【実施例】
【0047】
まず、本発明情報伝達処理装置1における画像表示装置Dを地方局Aの地域内にある駅構内壁面など人目につきやすい場所へ、たとえば
図3に示すような態様によって、あらかじめ設置しておく。
【0048】
画像表示装置Dは、アイドリング時においては画像管理部Gに格納されている任意の広報用画像データを再生表示しており、たとえば
図6に示すようにいくつかの広報用コンテンツ画像を一定の時間を隔て切り替えながら表示し、又はたとえば
図19に示すように目形状の画像を表示したりしている。
【0049】
ここで、前記駅構内を通過する通行人Pが壁面に設置された画像表示装置Dの前方域にさしかかり撮像装置Cによって撮影可能な範囲内(本実施例においてはたとえば視野角約120度のWEBカメラを用いることとする。)に入ったとき、通行人検出部Bはたとえば以下のような適宜の通行人検出手段BDによって通行人Pの存在を認識し、本発明情報伝達処理装置1は当該通行人Pを認識した時刻Tとともにこれを任意の記録領域に記録する。
【0050】
上記の通行人検出手段BDにつき、たとえば最も確実でシンプルな手段のひとつとしては、撮像装置Cの捉えている映像の1点を観測点としてこれに注目しながら、当該観測点を遮るものがあるか否かに関し時系列に沿って監視する方法がある。
【0051】
すなわち具体的には、通行人Pの往来がある環境において、撮像装置Cにより撮影する映像の背景が固定された状態にあって、かつ、上記観測点を遮るものが認められる場合には、当該観測点を通過する通行人Pが存在するものと評価することができる。
【0052】
特に、本実施例における通行人検出手段BDは、
図13に示すように4つの観測点a・b・c・dを設けており、検出精度を向上させることによって観測漏れを著しく低減できるとともに、併せて通行人Pの通過する方向についても検出できるようになるので、撮像装置Cの撮影可能範囲内に入ってから画像表示装置Dの略正面域に到達する前に元の方向に引き返す者など、通行人Pの挙動についてより正確な評価を行うことが可能となる(たとえば通行人Pが順に観測点abbaを遮る行動をとった場合には、当該通行人Pは当初a側からd側へ向かって歩いていたがbとcの間に差し掛かったとき引き返したものと評価することができるようになる)。
【0053】
また、デジタル処理された映像は、明るさの情報(現時点においてこの明るさの範囲は白から黒までの8ビット(256階調)が一般的である。)を持つ点の集合として評価されるが、カラー映像によれば仮に明るさにおける変化がなかったとしても色の変化に対して反応することができるようになる。
【0054】
ところが、実際にWEBカメラ等からの映像信号を分析すると、自然光のもとであれ人工光のもとであれ、一見変化していないように見える映像でも数値としてはかなりの揺れ(原因としてはカメラの精度や環境光の肉眼では感じられない変化などが考えられる。)が存在することが分かっている。
【0055】
したがって、映像中の1点に注目して観測を行うためには、当該観測点における瞬間的な値を基準にするのではなく、たとえば数秒間の明るさの平均値を以てこれをその背景値として評価するのが望ましく、本実施例においても通行人検出部Bは、具体的には
図10に示すようにある時刻Atにおける背景値はdT秒前から当該時刻Atまでの明るさの平均値として算出しており、同様に他の時刻Btにおける背景点のデータについても測定時刻を起点にdT秒前からの平均値として評価している。
【0056】
上記のような手法により、本発明情報伝達処理装置1は、適宜のサンプリング・レートを以て観測点の背景値を常に更新している。
【0057】
dT秒の望ましい設定値に関しては、環境にもよるが、短すぎると環境の偶発的な変化に反応してしまう一方、長すぎると日が落ちて照明が変わるなど環境変化に順応し難くなるといった不具合があることから、本実施例においては5〜10秒に設定するものとする。
【0058】
なお、
図11に示すように、画像表示装置Dに表示された広報内容に興味を持ち長時間その場に立ち止まる通行人Pがいる場合でも、観測点が通行人Pによって遮られている間は背景値の算出を中止して、通行人Pが通過して元の状態に戻ってから背景値の評価を再開するので、通行人P自体を背景と認識するといった不具合はない。
【0059】
また、実際の観測に当たっては動的な平衡状態を想定しておく必要があることから、常に変動する背景値においては赤・緑・青のそれぞれの値に関して
図10に示すような適宜の一定範囲(閾値thb以上閾値tha以下)をブレ幅とする平衡状態とみなした上で、当該範囲の上限値を超え或いは下限値を下回ったときに通行人Pが通過していると判断するものとしている。
【0060】
映像上の1点を監視すること自体は処理負荷がきわめて低いので、複数の点を同時に監視することが可能であり、これによれば、背景色の異なる点を観測点として選ぶことによって背景色と同じ色の服装の通行人Pの通過を補足でき、またある1点でのエラーを他の監視点がリカバーできるので全体としての測定精度を向上させることができ、しかも上述のとおり通行人Pの通過方向についても検出することができるようになるとともに、さらには照明の点灯など環境の急激な変化に対応することも可能となる(複数の観測点が同時に同一の変化を観測したときは急激な環境の変化があったと評価するものとしている)。
【0061】
前述のとおり、
図13に示す例においては、時系列に沿ってabcdの順に遮断が検出された場合、通行人Pが向かって左から右に通過したものと評価することができる。
【0062】
これに対して、abbaの順に遮断が記録された場合には、通行人Pが左から現れて、画像表示装置Dの前方域を通過することなくもときた方向へ戻って行ったものと評価することができる。
【0063】
また、すべてのポイントが一定時間以上同時に変化を記録するときは、たとえば外が暗くなる或いは照明がついたなど、環境の急激な変化として評価することによって背景値の記録を再開できるようにしている。
【0064】
以上のように通行人検出部Bは、通行人検出手段BDにのはたらきによって通行人Pの往来を把握しその数を計測するとともに通過時刻についても併せてログをとることができるようになる。
【0065】
やがて、通行人Pが画像表示装置Dの前方域に到達して当該画像表示装置Dないしその近傍に配設された撮像装置Cの方に視線を向けるとき、当該撮像装置Cはその撮影した映像のデータを視線検出部Eに送り出すとともに、当該視線検出部Eは適宜の視線検出手段EDによって同映像中から前記通行人Pの視線を見つけ出す。
【0066】
本実施例において上記の視線検出手段EDとしては、まずはHaas-Like特徴を用いて大まかな特徴を検出し、その特徴に基づき機械学習アルゴリズムの一種であるブースティンを用いて作成した分類器を利用することによって通行人Pの視線の存在を認識する方法を採用している。
【0067】
すなわち、撮像装置Cによって撮影された映像を構成する画像シーケンスがその取り込まれたフレーム毎に小さな検出窓5に分割され、続いて当該検出窓5として分割された各画像の断片に対して
図14に例示するような特徴パターンを順次適応していくこととなる。
【0068】
本実施例における視線の存在については、たとえば
図15に示すとおり、左右の目を横断する領域は目の下部域に比べて暗い、目は中央部分が暗くその左右は明るい、目と目の間は目部分に比べて明るいなどのいくつかの特徴パターンの集合として定義している。
【0069】
なお、上記検出窓5に視線が含まれている確率は一般的にはかなり低いことが想定されるので、視線を含まない画像サンプルとの比較を優先的に行うことによって視線を含む検出窓6だけを対象に絞込み、処理の高速化を図ることが可能である。
【0070】
具体的には
図17に示すとおり、分類器は弱い分類器1から分類器nを数珠繋ぎに結合してなるものであることから、最初の分類器1で視線を含まないと評価されると処理は中断して視線を含まない検出窓7と評価され処理は次の検出窓5に移行するように構成している。
【0071】
すべての弱い分類器1から分類器nをパスした検出窓5のみが視線を含む検出窓6として評価され、視線の中心座標、サイズ、並びに画像表示装置Dないし撮像装置Cから当該視線を発する通行人Pまでの距離及び方位(映像中のx・y座標)があわせて算出されることになる。
【0072】
画像表示装置Dないし撮像装置Cから通行人Pまでの距離の算出方法としては、上記視線検出手段EDによって検出された目の画像の大きさ(たとえば左右の端から端までの長さなど)に基づき、これをあらかじめ目画像の大きさと画像表示装置Dないし撮像装置Cまでの距離との関係について蓄積しておいたデータベースに照らして算出する方法や、あるいはよりシンプルには当該目形状の大きさの変化に基づく相対距離の評価によって通行人Pの挙動を把握するなど、絶対距離・相対距離に拘わらず、適宜の方法を考えることができる。
【0073】
また、上記目画像の大きさとあわせて、その左右の中心部分の映像中におけるxy座標を測定することによって、通行人Pのいる方位についても把握することができるので、これによってたとえば座標が略同じで大きさのみ大きくなっているときには近付いている、あるいは大きさが略同じであってx座標が増しているときには画像表示装置Dを見ながら右方向に移動しているなどと評価する方法を採用することも任意である。
【0074】
上記のとおりHaas-Like特徴とブースティンを組み合わせた視線検出のロジックは、高速処理が可能である点を特に評価することができるが、Haas-Like特徴のパターンを増やすことによって処理速度は犠牲になるものの検出精度を飛躍的に高めることも可能である。
【0075】
なお、画像表示装置Dを見るという動作は瞬間的なものではなく、また撮像装置Cからの映像は間断なく流れてくるので、一つのフレームを見逃しても次のフレームで検出できれば足り、実際にもたとえば2GHzのCPUで毎秒3〜5フレームを処理することが可能であることから、数フレーム程度の検出漏れは画像表示装置Dに対する視線の有無を判断するに当たっては問題とならない。
【0076】
このように視線検出手段EDによれば、画像表示装置Dの前方域を通過する通行人Pが当該画像表示装置Dないし撮像装置Cを見たかどうかを判断することができ、その時刻、座標、距離、見ていた時間などをログとして書き出し、集計後は端末コンピューターCLの適宜の記憶領域に解析データとして情報を保存するとともに、当該情報を情報送信部ISlよりサーバー・コンピューターCSに送信することができるようになる。
【0077】
また、本発明情報伝達処理装置1は、前述のとおり画像表示装置Dにたとえば
図19に示すようなキョロキョロと視線を動かす目形状の画像を表示しておき、前記視線検出部Eが通行人Pの視線を検出したときには、これをイベント・トリガーとして同装置1に備わるアニメーション生成部APが当該目形状に一旦瞬きをさせた後この通行人Pと視線を合わせるように動く(たとえば
図19における19A又は19Cのような状態から19Bの状態に変化する)画像を生成するものとして構成することができる。
【0078】
とりわけヒトのヒトに対するパターン認識が鋭敏なものであることについては、現代の認知科学の進歩によって科学的に、あるいは人面岩・人面蟹など昔からヒトはヒトのパターンを優先的に探す傾向を持つといったことから経験的にも確かに裏付けられるものであるところ、本発明情報伝達処理装置1は、上記のような構成により前記目形状を目で捉えた通行人Pに視線の交錯を意識させることによってきわめて強い印象を与えることができるようになる。
【0079】
しかも、本実施例において当該目形状は、視線検出部E及びアニメーション生成部APによって、一旦通行人Pとアイコンタクトを持った後さらにその視線を追尾するように動作するアニメーション(CGその他これに類する動画を含む。)として生成され画像表示装置Dに表示されるので、通行人Pの意識に強く呼びかけることが可能である。
【0080】
また、視線検出部Eは、画像表示装置Dの前方域を通過する通行人Pが撮像装置C又は前記画像表示装置Dに対して向ける視線を検出するとともに当該撮像装置C又は当該画像表示装置Dから前記通行人Pがいる場所までの距離を計測することができる。
【0081】
視線を検出する時、視線検出部Eは、たとえば前述のデータベースを用いてなす距離算出方法のような適宜の方法に基づき、通行人Pが撮像装置C又は画像表示装置Dに近付いて来るか、又は遠ざかっていくか、或いはそのままその場所から当該画像表示装置Dらの方を見続けているかについて判断する。
【0082】
そして、画像管理部Gは、視線検出時において画像表示装置Dに表示していた画像データ及びこれに関連性を有する特定の画像データ(の集合)の両者をあらかじめ紐付けて格納しており、上記判断の結果に応じて、たとえば近付いてくる通行人Pに対してはより興味を抱かせるようコンテンツ、遠ざかってゆく人に対してはもっと印象深いコンテンツ、その場に留まる人に対しては画像表示装置Dの方に近付いて来るように促すコンテンツをそれぞれ選択的に表示することによって、視聴者に対してあたかも1対1で対話しているかのような感覚を想起させることができる。
【0083】
このようにして、視線検出部Eが通行人Pの視線を検出したときには、これをイベント・トリガーとして、画像管理部Gが当該画像管理部Gに格納された特定の画像データを読み出し、あるいは音声管理部Vが当該音声管理部Vに格納された特定の音声データを出力することによって、端末コンピューターCLがこれを任意のサンプリング・レートで演算処理したものを画像表示装置Dにおいて表示し、あるいは音声出力装置Sにおいて再生出力するなど、さまざまなイベントを呼び出すことができるようになる。
【0084】
このとき、
図7に示すように、アイドリング状態にある画像表示装置Dの目立つ箇所に新たなウィンドウWを表示させ、前述の紐付けられた関連情報を音声や動画と共に再生すれば、きわめて効果的な広報活動を実現できるようになることは勿論である。
【0085】
また、サーバー・コンピューターCSは、さまざまな場所に点在する本発明情報伝達処理装置1に備わる情報送信部ISlから送信された解析データを情報受信部IRsにおいて受信すると、当該データに係る各種情報に基づいて統計的データに基づく(たとえば
図8に示すような)グラフを作成するとともにこれをディスプレイ装置M上に表示して閲覧可能な状態にすることができ、広報事業者側は当該グラフに基づく統計データを一元的に管理することができるようになる。
【0086】
また、これらの統計データから、地域や時間帯によって最も効果的な広報コンテンツを各情報伝達処理装置1に一括で又は個別に配信することが可能となり、従来にないダイナミックな広報事業を展開することが可能となる。
【0087】
いわゆる広報・宣伝のダイナミックな目論見は「目を魅く(attention)」「関心を持ってもらう(interest)」「強く魅かれる(desire)」「行動する(action)」といった流れを演出することにあるところ、上述のとおり本発明情報伝達処理装置1は、ヒトのヒトに対するパターン認識の鋭敏性を利用することによってきわめて情報訴求力の高い非接触型のインタラクティブな広報メディアを実現し得るものであり、これらの要件を完全に満たすまったく新規で強力な広報ツールとして成立するものである。