(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アース接続状態で並設された複数枚の回転電極板と、所定の電圧が印加された状態で前記回転電極板の間に介装され、外周部から中心部に向けて空間部が切り欠き形成された複数枚の固定電極板と、前記空間部に前記回転電極板と接触又は近接するように配置された搬送ベルトと、該搬送ベルトが巻装された駆動プーリー及び従動プーリーと、前記搬送ベルトに接触して設けられた搬送塵埃除去手段と、を備え、
前記固定電極板によって帯電された塵埃を、前記回転電極板に吸着させた後、前記搬送ベルトにより前記回転電極板から回収し、前記搬送塵埃除去手段により前記搬送ベルトから除去するように構成された回転電極式電気集塵機であって、
前記搬送ベルトに一定の張力を掛ける張力手段を更に備え、
前記搬送ベルトの内面には長手方向に凹凸部が形成され、前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの周面には円周方向に凹凸部が形成されると共に、前記周面の一部には前記張力手段と接触可能な溝部が円周方向に設けられ、
前記搬送ベルトの前記凹凸部と前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの前記凹凸部が噛み合うことによって前記駆動プーリーの回転が前記搬送ベルトに伝達されることを特徴とする回転電極式電気集塵機。
前記搬送塵埃除去手段の先端部は、前記従動プーリーに巻装されている部分の前記搬送ベルトに接触するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転電極式電気集塵機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1のように、スプロケット構造のプーリー及びそのスプロケットが噛み合う丸穴を設けた環状帯体で塵埃を搬送する仕組みでは、スプロケット及び環状帯体の丸穴のピッチ間距離などの製作誤差や組立上の誤差、経年変化等による寸法変化が生じやすい。そのため、どうしても駆動時間の経過と共に、スプロケットと環状帯体の丸穴との噛み合いがずれてきてしまい、最悪はプーリーのスプロケットが環状帯体の丸穴に入り込まなくなる事態が生じる。この場合には、環状帯体がスリップして回転しないので、回転電極板に吸着した塵埃を回収することができなくなる。
【0007】
また、前述した平ベルトと円筒状のプーリーを用いる方法では、平ベルトとプーリーの間の摩擦力を利用して塵埃を搬送する仕組みになっている。このような仕組みでは、捕集したオイルミストがベルトとプーリー間に侵入してしまうことで摩擦力が低下してしまい、平ベルトがスリップして回転しないので、上記と同じ現象に陥ってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情を考慮し、搬送ベルトを確実に周回させることで回転電極板に吸着した塵埃を溜め込まず確実に回転電極板の外に搬送して除去し、これにより、回転電極板の性能を回復再生し、回転電極板の長寿命化を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、アース接続状態で並設された複数枚の回転電極板と、所定の電圧が印加された状態で前記回転電極板の間に介装され、外周部から中心部に向けて空間部が切り欠き形成された複数枚の固定電極板と、前記空間部に前記回転電極板と接触又は近接するように配置された搬送ベルトと、該搬送ベルトが巻装された駆動プーリー及び従動プーリーと、前記搬送ベルトに接触して設けられた搬送塵埃除去手段と、を備え、前記固定電極板によって帯電された塵埃を、前記回転電極板に吸着させた後、前記搬送ベルトにより前記回転電極板から回収し、前記搬送塵埃除去手段により前記搬送ベルトから除去するように構成された回転電極式電気集塵機であって、
前記搬送ベルトに一定の張力を掛ける張力手段を更に備え、前記搬送ベルトの内面には長手方向
に凹凸部が形成され、前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの周面には円周方向
に凹凸部が形成され
ると共に、前記周面の一部には前記張力手段と接触可能な溝部が円周方向に設けられ、前記搬送ベルトの前記凹凸部と前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの前記凹凸部が噛み合うことによって前記駆動プーリーの回転が前記搬送ベルトに伝達されることを特徴とする。
【0010】
このように、搬送ベルトと駆動プーリー及び従動プーリーにそれぞれ凹凸部を形成することで、搬送ベルトと駆動プーリー及び従動プーリーとが確実に噛み合い、搬送ベルトのスリップを防止することが可能となる。そのため、回転電極板に吸着した塵埃を溜め込まず確実に回転電極板の外に搬送することが可能となる。
また、搬送ベルトに一定の張力を掛ける張力手段が設けられているため、プーリー間を周回する搬送ベルトの形状安定性を高めることが可能となり、塵埃の安定した搬送が可能となる。また、搬送ベルトの周回に伴って張力手段が駆動プーリー及び従動プーリーの溝部に進入した際、この溝部に張力手段が接触し押し付けられることで摩擦力が発生する。そのため、搬送ベルトと駆動プーリー及び従動プーリーの間でのスリップを防止することができる。
【0011】
更に、搬送ベルトにこびりつき自然に落下しない頑固な塵埃を、搬送塵埃除去手段によって確実に除去することができる。そのため、回転電極板の性能を回復再生し、回転電極板の長寿命化を実現することができる。
【0012】
また、前記搬送ベルトの前記凹凸部は、エッチング加工により等間隔で形成されても良い。
【0013】
このような手段によれば、通常は板厚が薄い搬送ベルトに、エッチング加工により凹凸部を等間隔で形成することが可能となり、搬送ベルトと駆動プーリー及び従動プーリーとの噛み合わせを一層確実なものとすることが可能となる。そのため、搬送ベルトのスリップを抑制し、塵埃の安定した搬送が可能となる。
【0016】
また、前記張力手段は、両端部にフックを備えた引張りバネであり、前記搬送ベルトは有端状であり、前記搬送ベルトの周長は前記駆動プーリー及び前記従動プーリー間の周長よりも短く、前記搬送ベルトの両端部にはフック取付穴が形成されていて、前記搬送ベルトを前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの外周に巻き掛けた状態で、前記フックを前記フック取付穴に引っ掛けることで、前記搬送ベルトの前記両端部を連結させるとともに前記搬送ベルトに一定の張力を掛けるであっても良い。
【0017】
このように張力手段として引張りバネを使用することで、搬送ベルトに一定の張力を確実に掛けることができる。更に、このような張力の確保を比較的簡素な方式で実現することができるため、装置自体のコストを安くすることができる。
【0020】
また、前記搬送ベルトの前記両端部には、内側に向かって屈曲部が設けられ、前記溝部は、前記搬送ベルトの前記屈曲部を収容可能に設けられていても良い。
【0021】
このような手段によれば、搬送ベルトの周回に伴って引張りバネがプーリーの溝部に進入する際、搬送ベルトの両端部及び引張りバネが内側に入り込む。そのため、搬送ベルトの両端部及び引張りバネが搬送塵埃除去手段と接触しにくくなり、搬送ベルトの両端部及び引張りバネを痛める危険性がない。
【0022】
また、前記溝部には、凸凹形状が設けられていても良い。
【0023】
このような手段によれば、駆動プーリー又は従動プーリーの溝部に引張りバネが進入した際、溝部に形成された凹凸形状に引張りバネの外径部が接触し押し付けられることで摩擦力を一層高めることが可能となる。そのため、搬送ベルトと駆動プーリー及び従動プーリーの間でのスリップをより確実に防止することができる。
【0024】
また、前記凸凹形状は、ローレット目で形成されていても良い。
【0025】
このような手段によれば、ローレット目によって規則正しい等間隔な凸凹形状を比較的簡単に形成することができる。
【0026】
また、前記駆動プーリー及び前記従動プーリーの前記凹凸部は、ローレット目により形成されていても良い。
【0027】
このような手段によれば、ローレット目によって規則正しい等間隔な凹凸部を比較的簡単に形成することができる。
【0028】
また、前記搬送塵埃除去手段の先端部は、前記従動プーリーに巻装されている部分の前記搬送ベルトに接触するように設けられていても良い。
【0029】
このような手段によれば、搬送塵埃除去手段の先端部と従動プーリーの間に搬送ベルトが挟まれることになるので、搬送ベルトが逃げずに搬送ベルト上の塵埃を確実に除去することができる。
【0030】
また、前記搬送塵埃除去手段を前記搬送ベルト側に押圧するバネを備えていても良い。
【0031】
このような手段によれば、搬送塵埃除去手段の押圧手段にバネを使用することで、搬送ベルトに一定の押圧力を確実に掛けることができる。更に、このような押圧力の確保を、比較的簡素な方式で実現することができるため、装置自体のコストを安くすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、搬送ベルトを確実に周回させることで回転電極板に吸着した塵埃を溜め込まず確実に回転電極板の外に搬送して除去し、これにより、回転電極板の性能を回復再生し、回転電極板の長寿命化を実現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、上述した本発明に係る回転電極式電気集塵機1(以下、「集塵機1」と略称する。)の実施の形態を図面と共に説明するが、これらの実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0035】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る集塵機1について、
図1〜
図8を用いて説明する。本実施形態は、吸引する塵埃の量や稼働時間が通常である一般的な使用状態を想定している。以下、
図1における手前側を集塵機1の正面側とした場合について説明する。
【0036】
図1、
図2に示されるように、集塵機1は、縦長直方体形状の本体2と、本体2の内部空間3の吸気側(本実施形態では右側)にユニット構造で設けられた第1集塵部4と、本体2の内部空間3の排気側(本実施形態では左側)にユニット構造で設けられた第2集塵部5と、により構成されている。なお、
図1、
図2においては、本体2が二点鎖線で表示されている。
【0037】
本体2の上面の右部には吸気ダクト6が設けられ、吸気ダクト6と本体2の内部空間3との間には、金網状のプレフィルター(図示せず)が設けられている。本体2の上面の左前部にはブロアー7が設けられ、ブロアー7の後方には排気ダクト8が設けられている。そして、ブロアー7を稼働させることにより、集塵機1の外部の空気が吸気ダクト6から内部空間3内に導入され、排気ダクト8から集塵機1の外部に排出されるようになっている。本体2の下端には、オイルパン10が設けられている。
【0038】
図3〜
図5に示されるように、第1集塵部4は、正面視でコ字状を成す外枠11と、この外枠11内に等間隔で並設される8枚の回転電極板12と、この8枚の回転電極板12の間に介装される7枚の固定電極板13と、固定電極板13の中心部から下端部の下方にかけて配置された搬送ベルト14と、搬送ベルト14の上端部と下端部がそれぞれ巻装された駆動プーリー15及び従動プーリー16と、搬送ベルト14の下端前方に搬送ベルト14と接触するように設けられた搬送塵埃除去手段としてのスクレーパ17と、を備えている。なお、
図4においては、外枠11の両側部を構成する左右両側板18、20の表示が省略されるとともに、左端の回転電極板12が二点鎖線で表示されている。
【0039】
外枠11の上面には上端開口部21が設けられている。外枠11の左側板18の下端部には、前後方向の中央部に、舌片状の支持板22が下方に向かって突設されており、この支持板22の下端部が、本体2の内部空間3の底面に当接している。支持板22の前後方向の両側には、下端開口部25が設けられている(
図1参照)。この下端開口部25は、上端開口部21と外枠11内の空間を介して連通している。外枠11の前面と後面はそれぞれ、本体2の内部空間3の前面、後面と当接している。
【0040】
回転電極板12は、円盤状を成しており、外枠11内の空間に収納されている。回転電極板12は、左側板18の中央部と右側板20の中央部の間に水平に軸支された回転軸26に、一定間隔で一体固定されている。回転軸26には刷子(図示せず)が接触していて、この刷子を介して回転軸26及び回転電極板12はアース接続されている。回転軸26の右端部は、右側板20の右方に回転軸26と同軸上に設けられたギヤードモーター27と連結されている(
図1参照)。ギヤードモーター27の内部には、減速機構(図示せず)が収納されており、ギヤードモーター27からの回転駆動力が減速機構により減速されて回転軸26に伝達され、回転軸26及び回転電極板12が一体に回転するように構成されている。なお、回転軸26及び回転電極板12の回転速度は、1分間に1回程度と極めて遅いものである。
【0041】
回転電極板12の前上方、前下方、後上方及び後下方には、左右両端部を左右両側板18、20にボルト固定された支持杆30が、左右方向に設けられている。支持杆30の周面には、回転電極板12と対応する位置にガイド溝31が設けられており、このガイド溝31に回転電極板12の外縁部が入り込むことで、回転電極板12が支持杆30にガイドされている。
【0042】
固定電極板13は、平板状を成している。固定電極板13は、外枠11内の空間において、回転電極板12の設置間隔の中央に配置されている。固定電極板13は、電圧供給手段(図示せず)と接続されており、この電圧供給手段を稼働させることにより、固定電極板13にプラスの高電圧が印加されるように構成されている。
【0043】
固定電極板13は、外枠11の左右両側板18、20に支持されている。この左右両側板18、20による固定電極板13の支持構造について説明すると、固定電極板13の前後上下の4隅は、左右方向に設けられた導電スペーサ32に、それぞれ一定の間隔で固定されている。導電スペーサ32の左右両端部は、左右両側板18、20の前後上下の隅部に穿設された逃げ穴33を介して左右両側板18、20の外方に延設され、左右両側板18、20の外側面と平行に設けられた碍子取付板35の4隅にボルト36で固定されている。碍子取付板35は、円柱状の碍子34を介して左右両側板18、20の外側面に固定されている。以上のような構成により、固定電極板13が左右両側板18、20に支持されている。なお、碍子取付板35及び碍子34は、右側板20の外側面にも同様に設けられているが、
図1では、左側板18の碍子取付板35及び碍子34のみが表示されている。また、碍子34は、左右両側板18、20の外側面の前上部と後下部にそれぞれ設けられているが、
図3では、左側板18の後下部の碍子34の一部のみが表示されている。
【0044】
碍子34は、電気的な絶縁性を有しているため、碍子34を介して固定された碍子取付板35と左右両側板18、20は電気的に絶縁されている。これにより、碍子取付板35に導電スペーサ32を介して取り付けられた固定電極板13と左右両側板18、20に回転軸26を介して取りけられた回転電極板12とは、電気的に絶縁されている。
【0045】
固定電極板13の上端には、前後方向に長い開口部37が設けられており、これにより、固定電極板13の上縁部38は、横長の帯板状を成している。固定電極板13の開口部37の下方と上縁部38には、溶接やカシメ等の手段により、針状の荷電用電極40が前後方向に等間隔で多数取り付けられている。開口部37の下方に取り付けられた荷電用電極40は、上端部分が開口部37内に解放されており、上縁部38に取り付けられた荷電用電極40は、下端部分が開口部37内に解放されるとともに上端部分が上縁部38の上方の空間内に解放されている。これにより、前述の電圧供給手段から固定電極板13にプラスの高電圧が印加された際には、荷電用電極40の特に先端部分が、極力効率良く放電を行えるようになっている。
【0046】
固定電極板13には、外周部(本実施形態では下端部)から中心部に向けて長穴状の空間部41が切り欠き形成されている。ここで、固定電極板13の「中心部」とは、本実施形態のように回転軸26が設けられている場合には、回転軸26と同軸上の部分を指し、必ずしも固定電極板13の上下方向の中央部や前後方向の中央部で無くても良い。空間部41は、回転軸26及び搬送ベルト14の周囲を逃げるようにして、側面視で逆U字状に設けられている。
【0047】
搬送ベルト14は、固定電極板13と同数で7本用いられている。搬送ベルト14は、金属製であり、より好適には耐久性及び防錆性を備えたステンレス製が望ましい。本実施形態では、バネ性を有する厚さ0.08mmのステンレス製(SUS304−CSP)の搬送ベルト14を使用している。
【0048】
搬送ベルト14は、各固定電極板13の空間部41に固定電極板13とは所定の間隔を介して設けられており、固定電極板13と同様に回転電極板12の間に介装されている。搬送ベルト14の形成幅は、各回転電極板12の設置間隔にほぼ等しく、各搬送ベルト14の左右両側縁部は、左隣りの回転電極板12の右側面、右隣りの回転電極板12の左側面とそれぞれ接触している。搬送ベルト14は、その幅方向の中央に固定電極板13が位置するように設けられている。
【0049】
搬送ベルト14は、有端状であり、その両端部39が張力手段としての1本の引張りバネ42により連結されている(
図6参照)。引張りバネ42の材質は、例えば、耐食性に優れたSUS304−WPBを使用する。
【0050】
引張りバネ42による搬送ベルト14の連結について説明すると、引張りバネ42の両端部にはフック43が設けられ、搬送ベルト14の両端部39にはフック取付穴44が設けられている(
図7参照)。そして、搬送ベルト14を駆動プーリー15及び従動プーリー16の外周に巻き掛けた状態で、引張りバネ42のフック43をフック取付穴44に引っ掛けることで、搬送ベルト14の両端部39が連結されるようになっている。引張りバネ42は、スクレーパ17と接触した際、フック43の先端部が引っ掛からないような方向で搬送ベルト14に取り付けられている。
【0051】
搬送ベルト14は、その周長が駆動プーリー15及び従動プーリー16間の周長よりも短くなるように形成されている。これに伴って、上記した搬送ベルト14の両端部39の連結時には、引張りバネ42が伸びて一定の張力が搬送ベルト14に掛かる。本実施形態では、引張りバネ42を数mm程度伸ばした状態で搬送ベルト14が連結されていて、適正な張力として5N程度の張力が搬送ベルト14に掛けられている。
【0052】
上記の記載から明らかなように、搬送ベルト14の取付状態においてフック取付穴44の周囲には、常に引張りバネ42の張力が掛かっている。そこで、フック取付穴44を補強する為の金属製のはとめ45が、フック取付穴44に取り付けられている(
図7参照)。
【0053】
図7に最も良く示されるように、搬送ベルト14の両端部39は、先端に向かって次第に細くなる先細り形状を成している。搬送ベルト14の内面46には、凹凸部47がエッチング加工により長手方向に等間隔で設けられている。本実施例では、凹凸部47の深さは、0.03mm程度である。搬送ベルト14の内面46の幅方向中央には、凹凸加工が施されていない平坦部48が、長手方向に連続して設けられている。なお、
図7の上図(平面図)では、エッチング加工により形成された凹凸部47の凹部49がハッチング表示されている。
【0054】
図3〜
図5に示されるように、駆動プーリー15は回転軸26に嵌合しており、回転軸26と一体に回転するように構成されている。従動プーリー16は、回転軸26の真下に設けられたベルト軸50に嵌合しており、ベルト軸50と一体に回転するように構成されている。ベルト軸50は、支持板22と右側板20の下端部の間に架設されており、回転電極板12及び固定電極板13の下端部よりも下方に設けられている。これに伴って、ベルト軸50に嵌合する従動プーリー16及び従動プーリー16に巻装される搬送ベルト14の下端部も、回転電極板12及び固定電極板13の下端部よりも下方に位置している。
【0055】
図8(b)に示されるように、従動プーリー16の軸方向の両端外周には、従動プーリー16とは別体に形成された円環状のフランジ部材59が設けられ、このフランジ部材59にガイドされるようにして、搬送ベルト14が従動プーリー16に巻装されている。なお、
図5、
図6においては、フランジ部材59が2点鎖線で表示されている。上記したフランジ部材59の有無及び軸方向の両端部形状を除き、駆動プーリー15と従動プーリー16は同様の構成を備えているため、以下に
図8(a)、
図8(b)を用いて両プーリー15、16の構成を同時に説明する。
【0056】
駆動プーリー15及び従動プーリー16(以下、「両プーリー15、16」と略称する。)は、アルミ製である。両プーリー15、16の周面51には、円周方向に等間隔な凹凸部52が形成されており、搬送ベルト14の凹凸部47と両プーリー15、16の凹凸部52が噛み合うことによって駆動プーリー15の回転が搬送ベルト14に伝達されて、搬送ベルト14が所定の方向に回転するように構成されている。本実施形態では、両プーリー15、16の凹凸部52をローレット目で形成しており、そのモジュールは0.3である。なお、凹凸部52は、両プーリー15、16の周面51に環状に連続して設けられているが、
図8(a)、
図8(b)では、両プーリー15、16の下部を除き、凹凸部52の記載が省略されている。
【0057】
両プーリー15、16の周面51には、両プーリー15、16の軸に直交する方向に、V字状の溝部53が両プーリー15、16の幅方向の中心から左右均等寸法で凹設されている。溝部53は、搬送ベルト14の回転に伴って引張りバネ42が両プーリー15、16に進入した際に、引張りバネ42の外径部54が溝部53の傾斜面と接触可能となるように、深さ及び角度が調整されている。
【0058】
スクレーパ17は、アルミ製である。
図3、
図4に示されるように、スクレーパ17は、左端部の搬送ベルト14の前方から右端部の搬送ベルト14の前方に亘って、1枚の平板状で設けられている。スクレーパ17は、スクレーパ軸55に回動自在に取り付けられている。スクレーパ17のスクレーパ軸55への取付位置は、搬送ベルト14に接触するスクレーパ17の先端部56が、出来る限り従動プーリー16に近づく位置に設定されている。
【0059】
スクレーパ軸55は、ベルト軸50と平行に設けられており、ベルト軸50の前方において支持板22と右側板20の下端部の間に架設されている。スクレーパ軸55の右端部には、バネとしてのねじりコイルバネ57が取り付けられている。ねじりコイルバネ57の一端は右側板20側に曲げられて、右側板20に設けられたバネ固定用穴58に差し込まれている。ねじりコイルバネ57の他端はスクレーパ17に押し当つけられている。このような構成により、ねじりコイルバネ57のモーメント作用で、スクレーパ17が搬送ベルト14側に押圧され、スクレーパ17の先端部56が搬送ベルト14に押し付けられている。なお、スクレーパ17の先端部56が搬送ベルト14に必要以上に押し付けられると搬送動力に負担がかかってしまうので、本実施形態では、適正な押し付け力として、0.2〜0.4N程度に設定されている。
【0060】
図1、
図2に示されるように、第2集塵部5は、上述した第1集塵部4と基本的に同様の構造を備えている。以下、第2集塵部5について説明するが、第1集塵部4と構成が同一の部分については、説明を省略する。
【0061】
第2集塵部5は、正面視でコ字状を成す外枠61と、この外枠61内に等間隔で並設された12枚の回転電極板62と、この12枚の回転電極板62の間に介装された11枚の固定電極板63と、固定電極板63の中心部から下端部の下方にかけて配置された11本の搬送ベルト64と、搬送ベルト64の上端部と下端部がそれぞれ巻装された駆動プーリー及び従動プーリー(いずれも図示せず)と、搬送ベルト64の下端前方に搬送ベルト64と接触するように設けられた搬送塵埃除去手段としてのスクレーパ65と、を備えている。
【0062】
第2集塵部5の外枠61の上面には上端開口部66が設けられている。(
図1、
図2参照)。外枠61の右側板67の下端部には、前後方向の中央に、舌片状の支持板68が下方に向かって突設され、この支持板68の下端部が、本体2の内部空間3の底面に当接している。支持板68の前後方向の両側には、下端開口部71が設けられている。
【0063】
回転電極板62は、第1集塵部4の回転電極板12と比較して設置間隔が狭く、第1集塵部4よりも設置数を増やしている。回転電極板62が一体形成される第2集塵部5の回転軸72は、第1集塵部4の回転軸26と同軸上に設けられており、本体2の中央部でカップリング73により第1集塵部4の回転軸26と一体化されている(
図2参照)。これにより、ギヤードモーター27からの回転駆動力が第2集塵部5の回転軸72にも伝達されて、回転軸72及び回転電極板62が、回転軸26及び回転電極板12と同一の速度で回転するように構成されている。固定電極板63及び搬送ベルト64は、回転電極板62と同様に、第1集塵部4と比較して設置間隔が狭く、設置数が多くなっている。
【0064】
上述の如く構成された集塵機1を用いて、オイルミストや溶接のヒュームなどの塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と称す)を清浄化する作用について、以下に説明する。
【0065】
まず、ギヤードモーター27を駆動させると、ギヤードモーター27の回転が減速機構を介して第1集塵部4の回転軸26に伝達され、第1集塵部4の回転軸26及び回転電極板12が所定方向(
図5の矢印A参照)に一体回転する。また、上記した回転軸26の回転に伴って、回転軸26に回転一体に嵌合された駆動プーリー15も回転し、この駆動プーリー15の回転が搬送ベルト14に伝達されて、搬送ベルト14が所定方向(
図5の矢印B参照)に回転する。
【0066】
同時に、第1集塵部4の回転軸26にカップリング73により一体化された第2集塵部5の回転軸72にもギヤードモーター27からの回転が伝達されて、第2集塵部5の回転軸72及び回転電極板62が一体に回転する。これに伴って、第2集塵部5の搬送ベルト64が、第1集塵部4の搬送ベルト14と同様に回転する。
【0067】
また、高電圧供給手段を稼働させると、第1集塵部4及び第2集塵部5にそれぞれ設けられた固定電極板13、63にプラスの高電圧が印加され、固定電極板13に固定された荷電用電極40が放電を開始する。
【0068】
この状態で、本体2のブロアー7を稼働させると、本体2外部の含塵空気が、吸気ダクト6を介して本体2の内部空間3に上方から下方に流入する。なお、この含塵空気に含まれる極めて大きな粉塵や火種は、吸気ダクト6と本体2の内部空間3の間に前述の如く設けられたプレフィルター(図示せず)により捕集され、本体2の内部に吸引されないようになっている。
【0069】
上述のように本体2の内部空間3に流入した含塵空気は、第1集塵部4の外枠11内の空間に上端開口部21から流入し(
図1、
図5の矢印参照)、第1集塵部4内を上から下に通過する。この第1集塵部4内を通過する含塵空気には、
図5に示されるように、前述のプレフィルターで除去できない塵埃80が大量に混入している。そこで、まず荷電用電極40からの放電、特に荷電用電極40の先端部からの高電圧のコロナ放電により、含塵空気中の塵埃80をプラス側に帯電させる。このようにプラス側に帯電された塵埃80は、アース接続された回転電極板12に吸着される。
【0070】
本発明にて想定した最も有効な回収対象であるオイルミストや溶接のヒュームなどの塵埃80は、非常に粘り気があるため、回転電極板12に吸着した塵埃80は次第に回転電極板12の表面に堆積してくる。そして、塵埃80がある程度堆積すると、回転電極板12とプラスに荷電された塵埃80との間にプラス荷電の粒子が介在するようになり、次第に塵埃80が回転電極板12に吸着されにくくなってくる。
【0071】
そこで、搬送ベルト14により回転電極板12に堆積した塵埃80を回収する。つまり、回転電極板12の表面に堆積した塵埃80は、回転電極板12の両側面と左右両側縁部が接触する様に配置された搬送ベルト14により、回転電極板12の表面から掻き取られて回収され、その結果肥大化する。そして、この肥大化した塵埃80の一部は、搬送過程で自然落下し、オイルパン10(
図1、
図2参照)の中に回収される。また、自然に落下しない塵埃80は、搬送ベルト14の搬送方向に沿って、回転電極板12の外部方向(本実施形態では、回転電極板12の下端部の下方)に搬送される。そして、搬送ベルト14に接触するスクレーパ17により搬送ベルト14の表面から掻き取られて除去され、オイルパン10の中に落下して回収される。なお、回転電極板12の間にはそれぞれ搬送ベルト14が取り付けられており、各搬送ベルト14に対して塵埃が付着するが、本実施形態では、1枚の平板状のスクレーパ17によって、7本すべての搬送ベルト14に付着した塵埃80を掻き取ることができる構成となっている。
【0072】
上述のようにして塵埃80を回収された含塵空気は、
図1に示されるように、オイルパン10の上方で左方に進み、下端開口部25を介して第1集塵部4から排出され、下端開口部71を介して第2集塵部5内に流入して、第2集塵部5を下から上に通過する。その際に、含塵空気は、第1集塵部4における作用と同様の作用により更に塵埃80を除去されて清浄化される。そして、本体2左上のブロアー7を通じて排気ダクト8から集塵後の清浄空気が排出される。
【0073】
本実施形態においては前述の如く、搬送ベルト14と両プーリー15、16にそれぞれ凹凸部47、52が等間隔で形成されているため、搬送ベルト14と両プーリー15、16が確実に噛み合い、搬送ベルト14のスリップを防止することが可能となる。そのため、回転電極板12に吸着した塵埃80を溜め込まず確実に回転電極板12の外に搬送することが可能となる。
【0074】
更に、搬送ベルト14にこびりつき自然に落下しない頑固な塵埃80を、スクレーパ17によって確実に除去することができる。そのため、回転電極板12の性能を回復再生し、回転電極板12の長寿命化を実現することができる。
【0075】
また、搬送ベルト14の凹凸部47をエッチング加工により形成しているため、本実施形態のように板厚が薄い搬送ベルト14を用いる場合でも、凹凸部47を等間隔で形成することが可能となる。そのため、搬送ベルト14と両プーリー15、16との噛み合わせを一層確実なものとすることが可能となり、搬送ベルト14のスリップを抑制し、塵埃80の安定した搬送が可能となる。特に、本実施形態では、上述の如く搬送ベルト14の凹凸部47をエッチング加工にて形成するのに加えて、両プーリー15、16の凹凸部52をローレット目で形成しているため、搬送ベルト14と両プーリー15、16の噛み合わせを更に確実なものとして、搬送ベルト14のスリップ抑制効果を高めることが可能となる。
【0076】
また、搬送ベルト14の両端部39を先細り形状としているため、両端部39が両プーリー15、16や回転電極板12に進入する際、これらの部材とぶつかるのを抑制することが可能となり、スムーズに搬送ベルト14を回転させることができる。また、搬送ベルト14の幅方向中央には、前述の如く凹凸加工が施されていない平坦部48が設けられているため、搬送ベルト14の強度を適度に維持することが可能となる。
【0077】
また、搬送ベルト14に一定の張力をかける引張りバネ42が設けられているため、両プーリー15、16間を周回する際の搬送ベルト14の形状安定性を高めることが可能となり、塵埃80の安定した搬送が可能となる。また、このように張力手段として引張りバネ42を使用することで、搬送ベルト14に一定の張力を確実に掛けることができる。更に、このような張力の確保を比較的簡素な方式で実現することができるため、装置自体のコストを安くすることができる。
【0078】
また、従動プーリー16の軸方向の両端外周に設けられたフランジ部材59によって搬送ベルト14がガイドされるように構成されているため、搬送ベルト14が回転電極板12を通過して従動プーリー16に向かう際に、搬送ベルト14の左右の振れを防止し、円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0079】
また、引張りバネ42は、搬送ベルト14の周回に伴い両プーリー15、16間を周回するが、引張りバネ42には搬送ベルト14に設けたようなエッチング加工された凹凸部47が形成されていないので、引張りバネ42が両プーリー15、16に進入した際には、搬送ベルト14と両プーリー15、16間でスリップを起こす危険性が生じる。しかしながら、本実施形態では、両プーリー15、16に引張りバネ42の外径部54と接触可能なV字型の溝部53が形成されている。そのため、引張りバネ42が両プーリー15、16の溝部53に進入した際、この溝部53の斜面に引張りバネ42の外径部54が接触して押し付けられることで摩擦力が発生する、これにより、搬送ベルト14と両プーリー15、16間でのスリップを防止することが可能となる。更に、摩擦力を向上させる手段として、V字状の溝部53にローレット加工などによって凸凹を形成することも有効である(第2の実施形態で詳述)。
【0080】
また、スクレーパ17を前記搬送ベルト14側に押圧するねじりコイルバネ57が設けられているため、搬送ベルト14に一定の押圧力を確実に掛けることができる。更に、このような押圧力の確保を、比較的簡素な方式で実現することができるため、装置自体のコストを安くすることができる。
【0081】
また、スクレーパ17のスクレーパ軸55への取付位置は、搬送ベルト14に接触するスクレーパ17の先端部56が出来る限り従動プーリー16に近づく位置に設定されている。そのため、スクレーパ17の押し付け力によって搬送ベルト14の逃げを最小限にすることができて、搬送ベルト14に付着した汚れを除去することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、搬送ベルト14を回転電極板12に接触させる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、搬送ベルト14を回転電極板12に近接させるように配置しても良い。また、本実施形態では、電圧供給手段により固定電極板13にプラスの高電圧を印加する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、固定電極板13にマイナスの高電圧を印加しても良い。
【0083】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る集塵機1について、
図9〜
図12を用いて以下に説明する。本実施形態は、吸引する塵埃の量が特に多い場合や、稼働時間が長い場合の使用状態を想定している。以下、
図9における右側を集塵機1の正面側とした場合について説明する。なお、第2の実施形態の集塵機1において、搬送ベルト14、両プーリー15、16及びスクレーパ17とその周辺部材以外の構成については、上記した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
搬送ベルト14は、7本用いられている。搬送ベルト14は、金属製であり、より好適には耐久性及び防錆性を備えたステンレス製が望ましい。第2の実施形態では、第1の実施形態よりも更に耐久性と強度を向上させた厚さ0.08mmのステンレス製(SUS301−CSP)の搬送ベルト14を使用している。搬送ベルト14の第1集塵部4内における配置については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
搬送ベルト14は、有端状であり、その両端部39が張力手段としての2本の引張りバネ42により連結されている。引張りバネ42の材質は、例えば、耐食性に優れたSUS304−WPBを使用する。
【0086】
引張りバネ42による搬送ベルト14の連結について説明すると、各引張りバネ42の両端部39にはフック43が設けられ、搬送ベルト14の両端部39には幅方向の両側部にフック取付穴44が設けられ、各フック取付穴44には、はとめ45が取り付けられている(
図11参照)。そして、搬送ベルト14を駆動プーリー15及び従動プーリー16の外周に巻き掛けた状態で、各引張りバネ42のフック43を各フック取付穴44に引っ掛けることで、搬送ベルト14の両端部39が連結されるようになっている。引張りバネ42は、スクレーパ17と接触した際、フック43の先端部が引っ掛からないような方向で搬送ベルト14に取り付けられている。
【0087】
搬送ベルト14は、その周長が駆動プーリー15及び従動プーリー16間の周長よりも短くなるように形成されている。これに伴って、上記した搬送ベルト14の両端部39の連結時には、引張りバネ42が伸びて一定の張力が搬送ベルト14に掛かる。本実施形態では、引張りバネ42を数mm程度伸ばした状態で搬送ベルト14が連結されていて、適正な張力として10N程度の張力が搬送ベルト14に掛けられている。
【0088】
図11に最も良く示されるように、搬送ベルト14の両端部39は、先端に向かって次第に細くなる先細り形状を成している。搬送ベルト14の内面46には、凹凸部47がエッチング加工により長手方向に等間隔で設けられている。本実施例では、凹凸部47の深さは、0.04mm程度である。第1の実施形態では、搬送ベルト14の内面46の幅方向中央に平坦部48が設けられていたが、本実施形態においては、平坦部48は設けられておらず、凹凸部47が外縁部を除く内面46の全体に設けられている。なお、
図11の上図(平面図)では、エッチング加工により形成された凹凸部47の凹部49がハッチング表示されている。
【0089】
搬送ベルト14の両端部39には、先端から数mm程度の部分まで、エッチング加工により薄肉部74が形成されており、これにより、両端部39の屈曲性及び両プーリー15、16との噛み合いの強度を向上させている。薄肉部74には、内側に向かって屈曲部75が設けられている。本実施形態では、両端部39に屈曲部75を設けるために、両端部39に絞り加工により絞り部76を設けた上で、その絞り部76を内側に傾斜させる曲げ加工をしている。
【0090】
両プーリー15、16は、アルミ製である。両プーリー15、16の第1集塵部4内における配置については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
図12(b)に示されるように、従動プーリー16の軸方向の両端外周には、従動プーリー16とは別体に形成された振れ防止部材60が回転不能に設けられ、この振れ防止部材60にガイドされるようにして、搬送ベルト14が従動プーリー16に巻装されている。なお、
図9、
図10においては、振れ防止部材60が2点鎖線で表示されている。本実施形態では後述の如く、スクレーパ17の先端部56が、従動プーリー16に巻装されている部分の搬送ベルト17に接触するように設けられているため、振れ防止部材60には、スクレーパ17の先端部56に干渉しないように切欠部69(
図10参照)が設けられている。上記した振れ防止部材60の有無及び軸方向の両端部形状を除き、駆動プーリー15と従動プーリー16の構成は同様であるため、以下、
図12(a)、
図12(b)を用いて、駆動プーリー15と従動プーリー16の構成について同時に説明する。
【0092】
両プーリー15、16の周面51には、円周方向に等間隔な凹凸部52が形成されている。凹凸部52の構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
両プーリー15、16の周面51には、両プーリー15、16の軸に直交する方向に、逆台形状の溝部53が両プーリー15、16の幅方向の中心から左右均等寸法で凹設されている。溝部53は、搬送ベルト14の屈曲部75及び引張りバネ42を収容可能に設けられている。即ち、屈曲部75及び引張りバネ42が両プーリー15、16に進入した際に、屈曲部75及び引張りバネ42が溝部53からはみ出さない大きさとなっている。加えて、溝部53は、屈曲部75が両プーリー15、16に進入した際に、屈曲部75と接触しないように設けられている。また、引張りバネ42が両プーリー15、16に進入する際に、引張りバネ42の外径部54が溝部53と接触可能となるように、溝部53の深さ及び角度が調整されている。溝部53の底面及び傾斜面には、ローレット目で凹凸形状が設けられている。
【0094】
スクレーパ17は、アルミ製である。スクレーパ17は、左端部の搬送ベルト14の前方から右端部の搬送ベルト14の前方に亘って、1枚の平板状で設けられている。スクレーパ17は、スクレーパ軸55に回動自在に取り付けられている。スクレーパ17のスクレーパ軸55への取付位置は、スクレーパ17の先端部56が、従動プーリー16に巻装されている部分の搬送ベルト17に接触するように設定されるとともに、スクレーパ17の先端部56が従動プーリー16の下部中心位置よりオフセットするように設定されている。スクレーパ17の先端部56は、グラインダー加工によって尖った形状をしている。
【0095】
スクレーパ軸55は、ベルト軸50と平行に設けられており、ベルト軸50の前方において支持板22の下部と右側板20の下端部の間に架設されている。スクレーパ軸55には、ねじりコイルバネ57が取り付けられている。ねじりコイルバネ57の一端は右側面板の内面46に突設されたバネ固定部77に押し当てられ、ねじりコイルバネ57の他端はスクレーパ17に押し当てられている。このような構成により、ねじりコイルバネ57のモーメント作用で、スクレーパ17が搬送ベルト14側に押圧され、スクレーパ17の先端部56が搬送ベルト14に押し付けられている。スクレーパ17が搬送ベルト14に必要以上に押し付けられると搬送動力に負担がかかってしまうので、本実施形態では、適正な押し付け力として、0.1〜0.2N程度に設定している。
【0096】
第2の実施形態では上述の如く、先細り状を成す搬送ベルト14の両端部39に内側に向かって屈曲部75が形成され、この屈曲部75を収容可能な逆台形状の溝部53が両プーリー15、16に設けられている。これにより、搬送ベルト14の周回に伴って引張りバネ42が両プーリー15、16の溝部53に進入する際、搬送ベルト14の両端部39及び引張りバネ42が溝部53に収容され、両プーリー15、16の近傍の部材、特に、従動プーリー16の下方に位置するスクレーパ17の先端部56に接触しなくなる。そのため、搬送ベルト14の両端部39及び引張りバネ42を痛める危険性がなくなるとともに、搬送ベルト14の搬送性能及びスクレーパ17の塵埃除去性能に影響を与えることがない。また、溝部53は、屈曲部75が接触しない位置に設けられているため、両端部39及び引張りバネ42の損傷を一層効果的に防止することができる。
【0097】
また、溝部53には、凸凹形状が設けられているため、両プーリー15、16の溝部53に引張りバネ42が進入した際、溝部53にローレット目で形成された細かなギザギザ状の凹凸形状に引張りバネ42の外径部54が接触し押し付けられることで、摩擦力を一層高めることが可能となる。そのため、搬送ベルト14と両プーリー15、16の間でのスリップをより確実に防止することができる。また、溝部53の凸凹形状は、ローレット目で形成されているため、規則正しい等間隔な凸凹形状を比較的簡単に形成することができる。
【0098】
また、スクレーパ17の先端部56は、従動プーリー16に巻装されている部分の搬送ベルト14に接触するように設けられており、スクレーパ17の先端部56と従動プーリー16の間に搬送ベルト14が挟まれることになるので、搬送ベルト14が逃げずに搬送ベルト14上の塵埃を確実に除去することができる。特に、本実施形態では、スクレーパ17の先端が従動プーリー16の下部中心位置よりオフセットした位置で搬送ベルト14と接触するように取り付けられているため、スクレーパ17の先端部56及び搬送ベルト14が互いに逃げず、搬送ベルト14に付着した汚れを一層確実に除去することができる。
【0099】
また、引張りバネ42のフック43を掛けるためのフック取付穴44を2つ設けていて、そのフック取付穴44に引張りバネ42を2つ取り付けることによって、第1の実施形態と比べて2倍程度の張力を搬送ベルト14に掛けて、搬送ベルト14と両プーリー15、16間の密着力を更に増している。
【0100】
また、両端部39を屈曲させるために、両端部39には絞り加工を施した絞り部76を設けた上で、その絞り部76を内側に傾斜させる曲げ加工をしている。そのため、搬送ベルト14の先端部56の強度を向上させると共に、スクレーパ17との引っ掛かりを防止することが可能となる。
【0101】
更に、搬送ベルト14に接触するスクレーパ17の先端部56は、グラインダー加工によって先端が尖っている形状をしているため、搬送ベルト14に付着した汚れやこびりついた頑固なダストも剥ぎ取り除去することができる。
【0102】
また、従動プーリー16の軸方向の両端部に設けられた振れ防止部材60によって搬送ベルト14がガイドされるように構成されているため、搬送ベルト14が回転電極板12を通過して従動プーリー16に向かう際に、搬送ベルト14の左右の振れを防止し、円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態では、振れ防止部材60に切欠部69を設けたが、他の異なる実施形態では、スクレーパ17の先端部56に切欠部(図示せず)を設けることで、振れ防止部材60とスクレーパ17の先端部56との干渉を防止しても良い。また、このように、スクレーパ17の先端部56に切欠部(図示せず)を設ける場合には、振れ防止部材60に切欠部69を設けなくても良い。