特許第5674024号(P5674024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674024
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】乗客コンベアの安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/06 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B66B29/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-33673(P2011-33673)
(22)【出願日】2011年2月18日
(65)【公開番号】特開2012-171725(P2012-171725A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙一
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−150987(JP,A)
【文献】 実開昭49−084889(JP,U)
【文献】 特開2004−203520(JP,A)
【文献】 特開平05−262490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗客口に配置されたコム取付梁と、
前記コム取付梁に取り付けられたコムと、
前記コム取付梁の下方を移動する踏段と前記コムとの間に設けられた検出部材と、
前記コム取付梁に取り付けられ前記検出部材の変位を検出するスイッチとを備え、
前記検出部材は、
踏段の幅方向両端部に設けられたデマケーション部の内側部分に沿って延びる中間検出部と、
前記中間検出部における踏段の幅方向両端部から側方へ延びデマケーション部に対向するように配置され、前記中間検出部より上方に配置された外側検出部と、
前記中間検出部における踏段の幅方向両端部から踏段の移動方向前方へ延びて前記スイッチを作動させる作動部とを備えることを特徴とする乗客コンベアの安全装置。
【請求項2】
前記中間検出部は、踏段の移動方向後方端から上方に突出する突片を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの安全装置。
【請求項3】
前記中間検出部の下面に踏段の移動方向後方へ行くほど厚みが薄くなるテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの安全装置。
【請求項4】
前記作動部は、前記コム取付梁を貫通して上方に突出する突部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの安全装置。
【請求項5】
前記突部が分割可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアでは、乗降口においてコムと踏段との間に異物が引き込まれることを防止する安全装置が設けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この種の安全装置は、コムが取り付けられたコム取付梁とその下方を移動する踏段との間に踏段の幅方向に延びる検知バーを備え、該検知バーが定位置から移動したときにコムと踏段との間に異物が引き込まれ始めたとして、乗客コンベアの運転を停止して異物が奥深くまで引き込まれることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−150987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗客コンベアでは、踏段の幅方向両端部に上方へ隆起するデマケーション部が設けられていることがある。このような上方に隆起するデマケーション部が踏段に設けられていると、上記した検知バーがデマケーション部と干渉するため、踏段の幅方向両端部において検知バーを配設することができず異物の引き込まれを検出できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような点を考慮してなされたもので、踏段の幅方向両端部に上方に隆起するデマケーション部が設けられた場合であっても、デマケーション部においてコムと踏段との間に異物が引き込まれることを検出することができる乗客コンベアの安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の乗客コンベアの安全装置は、乗客コンベアの乗客口に配置されたコム取付梁と、前記コム取付梁に取り付けられたコムと、前記コム取付梁の下方を移動する踏段と前記コムとの間に設けられた検出部材と、前記コム取付梁に取り付けられ前記検出部材の変位を検出するスイッチとを備え、前記検出部材は、踏段の幅方向両端部に設けられたデマケーション部の内側部分に沿って延びる中間検出部と、前記中間検出部における踏段の幅方向両端部から側方へ延びデマケーション部に対向するように配置され、前記中間検出部より上方に配置された外側検出部と、前記中間検出部における踏段の幅方向両端部から踏段の移動方向前方へ延びて前記スイッチを作動させる作動部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る安全装置が適用された乗客コンベアを示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る安全装置の平面図である。
図3】コムを取り外した状態における図1に示す安全装置の要部拡大平面図である。
図4図2のA−A断面図である。
図5図4の要部拡大図である。
図6図1に示す安全装置の要部を拡大して示す正面図である。
図7図3のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に例示する乗客コンベア1は、本発明の一実施形態にかかる乗客コンベアの安全装置(以下、安全装置という)30が適用されるエスカレータである。なお、本実施形態では、安全装置30を適用する乗客コンベアとしてエスカレータの場合について説明するが、動く歩道に安全装置30を適用することもできる。
【0011】
以下の説明においては、乗客が踏段2上から乗降板16へと降りる方向を踏段の移動方向前方M1と、乗客が乗降板16から踏段2上へと乗り込む方向を踏段の移動方向後方M2といい、また、本実施形態では、踏段2が下階から上階へ移動する場合について説明する。
【0012】
乗客コンベア1は、図1に示すように、多数の踏段2を上階側の乗降口8と下階側の乗降口9との間で循環移動させることで、踏段2の踏み面2aに搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送するものである。踏段2の両側部には左右一対の欄干10が設けられ、これら欄干10の外周部に踏段2と同期して循環移動する手摺ベルト12が装着されている。
【0013】
踏段2の踏み面2aには、図2図3及び図6に示すように、踏段の移動方向Mに沿って延びる複数本のクリート突条13が所定間隔をあけて互いに平行に設けられ、隣接するクリート突条13の間にクリート溝14が形成されている。
【0014】
また、踏み面2aに設けられた複数本のクリート突条13のうち踏段2の幅方向両端部に設けられた複数本のクリート突条13aが、他のクリート突条13と比べて上方へ高く突出しており、上方に高く突出するクリート突条13aによってデマケーション部15が形成されている。このデマケーション部15は、他の踏み面部分と異なる色彩(例えば黄色)に設けられ、乗客に対して挟まれ注意を促すものである。
【0015】
多数の踏段2は、無端状の踏段チェーン3によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス4内に配置されている。トラス4の内部の上階側にはスプロケット5と駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置6とが配置され、トラス4の内部の下階側にはスプロケット7が配置されており、駆動装置6からの出力によって上階側のスプロケット5が回転駆動されることで、下階側のスプロケット7との間に架け渡された踏段チェーン3が循環移動し、踏段2が下階から上階へ、又は、上階から下階へ移動する。
【0016】
上階側の乗降口8及び下階側の乗降口9には、踏段の移動方向Mに沿って複数の乗降板16が並べて敷設され、最も踏段2側寄りの乗降板16aの下面にコム取付梁19が設けられている。コム取付梁19には乗降板16aの先端に位置するようにコム17が取り付けられており、踏段2がコム取付梁19及びコム17の下方をほぼ水平方向に移動するようになっている。
【0017】
コム17の先端部には、図4及び図5に示すように、踏段2の踏み面2aに設けられたクリート突条13、13aと噛み合う櫛歯18が設けられており、踏段2上の乗客の足や異物等を乗降板16a上にすくい上げ、乗客の足や異物等が踏段2と乗降板16aとの間に挟まれることを防止している。
【0018】
上記構成の乗客コンベア1では、上階側の乗降口8及び下階側の乗降口9に安全装置30がそれぞれ設けられている。安全装置30は、コム17と踏段2の踏み面2aとの間に異物が引き込まれたときに、乗客コンベア1の運転を停止させて更なる異物の引き込みを防止するものである。
【0019】
なお、上階側の乗降口8及び下階側の乗降口9に設けた安全装置30は、同一構造を有していることから、以下、上階側の乗降口8に設けた安全装置30について説明し、下階側の乗降口9に設けた安全装置30の説明を省略する。
【0020】
安全装置30は、図2図7に示すように、乗客口8に配置されたコム取付梁19と、コム取付梁19に取り付けられたコム17と、踏段2とコム17との間に設けられ検出部材31と、検出部材31の変位を検出するスイッチ32とを備える。
【0021】
コム取付梁19は、踏段2の幅方向Wに沿って水平にトラス4に取り付けられている。コム取付梁19の上面には、乗降板16aと乗降板16aより踏段の移動方向後方M2に位置するコム17とが固定されている。コム17は、コム取付梁19におけるに踏段の移動方向後方端に設けられたコム取付凹部21内に配設されている。また、コム取付梁19の下面には、検出部材31を配設するための凹部33が配設されている。
【0022】
検出部材31は、平面視においてほぼ板状をなし、コム取付梁19の下面に踏段2の踏み面2aと上下方向に対向配置されており、中間検出部34と外側検出部35と作動部36とを備える。
【0023】
中間検出部34は、踏段2の幅方向両端部に設けられたデマケーション部15の内側部分に沿って設けられた細長い矩形状をなしている。図4及び図5に示すように、中間検出部34は、踏段の移動方向Mに隙間Sをあけてコム取付梁19の下面に設けられた凹部33に収納され、コム取付梁19より踏段の移動方向後方M2へ突出するように配置されている。
【0024】
中間検出部34の下面には、踏段の移動方向後方M1へ行くほど厚みが薄くなるテーパ面34aが設けられており、中間検出部34の先端ほど踏段2の踏み面2aとの間隔が大きくなっている。また、中間検出部34の先端、つまり、中間検出部34における踏段の移動方向後方端には上方に向けて突出する突片37が設けられている。
【0025】
外側検出部35は、図2及び図3に示すように、中間検出部34の長手方向両端部、つまり、中間検出部34における踏段の幅方向両端部から側方へ延設されており、踏段2に設けられたデマケーション部15に対向するように配置されている。外側検出部35は、図6に示すように、中間検出部34よりも上方に配置され、外側検出部35の下面35aが外方に行くにしたがって高くなるような階段形状をなしており、外側検出部35の下面35aと踏段2のデマケーション部15との間に隙間が形成されている。
【0026】
作動部36は、中間検出部34における踏段の幅方向両端部から踏段の移動方向前方M1へ延びた後、踏段の幅方向外方へ折れ曲がる平面視略L字状をなしており、コム取付梁19に設けられたスイッチ32を押圧し作動させる。
【0027】
なお、作動部36及びスイッチ32は、中間検出部34の両端部にそれぞれ左右対称に設けられており、これらの構造が同一であるから、以下に、図3及び図7を参照して一方の作動部36及びスイッチ32のみについて説明する。
【0028】
作動部36は、中間検出部34における踏段の幅方向両端部から踏段の移動方向前方M1へ延びる延出部38と、延出部38から踏段の幅方向外方へ折れ曲がる屈曲部39と、屈曲部39の先端から上方に突出する突部40とを備える。
【0029】
作動部36のうち延出部38及び屈曲部39は、コム取付梁19の底面に設けられた凹部33内に配設されている。延出部38には、踏段の移動方向Mに沿って延びる長孔41が穿設されている。この長孔41には、コム取付梁19の凹部33から下方に突出する係止部42が挿通されている。これにより、踏段2の移動方向Mに沿って延出部38が所定範囲内で摺動するように係止部42は検出部材31を案内する。
【0030】
突部40は、コム取付梁19に設けられた貫通孔20に下方から挿通され、コム取付梁19より上方へ突出している。この突部40は、屈曲部39の先端に溶接などにより固定された第1突部43と、第1突部43に対してボルト44により取り外し可能に固定される第2突部45及び第3突部46とからなる。
【0031】
第1突部43は、屈曲部39から上方に突出しコム取付梁19に設けられた貫通孔20内で終端しており、貫通孔20内に設けられた付勢手段47によって踏段の移動方向後方M2へ付勢されている。これにより、検出部材31は、長孔41の周壁に凹部33に設けられた係止部42が当接することで、付勢手段47によって付勢された状態で踏段の移動方向Mに位置決めされる。
【0032】
第1突部43の上面には、第2突部45が配置され、第2突部45の上面に第3突部46が配置されている。第3突部46は、第2突部45から踏段の移動方向前方M1に向けて延びてから上方に向けて屈曲する側面視において略L字状をなしており、上方に向けて屈曲する部分46aがスイッチ32の検出片32aに当接している。
【0033】
コム取付梁19に設けられた貫通孔20、貫通孔20から上方へ突出する突部40、及び突部40に当接するスイッチ32は、図2に示すように、トラス4に取り付けられているスカートガード50の内側に収納されており、乗客コンベア1を利用する乗客は見ることができない。
【0034】
上記した構造を有する本実施形態の安全装置30では、乗客コンベア1の上階側の乗降口8において踏段2から乗降板16aに降りる際などに、コム17と踏段2の踏み面2aとの間に異物が挟まり、踏段2の移動に伴って挟まった異物が踏段の移動方向前方M1へ引き込まれると、異物が中間検出部34又は外側検出部35を踏段の移動方向前方M1へ押圧する。異物による中間検出部34又は外側検出部35の押圧に伴って、検出部材31が付勢手段47による付勢力に抗して踏段の移動方向前方M1に変位して、作動部36の第3突部46がスイッチ32の検出片32aを作動される。これにより、安全装置30は、コム17と踏段2の踏み面2aとの間に異物が引き込まれることを検出して乗客コンベア1の運転を停止する。
【0035】
以上のように本実施形態の安全装置30は、踏段2におけるデマケーション部15の内側部分に沿って設けられた中間検出部34と、中間検出部34の長手方向両端部から側方へ延び、中間検出部34より上方に配置された外側検出部35とを備え、外側検出部35がデマケーション部15に対向するように設けられている。そのため、踏段2の幅方向両端部に上方に隆起するデマケーション部が設けられている場合であっても、デマケーション部15においてコム17との間に異物が引き込まれたことを検出することができ、乗客コンベア1の安全性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の安全装置30では、中間検出部34が踏段の移動方向後方端から上方に突出する突片37を備えるため、コム17と踏段2の踏み面2aとの間に挟まった異物との接触面積を大きくすることができ、コム17との間に異物が引き込まれたことをより確実に検出することができる。
【0037】
また、本実施形態の安全装置30では、中間検出部34の下面に踏段の移動方向後方へ行くほど厚みが薄くなるテーパ面34aが設けられていることから、安全装置30の検出精度を向上させるためにコム17と踏段2の踏み面2aとの間に挟まった異物との接触面積を大きくしても、中間検出部34の下方を移動する踏段2の踏み面2aとの間隔を確保して中間検出部34と踏段2とが干渉しにくくなる。
【0038】
更にまた、本実施形態の安全装置30では、コム取付梁19に穿設された貫通孔20を介して上方に突出する突部40が分割可能に設けられているため、組み立て作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…乗客コンベア
2…踏段
2a…踏み面
4…トラス
8…乗客口
9…乗降口
13…クリート突条
13a…クリート突部
14…クリート溝
15…デマケーション部
17…コム
18…櫛歯
19…コム取付梁
20…貫通孔
30…安全装置
31…検出部材
32…スイッチ
32a…検出片
33…凹部
34…中間検出部
34a…テーパ面
35…外側検出部
36…作動部
37…突片
38…延出部
39…屈曲部
40…突部
41…長孔
42…係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7