特許第5674327号(P5674327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674327
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】オキシデーションディッチ
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20150205BHJP
   C02F 3/30 20060101ALI20150205BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C02F3/12 A
   C02F3/30 A
   B01F7/16 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-58786(P2010-58786)
(22)【出願日】2010年3月16日
(65)【公開番号】特開2011-189304(P2011-189304A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2013年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸治
(72)【発明者】
【氏名】中町 和雄
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−290885(JP,A)
【文献】 特開2006−326377(JP,A)
【文献】 実開昭56−098338(JP,U)
【文献】 特開昭60−261595(JP,A)
【文献】 特開2002−018475(JP,A)
【文献】 特開2003−236581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/30
B01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端循環水路に循環水流発生手段及び酸素供給手段を備えたオキシデーションディッチにおいて、
前記循環水流発生手段は、軸線を鉛直方向に向けた円筒体と、該円筒体の外周に突設した複数の撹拌羽根と、
前記円筒体の上部に突設した回転軸を回転可能に保持する軸受と、
前記回転軸を回転駆動する駆動手段とを備えるとともに、
前記円筒体の上部に吸排気口を設け、
該吸排気口から前記円筒体の内部上方に空気を注入して吸排気口を密閉することにより前記円筒体の内部上方に空気溜を備えている
ことを特徴とするオキシデーションディッチ。
【請求項2】
無終端循環水路に循環水流発生手段及び酸素供給手段を備えたオキシデーションディッチにおいて、
前記循環水流発生手段は、軸線を鉛直方向に向けた円筒体と、該円筒体の外周に突設した複数の撹拌羽根と、
前記円筒体の上部に突設した回転軸を回転可能に保持する軸受と、
前記回転軸を回転駆動する駆動手段とを備えるとともに、
前記円筒体の上部を仕切板で気密に区画して前記循環水流発生手段の重量に応じた容積の空気室を前記円筒体の上部にあらかじめ設け、
該円筒体の前記仕切板の下部位置に吸排気口を設けた
ことを特徴とするオキシデーションディッチ。
【請求項3】
無終端循環水路に循環水流発生手段及び酸素供給手段を備えたオキシデーションディッチにおいて、
前記循環水流発生手段は、軸線を鉛直方向に向けた円筒体と、該円筒体の外周に突設した複数の撹拌羽根と、前記円筒体の上部に突設した回転軸を回転可能に保持する軸受と、前記回転軸を回転駆動する駆動手段とを備えるとともに、
前記円筒体は、該円筒体の内部上方に空気溜を備え,
前記撹拌羽根を前記円筒体に揺動可能に設け、円筒体回転時に撹拌羽根の回転方向後部側を保持する撹拌羽根保持部材を前記円筒体の外周に設けるとともに、円筒体周方向における前記撹拌羽根保持部材の位置を調節可能としたことを特徴とするオキシデーションディッチ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシデーションディッチに関し、詳しくは、オキシデーションディッチに設けられている循環水流発生手段の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な排水処理を行う方法として、オキシデーションディッチ法が広く知られている。このオキシデーションディッチ法は、無端状に形成したディッチ(無終端水路)内の水を循環させながら曝気することにより、ディッチ内に好気性水域と無酸素水域とを形成し、有機物の分解だけでなく、好気性水域での硝化反応と無酸素水域での脱窒反応とによって窒素分も除去するようにしている。ディッチ内の水を循環させる手段としては各種構造のものがあるが、回転軸線を鉛直方向とした撹拌翼が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−334593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、回転軸線を鉛直方向とした場合、撹拌翼の回転軸を回転可能に保持する軸受に撹拌翼の重量が作用するため、大型の撹拌翼の場合には、大型の駆動源や軸受として強固なものを用いる必要があり、装置コストが上昇する要因の一つとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、循環水流発生手段を保持する軸受の負担や駆動源の出力を軽減して装置コストの上昇を抑えることができるオキシデーションディッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のオキシデーションディッチは、無終端循環水路に循環水流発生手段及び酸素供給手段を備えたオキシデーションディッチにおいて、前記循環水流発生手段は、軸線を鉛直方向に向けた円筒体と、該円筒体の外周に突設した複数の撹拌羽根と、前記円筒体の上部に突設した回転軸を回転可能に保持する軸受と、前記回転軸を回転駆動する駆動手段とを備えているもので、第1の発明は、前記円筒体の上部に吸排気口を設け、該吸排気口から前記円筒体の内部上方に空気を注入して吸排気口を密閉することにより前記円筒体の内部上方に空気溜を備えていることを特徴としている。また、第2の発明は、前記円筒体の上部を仕切板で気密に区画して前記循環水流発生手段の重量に応じた容積の空気室を前記円筒体の上部にあらかじめ設け、該円筒体の前記仕切板の下部位置に吸排気口を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、第3の発明は、前記撹拌羽根を前記円筒体に揺動可能に設け、円筒体回転時に撹拌羽根の回転方向後部側を保持する撹拌羽根保持部材を前記円筒体の外周に設けるとともに、円筒体周方向における前記撹拌羽根保持部材の位置を調節可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオキシデーションディッチによれば、円筒体内の空気溜に適当量の空気を注入することにより、空気の浮力で円筒体の重量を相殺することができ、軸受に加わる上下方向の力を軽減することができる。これにより、軸受を簡略化することができるとともに、駆動源を小型化でき、装置コストを削減することができる。また、撹拌羽根保持部材の位置を調節することによって撹拌羽根の角度を変化させることができるので、処理状況に応じた撹拌力を得ることができるとともに、この撹拌羽根の角度調節により水流の抵抗値を小さくでき、駆動源の出力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のオキシデーションディッチにおける循環水流発生装置の第1形態例を示す説明図である。
図2】循環水流発生装置の断面図である。
図3】オキシデーションディッチの一例を示す説明図である。
図4】循環水流発生装置の変形例を示す断面図である。
図5】循環水流発生装置の第2形態例を示す横断面図である。
図6】同じく循環水流発生装置の第2形態例を示す円筒体部分の縦断面図である。
図7】同じく撹拌羽根の角度を変えた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
オキシデーションディッチは、図3に示すように、隔壁11aを有する無終端水路からなるディッチ11と、ディッチ11内に原水を流入させる原水流入経路12と、ディッチ11内から抜き出した活性汚泥含有液の固液分離を行う最終沈殿池13と、最終沈殿池13で分離した処理水を流出させる処理水流出経路14と、最終沈殿池13で分離した汚泥を原水側に返送する返送汚泥経路15とを備えるとともに、隔壁11aの両端部に循環水流発生手段16がそれぞれ設けられ、一方の循環水流発生手段16の流れ方向下流側には曝気装置17が設けられている。
【0011】
循環水流発生手段16及び曝気装置17を運転することにより、ディッチ14内に矢印で示す方向の循環水流が発生し、曝気装置17の下流側に好気域が、該好気域の下流側に無酸素域が、該無酸素域の下流側で前記曝気装置17までの間に嫌気域がそれぞれ形成され、所定の排水処理が行われる。
【0012】
図1及び図2に示すように、循環水流発生手段16は、軸線を鉛直方向に向けた円筒体18と、該円筒体18の外周に突設した複数の撹拌羽根19と、前記円筒体18の上部に突設した回転軸20を回転可能に保持する軸受21と、前記回転軸20を回転駆動する駆動手段22とを備えるとともに、前記円筒体18の内部上方には空気溜23が設けられている。
【0013】
この空気溜23は、円筒体18の上半部を密閉状態にすることにより形成されたものであって、円筒体18の上部に設けた吸排気口24から空気溜23内に空気を注入して吸排気口24を密閉することにより形成される。
【0014】
空気溜23内の空気量は、ディッチ11内の活性汚泥含有液中に配置したときの円筒体18の重量に見合う浮力を得られる空気量とし、前記軸受21に上下方向の荷重がほとんどかからない状態となるように空気量を調節すればよい。このように、円筒体18の内部に空気溜23を設け、該空気溜23内に所定量の空気を注入することにより、軸受21に上下方向の荷重がほとんど加わらないようにすることができるので、空気溜23を設けていない場合に比べて軸受21を簡略化することができ、装置コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、図4に示すように、円筒体18の上部を仕切板25で気密に区画することにより、循環水流発生手段16の重量に応じた容積の空気室26をあらかじめ円筒体18の上部に設けておくこともできる。この場合は、仕切板25の下部に前記同様の吸排気口24を設けておくことにより、円筒体18内の空気量の調節、即ち浮力の調節を少ない空気量で簡単に行うことができ、処理中に発生して仕切板25の下部に蓄積されるガスを抜くこともできる。
【0016】
図5乃至図7に示す循環水流発生手段31は、ディッチ11内の活性汚泥含有液の処理状況によって撹拌羽根32の角度を変化させることができるように形成されている。なお、回転軸や空気溜は前記形態例と同様に形成できるので、図示及び説明は省略する。
【0017】
この循環水流発生手段31は、撹拌羽根32の基部をヒンジ33によって揺動可能に装着した内側円筒体34と、該内側円筒体34の外周に設けられた撹拌羽根保持部材となる外側円筒体35とで形成され、外側円筒体35には、前記撹拌羽根32の先端側を外側円筒体35の外側に突出させるための開口36が各撹拌羽根32に対応して設けられている。
【0018】
内側円筒体34の下部には、外側円筒体35を所定位置に支持するための支持手段としてフランジ37が設けられており、このフランジ37にて外側円筒体35の下端を支持することにより、外側円筒体35は、内側円筒体34に対して同軸で回動可能な状態に支持される。また、内側円筒体34の上部と外側円筒体35の上部とには、両円筒体34,35を連結して一体に回転させるための連結手段38が設けられている。本形態例に示す連結手段38は、内側円筒体34に設けられた複数のボルト止着部39a、39bと、外側円筒体35に設けられたボルト挿通孔40とを有している。
【0019】
図5に示すように、外側円筒体35のボルト挿通孔40に挿通した連結ボルト41を撹拌羽根32に近い位置のボルト止着部39aに止着することにより、円筒体回転時に、回転方向後部側となる前記開口36の開口縁によって撹拌羽根32の回転方向後部側が保持され、撹拌羽根32は、円筒体半径方向に突出した状態となる。
【0020】
また、図7に示すように、外側円筒体35のボルト挿通孔40に挿通した連結ボルト41を撹拌羽根32から離れた位置のボルト止着部39bに止着することにより、円筒体回転時には、前記同様に回転方向後部側となる前記開口36の開口縁によって撹拌羽根32の回転方向後部側が保持された状態になるが、この場合には、外側円筒体35が内側円筒体34に対して回転方向後方に向かって僅かに回動した状態になっているため、撹拌羽根32は、先端側が回転方向後方に向かって傾斜した状態に保持される。
【0021】
したがって、連結手段38による両円筒体34,35の連結位置を調節することにより、撹拌羽根32の角度を変化させてディッチ11内の活性汚泥含有液の処理状況に応じた撹拌力を得ることができる。また、連結ボルト41を円筒体上部に設けているので、ディッチ11内の活性汚泥含有液を排出することなく角度調節を行うことが可能である。
【0022】
なお、撹拌羽根の形状は、各形態例に示すような平板状のものに限らず、湾曲したものや、途中で屈曲したものなどを用いることができる。また、第2形態例において、撹拌羽根を揺動可能とする手段は任意であり、例えば撹拌羽根を内側と外側とに分割して分割部をヒンジ結合したりすることもできる。さらに、撹拌羽根保持部材も、撹拌羽根の大きさなどに応じて任意の構造とすることができ、例えば、軸線方向の棒状部材を周方向に配置した格子状のものであってもよく、撹拌羽根の上部側など、撹拌羽根の一部を保持するものであってもよく、前述の外側円筒体の開口をスリット状にすることもできる。また、循環水流発生手段は1基のみであってもよく、ディッチの大きさや処理量に応じて適宜選択することができ、他の循環水流発生手段と併用することもできる。
【符号の説明】
【0023】
11…ディッチ、11a…隔壁、12…原水流入経路、13…最終沈殿池、14…処理水流出経路、15…返送汚泥経路、16…循環水流発生手段、17…曝気装置、18…円筒体、19…撹拌羽根、20…回転軸、21…軸受、22…駆動手段、23…空気溜、24…吸排気口、25…仕切板、26…空気室、31…循環水流発生手段、32…撹拌羽根、33…ヒンジ、34…内側円筒体、35…外側円筒体、36…開口、37…フランジ、38…連結手段、39a、39b…ボルト止着部、40…ボルト挿通孔、41…連結ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
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図7