(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤は、下引き層を構成する全固形分量に対して、20〜50質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を設けたものである。ここで感熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0003】
現在、感熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けられた複数の感熱転写層をもつ感熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
【0004】
このような状況の中、用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンタの印画速度の高速化が進むに従って、従来の感熱転写記録媒体では十分な印画濃度が得られないという問題が生じてきた。そこで転写感度を上げるべく、感熱転写記録媒体の薄膜化により印画における転写感度の向上を試みることが行われてきたが、感熱転写記録媒体の製造時や印画の際に熱や圧力等によりシワが発生したり、場合によっては破断が発生するという問題を抱えている。
【0005】
また、感熱転写記録媒体の染料層における染料/樹脂(Dye/Binder)の比率を大きくして、印画濃度や印画における転写感度の向上を試みることが行われているが、染料を増やすことでコストアップとなるばかりではなく、製造工程における巻き取り状態時に感熱転写記録媒体の耐熱滑性層へ染料の一部が移行し(裏移り)、その後の巻き返し時に、その移行した染料が他の色の染料層、あるいは保護層に再転移し(裏裏移り)、この汚染された層を被転写体へ熱転写すると、指定された色と異なる色相になったり、いわゆる地汚れが生じたりする。
【0006】
また、感熱転写記録媒体側ではなく、プリンタ側で画像形成時のエネルギーをアップする試みも行われているが、消費電力が増えるばかりではなく、プリンタのサーマルヘッドの寿命を短くする他、染料層と被転写体とか融着し、いわゆる異常転写が生じ易くなる。それに対して異常転写を防止するために、染料層あるいは被転写体に多量の離型剤を添加すると、画像のにじみや地汚れが生じたりする。
【0007】
このような要望を解決するために、いくつかの方法が提案されている。例えば、特許文献1では、基材と染料層との間にポリビニルピロリドン樹脂と変性ポリビニルピロリドン樹脂を含有する接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、基材と染料層の間にポリビニルピロリドン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂の熱可塑性樹脂とコロイド状無機顔料超微粒子からなる接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の一実施例の感熱転写記録媒体は、
図1に示すように、基材10の一方の面にサーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層40を設け、基材10の他方の面に、水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤の少なくとも1つと、ポリビニルアルコール系樹脂と水溶性高分子を主成分として含む下引き層20、染料層30を順次形成した構成である。
【0019】
基材10としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能である。中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0020】
また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2μm以上50μm以下の範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上9μm以下程度のものが好ましい。
【0021】
また、基材10においては、耐熱滑性層40または/および下引き層20を形成する面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を二種以上併用することもできる。本発明では、基材と下引き層との接着性を高めることが有効であり、コスト面からもプライマー処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0022】
次に、耐熱滑性層40は、従来公知のもので対応でき、例えば、バインダーとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して耐熱滑性層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥して形成することができる。この耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量は、0.1g/m
2以上2.0g/m
2以下程度が適当である。ここで、耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量とは、耐熱滑性層形成用の塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいい、後述する下引き層20の乾燥後の塗布量および染料層30の乾燥後の塗布量も、同様に、塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことを指す。
【0023】
耐熱滑性層の一例を挙げると、バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
【0024】
機能性添加剤としては、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
【0025】
充填剤としては、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0026】
硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびその誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0027】
次に、下引き層20は、水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤の少なくとも1つと、ポリビニルアルコール系樹脂と水溶性高分子を主成分として含む塗布液を、塗布、乾燥して形成される。
【0028】
このような下引き層を形成することによって染料層に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られ、かつ、高温・高湿下に保存後においても印画における異常転写がない感熱転写記録媒体が得られる。
【0029】
下引き層に用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、クラレポバールPVA−235(クラレ社製)、クラレポバールPVA−117(クラレ社製)クラレポバールPVA−124(クラレ社製)ゴーセノールKH−20(日本合成化学社製)、ゴーセノールN−300(日本合成化学社製)、、等のポリビニルアルコール、アセトアセチル基を有し、反応性に富むアセトアセチル化ポリビニルアルコールであるゴーセファイマーZ−200、Z−320(日本合成化学社製)や、ポリビニルアルコールの一部のアルコール基をアセタール変性した水系ポリビニルアセタールエスレックKXシリーズ(積水化学社製)、エスレックKWシリーズ(積水化学社製)等が挙げられる。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂を用いることにより染料層に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られる。ただし高温高湿下での密着性は著しく悪いため、ポリビニルアルコール系樹脂を単独で用いるのは難しい。
【0031】
水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤は水酸基、カルボキシル基などを有する化合物と反応する性質を有しており、ポリビニルアルコール系樹脂ないしは水溶性高分子と反応し、耐熱性、耐湿性が向上する。
【0032】
具体的には、水系チタンキレート剤としては、オルガチックスTC−300(マツモトファインケミカル社製)、オルガチックスTC−310(マツモトファインケミカル社製)、オルガチックスTC−315(マツモトファインケミカル社製)等、ジルコニルキレート剤としては、オルガチックスZB−126(マツモトファインケミカル社製)等の市販品を好適に使用することができる。水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤の含有量は、下引き層を構成する全固形分量に対して、20〜50質量%であることが好ましい。20%以下では高温高湿下における保存性が足りず、50%以上では十分な印画濃度が得られない
水溶性高分子の一例を挙げると、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。その中でも、高温・高湿下に保存後の基材と染料層との接着性が比較的良好なポリビニルピロリドンが好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコール系樹脂と水系チタンキレート剤又はジルコニルキレート剤のみでは、耐熱性、耐湿性が向上するものの、実用可能なレベルまで到達はしない。しかし、水溶性高分子を加えることにより印画濃度を大きく損ねることなく耐熱性、耐湿性が実用可能なレベルに到達する。
【0034】
ポリビニルピロリドンとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)またはこれらの共重合体が挙げられる。さらには変性ポリビニルピロリドン樹脂などがあげられる。変性ポリビニルピロリドン樹脂は、N−ビニルピロリドン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である。なお、共重合形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等特に限定されるものではない。上記のN−ビニルピロリドン系モノマーとは、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)及びその誘導体を言うものであって、誘導体としては、例えばN−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものが挙げられる。
N−ビニルピロリドン系モノマーと共重合するモノマー成分は、下記のようなビニル重合性モノマーが挙げられる。例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、四ふっ化エチレン、ふっ化ビニリデン等が挙げられる。
【0035】
下引き層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.10g/m
2以上0.30g/m
2以下の範囲内であることが好ましい。0.10g/m
2未満では、染料層積層時の劣化により、高速印画時における転写感度が不足し、基材あるいは染料層との密着性に問題を抱える不安がある。一方、0.30g/m
2超では、感熱転写記録媒体自体の感度低下に影響し、高速印画時における転写感度が不足する不安がある。
【0036】
次に、染料層30は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤などを配合して染料層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。染料層30の乾燥後の塗布量は、1.0g/m
2程度が適当である。なお、染料層は、1色の単一層で構成したり、色相の異なる染料を含む複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成したりすることもできる。
【0037】
前記染料層の熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば、特に限定されるわけではなく、例えば、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等を挙げることができる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。墨の染料としては、前記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0038】
染料層30に含まれるバインダーは、従来公知の樹脂バインダーがいずれも使用でき、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
【0039】
ここで、染料層30の染料とバインダーとの配合比率は、質量基準で、(染料)/(バインダー)=10/100〜300/100が好ましい。これは、(染料)/(バインダー)の比率が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この比率が300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体となった際に、保存安定性が悪くなって、染料が析出し易くなってしまうためである。また、染料層には、性能を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
なお、耐熱滑性層40、下引き層20、染料層30は、いずれも従来公知の塗布方法にて塗布し、乾燥することで形成可能である。塗布方法の一例を挙げると、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0042】
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、下記組成の耐熱滑性層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布し、100℃1分乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0043】
<耐熱滑性層塗布液>
アクリルポリオール樹脂 12.5部
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
タルク 6.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0044】
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃2分乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0045】
<下引き層塗布液−1>
ポリビニルアルコール 1.75部
チタンキレート剤 1.50部
ポリビニルピロリドン 1.75部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0046】
<染料層塗布液>
C.I.ソルベントブルー63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0047】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0048】
<下引き層塗布液−2>
ポリビニルアルコール 1.75部
ジルコニルキレート 1.50部
ポリビニルピロリドン 1.75部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0049】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0050】
<下引き層塗布液−3>
ポリビニルアルコール 2.25部
チタンキレート剤 0.5部
ポリビニルピロリドン 2.25部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0051】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0052】
<下引き層塗布液−4>
ポリビニルアルコール 1.1部
チタンキレート剤 3.0部
ポリビニルピロリドン 1.1部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0053】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.05g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録転写媒体を得た。
【0054】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.35g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱記録転写媒体を得た。
【0055】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下引き層を形成することなく、易接着処理面の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層を形成し、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0056】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0057】
<下引き層塗布液−5>
ポリビニルピロリドン 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0058】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0059】
<下引き層塗布液−6>
ポリビニルアルコール 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0060】
(比較例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0061】
<下引き層塗布液−7>
ポリビニルアルコール 2.5部
ポリビニルピロリドン 2.5部
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0062】
(比較例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱記録転写媒体を得た。
【0063】
<下引き層塗布液−8>
ポリビニルアルコール 3.5部
チタンキレート剤 1.5部
純水 76.0部
イソプロピルアルコール 19.0部
【0064】
<被転写体の作製>
基材として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0065】
<受像層塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0066】
<常温における染料層の密着性評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。
なお、評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
【0067】
<高温・高湿保存後における染料層の密着性評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、40℃90%RH環境下に72時間および84時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。なお、評価は、上記の常温における評価と同基準にて行った。
【0068】
<印画評価>
実施例1〜6、比較例1〜5の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%RH環境下に72時間・84時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度および異常転写の有無を評価した結果を、表2に示す。なお最高反射濃度は、テカリの確認されない印画部を、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
【0069】
<異常転写評価>
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示す結果から、下引き層が設けられた実施例1〜6の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高いことがわかった。
【0073】
また、表1,2の結果からチタンキレート剤、ポリビニルアルコールおよび水溶性樹脂各々では常温保存および高温・高湿保存における染料層の密着性および印画における異常転写、印画濃度をすべての項目を満足するものは得られなかったが、3種類を混合したものを用いたものは常温保存および高温・高湿保存における染料層の密着性および印画における異常転写、印画濃度すべて満足することがわかった。その中で、チタンキレート剤の量が少ない実施例3では高温高湿下において密着性が低下することがわかった。逆にチタンキレート剤の量が多い実施例4では高温高湿下での密着性に問題はない結果が得られたが、印画濃度が低下することがわかった。
【0074】
また、実施例5の感熱転写記録媒体は、実施例4の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の塗布量が0.10g/m
2未満であるため、幾分高温・高湿保存後の密着性が低下し、さらにテカリも幾分効果が低下していることがわかった。また、実施例6の感熱転写記録媒体は、同じく実施例4の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるため、転写感度の効果が低下していることがわかった。
【0075】
本発明の実施形態により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。