(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例は、受信機においてEmitter Localization and Visualization(ELVIS)といわれる逆方向レイ追跡アルゴリズムを用いる放射源及び/又は送信機を位置特定するための方法及びアルゴリズムを提供する。少なくとも一実施例によると、逆方向レイ追跡法は建造物等の構造物内の送信機の位置を予測するために使用される。少なくとも幾つかの実施例によると、位置特定方法は逆方向レイ追跡法を用いる技法に基づいて到着時間(TOA)、到来角(AOA)及び信号強度を単一のフレームワークに合成する。
【0014】
少なくとも1実施例は、構造物又は建造物の外に位置する1以上の受信機によって送信機から受信された信号の特性に基づいて、建造物内の送信機の位置特定を可能とする。実施例は、送信機又は受信機が静止しているのか、移動しているのか(例えば、消防士のような速い応答者によって搬送されているのか)、又は送信機と受信機の間に見通し線が存在するか否かにかかわらず、建造物又は他の構造物内の送信機の位置の一層正確な特定を可能とする。
【0015】
図面において、同様の符号は同様の要素を指すものとする。
【0016】
実施例は適切なコンピューティング環境において実施されているものとして説明する。必須ではないが、実施例はコンピュータプロセッサ又はCPUによって実行されているコンピュータで実行可能なインストラクション(プログラムモジュール等)の一般的な意味で記載される。一般に、プログラムモジュールは特定のタスクを実行し、又は特定のアブストラクトデータタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。さらに、当業者であれば、実施例は、移動体又はセルラ電話、手持ち型デバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサに基づく又はプログラマブル消費者用電気製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を含む他のコンピュータシステム構成で実施できることがわかるはずである。実施例はまた、タスクが通信ネットワークを介してリンクされた遠隔処理デバイスによって実行されるような分散コンピューティング環境においても実施され得る。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールはローカル及び遠隔メモリ記憶デバイスの両方に位置し得る。
【0017】
以降の記載において、実施例は、特にそれ以外を示さない限り、1以上のプロセッサによって実行される挙動及び動作のシンボル表現を参照して記載される。そのため、そのような挙動及び動作は、場合に応じてコンピュータに実行されているものとして言及するが、構成された形態でデータを表す電気信号のプロセッサによる操作を含む。この操作は、コンピュータのメモリシステム内の各位置でデータを変換し、又はそれを維持し、当業者によってよく理解されている態様でコンピュータの動作を再構成し、あるいは変更する。データが保持されるデータ構造体は、データのフォーマットによって定義される特定のプロパティを有するメモリの物理位置である。しかし、実施例は上記の意味で記載されるものの、当業者であれば以降に記載される種々の挙動及び動作がハードウェアでも実施できることが分かるはずであり、限定的なものを意図するものではない。
【0018】
実施例は建造物内に位置する送信機に関して記載されるが、実施例はトンネルのような他の構造物内、及び/又は群衆又は山岳地帯における送信機を位置特定する際にも使用できる。少なくとも一実施例によると、送信機の位置は逆方向レイ追跡アルゴリズムを用いて受信信号特性に基づいて推定される。
【0019】
図1は実施例による送信機位置特定システムを示す。
【0020】
図1を参照すると、一実施例によると、建造物200の外部に位置する受信機204Rは、
図3に関して以下により詳しく述べる位置特定方法を用いて建造物200内の送信機202Eを位置絞込みする(即ち、位置特定する)ことができる。
【0021】
少なくとも本実施例によると、送信機202Eは無線信号を送信(即ち、放射)し、これが複数の伝搬経路を介して受信機204Rにおいて受信される。送信機202Eは全方向に電磁放射信号(例えば、無線周波数(RF)信号)を放射することができるあらゆるタイプの送信機、送受信機又は通信機器とすることができる。例えば、送信機202Eは、建造物200の壁及び/又は構造体を貫通し及び/又はそれに反射されることができる周知の無線通信信号(例えば、GSM
(登録商標)、CDMA、TDMA等)又は任意の他の適切な無線周波数(RF)信号のような無線信号を送信することができる。
【0022】
送信機202Eによって放射される信号は送信パワーP
T等の既知の信号特性を持つ。
【0023】
図2は受信機204Rをより詳細に示す。図示するように、受信機204Rは上述の無線通信信号(例えば、GSM
(登録商標)、CDMA、TDMA等)のような無線信号を送信、受信及び処理するための受信装置204R−2を含む。受信装置204R−2は1以上のアンテナを有するアンテナアレイを含み、その各々は
図1の送信機202Eによって送信される上記の無線信号を送信及び受信することができる。
【0024】
受信装置204R−2は周知のアンテナアレイを含み、各受信信号、即ち「レイ」についての受信パワー、到来角(AOA)、到着時間(TOA)等のような信号特性を判定する能力がある。受信装置204R−2は上昇角、アジマス角、TOA等の関数としてレイの受信パワーを測定できる。このようなアンテナ、アンテナアレイ及び受信装置は当分野では周知であるので、それらの詳述は説明の簡明化のために省略する。
【0025】
レイは始点及び方向ベクトルによって記述され、無限の長さのものとする。レイは壁に当ると、レイセグメントとなる。レイセグメントは始点及び終点によって記述され、終点は入射点(発生点)(POI)として知られている。上述の信号特性を判定する方法は周知であるので、ここでは説明の簡明化のために簡単に述べる。
【0026】
図2をさらに参照すると、受信機204Rはまた、位置推定装置(LEU)(即ち、バックレイトレーサ)204R−6及びメモリ204R−8を含む。受信装置204R−2によって判定される各レイについての信号特性はLEU204R−6への出力となり、同時にメモリ204R−8に記憶される。LEU204R−6の動作の方法は
図3に関してより詳細に述べる。
【0027】
図3は一実施例による送信機を位置特定するための方法を示す。上述したように、
図3の方法は
図2に示すLEU204R−6で実行することができる。
【0028】
図2及び3を参照すると、受信装置204R−2からの各レイについての信号レイ特性を受信すると、ステップS102においてLEU204R−6はN個の最も強いレイを特定することができる。即ち、例えば、LEU204R−6は各受信レイの受信パワーを比較して最も強い受信パワーを有するN個のレイを特定する。
【0029】
代替的に、LEU204R−6はフィルタリングによってN個の最も強いレイを特定することができる。即ち、例えば、LEU204R−6は各受信レイに対応付けられる受信パワーを所定又は所与の閾値と比較することができる。閾値以上の対応受信パワーを有する各レイがN個の最強のレイの1つとして選択され得る。この実施例では、閾値は、例えば人間のオペレータによって、例えば建造物の構造、送信機の既知の送信パワー等に関する経験的データを用いて決定される。
【0030】
実施例によると、受信機204Rは送信機202Eが位置する建造物の設計図の知識及び建造物の構造組成物(例えば、壁の材料組成等)に関する情報を有していてもよい。
【0031】
N個の最強の受信レイを特定した後、ステップS104においてLEU204R−6は逆方向レイ追跡法を用いて送信機202Eから受信機204Rへの受信レイの経路を推定することができる。即ち、例えば、受信機204RはLEU204R−6内のシミュレーションを介して、N個のレイの各々を連続する入射点に対して停止条件が満たされるまで逆追跡することができる。受信レイを逆追跡する際に、LEU204R−6は、シミュレーションされる仮想レイを用いて、実際のレイの戻り経路(それは受信レイの推定経路をたどる)をシミュレーションすることができる。
【0032】
仮想レイは始点及び方向ベクトルによっても記述されるシミュレーション上のレイであり、無限の長さをもつものとする。仮想レイが壁に当ると、仮想レイは仮想レイセグメントとなる。仮想レイセグメントは始点及び終点によって記述され、終点は入射点(POI)として知られる。言い換えると、仮想レイセグメントは仮想レイの一部分である。
【0033】
少なくとも幾つかの実施例によると、特定の入射点で、
(a)入射点での仮想レイの予測パワーPが想定パワーP
T以上である場合、なお、想定パワーP
Tは送信機の既知の送信パワーである、
(b)仮想レイによって横断される経路上の入射点の数が閾値限界を超える場合、又は
(c)仮想レイが建造物から離れた場合、
停止条件が満足される。
【0034】
停止条件が満たされると逆追跡は終了する。逆追跡中に遭遇する各入射点(即ち、点)の位置がメモリ204R−8内に(例えば、建造物の設計図を用いて決定される座標の形式等で)記録される。メモリ204R−8内で、入射点は逆追跡されている受信レイとの対応関係において記憶される。全ての逆方向追跡されるレイについての特性(例えば、レイパワー、伝搬遅延等)及び建造物200の建築設計図をメモリ204R−8に記憶することもできる。
【0035】
N個のレイ各々の逆追跡は直列又は並列に実行することができ、それを行う方法を以下に
図4に関してさらに詳細に説明する。上記のように、逆方向レイ追跡はLEU204R−6におけるシミュレーションとして実行できる。
【0036】
図3を再度参照すると、ステップS104においてN個の最強レイを逆追跡した後に、ステップS106においてステップLEU204R−6はメモリ204R−8に記憶された入射点に基づいて候補位置を特定することができる。特定された候補位置は送信機202Eについての可能な位置を表す。
【0037】
候補位置は逆追跡されるレイの対となる交点(又は、代替的に、ユーザ又は人間のオペレータによって指定される範囲内の概略の交点)である。即ち、例えば、候補位置は少なくとも2本の逆追跡されるレイに共通する入射点となり得る。少なくとも一実施例によると、2より多い仮想レイが同じ入射点で交差する場合、その点は複数の候補位置を有し得る。
【0038】
理想的な条件の下では、送信機202Eの実際の位置は、全ての仮想レイの予測パワーPが送信パワーP
Tに等しい状態で複数の仮想レイ交点を有すること、及び受信機204Rから送信機202Eへの各仮想レイについての推定伝搬時間も等しいことによって特徴付けられる。
【0039】
上記のように、候補位置を生成するために、LEU204R−6は少なくとも2本の仮想レイが交差する入射点を特定することになる。入射点は仮想レイが壁又は構造体に突き当たり又は衝突する点である。
【0040】
少なくとも一実施例によると、LEU204R−6はメモリ204R−8に記憶された入射点を解析することによって候補位置を特定することができる。入射点は逆追跡される各受信レイに対応して記憶されるので、LEU204R−6は逆追跡される各レイに対応付けられた各入射点の位置を比較して少なくとも2つの逆追跡されるレイに共通する点を特定することができる。その少なくとも2つの逆追跡されるレイに共通する点は候補位置として識別される。
【0041】
代替的に、入射点は各仮想レイとの対応において記憶される。本例では、LEU204R−6は各仮想レイに対応付けられた各入射点の位置を比較して少なくとも2つの仮想レイに共通する点を特定する。その少なくとも2つの仮想レイに共通する点は候補位置として識別される。
【0042】
図3をさらに参照すると、ステップS108において、LEU204R−6は各候補位置に対応付けられる特性(例えば、推定及び/又は予測信号特性)に基づいて送信機202Eの実際の位置を特定することができる。少なくとも一実施例によると、特性(例えば、推定及び/又は予測される信号特性)が各候補位置で交差する仮想レイに対応付けられる。
【0043】
一例では、LEU204R−6は、候補位置各々に対応付けられる少なくとも1つのメトリックに基づいて候補位置を送信機202Eの実際の位置として選択することができる。少なくとも1つのメトリックは候補位置各々について特定された複数の位置メトリックの偏重和であってもよい。実施例は候補位置各々について特定された複数の位置メトリックに関して記載されるが、各候補位置は1以上の対応付けられた位置メトリックを有し、送信機202Eの実際の位置は各候補位置に対応付けられた1以上の位置メトリックに基づいて特定することもできる。
【0044】
LEU204R−6は各記憶された候補位置に対応付けられる偏重メトリックを特定し、記憶された各候補位置に対応付けられた偏重メトリックに基づいて送信機02Eの実際の位置を選択することができる。候補位置を送信機202Eの実際の位置として選択する際に、LEU204R−6は記憶された各候補位置に対応付けられた偏重メトリックを比較して最も高い対応偏重メトリックを持つ候補位置を特定する。最も高い偏重メトリックを有する候補位置は送信機202Eの実際の位置として選択又は識別されることになる。
【0045】
偏重メトリックは特定の候補位置に対応付けられた複数の位置メトリックの和であればよい。各候補位置に対応付けられた位置メトリックは隣接候補位置メトリック、パワー差メトリック、想定−予測パワーメトリック及び/又は遅延メトリックを含み得る。位置メトリックの各々は追加の測定パラメータに基づいて特定することができる。
【0046】
隣接候補位置メトリックは交点の数又は候補位置の付近(例えば、所与の範囲の近く又はその範囲内)にある候補位置に基づいて特定することができる。複数の候補位置の領域は送信機202Eの実際の位置を含む可能性が高い。特定の候補位置についての隣接候補位置メトリックを計算する方法例が以下にさらに詳しく記載される。この説明の目的のため、n
iはi番目の候補位置の付近又は近くにある可能な隣接候補位置の数を示す。
【0047】
隣接候補位置メトリックは、i番目の候補位置の付近又は近くにある可能な隣接候補位置の数及びk番目の候補位置の付近にある可能な隣接候補位置の数に基づいて生成することができる。k番目の候補位置は可能な隣接候補位置の最大数を持つ候補位置のことである。少なくともこの実施例によると、i番目の候補位置についての隣接候補位置メトリックm
1,iは以下の式(1)で与えられ、数値(例えば、10進数値)を生成する。ここで述べるように、下付き数字(例えば、m
1,iにおける「1」)は複数の位置メトリック間を区別するものである。
【数1】
【0048】
パワー差メトリックは候補位置で入射する仮想レイ間の予測パワー差に基づいて特定することができる。送信機の実際の位置では、交差する仮想レイの予測パワーPは互いに許容範囲以内となるべきである。この説明の目的のために、p
iはi番目の候補位置での交差仮想レイ間の絶対パワーの差を示すものとする。
【0049】
パワー差メトリックはi番目の候補位置での予測パワーp
i及びk番目の候補位置での予測パワーp
kに基づいて生成することができる。k番目の候補位置での予測パワーは全ての候補位置についての最大予測パワー差を意味する。少なくともこの実施例によると、i番目の候補位置についての予測パワー差メトリックm
2,iは以下の式(2)で与えられ、数値(例えば、10進数値)を生成する。
【数2】
【0050】
想定−予測パワーメトリックは候補位置で入射する各仮想レイについての想定送信パワーP
Tと予測パワーPの差に基づいて特定することができる。送信機の実際の位置において、理想的には、入射仮想レイの予測パワーPは送信機202Eの既知の送信パワーP
Tに等しい。しかし、これは、送信機202Eと受信機204Rの間の伝搬中に信号の干渉やフェーディングのために常にそうなるとは限らない。従って、送信機202Eの既知の送信パワーと候補位置における仮想レイ入射の推定パワーの間の差が、想定−予測パワーメトリックを特定するために使用され得る。
【0051】
例示目的として、i番目の候補位置で交差する2つのレイが検討され、Δp
i,1が想定パワーP
Tからの第1のレイのパワー偏差を示し(例えば、Δp
i,1=P
1−P
T)、Δp
i,2が想定パワーP
Tからの第2のレイのパワー偏差を示すものとする(例えば、Δp
i,2=P
2−P
T)。
【0052】
第1の想定−予測パワーメトリックm
3,iは、第1のレイのi番目の候補におけるパワー偏差Δp
i,1及びk番目の候補位置における想定パワーからのパワー偏差Δp
k,1に基づいて特定することができる。なお、k番目の候補位置におけるパワー偏差は全ての候補位置についての最大パワー偏差である。より具体的には、i番目の候補位置についての想定−予測パワーメトリックm
3,iは以下の式(3)で与えられ、数値(例えば、10進数値)を生成する。
【数3】
【0053】
同様に、第2の想定−予測パワーメトリックm
4,iは、第2のレイのi番目の候補におけるパワー偏差Δp
i,2及びk番目の候補位置における想定パワーからのパワー偏差Δp
k,2に基づいて特定することができる。なお、k番目の候補位置におけるパワー偏差は全ての候補位置についての最大パワー偏差である。より具体的には、i番目の候補位置についての想定−予測パワーメトリックm
4,iは以下の式(4)で与えられ、数値(例えば、10進数値)を生成する。
【数4】
【0054】
実施例はレイの到着時間には依存しない。しかし、受信機204Rが受信レイ間の遅延差を推定することができる場合、これらの到着時間は任意の所与の候補位置について推定できる。従って、受信機204Rによって測定された相対遅延のセットは任意の候補位置について算出された相対遅延のセットに対して比較されることができ、遅延メトリックとして知られる差は他の位置メトリックとして使用できる。
【0055】
例えば、受信機204Rにおいて2本のレイg及びhが時刻t
g及びt
hにそれぞれ到着したとする。仮想レイg´及びh´はi番目の候補位置で交差すると特定された場合、仮想レイg´及びh´の到着間の相対遅延はLEU204R−6によって特定されることになる。例えば、受信機204Rから候補位置への対応する経路がメモリ204R−8に記憶されるので、受信機204Rから候補位置への折り返されない距離d
h´及びd
g´が特定される。この折り返されない距離d
h´及びd
g´はそれぞれ仮想レイh´及びg´各々が伝搬する距離である。言い換えると、折り返されない距離d
h´及びd
g´は、候補位置から受信機204Rへのレイh及びgが伝搬する距離の推定値となる。仮想レイg´及びh´各々についての予測伝搬遅延は式(5)及び(6)を用いてLEU204R−6によって特定することができる。
【数5】
【数6】
【0056】
式(5)及び(6)の各々において、cは光の速度である。式(5)及び(6)の結果を用いて、式(7)によって到着時間差メトリックz
iがi番目の候補位置について算出される。
【数7】
【0057】
到着時間差メトリックz
iを算出した後、時間差位置メトリックが以下の式(8)によって与えられ、数値(例えば、10進数値)を生成する。
【数8】
【0058】
式(8)に示すように、時間差位置メトリックm
5,iは、i番目の候補位置において到着する仮想レイg´及びh´についての到着時間における差、及びレイg及びh各々についての予測伝搬遅延における差に基づいて特定することができる。各候補位置についての上述の偏重メトリックは1以上の上述の位置メトリックを用いて算出できる。偏重メトリックの算出の際に、各位置メトリックは測定値の信頼性に依存して別々に偏重される。少なくとも一実施例によると、特定の候補位置についての偏重メトリックは特定の候補位置に対応付けられた全ての位置メトリックを加算することによって計算することができる。
【0059】
上記のように、各候補位置についての偏重メトリックを計算した後に、偏重メトリックが比較され、最も高い偏重メトリックに対応付けられた候補位置が送信機202Eの実際の位置として選出又は選択される。
【0060】
少なくとも一実施例によると、送信機202Eの位置は表示スクリーンを介して、例えば、送信機202Eの実際の位置の表示とともに建造物図の形式で、ユーザに表示してもよい。そのようなディスプレイは当分野では周知であるので、説明の簡明化のために詳述を省略する。
【0061】
上述のように、LEU204R−6は送信機202Eから受信機204Rへの経路に沿う各受信レイを、逆の順序で、停止条件が満足されるまで逆追跡することによって入射点及び候補位置を識別することができる。
【0062】
図4に実施例による逆方向レイ追跡法の簡単な例を示す。
【0063】
図4を参照すると、LEU204R−6は受信機204Rにおける送信機202Eからの受信レイによって横断される経路を、メモリ204R−8に記憶された受信レイの信号特性及び建造物の設計図を用いて予測することができる。
【0064】
図示するように、送信機202Eからのレイは、受信機204Rにおいて受信される前に点Bを介して送信されて建造物200を出る。受信レイ(例えば、到来角、受信パワー等)の特性を用いて、LEU204R−6はレイが受信される方向を特定することができる。この方向ベクトルを用いて、LEU204R−6は仮想レイr
gを、シミュレーションを介して、レイが受信される方向に点Bに向けて発射する。仮想レイr
gは送信機202Eから受信機204Rに送信されたレイの最終レイセグメントを逆方向レイ追跡する。このような逆方向レイ追跡は以下の態様で実行することができる。
【0065】
3Dの場合、点Bがある長方形状の壁は式(9)によって与えられる。
【数9】
【0066】
式(9)において、n=(A;B;C)
Tは壁面に対する法線である。仮想レイr
gが乗る線は、
【数10】
のようにパラメータの形式で表すことができる。
【0067】
例示目的のため、本実施例は(x
0;y
0;z
0)
Tに関して、仮想レイr
gの起点位置ベクトル(例えば、受信機204Rの場合において、仮想レイr
gが入射する点)として記述される。ここで、v=(x
d;y
d;x
d)
Tは仮想レイr
gの方向における単位ベクトルであり、長さパラメータt(t>0)は仮想レイ起点(x
0;y
0;z
0)
Tと仮想レイr
g上の他の任意の点の間の距離に対応する。仮想レイr
gと壁との交点を見つけるために、式(10)が式(9)に代入されて式(11)を得る。
【数11】
【0068】
交点Bは式(11)をtについて解くことによって決定される。本例では、t≧0でかつ式(9)に関する上記の制約が満たされる場合に有効な交点が存在する。これらの制約が満たされる場合、点Bの位置(又は、より一般的に、仮想レイr
gについての入射点)を決定するためにtの値が用いられる。2つの新たな変数は、
【数12】
及び
【数13】
で導入される。
【0069】
式(12)及び(13)が与えられると、式(11)は式(14)として書き換えることができる。
【数14】
【0070】
式(14)において、Fは平面の法線と起点の位置ベクトル(x
0;y
0;z
0)
Tのスカラ積であり、Eは平面の法線と線の方向ベクトル(x
d;y
d;z
d)
Tのスカラ積である。
【0071】
F=0の場合、起点の位置ベクトル(x
0;y
0;z
0)
Tは平面の法線に対して直角である。E=0の場合、線のベクトル(x
d;y
d;z
d)
Tは平面の法線に対して直角である。式(9)及び(10)は仮想レイr
gが壁に交差するかを判別するために以下のように用いることができる。
【0072】
E=0かつF+D=0の場合、送信機202E及び仮想レイr
gは点Bがある壁と同一平面内にあることになる。この場合、仮想レイr
gが壁に交差するかを判別するために、仮想レイr
g上で壁の各頂点から最も近い点が位置特定される。位置特定された点の少なくとも1つが壁上にある場合、仮想レイr
gは壁に交差するものと判別される。
【0073】
図6A−6Dは例示の可能性を示すものであり、これらは仮想レイr
gと壁が同一平面内にある場合に区別される必要がある。
図6Aは仮想レイr
g及び壁が同一平面上にあり、レイが頂点のみで壁と交差する例を示す。
図6Bは、仮想レイr
g上の壁の頂点まで最短の点の1点のみが壁上にある例を示す。
図6Cは仮想レイr
gが壁と交差しない例を示す。この場合、仮想レイr
g上の壁の頂点まで最短の点のいずれの点も壁上にない。
図6Dは仮想レイr
g上の壁の頂点まで最短の点の2点が壁上にある例を示す。この場合、仮想レイr
gは壁に交差するものと判別される。
【0074】
E=0かつF+D≠0の場合、仮想レイr
gは壁面に平行であり、壁と同一平面にはなく、仮想レイr
gは壁に交差しない。
【0075】
E≠0かつF+D=0の場合、起点(x
0;y
0;z
0)
Tは壁と同一平面にあるが、仮想レイr
gは壁面に平行ではない。起点(x
0;y
0;z
0)
Tの座標が式(9)の条件を満たす場合、起点(x
0;y
0;z
0)
Tは壁上にある。
【0076】
E≠0かつF+D≠0の場合、線は壁面に交差するが起点及び仮想レイr
gは壁と同一平面上にない。本例では、非ゼロのt値が式(15)によって与えられる。
【数15】
【0077】
少なくとも幾つかの実施例によると、t>0の場合、仮想レイr
gが壁面と交差することになる。仮想レイr
g及び壁についての入射点(即ち、本例では点B)が式(10)を用いて決定され、壁上に交点があるか否かが、式(9)の条件が満たされるかを調べることによって判別される。
【0078】
図4を参照すると、仮想レイr
gが壁に点Bで衝突する。そしてLEU204R−6は停止条件が点Bにおいて満たされたかを判別する。
【0079】
上記のように、点Bにおいて、
(a)仮想レイの予測パワーPが想定パワーP
T以上である場合、なお、想定パワーP
Tは送信機の既知の送信パワーである、
(b)仮想レイによって横断される経路上の入射点の数が閾値限界を超える場合、又は
(c)仮想レイが建造物から離れる場合、
停止条件が満たされる。
【0080】
図2を参照すると、少なくとも一実施例によると、受信装置204R−2は式(16)を用いて受信レイの受信パワーP
Rを計算することができる。
【数16】
【0081】
式(16)において、dはレイによって伝搬された折り返されない距離であり、G
Tは送信アンテナゲイン、G
Rは受信アンテナゲイン、P
Tは送信パワー、P
Rは受信パワー、λは波長である。式(16)は、レイが受信機に到達する前にM回の透過及びK回の反射を経るものとしている。変数t
mはm番目の透過についての透過係数を示し、r
kはk番目の反射についての反射係数を示す。M、K、m及びkの全ては整数である。
【0082】
式(16)が与えられると、LEU204R−6は上述の式(16)を反転することによって逆追跡されるレイの経路に沿う任意の点におけるパワーを予測できる。レイがM回の透過及びK回の反射を送信機202Eから受信機204Rへの経路を介して経験したものとして、M回の透過係数及びK回の反射係数の積はSであり、以下の式(17)によって表される。
【数17】
【0083】
反射係数及び透過係数は0から1の間の範囲となるので、反射及び/又は透過の数が増加するとSは減少する。Sを用いて式(17)を表し、式(16)を反転すると、LEU204R−6は逆方向追跡されるレイ上の任意の点における予測パワーPを、式(18)を用いて計算することができる。
【数18】
【0084】
式(18)において、G
Tはアンテナゲイン、G
Rは受信アンテナゲイン、λが波長、P
Rは受信パワー、dは予測パワーPが特定されている点と受信機204Rの間でレイが伝搬した合計経路長である。これらの値の各々はLEU204R−6で知得又は計算され得る。パラメータG
T、G
R及びλは既知のシステムパラメータであり、係数r
k及びt
kは建造物内の壁及び構造体の既知のプロパティである。係数r
k及びt
kは建造物を建築するのに使用された材料のプロパティに基づいて算出することができる。距離dは位置推定装置204R−6によってシミュレーション中に算出された合計伝搬距離である。送信パワーP
Tは既知のシステムプロパティである。
【0085】
レイは逆方向追跡されているため、仮想レイの予測パワーPは受信機204Rからの距離が増加するにつれて、並びに反射及び/又は透過の数が増加するにつれて上昇する。従って、より小さいパワーP
Rを有する受信レイは、想定パワーP
T以上の値に達する前に、より多い回数を反射及び/又は透過されたことになるので更なる距離を逆方向追跡される必要がある。
【0086】
図4を参照すると、停止条件が(a)が点Bにおいて満たされたかを判別するために、LEU204R−6は送信機202Eの予測パワーPと想定又は既知の送信パワーP
Tを比較する。予測パワーPが送信機202Eの想定パワーP
T以上である場合、停止条件(a)が満たされ、レイの逆方向レイ追跡は終了する。
【0087】
予測パワーPが想定パワーP
T未満である場合、停止条件(a)は満たされず、LEU204R−6は仮想レイr
gの経路上の入射点の数が閾値よりも大きいかを判別する。レイを逆方向レイ追跡するとき、LEU204R−6は仮想レイの経路に沿う入射点(例えば反射及び/又は透過)の数を追跡する。即ち、例えば、LEU204R−6は仮想レイが建造物の壁又は構造体に衝突する毎にカウンタ(不図示)を増分する。
【0088】
仮想レイについての入射点の閾値数の例は5程度であるが、任意の閾値を使用できる。現在の入射点(この場合は点B)を含む入射点の数が(閾値に)達した場合、停止条件(b)が満たされ、点Bを起点とするレイセグメントを含むレイの逆方向レイ追跡を終了する。
【0089】
停止条件が満たされたか否かにかかわらず、点Bにおいて、この点の座標が特定され、その位置が可能な候補位置としてメモリ204R−8に記憶される。
【0090】
図4を参照すると、上記停止条件のいずれも満たされない場合、点Bは透過された仮想レイセグメントr
k及び反射された仮想レイセグメントr
nが発せられた事実上の送信機(又は放射源)となる。反射されたレイセグメントr
nは建造物を出るので、仮想レイセグメントr
nについて停止条件(c)が満たされ、仮想レイセグメントr
nの逆方向追跡が終了する。
【0091】
一方、透過された仮想レイセグメントr
kは建造物から出ておらず他の壁に点Cで衝突すると、仮想レイセグメントr
kの逆方向追跡は継続する。点Cにおいて、LEU204R−6は停止条件(a)又は(b)が満たされたかを点Bに関して上述したのと同じ態様で判別することができる。これも上述したように、点Cで停止条件が満たされたかにかかわらずこの点の座標が特定され、その位置が可能な候補位置としてメモリ204R−8に記憶される。
【0092】
停止条件が点Cで満たされた場合、逆方向レイ追跡は終了する。停止条件が点Cで満たされない場合、点Cは反射された仮想レイセグメントr
l及び透過された仮想レイセグメントr
mが発せられた事実上の送信機(又は放射源)となる。透過された仮想レイセグメントr
mは建造物を出るので、仮想レイセグメントr
mについて停止条件(c)が満たされることにより、この仮想レイセグメントの逆方向追跡は終了する。
【0093】
反射された仮想レイセグメントr
lは建造物を出ないが、その代わりに点Eで衝突する。点Eにおいて、LEU204R−6は停止条件(a)又は(b)が満たされたかを点B及びCに関して上述したのと同じ態様で判別することができる。これも上述したように、点Eで停止条件が満たされたかにかかわらずこの点の座標が特定され、その位置が可能な候補位置としてメモリ204R−8に記憶される。
【0094】
点Eは送信機202Eの位置であるので、点Eにおける仮想レイの予測パワーPが想定パワーP
T以上となることによって仮想レイについての停止条件(a)が満たされる。各逆方向追跡されたレイについて停止条件が満たされた後、LEU204R−6は上述のように送信機の実際の位置を特定することができる。
【0095】
実施例によると、単一の受信機が送信機を位置特定するのに使用され得る。しかし、複数の受信機が、それとともに又は代替的に、送信機の位置特定に関連する予測エラーを減少させるのに使用され得る。
【0096】
送信機の位置が検知及び後続の処理の持続時間にわたって変化しない場合(例えば、送信機が静止している場合)、複数の受信機を用いる代わりに受信機におけるアンテナ設定の位置を変化させて複数の測定値が取得されるようにしてもよい。
【0097】
図5は他の実施例による送信機位置特定システムを示す。図示するように、システムは複数の受信機204R、206R及び208Rを含み、それらの各々は送信機202Eから送信された信号を受信することができる。本実施例によると、各受信機204R、206R及び208Rは中央処理装置(例えば、受信機204RにおけるLEU204R−6)に受信信号の特性を送る。少なくとも受信機206R及び208Rは送信機202Eから送信された信号を受信すること及び無線信号の形式で情報を受信機204Rに送信することができる送受信機となる。例えば、信号特性は各入着レイのAOA、TOA及び受信パワー並びに受信機自体の座標を含んでいればよい。
【0098】
この実施例では、各受信機は、レイ選択手順を除いて、
図2の受信機204Rと同様の態様で動作することができる。この実施例では、全てのアンテナ間で受信されたN番目に強いレイが逆追跡のために選択される。
【0099】
例えば、合計K個の受信機があり、k番目の受信機がn
k本のレイを報告するものとする。以下の本数のレイから、最も高い受信パワーのN本のレイを選択することができる。
【数19】
従って、より送信機に近い受信機がより多くのレイに寄与する可能性が高く、より遠い受信機はより少ないレイにしか寄与しないことになる。その受信機で受信された全てのレイの間の最も高い関連パワーを有するレイを選択すると、逆方向レイ追跡を用いてレイが衝突する壁の数が弱いレイよりも少ないので演算時間が減少する。
【0100】
実施例によると、受信機の数を増加することによって予測エラーが減少するが、受信機数とは独立して固定数のレイが選択されるので演算時間を増加することにはならない。少なくとも幾つかの実施例では、受信機数を増加することによって、より強いレイが生成され得るので演算時間が減少する。異なる受信機からのレイを逆方向レイ追跡することは、より少ない交点に帰着する。従って、候補位置がより少なくなり、これによって演算時間がさらに減少することになる。
【0101】
実施例は屋内環境についての逆方向レイ追跡に基づく位置特定ツールを提供する。逆方向レイ追跡は、特に複数の受信機が使用される場合、劣化にも効果的である。角度分解能が比較的高い場合、実施例は従来の位置特定方法よりも信頼性の高い結果を単一の受信機で提供できる。より低い角度分解能の場合、複数の受信機が十分な正確さをもって位置特定することが必要となる。実施例によると、LOSは放射器と受信機の間に必要ではない。
【0102】
発明はこのように記載されるものであるが、同じものが多くの態様で変更できることは明らかである。このような変更例は発明から離れたものとはみなされず、全てのそのような変形例は発明の範囲内に含まれることが意図されている。