【実施例】
【0019】
先ず、実施例のダクトDの構成につき、
図1〜
図4を引用して説明する。実施例のダクトDは、自動車の車体Bに形成されたエンジンルームERの前部に設置され、該エンジンルームERに搭載されるエンジン(図示せす)に供給される空気を取込む吸気ダクトである。このダクトDは、車体Bに取付けた状態において、空気流通方向が車体の前後方向へ略水平に延在する第1ダクト部10と、この第1ダクト部10の空気流通方向の下流に中間屈曲部20を介して連通され、空気流通方向が垂直に近い傾斜状に延在する第2ダクト部30とを備える。そして、ダクトDの第1ダクト部10と第2ダクト部30とは、互いの空気流通方向がなす中間屈曲部20の曲がり内側を向く交差角度、すなわち第1ダクト部10および第2ダクト部30における中間屈曲部20の曲がり内側を向く屈曲角度Rが105°となっている(
図2参照)。
【0020】
第1ダクト部10は、該第1ダクト部10における縦方向で対向して下方に位置する第1内周壁部11および上方に位置する第1外周壁部12と、該第1ダクト部10の横方向で対向する第1側壁部13,13とから形成されている。車体Bの上下方向で離間している第1内周壁部11および第1外周壁部12は、空気流通方向で平行となっており、第1内周壁部11の下流端は中間屈曲部20の曲がり内側の最大曲率部位である内側角部21に連設され、第1外周壁部12の下流端は中間屈曲部20の曲がりの外側となる外側湾曲部22に連設されている。また、車体Bの左右方向で離間する各第1側壁部13,13は、空気流通方向の下流側(中間屈曲部20)に近づくにつれて互いに近接するよう斜め形成され、各々の下流端が中間屈曲部20の屈曲壁部23,23に連設されている。そして第1ダクト部10は、横長に開口した空気取込口14が空気流通方向の上流端に開口形成され、この空気取込口14から中間屈曲部20に近づくにつれて空気流通方向と直交する方向の断面積は徐々に小さくなっている。
【0021】
中間屈曲部20は、曲がり内側の最大曲率部位である前記内側角部21と、内側角部21を中心とした滑らかな円弧状に形成された外側湾曲部22と、横方向において対向して該内側角部21および外側湾曲部22の夫々に連設される扇形の屈曲壁部23,23とから形成されている。内側角部21は、第1ダクト部10の第1内周壁部11に連設されると共に、第2ダクト部30の第2内周壁部31に連設され、極小の曲面に形成されて実質的には横方向へ延在する角部となっている。外側湾曲部22は、第1ダクト部10の第1外周壁部12に連設されると共に、第2ダクト部30の第2外周壁部32に連設され、第1外周壁部11および第2外周壁部32の夫々と連続的に連なるように形成されている。各屈曲壁部23,23は、第1ダクト部10の各第1側壁部13,13に連設されると共に、第2ダクト部30の第2側壁部33,33に連設されている。なお、中間屈曲部20と第1ダクト部10との境界は、
図2に示すように、該中間屈曲部20の内側角部21の上流端を通り、第1ダクト部10の空気流通方向と直交する向きで周方向へ延在する部位とされる(
図2に実線で表示)。
【0022】
第2ダクト部30は、その空気流通方向が、中間屈曲部20の内側角部21における第1ダクト部10の空気流通方向と105度に交差するように延在しており、該第2ダクト部30の縦方向で対向する第2内周壁部31および第2外周壁部32と、該第2ダクト部30の横方向で対向する第2側壁部33,33とから形成されている。すなわち実施例のダクトDは、車体Bの前後方向で離間している第2内周壁部31および第2外周壁部32は、空気流通方向で平行となっており、第2内周壁部31の上流端は中間屈曲部20の前記内側角部21に連設され、第2外周壁部32の上流端は中間屈曲部20の前記外側湾曲部22に連設されている。また、車体Bの左右方向で離間する各第2側壁部33,33は、各々の上流端が中間屈曲部20,20に連設され、空気流通方向で平行となっている。そして第2ダクト部30は、略正方形に開口した空気送出口34が空気流通方向の下流端に開口形成され、中間屈曲部20から空気送出口34に近づくにつれて空気流通方向と直交する方向での断面積が同じ直管状となっている。なお、第2ダクト部30と中間屈曲部20との境界は、
図2に示すように、該中間屈曲部20の内側角部21の下流端を通り、第2ダクト部30の空気流通方向と直交する向きで周方向へ延在する部位とされる(
図2に実線で表示)。
【0023】
そして実施例のダクトDでは、
図1および
図2に示すように、第2ダクト部30における前記中間屈曲部20の内側角部21の下流側に連なる前記第2内周壁部31に、第2ダクト部30の空気流通路とダクト外部とを空間的に連通する2つの開口部40,41が、該第2ダクト部30の空気流通方向に所要間隔で離して設けられている。すなわち実施例のダクトDは、空気取込口14を介してエンジンに必要とされる特定流量の空気が流入した際に、第1ダクト部10から中間屈曲部20を介して第2ダクト部30へ移動する空気(以降「主空気流」という)が該第2ダクト部30の第2外周壁部32側へ偏ることで、第2内周壁部31に沿う部分の滞留空気が発生する領域に、前記2つの開口部40,41を設けたものである。これにより実施例のダクトDは、空気取込口14からダクトD内へ流入した主空気流が第1ダクト部10から第2ダクト部30に向けて流通する際に、該第2ダクト部30周囲の外部空気を、「副空気流」として前記各開口部40,41を介して該第2ダクト部30内へ取込むことができるよう構成したものである。
【0024】
前記2つの開口部40,41のうち、第2内周壁部31の上流側に形成された開口部(以降「第1開口部」という)40は、
図1〜
図3に示すように、中間屈曲部20の内側角部21に隣接した部位、すなわち該第2内周壁部31の上流端に隣接して形成されている。この第1開口部40は、第2ダクト部30の空気流通方向に直交する横方向に長手が延在する細長いスリット状に形成されており、長手方向の開口幅(長手開口幅)Lは、第2ダクト部30における等価直径(後述)Deの0.67倍(2/3De)に設定されている。また第1開口部40は、第2ダクト部30の空気流通方向に沿う短手方向の開口幅(短手開口幅)Sは約1.0mmに設定されている。なお、第1開口部40の長手開口幅Lは、後述するように、第2ダクト部30の等価直径Deの0.5倍〜1倍の範囲内とするのが望ましく、該第1開口部40の短手開口幅Sは0.8〜1.2mmの範囲内で設定するのが望ましい。
【0025】
第1開口部40の下流側に形成された開口部(以降「第2開口部」という)41は、該第1開口部40と同一形状に形成され、第2ダクト部30の空気流通方向に直交する横方向の中央を、該第2ダクト部30の空気流通方向に沿って揃えて整列配置され、第1開口部40と第2開口部41とは平行になっている。すなわち第2開口部41は、第2ダクト部30の空気流通方向と交差する横方向に長手が延在する細長いスリット状に形成されており、長手開口幅Lは第2ダクト部30における等価直径Deの0.67倍(2/3De)に設定されている。また第2開口部41は、第2ダクト部30の空気流通方向に沿う短手方向の開口幅(短手開口幅)Sは約1.0mmに設定されている。なお、第2開口部41の長手開口幅Lは、後述するように、第2ダクト部30の等価直径Deの0.5倍〜1倍の範囲内とするのが望ましく、該第2開口部40の短手開口幅Sは0.8〜1.2mmの範囲内で設定するのが望ましい。
【0026】
そして、第2開口部41の形成位置は、前記中間屈曲部20の内側角部21に連なる第2内周壁部31の上流端から該第2開口部41の上流側開口縁までの距離(形成距離)Hが、第2ダクト部30における等価直径Deの2倍(2De)となるように設定されている。なお、第2開口部41の形成位置は、後述するように、前記形成距離Hを、第2ダクト部30における等価直径Deの1倍〜8倍未満の範囲内で設定するのが望ましい。また、第2ダクト部30の空気流通方向で隣り合う第1開口部40と第2開口部41との間隔Tは、第1開口部40の短手開口幅S以上に設定されている。
【0027】
前述した等価直径Deとは、ダクト関連の分野において一般的に周知の如く、空気流通方向と直交する方向の断面形状が略矩形とされた第2ダクト部30が、空気流通方向と直交する方向の断面形状が円形をなす円形ダクトと見なした場合に、その直径がどのくらいとなるかを示すもので、換算式は次のようになっている。
換算式 De = 4×A/W
ここで、De:等価直径
A:第2ダクト部30の空気流通方向と直交する方向での断面積
W:第2ダクト部30の空気流通方向と直交する方向での内壁長(内周長)
【0028】
第1開口部40および第2開口部41を設けた本実施例のダクトDは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材からブロー成形技術に基づいて一体的に成形したり、同樹脂素材からインジェクション成形技術に基づいて成形された複数のピースを組み合わせて製造される。なお、ブロー成形により製造されるダクトDでは、第1ダクト部10、中間屈曲部20および第2ダクト部30を一体にブロー成形した後工程において、前記第1開口部40および第2開口部41を第2ダクト部30にカッター等で開設する。一方、インジェクション成形により製造されるダクトDでは、第1開口部40および第2開口部41を、該成形時に同時に形成するか、各ピースを組み合わせた後にカッター等で開設する。
【0029】
(実験例)
本願発明者は、第1ダクト部10に対して第2ダクト部30が屈曲したダクトDに関し、ダクト内を流れる空気の圧力損失の低減に効果的な各開口部40,41の形成態様(形成位置、開口サイズ等)を求めるため、シミュレーション解析により次のような4種類の実験(実験1〜4)を行なった。そして、
図5〜
図8は、本願発明者が行なった実験1〜4の実験結果を示したものである。そこで次に、各実験の内容および各実験の結果について説明する。
【0030】
(実験1)
実験1は、第1ダクト部10に対する第2ダクト部30の屈曲角度R(第1ダクト部10の空気流通方向と第2ダクト部30の空気流通方向との交差角度)の違いに伴う圧力損失のデータを得るもので、第1ダクト部10と第2ダクト部30とが直列となる所謂直管の圧力損失を100とした場合の相対的な圧力損失を示すものである。この実験1により、2つ以上の開口部を設けることが効果的なダクトの屈曲角度Rを得ることができる。ここで実験条件は、ダクトDがエンジン用の吸気ダクトとして使用されることを前提として、実際の使用環境に近いものとして設定した。実験条件は、次のようである。
(a)第2ダクト部30
・空気流通方向と直交する方向の断面形状:矩形(縦45mm×横70mm)
・等価直径De:57.9mm
(b)主空気流の流量:7m
3/min
【0031】
図5は、実験1の実験結果を示すグラフである。実験1の結果によれば、屈曲角度R=0°(直管)の場合の圧力損失を100とすると、屈曲角度R=170°では圧力損失が100.3、屈曲角度R=160°では圧力損失が100.7、屈曲角度R=150°では圧力損失が101.5であり、屈曲角度Rが150°以下のダクトでは圧力損失は微増であった。しかし、屈曲角度R=140°では圧力損失が105.8、屈曲角度R=130°では圧力損失が113.5、屈曲角度R=120°では圧力損失が124.7、屈曲角度R=110°では圧力損失が157.2、屈曲角度R=90°では圧力損失が178.6となり、屈曲角度Rが150°以下となると圧力損失が顕著に増加し、かつ屈曲角度Rが大きくなるに比例して圧力損失が大きくなることが確認できた。従って、第2ダクト部30に開口部40,41を設けるのは、屈曲角度Rが90〜150°のダクトDにおいて特に有効であることが判明した。
【0032】
(実験2)
実験2は、第2ダクト部30の第2内周壁部31に対する開口部の形成個数による圧力損失の変化を示したものである。この実験2により、開口部の形成個数を適切に設定することができる。なお、開口部は5個まで設けた場合で実験を行なうこととし、第2ダクト部30の第2内周壁部31に対する各開口部の形成位置を、第1開口部の上流側開口縁から最下流側の第5開口部の上流側開口縁までの間隔を第2ダクト部30の等価直径Deの3倍となるようにして、第1開口部と第5開口部との間を空気流通方向へ4等分して、第2開口部、第3開口部および第4開口部を各々設けるようにした。なお実験条件は、次のようである。
(a)第2ダクト部30
・空気流通方向と直交する方向の断面形状:矩形(縦45mm×横70mm)
・等価直径De:57.9mm
(b)屈曲角度R:105°
(c)中間屈曲部20の内側突部21の曲率半径:1.0mm
(d)第1〜第5の開口部
・長手開口幅L:0.67De(第2ダクト部30の等価直径Deの2/3)
・短手開口幅S:1mm
(e)主空気流の流量:7m
3/min
【0033】
図6は、実験2の実験結果を示すグラフである。実験2の結果によれば、開口部を設けない場合の圧力損失を100とすると、開口部が1つ(第1開口部のみ)の場合は圧力損失が100、開口部が2つ(第1開口部、第2開口部)の場合では圧力損失が93、開口部が3つ(第1開口部〜第3開口部)の場合では圧力損失が95、開口部が4つ(第1開口部〜第4開口部)の場合では圧力損失が94、開口部が5つ(第1開口部〜第5開口部)の場合では圧力損失が95であった。すなわち、開口部が1つだけの場合では圧力損失の減少は見られず、開口部が3〜5つの場合では圧力損失が5〜6%減少し、開口部が2つの場合が圧力損失が最大の7%減少した。この実験結果から、2つ以上の開口部を設けることで圧力損失の減少に効果があるものの、開口部の形成数が2つの場合が最も圧力損失の減少率が大きく、開口部を3つ以上に増やしても圧力損失の減少率は殆ど同じであることも判明した。従って、
図1および
図2に示すように、2つの開口部(第1開口部40および第2開口部41)を形成することで、内部を流れる空気の圧力損失を効率的に減少することができる。
【0034】
(実験3)
実験3は、スリット状の第1開口部40および第2開口部41の長手開口幅Lの違いによる圧力損失の変化を示したものである。この実験3により、各開口部40,41の長手開口幅Lを適切に設定することができる。なお実験条件は、次のようである。
(a)第2ダクト部30
・空気流通方向と直交する方向の断面形状:矩形(縦45mm×横70mm)
・等価直径De:57.9mm
(b)屈曲角度R:105°
(c)第1開口部40
・短手開口幅S:1mm
・形成位置:第2内周壁部31における中間屈曲部20の内側角部21に隣接した部位
(d)第2開口部41
・短手開口幅S:1mm
・形成位置:第2内周壁部31における中間屈曲部20の内側角部21から第2ダクト部30の空気流通方向へ、該第2ダクト部30の等価直径Deの2倍となる部位
(e)主空気流の流量:7m
3/min
【0035】
図7は、実験3の実験結果を示すグラフである。実験3の結果によれば、開口部を設けない場合の圧力損失を100とすると、第1開口部40および第2開口部41の長手開口幅L=0.2Deの場合は圧力損失が105、長手開口幅L=0.4Deの場合は圧力損失が103、長手開口幅L=0.5Deの場合は圧力損失が98、長手開口幅L=0.6Deの場合は圧力損失が95、長手開口幅L=0.8Deの場合は圧力損失が94、長手開口幅L=1Deの場合は圧力損失が93であった。すなわち、第1開口部40および第2開口部41の長手開口幅Lが第2ダクト部30の等価直径Deの0.5〜1倍(0.5De〜1De)において、内部を流れる空気の圧力損失が効果的に減少し、特に長手開口幅Lが等価直径Deに近づくほど該圧力損失が効率的に減少することが判明した。
【0036】
(実験4)
実験4は、2つの開口部(第1開口部40および第2開口部41)を形成することを前提として、第2開口部41の形成位置の違いによる圧力損失の変化を示したものである。この実験4により、中間屈曲部20の曲がり内側である内側角部21からの第2開口部41の形成位置を適切に設定することができる。なお実験条件は、次のようである。
(a)第2ダクト部30
・空気流通方向と直交する方向の断面形状:矩形(縦45mm×横70mm)
・等価直径De:57.9mm
(b)屈曲角度R:105°
(c)第1開口部40および第2開口部41
・長手開口幅L:0.67De(第2ダクト部30の等価直径Deの2/3)
・短手開口幅S:1mm
(d)主空気流の流量:7m
3/min
【0037】
図8は、実験4の実験結果を示すグラフである。実験4の結果によれば、第2開口部41を設けない場合(第1開口部40のみを設ける)の圧力損失を100とすると、第2開口部41の形成距離H=1Deの場合は圧力損失が95、形成距離H=2Deの場合では圧力損失が93、形成距離H=3Deの場合では圧力損失が93.5、形成距離H=4Deの場合では圧力損失が95、形成距離H=5Deの場合では圧力損失が96、形成距離H=6Deの場合では圧力損失が98、形成距離H=7Deの場合では圧力損失が99、形成距離H=8Deの場合では圧力損失が100であった。すなわち、第2開口部41の形成距離Hが1De〜8Deにおいて、内部を流れる空気の圧力損失が減少することが判明した。なお、形成距離Hが1De〜4Deの範囲内であれば、約5%の圧力損失の減少が見られることから、該形成距離Hは等価直径Deの1〜4倍の範囲内で適宜決定することが望ましく、特に圧力損失の減少効果が大きいのは、形成距離Hが等価直径Deの2倍(2De)である。
【0038】
前記実験1〜実験4の結果によれば、次のようになる。第2ダクト部30の第2内周壁部31に開口部40(41)を設けることで、ダクトD内を流れる空気の圧力損失の減少に効果があるのは、特に第1ダクト部10に対する第2ダクト部30の屈曲角度Rが90〜150°のダクトである。そして、開口部40(41)の形成個数は2つが最適であり、第1開口部40の形成位置は中間屈曲部20の内側角部21の下流端に隣接する部位であり、第2開口部41の形成距離Hは中間屈曲部20の内側角部21の下流端から第2ダクト部30の等価直径Deの2倍程度が最適である。更に、第1開口部40および第2開口部41の長手開口幅Lは、第2ダクト部30の等価直径Deの0.5〜1倍の範囲内とするのが望ましい。
【0039】
従って、実施例のダクトDによれば、第2ダクト部30における中間屈曲部20の曲がり内側である内側角部21から該第2ダクト部30の空気流通方向に連なる第2内周壁部31に、該第2ダクト部30の空気流通方向に離して設けたスリット状の2つの開口部40,41から第2ダクト部30内へ流入する副空気流により、第1ダクト部10からの主空気流が第2外周壁部32に偏ることにより第2内周壁部31に沿う部分に発生する滞留空気を減少させることで、ダクトD内を流通する空気の圧力損失を好適に減少させることができる。そして、第2ダクト部30の第2内周壁部31に2つの第1開口部40および第2開口部41を設けるだけであるから、部品点数を増やしたり特殊な加工を行なう必要がないので製造コストが嵩まないと共に、ダクトDの外形形状が変更されないから該ダクトDの配設スペースを拡大する必要もない。
【0040】
そして、第1開口部40および第2開口部41は、第2ダクト部30の空気流通方向に直交する横方向に長手が延在する細長いスリット状に形成されるから、必要以上の外部空気が第2ダクト部30内へ急激に流入せず、第1ダクト部10から中間屈曲部20を介して第2ダクト部30へ移動する主空気流の流れを阻害しない。また、第1開口部40および第2開口部41は、長手開口幅Lが該第2ダクト部30の等価直径の0.67倍に設定されているから、各開口部40,41から第2ダクト部30内へ流入する副空気流が該第2ダクト部30の横方向へ広がり易くなり、該第2ダクト部30の第2内周壁部31に沿う部分に発生する滞留空気を該副空気流で効率よく減少させ得る。
【0041】
また、第1開口部40および第2開口部41は、第2ダクト部30の空気流通方向に直交する横方向の中央を該第2ダクト部30の空気流通方向に沿って揃えて整列配置されているから、第2開口部41の空気流通方向の上流側に位置する第1開口部40から流入した副空気流と該第1開口部40の下流側に位置する第2開口部41から流入した副空気流とが第2ダクト部30の空気流通方向で整列して、該第2ダクト部30の第2内周壁部31に沿う部分に発生する滞留空気を効率的に減少させ得る。そして、第1開口部40および第2開口部41の形成位置を、中間屈曲部20の内側角部21から第2ダクト部30の空気流通方向の下流側へ等価直径Deの2倍の範囲内としたから、第2ダクト部30において滞留空気が発生する領域に各開口部40,41が位置し、該滞留空気を好適に減少させることができる。
【0042】
更に、第1開口部40および第2開口部41は、第2ダクト部30の空気流通方向において隣り合う間隔Tが、該第1開口部40の短手開口幅S以上に設定されているから、空気流通方向において上流側に位置する第1開口部40から第2ダクト部30内に流入した副空気流と該第2開口部41から第2ダクト部30内に流入した副空気流とが互いに干渉することが防止され、第2ダクト部30内で各副空気流を原因とした乱流が発生し難い。
【0043】
なお実施例のダクトDでは、第2ダクト部30の第2内周壁部31に設けた2つの開口部(第1開口部40および第2開口部41)により気柱共鳴効果も期待でき、これにより吸気音やエンジンの燃焼音の低減を図り得る。
【0044】
(変更例)
(1)第1ダクト部10および第2ダクト部30の形状は、実施例に例示したものに限定されない。例えば、第1ダクト部10は、第2ダクト部30と同様に直管形態であってもよい。また、第1ダクト部10および第2ダクト部30は、各々の空気流通方向と直交する方向での断面積形状が実施例に例示の形状に限定されず、円形状、楕円形状、三角形や五角形等の多角形状等であってもよい。
(2)各開口部40,41からエンジンルームER内の温かい空気が第2ダクト部30内に流入することを防止するために、
図9に示すように、第2ダクト部30に設けた第1開口部40および第2開口部41の横方向の両側に隔壁46,46を設けるようにしてもよい。このような隔壁46,46を設けることにより、第1開口部40および第2開口部41内へは、車体B前方からエンジンルームER内へ流入する空気を優先的に取込むことができる。
(3)実施例では、第1ダクト部10に対する第2ダクト部30の屈曲角度Rが105°の場合だけ例示したが、前述したように、第1ダクト部10に対する第2ダクト部30の屈曲角度Rが90°〜150°のダクトでは圧力損失が増加することから、屈曲角度Rが90°〜150°で屈曲するダクトにおける第2ダクト部30の第2内周壁部31に、2つ以上の開口部40(41)を設けることで、圧力損失を好適に減少することができる。
(4)実施例では、ダクトDについて、エンジンに空気を導入するための吸気ダクトを例示したが、本願が対象とするダクトは、吸気ダクトに限定されず、機器間に配設される中間ダクトや、機器の排気側に配設される排気ダクト等であってもよい。