【文献】
SIIMAN,O. 他,“Preparation, Microscopy, and Flow Cytometry with Excitation into Surface Plasmon Resonance Bands of Gold or Silver Nanoparticles on Aminodextran-Coated Polystyrene Beads”,THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY B,2000年10月 3日,Volume 104, Number 42,Pages 9795-9810
【文献】
XU,G. 他,“Nano-Ag on vanadium dioxide. II. Thermal tuning of surface plasmon resonance”,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,2008年 9月 2日,Volume 104, Issue 5,Article 053102, 6 Pages
【文献】
CERRUTI,M.G. 他,“Gold and Silica-Coated Gold Nanoparticles as Thermographic Labels for DNA Detection”,ANALYTICAL CHEMISTRY,2006年 4月20日,Volume 78, Number 10,Pages 3282-3288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層体は、当該積層体の積層方向を深さ方向とする複数の溝によって、2次元状に配置された複数の島部を形成するように分割されていることを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
前記積層体は、前記熱線吸収層と前記誘電体層との間に、前記光源からの出射光を反射する光反射層を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像取得装置。
少なくとも前記誘電体層及び前記熱線吸収層の積層によって形成された積層体は、当該積層体の積層方向を深さ方向とする複数の溝によって、2次元状に配置された複数の島部を形成するように分割されていることを特徴とする請求項8に記載の変換装置。
前記支持部材は、前記積層体に光を出射する光源の光に対して不透明であり、且つ、前記積層体の直下の範囲で開口を有する遮光層を備える、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の変換装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0017】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について、以下、
図1乃至
図8を用いて説明する。
【0018】
図1は、赤外線カメラ50の概略構成を説明するための模式図である。
図2は、変換モジュールの概略的な断面構成を示す模式図である。
図3は、平面内における積層体の形成態様を示す模式図である。
図4は、変換装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
図5は、赤外線カメラ50の機能を説明するための説明図である。
図6は、赤外線カメラ50に接続される駆動部の概略的な構成を示すブロック図である。
図7A及びBは、変換装置の製造方法を示す概略的な製造工程図である。
図8は、比較例の構成を説明するための説明図である。
【0019】
図1に示すように、赤外線カメラ(画像取得装置)50は、LED(Light Emitting Diode)10、レンズ11、ハーフミラー12、レンズ筒14、CCD(Charge Coupled Device)センサ15、レンズ筒16、及び変換モジュール20を有する。
【0020】
赤外線カメラ50は、レンズ筒16を介して入力する赤外線(物体からの放射熱線)を変換モジュール20の前面で受ける。赤外線カメラ50は、LED10から出力された光を変換モジュール20の背面で受ける。後述のように、変換モジュール20は、前面側に形成された黒色層(熱線吸収層)、及び黒色層よりも背面側に形成された誘電体層を有する。誘電体層は、金属粒子(導電性粒子)が誘電体粒子(誘電体)の表面に付着して形成されており、局在プラズモン共鳴を生じさせることができる。誘電体層は、黒色層に対して熱接続されている。従って、局在プラズモン共鳴による光減衰の程度は、黒色層に入射した赤外線の強度に応じたものになる。このようにして、変換モジュール20から出力される光の強度分布は、変換モジュール20に入力した赤外線の強度分布に応じたものになる。
【0021】
変換モジュール20からの出力光は、ハーフミラー12を通過し、レンズ筒14を介してCCDセンサ15の撮像面に入射する。CCDセンサ15は、赤外線の強度分布に応じた強度分布を有する光を複数の画素で受光し、赤外線の強度分布に応じた像を撮像する。このように、汎用な部品を用いて簡素な構成の新しいタイプの赤外線カメラ50を提供することができる。
【0022】
図1に示すように、CCDセンサ15の撮像面上には、レンズ筒14、ハーフミラー12、変換モジュール20、及びレンズ筒16がこの順で配置されている。ハーフミラー12の前面12a上には、レンズ11、LED10がこの順で配置されている。なお、軸線AX1上にLED10、レンズ11を配置し、軸線AX2上にレンズ筒14、CCDセンサ15を配置しても良い。
【0023】
LED10は、駆動電流に応じて所定波長の光を出力する一般的な半導体発光素子(光源)である。LED10の出力波長は任意である。LED10からは出力される光の偏向状態は任意である。なお、LEDに代えて、LD(Laser Diode)を採用しても良い。
【0024】
レンズ11は、LED10からの出力光を平行光化する。LED1からの出力光は、レンズ11のレンズ面を介して、平行光化される。
【0025】
ハーフミラー12は、LED10からの光を反射し、変換モジュール20からの光を透過する。具体的には、ハーフミラー12は、レンズ11を介して入射するLED10の光を前方に向かって反射させる。ハーフミラー12は、変換モジュール20から出力される光を後方へ透過させる。
【0026】
変換モジュール20の機能の概要は上述のとおりである。変換モジュール20の構成及び機能については後で詳細に説明する。
【0027】
レンズ筒14は、変換モジュール20から出力され、ハーフミラー12を通過した光をCCDセンサ15の撮像面に結像させる。
【0028】
CCD(Charge Coupled Device)センサ15は、通常の固体撮像素子である。CCDセンサ(撮像手段)15は、撮像面にマトリクス状に形成された複数の画素を有する。各画素で光を受光することによって赤外線の強度分布に応じた像を撮像する。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、TFT(Thin Film Transistor)等の一般的な撮像センサを用いても良い。
【0029】
レンズ筒16は、変換モジュール20の前面に赤外線像を結像させる。レンズ筒16内のレンズは、Ge、ZnSe等を用いれば良い。
【0030】
なお、レンズ筒16の前方には、撮像対象物が存在する。撮像対象物の温度に応じて撮像対象物からは熱線(赤外線)が放射される。赤外線カメラ50によって撮像対象物の熱画像を取得することができる。
【0031】
なお、赤外線カメラ50は、適当な筐体内に収納するものとし、外来の熱線(赤外線)はレンズ筒16を介してのみ内部に入射するものとする。
【0032】
図2に変換モジュール20の概略的な断面構成を示す。
図2に示すように、変換モジュール20は、枠体21、窓板22、シリコン基板(支持基板)23、絶縁層(断熱層)24、積層体25、マスク層27、及び透明基板28を有する。なお、変換装置は、シリコン基板23、絶縁層24、及び積層体25から形成される。
【0033】
枠体21は、中空の筒状部材であり、窓板22、シリコン基板23、及び透明基板28を支持する。枠体21を形成する材料は任意であるが、気密性を確保するためには金属で枠体21を形成すれば良い。
【0034】
窓板22は、赤外線に対して実質的に透明な平板状の部材である。例えば、Ge、ZnSe基板等で窓板22を形成すると良い。
【0035】
シリコン基板23上には、絶縁層24が形成されている。絶縁層24上には、積層体25が形成されている。積層体25は、格子状の溝によってマトリクス状に形成された複数の島部に分割されている(
図3参照)。なお、積層体25の構成について
図4を参照して後述する。
【0036】
シリコン基板23は、各積層体25の直下に開口OP1を有する。マトリクス状に形成された積層体25に対応して、シリコン基板23には開口がマトリクス状に形成されている。
【0037】
積層体25を絶縁層24に支持させ、積層体25の直下の範囲でシリコン基板23に開口を形成することによって、積層体25からシリコン基板23に熱が逃げることを抑制することができる。これによってより良質な画像を赤外線カメラ50で取得することができる。
【0038】
マスク層27は、通常の半導体製造技術に基づいて、透明基板28上に形成された遮光層である。マスク層27は、積層体25の配置パターンに応じてパターニングされている。マスク層27は、積層体25の直下の範囲で開口OP2を有する。マスク層27は、LED10からの出射光に対して不透明である。マスク層27を設けることによって、互いに隣接する積層体25からの出力される光同士が混信することを抑制し、より良質な画像を取得することが可能になる。
【0039】
透明基板28は、LED10からの出射光に対して実質的に透明な板状部材である。例えば、ガラス、石英等で透明基板28を形成すれば良い。
【0040】
図2から明らかなように、積層体25の直下の範囲で、シリコン基板23には開口OP1が形成され、マスク層27には開口OP2が形成されている。
【0041】
LED10からの出射光は、透明基板28、マスク層27の開口OP2、シリコン基板23の開口OP1、及び絶縁層24を、この順で通過して積層体25に入力する。積層体25から出力される光は、絶縁層24、シリコン基板23の開口OP1、マスク層27の開口OP2、及び透明基板28をこの順で通過する。
【0042】
なお、赤外線カメラ50の信頼性を高めるためには、積層体25を枠体21内に気密封止又は真空封止すると良い。ここでは、枠体21に窓板22を取り付けて気密封止している。窓板22によって閉じられた空間には、不活性ガス(N
2、Ar、He等)を充填している。また、背面側からマスク層27が形成された透明基板28を取り付けることで気密性を更に高めている。このように積層体25を枠体21内に窓板22で気密封止することで、外部の環境(周囲の温度、大気流等)の影響によって赤外線カメラ50が取得する画像の品質が劣化することを抑制することができる。
【0043】
なお、排気ポンプ等を活用して、窓板22によって閉じられた枠体21内の内部空間を真空に排気しても良い。この場合も上述と同様の効果を得ることができる。なお、熱絶縁性を高めるためには、真空引きするほうが好ましい。
【0044】
なお、枠体21に対する窓板22、透明基板28の取り付け方法は任意である。通常の封止材を用いて、それらを枠体21に取り付けても良い。
【0045】
図4に積層体25の具体的な構成を示す。
図4に示すように、積層体25は、誘電体層30、反射層(光反射層)32、および黒色層(熱線吸収層)33をこの順で絶縁層24上に有する。なお、各層の積層順序は、これらの順番に限らない場合もある。
【0046】
誘電体層30は、金属粒子(導電性粒子)31bが表面に付着した粒子状の誘電体31aが凝集して形成された層である。
【0047】
反射層32は、誘電体層30から出力される光に対して反射性を有する。反射層32は、例えば、Au、Al、Ag等の金属の薄層である。
【0048】
黒色層33は、Au黒、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの黒色体またはこれらを含む黒色樹脂等からなる。黒色層33は、窓板22を通過した赤外線を吸収する。
【0049】
誘電体層30には、金属粒子31bが表面に付着した粒子状の誘電体31aが凝集して形成される。誘電体31aは、BST((Ba-Sr)TiO
3)といった材料からなる。金属粒子31bは、例えば、金(Au)や銀(Ag)といった金属からなる。
【0050】
誘電体31aの粒子径、及び金属粒子31bの粒子径は、いずれも小さいほうが望ましい。但し、誘電体31aの粒子径は、金属粒子31bの粒子径よりも大きいことを条件とする。これによって誘電体31aと金属粒子31b間の接触面積を十分にすることができる。
【0051】
なお、金属粒子31bの粒子径は、エバネッセント波の発生を可能とし、かつプラズモンの局在を可能とする程度の粒子径に設定される(金属粒子31bの粒子径は、2〜10nm程度が望ましい)。なお、金属粒子31bの粒子形状は任意である。金属粒子31bは、球体に限定されない。
【0052】
局在プラズモン共鳴によって減衰する光の強度は、誘電体31aの誘電率に依存する。また、誘電体31aの誘電率は、黒色層33の温度に依存する。従って、局在プラズモン共鳴による光減衰の程度は、黒色層33に入射する赤外線の線量に応じたものになる。従って、個々の積層体25から出力される光の強度分布を画像化することで、外来の赤外線の強度分布に応じた像を撮像することができる。
【0053】
次に、
図5を参照して、赤外線カメラ50の動作について総括的に説明する。
【0054】
図5に示すように、LED10からの出射光は、レンズ11を介して平行光化され、ハーフミラー12で反射され、積層体25に照射される。積層体25に光が入射すると、光の一部は、誘電体層30内で減衰する(以下、
図4も併せて参照)。そして、黒色層33の温度に応じた強度の光が個々の誘電体層30から出力される。誘電体層30から前方に向かって出力された光も、反射層32で反射され、後方に向かって進む。
【0055】
誘電体層30からの出力光は、マスク層27の開口を通過し、ハーフミラー12を通過し、レンズ14a、14bを介して、CCDセンサ15に入射する。
【0056】
なお、外部の撮像対象物から放射される赤外線は、レンズ5a、5bを介して、積層体25が形成された面に結像されているものとする。このような仕組みで、CCDセンサ15は、レンズ5a、5bを介して入射する赤外線の強度分布に応じた像を撮像する。
【0057】
次に、
図6を参照して、赤外線カメラ50の駆動部の構成について説明する。
図6に示すように、駆動部40は、パルス発生回路41、LED駆動回路42、及び遅延回路43を有する。
【0058】
パルス発生回路41は、コントローラ(不図示)から入力されるスタート信号を受けてパルス信号S1を出力する。
【0059】
LED駆動回路42は、パルス信号S1の入力に応じてLED10を駆動する。
【0060】
遅延回路43は、パルス信号S1に遅延を与えてパルス信号S2を出力する。
【0061】
なお、LED10は、LED駆動回路42に駆動されて光を出力する。CCDセンサ15は、パルス信号S1を受信してスタンバイ状態になり、パルス信号S2を受信して電子シャッターが開いた状態になる。CCDセンサ15は、撮像後、VIDEO信号を出力する。
【0062】
なお、パルス発生回路41の出力は、LED駆動回路42の入力、遅延回路43の入力、及びCCDセンサ15の第1入力に接続される。遅延回路43の出力は、CCDセンサ15の第2入力に接続される。
【0063】
このような構成によってLED10とCCDセンサ15間で同期を取ることができる。
【0064】
図7A、Bを参照して、変換モジュール20に含まれる部品(変換装置)の製造方法について説明する。
【0065】
まず、(a)に示すように、シリコン基板23の背面を酸化して絶縁層(S
iO
2)24を形成する。なお、通常の薄膜形成技術を活用して、シリコン基板23の背面にシリコン窒化膜を形成しても良い。
【0066】
次に、(b)に示すように、シリコン基板23の上面にフォトレジスト層60を通常のコート方法(スピンコート等)で形成する。
【0067】
次に、(c)に示すように、フォトマスクを介した露光と現像処理によって、フォトレジスト層60をパターニングする。
【0068】
次に、(d)に示すように、シリコン基板23を背面からウェットエッチングして開口を形成する。ここでは、絶縁層24がエッチングストッパー層として機能する。
【0069】
次に、(e)に示すように、絶縁層24上にフォトレジスト層61を通常のコート方法(スピンコート等)で形成する。
【0070】
次に、(f)に示すように、フォトマスクを介した露光と現像処理によって、フォトレジスト層61をパターニングする。そして、誘電体31aをフォトレジスト層61、絶縁層24上にコートする。
【0071】
次に、(g)に示すように、誘電体31aの表面に金属粒子31bを付着させる。
【0072】
次に、(h)に示すように、誘電体層30上に、反射層32、黒色層33を通常の薄膜形成技術(スパッタリング、蒸着等)を活用して形成する。
【0073】
次に、(i)に示すように、リフトオフの原理で、フォトレジスト層61上に形成された誘電体層30〜黒色層33をフォトレジスト層61と共に除去する。
【0074】
本実施形態では、外来赤外線(物体から放射される熱線)を吸収する黒色層33と金属粒子31bが誘電体31aの表面に付着して形成された誘電体層30とを積層する。そして、誘電体層30に光を照射し、誘電体層30から強度変調された光を出力させる。これによって、個々の積層体25に入射する熱線の強度分布に応じた像を取得することが可能になる。このようにして簡素な構成の画像取得装置を実現することができる。
【0075】
最後に、
図8を参照して、本実施形態による効果について付加的に説明する。
図8の場合は、基体91の主面上に、金属膜93、誘電体膜94、黒色膜95がこの順で積層されている。ここでは、基体91と金属膜93間の界面92での光の全反射時に生じる光の減衰を活用して熱画像を取得する。
【0076】
具体的には、全反射条件を満足するように、可視光を界面92に向けて照射する。界面92では、表面プラズモン共鳴によって反射光の強度が入射光の強度よりも弱くなる。全反射時の光の減衰の程度は、黒色膜95の温度を受けて変化する誘電体膜94の誘電率に応じたものになる。従って、界面92からの反射光を撮像素子の各画素で受光することによって黒色膜95に入射する赤外線の強度分布に応じた像を撮像することが可能になる。
【0077】
しかしながら、この場合、金属膜93は、基体91と密着している。基体91の熱容量は大きいため、黒色膜95が吸収した熱は、誘電体膜94、金属膜93を介して、基体91に逃げてしまうおそれがある。
【0078】
本実施形態では、上述のように、シリコン基板23の中空部分(開口OP1)上に形成された絶縁層24上に積層体25を形成する。従って、積層体25からシリコン基板23へ熱が逃げることを効果的に抑制することができる。これによって、より良質な熱画像をCCDセンサ15で取得することが可能になる。
【0079】
本発明の技術的な範囲は、上述の実施形態に限らない。当業者であれば、材料の選択、部材の厚み等の設計値の選択は過度な負担なく可能である。熱線吸収層は、黒樹脂以外の様々な材料を選定することができる。なお、熱線吸収層は、赤外線吸収層として機能している。撮像素子は、必ずしも2次元状にピクセルが配置されたものである必要はなく、1列にピクセルが配列されたものであっても良い。赤外線カメラの具体的な組み立て方も任意である。