特許第5674290号(P5674290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5674290ハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674290
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20150205BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150205BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20150205BHJP
   F16H 57/12 20060101ALI20150205BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20150205BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20150205BHJP
【FI】
   B60K6/20 320
   B60K6/54ZHV
   F16H57/12 A
   B60L11/14
   B60K6/20 350
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-159135(P2009-159135)
(22)【出願日】2009年7月3日
(65)【公開番号】特開2010-215213(P2010-215213A)
(43)【公開日】2010年9月30日
【審査請求日】2012年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0022104
(32)【優先日】2009年3月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 俊 泳
(72)【発明者】
【氏名】朴 泰 ウク
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−254434(JP,A)
【文献】 特開2008−006945(JP,A)
【文献】 特開2008−265615(JP,A)
【文献】 特開2008−178216(JP,A)
【文献】 特開2004−234205(JP,A)
【文献】 特開2000−250614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/00
B60K 6/54
B60L 11/14
F16H 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータトルクからドラッグトルクを差し引いた値である有効トルクが、ギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間に進入したか、又は前記零トルク区間から脱出したかを判断する第1段階と、
前記有効トルクが前記零トルク区間に進入したかまたは前記零トルク区間から脱出したと判断した場合、制御時間を初期化して前記有効トルクを放物線または指数関数形態のトルクに制限する制御を開始する第2段階と、からなり、
前記第1段階において、
in[モータトルク(運転者要求トルク)]がTdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記Tdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さいか又は等しいか、
又は、Tin[モータトルク(運転者要求トルク)]が−Tdead[零トルク区間の残りの1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記−Tdead[零トルク区間の残り1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さいか又は等しいか、
を計算することで、前記有効トルクが前記ギアバックラッシュメカニズムの前記零トルク区間に進入したか、又は前記零トルク区間から脱出したかを判断し、
前記第2段階において、
前記有効トルクが前記零トルク区間から脱出した時、最終モータトルク値(Tout)は、Tout=(Tin−Tdrag)×t/tmax+Tdragにより放物線形に増加するトルク制限制御を受けることを特徴とするハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法。
【請求項2】
前記第2段階において、
前記有効トルクが前記零トルク区間に進入した時は、前記最終モータトルク値(Tout)は、指数関数を使用して1−exp(−at)形態の曲線となるようにしながら、前記ドラッグトルクに収束するようにすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法。
【請求項3】
前記放物線形トルク制限制御が進行中であることを確認して、前記有効トルク値が前記零トルク区間以内ならば、前記放物線形トルク制限制御を中止して前記最終モータトルクを前記ドラッグトルク(Tdrag)として出力するように指令する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法。
【請求項4】
前記有効トルク値が前記零トルク区間を逸脱して制御時間が経過した場合は、前記放物線形トルク制限制御を中止して前記最終モータトルク(Tout)を前記モータトルク(Tin)として指令する段階を更に含むことを特徴とする請求項1の記載のハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両用駆動系のギアバックラッシュ振動を低減させる方法に係り、より詳しくは、ハイブリッド車両がモータで走行する時に、モータから駆動輪までの間のギア要素により発生するバックラッシュ振動を低減した、ハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両、ハイブリッド電気自動車などの様々な形態のハイブリッド車両は、高電圧のバッテリーからの電気エネルギーを、モータ駆動による機械エネルギーに転換するEV走行モード、及びエンジン及び車両タイヤの機械的エネルギーをモータを通して回収(発電、回生)しながら、インバータを通して電気エネルギーに転換して、バッテリーのようなエネルギー貯蔵装置に充電する回生制動モードを含む。
【0003】
このようなハイブリッド車両には、モータと駆動輪との間に、変速機、最終減速ギアなどのバックラッシュ特性を持つ様々なギア要素が含まれているが、このようなギア要素の各々のバックラッシュ特性を考慮したトーショナルダンパーのようなダンピング要素が不足し、前記ギア要素による有効伝達トルクの方向転換の際に振動が発生するという問題がある。
【0004】
このような振動現象は、モータと駆動輪との間のギア要素のバックラッシュの累積によって起こり、主にクリープ発進時に発生する。このような振動現象は、次世代の環境にやさしい車両という消費者のイメージに反し、車両の運転性全般に好ましくない影響を及ぼす。
【0005】
図1は、ギアバックラッシュ及びそれによる振動発生現象を説明するために、ギアのバックラッシュメカニズムをスプリング系にモデリングした模式図である。図1を参照しながら、ハイブリッド車両がモータによるEVモードで走行する際に、モータと駆動輪との間のギア要素のバックラッシュが発生する現象のメカニズムを説明する。
【0006】
図1に示すように、モータのトルクがドライブシャフトに伝達されるまでには一定の時間が必要であり、この所要時間は自動変速機などのギアが駆動方向に伝達されるのに必要な所要時間、即ち、ギアバックラッシュによる遅延時間、及び各ギア間の間隔によって説明される。
図1に示すように、第1ギア10の歯と第2ギア20の歯の間隔30にモータ伝達トルクのデッドゾーンが形成される。
【0007】
図2は、ギア間隔によるデッドゾーンを経由して伝達されるモータトルクと、正常的に伝達される線形伝達トルクと、を比較したトルク線図である。
図2に示すように、ギア間隔によるデッドゾーンを経由して伝達されるモータトルクは、一点鎖線で示したとおりであり、点線で示した正常的に伝達される線形伝達トルクと異なり、ギアバックラッシュがある部分でトルクの伝達が円滑に行われていない。
【0008】
図1を再び参照して、前記ギア要素により有効伝達トルクの方向を転換する際に振動が発生する理由を説明する。図1に示すように、ギアをスプリング系にモデリングさせると、第1及び第2ギア間の有効伝達トルクの方向が反転する地点でスプリング系の振動が発生する。
【0009】
即ち、入力されたトルクによって第1ギア10が矢印方向に移動して第1ギアと第2ギアの物理的間隔30は前面スプリング40側が2jdになり、後面スプリング50側が0になる。これによって前面スプリング40が引き延ばされ後面スプリング50押し縮められることによって第2ギア20側にトルクが伝達される。そのトルク伝達過程をスプリング系としてみると、「前面スプリング40の引き延ばし解除→第1及び第2ギア間の物理的間隔30→後面スプリング50の引き伸ばし」という過程が行われてスプリング系の振動が発生する。即ち、有効伝達トルクの方向を転換する際にギア要素による振動が発生する。
【0010】
第1ギア10から第2ギア20側にトルクが伝達される時、「前面スプリング40の引き伸ばし解除→第1及び第2ギア間の物理的間隔30→後面スプリング50の引き伸ばし」が行われる区間は、零トルク区間となる。
【0011】
このような零トルク区間、即ち、「前面スプリング40の圧縮引き伸ばし解除→第1及び第2ギア間の物理的間隔30→後面スプリング50の引き伸ばし」が行われる区間でのトルク範囲は、実質的に意味のある伝達トルク水準以下(変速機圧縮軸基準5Nm以下)となる。
【0012】
このように、ギアバックラッシュがある部分では、モータトルクの伝達が円滑に行われずに振動が発生するため、車両の運転性全般において好ましくない影響を及ぼすという問題点があった。
【0013】
このような振動問題を解決するために、従来はトーショナルダンパーのような物理的なダンピング要素を含む受動ダンピング方式(例えば特許文献1を参照)振動の逆方向に減殺力を与える閉ループタイプの能動ダンピング方式、及びバックラッシュメカニズムの入力トルクを変形させて振動発生を抑制するトルクプロファイル調節方式などが提案されている。
しかし、受動ダンピング方式はギア要素を含む駆動系に対するパッケージング問題を解決するのが困難であり、能動ダンピング方式は高性能センサー及びモニターを設置しなければならないなど構造が複雑であり、トルクプロファイル調節方式は単純トルク変化率の減少に対する振動低減にはある程度の効果があるものの、応答性が低下し、また、振動モデルに基づく逆位相トルクの添加時のモデル誤差によっては振動が増加し得ることもあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−296718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、ギアバックラッシュを有するギア要素にモータトルクを入力する場合に、振動(振幅)低減効果が高く、且つトルク応答性の低下を最小限に抑制した、ハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するための本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法は、モータトルクからドラッグトルクを差し引いた値である有効トルクが、ギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間に進入したか、又は前記零トルク区間から脱出したかを判断する第1段階と、前記有効トルクが前記零トルク区間に進入したかまたは前記零トルク区間から脱出したと判断した場合、制御時間を初期化して前記有効トルクを放物線または指数関数形態のトルクに制限する制御を開始する第2段階と、からなり、前記第1段階において、Tin[モータトルク(運転者要求トルク)]がTdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記Tdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さいか又は等しいか、又は、Tin[モータトルク(運転者要求トルク)]が−Tdead[零トルク区間の残りの1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記−Tdead[零トルク区間の残り1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さいか又は等しいか、を計算することで、前記有効トルクが前記ギアバックラッシュメカニズムの前記零トルク区間に進入したか、又は前記零トルク区間から脱出したかを判断し、前記第2段階において、前記有効トルクが前記零トルク区間から脱出した時、最終モータトルク値(Tout)は、Tout=(Tin−Tdrag)×t/tmax+Tdragにより放物線形に増加するトルク制限制御を受けることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記第2段階において、前記有効トルクが前記零トルク区間に進入した時は、前記最終モータトルク値(Tout)は、指数関数を使用して1−exp(−at)形態の曲線となるようにしながら、前記ドラッグトルクに収束するようにすることを特徴とする。


【0020】
また本発明は、 放物線形トルク制限制御が進行中であることを確認して、有効トルク値が零トルク区間内ならば、放物線形トルク制限制御を中止して最終モータトルクをドラッグトルク(Tdrag)として出力するように指令する段階を更に含むことが好ましい。
【0021】
また本発明は、有効トルク値が零トルク区間を逸脱して制御時間が経過した場合は、放物線形トルク制限制御を中止して最終モータトルク(Tout)をモータトルク(Tin)として指令する段階を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法によると、ハイブリッド車両のギアバックラッシュメカニズムを有するギア要素にモータトルクを入力する時に、ギアバックラッシュによる零トルク区間内に進入及び脱出時に有効トルクを放物線形態のファクターに制限し、モータトルクを放物線形態に制限することによりトルクが増加及び回復されるため、応答性低下を減らすことができる。
【0023】
更に、零トルク区間内では有効トルクを0(zero)に出力することで、不必要な振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ギアバックラッシュ及びそれによる振動発生現象を説明するためにギアのバックラッシュメカニズムをスプリング系にモデリングした模式図である。
図2】ギア間隔によるデッドゾーンを経由して伝達されるモータトルクと、正常的に伝達される線形伝達トルクを比較したトルク線図である。
図3】ハイブリッド車両用モータと駆動輪との間のギア要素により発生するバックラッシュメカニズムを通したトルク伝達状態を説明するトルク線図である。
図4】本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を説明する概念図である。
図5】本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を表す制御順序概略図である。
図6】本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を表す制御順序詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
図3は、ハイブリッド車両用モータと駆動輪との間のギア要素により発生するバックラッシュメカニズムを通したトルク伝達状態を説明するトルク線図である。
本発明の理解を助けるために、図3を参照して本発明で使用される用語説明すると次の通りである。
【0026】
零トルク区間は、スプリング系にモデリングされたギアバックラッシュモデルに於いて、各ギア間の物理的な間隔によるデッドゾーンと、スプリングで近似化された正/逆方向にギア及び駆動軸が変形されるトルク区間と、を合わせた区間を意味する。
入力トルクは、バックラッシュメカニズムに入力されるトルク(モータ軸のトルク)を意味し、出力トルクはバックラッシュメカニズムから出力されるトルク(駆動軸トルク)を意味する。
【0027】
ドラッグトルクはバックラッシュメカニズムの入力端の抵抗であり、モータ自体の回転抵抗、モータと連結した湿式クラッチの流体抵抗、などを合わせた抵抗を言う。
有効トルクは、モータトルクからドラッグトルクを引いた値であり、入力体自体の負荷を除き、バックラッシュメカニズムに実際に入力されるトルクを意味する。
応答遅延は、零トルク区間を脱出するトルク命令が指令される場合、トルクを放物線形態のファクターないし関数に制限する時間を言う。
【0028】
本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのギアバックラッシュ振動を低減させるための方法を図面を参照して説明する。
図4は、本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を説明する概念図であり、図5は、本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を表す制御順序概略図であり、図6は、本発明によるハイブリッド車両用駆動系でのバックラッシュ振動を低減させるための方法を表す制御順序詳細図である。
【0029】
まず、図5の段階(S101)に示すように、モータトルク(運転者要求トルク)からドラッグトルクを差し引いた値である有効トルクが、ギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間の下限線を通過して零トルク区間に進入しようとしている状態にあるか、零トルク区間の上限線を通過して零トルク区間から脱出しようとしている状態にあるかを判断する。
【0030】
即ち、モータトルクからドラッグトルクを差し引いた値である有効トルクがギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間に進入したか、零トルク区間内であるか、或いは零トルク区間の外に脱出したかを判断することが好ましい。
【0031】
具体的には、図6の段階(S101)に示すように、Tin[モータトルク(運転者要求トルク)]がTdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記Tdead[零トルク区間の1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さいか又は等しいかを判断するか、若しくは、Tin[モータトルク(運転者要求トルク)]が−Tdead[零トルク区間の残りの1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より小さく、且つ、Tin_old[以前サンプルタイムのTin値]が前記−Tdead[零トルク区間の残り1/2]とTdrag[ドラッグトルク]の合計より大きいか又は等しいかを計算することによって、有効トルクがギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間内に進入中であるか、零トルク区間内であるか、零トルク区間外に脱出したかを判断することができる。
【0032】
次いで、図5、6の段階(S102)に示すように、前記有効トルクがギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間に進入する場合、零トルク区間の下限線を通過する時点から制御時間を初期化(t=0)し、前記有効トルクを放物線形トルクに制限する制御(TqRestric=1)を開始する。ここでTqRestricは、放物線形態のトルク制限制御のための制御ビットを表すことが好ましい。
好ましくは、前記有効トルクが零トルク区間に進入する際に指数関数を使用して、1−exp(−at)の形態の曲線となるようにしながら、ドラッグトルクに収束するようにすることが好ましい。
【0033】
ついで、図5の段階(S103)に示すように、前記有効トルクがギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間の実際の物理的間隔によるデッドゾーンを逸脱して零トルク区間を逸脱する場合は、最終モータトルク値(Tout)は制御時間に従って放物線形に増加するトルク制限値(0〜1)となる。
【0034】
即ち、図6の段階(S103)に示すように、前記有効トルクが零トルク区間に進入する際、前記最終モータトルク値(Tout)は、本発明の振動低減制御によって出力される変形されたモータトルク値であり、Tout=(Tin−Tdrag)×t/tmax+Tdragにより放物線形トルク制限制御を受ける。ここでtmaxは放物線形態のトルク制御適用時間、即ち、応答遅延を表す。
【0035】
図5、6の段階(S104)に示すように、放物線形トルクで制限する制御(TqRestric=1)が進行中である区間であれば、前記有効トルク値が零トルク区間内であるかを確認する段階(S105)へと更に進行する。
【0036】
そこで、図5の段階(S105)に示すように、前記有効トルク値が零トルク区間以内の場合、即ち、図6の段階(S105)に示すように、[Tin(モータトルク)−Tdrag(ドラッグトルク)]がTdead[零トルク区間の1/2]より小さいか又は等しければ、前記放物線形トルク制限制御を中止して(S106)、最終モータトルク(Tout)をドラッグトルク(Tdrag)として指令する(S107)。
【0037】
図5の段階(S108)に示すように、、前記有効トルク値が零トルク区間を脱出した場合、即ち、図6の段階(S108)に示す[Tin(モータトルク)−Tdrag(ドラッグトルク)]がTdead[零トルク区間の1/2]より大きい場合、前記放物線形トルク制限制御時間を確認(S108)した後、制御時間が経過した場合には、放物線形トルク制限制御を中止して(S109)、最終モータトルク(Tout)をモータトルク(Tn)として指令する(S110)。
【0038】
このように、スプリング系の圧縮が進行するギアバックラッシュメカニズムの零トルク区間に進入及び脱出する時、モータトルク指令の形態を放物線関数形態に制限する制御を実施して、モータトルク指令を放物線形態に制限することによりトルクが増加及び回復するため、応答性低下を減らすことができ、更に、零トルク区間内では有効トルクを0(zero)で出力して、不必要な振動発生を抑制させることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 第1ギア
20 第2ギア
30 間隔
40 前面スプリング
50 後面スプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6