特許第5674323号(P5674323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674323
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】シールド構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   H05K9/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-31749(P2010-31749)
(22)【出願日】2010年2月16日
(65)【公開番号】特開2011-171390(P2011-171390A)
(43)【公開日】2011年9月1日
【審査請求日】2013年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】314008976
【氏名又は名称】レノボ・イノベーションズ・リミテッド(香港)
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 大悟
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/094067(WO,A1)
【文献】 特開2006−344716(JP,A)
【文献】 特開2004−253505(JP,A)
【文献】 特開平06−349967(JP,A)
【文献】 特開平03−254134(JP,A)
【文献】 特開昭62−069697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の板材の縁部を前記矩形の各辺より所定距離だけ内側で前記各辺と平行な折り曲げ線に沿ってそれぞれ同一方向に折り曲げることによって、周囲が前記所定距離に相当する同一の高さの側壁により囲まれた有底の箱状のシールドケースを形成して基板上の実装部品を覆ったシールド構造であって、
前記側壁を折り曲げる以前の展開状態の板材の、一の側壁に相当する範囲と該一の側壁に隣り合う他の側壁に相当する範囲との間を分離する位置に切欠きが形成され、
前記板材の前記一の側壁に相当する範囲は、該一の側壁に沿う辺の方向に沿って、他の側壁に相当する範囲よりさらに外側まで一体に延長されて規制部材とされ、
該規制部材は、前記基板上の樹脂塗布対象部品と樹脂塗布禁止部材との境界に設置されることを特徴とするシールド構造。
【請求項2】
前記一の側壁に相当する範囲と他の側壁に相当する範囲との間には、前記規制部材が設けられた一の側壁に相当する範囲と他の側壁に相当する範囲とを規制部材に沿って分割するスリット状の切り欠きが設けられたことを特徴とする
請求項1に記載のシールド構造。
【請求項3】
前記規制部材は、前記シールドケースの側壁に複数箇所設けられることを特徴とする請求項2に記載のシールド構造。
【請求項4】
前記規制部材は、前記基板の端部に設置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度向上、水漏れ対策、ノイズ対策などで実装基板上に使用される板金シールド等に適用されて、該板金シールドへの安定した樹脂塗布が可能となるようなシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やポータブルオーディオプレイヤーなどの小型電子機器においては、ユーザーの取扱いで落下させてしまうなどの事故が発生する可能性が高い。このため、基板上の半田付け強度が弱い部品に対して樹脂塗布を行い、アンダーフィルやサイドフィルを形成することで強度向上を図ることがある。
また、水濡れ等で発生するイオンマイグレーションにより、大電流が流れ、発熱に至る可能性のある回路があるような場合においては、該当回路への水分付着を防ぐため、樹脂で実装部品を覆うことで対策を行うこともある。
【0003】
そして、このような強度向上、水漏れ又はノイズ対策などに対応して、以下の特許文献1〜4に示される技術が示されている。
特許文献1に示される携帯電話機は、プリント配線板の上面に、実装部品を覆ってシールドするためのシールドケースが設置され、該シールドケース内に発泡樹脂ウレタン樹脂が充填注入される構造である。
特許文献2に示される電子機器は、プリント基板の上面にノイズ対策のためのシールドケースが設置され、該シールドケースのハウジング側板に、変形防止のために突部が設けられる構造である。
【0004】
特許文献3に示されるシールドケースは、基板上に高周波回路を覆うフレームを設け、該フレームの側壁部に位置する係止部が互いに係止される構造である。
特許文献4に示されるノイズシールドケースは、基板上の電子部品を覆うとともに、その周壁部の下面に形成された折り返し部を、該基板上にはんだ付けする構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第05/101931号パンフレット
【特許文献2】特開2003−204178号公報
【特許文献3】特開2006−93181号公報
【特許文献4】特開2008−270518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、上述した樹脂の塗布は、特許文献1〜4に示されたシールドケースに実装部品を収納した状態で行われることがある。
しかしながら、このような樹脂の塗布は、“長時間放置による吸水”や“高温での加熱”などにより最終的に硬化はするものの、塗布を行う時点では流動性がある。従って、樹脂塗布対象物の周囲の実装条件によっては、塗布作業が非常に困難なケースがある。
【0007】
例えば、基板の端部に樹脂塗布対象部品が実装されているような場合、塗布量を多くすると基板端から樹脂が流れ落ちてしまう。このため、少量しか塗布できず、期待する効果(強度向上、絶縁)が十分に得られない可能性がある。また別の例として、樹脂塗布対象となる部品の実装位置が、特性面等の理由から樹脂付着が禁止されている樹脂塗布禁止部品に隣接している場合においては、樹脂塗布対象部品への樹脂塗布自体ができなくなってしまう場合も考えられる。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、強度向上、水漏れ、ノイズ対策などで使用される板金シールド等に適用されて、基板端から樹脂が流れ落ちること、又は樹脂塗布が不可の領域に樹脂が流れることを防止し、該板金シールドへの安定した樹脂塗布を可能とするシールド構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明では、基板上の実装部品を覆うシールドケースを有するシールド構造であって、前記シールドケースには封止用の樹脂の移動を止める規制部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明によれば、基板上の実装部品を覆うシールドケースに封止用の樹脂の移動を止める規制部材が設けられているので、樹脂塗布対象部品が基板端に実装されている場合において、該規制部材を基板の端部に配置することによって、基板端から樹脂が流れ落ちることを防止することができる。また、樹脂塗布対象部品が樹脂塗布禁止部品に隣接するように実装されている場合において、これら樹脂塗布対象部品と樹脂塗布禁止部品との境界に、該規制部材を配置することによって、樹脂塗布が禁止されている領域に樹脂が流れることを防止することができる。その結果、シールドケース及び周辺部品への安定した樹脂塗布が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係るシールドケースの外観図である。
図2図1に示すシールドケースの展開図である。
図3図1及び図2のシールドケースの配置例(1)を示す斜視図あって、(A)はノズルから樹脂を吐出する様子を示す図、(B)は樹脂を塗布した状態を示す図である。
図4】一般的なシールドケースの外観図である。
図5図4に示すシールドケースの展開図である。
図6図4及び図5のシールドケースの配置例(一)を示す斜視図であって、(A)はノズルから樹脂を吐出する様子を示す図、(B)は樹脂を塗布した状態を示す図である。
図7図1及び図2のシールドケースの配置例(2)を示す斜視図あって、(A)はノズルから樹脂を吐出する様子を示す図、(B)は樹脂を塗布した状態を示す図である。
図8図4及び図5のシールドケースの配置例(二)を示す斜視図あって、(A)はノズルから樹脂を吐出する様子を示す図、(B)は樹脂を塗布した状態を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るシールドケースの外観図である。
図10図9に示すシールドケースの展開図である。
図11図9及び図10のシールドケースの配置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1図8を参照して説明する。
図1及び図2は、本発明のシールドケース1に係るシールド構造である。このシールドケース1は、基板2上の実装部品を覆うために下部が開口された箱型形状に形成されている。また、このシールドケース1の周辺部近傍においても、後述するように、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1、又は「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2が各種配置される。
【0013】
また、このシールドケース1は、板金で形成された板金シールドであり、用途としては主に次の2つが代表的なものである。まず、第1の用途は、基板上に実装されている電気回路の中にノイズを輻射するような実装部品があるような場合に、ノイズ対策としてノイズ源部品を覆うために使用することである。また、第2の用途は、基板2への実装部品の半田付け強度が弱い場合に、強度向上のため該当部品を覆うように実装することである。
【0014】
また、前記シールドケース1では、図2に示すような1枚の板金の3箇所の角部を切り欠き(切欠部を符号3で示す)、縁部に沿った点線部4を折り目として(図中上側に)その4箇所の壁部5を折り曲げることで、全体が箱型に形成される。このとき、前記切欠部3が形成されていない箇所の壁部5を延長することによって、隣り合う他の壁部5よりも外側に突出された規制部材10が形成されている。この規制部材10は、封止用の樹脂の移動を止めるために形成されたものである。
【0015】
[シールドケース1の装着例(1)]
本例では、図3(A)(B)に示されるように、シールドケース1の周辺部近傍であり、かつ基板2の端部2A付近に位置する実装部品D1が「樹脂塗布対象部品」である場合に、該実装部品D1と、基板2の端部2Aとの間に規制部材10が配置されるように、シールドケース1の向きを設定し配置する。これによって、当該実装部品D1にノズル6を通じて樹脂Rが塗布された場合に、その塗布した樹脂Rが、基板2の端部2Aからこぼれ落ちることが防止される。
【0016】
これに対して、一般的なシールドケース50では、図4の外観図、及び図5の展開図に示されるように、1枚の板金の4箇所の角部を切り欠き(切欠部を符号51で示す)、縁部に沿った点線部52を折り目として(図中上側に)その4箇所の壁部53を折り曲げることで、全体が箱型に形成される。このとき、このシールドケース50では、1つの壁部53を延長した規制部材が形成されていないので、図6(A)(B)に示すように、同様に配置された「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1に樹脂Rが塗布された場合に、その塗布した樹脂Rが、基板2の端部2Aからこぼれ落ちるという不具合が発生する。
【0017】
[シールドケース1の装着例(2)]
本例では、図7(A)(B)に示されるように、シールドケース1の周辺部近傍に、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1、又は「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2が接近して配置されている場合に、これら実装部品D1と実装部品D2の間に規制部材10が配置されるように、近傍に位置するシールドケース1の向きを設定して配置する。これによって、当該実装部品D1にノズル6を通じて樹脂Rが塗布された場合に、該規制部材10によりその塗布した樹脂Rの移動が規制されて、「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2の領域に至ることが防止される。
【0018】
これに対して、一般的なシールドケース50では、図8(A)(B)に示すように、1つの壁部53を延長した規制部材が形成されていないので、実装部品D1に樹脂Rを塗布した場合に、塗布した樹脂Rが「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2の領域に至り、該実装部品D2の故障などの不具合が発生する。
【0019】
以上詳細に説明したように本実施形態に示されるシールド構造では、基板2上のシールドケース1には封止用の樹脂Rの移動を止める規制部材10が設けられている。これによりシールドケース1の周辺部近傍であり、かつ「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1が基板2の端部2A付近に実装されている場合において、該規制部材10を基板2の端部2Aに沿って配置することによって、基板2の端部2Aから樹脂が流れ落ちることを防止することができる。また、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1が、「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2に隣接するように実装されている場合において、シールドケース1の規制部材10をこれら実装部品D1とD2との境界に配置することによって、樹脂塗布が禁止されている実装部品D2の配置領域に樹脂が流れることを防止することができる。その結果、シールドケース1への安定した樹脂塗布が可能となる。また、このようなシールドケース1は、単に板金において壁部となる部分を延長させることで規制部材10を構成することができるので、容易に製作可能であり、コストの増大を抑えることができる。
【0020】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図9図11を参照して説明する。
第2の実施形態に示されるシールドケース20が、第1の実施形態のシールドケース1と構成を異にするのは、規制部材30の構成である。
すなわち、第2の実施形態に示されるシールドケース20は、図9の外観図及び図10の展開図に示されるように、縁部に沿った点線部21を折り目として(図中上側に)その4箇所の壁部22を折り曲げることで、全体が箱型に形成される。このとき、例えば、図10の図中、上側に位置する1つの壁部22(符号22Aで示す)を両側に延長し、両側に位置する2つの壁部22(符号22B・22Cで示す)を下方に延長し、その延長部を規制部材30とする。
これら規制部材30(30A〜30C)は、当該規制部材30が延長された壁部22と隣り合う他の壁部22より外側に突出した構成とされ、本例では4箇所に形成されるものであって、これら規制部材30により、封止用の樹脂の移動を止める。
【0021】
そして、このように1つのシールドケー20に対して4箇所設けられた規制部材30において、図11(A)(B)に示すように、例えば、符号30Aで示される2箇所の規制部材を、基板2の端部2Aの近傍に配置することにより、該基板2の端部2Aから、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1に塗布した樹脂Rが流れ落ちることを防止する。同時に、符号30B・30Cで示される2箇所の規制部材を、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1と、「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2との間に配置する。これによって、当該実装部品D1に樹脂Rが塗布された場合に、該規制部材30によりその塗布した樹脂Rの移動が規制されて、当該樹脂Rが、「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2の領域に至り、該実装部品D2の故障が防止される。
【0022】
以上詳細に説明したように本実施形態に示されるシールド構造では、基板2上のシールドケース20には封止用の樹脂Rの移動を止める複数の規制部材30(30A〜30C)が設けられている。これによって「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1が基板2の端部2Aに実装されている場合において、シールドケース20の規制部材30を基板2の端部2A付近に配置することによって、基板2の端部2Aから樹脂が流れ落ちることを防止することができる。同時に、「樹脂塗布対象部品」となる実装部品D1が、「樹脂塗布禁止部品」となる実装部品D2に隣接するように実装されている場合においても、シールドケース20の規制部材30をこれら実装部品D1とD2との境界に配置することによって、樹脂塗布が禁止されている実装部品D2の領域に樹脂が流れることを防止することができる。その結果、シールドケース20への安定した樹脂塗布が可能となる。
【0023】
なお、上述した第1、2の実施形態では、シールドケース1・20において1箇所又は4箇所の規制部材10・30を設けた例を説明したが、この規制部材10の数は、基板2上の実装部品D1・D2に応じて適宜変更しても良い。また、これら規制部材10・30はシールドケース1・20の角部に配置することに限定されず、例えば溶接・接着などにより、壁部5・22外側の中間部などに設けても良い。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、携帯電話やポータブルオーディオプレイヤーなどの小型電子機器の基板に適用されるシールドケースに関する技術である。
【符号の説明】
【0026】
1 シールドケース
2 基板
2A 端部
5 壁部
10 規制部材
20 シールドケース
22 壁部
30 規制部材
D1 実装部品
D2 実装部品
R 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11