【実施例1】
【0012】
実施例1に係る制流弁につき、
図1から
図8を参照して説明する。
図7,8に示されるように、制流弁10は、主として、内部を上水が流れる流体管1の上部に穿設される穿孔Qに連通し流体管1の外周を水密に被覆したケース2と、回転ネジ4の回転によりケース2内にて上下動、すなわち回転ネジ4の軸方向に操作される仕切弁である弁体5と、後述のように穿孔Qに嵌設され内部を介し弁体5を挿入可能な略筒状体のコア40とを有し、弁体5の上下動により流体管1の管路を開放若しくは遮断する。
【0013】
本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された金属製管から成り、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0014】
流体管1の外周面に固定に取付けられるケース2は、いわゆる割T字管であって、流体管1の管軸と略直交する上下方向の内空部を備えた分岐管12及び弁蓋3と、流体管1の外周の下側を被覆するカバー11と、からなる。
【0015】
図1に示されるように、先ず分岐管12とカバー11とを、流体管1を挟む位置でシール材23を介して対向させ、流体管1の長手方向に沿って配置された複数のボルト・ナット13により締結する。ここで、後述する穿設により流体管1内からの溢水が生じないよう、穿孔Qの外周に沿ったゴムリング22が、分岐管12の内面と流体管1の外面との間に介設されている。そして、流体管1にカバー11、分岐管12を取付けた後に、分岐管12内に水圧を加えることで、流体管1の外面と分岐管12の内面との間隙の水密性を適宜確認してもよい。
【0016】
次に、分岐管12の上フランジ12aに、内部に作業弁36及び穿孔装置50を配設した筐体35を水密に接続する。穿孔装置50は、図示しない穿孔機に接続され分岐管12内を流体管1に向け軸方向に伸出するとともに軸周りに回転する軸部材51の先端に固設され、流体管1を穿設する穿孔刃52aを備えたカッタ部材52から構成されている。このカッタ部材52を流体管1の外面にアプローチして外壁を穿孔し、流体管1の管壁に穿孔Qを穿設する。
【0017】
穿孔装置50による穿孔Qの穿設後は、穿孔装置50を上方に引き上げて筐体35内に配置させた後、作業弁36を操作して一時的に分岐管12の止水を行う。そして、
図2に示されるように、前記穿孔機に替えて、軸部材62の下端部にコア40を嵌設するための本発明における拡径手段としてのアタッチメント58が接続された挿入機60を筐体35に接続する。尚、挿入機60は、アタッチメント58が接続された軸部材62を垂直方向に移動させるための送り軸63を備えており、この送り軸63をハンドル61を用いて回転させることでアタッチメント58を軸部材62とともに上下動させることが可能となっている。
【0018】
このアタッチメント58の外周部には、弾性変形する拡張ゴム58aが取り付けられており、アタッチメント58の下端部には、軸部材62に接続され軸部材62の回転操作によって拡張ゴム58aを下方から上方に向けて押圧する押圧板58bが上端部58cに螺合されている。このアタッチメント58の外周部に、略筒形状のコア40を取外し可能に取付けておく。
【0019】
次に、
図3(a),(b)に示されるように、本実施例のコア40は、流体管1の管壁を穿孔形成した穿孔Qを防食するために用いられる。詳述するとコア40は、平面視略円形状の周壁を有し内部が貫通形成された支持部材41と、この支持部材41の外周面に配設された弾性部材としての防食部材42と、から構成されている。コア40の先端側は、断面視略円形状の流体管1に径方向に穿設された穿孔Qの内周面形状に沿うように、周方向に曲線形状に形成されている。支持部材41は耐食性を有するステンレスやチタン、銅等の金属材から成り、この支持部材41の外周面に、支持部材41と同等種の若しくは異種であって支持部材41よりも軟質であって弾性を有する樹脂材から成る防食部材42が、図示しない接着材により接着されている。尚、防食部材42は、例えば支持部材41の外周面に熱溶着されていてもよい。
【0020】
支持部材41は、より具体的には、外周面に防食部材42が取り付けられた胴部41cと、更に胴部41cに連続し穿孔Qよりも大径に膨出した後端部41dとから成る。また、
図3(a)に示されるように、支持部材41の弁体5との当接箇所に、穿孔Qへの嵌設状態で流体管1の内周面1a側を切り欠いた切欠部41aが形成されている。
【0021】
この胴部41cの外周面に亘って接着された防食部材42は、その自然状態においては穿孔Qよりも大径であって、支持部材41よりも軟質であるため更に弾性変形し易く形成されている。更に、防食部材42は、支持部材の41の切欠部41aに延設され、支持部材41の内周面41eと略面一に成るとともに流体管1の内周面1aに向けて延びた延設部42aを有している。
【0022】
上記構成を有する制流弁10において、コア40の穿孔Qへの取り付けについて説明する。
図1に示したように穿孔装置50により流体管1に穿孔Qを穿設した後に、
図2,3に示すように、外周面にコア40を取外し可能に取付けたアタッチメント58が、挿入機60が備えた送り軸63のハンドル61による回転操作により、ケース2内部をコア40とともに下方に動作することで、アタッチメント58の外周面に取付けられたコア40は穿孔Q内に挿入される。
【0023】
図4に示されるように、コア40は、防食部材42の延設部42aが流体管1の内周面1aに沿って進入し、穿孔Qに挿入配置される。コア40は、穿孔Qに挿入配置した状態では、流体管1の金属素地が露出した穿孔Qの内周面に亘り防食部材42が当接することで、穿孔Qを防食するように成っている。この状態でコア40の後端部41dは、穿孔Q近傍の流体管1の外周面に当接する。
【0024】
次に、コア40の穿孔Qへの挿入後に、軸部材62のハンドル61による回転操作によって押圧板58bを上方に移動させ、拡張ゴム58aをアタッチメント58の上端部58cと押圧板58bとの間で挟圧して弾性変形させる。弾性変形した拡張ゴム58aの一部は、支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所を支持部材41の拡径方向に向けて押圧することで支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所を押し拡げる。このようにすることで、コア40は、後端部41dと支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所とで流体管1を挟持し、コア40の穿孔Qへの嵌設が完了する。
【0025】
コア40の穿孔Qへの嵌設完了後には、押圧板58bによる拡張ゴム58aの押圧を解除するとともに、送り軸63のハンドル61による逆回転操作によりアタッチメント58をケース2内部に移動させ、コア40をアタッチメント58から取り外す。
【0026】
この後、挿入機60に替えて、
図6に示されるように、流体管1の管路を遮断若しくは開放するための弁体5をケース2内に配設する。より詳しくは、内部に弁体5を備えた弁蓋3を接続して、外カバー70の開口71,71を蓋体72,72及びボルト・ナット73によって閉塞する。
【0027】
外カバー70内に、弁蓋3、弁体5、そして回転ネジ4の各部材を互いに組付けた状態で配設し、更にこれ等部材を、前記外カバーに予め取付けた押圧手段(図示略)により不断水状態で押圧することで、分岐管12の上フランジ12aに弁蓋3を密封状に組付ける。弁蓋3は、分岐管12の内径より小径の外径を有しており、弁蓋3の下部の外周に沿って設けられたOリング19により、分岐管12の内周面に沿って水密に嵌挿されている。
【0028】
図7に示されるように、弁蓋3を定置させるよう、リング状のフランジ9が弁蓋3に挿入され、固定ボルト16で弁蓋3の位置固定を行いながら、ボルト・ナットでフランジ9と分岐管12とを締結する。フランジ9は、その内周部が弁蓋3の外周部に係合することで、弁蓋3を上下方向に規制している。
【0029】
回転ネジ4は、弁蓋3の頂部に穿設された挿通孔32に回転自在に貫通して、上端部を弁蓋3の外部に突出して取り付けられている。押え板33は、弁蓋3の上端面にボルト34で固定され、回転ネジ4の抜出しを阻止する。上記構成により、回転ネジ4はケース2に対し正逆両方向に回転自在であるが上下動はしない。4bは、回転ネジ4の上端部を除いて略全長に亘ってその周面が螺設されたネジ部である。ネジこま25は、後述する弁体5の上端部に形成されたガイド溝21(
図6参照)に嵌合するとともに、ネジ部4bに螺合しており、回転ネジ4の上端部に形成された回転操作部4aの回転に応じネジ部4bが回転することで、ネジ部4bに沿って螺挿するネジこま25に追随して弁体5が上下動可能となる。
【0030】
図6,
図7及び
図8に示されるように、弁体5は、鋳物や鋼材などにより形成された弁本体6と、弁本体6の略全面に亘り被覆して弾性材から成るゴム体7とを備える。弁体5は、回転ネジ4のネジ部4bを挿入する挿入孔31が形成されている。
【0031】
また、弁体5における上下流側の外面に、上下方向に沿った張出部8、8が、ケース2を構成する弁蓋3若しくは分岐管12の内面に設けられた溝部3aに沿って摺接可能に上下方向に延設されている。上記のように構成された張出部8、8が溝部3aに当接することで、回転ネジ4の回転に伴う弁体5の回転を規制できるように成っている。
【0032】
尚、ゴム体7は、流体管1の内周面、及び後述のように穿孔Qに嵌設されるコア40の周面に沿って水密に当接することで流体管1の管路を遮断可能に形成されている。また、弁本体6は、その略全表面に塗布された離型剤を介してゴム体7により被覆されており、この離型剤により弁本体6とゴム体7との互いの密着が防止されている。
【0033】
このようにすることで、ゴム体7が、離型剤により弁本体6に対して密着していないため、回転ネジ4の回転により弁体5を流体管1に向かって仕切り動作する際に(
図6,7参照)、流体管1の内周面に追随して弾性変形し易く、流体管1の内周面に亘って十分に水密性を維持できる。
【0034】
以降、
図7,8に示されるように、コア40が穿孔Qに対し嵌設された状態、すなわちコア40が穿孔Qを防食している状態を維持したまま、使用者が任意で回転ネジ4を回転することにより、弁体5が下方に移動することで流体管1の管路を遮断し、若しくは弁体5が上方に移動することで管路を開放できるように成る。
【0035】
以上、本実施例における制流弁10にあっては、コア40は、弁体5に当接する内周面41eを有した支持部材41と、支持部材41の外周面に設けられ穿孔Qの内周面に亘って当接する弾性部材と、から構成されており、弾性部材が、支持部材41の内周面41eと略面一に成るとともに流体管1の内周面に向けて延びた延設部42aを有しているので、弁体5に当接する支持部材41の内周面41e及び流体管1の内周面の間に弾性部材が介在するため、コア40の内部に挿入される弁体5が、支持部材41の内周面41e及び略面一の弾性部材に段差無く当接し、更に弾性変形した弾性部材の当接面から滑らかに移行した流体管1の内周面に当接することになり、弁体5とコア40及び流体管1との間に隙間を生じさせず流路を確実に遮断できるばかりか、支持部材41の内周面41eに引っ掛かることなく流路を開放できる。
【0036】
また、支持部材41は、弁体5との当接箇所に流体管1の内周面側を切欠いた切欠部41aが形成されており、切欠部41aに、弾性部材が延設されているので、支持部材41の流体管1の内周面側を切欠いた切欠部41aに、弾性部材の延設部42aが延設されており、弁体5に当接する弾性部材の当接面を長く取ることができるため、支持部材41の内周面41eから防食部材42を介し流体管1の内周面まで滑らかに移行できる。
【0037】
また、支持部材41は、金属材により構成されているので、支持部材41の肉厚を、強度を保ちながら薄く形成することができるので、支持部材41の開口面積を大きく形成することができる。
【0038】
また、弾性部材は、穿孔Qの内周面を防食する防食部材42であるので、金属製の流体管1に穿設された穿孔Qの場合でも、穿孔Qを防食することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例2に係るコアにつき、
図9,10を参照して説明する。尚、前記実施例と重複する構成については説明を省略する。
【0040】
上述した実施例1と同様に、穿孔装置50による穿孔Qの穿設後(
図1参照)、穿孔装置50及び筐体35に替えて、
図9に示されるように、穿孔Qを開閉する弁体5と、弁体5の外周面に予め取外し可能に取付けておいたコア40とをケース2内に配設する。
【0041】
ゴム体7の外面に凹設部7aが周方向に形成されており、この凹設部7aにコア40を係合させて取付けることで、コア40は、後述する弁体5の下方動作においては弁体5から外れてしまうことが無い。
【0042】
上記構成を有する制流弁10において、コア40の穿孔Qへの取り付けについて説明する。
図1に示したように穿孔装置50により流体管1に穿孔Qを穿設した後に、
図9に示すように、外周面にコア40を取外し可能に取付けた弁体5が、非上昇の回転ネジ4の回転により、ケース2内部をコア40とともに下方に動作することで、弁体5の外周面に取付けられたコア40は穿孔Q内に挿入される(
図10参照)。
【0043】
弁体5のゴム体7が穿孔Qを介し流体管1内周面に亘って密接することで管路を遮断するとともに、
図10に示されるように、コア40は、管路を遮断することによって弾性変形したゴム体7によって支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所を支持部材41の拡径方向に向けて押圧される。このため、コア40は、後端部41dと支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所とで流体管1を挟持し、コア40の穿孔Qへの嵌設が完了する。つまり、本実施例においては、弁体5が拡径手段を構成している。
【0044】
次に、
図10に示されるように、回転ネジ4の回転により、弁体5がケース2内部を上方に動作することで、弁体5の外面に取付けられたコア40に対し上方に向かう引上げ力が作用するが、コア40は、後端部41dと支持部材41の下端部における弁体5との非当接箇所とで流体管1を挟持しているため、前記引上げ力に抗して穿孔Qに嵌設された状態を維持し、すなわち上方に移動するゴム体7の凹設部7aから取外されることになる。コア40を穿孔Qに残して弁体5がケース2内を上方に移動しゴム体7が流体管1の内周面から離間することで、流体管1の管路は開放される。
【0045】
以降、コア40が穿孔Qに対し嵌設された状態、すなわちコア40が穿孔Qを防食している状態を維持したまま、使用者が任意で回転ネジ4を回転することにより、弁体5が下方に移動することで流体管1の管路を遮断し、若しくは弁体5が上方に移動することで管路を開放できるように成る。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、制流弁10の弁体5は、ケース2内で回転ネジ4の軸方向に操作される仕切弁であったが、本発明の弁体は、流体管の流路の遮断時にコアの当接部と密封状に当接する構成を有していれば、例えば軸回りに回転操作されることで流路を遮断するいわゆるバタフライ弁等であってもよい。
【0048】
また例えば、前記実施例では、流体管1が金属製の管であって、コア40が流体管1に穿設された穿孔Qを防食する防食部材42を備えた防食用のコアであるが、流体管の材質若しくはコアの用途は必ずしも本実施例に限られず、例えば流体管が塩ビ管等の樹脂製の管であるとともに、コアが前記樹脂製の管に穿設された穿孔の周囲管壁を強度を増進する用途で設けられるコアであっても構わない。
【0049】
また例えば、前記実施例では、コア40を構成する支持部材41及び防食部材42が、ポリエチレン等の樹脂材から成っているが、コアを構成する部材の材質は、例えばゴム材であってもよいし、エラストマー等の他の材料から成るものでも構わない。