特許第5674062号(P5674062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

特許5674062エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
<>
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000002
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000003
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000004
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000005
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000006
  • 特許5674062-エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674062
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150205BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B66B5/02 L
   B66B1/34 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-46529(P2013-46529)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-172705(P2014-172705A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2013年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−154756(JP,A)
【文献】 特開2009−143711(JP,A)
【文献】 特開2012−246095(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028049(WO,A1)
【文献】 特開2012−188229(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/102896(WO,A1)
【文献】 特開2004−043078(JP,A)
【文献】 特開平08−169658(JP,A)
【文献】 特開2012−175857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を備えたエレベータを制御するエレベータ制御装置において、
前記二次電池の使用可能蓄電量に関し、複数の閾値による複数の範囲ごとに設定された前記エレベータの乗りかごの運転速度情報を記憶する記憶部と、
停電が発生すると、前記エレベータに停電時継続運転を実行させるために、前記二次電池から前記エレベータに電力を供給するように切り替える切り替え部と、
前記二次電池からの電力供給が開始されると、所定時間間隔で前記二次電池の使用可能蓄電量を取得する使用可能蓄電量取得部と、
取得した使用可能蓄電量に対応する運転速度情報を前記記憶部から取得して、取得した運転速度情報に基づいて、前記停電時継続運転を実行させるための制御信号を生成する制御信号生成部と、
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記エレベータの乗りかごに設置されたかご出力装置および乗場に設置された乗場出力装置に接続され、
前記取得した使用可能蓄電量および運転速度情報に基づいて、停電時の運転可能予測時間を算出する運転可能予測時間算出部と、
前記取得した使用可能蓄電量および運転速度情報と、前記算出した運転可能予測時間とを、前記かご出力装置および前記乗場出力装置から出力させる出力部とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶される運転速度情報は、前記二次電池の使用可能蓄電量が少ない程小さい値になるように段階的に設定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記制御信号生成部は、前記取得した運転速度情報に基づいて、力行運転させるための制御信号を生成する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
二次電池を備えたエレベータを制御するエレベータ制御装置が、
前記二次電池の使用可能蓄電量に関し、複数の閾値による複数の範囲ごとに設定された前記エレベータの乗りかごの運転速度情報を記憶し、
停電が発生すると、前記エレベータに停電時継続運転を実行させるために、前記二次電池から前記エレベータに電力を供給するように切り替え、
前記二次電池からの電力供給が開始されると、所定時間間隔で前記二次電池の使用可能蓄電量を取得し、
取得した使用可能蓄電量に対応する運転速度情報を前記記憶した情報から取得して、取得した運転速度情報に基づいて、前記停電時継続運転を実行させるための制御信号を生成する
ことを特徴とするエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータには、停電時に運転を継続させるための二次電池が設置されている。二次電池が設置されることにより、建物内で停電が発生し商用電源からの電源供給が停止したときにも、エレベータを継続して運転することができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−217166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし二次電池は供給可能な電力容量に限界があるため、停電が長時間におよび二次電池の容量が低下したときにはエレベータを停止せざるを得ない状況となっていた。そこで停電中に、より長時間エレベータの運転を継続させるための技術が望まれていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、停電中に二次電池を利用してエレベータを運転させる際に、より長時間の運転を継続させることが可能なエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によれば、エレベータ制御装置は、記憶部と使用可能蓄電量取得部と制御信号生成部とを有する。記憶部は、二次電池の使用可能蓄電量に関し、複数の閾値による複数の範囲ごとに設定されたエレベータの乗りかごの運転速度情報を記憶する。使用可能蓄電量取得部は、停電が発生し、二次電池からの電力供給によるエレベータの停電時継続運転が開始されると、所定時間間隔で二次電池の使用可能蓄電量を取得する。制御信号生成部は、取得した使用可能蓄電量に対応する運転速度情報を記憶部から取得して、取得した運転速度情報に基づいて、停電時継続運転を実行させるための制御信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータの構成を示す全体図。
図2】一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータの構成を示すブロック。
図3】一実施形態によるエレベータ制御装置の記憶部に記憶された情報の一例を示す表。
図4】一実施形態によるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図5】一実施形態によるエレベータ制御装置のかご案内装置に表示された表示情報を示す図。
図6】一実施形態によるエレベータ制御装置の乗場案内装置に表示された表示情報を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈一実施形態によるエレベータの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータの構成について、図1を参照して説明する。
【0009】
本実施形態によるエレベータ1は、昇降路2上部の機械室3に巻上げ機4が設置され、この巻上げ機4に掛け渡された主索5の両端部にそれぞれ乗りかご6と釣り合いおもり7とがつるべ式に吊り下げられている。
【0010】
巻き上げ機4は主索5を掛け渡す主索車41と、主索車41を稼動して乗りかご6を昇降させる電動機42とで構成される。主索車41に掛け渡された主索5は、そらせ車8で吊り下げ位置が調整される。電動機42は、供給された電力を機械的動力に変換する力行運転を行う機能と、入力された機械的動力を電力に変換する回生運転を行う機能とを有する。
【0011】
また、機械室3には充電可能な蓄電池が二次電池9(補助電源)として設置されており、停電発生時に当該エレベータ1を継続して運転させるために各機器に電力を供給する。二次電池9には、図2に示すように、二次電池9から放電される電力の電流値を計測する電流計91と、電圧値を計測する電圧計92とを有する。
【0012】
また、機械室3には当該エレベータの制御装置10が設置され、通常時は商用電源11(主電源)から供給される電力でエレベータ1内の各機器の動作を制御するとともに、その動作状態を監視する。
【0013】
乗りかご6は昇降路2内を昇降し、複数の階床の乗場間(図1においては1階乗場12−1と3階乗り場12−3との間)での利用者の移動を可能にしている。
【0014】
乗りかご6内には、利用者が乗りかご6の行き先階を登録する操作等を行うためのかご内操作盤61と、利用者に対し、警報音、テキスト情報や映像情報、音声情報などにより運転に関する案内情報を出力するかご案内装置62と、乗りかご6内の積載荷重量を検出する荷重検出装置63と、照明機器64と、空調機器65と、かご扉66とを有する。乗りかご6内の積載荷重量は、乗客数などに基づいて検出される。
【0015】
また各エレベータ乗場12−1、12−3には、利用者が操作を行うための乗場操作盤121−1、121−3と、利用者に対し、警報音、テキスト情報や映像情報、音声情報などにより運転に関する案内情報を出力する乗場案内装置122−1、122−3と、乗場扉123−1、123−3とを有する。
【0016】
制御装置10の詳細な構成について、図2のブロック図を参照して説明する。制御装置10は、運転制御部101と、駆動制御部102と、二次電池制御部103とを有する。
【0017】
運転制御部101は、記憶部1011と、演算部1012と、出力部1013とを有する。
【0018】
記憶部1011は、二次電池9の使用可能蓄電量に関する、予め設定された範囲ごとに乗りかご6の運転速度情報を記憶する。
【0019】
演算部1012は、使用可能蓄電量取得部1012Aと、制御信号生成部1012Bと、運転可能予測時間算出部1012Cとを有する。
【0020】
使用可能蓄電量取得部1012Aは、停電が発生し二次電池9からの電力供給が開始されると、所定時間間隔で二次電池9の現在の使用可能蓄電量を取得する。
【0021】
制御信号生成部1012Bは、通常運転時はかご内操作盤61、乗場操作盤121−1、121−3での操作内容、荷重検出装置63により検出された積載荷重量、および予め設定された通常運転時の運転速度情報に基づいて、エレベータ1内の各機器(電動機42、かご内操作盤61、かご案内装置62、荷重検出装置63、照明機器64、空調機器65、かご扉66、乗場操作盤121−1、121−3、乗場扉123−1、123−3)を制御するための制御信号を生成して出力部1013に送出する。
【0022】
また制御信号生成部1012Bは、停電の発生を検知すると、エレベータ1に停電時継続運転を実行させるために、二次電池9からエレベータ1内に電力を供給させるよう切り替え回路1031に指示を送出する。
【0023】
また制御信号生成部1012Bは、停電が発生し二次電池9からの電力供給が開始されると、取得した現在の使用可能蓄電量に対応する運転速度情報を記憶部1011から取得し、かご内操作盤61、乗場操作盤121−1、121−3での操作内容、荷重検出装置63により検出された積載荷重量、および取得した運転速度情報に基づいて、エレベータ1内の各機器を制御するための制御信号を生成して出力部1013に送出する。そして、停電継続運転時の使用可能蓄電量が所定値よりも低下したことにより、停電時運転速度情報内の、該当する使用可能蓄電量の範囲が変更した場合には、この変更に伴ってエレベータ運転速度を変更する。
【0024】
運転可能予測時間算出部1012Cは、取得した使用可能蓄電量および運転速度情報に基づいて、停電時の運転可能予測時間を算出する。
【0025】
出力部1013は、演算部1012で演算された制御信号を、該当する各機器(電動機42、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3、照明機器64、空調機器65、かご扉66、乗場扉123−1、123−3等)に出力する。
【0026】
駆動制御部102は、商用電源11から供給された電力を交流から直流に変換するコンバータ(パルス幅変調コンバータ、または整流器)102Aと、コンバータ1021で一旦直流に変換された電力を任意の電流、周波数の三相交流に変換するとともに、電動機42の回生運転時に発生した電力を交流から直流に変換するインバータ1022とを有する。
【0027】
二次電池制御部103は、二次電池9への充電処理、および停電継続運転時に二次電池から各機器(制御装置10、電動機42、かご内操作盤61、かご案内装置62、荷重検出装置63、照明機器64、空調機器65、かご扉66、インバータ1022、乗場操作盤121−1、121−3、乗場扉123−1、123−3)へ電力供給を行うための切り替え処理を行う。
【0028】
〈一実施形態によるエレベータの動作〉
本実施形態において、エレベータ1の制御装置10の運転制御部101の記憶部1011には、図3に示すように、二次電池9の停電時の使用可能蓄電量ごとに乗りかご6の運転速度情報を記憶するが記憶されている。この情報は、二次電池9の使用可能蓄電量が少ない程小さい値になるように段階的に設定され、図3の例では、停電継続運転時の使用可能蓄電量が「二次電池9の最大容量の70%超90%以下」の場合は「通常運転の2/3の運転速度で運転」し、使用可能蓄電量が「二次電池9の最大容量の50%超70%以下」の場合は「通常運転時の1/2の運転速度で運転」し、使用可能蓄電量が「二次電池9の最大容量の10%超50%以下」の場合は「通常運転時の1/3の運転速度で運転」し、使用可能逐電量が「二次電池9の最大容量の10%以下」の場合は「停止」することが示されている。
【0029】
エレベータ1の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず通常運転時、つまり商用電源11から電力が供給されているときには、利用者による乗場操作盤121−1、121−3、またはかご内操作盤61の操作に基づいて、制御装置10の運転制御部101によりエレベータ1の運転が制御される。具体的には、利用者の操作内容、荷重検出装置63により検出された積載荷重量、および予め設定された通常運転時の運転速度情報に基づいて、演算部1012の制御信号生成部1012Bにおいてエレベータ1内の各機器(電動機42、かご内操作盤61、かご案内装置62、荷重検出装置63、照明機器64、空調機器65、かご扉66、乗場操作盤121−1、121−3、乗場扉123−1、123−3等)を制御するための制御信号が生成され、出力部1013から該当する機器に出力される。通常運転時の乗りかご6の運転速度は、例えば60m/minである。
【0031】
各機器を制御するための制御信号とは、電動機42の駆動による乗りかご6の昇降、照明機器64の点灯/消灯、空調機器65のON/OFFや設定温度調整、かご扉66の開閉、乗場扉123−1、123−3の開閉等を制御するための信号である。
【0032】
このように各機器が制御されることにより、利用者がエレベータ1を利用して所望の階に移動することができる。
【0033】
また通常運転時には、商用電源11から供給された電力がコンバータ1021で交流から直流に変換され、二次電池9に蓄電される。さらに、エレベータ1の回生運転時に電動機42で発生した電力がインバータ1022で交流から直流に変換され、二次電池9に蓄電される(S1)。
【0034】
次に、当該建物内で停電が発生すると(S2の「YES」)運転制御部101の演算部1012で検知され、二次電池制御部103の切り替え回路1031により、二次電池9から各機器(制御装置10、電動機42、かご内操作盤61、かご案内装置62、荷重検出装置63、照明機器64、空調機器65、かご扉66、インバータ1022、乗場操作盤121−1、121−3、乗場扉123−1、123−3)へ電力が供給されるように切り替えられる(S3)。
【0035】
二次電池9から電力供給されるように切り替えられると、停電時継続運転が開始され、使用可能蓄電量取得部1012Aにおいて停電継続運転時の使用可能蓄電量が算出されるとともに、運転可能予測時間算出部1012Cにおいて運転可能予測時間が算出される(S4)。
【0036】
停電継続運転時の使用可能蓄電量および運転可能予測時間が演算されるときの詳細な処理について説明する。
【0037】
まず、二次電池9に関し、電流計91で計測された電流値および電圧計92で計測された電圧値に基づいて、二次電池9の現在の蓄電量が取得される。この現在の蓄電量は、予め設定された当該二次電池9の最大容量に対する相対的な割合の範囲(例えば10〜90%)が、電力供給するにあたって有効な使用可能蓄電量である。
【0038】
次に、取得した現在の使用可能蓄電量に対応する運転速度情報が、制御信号生成部1012Bにおいて記憶部1011から取得される。
【0039】
次に、使用可能蓄電量取得部1012Aで取得された使用可能蓄電量および制御信号生成部1012Bで取得された運転速度情報に基づいて、停電継続運転時のエレベータ1の運転可能予測時間が算出される。電動機42への供給電力量や出力信号などに基づいて、電動機42の負荷(実際の運転速度)を算出し、これを考慮して運転可能予測時間を算出するようにしてもよい。
【0040】
これらの算出処理は、二次電池9の蓄電量、乗りかご6の積載荷重量、乗りかご6の運転速度と、使用可能蓄電量、運転可能予測時間との関係を、乗りかご6の昇降に必要な電力量を踏まえて、予め設定されたマッピング規則情報や数式モデルに基づいて実行される。これらのマッピング規則情報や数式モデルは、運転制御部101の記憶部1011に予め記憶されている。
【0041】
使用可能蓄電量の算出は所定時間間隔で実行され、運転可能予測時間の算出は所定時間間隔または運転速度情報が変更されたタイミングで実行される。使用可能蓄電量および運転可能予測時間は、通常は停電継続運転が開始されてからの経過時間が長くなる程、徐々に少なくなる。
【0042】
また停電時継続運転が実行されることにより、利用者の操作内容、荷重検出装置63により検出された積載荷重量、および予め設定された通常運転時の運転速度情報に基づいて、演算部1012の制御信号生成部1012Bにおいてエレベータ1内の各機器(電動機42、かご内操作盤61、かご案内装置62、荷重検出装置63、照明機器64、空調機器65、かご扉66、乗場操作盤121−1、121−3、乗場扉123−1、123−3等)を制御するための制御信号が生成され、出力部1013から該当する機器に出力される。
【0043】
算出された使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および現在の運転速度の情報は、出力部1013を介してかご案内装置62および乗場案内装置122−1、122−3に送信され、表示される(S5)。
【0044】
図5は、かご案内装置62の表示部621に使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および現在の運転速度の情報が表示された状態を示す表示例である。かご案内装置62には、表示部621の他、行き先開登録ボタン群622、戸開ボタン623、および戸閉ボタン624等が設置されている。
【0045】
図6は、乗場案内装置122−1、122−3の表示部1221−1、1221−3に使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および現在の運転速度の情報が表示された状態を示す表示例である。乗場案内装置122−1、122−3には、表示部1221−1、1221−3の他、上方向かご呼びボタン1222−1、1222−3、および下方向かご呼びボタン1223−1、1223−3等が設置されている。
【0046】
また出力部1013では、停電時継続運転が行われている間に緊急事態が発生したことが検知された場合(例えば、建物内での火災発生が検知された場合等)、かご案内装置62の表示部621、乗場案内装置122−1の表示部1221−1、乗場案内装置122−3の表示部1221−3に、緊急事態が発生したことを報知するための情報を表示することを許可するようにしてもよい。
【0047】
図4のフローチャートに戻り、算出された使用可能蓄電量が所定値よりも低下したか否かが判定される(S6)。所定値よりも低下したか否かは、図3のテーブルにおいて、該当する「停電時の使用可能蓄電量」の範囲が異なる閾値(例えば70%、50%、10%)を超える状態から超えない状態に変わったか否かにより判定される。
【0048】
ここで、所定値よりも低下したと判定されたとき(S6の「YES」)は、当該テーブルの情報に従って、乗りかご6の力行運転の運転速度が変更される(S7)。例えば、二次電池9の使用可能蓄電量が70%を超える状態から70%以下の状態に変わったときには、運転速度が40m/minから30m/minに変更される。さらに、二次電池9の使用可能蓄電量が最大容量の50%以下の状態に低下すると、乗りかご6の力行運転の運転速度が30m/minから20m/minに変更される。運転速度の変更に伴って、出力部1013から電動機42へ出力される制御信号も変更される。
【0049】
運転速度は、ステップS6で所定値よりも低下したと判定された後、直近の時点で、いずれかの階に乗りかご6が着床した後に変更される。
【0050】
その際、運転速度の変更を報知するための情報が、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示されるとともに、音声で出力される。
【0051】
使用可能蓄電量が低下したことにより運転速度が変更されると、これに伴い運転可能予測時間が再度演算され、新たな値が演算部1012で算出される。そして、これらの新たな使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および運転速度が出力部1013から出力され、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示された表示内容が更新される(S8)。
【0052】
このように停電時継続運転を行っている間も、エレベータ1の回生運転時に電動機42で発生した電力がインバータ1022で交流から直流に変換され、二次電池に蓄電される。
【0053】
そして、商用電源11が復旧したか否かが判定され(S9)、復旧したとき(S9の「YES」)にはステップS1に戻って通常運転が実行される。
【0054】
通常運転に戻ると、力行運転の運転速度が60m/minに戻される。運転速度は、ステップS9で商用電源が復旧したと判定された後、直近の時点で、いずれかの階に乗りかご6が着床した後に変更される。
【0055】
その際、運転速度の変更を報知するための情報が、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示されるとともに、音声で出力される。
【0056】
運転速度の変更を報知するための情報が、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示されるとともに、音声で出力される。
【0057】
また商用電源11が復旧していないとき(S9の「NO」)には、二次電池9の容量が放電限界(例えば最大蓄電量の10%)に達したか否かが判定される(S10)。
【0058】
ここで放電限界に達したと判定されたとき(S10の「YES」)には、その後直近に着床した階で乗りかご6を停止するように運転制御部101により制御される(S11)。ここで、乗りかご11を停止させることを報知するための情報が、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示されるとともに、音声で出力される。
【0059】
また、放電限界に達していないと判定されたとき(S10の「NO」)には、ステップS4に戻って停電時継続運転が実行される。停電時継続運転により低速運転の実行中は、所定時間間隔ごと(例えば10分ごと)、または、乗りかご6がいずれかの階に着床したときやかご内操作盤61や乗場操作盤121−1、121−3が操作されたときなど、当該エレベータ1の運転に関するアクションが発生したときに、低速運転中であることを報知するための情報が、かご案内装置62、乗場案内装置122−1、122−3に表示されるとともに、音声で出力される。
【0060】
以上の本実施形態によれば、停電時継続運転が行われているときに、二次電池の残容量が低下するに従って、通常運転時と比較して力行運転の運転速度が相対的に低くなるように段階的に変更することで、電力消費量を効率的に抑制し、停電時継続運転をより長い時間行うことができる。
【0061】
また、停電時継続運転時に、かご内や乗場の案内装置に使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および運転速度を表示することにより、利用者に停電時の運転状況を報知し、利用者の省エネ意識を高めて消費電力量の低減に繋げることができる。また二次電池の容量が所定値よりも低下したときに、利用者にとって想定外に急停止してしまう事態を避けることができ、利用者が運転継続時間を把握して安心してエレベータを利用することができる。
【0062】
また、停電時継続運転中に緊急事態が発生したときには、これを報知するための情報をかご内や乗場の案内装置に表示させることにより、電力消費量を抑えつつ利用者にとって必要な情報を確実に提供することができる。
【0063】
上記実施形態においては、かご案内装置および乗場案内装置への使用可能蓄電量、運転可能予測時間、および運転速度の表示、更新を、停電時継続運転が開始してから継続的に行う場合について説明したが、使用可能蓄電量や運転可能予測時間が予め設定された閾値よりも低くなったとき(例えば、運転可能予測時間が、二次電池による最大運転可能時間の2割以下になったときや、10分以下になったときなど)にのみ表示するようにしてもよい。このように表示することにより、さらに停電時の電力消費量を抑えることができる。
【0064】
上記実施形態において、建物内に複数台のエレベータが設置され、これら複数台のエレベータに対して1台の二次電池が設置されている場合は、全エレベータの乗りかごおよび乗場において、運転速度の変更を報知するための情報が出力される。その際、全ての階床の乗場に対して出力してもよいし、建物に入り口等に対応する基準階およびかご呼びが発生した階床の乗場のみに出力するようにしてもよい。
【0065】
また、複数台のエレベータのそれぞれに二次電池が設置されている場合は、運転速度の変更を報知するための情報は、該当する乗りかごおよび該当する乗場に対し出力される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…エレベータ
2…昇降路
3…機械室
4…巻き上げ機
5…主索
8…そらせ車
9…二次電池
10…制御装置
11…商用電源
12−1、12−3…エレベータ乗場
14…電動機
41…主索車
42…電動機
61…かご内操作盤
62…かご案内装置
63…荷重検出装置
64…照明機器
65…空調機器
66…かご扉
91…電流計
92…電圧計
101…運転制御部
102…駆動制御部
103…二次電池制御部
121−1、121−3…乗場操作盤
122−1、122−3…乗場案内装置
123−1、123−3…乗場扉
621…表示部
622…行き先開登録ボタン群
623…戸開ボタン
624…戸閉ボタン
1011…記憶部
1012…演算部
1012A…使用可能蓄電量取得部
1012B…制御信号生成部
1012C…運転可能予測時間算出部
1013…出力部
1021…コンバータ
1022…インバータ
1031…切り替え回路
1221−1、1221−3…表示部
1222−1、1222−3…上方向かご呼びボタン
1223−1、1223−3…下方向かご呼びボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6