(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
選別されたN−1個の正規化妨害者カップリング値は、システム中の全ての被害者ユーザについて連結され、重み付けレート差関数値が被害者ユーザの各々について計算され、
重み付けレート差関数値は、被害者ユーザの各々に割り当てられた重みに従って計算され、
動的プログラミングアプローチに従ってリソースを割り当てることは、連結された(N−1)個の正規化妨害者カップリング値と重み付けレート差関数値上で行われる、
請求項1の方法。
選別されたN−1個の正規化妨害者カップリング値は、システム中の全ての被害者ユーザまでについて連結され、重み付けレート差関数値が全ての被害者ユーザまでについて計算され、
重み付けレート差関数値は、被害者ユーザの各々に関連付けられた重みに従って計算され、
動的プログラミングアプローチに従ってリソースを割り当てることは、連結された(N−1)個の正規化妨害者カップリング値と重み付けレート差関数値上で行われる、
請求項13の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の様々な側面をまとめたので、ここで図面に描かれている開示の記載を詳細に参照する。開示はそれらの図面との関係で記載されるが、ここに開示された実施形態に限定することは意図されていない。逆に、添付の請求項によって規定される開示の精神と範囲内に含まれる全ての代替物、変形物および等価物をカバーすることが意図されている。
【0015】
利用可能なスペクトラム全体に渡る性能変動について調節するために、デジタル加入者線(xDSL)システムは典型的には、ツイステッドペア銅線の利用可能な帯域幅を多数のチャネルまたはビンに分割する離散マルチトーン(DMT)技術(例えば、マルチキャリア技術)を使用する。DMTの使用を通して、利用可能な帯域幅は複数のサブチャネルまたはトーンに分解され、各サブチャネルの送信特性に依存してデータはいくつかのサブチャネル上で同時に転送される。例えば、ADSLのような従来のxDSLシステムでは、銅送信線は256DMTトーンまたはサブチャネルに分割され、連続するサブチャネルは4.3125kHzで分離された中心周波数を有している。
【0016】
DMTシステムでは、データストリームの複数のフレームがデータブロックに分解される。各データブロックは多数のサブチャネルに割り当てられる。サブチャネル上の信号はその一方で、サブチャネルの中心周波数と同じ周波数のキャリアを変調している複素数値として表されることができる。複素数値の大きさと位相は、サブチャネルが搬送しているデータと、時々ビットローディングと呼ばれるサブチャネルがサポートできるビットの量とに基づいている。与えられたサブチャネル上のビットローディングは、サブチャネル上で送信されることができる配座点(constellation points)の数(例えば、複素数値の大きさと位相の組み合わせの数)を示している。よって、もし特定のキャリアチャネルのビットローディングが2であれば、配座点の数は4であり、各象限中の配座点は、例えば2値数00、01、10または11を表している。この2値数を配座点に関連付けるプロセスは、時々配座エンコーディングまたは配座マッピングと呼ばれる。
【0017】
各サブチャネルは典型的には、適切なサイズの直角位相振幅変調(QAM)配座の配座点にマップされた1〜15ビットのデータを搬送する。複数のサブチャネルの信号はそれから合計されて、ツイステッドペア銅線上を順次送信される時間ドメインDMTシンボルを作成する。つまり、DMTシンボルを構成するキャリアの各々は、QAM信号を含む。DMTシンボルは、元のデータストリームの各フレームについて生成される。これは、本質的には同じ線上で並列に使われたおよそ200個のV.34モデムと同等の全体的性能に結果としてなる。各キャリアチャネルはチャネル特性に応じて異なるビットレートに構成されることができるので、DMTは生来的にレートに適応するものであり、異なる加入者設備および線状態とインターフェースするために極めて柔軟であることを見ることができる。
【0018】
図1を参照すると、それはデジタル加入者線(xDSL)システム中で典型的に経験される様々なタイプのクロストークを描いている。描写のために、中央オフィス(CO)110は、2組の顧客建物設備(CPE)104、108(N=2)に2本の加入者線上で通信している2つのトランシーバー102、106からなる。トランシーバー102はCPE104と通信し、トランシーバー106はCPE108と通信する。描写するために、COトランシーバー106とCPE108からCOトランシーバー102またはCPE104のどちらかへのクロストークが記載される。しかしながら、干渉は上流および下流の経路の両方において同じ加入者線上の送信器と受信器の間であっても良いことが理解されるべきであり、それは送信信号の近端エコーである。
【0019】
遠端という用語は、干渉のソースが受信側から離れているシナリオを指し、近端という用語は、干渉のソースが受信側に近いシナリオを指す。例えば、矢印112によって示される干渉は、下流通信中に結合されたトランシーバー106によって生成され、CPE104によって受け取られたノイズを描いている。被害者という用語は、クロストークを経験している線または回路を指し、妨害者という用語は、クロストークのソースを記載する。ノイズは受信側から離れて生成されるので、これは下流遠端クロストーク(FEXT)と呼ばれる。同様に、矢印114によって示される干渉は上流近端クロストーク(NEXT)を描いている。矢印116によって示される干渉は上流FEXTを描いており、矢印118によって示される干渉は下流NEXTを描いている。特に、FEXTはVDSL(超高ビットレートDSL)において遍在するノイズ源である。従って、FEXTを緩和することのような、上述した欠陥と不十分さに対処するための様々な必要が産業上存在する。
【0020】
VDSLは、高速データ通信のためのラストマイルの解決策としてより一般的に利用されるようになってきている。VDSLのためのデータレートは、しかしながら、その他のソースの中でも自己誘発クロストーク、インパルスノイズ、外来ノイズを含んだ、多くの異なる妨害のソースによって損なわれ得る。動的スペクトラム管理レベル3(DSM3)は、自己FEXTの効果を緩和または除去することへの1つのアプローチである。自己FEXTの効果を除去するために、DSM3準拠デバイスは一般的に、上流および下流方向の両方において自己FEXTを緩和するために周波数毎またはトーン毎の基準の処理を採用する中央オフィス(CO)における信号協調または信号ベクタリング(signal vectoring)として知られる技術を利用する。上流方向では、信号ベクタリングは、外来クロストークも実効的に緩和するようにCOにおける全ての誘導されたユーザ(vectored user)の受信信号への同時アクセスを有利に活用しても良い。
【0021】
COにおいて信号協調を行うことの能力は、クロストーク除去を、COにおいて両方向での周波数毎のFEXT緩和処理を実装することに好適なものとする。このアプローチはしかし、一般的にCOにおいて顕著な計算リソースを要求する。誘導されたVDSL(vectored VDSL)システムにおいて実用的なFEXT緩和方式は従って、一般的にCOにおける或る程度の計算および/または格納制約でもって動作する。特に、その上でFEXT緩和が行われるところの周波数トーンまたはサブチャネルの数と、全てのサブチャネルまたはトーンにおいて除去されるべき妨害者の数に限定が課される。いくつかの実施形態については、全てのトーンがFEXT除去のために選択されても良いが、各トーンにおいて除去されるべき妨害者総数には制約が課されても良いことに注意されたい。上述した2つの戦略の組み合わせが利用されることもできる。そのようなシナリオの下では、COにおいて利用可能な限定された計算リソースで最大限の性能を達成するために、部分的FEXT緩和のためのトーンと妨害者を体系的に最適に選択することが有利である。
【0022】
或る状況では、CO側に加えてCPE側でも信号協調とFEXT緩和を行うことが可能であっても良い。その例は、CPEが2つ以上のツイステッドペアを通してCOに接続されているマルチペアボンデッド(multi-pair bonded)xDSLシステムである。COおよびCPE側の両方において信号協調が可能である時、与えられた方向についてのFEXT緩和はどちらの端において行われても良い。例えば、下流および上流のFEXT緩和の両方がCO側において行われても良く、または下流および上流のFEXT緩和の両方がCPE側において行われても良い。更には、下流FEXT緩和がCPE側で行われても良い一方、上流FEXT緩和がCO側で行われても良い。もっと他の実施形態では、下流FEXT緩和がCO側で行われても良い一方、上流FEXT緩和がCPE側で行われても良い。いかなる方向についての信号協調とFEXT緩和であってもそれがCPE側で行われる時には、FEXT緩和を行うための計算リソース上の限定はもっとより厳しくなる可能性が高い。よって、利用可能な限定された計算リソースで最大限の性能を達成するために、FEXT緩和のためのトーンと妨害者を体系的に最適に選択することが有利である。
【0023】
クロストーク除去を行うのに利用可能な限定されたリソースが更に、リソースの観点から関係する要求された複雑さ(complexity)の度合いの以下の統計によって描写される。描写のために、与えられたVDSLシステム中で使われるトーンの総数が(K=1000)の桁数であると仮定し、(N=10)人の誘導されたユーザがいると仮定する。これらの数字に基づくと、完全なFEXT除去を行うにはDMTシンボル毎に約(N
2)の実行時間の複素数乗算が必要である。従って、合計Kトーンについては、全てのDMTシンボルを処理するのに約KN
2の乗算が要求される。よって、10
3の桁数のサンプリング周波数については、これは全てのユーザについて完全にクロストークを除去するのに10億フロップ(浮動点演算毎秒)までもが要求されることに等しく、それは現行のプロセッサ技術では計算的に実現可能ではない。
【0024】
よって様々な実施形態が、システム内で利用可能な限定された計算リソースおよび/またはパワーリソース内にフィットするための妨害者クロストークの選択的除去に基づいた部分的除去を行うことについて記載される。例えば、部分的除去は、COにおける予め決められたパワー消費要求内にフィットするように行われても良い。典型的には、システム中で経験されるクロストークの大半は、存在する全ての妨害者の一部だけから来ている。よって、全てのクロストークを除去すること(即ち、完全なFEXT除去を行うこと)は、僅かなゲインだけにしか結果としてならず、完全なFEXT除去を達成するために必要とされる計算リソースのコストを凌駕するものには一般的にならない。このように、様々な実施形態は、効率的な部分的FEXT除去技術を組み込み、それによりシステム中の限定された計算リソースによって規定される制約を満たすためのシステムおよび方法が記載され、その後に割り当てられたリソースが実装され得るシステムが続く。特定には、FEXT除去のために異なる誘導されたユーザを割り当てて、それにより誘導されたユーザの重み付けされたレートが最大化されることについて、実施形態が記載される。ユーザのその他のレート関数も利用されても良いことに注意されたい。中央オフィス(CO)において利用可能な計算リソースが、ユーザの各々についての最小レート要求の追加の制約の下でマルチユーザの重み付けされたレート最大化問題を解くことによって、同定されて様々な誘導されたユーザの中で分配されるかまたは割り当てられる。
【0025】
部分的除去を行うことの主たる動機は、このタスクを行うために利用可能な限定された計算リソースが与えられた時に、より多くの数のユーザ上で最適なクロストーク除去を達成することである。より少ないリソースでより高い性能が達成されることができ、あるいは同じ数のリソースについて、最小限の性能をもったより多くの数のユーザを満足させることができる。部分的除去についての別の動機は、COにおけるパワー消費を低減することであっても良い。計算リソースのより効率的な割り当ては、より最適な除去方式に結果としてなるので、より少ない計算リソースが必要とされ、それはあらゆる実用性において、中央オフィス(CO)に位置しているキャンセラーユニットのより少ないパワー消費に繋がり得る。被害者における与えられた妨害者のクロストーク除去が行われた時はいつでもパワーは消耗されることに注意されたい。
【0026】
よって、代替的に、提案された部分的除去は与えられたパワー消費制約によって制約されることができ、それは利用可能である計算リソースの或る数に間接的に翻訳される。つまり、最適化問題のための計算リソース制約は、パワー消費制約に翻訳されることができる。パワー消費は、それが完全なFEXT除去方式に関係する妨害者および/または被害者の数の2乗と共に増大することが期待されるので、大規模なベクタリングエンティティについては特に重要であり得る。部分的除去方式においてリソースを最適に割り当てることによって、目的は妨害者および/または被害者の数に対するパワー消費の線形的な増加を達成することである。
【0027】
部分的FEXT除去のためにリソース割り当てを行うことへの従来のアプローチは、主に単一ユーザ複雑度(complexity)分布問題を解決することに焦点を当てており、マルチユーザシナリオに十分に対処していない。ライン選択、トーン選択およびジョイントライントーン選択のような技術は、主にユーザに割り当てられた固定された計算リソースに従った1人の誘導されたユーザの総データレートを最大化する。しかしながら、そのようなアプローチの1つの知覚された欠点は、CO中心的マルチユーザ複雑度割り当て技術がそのような従来のアプローチによって十分に対処されていないことである。更には、様々な従来のアプローチは、現実には計算リソースの観点からは離散的な性質となる傾向がある問題(即ち、使用すべき除去タップの数)を解決するための連続的なアプローチに集中している。特定には、計算リソースは、整数値に従って利用されるかまたは割り当てられる。例えば、1人、2人または3人の妨害者は除去されることができるが、1.5人の妨害者を除去することができない。結果として、連続的なアプローチに従って導出された解は、割り当て問題の離散的な性質を考慮に入れることによって更に改善することができる。
【0028】
しかも、連続的なアプローチは近似的に最適な解を導き得る一方で、そのようなリソースは実装するために膨大な計算リソースを要求し、それにより部分的除去を行うことの動機のいくつかを打破してしまう。最後に、そのようなアプローチはまた幅広い様々な最適化判断基準についてうまくいかない一方で、ここに記載された部分的除去割り当て方式は様々な最適化判断基準により容易に役に立つ。いくつかの最適化戦略は、アプローチが下に横たわる問題の本当の性質と適合している時のみうまくいき得る。離散的なアプローチに従うことの別の重要な利点は、様々な実施形態との関係でここに記載されるように、それには限定はされないが新たなユーザの追加と別のユーザがシステムから除外されることのような、システム中でパラメータが変化する時に、離散的なアプローチが許容する柔軟性である。
【0029】
DSM3処理の焦点はCOにあるので、COによってどのように誘導されたユーザの各々に計算リソースを割り当ててそれらのデータレートを最大化するかを考慮することが重要である。部分的FEXT除去リソース割り当てを行うことへの1つの従来のアプローチは、ラグランジアンに基づくマルチユーザ複雑度割り当て技術である。しかしながら、ラグランジアンに基づくマルチユーザ技術は、この技術が計算的に高価であり多くのシステムの処理能力を超えるので、前に記載したのと同じ知覚された欠点を経験する。
【0030】
描写すると、ラグランジアンマルティプライヤーは、最適解に向けて収束するためにほぼ50回の繰り返しを要求する。よって、ラグランジアンに基づくアプローチ中の各繰り返しは、DMTシンボル当りO(KN
2)の複素数乗算を要求する。このため与えられたシステム中で利用可能な処理能力とも両立するより高速な複雑度割り当て解の必要が存在する。この必要は、新たなユーザが定期的に追加され既存のユーザが除外されて、システム中のユーザ数が動的な性質になる傾向があるので存在することに注意されたい。そのようなシナリオは、大規模なベクタリングシステムにおいて新たなDSLユーザがベクタリングシステムに加入または脱退する時にはいつでも実際には起きる可能性が高い。そのような場合の各々においては、ユーザと妨害者の新たな構成が与えられて新たな最適解に達するためにリソースの再割り当てが必要であり得る。誘導されたユーザに渡る計算リソースの急速かつ効率的な再割り当ては、割り当ての恩恵を達成するためには最重要である。ここに記載された実施形態を実装することの1つの結果は、計算リソースを誘導されたユーザに割り当てるのに必要とされる繰り返し回数の大きな削減である。
【0031】
ここに記載された様々な実施形態は、誘導されたVDSLシステムの或る観察と性質に基づいたマルチユーザ複雑度割り当て方式に向けられている。開示された実施形態は、以下の側面に基づいている。第一の側面は、単一ユーザの視点からの計算リソースの最適な割り当てを含む。つまり、限定された数の計算リソースを与えられて、ユーザのレートを最大化するためにあらゆる与えられたトーンにおいてどの妨害者を除去するかの決定が、与えられた誘導されたユーザについてなされる。第二の側面は、第一の側面(単一ユーザシナリオ)をマルチユーザシナリオに拡張することと、様々なユーザの重み付けレートの合計を最大化するための各ユーザへの計算リソースの最適な割り当てを決定することに向けられている。重み付けレートアプローチについての1つの応用は、束の全体的容量を最適化する要望に関する。重みはこの場合には一体のものとして受け取られ、レートの合計が束の総レートを表す。いくつかの実施形態については、様々な誘導されたユーザに割り当てられた重みは、特定のユーザのレート要求と電話会社によって特定のユーザに課金される金額を含むがそれらに限定はされない、様々なファクターに基づいて演繹的に決定されても良い。記載された実施形態は、部分的FEXT除去を行うことへのより高速でより効率的なアプローチを提供する。実施形態は新たなユーザがシステムに追加された時にシンプルな解を提供する、ということにも注意すべきである。
【0032】
重み付けレート最大化を最適化判断基準として使用することとは別に、マルチユーザリソース割り当てはまた、実用的な設定において様々なサービスオペレータによって課される要求を満たすように行われることもできる。リソース割り当ての別の実施形態では、それらのオペレータのオファーは、与えられたレートサービスにおけるユーザ数を最大化することによって最適化される。例えば、
図1Bを参照すると、各レートサービスは、この例ではオペレータによってオファーされるそのようなサービスが3つだけであると仮定すると、ハイエンドのビデオおよびデータサービスについては50Mbpsサービス、通常のビデオおよびデータサービスについては30Mbpsサービス、データのみのサービスについては10Mbpsサービスのように、或るタイプのサービスを満たすためにユーザによって達成されるべき最小および最大レートを意味しても良い。実際には、これらの個々のサービスオファーの届く範囲は、或る距離までに或る外来および自己FEXTノイズ環境の下で達成された、期待された上流および下流レートによって決定される。
【0033】
典型的には、オペレータの目的は、ハイエンドサービスの各々についてのユーザ数を最大化するためにこれらのサービスオファーの届く範囲を拡張することかも知れない。これが
図1Bに描かれており、そこでは3組のユーザN1、N2、N3が、非除去FEXT環境において、3つのそれぞれのサービスオファーによって奉仕されることが期待されている。考察中の問題は、実際のサービスの届く範囲を規定するために、自己FEXT除去リソースの最適な割り当てを行うことによってどのようにそれら3つのカテゴリー中の数を演繹的に拡張するかである。最大化するユーティリティ関数は、例えば、オペレータのためにより高いリターンを提供することが期待されるよりハイエンドなサービスについてユーザ数N1、N2、N3を最大化することに基づいているかも知れない。ユーザが3つのサービスに加入した時、オペレータはR1、R2、R3ドルのリターンを受け取ると仮定する。数学的には、オペレータは、以下のユーティリティ関数を最大化したい。
【0034】
max R1*N1+R2*N2+R3*N3
この問題は、ユーザの各々がサービス1、2、3に到達するのに要求されるリソースをまず見つけることによって容易に解くことができる。これは、N個の単一ユーザリソース割り当て問題を解くことによってなすことができる。それから、上に与えられた線形プログラミング問題を解くことによって、オペレータのリターンを最大化することができる。上の問題の定式化は最大化問題の単なる一実施形態であり、オペレータリターン戦略を定式化する単なる1つのやり方であることに注意されたい。上の式は本質的には、線形マルチユーザ最適化問題を意味する。上の問題のその他の顕在化があるかも知れず、その1つはマルチユーザリソース割り当て問題であって、その解がここに記載される。マルチユーザリソース割り当て問題の重みは、与えられたユーザを様々なサービスに切り替える際にオペレータについて達成されるゲインに基づいて導出されることができる。ユーザが異なるレートゾーンまたはサービスに置かれるにつれて重みは変動することに注意されたい。異なるサービスに従って誘導されたユーザの数を最大化するために、異なるユーザに関連付けられた重みは従って動的に調節される。
【0035】
他の実施形態では、第一のサービス中の全てのユーザの最小レート制約が最初に満たされる。第二のサービスとその後の第三のサービスの最小レート要求がそれから満たされる。他の実施形態に従って、最大化するユーティリティ関数は、各サービスカテゴリー中のユーザ数を増加することによってオペレータが達成するであろう比例配分されたリターンに関するかも知れない。明らかになるであろうように、離散的解構造の使用は自動的に、オペレータの要求が最適なやり方で満たされることを確かなものとする。
【0036】
部分的FEXT除去方式を行うための実施形態は、FEXT除去を受けるそれらの選択されたトーン内でトーンと妨害者を選択することに向けられており、上流(US)と下流(DS)方向の両方について実装されても良い。一般に、単一ユーザの枠組みは、実際のFEXT除去フェーズが行われる前に、割り当て前フェーズとリソース割り当てフェーズからなる。先に記載されたように、マルチユーザの枠組みは、単一ユーザの枠組みの拡張であり、よって単一ユーザの枠組みの前処理もまた適切な変更でもってマルチユーザの枠組みのために拡張されることができる。
【0037】
割り当て前フェーズは、部分的FEXT除去を受けている全てのトーンに渡って各被害者ユーザについて(N−1)個のFEXT妨害者カップリングの値を計算することによって始まり、ここでNは部分的FEXT除去に関わるユーザの総数である。ここで、被害者ユーザ当り(N−1)人までの妨害者が同定されることができ、N人まで多くの被害者ユーザがいることができることに注意されたい。この点では、N人までの被害者ユーザが部分的FEXT除去を受けることができる。またFEXT妨害者カップリングを計算するのに様々なやり方があることにも注意されたい。1つの可能なやり方は、被害者ユーザにおいて受け取られた信号と既知の送信シーケンスを使った実際の妨害者送信信号との相互相関を行うことによってFEXTカップリングを決定することである。代替的なやり方は、既知の送信シーケンスを使って被害者ユーザ上への妨害者信号のインパクトを最小化することによってFEXTキャンセラーを直接訓練することによるものである。このプロセスを通して得られたFEXTキャンセラー係数は生来的に、探されているFEXT妨害者カップリングの逆数を表す。これら2つのやり方のいずれもは、被害者ユーザへの望ましいFEXT妨害者カップリングを作り出す。それから、いかなるFEXT除去をも行う前に、部分的FEXT除去を受けている被害者ユーザの各トーンについて信号対雑音比(SNR)とビットローディングが決定される。更には、総ビットレート関数が計算される(これも現行ユーザについてのFEXT除去を行う前に)。
【0038】
全てのトーンに渡る全ての誘導されたユーザの送信シンボルエネルギーもCO端において既知であるので、妨害者の各々のカップリングがそれから、妨害者と被害者の平均送信エネルギーに対して正規化される。よって、全てのトーンについて、(N−1)個の正規化FEXTカップリングが、大きさに対して最高から最低の値までに選別されることができる。また、全てのトーンについて、正規化カップリングの除外に対応する(N−1)個のSNR関数値とビットローディングが決定されて、大きさの降順に選別される。いくつかの実施形態については、これは、最大の正規化カップリング成分を1つずつ除外し、残りの正規化クロストークカップリングでSNR関数を計算して、それによりビットローディング関数を提供することによってなされる。いくつかの実施形態については、SNR関数もまた、全てのトーン上で最大の正規化カップリングをもった妨害者のFEXT除去を行った後で計算される。最大の正規化カップリング成分の除外および/またはFEXT除去の後のSNR関数の決定は(N−1)回行われ、これは各ユーザについての全てのトーンに渡る(N−1)人の妨害者に対応することに注意されたい。いくつかの実装については、SNR関数値は、後述される格納媒体のような有形の格納媒体中の(K)×(N−1)(ここでKはトーンの総数)の寸法の行列に格納される。レート差関数は、全てのトーン上で降順に支配的妨害者を除去することで獲得されSNR関数値に従って評価されたインクリメンタルなレートである。代替的な実施形態では、SNR差関数値自体を含むがそれに限定はされない、その他の関数値も使われても良い。
【0039】
部分的FEXT除去を行う前に、与えられたユーザについてFEXT除去を行うためにシステム中で利用可能な計算リソースが決定される。これは、(完全なFEXT除去に対して)部分的FEXT除去を行うことについての動機を提供し、どれだけ多くのFEXT妨害者が除去を受けるように選択されるかに影響を与える。いくつかの実施形態については、計算リソースの数は、COによって演繹的に指定されても良く、一方その他の実施形態については、利用可能な計算リソースは、最小ビットレート要求に基づいて規定されても良い。例えば、もし部分的FEXT除去を行う間に与えられたユーザについてのビットレート要求が満たされれば、最小性能要求が満たされたので部分的FEXT除去割り当てプロセスは停止されても良い。そのような実施形態に従って、ビットレートの正味のゲインが計算される。もし最小ビットレート要求がまだ満たされていなければ、最小ビットレート要求が満たされるFEXT除去を受けるようにより多くの妨害者が選択される。このために、動的プログラミングに基づいたアルゴリズムが使われ、そこでは除去する妨害者の組を選ぶことによってリソース割り当てがインクリメンタルに行われる。動的プログラミングは一般的に、問題をより単純でより小さいサブ問題に分解することによって複雑な問題を解決するというアプローチを指す。もし動的プログラミング方法が適用可能であるようにサブ問題がより大きな問題内部に反復的に入れ子にされることができれば、より大きな問題の値とサブ問題の値の間に関係がある。これは動的プログラミングの最適サブ構造特性として知られる。マルチユーザリソース割り当て問題は上のサブ構造特性を満たすので、動的プログラミングアプローチは、問題を解決するための多くのやり方で適用されることができる。
【0040】
例えば、動的プログラミングアプローチを使って、1つのトーンが、そのトーン上で最適には除去されるべき妨害者の数と共に、各ステップにおいて選択される。これは、総リソースが完全に利用されるまで反復的になされる。様々な実施形態に従って、レートゲインを最大化する(N−1)人までの妨害者がトーン当りに選択される(部分的FEXT除去に関わる合計N人のユーザに基づいて)。いくつかの実施形態については、(合計でKトーンの組からの)トーンと妨害者の数の選択は、先に記載された(K)×(N−1)のSNR差関数行列の各列を選別することによって行われる。全てのステップは最適なトーンとそれに関連付けられた妨害者の数を決定するので、必要とされる計算リソースの総数は、選択された最適トーン中の妨害者の数によって減少される。
【0041】
部分FEXT除去を行うプロセス中に、もし計算リソースの総数が使い果たされれば、利用可能な計算リソースを超えなくするためにリソース割り当ては停止される。動的プログラミング方法を実装することにはいくつかのやり方があり、記載された様々な実施形態は他の動的プログラミングアプローチを使って実装されても良いことに注意されたい。例えば、リソース割り当てのために動的プログラミングを使うことに向けられた一実施形態では、1つのリソースと1つのトーンが各ステップにおいて追加されることができる(全てのトーンに1つのリソースを追加するのではなく)。簡単に言うと、上に説明された最適サブ構造の上に築かれるあらゆるアプローチは、一般的に動的プログラミングを含んでいる。
【0042】
部分的FEXT除去のための基本的な枠組みを記載したので、上述した様々な動作についての追加の詳細がここで提供される。まず、その中で部分的FEXT除去方式の実施形態が記載されるシステムモデルが記載され、それに続いて単一ユーザ最適化方式の拡張に基づいたマルチユーザ重み付きレート最適化に関わる問題と解決の説明が記載される。最後に、記載された実施形態の効率性を描写するために、ここに記載された部分的FEXT除去方式と従来のアプローチ(即ち、先に説明されたラグランジアンに基づくアプローチ)の間の比較がなされる。
【0043】
その中で部分的FEXT除去を行うための実施形態が実装され得るシステム100を描いている
図2を参照する。いくつかの実施形態に従って、システムはDMTに基づいたxDSLシステムからなっていても良い。システムは、N組のCPE(顧客建物設備)またはユーザ110a、100b、100cを含み、ここで各ユーザ110a、110b、110cはインデックスnで参照され、Nは部分的FEXT除去に関わるユーザの総数を表す。システム100は更に、以下により詳細に記載されるように、FEXT除去のためのトーンおよび妨害者の選択を行う、選択モジュール132からなる。
【0044】
一般に、また信号協調およびFEXT緩和がCOまたはCPEにおいて行われるかどうかに関係なく、与えられた動作の方向(例えば、上流対下流)についての選択モジュール132は、COかまたはCPEのどちらかにおいて実装されることができる。両方向についての選択モジュール132がCO内で実装された(CO中心的トーン選択)実施形態については、下流FEXT緩和についてCOにおけるトーン/妨害者選択を行うために、COと各CPEの間で確立されたプロトコルが様々なCPE(またはエンドユーザ)からCOに戻る情報の搬送を提供するのに使われても良い。CO中心的トーン選択実装における上流FEXT緩和については、トーン選択のために使われる情報は既にCOに在駐している。その他の実施形態については、両方向についての選択モジュール132はCPE110a、110b、110c内に実装されても良い(CPE中心的トーン選択)。そのような実施形態については、CPEが上流FEXT緩和のためのトーン選択を満足に行うことを許容するためにCOからCPEへの情報の搬送を提供するようにプロトコルが組み込まれる。CPE中心的トーン選択の場合における下流FEXT緩和については、トーン選択のために使われる情報は既にCPE上に在駐している。
【0045】
システム100は更に、選択モジュール132によってなされた選択に基づいてFEXT除去を行うFEXTキャンセラー134からなる。いくつかの実施形態に従って、FEXTキャンセラー134は、下流方向と関連付けられたFEXTのためのMIMO(多数入力多数出力)プリコーダーからなっていても良い。上流方向については、FEXTキャンセラー134は、MIMOキャンセラーからなっていても良い。そのような実施形態に従って、FEXTキャンセラー134は更に、外部ソースからのノイズに対処するように構成されていても良い。CO130はまた、xDSLアクセス多重化器(DSLAM)と、COトランシーバー140a、140b、140cと、ユーザ110a、110b、100cとインターフェースするためのその他の設備を含んでいても良い。いくつかの実施形態では、COトランシーバーカード140a、140b、140cが、選択モジュール132とインターフェースしても良い。更には、動作のいずれかの与えられた方向について、もしその方向についてのFEXTキャンセラー134と選択モジュール132が異なる端に位置していれば(即ち、モジュールの1つはCOにある一方でもう1つはCPEにある)、選択モジュール132によって選択されたトーンの情報をFEXTキャンセラー134に搬送するために別のプロトコルがCOとCPEの間に組み込まれなければならないかも知れない。選択モジュール132は更に、存在するトーンの各々について、妨害者カップリング値の大きさに対して降順に(N−1)個の妨害者カップリング値を選別するように構成された選別モジュール135からなる。選択モジュール132はまた、FEXT除去を行うためにCO130において利用可能な計算リソースを決定するように構成されたリソース割り当て器136からなる。
【0046】
図2に示された様々なコンポーネンツを実装するためのCO130内の装置の実施形態を描いている
図3をここで参照する。一般的に言って、装置は、数々のコンピューティングデバイスのいずれか1つからなる。その特定の配置に関係なく、装置は、メモリー312と、プロセッサ302と、大容量記憶装置326とからなっていても良く、それらのデバイスの各々はデータバス310に跨って接続されている。
【0047】
プロセッサ302は、あらゆる特注のまたは商業的に入手可能なプロセッサと、装置と関連付けられたいくつかのプロセッサ中の中央処理ユニット(CPU)または補助的プロセッサと、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップの形での)と、1つ以上のアプリケーション特定集積回路(ASICs)と、複数の好適に構成されたデジタルロジックゲートと、コンピューティングシステムの全体的動作を協調するための個々のおよび様々な組み合わせの両方の離散的エレメントからなるその他の良く知られた電気的構成と、を含んでいても良い。
【0048】
メモリー312は、揮発性メモリーエレメント(例えば、ランダムアクセスメモリー(DRAMおよびSRAM等のようなRAM))と不揮発性メモリーエレメント(例えば、ROM,ハードドライブ、CDROM等)のいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる。メモリー312は典型的には、ネイティブオペレーティングシステム314と、様々なオペレーティングシステムおよび/またはエミュレートされたハードウェアプラットフォーム、エミュレートされたオペレーティングシステム等のいずれかのための1つ以上のネイティブアプリケーション、エミュレーションシステム、またはエミュレートされたアプリケーションからなる。例えば、アプリケーションは、プロセッサ302による実行のために非一時的コンピューター読み取り可能な媒体上に格納されたアプリケーション特定ソフトウェア316を含んでいても良く、
図2との関係で記載されたモジュール132、134、135、136のいずれかを含んでいても良い。メモリー312は、簡潔のために省略されているその他のコンポーネンツからなることができ、典型的にはそうであることを当業者は理解するであろう。但し、モジュール132、134、135、136はまたハードウェアとして実施されても良いことが注意されるべきである。
【0049】
上に記載されたコンポーネンツのいずれかがソフトウェアまたはコードからなるところでは、同じものは、例えばコンピューターシステムまたはその他のシステム中のプロセッサのような、命令実行システムによるかまたはそれとの関係での使用のためのあらゆるコンピューター読み取り可能な媒体中で実施されることができる。本開示の文脈では、コンピューター読み取り可能な媒体は、命令実行システムによるかまたはそれとの関係での使用のためのソフトウェアまたはコードを含み、格納し、または維持することができるあらゆる有形の媒体であることができる。例えば、コンピューター読み取り可能な媒体は、上述した処理デバイス302による実行のための1つ以上のプログラムを格納しても良い。コンピューター読み取り可能な媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁気的、赤外線または半導体システム、装置またはデバイスであることができるがそれらに限定はされない。
【0050】
コンピューター読み取り可能な媒体のより具体的な例は、1つ以上のワイヤを有する電気的接続、携帯型コンピューターディスケット、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、消去可能プログラム可能リードオンリーメモリー(EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリー)、携帯型コンパクトディスクリードオンリーメモリー(CDROM)を含んでいても良い。
図3に示されるように、装置は更に、大容量記憶装置326からなっていても良い。いくつかの実施形態については、大容量記憶装置326は、以下に記載される行列のような、データを格納して管理するためのデータベース328を含んでいても良い。
【0051】
図2に戻ると、VDSLシステムは、DMTベースの送信方式を使い、それにより送信と受信のトーンについての独立性を確かなものとしている。よって、トーンについてのクロストーク除去が行われる。この開示のために、トーンqにおいて、システム100は、
y[q]=H[q]x[q]+ν[q] q∈{1、...K} (1)
としてモデル化され、ここでNは誘導されたユーザの数、H[q]は、その要素H(n,m)[q]が妨害者nから被害者mへのクロストークカップリングであるN×NのMINO−DSLチャネル行列、x[q]=[x
1[q]...x
N[q]]
tはシンボルx
m[q]を集めたN×1の送信信号ベクトルでm∈1、...N、ν[q]は、熱的ノイズ、外来ノイズ等々を含む受信器において経験されたN×1のコラムノイズベクトルである。上のシステムモデルは、システムが上流(US)方向に送信しているかまたは下流(DS)方向に送信しているかに拘わらず正しいことに注意されたい。
【0052】
FEXT除去は、受信シンボルベクトル(USのFEXT除去について)においてかまたはCO中心的自己FEXT除去方式における下流送信シンボルベクトルにおける前補償のために、与えられたトーン上でN×N行列を適用することによって行われる。これは、平均して、1人の妨害者から被害者へのクロストークの除外が単位乗算複雑度を含むことを意味する。トーンq上で妨害者nから被害者mに誘発されたクロストークを除外することは、H(n,m)[q]=0であることと等価である。従って、FEXTの完全な除去は、以下に反映されているように、
H(n,m)[q]=0、n≠m q∈1、...K (2)
チャネル行列の全ての非対角項が等価的にゼロにされることを意味する。よって、部分的除去を行うことは、カップリング係数の部分的ゼロ化を意味する。言い換えると、効率的な部分的除去は、或るレート判断基準を最大化すべくどのトーンについてどの妨害者を除去するかを決定することを含む。
【0053】
単一ユーザの重み付けレート最適化の枠組みが、部分的FEXT除去のためにここで規定される。様々な実施形態に従って、1つの側面は、1)利用可能な総計算リソースと、2)誘導されたユーザの個々の最小レート要求(
【数1】
【0054】
によって表される)を与えられて、部分除去を受けた後に誘導されたユーザの重み付けレートを最大化することを含む。利用可能な総複雑度(または除去タップ)がC
totによって表されると仮定する。0か1のどちらかのエントリーをもった(N−1×N−1)の寸法のK個の行列Ω[q]が全てのトーンに対応するものとする。マルチユーザの重み付けレート最適化問題は以下によって表され得る。
【数2】
【0055】
上の表現において、R
nは、n番目のCPEまたはユーザに対応するシャノン容量を表記する。パラメータw
nは、優先度オプションとそのn番目のCPEについてのデータレート需要の考察の両方に基づいてn番目のCPEに割り当てられた重みを表す。
【0056】
トーンqにおける妨害者mから被害者nに発されたクロストークが除去された時、Ω
n、m[q]=1となり、そうでなければΩ
n、m[q]=0となる。なお、様々な制約が考慮されていることに注意されたい。制約の第一のセットは、N人のユーザの各々についての最小ターゲットデータレートを指定する。第二の制約は、利用可能な計算リソースの分布を記載する。n番目のユーザR
nについての総レートは、
【数3】
【0057】
によって与えられる。ここで、
【数4】
【0058】
の項は、トーンqにおけるSNRであり、
【数5】
【0059】
によって与えられ、そこでは、
【数6】
【0060】
は誘導されたユーザの平均送信シンボルエネルギーを表記し、
【数7】
【0061】
は受信器における加算的ノイズの分散である。なお、
【数8】
【0063】
は全てのトーンについて同じであると仮定されている。H
n、n[q]はトーンqにおけるn番目のユーザについてのダイレクトチャネル応答である。これに基づいて、上の式は、
【数10】
【0064】
と書くことができる。ここで、c
n、m[q]は、トーンqにおける被害者nと妨害者mの間の正規化カップリングを表記し、
【数11】
【0065】
はトーンインデックスに依存する正規化加算的ノイズである。単一ユーザのリソース割り当て問題についての基本的な枠組みを記載したので、単一ユーザ問題は解決された。単一ユーザ解の拡張が、それから拡張されてマルチユーザシナリオに適用される。
【0066】
部分的除去のための単一ユーザのリソース割り当て問題の解がここで説明される。後に明らかとなるように、マルチユーザの部分的除去問題は、単一ユーザシナリオの自然な拡張である。誘導されたユーザnについてシステム中で利用可能な計算リソースの総量が、パラメータλ
nによって表されると仮定する。ユーザnについての支配的なクロストーカーを除去するために、K×(N−1)の連結された行列
【数12】
【0067】
が作り出され、そこではi番目の行は、トーンiに対応する正規化カップリング行列のn番目の行(即ち、
【数13】
【0068】
)によって与えられる。言い換えると、行列D
nは、全てのトーン上への残りのN−1人の妨害者からのカップリングの行についての連結を表す。トーン毎に各妨害者について1単位のリソース複雑度(例えば、除去タップ)が必要であると仮定すると、λ
n個のクロストーク除去を受けた後のカップリング行列は、行列D
nにλ
n個のゼロを挿入することと等価であろう。
【数14】
【0069】
を対応する行列であるとする。もし
【数15】
【0070】
がユーザnについての部分的自己FEXT除去後のレートであるとすると、部分的除去問題の記述は以下によって表される。
【数16】
【0071】
よって、上に表された単一ユーザのリソース割り当て問題は、D
nにλ
n個のゼロを挿入することによって生成される全ての可能な行列
【数17】
【0072】
に渡って検索を行うことに向けられている。
【0073】
除去タップは、各ステップにおいて最大のレートゲインを達成すべく動的プログラミングを使って割り当てられる。2つの観察が注意されるべきである。1つは、特定のトーンについての最も支配的なクロストークソース(行列D
nのいずれかの行に対応する)は、最も大きなカップリング値をもったソースであることである。従って、この妨害者ソースは最初に除去されるべきである。また、1つのトーン上で妨害者を除去することは、その他のトーンにおいてゲインされるレートには何の影響も持たない。複雑度リソース割り当ての様々な実施形態は、上の二つの観察に基づいている。特定には、全てのトーンからのカップリングからなる全体的カップリング行列D
nは、上の観察を梃入れするようなやり方に再配列される。これらの観察に基づいて、どのトーンについてどの妨害者を除去するかに関する検索方法が、部分的FEXT除去を行うための効率的な手段を提供するために導出される。上の最初の観察を梃入れするために、D
nの大きさの2乗が計算されて、
【数18】
【0074】
が得られ、各行(各トーンに対応する)が、それらの大きさに対して昇順に選別される。次いで、行列
【数19】
【0075】
の各行において累積和が計算される。
【数20】
【0077】
のいずれかの行のj番目の要素は、それぞれの行(トーン)における最初のN−j人の妨害者の除去後のカップリングのノルムを意味することに注意されたい。N−j人の支配的な妨害者の除去後のトーンqにおけるレートがそれから得られる。上の操作を行った後に結果として得られる行列は、Lによって表される。ここで、上の行列Lのいずれかの行について考える。いずれかの行の二つの連続する要素の間の差(例えば、L(q、j)−L(q、j−1))は、q番目のトーンにおいてj番目の支配的な妨害者を除去することによってゲインされるレートを表す。行列ΔLが構築され、そこではその要素ΔL(q、j−1)は、L(q、j)−L(q、j−1)、j∈{1、...N}によって定義される。上の第二の観察が梃入れされた。
【0078】
上に概略を説明したプロセスを行うのに必要となる計算リソースの数を描写するために、計算的繰り返しの数が対応する操作のセットによって以下に示される。
【0081】
が正規化カップリングd
iiの大きさの2乗を表す。
【0082】
操作1:
この操作は、行列
【数24】
【0084】
操作2:
下に示されるように、各行の累積和が計算される。
【数25】
【0085】
この操作は、NK個の実数加算を含む。
【0086】
操作3:
この操作は、上の操作2で得られた行列の要素についての対数操作を行うことに向けられている。
【数26】
【0088】
によって表記される。この操作は、NK個の対数計算を含む。
【0089】
操作4:
この操作は、下に示されるように、レート関数の差を推定するための累積減算操作を行うことに向けられている。
【数28】
【0090】
最初の部分は、初期化および順序化操作である(操作0から4)。
【0091】
動的プログラミングの概念を更に描写するために、ボールのバケツへの最適割り当てに関わる以下の描写を考察する。下の描写のために、K個のバケツがあり(K個のトーンを表している)、そこでは各バケツはN−1個までのボール(各ボールは計算リソースの単位を表記している)で埋められることができるとする。k番目のバケツ中にi個のボールを置くことからのゲイン増加が、
【数29】
【0092】
によって表されるとする。割り当て問題は、全体的ゲインを最大化するようなやり方でそれらのバケツ中にλ個のボールを置くことに焦点を当てている。
【0093】
最適ゲインと、p回の割り当ての後の対応する更新されたゲイン行列を、
【数30】
【0094】
とΔL
n(p)とする(行列ΔL
n(p)のk番目の行はp
k個のゼロを持ち、それは
【数31】
【0096】
となるように割り当てられたボールに対応する)。これに基づいて、下の式の繰り返しは、ΔR
n(p+1)が最大化されるように、{1、...、K}から1つのバケツを選択し、選択されたバケツに入れられるべきボールの数i∈[1、N−1]を選択することを含む。
【数33】
【0097】
バケツに入れることができるボールの最大数はN−1個なので、全てのステージにおいてN−1個のステップのみが取られる。上の式14の問題を解くために、ゲインのセット
【数34】
【0098】
を同定するように選別された行列
【数35】
【0099】
がアクセスされる。これらのゲインはそれから、先に得られたΔR
n(p−i+1)に加えられ、最大和との組み合わせが選ばれる。ゲイン行列ΔL
n(p)はそれから、選ばれたバケツに対応する行上でのi個の位置分(その行中の割り当て数に対応する)の右シフト操作を行い、最初のi個の列にi個のゼロを埋めることによって更新される。しかも、L
n(p)はまた、新たな割り当てによって置き換えられたエントリーで再代入される。選別された行列
【数36】
【0100】
はそれから、再配列されて、
【数37】
【0102】
上の解は、動的プログラミングアプローチを使う1つのやり方にすぎず、そこでは最適化問題は問題を多くのより小さな問題に分割することによって解決されている。問題の最適サブ構造特性が動的プログラミングアプローチでは利用されている。動的プログラミングアプローチを使うことの1つの他の実施形態は、単位リソースについて1つのトーンを1つずつ(全てのトーンに渡って1つのリソースを1つずつではなく)検索することからなる。マルチユーザのリソース割り当てのために問題をより小さな離散的サブ問題に分解するいくつかのその他のやり方があっても良い。
【0103】
マルチユーザのリソース割り当てアルゴリズムがここで記載され、それは対応する単一ユーザ問題の単純な拡張である、マルチユーザのリソース割り当ては、NK個のトーンと変形されたカップリングをもった単一ユーザのリソース割り当てと等価である。この点では、上に提示された単一ユーザのリソース割り当て手順は、その寸法がNK×(N−1)である拡張されたカップリング行列D’を構築するように、全てのユーザの寸法K×(N−1)の総カップリング行列D
n、n∈1、...、Nを連結することによって拡張されることができる。マルチユーザの複雑度リソース割り当てのためのアルゴリズムは、以下からなる。制約が満たされるように先に記載された技術を使って、N個の単一ユーザのリソース割り当て問題が解かれる:
【数38】
【0104】
次いで、残りの除去されていないカップリング
【数39】
【0105】
が、単一ユーザのリソース割り当て問題を再度解くために除去される。
【数40】
【0106】
ここで
図4を参照すると、それは
図2のコンポーネンツで実装された部分的FEXT除去を行うためのフローチャート400である。もしソフトウェアで実施されれば、
図4に描かれた各ブロックは、指定された論理的機能を実装するための非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体上に格納されたプログラム命令からなるコードのモジュール、セグメントまたは部分を表す。この点では、プログラム命令は、
図2に示されたもののような、コンピューターシステムまたはその他のシステム中のプロセッサのような好適な実行システムによって認識可能な数字的命令からなるプログラミング言語またはマシーンコードで書かれた記述からなるソースコードの形で実施されても良い。マシーンコードは、ソースコード等から変換されても良い。もしハードウェアで実施されれば、各ブロックは、指定された論理的機能を実装するための回路または数々の相互接続された回路を表しても良い。
【0107】
図4のフローチャート400は実行の特定の順序を示すが、実行の順序は描かれたものとは異なっていても良いことが理解されているものとする。ブロック410から始まって、システムについての計算リソース境界が決定される。ブロック420では、妨害者と関連付けられた(N−1)個の正規化カップリング値が計算され、ここでNは部分的FEXT除去に関わるシステム中のユーザの総数であり、(N−1)個の正規化カップリング値はシステム中で部分的FEXT除去を受けている全てのトーンについて計算される。ブロック430では、トーンの各々について信号対雑音比(SNR)関数が決定される。ブロック440では、全てのトーンについて、(N−1)個の正規化カップリング値が選別され、最も支配的な妨害者から始まり最小ビットレート要求が満たされるまでの選別された(N−1)個の正規化カップリング値に基づいて、妨害者が一度に1人ずつ除去される。ブロック450では、依然として計算リソース境界内に収まりながら、最も大きなレートゲインに結果としてなるような1つのトーンと妨害者の数が選択される。
【0108】
図5は、部分的FEXT除去を行うための
図1のシステム100中に示された選択モジュール132とFEXTキャンセラー134間の信号フローを描いている。特定には、
図5は、ここに様々な実施形態について記載されたように、リソース割り当てに基づく、与えられた被害者である誘導されたユーザについての部分的FEXT除去を描いている。
図5に描かれた部分的FEXT除去方式は、上流(US)と下流(DS)方向の両方について実装されてもよいことに注意されたい。先に記載したように、選択モジュール132は、存在するトーンの各々について、(N−1)個の正規化妨害者カップリング値を、正規化妨害者カップリング値の大きさに対して降順に選別するように構成された選別モジュール135からなる。示されるように、被害者ユーザのトーンの各々への全ての妨害者の完全な除去のためのプリコーダーまたはキャンセラーについての行列係数を表しているMIMOプリコーダーまたはキャンセラー522(即ち、DS方向についてのプリコーダーかUS方向についてのキャンセラーのどちらか)が、選択モジュール132中のゼロ化モジュール506を通過させられ、ここでゼロ化モジュール506は、被害者ユーザのトーンの各々について除去されるべきではない妨害者のインデックスに対応する完全MIMOプリコーダーまたはキャンセラーの係数をゼロにするように構成されている。これは、選択モジュール132によって行われるリソース割り当てに従ってなされる。
【0109】
先に
図1との関係で記載されたように、選択モジュール132はリソース割り当て器136からなる。リソース割り当て器136は、ゼロ化モジュール506に入力を提供する。特定には、SNR関数値504に基づいて導出されたトーン毎の決定行列502が、ゼロ化モジュール506中に供給される。但し、
図5はSNR関数値504の使用を描いているものの、関連付けられた重みベクトルと共に、様々な誘導されたユーザのレート差関数を含むがそれに限定はされないその他の関数値が使われても良いことは強調されるべきである。トーン毎の決定行列502に基づいて、ゼロ化モジュール506は部分的プリコーダーまたはキャンセラー523を決定する。FEXTキャンセラー134においては、プリコーダーまたはキャンセラー523の行が、送信または受信ベクトルの行列の対応する列に掛けられ、それによりプリコードされた/除去されたベクトル526が作成される。部分的にゼロ化されたMIMOキャンセラー523の各行と送信/受信行列510の対応する列は、トーンに対応する。
【0110】
上述した実施形態は、可能な実装の単なる例であることは強調されるべきである。本開示の原理から逸脱すること無しに、上述した実施形態に多くの変更および変形がなされても良い。そのような変形および変更の全ては、この開示の範囲内にここに含まれ、以下の請求項によって保護されることが意図されている。