(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランプ本体と、このクランプ本体の上端部分の挿通孔を挿通して上方へ延びワークの穴の内周面をグリップ可能なグリップ部材と、このグリップ部材に係合した鉛直方向に延びるクランプロッドと、前記挿通孔のうちのグリップ部材及びクランプロッドの外周側の環状隙間を塞ぐゴム又は合成樹脂製のスクレーパと、前記クランプロッドを進退駆動する駆動手段とを有するクランプ装置において、
前記グリップ部材は、前記クランプロッドの外周側に位置する1又は複数のグリップ形成部材で構成され、
前記クランプロッドは、その中段部分の中段ロッド部と、この中段ロッド部から上方へ連なる上端側部分に上方程外径が拡大するように形成され且つ1又は複数のグリップ形成部材を外径拡大側へ駆動可能なテーパ部とを備え、
前記テーパ部は、1又は複数のグリップ形成部材のグリップ爪部が面接触的に当接する1又は複数のテーパ平面と、この1又は複数のテーパ平面の下部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面とを有し、
前記スクレーパの近傍部における、前記1又は複数のグリップ形成部材とクランプロッドの断面であってクランプロッドの軸心と直交する断面がアンクランプ状態からクランプ状態に亙って円形に形成されたことを特徴とするクランプ装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0031】
図1〜
図10に示すように、このクランプ装置Cは、クランプ本体1と、このクランプ本体1の上端部分の挿通孔17を挿通して上方へ延びワークWの穴Hの内周面をグリップ可能なグリップ部材2と、このグリップ部材2に係合した鉛直方向に延びるクランプロッド3と、このクランプロッド3を進退駆動する駆動手段4と、サポート機構5と、スクレーパ26などを有する。クランプ本体1は、上部本体11と下部本体12とで構成され、クランプ本体1がベース部材13に組み付けられる。
【0032】
上部本体11は平面視にて左右両端が湾曲状に形成されたほぼ矩形状をなし、この上部本体11は、4つのボルト孔9に挿入される4本のボルトでベース部材13に固定される。下部本体12はシリンダ穴41を形成する筒状部材であり、この下部本体12の上端部が上部本体11の下面側の凹部15に嵌合され、4本のボルト16により上部本体11に固定されている。クランプ本体1の上半部の中心部に上方へ突出する円筒状の本体筒部11aが設けられている。
【0033】
本体筒部11aの上端部の中心部分の挿通孔17を上下に貫通するようにグリップ部材2とクランプロッド3が配設されている。本体筒部11aの上面には、グリップ部材2を囲む4つの円弧状の着座面18が形成され、これら着座面18にワークWを着座させた状態で、ワークWをクランプする。本体筒部11aの上面には、エアブローされた加圧エアが流れる4つの凹溝19が十文字状に形成されている。
【0034】
次に、グリップ部材2について説明する。
図1〜
図7に示すように、グリップ部材2は、クランプロッド3と共にクランプ本体1の上端部分の挿通孔17を挿通して上方へ延びワークWの穴Hの内周面をグリップ可能である。このグリップ部材2は、クランプロッド3の外周側に等間隔に配設された3つの鋼製のグリップ形成部材21で構成されている。3つのグリップ形成部材21は、外径が拡大・縮小可能である。グリップ形成部材21の上部にはグリップ爪部22が形成され、グリップ形成部材21の下端部には、円弧状の基端鍔部23が形成されている。グリップ形成部材21の下半部の内面には、クランプロッド3の軸心と平行なストレート平面24が形成されている。
【0035】
グリップ爪部22の上下方向の長さは、グリップ部材2の全高の約1/3である。グリップ爪部22のクランプロッド3の軸心と直交する断面(水平断面)が、偏平D形に形成されている。
グリップ形成部材21の上半部の内面には、上方程クランプロッド3の軸心から離隔するテーパ面22aが形成され、このテーパ面22aがクランプロッド3のテーパ部34のテーパ平面35に密着状に係合可能である。グリップ爪部22の外周面には、ワークWの穴Hの内周面をグリップする為の3段の歯22bが形成されている。
【0036】
図2に示すように、上部本体11の挿通孔17のうちグリップ部材2及びクランプロッド3の外周側の環状隙間を塞ぐスクレーパ26が装着されている。スクレーパ26は、グリップ部材2及びクランプロッド3の外周面に摺接するゴムや合成樹脂等の弾力性のある材料で構成されている。スクレーパ26は、グリップ部材2及びクランプロッド3の外周側の環状隙間から切粉等の異物が内部に侵入するのを防ぎ、加圧エアがクランプ本体内から外界へ漏出しにくくし、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3を束ねるものである。グリップ部材2の下部には、3分割された3つのグリップ形成部材21を縮径方向へ付勢するOリング27が装着されている。
【0037】
グリップ部材2の基端鍔部23は、本体筒部11aの円形凹部28に収容され、基端鍔部23の外周側には隙間29が形成されている。グリップ部材2の基端鍔部23は、円形凹部28の上壁部とサポート部材52の水平板部52bとの間に水平方向へ可動に挟着され、サポート部材52で支持されている。グリップ部材2は、サポート部材52及び環状の受圧ピストン部材51と一体的に昇降可能であると共に、円形凹部28の外周部の環状隙間29とスクレーパ26の弾性変形を介して、クランプ装置Cの軸心と直交する水平方向へ移動可能に装着されている。
【0038】
次に、クランプロッド3について説明する。
図1〜
図10に示すように、クランプロッド3は、グリップ部材2を挿通し且つグリップ部材2に係合して鉛直方向に延びている。クランプロッド3は、下端側部分のT形係合部31と、このT形係合部31から上方に連なる小径ロッド部32と、この小径ロッド部32から上方へ連なる中段部分の中段ロッド部33と、この中段ロッド部33から上方へ連なる上端側部分に上方程外径が拡大するように形成され且つ3つのグリップ形成部材21を外径拡大側へ駆動可能なテーパ部34とを備えている。小径ロッド部32の水平断面は円形である。
【0039】
図8〜
図10に示すように、中段ロッド部33は、下記の3つのストレート面33a以外は上方程外径が拡大する部分円錐状に形成されている。この中段ロッド部33に、クランプロッド3の軸心と平行な3つのストレート面33aが周方向に等間隔に形成されている。ストレート面33aは、中段ロッド部33の上下方向のほぼ全長に亙って形成され、テーパ平面35の下端部に連なり且つクランプロッド3の軸心と平行になっている。このストレート面33aに、グリップ形成部材21のストレート平面24が面接触的に当接している。中段ロッド部33のストレート面33aを除く部分円錐面33bは、後述の部分円筒面36aを介してテーパ部34の部分円錐面36の下端部に連なっている。
【0040】
テーパ部34は、3つのグリップ形成部材21のグリップ爪部22が面接触的に当接する3つのテーパ平面35と、この3つのテーパ平面35の下部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面36と、部分円錐面36の下端に連なる上下に短い部分円筒面36aと、部分円錐面36の上方に連なる部分円筒面37を有している。尚、部分円筒面36aは必須ものではないので、部分円錐面36を部分円筒面36aの領域まで拡張してもよい。
テーパ平面35は、テーパ部34の上下方向の略全長に亙って形成されている。テーパ部34の下部の水平断面が、テーパ平面35と平行な辺を有し且つ頂部が円弧からなる三角形状に形成されている。スクレーパ26の近傍部における、テーパ部34の断面三角形状の各頂部に相当する部分円錐面36がスクレーパ26の内周部に当接可能である。
【0041】
図3〜
図7に示すように、クランプ状態及びアンクランプ状態のときのスクレーパ26の近傍部における、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3の断面であってクランプロッド3の軸心と直交する断面が円形に形成されている。テーパ平面35と部分円錐面36のクランプロッド3の軸心に対する傾斜角度が同じになっている(
図2参照)。尚、アンクランプ状態のときにクランプロッド3の部分円錐面36の下端部は、スクレーパ26の内周部に接触する。
【0042】
クランプ装置Cにおける、
図2,
図3のアンクランプ状態から、
図4,
図6に示すようにクランプロッド3が下方へ徐々に移動してグリップ部材2が拡径駆動されると、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3の円筒形状部の外径が徐々に拡大し、
図5,
図7に示すようにスクレーパ26の内周部が周方向と径方向に弾性変形し、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3の外周面に密着状態を維持する。
【0043】
次に、駆動手段4について説明する。
図1〜
図2に示すように、駆動手段4は、クランプロッド3をクランプ本体1に対して油圧により進退駆動する油圧シリンダで構成されている。駆動手段4は、下部本体12に形成された縦向きのシリンダ穴41と、ピストン部材42と、このピストン部材42のピストン部45の上側のクランプ用油室43と、ピストン部45の下側のアンクランプ用油室44などを備えている。
【0044】
ピストン部材42は、シリンダ穴41に油密摺動自在に装着されたピストン部45と、このピストン部45から上方へ本体筒部11a内まで延びるロッド部46を有する。ピストン部45の外周部はシール部材45aで油密に封止され、ロッド部46の外周部はシール部材46aで油密に封止されている。ピストン部45の下端部の中央部には、六角穴45bが形成されている。ロッド部46の上端側部分には、ネジ軸部47が形成され、このネジ軸部47には、逆T形のT溝49を形成するT溝形成部材48が螺合にて取り付けられている。
【0045】
このT溝形成部材48のT溝49には、クランプロッド3のT形係合部31が水平方向側方から係合されている。T溝形成部材48の下端には、環状の受圧ピストン部材51の薄肉スリーブ51cの上端で係止される被係止部48aが形成されている。T形係合部31とT溝形成部材48の間には僅かな隙間があるため、クランプロッド3は、T溝形成部材48に対して相対的に水平方向へ移動可能である。
【0046】
クランプ用油室43は、下部本体12とピストン部材42と受圧ピストン部材51で形成されている。クランプ用油室43には、ピストン部45をクランプ側(下方)へ付勢する油圧が、油圧供給源59から油路59a〜59cを介して供給可能である。アンクランプ用油室44は、下部本体12とベース部材13とピストン部45とで形成されている。アンクランプ用油室44には、ピストン部45をアンクランプ側へ付勢する油圧が、油圧供給源58から油路58aを介して供給可能である。
【0047】
次に、サポート機構5について説明する。
図2に示すように、サポート機構5は、ピストン部材42のロッド部46に可動に外嵌された環状の受圧ピストン部材51と、この受圧ピストン部材51で基端部(下端部)が支持され且つグリップ部材2の基端を支持するサポート部材52と、受圧ピストン部材51にクランプ方向と反対向きに油圧を受圧させるサポート油室53と、駆動手段4のアンクランプ用油室44からサポート油室53に通ずる油路54とを有する。サポート機構5は、グリップ部材2を拡径させてワークWの穴Hの内周面をグリップさせる際に、受圧ピストン部材51に作用する油圧力でグリップ部材2を支持する。油路54は下部本体12とベース部材13との間に形成された環状油路54aと下部本体12内に斜めに形成された絞り油路54bとを有する。
【0048】
受圧ピストン部材51は、環状ピストン部51aの上端部に形成された係止鍔部51bと、環状ピストン部51aの上端の内周部から上方へ所定長さ延びる薄肉スリーブ51cと、環状ピストン部51aの下端から下方へ連なり下端部がクランプ用油室43に臨む小径ピストン部51dを有する。受圧ピストン部材51は、ロッド部46に摺動自在に外嵌され且つ下部本体12の円筒穴55a,55bに摺動自在に内嵌されている。受圧ピストン部材51の内周部はシール部材46aで油密に封止され、外周部はシール部材12a,51eで油密に封止されている。
【0049】
受圧ピストン部材51の係止鍔部51bは、下部本体12と上部本体11とで形成された収容穴56に昇降可能に装着されている。受圧ピストン部材51が下限位置のとき、係止鍔部51bを収容穴56の下端壁で受け止め、受圧ピストン部材51が上限位置のとき、係止鍔部51bを収容穴56の上端壁で受け止める。
【0050】
サポート部材52は、本体筒部11aの内側収容穴11bに内嵌されたロッド部46とT溝形成部材48と薄肉スリーブ51cに外嵌された筒部52aと、この筒部52aの上端の水平板部52bとを有する。クランプロッド3は水平板部52bの円形穴57を貫通している。この円形穴57は、クランプロッド3を通過可能な大きさを有する。サポート部材52の上端の水平板部52bがグリップ部材2の基端鍔部23の下面に当接して支持し、筒部52aの下端は受圧ピストン部材51の環状ピストン部51aの上端に当接して支持され、サポート部材52は受圧ピストン部材51と一体的に昇降する。
【0051】
次に、加圧エア導入手段6について説明する。
図2に示すように、加圧エア導入手段6は、グリップ部材2とクランプロッド3と着座面18をエアブローする為の加圧エアを、クランプ本体1内のうちの受圧ピストン部材51よりも上方の部分に導入するものである。加圧エア導入手段6は、ベース部材13に形成されたエア通路60aであって加圧エア供給源60に接続されたエア通路60aと、上部本体11に形成された複数のエア通路60b,60cとエア噴出孔60dとを有する。 尚、エア通路60cの右端部はプラグで閉鎖されている。
【0052】
上部本体11とサポート部材52との間に環状隙間60eが形成され、サポート部材52の筒
部52aの下端近傍部に小孔60fが形成されている。加圧エア供給源60からの加圧エアは、エア通路60a〜60c、エア噴出口60dを介して環状隙間60eと小孔60fに供給され、サポート部材52の外周側と内周側の隙間を通って上方に流れ、グリップ部材2とクランプロッド3と着座面18をエアブローする。クランプ状態及びアンクランプ状態において加圧エアが供給される。アンクランプ状態のときにはグリップ部材2及びクランプロッド3とスクレーパ26の間の僅かな隙間を通って着座面18をエアブローする。
【0053】
次に、上記のクランプ装置Cの作用について説明する。
クランプ装置Cにより、ワークWをクランプする場合、最初に、クランプ用油室43の油圧をドレン圧にし、アンクランプ用油室44とサポート油室53に油圧を供給する。
すると、
図2,
図3に示すように、クランプロッド3とグリップ部材2とピストン部材42と受圧ピストン部材51が上昇して上限位置になる。このとき、グリップ部材2はスクレーパ26やOリング27により縮径状態を保持し、スクレーパ26の近傍部においては、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3の部分円錐面36とから円筒状の外形が形成されている。つまり、スクレーパ26の近傍部において、クランプロッド3と3つのグリップ形成部材21の断面であってクランプロッド3の軸心と直交する断面が円形になっている。このため、グリップ部材2及びクランプロッド3とスクレーパ26との間に殆ど隙間が生じないので、加圧エアの外界へのリーク量が僅少になり、従来の同種のクランプ装置と比較して、加圧エアの消費量が非常に僅少になる。
【0054】
次に、ワークWを搬入して、ワークWの穴Hにグリップ部材2とクランプロッド3とを挿入し、ワークWを着座面18で支持する。次に、アンクランプ用油室44の油圧をドレン圧にし、クランプ用油室43に油圧を供給し、ピストン部材3に下方向きの油圧を作用させる。すると、絞り油路54bによりサポート油室53の油圧の低下が遅延するため、受圧ピストン部材51はサポート油室53の油圧を受圧して前記の上限位置を保持し、グリップ部材2も上限位置を保持するが、ピストン部材42は下方向きの油圧により下方へ駆動されるため、クランプロッド3がグリップ部材2に対して相対的に下方へ移動する。
【0055】
その結果、クランプロッド3のテーパ部34の3つのテーパ平面35によりグリップ部材2の3つのグリップ爪部22が拡径駆動され、ワークWの穴Hの内周面にグリップ状態になり、グリップ部材2とクランプロッド3がワークWに対して相対移動不能になる。その状態から、ピストン部材42とグリップ部材2とクランプロッド3と受圧ピストン部材51は一体的に下方へ小距離(例えば、0.2〜0.5mm)だけ駆動され、ワークWが着座面18に強く押圧されたクランプ状態になる。
【0056】
このとき、スクレーパ26の近傍部においては、テーパ部34の下方への移動に伴い部分円錐面36も下方へ移動するため、グリップ形成部材21と部分円錐面36とからなる円形の水平断面の外径が徐々に大きくなり、
図3,
図5,
図7に示すように、スクレーパ26の内周部が周方向と径方向へ弾性変形し、スクレーパ26とグリップ部材2とクランプロッド3との間に隙間が殆ど生じない状態になる。
【0057】
次に、上記のクランプ装置Cの効果について説明する。
スクレーパ26の近傍部において、3つのグリップ形成部材21とクランプロッド3の断面であってクランプロッド3の軸心と直交する断面が
アンクランプ状態からクランプ状態に亙って円形に形成されたため、クランプロッド3が下方に駆動された場合に、グリップ形成部材21とクランプロッド3の円形断面の外径が拡大し、スクレーパ26の内周部が周方向と径方向に弾性変形するので、スクレーパ26とクランプロッド3間に隙間が生じない状態になる。従って、クランプ本体1内への異物の侵入を防止可能であり、クランプ状態においてエアブローを継続しても加圧エアの消費量を僅少にすることができ、省エネとなる。尚、必要に応じて、クランプ状態におけるエアブローを省略してもよい。
【0058】
スクレーパ26の近傍部において、3つのグリップ形成部材21の端縁がクランプロッド3の外面よりも突出しないため、スクレーパ26が3つのグリップ形成部材21の端縁で傷付けられることがなくなるから、スクレーパ26の耐久性を確保することができる。
アンクランプ状態のときにクランプロッド3の部分円錐面36の下端部が、スクレーパ26に接触するので、クランプ駆動に伴いクランプロッド3が下方に移動し始めた直後から、テーパ部34の部分円錐面36によりスクレーパ26の内周部を弾性変形させることができ、スクレーパ26とクランプロッド3間に殆ど隙間が生じない状態になる。
【0059】
各グリップ形成部材21のグリップ爪部22のクランプロッド3の軸心と直交する断面が、偏平D形に形成されたので、クランプロッド3のテーパ平面35にグリップ形成部材21を係合させることで、クランプロッド3とグリップ部材2の断面であってクランプロッド3の軸心と直交する断面を円形に形成することができる。
テーパ平面35と部分円錐面36のクランプロッド3の軸心に対する傾斜角度が同じになるように形成したので、クランプロッド3の下方への移動に伴いグリップ形成部材21が拡径しても、グリップ形成部材21とクランプロッド3の断面であってクランプロッド3の軸心に直交する断面を円形に維持することができる。従って、スクレーパ26の内周部を弾性変形させることができるので、スクレーパ26とクランプロッド3間に殆ど隙間が生じない。
【0060】
グリップ部材2は、クランプロッド3の外周側に周方向に等間隔に配設された3つのグリップ形成部材21で構成され、中段ロッド部33に各テーパ平面35の下端部に連なり且つクランプロッド3の軸心と平行なストレート面33aが形成されたので、小型のクランプ装置Cにおいても、ストレート面33aに対応するようにグリップ形成部材21を配置するスペースを確保しつつ、中段ロッド部33の水平断面積を極力大きくしてクランプロッド3の引っ張り強度を確保することができる。
【0061】
テーパ部34の下部の水平断面が、テーパ平面35と平行な辺を有し且つ頂部が円弧からなる三角形状に形成されたので、3つのグリップ形成部材21を係合させた状態において、スクレーパ26の近傍部における、グリップ形成部材21とクランプロッド3の断面であってクランプロッド3の軸心と直交する断面を円形にすることができるため、スクレーパ26の耐久性を確保することができる。
【0062】
以下の実施例では、上記のクランプ装置Cを部分的に変更した例及びこれらの例を部分的に変更した種々の例について説明するが、実施例1と同様の構成要素には同様の参照符号を付して説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【実施例2】
【0063】
図11〜
図17に示すように、このクランプ装置CAは、クランプ本体1と、グリップ部材2Aと、クランプロッド3Aと、このクランプロッド3Aを進退駆動する駆動手
段などを有するが、このクランプ装置CAは、グリップ部材2Aとクランプロッド3Aを変更した以外は、前記実施例1と同様であるので、グリップ部材2Aとクランプロッド3Aについてのみ説明する。
【0064】
先ず、グリップ部材2Aについて説明する。
図12〜
図17に示すように、グリップ部材2Aは、クランプロッド3Aの両側に対向状に配設された1対の鋼製のグリップ形成部材21Aで構成されている。1対のグリップ形成部材21Aは、径方向に拡縮可能である。グリップ形成部材21Aの上部にはグリップ爪部22Aが形成され、グリップ形成部材21Aの下端部には、半円円弧状の水平な基端鍔部23Aが形成されている。グリップ形成部材21Aの下半部の内面には、ストレート平面24Aが形成されている。
【0065】
グリップ爪部22Aの断面であってクランプロッド3Aの軸心と直交する断面(水平断面)が、偏平D形に形成されている。
グリップ形成部材21Aの上半部の内面には、上方程クランプロッド3Aの軸心から離隔するテーパ面22
aAが形成され、このテーパ面22
aAがクランプロッド3Aのテーパ部34Aの1対のテーパ平面35Aに密着状に夫々係合するようになっている。
【0066】
次に、クランプロッド3Aについて説明する。
図12〜
図17に示すように、クランプロッド3Aは、1対のグリップ部材2Aに係合して鉛直方向に延びている。クランプロッド3Aは、下端側部分のT形係合部と、このT形係合部から上方に連なる小径ロッド部32と、この小径ロッド部32から上方へ連なる中段部分の中段ロッド部33Aと、この中段ロッド部33Aから上方へ連なる上端側部分に上方程外径が拡大するように形成され且つ1対のグリップ形成部材21Aを外径拡大側へ駆動可能なテーパ部34Aとを備えている。
【0067】
中段ロッド部33Aは、小径ロッド部32より大径のロッド状に形成され、その側面にクランプロッド3Aの軸心と平行な1対のストレート面33
aAが対向状に形成されている。ストレート面33
aAは、各テーパ平面35Aの下端部に連なり且つクランプロッド3Aの軸心と平行に形成されている。このストレート面33
aAに、グリップ形成部材21Aのストレート平面24Aが面接触的に当接している。
【0068】
テーパ部34Aは、1対のグリップ形成部材21Aのグリップ爪部22Aが当接する上方程離隔距離が拡大する1対のテーパ平面35Aと、これらテーパ平面35Aの下半部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面36Aと、この部分円錐面36Aの上方に連なる部分円筒面37Aを有している。テーパ平面35Aは、テーパ部34Aの上下方向の全長に亙って形成されている。テーパ部34Aの下半部の水平断面がテーパ平面35Aと平行な長辺を有する長円形に形成されている。この断面長円形の長手方向の両端部に相当する部分円錐面36Aが、スクレーパ26の内周部に接触している。
【0069】
図12〜
図17に示すように、スクレーパ26の近傍部における、1対のグリップ形成部材21Aとクランプロッド3Aの断面であってクランプロッド3Aの軸心と直交する断面が円形に形成されている。テーパ平面35Aと部分円錐面36Aのクランプロッド3Aの軸心に対する傾斜角度が同じになるように形成されている(
図12参照)。アンクランプ状態のときにクランプロッド3Aの部分円錐面36Aの下端部は、スクレーパ26の内周部に接触している。
【0070】
クランプ装置CAにおいて、
図12,
図13のアンクランプ状態から、
図14,
図16に示すようにクランプロッド3Aが下方へ徐々に移動してグリップ部材2Aが拡径駆動されると、1対のグリップ形成部材21Aとクランプロッド3Aの円形断面の外径が径方向に徐々に拡大し、
図15,
図17に示すようにスクレーパ26の内周部が周方向と径方向に弾性変形する。その他の構成、作用及び効果は前記実施例1とほぼ同様であるので説明は省略する。
【実施例3】
【0071】
図18〜
図24に示すように、このクランプ装置CBは、クランプ本体1と、グリップ部材2Bと、クランプロッド3Bと、このクランプロッド3Bを進退駆動する駆動手
段などを有するが、このクランプ装置CBは、グリップ部材2Bとクランプロッド3Bを変更した以外は、前記実施例1と同様であるので、本実施例ではグリップ部材2Bとクランプロッド3Bについてのみ説明する。
【0072】
先ず、グリップ部材2Bについて説明する。
図19〜
図24に示すように、グリップ部材2Bは、クランプロッド3Bの外周側に配設された1つの鋼製のグリップ形成部材21Bで構成されている。1つのグリップ形成部材21Bは、径方向に拡縮可能である。グリップ形成部材21Bの上部にはグリップ爪部22Bが形成され、グリップ形成部材21Bの下端部には、半円円弧状の水平な基端鍔部23Bが形成されている。グリップ形成部材21Bの下半部の内面には、ストレート平面24Bが形成されている。
【0073】
グリップ爪部22Bの断面であってクランプロッド3Bの軸心と直交する断面(水平断面)が、偏平D形に形成されている。
グリップ形成部材21Bの上半部の内面には、上方程クランプロッド3Bの軸心から離隔するテーパ面22
aBが形成され、このテーパ面22
aBがクランプロッド3Bのテーパ部34Bの1つのテーパ平面35Bに密着状に係合するようになっている。
【0074】
次に、クランプロッド3Bについて説明する。
図19〜
図24に示すように、クランプロッド3Bは、グリップ形成部材21Bに係合して鉛直方向に延びている。クランプロッド3Bは、下端側部分のT形係合部と、このT形係合部から上方に連なる小径ロッド部32と、この小径ロッド部32から上方へ連なる中段部分の中段ロッド部33Bと、この中段ロッド部33Bから上方へ連なる上端側部分に上方程外径が拡大するように形成され且つ1つのグリップ形成部材21Bを外径拡大側へ駆動可能なテーパ部34Bとを備えている。
【0075】
中段ロッド部33Bは、小径ロッド部32より大径のロッド状に形成され、その側面にクランプロッド3Bの軸心と平行な1つのストレート面33
aBが形成されている。ストレート面33
aBは、テーパ平面35Bの下端部に連なり且つクランプロッド3Bの軸心と平行に形成されている。このストレート面33
aBに、グリップ形成部材21Bのストレート平面24Bが面接触的に当接している。
【0076】
テーパ部34Bは、1つのグリップ形成部材21Bのグリップ爪部22Bが当接する上方程離隔距離が拡大する1つのテーパ平面35Bと、
このテーパ平面35Bの下半部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面36Bと、この部分円錐面36Bの上方に連なる部分円筒面37Bを有している。テーパ平面35Bは、テーパ部34Bの上下方向の全長に亙って形成されている。テーパ部34Bの下半部の水平断面がテーパ平面35Bと平行な辺を有するD形に形成されている。この断面D形の湾曲部側に相当する部分円錐面36Bが、スクレーパ26の内周部に接触している。
【0077】
図19〜
図24に示すように、スクレーパ26の近傍部における、1つのグリップ形成部材21Bとクランプロッド3Bの断面であってクランプロッド3Bの軸心と直交する断面が円形に形成されている。テーパ平面35Bと部分円錐面36Bのクランプロッド3Bの軸心に対する傾斜角度が同じになるように形成されている(
図19参照)。尚、アンクランプ状態のときにクランプロッド3Bの部分円錐面36Bの下端部は、スクレーパ26の内周部に接触している。
【0078】
クランプ装置CBにおいて、
図19,
図20のアンクランプ状態から、
図21,
図23に示すようにクランプロッド3Bが下方へ徐々に移動してグリップ部材2Bが拡径駆動されると、1つのグリップ形成部材21Bとクランプロッド3Bの円形断面の外径が径方向に均等に徐々に拡大し、
図22,
図24に示すようにスクレーパ26の内周部が周方向へ徐々に引っ張られて弾性変形する。その他の構成、作用及び効果は前記実施例1とほぼ同様であるので説明は省略する。
【実施例4】
【0079】
図25〜
図31に示すように、このクランプ装置CCは、クランプ本体1Cと、グリップ部材2Cと、クランプロッド3Cと、このクランプロッド3Cを進退駆動する駆動手段4Cなどを有する。クランプ本体1Cは、上部本体11Cと下部本体12Cとで構成され、クランプ本体1Cがベース部材13Cに組み付けられる。
【0080】
上部本体11Cは平面視にて両端の角部が湾曲状に形成されたほぼ長方形であり、この上部本体11Cは4つのボルト穴9Cに挿入される4つのボルトでベース部材13Cに固定される。下部本体12Cはシリンダ穴61を形成する筒状部材であり、この下部本体12Cの上端部が上部本体11Cの下面側の凹部15Cに嵌合され、6つのボルト16Cにより上部本体11Cに固定されている。
【0081】
上部本体11Cの中心部分の挿通孔17Cを上下に貫通するようにグリップ部材2Cとクランプロッド3Cが配設されている。上部本体11Cの上面には、グリップ部材2Cを囲む4つの円弧状の着座面18Cが形成され、これら着座面18CにワークWを着座させた状態で、ワークWをクランプする。上部本体11Cの上面には、エアブローされた加圧エアが流れる4つの凹溝19Cが十文字状に形成されている。
【0082】
次に、グリップ部材2Cについて説明する。
図26〜
図31に示すように、グリップ部材2Cは、クランプロッド3Cと共にクランプ本体1Cの上端部分の挿通孔17Cを挿通して上方へ延びワークWの穴Hの内周面をグリップ可能である。このグリップ部材2Cは、クランプロッド3Cの外周側に周方向に等間隔に配設された4つのグリップ形成部材21Cで構成されている。4つのグリップ形成部材21Cは、径方向に拡縮可能である。グリップ形成部材21Cの上部にはグリップ爪部22Cが形成され、グリップ形成部材21Cの下端部には、円弧状の水平な基端鍔部23Cが形成されている。4つのグリップ形成部材21Cの下半部の内面には、ストレート平面24Cが形成されている。
【0083】
グリップ爪部22Cの断面であってクランプロッド3Cの軸心と直交する断面(水平断面)が、偏平D形に形成されている。
グリップ形成部材21Cの上半部の内面には、上方程クランプロッド3Cの軸心から離隔するテーパ面22
aCが形成され、このテーパ面22
aCがクランプロッド3Cのテーパ部34Cのテーパ平面35Cに密着状に係合するようになっている。グリップ爪部22Cの外周面には、ワークWの穴の内周面をグリップし易くする3段の歯が形成されている。
【0084】
図26に示すように、上部本体11Cの挿通孔17Cのうちグリップ部材2C及びクランプロッド3Cの外周側の環状隙間を塞ぐスクレーパ26Cが装着されている。スクレーパ26Cは、4つのグリップ形成部材21Cとクランプロッド3Cを束ねるものである。グリップ部材2Cの下部には、4分割された4つのグリップ形成部材21Cを縮径方向へ付勢するOリング27Cが装着されている。
【0085】
グリップ部材2Cの基端鍔部23Cは、上部本体11Cの円形凹部28Cに収容され、基端鍔部23Cの外周側には隙間が形成されている。グリップ部材2Cの基端鍔部23Cは、円形凹部28Cの上壁部とサポート機構5Cの環状受圧部材71の水平板部71cとの間に水平方向へ可動に挟着され、環状受圧部材71で支持されている。グリップ部材2Cは、環状受圧部材71と一体的に昇降可能であると共に、円形凹部28Cの外周部の環状隙間とスクレーパ26Cの弾性変形を介して、クランプ装置CCの軸心と直交する水平方向へ移動可能に装着されている。
【0086】
次に、クランプロッド3Cについて説明する。
図26〜
図31に示すように、クランプロッド3Cは、グリップ部材2Cに係合して鉛直方向に延びている。クランプロッド3Cは、下端側部分の大径鍔部31Cと、この大径鍔部31Cから上方に連なる大径ロッド部32Cと、この大径ロッド部32Cから上方へ連なる中段部分の中段ロッド部33Cと、この中段ロッド部33Cから上方へ連なる上端側部分に上方程外径が拡大するように形成され且つ4つのグリップ形成部材21Cを外径拡大側へ駆動可能なテーパ部34Cとを備えている。大径ロッド部32Cの水平断面は円形である。
【0087】
中段ロッド部33Cは、大径ロッド部32Cより僅かに大径に形成されている。この中段ロッド部33Cの側面に、クランプロッド3Cの軸心と平行な4つのストレート面33
aCが周方向に等間隔に形成されている。ストレート面33
aCは、中段ロッド部33Cの上下方向のほぼ全長に亙って形成されている。ストレート面33
aCは、各テーパ平面35Cの下端部に連なり且つクランプロッド3Cの軸心と平行になっている。このストレート面33
aCに、グリップ形成部材21Cのストレート平面24Cが面接触的に当接している。中段ロッド部33Cのストレート面33
aCを除く角部は、テーパ部34Cの部分円錐面36Cの下端部に連なっている。
【0088】
テーパ部34Cは、4つのグリップ形成部材21Cのグリップ爪部22Cが面接触的に当接する4つのテーパ平面35Cと、この4つのテーパ平面35Cの下部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面36Cと、この部分円錐面36Cの上方に連なる部分円筒面37Cを有している。テーパ平面35Cは、テーパ部34Cの上下方向のほぼ全長に亙って形成されている。テーパ部34Cの下部の水平断面が、テーパ平面35Cと平行な辺を有し且つ頂部が円弧からなる四角形状に形成されている。スクレーパ26Cの近傍部における、テーパ部34Cの断面四角形状の各頂部に相当する部分円錐面36Cは、スクレーパ26Cの内周部に接触している。
【0089】
図26〜
図31に示すように、スクレーパ26Cの近傍部における、4つのグリップ形成部材21Cとクランプロッド3Cの断面であってクランプロッド3Cの軸心と直交する断面が円形に形成されている。テーパ平面35Cと部分円錐面36Cのクランプロッド3Cの軸心に対する傾斜角度が同じになるように形成されている(
図26参照)。尚、アンクランプ状態のときにクランプロッド3Cの部分円錐面36Cの下端部は、スクレーパ26Cの内周部に接触している。
【0090】
クランプ装置CCにおける、
図26,
図27のアンクランプ状態から、
図28,
図30に示すようにクランプロッド3Cが下方へ移動してグリップ部材2Cが拡径駆動されると、4つのグリップ形成部材21Cとクランプロッド3Cの円形断面の外径が径方向に徐々に拡大し、
図29,
図31に示すようにスクレーパ26Cの内周部が周方向と径方向へ弾性変形する。
【0091】
次に、駆動手段4Cについて説明する。
図26に示すように、駆動手段4は、クランプロッド3Cをクランプ本体1Cに対して油圧で進退駆動する油圧シリンダで構成されている。駆動手段4Cは、下部本体12Cとベース部材13Cとで形成された立向きのシリンダ穴61と、ピストン部65とこのピストン部65から上方へ延びる筒状ピストンロッド66とからなるピストン部材62と、ピストン部65の上側のクランプ用油室63及びピストン部65の下側のアンクランプ用油室64とを備えている。クランプ用油室63には、油圧供給源(図示略)から油路を介して油圧が供給される。アンクランプ用油室64は、油圧供給源81から油路81aを介して油圧が供給される。
【0092】
シリンダ穴61の底面はベース部材13Cで塞がれている。ピストン部材62はベース部材13Cの穴の底壁面で受け止められて下限位置になる。ピストン部材62には、上部の小径孔62aと、中段部の中径孔62bと、下部の大径孔62cとが形成されている。中径孔62bの下部と大径孔62cには封鎖部材67が装着され、ストップリング68で抜け止めされている。ピストン部65の外周部はシール部材で油密に封止され、筒状ピストンロッド66の外周部はシール部材で油密に封止され、封鎖部材67の外周部はシール部材で油密に封止されている。
【0093】
クランプロッド3Cの大径ロッド部32Cが小径孔62a内に位置し、大径鍔部31Cが中径孔62b内に位置している。大径ロッド部32Cと小径孔62aの内周面との間には環状隙間が形成され、大径ロッド部32Cの外周の環状溝に太いOリング69が装着され、このOリング69は大径ロッド部32Cと筒状ピストンロッド66の間に僅かに圧縮状態に装着されている。
【0094】
大径鍔部31Cは中径孔62bの上壁と封鎖部材67の間に水平方向へ可動に装着されている。大径鍔部31Cの外周面と中径孔62bの内周面との間には僅かな隙間がある。それ故、クランプロッド3Cは、ピストン部材62と一体的に昇降移動するが、ピストン部材62に対して相対的に駆動手段4Cの軸心と直交する水平方向へ小距離だけ移動可能である。グリップ部材2Cはクランプロッド3Cと一体的に上記軸心と直交する水平方向へ移動可能である
【0095】
次に、サポート機構5Cについて説明する。
図26に示すように、サポート機構5Cは、環状の受圧ピストン部材71と、この受圧ピストン部材71の筒部71aにクランプ方向と反対方向向きに油圧を受圧させるサポート油室72と、油圧シリンダのアンクランプ用油室64からサポート油室72に通ずる環状油路73aと斜め絞り油路73bからなる油路73とを有する。
【0096】
受圧ピストン部材71は、筒部71aと、筒部71aの上端部に形成された係止鍔部71bと、筒部71aの上端に一体形成された水平板部71cと、筒部71aの下端部から下方へ連なる下端部がクランプ用油室63に臨む筒部71dを有する。筒部71aの下端外周側には環状受圧面71eが形成されている。受圧ピストン部材71は、筒状ピストンロッド66に摺動自在に外嵌され且つ下部本体12Cの円筒穴70a,70bに摺動自在に内嵌されている。
【0097】
受圧ピストン部材71の係止鍔部71bは、下部本体12Cと上部本体11Cとで形成された収容穴56Cに上下方向に昇降可能に装着されている。受圧ピストン部材71が下限位置のとき、係止鍔部71bを収容穴56Cの下端壁で受け止め、受圧ピストン部材71が上限位置のとき、水平板部71cを収容穴56Cの上端壁で受け止める。
【0098】
サポート油室72は、筒部71aと筒部71dと下部本体12Cとで形成されている。筒部71dの外周側はシール部材で油密に封止されている。筒部71dは、下部本体12Cと筒状ピストンロッド66とで形成される円筒穴70bに挿入されてクランプ用油室63の油圧を受圧する。
【0099】
尚、図示省略したが、前記実施例1と同様に、加圧エア導入手段がクランプ本体1C内に設けられている。このクランプ装置CCは、前記実施例1のクランプ装置Cと比較して、高さ方向に対しては小型に構成されているが、作用及び効果は前記実施例1とほぼ同様であるので詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0100】
図32〜
図43に示すように、このクランプ装置CDは、クランプ本体101と、グリップ部材102と、クランプロッド103と、このクランプロッド103を進退駆動する駆動手段104と、スクレーパ126と、案内支持機構128などを有する。クランプ本体101は、上部本体111と下部本体112とで構成され、クランプ本体101がベース部材113に組み付けられる。
【0101】
上部本体111は、平面視にてほぼ正方形の鋼製の部材である。この上部本体111は、4つのボルト穴114に挿入される4本のボルトでベース部材113に固定される。下部本体112はシリンダ穴141を形成する筒状部材であり、この下部本体112の上端部が上部本体111の下面側の凹部115に嵌合され、4本のボルト116により固定されている。
【0102】
上部本体111の中心部分の挿通孔117を上下に貫通するようにグリップ部材102が配設されている。上部本体111の上面には、グリップ部材102を囲む4つの円弧状の着座面118が形成され、ワークWをクランプした状態では、これら着座面118にワークWが着座している。上部本体111の上面には、エアブローされた加圧エアが流れる4つの凹溝119が十文字状に形成されている。4つの着座面118と4つの凹溝119を除き、上部本体111の上面は、緩い傾斜角の部分円錐面に形成されている。
【0103】
次に、グリップ部材102について説明する。
図
33〜図
43に示すように、グリップ部材102は、クランプロッド103と共に、クランプ本体101の上端部分の挿通孔117を挿通してワークWの穴Hに挿入され、穴Hの内周面をグリップ可能である。グリップ部材102は、クランプロッド103の両側に対向状に配設された1対の鋼製のグリップ形成部材121で構成されている。1対のグリップ形成部材121は、径方向に拡縮可能である。グリップ形成部材121の上部にはグリップ爪部122が形成され、グリップ形成部材121の下端部には半円円弧状の水平な基端鍔部123が形成されている。1対のグリップ形成部材121の下半部の内面には、ストレート平面124が形成されている。
【0104】
グリップ爪部122の上下方向の長さは、グリップ部材102の全高の約1/3である。グリップ爪部122のクランプロッド103の軸心と直交する断面は偏平D形であり、このグリップ爪部122の内面には、上方程クランプロッド103の軸心から離隔するテーパ面122bが形成され、このテーパ面122bがクランプロッド103のテーパ部134のテーパ平面135に密着状に係合するようになっている。グリップ爪部122の外周面には、ワークWの穴Hの内周面をグリップし易くする2段の歯122aが形成されている。
【0105】
図35に示すように、グリップ形成部材121の基端鍔部123の周方向の両端部が、グリップ爪部122よりもクランプロッド103側へ突出している。1対の基端鍔部123の間に僅かな隙間があけられている。
【0106】
図33、
図34に示すように、クランプ本体101の内部には、1対のグリップ形成部材121の1対の基端鍔部123を水平方向へ移動可能に案内し支持する案内支持機構128が設けられている。基端鍔部123は、上部本体111の円形凹部129に収容され、円形凹部129の上壁部と環状受圧部材151の水平板部162との間に水平方向に可動に挟着されている。この円形凹部129と水平板部162が、案内支持機構128に相当する。
【0107】
図32〜図
34,図36〜図43に示すように、上部本体111の挿通孔117のうちグリップ部材102及びクランプロッド103の外周側の環状隙間を塞ぐスクレーパ126であって、グリップ部材2及びクランプロッド103の外周面に摺接するゴムや合成樹脂等の弾力性のある材料からなるスクレーパ126が装着されている。スクレーパ126は、グリップ部材102及びクランプロッド103の外周側の環状隙間から切粉等の異物が内部に侵入するのを防ぎ、エアブローのエアの漏出を少なくし、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103を束ねるものである。グリップ部材102の下部には、2分割された1対のグリップ形成部材122を縮径方向(相接近方向)へ付勢するOリング127が装着されている。
【0108】
グリップ部材102は、駆動手段104により環状受圧部材151と一体的に小距離だけ昇降可能であり、円形凹部129の外周部の環状隙間とスクレーパ126の弾性変形を介して、駆動手段104の軸心(つまり、クランプ装置CDの軸心)と直交する水平方向へ小距離だけ移動可能に装着されている。
【0109】
次に、クランプロッド103について説明する。
図34〜図
34,図36〜図43に示すように、クランプロッド103は、グリップ部材102のストレート平面124を挿通し且つグリップ部材102に係合して鉛直方向に延びている。クランプロッド103は、下端側部分の大径鍔部131と、この大径鍔部131から上方に連なる大径ロッド部132と、この大径ロッド部132からテーパロッド部132aを介して上方へ連なる中段部分の中段ロッド部133と、この中段ロッド部133から上方へ連なる上端側部分に形成され且つ1対のグリップ形成部材121を拡径させるテーパ部134とを備えている。大径ロッド部132の水平断面は円形である。
【0110】
中段ロッド部133の水平断面が、テーパ部134のテーパ平面135と平行な長辺を有する偏平な長円形に形成されている。中段ロッド部133の対向する長辺側側面133aの上端部は、テーパ部134のテーパ平面135の下端部に連なっている。中段ロッド部133の対向する短辺側部分円筒面133bの上端部は、テーパ部134の部分円錐面136の下端部に連なっている。長辺側側面133aと短辺側部分円筒面133bの下端部は、テーパロッド部132aの上端の外表面に連なっている。
【0111】
図33、
図34、
図36〜
図40に示すように、テーパ部134は、1対のグリップ形成部材121のグリップ爪部122が当接する上方程離隔距離が拡大する1対のテーパ平面135と、これらテーパ平面135の下半部の端縁同士間に形成された上方程半径が大きくなる部分円錐面136と、部分円錐面136の上方に連なる部分円筒面137を有している。テーパ平面135は、テーパ部134の上下方向の全長に亙って形成されている。テーパ部134の上端中央部にはセンター孔134aが形成されている。テーパ部134の下半部の水平断面がテーパ平面135と平行な長辺を有する長円形に形成されている。
【0112】
スクレーパ126の近傍部における、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103の外形が円筒状に形成されている。つまり、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103の断面であってクランプロッド103の軸心と直交する断面が円形に形成されている。グリップ部材102が拡径駆動される際に、この円筒状の外形が拡大し、
図37,
図40,
図43に示すように、スクレーパ126の内周部が周方向と径方向へ弾性変形する。
【0113】
次に、駆動手段104について説明する。
図33,
図34,図38,
図41に示すように、駆動手段104は、グリップ部材102とクランプロッド103とを軸心方向(上下方向)に進退駆動するものであり、油圧シリンダの油圧力でクランプ駆動し、コイルバネ147,148の弾性力でクランプ解除駆動するものである。
【0114】
この駆動手段104は、下部本体112に形成された縦向きのシリンダ穴141と、このシリンダ穴141に装着されたピストン部143とこのピストン部143から上方へ延びる筒状ピストンロッド144とを含む筒状のピストン部材142と、ピストン部材142の上側のクランプ用油室145と、ピストン部材142の下側のバネ収容室146と、バネ収容室146に圧縮状に収容された小径のコイルバネ147及び大径のコイルバネ148などを備えている。クランプ用油室145は、下部本体112とピストン部材142と受圧ピストン部材151とで形成されている。
【0115】
シリンダ穴141の下端部に閉塞部材152が装着され、閉塞部材152は、ストップリング153で抜け止めされ、回転規制ピン154で回転規制されている。閉塞部材152の外周部は、シール部材152aで気密に封止されている。尚、ピストン部材142が下限位置のとき、閉塞部材152の上端面で受け止められる。コイルバネ147,148の下端は閉塞部材152で受け止められ、コイルバネ147の上端はクランプロッド103の大径鍔部131で受け止められ、コイルバネ148の上端はピストン部材142で受け止められている。クランプロッド103はコイルバネ147で上方へ付勢されて筒状ピストンロッド144の下端に当接している。ピストン部材142は、コイルバネ147,148で上方(クランプ解除側)へ付勢されている。
【0116】
ピストン部材142には、上部の小径孔155と、中段部の中径孔156と、下部の大径孔157とが形成されている。ピストン部材142の中段部外周には、テーパ外周面158が形成されている。ピストン部材142の外周部は、シール部材142a,142bで油密に封止されている。
【0117】
クランプロッド103の大径鍔部131が中径孔156内に収容され、クランプロッド103の大径ロッド部132が小径孔155内に位置している。大径鍔部131の外周側には環状隙間があり、大径ロッド部132の外周側には環状隙間がある。円形穴163の内のクランプロッド103の外周側には環状隙間がある。それ故、クランプロッド103は、コイルバネ147の付勢力とピストン部材142に作用する油圧力によりピストン部材142と一体的に昇降移動し、ピストン部材142に対して相対的に駆動手段104の軸心(つまり、クランプ装置CDの軸心)と直交する水平方向へ小距離だけ移動可能である。
【0118】
受圧ピストン部材151は、筒部161と、この筒部161の上端に連なる水平板部162とを有し、この水平板部162の上面にグリップ部材102の基端鍔部123が載置されて支持されている。水平板部162の中心部の円形穴163に、クランプロッド103の中段ロッド部133が遊嵌状に挿通し、水平板部162の外周部には、筒部161よりも僅かに大径の係止鍔162aが形成されている。シリンダ穴141は、テーパ状の内周面を有する中段シリンダ穴164と、上端側部分に形成された上部シリンダ穴165とを有する。
【0119】
上部本体111には、上部シリンダ穴165の上端に連なる収容穴166が形成されている。この収容穴166の深さは係止鍔162aの厚さよりも僅かに大きい。受圧ピストン部材151の筒部161は、上部シリンダ穴165の内周面と筒状ピストンロッド144間の筒状シリダン穴に上下方向に摺動自在に装着され、筒部161の内周側はシール部材142aで封止され、外周側はシール部材112aで封止されている。水平板部162は、収容穴166に上下方向に可動に装着されている。
【0120】
受圧ピストン部材151の筒部161の下端は、クランプ用油室145に臨んでその油圧を受圧する。クランプ用油室145は、下部本体112に形成された油路171、下部本体112とベース部材113間の環状隙間172、ベース部材113内に形成された油路173を介して油圧供給源(図示略)に接続されている。
【0121】
図32、
図33、
図38、
図41に示すように、ワークWをクランプした状態で、ワークWの下面が着座面118に密着したことを検出する着座センサが設けられている。この着座センサは、着座面118に開口した加圧エア噴出孔176と、この加圧エア噴出孔176に連通する上部本体111内及び下部本体112内のエア通路177,178と、下部本体112とベース部材113間の環状隙間179と、ベース部材113内のエア通路180と、これらのエア通路を介して加圧エア噴出孔176に加圧エア供給源(図示略)から加圧エアを供給する状態においてエア通路180内の加圧エアの圧力が設定圧以上に昇圧したことを検出する圧力スイッチ(図示略)等で構成されている。
【0122】
図33,
図34,
図38,
図41に示すように、ベース部材113に下部本体112を装着する装着穴が形成され、この装着穴は上部の大径穴113aと、中段部に形成され且つ大径穴113aよりも僅かに小径の中径穴113bと、下端側部分に形成され且つ中径穴113bより僅かに小径の小径穴113cとを有する。下部本体112は、その上半部に形成された大径部112eと、その下半部に大径部112eよりも小径に形成された小径部112fとを備えている。大径部112eは、大径穴113aと中径穴113bの上端部に内嵌され、この大径部112eの外周面と大径穴113aの内周面間には所定幅の環状隙間179が形成され、大径部112eの上端近傍部と下端部にはシール部材112b,112cが装着されている。
【0123】
小径部112fは、中径穴113bと小径穴113cに内嵌され、小径部112fの外周面と中径穴113bの内周面間には環状隙間172が形成され、小径穴113cの上端部に対応する部位において小径部112fにはシール部材112dが装着されている。
【0124】
閉塞部材152の中央部にはエア供給孔181が形成され、クランプロッド103内にはエア通路182が形成されている。エア供給孔181は、下部本体112とベース部材113間の下端隙間183及び環状隙間184、ベース部材113内のエア通路185を介して加圧エア供給源に接続されている。加圧エア供給源から供給される加圧エアが、エア通路185、下端隙間183、エア供給孔181、バネ収容室146、クランプロッド103内のエア通路182、小径孔155、円形穴163、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103間の隙間を通って、4つの着座面118の方へ流れ、4つの着座面118をエアブローする。
【0125】
下部本体112の外周部は、複数のシール部材112b〜112dで気密又は油密に封止されている。上記環状隙間172,179,184は下方の環状隙間程小径に形成されているので、クランプ本体101をベース部材113の装着穴113aに組み付ける際に、油路173とエア通路180,185が環状隙間172,179,184に開口するエッジ部により、シール部材112b〜112dが損傷するのを確実に防止できる。しかも、油路173とエア通路180,185をベース部材113に形成する際に、それらを、夫々、環状隙間172,179,184に連通させればよいため、油路173とエア通路180,185の配置や方向の自由度(つまり、設計の自由度)が向上する。特に、ワークWが着座面118の一部分にしか当接されない場合であっても、環状隙間179を介して加圧エア噴出孔176に加圧エアが供給される構造なので、クランプ本体101の周方向の位置を調整するだけで、加圧エア噴出孔176の位置をワークWの形状に応じて調整することができる。
【0126】
上記のクランプ装置CDの作用について説明する。
クランプ装置CDにより、ワークWをクランプする場合、最初に、クランプ用油室145の油圧をドレン圧にする。すると、バネ収容室146内のコイルバネ147,148の付勢力により、
図33,図34,図36,図37に示すように、クランプロッド103とグリップ部材102と筒状ピストン部材142と受圧ピストン部材151が上昇して上限位置になる。このとき、グリップ部材102はスクレーパ126やOリング127により縮径状態を保持し、スクレーパ126の近傍部においては、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103の1対の短辺側部分円筒面133bとからなる円筒状の外形が形成されている(
図37参照)。つまり、クランプロッド103と1対のグリップ形成部材121の断面であってクランプロッド103の軸心と直交する断面が円形になっている。このため、クランプロッド103と1対のグリップ形成部材121とスクレーパ126の間に隙間が殆ど生じることがないから、エアブローの加圧エアの外界へのリーク量が僅少になり、加圧エアの消費量が非常に少なくなる。
【0127】
次に、ワークWを搬入して、ワークWの穴Hにグリップ部材102とクランプロッド103とを挿入し、ワークWを着座面118で支持する。次に、クランプ用油室145に油圧を供給し、筒状ピストン部材142に下方向きの油圧力を作用させる。すると、受圧ピストン部材151はクランプ用油室145の油圧を受圧して前記の上限位置を保持し、グリップ部材102も上限位置を保持するが、筒状ピストン部材142は下方向きの油圧力により、コイルバネ147,148の付勢力に抗して下方へ駆動されるため、クランプロッド103がグリップ部材102に対して相対的に下方へ移動する。
【0128】
その結果、クランプロッド103のテーパ部134の1対のテーパ平面135によりグリップ部材102の1対のグリップ爪部122が拡径駆動されて、ワークWの穴Hの内周面に食いついて係合状態(グリップ状態)になり、グリップ部材102は、クランプロッド103と相対移動不能になる。その状態から、
図38〜
図40に示すように、筒状ピストン部材142とグリップ部材102とクランプロッド103と受圧ピストン部材151は一体的に下方へ小距離(例えば、0.2mm)だけ駆動され、ワークWが着座面118に強く押圧されたクランプ状態になって停止する。このとき、スクレーパ126の近傍部においては、テーパ部134の下方への移動に伴い部分円錐面136の直径が大きくなるため、グリップ形成部材121と部分円錐面136との円形断面の外径が大きくなり、スクレーパ126の内周部が周方向と径方向へ弾性変形し、スクレーパ126とグリップ部材102とクランプロッド103との間に隙間が生じない状態になる。
【0129】
尚、ワークWをセットしない状態でのクランプ装置CDのフルストローク状態では、クランプ用油室145に油圧を供給すると、筒状ピストン部材142には下方向きの油圧力が作用し、
図41〜
図43に示すように、受圧ピストン部材151とグリップ部材102は上限位置を保持したまま、筒状ピストン部材142は下限位置に移動して閉塞部材152に当接し、クランプロッド103のテーパ部134によりグリップ部材102のグリップ爪部122が外径拡大側へ最大限拡径駆動される。このとき、スクレーパ126の近傍部においては、グリップ形成部材121と部分円錐面136との円形断面の外径が最大になり、スクレーパ126が周方向と径方向へ最大限弾性変形し、スクレーパ126とグリップ部材102とクランプロッド103との間に隙間が生じない状態になる。
【0130】
上記のクランプ装置CDの効果について説明する。
スクレーパ126の近傍部において、1対のグリップ形成部材121の端縁がクランプロッド103の外面よりも突出しないため、スクレーパ126が1対のグリップ形成部材121の端縁で傷付けられることがなくなるから、スクレーパ126の耐久性を確保することができる。
【0131】
中段ロッド部133の水平断面が、テーパ平面135と平行な長辺を有する偏平な長円形に形成されたので、小型のクランプ装置においても、中段ロッド部133の両側に1対のグリップ形成部材121を配置するスペースを確保しつつ、中段ロッド部133の水平断面積を極力大きくしてクランプロッド103の引っ張り強度を確保することができる。
【0132】
テーパ部134の下半部の水平断面が、テーパ平面135と平行な長辺を有する長円形に形成されたので、これらテーパ平面135の下半部の端円同士間に上方程半径が大きくなる部分円錐面136を形成することができ、スクレーパ126の近傍部における、1対のグリップ形成部材121とクランプロッド103の断面を円形に形成することができるため、スクレーパ126の耐久性を確保することができる。その他の効果は、前記実施例1とほぼ同様の効果を奏する。
【0133】
ところで、グリップ形成部材121の基端鍔部123が案内支持機構128により水平方向へ移動可能に案内し支持されているものの、クランプ駆動時、グリップ形成部材121には転倒モーメントが作用する。小型のクランプ装置では小型のグリップ形成部材が採用されるが、グリップ形成部材121の基端鍔部123の転倒モーメントに抗する幅も小さいため、グリップ形成部材121の転倒モーメントに抗する安定性を確保することも難しい。そのため、各グリップ形成部材121の下端部に半円円弧状の水平な基端鍔部123を設け、クランプ本体101に、1対のグリップ形成部材121の1対の基端鍔部123を水平方向へ移動可能に案内し支持する案内支持機構128を設け、各グリップ部材102の基端鍔部123の周方向の少なくとも一端部が、グリップ爪部122よりもクランプロッド103側へ突出しているため、クランプ駆動時に、グリップ形成部材121に作用する転倒モーメントに抗する安定性を高めることができる。
【0134】
クランプロッド103とグリップ部材102をクランプ装置CDの軸心と直交する水平方向へ小距離だけ可動に構成してあるため、複数のクランプ装置CDにより、ワークWの複数の穴Hをクランプする場合に、クランプ装置Cの軸心間距離と、穴Hの中心間距離が正確に一致せずに、製作誤差によりズレている場合にも、複数のクランプ装置CでワークWをクランプすることができる。
【0135】
尚、前記クランプ装置CDにおいて、
図44に示すように、グリップ部材102Aの基端鍔部123Aの周方向の少なくとも一端部を延長して、基端鍔部123Aを平面視にてほぼJ字形に夫々形成しても良い。
【0136】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
[1]前記実施例1〜4に記載したクランプ装置のクランプ駆動、アンクランプ駆動するために油圧を用いているが、これに限定する必要はなく、クランプ用油室、アンクランプ用油室、サポート油室に代えてクランプ用エア室、アンクランプ用エア室、サポートエア室を設け、加圧エア等の流体圧を用いてピストン部材をクランプ駆動、アンクランプ駆動するように構成しても良い。また、クランプ力をスプリングで発生させ、アンクランプ力を流体圧で発生させるように構成してもよい。
[2]前記実施例1〜5に記載したクランプ装置における、グリップ部材の構造、クランプロッドの構造、サポート機構の構造などは、一例を示すものであり、これらの構造に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を付加して実施可能である。クランプ装置におけるその他の構造についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を付加して実施可能である。