた場合、高強度・低吸水率のパーライト(無機質発泡材)が得られた。しかも、広い粒度分布を持つ原料が用いられても、高強度・低吸水率のパーライト(無機質発泡材)が得られた。
【0030】
以下、具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明になる装置の概略図である。
【0032】
図1中、1は原料供給ホッパである。2はロータリキルンである。3は加熱炉である。4は流動層焼成炉である。この流動層焼成炉4は、円筒形(直径D=300mm)状の焼成炉である。この焼成炉4の下方部には分散板が設けられている。この分散板は熱媒体の大きさより小さな径(例えば、0.5〜2mm程度)の孔を有する。分散板の上には、径が0.5〜3mm程度で、密度が1〜3g/cm
3程度の熱媒体が厚さ600mm(H=600mm:H/D=2)となるよう載せられている。熱媒体は、例えばアルミナやムライトと言ったセラミック粒子である。焼成炉4の前記熱媒体が存する領域(層)の横側部には原料供給口(投入口)が設けられている。この原料供給口の径は前記分散板の孔や熱媒体の径より大きく、例えば直径1〜5cm程度である。
【0033】
上記
図1の装置が用いられてパーライトが製造された。
パーライト原料は真珠岩である。この真珠岩の化学組成は次の通りであった。なお、化学組成中の水分量とは100℃から1000℃まで加熱したときの減量分である。
水分量 : 3.9質量% SiO
2:70.3質量% Al
2O
3:14.1質量% 微量成分(Na
2O,K
2O,CaO,Fe
2O
3等):残量
前記化学組成の真珠岩として二つのタイプが用意された。
真珠岩a 平均粒径:165μm 100μm篩通過分:21質量%
真珠岩b 平均粒径:171μm 100μm篩通過分: 8質量%
【0034】
すなわち、上記真珠岩aが、原料供給ホッパ1からロータリキルン2内に供給された。そして、加熱炉3で600℃(温度測定装置:チノー製放射温度計(IR−AHS)、測定箇所:窯尻開口部より最高温度部分を測定)に加熱された。このロータリキルンによる真珠岩aの加熱時間は10分であった。ロータリキルン2で加熱された真珠岩aが、流動層焼成炉4内に供給され、1050℃(温度測定装置:チノー製放射温度計(IR−AHS)、測定箇所:点検孔より測定)に加熱された。流動層焼成炉4による加熱時間は15秒であった。尚、流動層焼成炉4での加熱時間は、発泡度などを考慮して適宜決めれば良い。このようにしてパーライトが得られた(実施例1)。
【0035】
上記実施例1において、加熱炉3による加熱温度が650℃である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例2)。
【0036】
上記実施例1において、加熱炉3による加熱温度が750℃である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例3)。
【0037】
上記実施例1において、流動層焼成炉4による加熱温度が950℃である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例4)。
【0038】
上記実施例1において、流動層焼成炉4による加熱温度が1100℃である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例5)。
【0039】
上記実施例1において、加熱炉3による加熱時間が5分である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例6)。
【0040】
上記実施例1において、加熱炉3による加熱時間が60分である以外は同様に行われ、パーライトが得られた(実施例7)。
【0041】
上記実施例1で用いられた真珠岩aに代わって真珠岩bが用いられた以外は実施例1と同様に行われ、パーライトが得られた(実施例8)。
【0042】
上記実施例1において、流動層焼成炉の代わりに気流炉(加熱温度は1000℃)が用いられた以外は同様に行われ、パーライトが得られた(比較例1)。
【0043】
上記実施例1において、流動層焼成炉の代わりにロータリキルン(加熱温度は1000℃)が用いられた以外は同様に行われた(比較例2)。
【0044】
上記実施例1において、ロータリキルンによる予備加熱(600℃)を経ることなく、真珠岩aが、直接、原料供給ホッパから流動層焼成炉に供給され、1000℃に加熱され、パーライトが得られた(比較例3)。
【0045】
真珠岩aが原料供給ホッパからロータリキルンに供給されて1000℃に加熱された(比較例4)。
【0046】
真珠岩aが原料供給ホッパから気流炉に供給されて1000℃に加熱され、パーライトが得られた(比較例5)。
【0047】
真珠岩bが原料供給ホッパからロータリキルンに供給されて1000℃に加熱され、パーライトが得られた(比較例6)。
【0048】
上記各例で得られたパーライトの特性が調べられたので、その結果が表−1に示される。
なお、強度の測定方法は、試料を試料容器と共に水で満たされた加圧容器内へ入れ、8MPaで1分間加圧する。加圧後、加圧した試料の全量を取り出してメスシリンダーに入れ、水200mlを加えて静置する。静置後、水の濁りが無くなって来たら、上記浮水率測定方法に準じた方法で浮いた試料粒子の体積を計測し、8MPa加圧下での加圧浮揚率(浮水率)W2とする。加圧試料と同量の試料について、加圧せずに常圧下とした以外は同様の測定方法で測定し、非加圧下の浮揚率(浮水率)W1とする。加圧試料浮揚率W2/非加圧浮揚率W1×100(%)の式に基づいて静水圧浮揚残存率とした。この値が大きいほど静水圧によって中空が壊れていないので強度が大きい。
吸水率はパーライトに十分水を含ませた後、表乾になるまで表面の水分を除去した後、表乾状態の質量をA、100℃で乾燥させたときの試料の質量をBとすると、(B−A)/A×100(%)を吸水率とした。
密度は、一定容積S(cm
3)の容重枡に試料を充填し、開口からはみ出た部分をすり切り、全体の重量G1を測定し、これから容器の重量G2を差し引いて粉末重量G3(g)を求め、上記容積Sに対する粉末重量G3〔G3/S〕g/cm
3を嵩密度とした。
表−1
強度(%) 吸水率(%) 密度(g/cm
3)
実施例1 60 10 0.28
実施例2 65 12 0.35
実施例3 73 15 0.44
実施例4 68 12 0.40
実施例5 55 18 0.25
実施例6 51 13 0.25
実施例7 77 11 0.41
実施例8 55 11 0.24
比較例1 26 30 0.18
比較例2 パーライト製造不能
比較例3 45 32 0.20
比較例4 パーライト製造不能
比較例5 21 55 0.15
比較例6 33 22 0.22
【0049】
上記表−1によれば、本発明は、高強度・低吸水率のパーライトを生産性良く、かつ、低廉なコストで提供できることが判る。特に、原料として微細な粉状のものが含まれていても、高強度・低吸水率のパーライトを生産性良く、かつ、低廉なコストで提供できることが判る。すなわち、予備加熱によって、原料中に含まれる水分が減少し、発泡が抑制され、この後で流動層焼成炉によって均一に加熱された為、発泡粒子(パーライト)の殻の厚さが厚く、均一になり、強度・吸水性が著しく改善されたものと考えられた。
【0050】
これに対して、流動層焼成炉が用いられても、予備加熱が行われなかった場合には、比較例3が示す通り、本発明で得られる如きの高強度・低吸水性のパーライトが得られてない。尤も、予備加熱がなされずにロータリキルンに供給されて1000℃に加熱された場合(比較例4)や、予備加熱がなされずに気流炉に供給されて1000℃に加熱された場合(比較例6)に比べたならば、比較例3の手法で得られたパーライトは優れている。特に、原料として微粉状のものが多く含まれている真珠岩aが用いられてロータリキルンで1000℃に焼成された場合(比較例4)には、キルン壁面に微粉が付着し、製造不能に陥った。気流炉で焼成された場合(比較例5)、強度が小さく、吸水率が大きかった。顕微鏡での観察によれば、表面に開孔部が有る粒子が多く、損傷した粒子が多く観察された。これは、部分的に強い熱が掛り、発泡しすぎて破裂した為と考えられる。
【0051】
ロータリキルンによる600℃の予備加熱が行われた場合でも、流動層焼成炉が用いられなかった場合、即ち、流動層焼成炉の代わりに気流炉が用いられて加熱が行われた場合、比較例1が示す通り、本発明で得られる如きの高強度・低吸水性のパーライトが得られてない。
【0052】
ロータリキルンによる600℃の予備加熱が行われた場合でも、流動層焼成炉が用いられなかった場合、即ち、流動層焼成炉の代わりにロータリキルンが用いられて加熱が行われた場合、比較例2が示す通り、本発明で得られる如きの高強度・低吸水性のパーライトが得られてない。ロータリキルンが用いられた比較例2の場合は、キルン壁面に微粉が付着し、製造不能に陥った。
【0053】
又、上記実施例の原料にSiC等を加えた場合にも、同様な傾向が確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 原料供給ホッパ
2 ロータリキルン
3 加熱炉
4 流動層焼成炉
5 冷却装置