(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩とを混合し、加熱溶融し、次いで、得られた溶融物を、水に溶解させることにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を得ることを特徴とする請求項3記載の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法。
前記接触及び乾燥工程において、100〜300℃で、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を乾燥させることを特徴とする請求項3又は4いずれか1項記載の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法。
100〜300℃で、二酸化硫黄ガスを含有する雰囲気中に、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を噴霧することにより、前記接触及び乾燥工程を行うことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩は、下記一般式(1):
M
2O・nSiO
2・xH
2O (1)
(式中、Mは、アルカリ金属を示し、nは0.5≦n≦5.0、xはx≦1.7である。)
で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が、硫黄酸化物塩層で覆われており、表面のSO
32−含有量が0.1質量ppm以上であることを特徴とする表面改質アルカリ金属珪酸塩である。
【0016】
表面が改質されていない前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩は、空気中の水分により加水分解され、その表面がアルカリ金属の水酸化物により覆われる。このアルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは潮解性が大きい。そのため、アルカリ金属珪酸塩の表面が粘性のある状態となるため、強度が低くなったり、ブロッキングの原因となったりする。一方、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩は、アルカリ金属珪酸塩の表面が、硫黄酸化物塩により改質されているが、その詳細について以下に説明する。
【0017】
前記一般式(1)中、Mは、アルカリ金属であり、好ましくはナトリウム又はカリウムである。Mは1種でも2種以上の組み合わせでもよい。例えば、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム等のアルカリ金属メタ珪酸塩、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム等のアルカリ金属オルソ珪酸塩などが挙げられ、メタ珪酸ナトリウムが好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中、H
2Oは、アルカリ金属珪酸塩に内包される水分である。本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩では、硫黄酸化物塩で表面が改質されていることにより、吸湿が抑えられるが、アルカリ金属珪酸塩が、一般式(1)中のxの範囲の水分を内包することにより、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩は、表面の粘性が抑えられ且つ水性溶媒に速やかに溶解されるという性質を有する。
【0019】
前記一般式(1)中、nは、SiO
2/M
2Oモル比を示し、0.5≦n≦5.0、好ましくは0.7≦n≦4.5、特に好ましくは1.0≦n≦4.0である。また、前記一般式(1)中、xは、H
2O/M
2Oモル比を示し、x≦1.7、好ましくは0.1≦x≦1.7、特に好ましくは0.2≦x≦1.5である。
【0020】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩中のH
2Oの含有量は、30%以下、好ましくは19〜25%である。本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩中のH
2Oの含有量が上記範囲にあることにより、表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の粘性が抑えられ且つ水性溶媒に速やかに溶解されるという効果が高まる。
【0021】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩は、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている。前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われていることにより、表面改質アルカリ金属珪酸塩の耐湿性及び強度が高くなるという表面改質の効果を奏する。
【0022】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩において、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面を覆っている硫黄酸化物塩は、硫黄酸化物イオンのアルカリ金属塩である。硫黄酸化物塩に係る硫黄酸化物イオンとしては、亜硫酸イオン(SO
32−)、硫酸イオン(SO
42−)、チオ硫酸イオン(S
2O
32−)等が挙げられる。硫黄酸化物塩に係るアルカリ金属は、ナトリウム又はカリウムが好ましい。そして、硫黄酸化物塩としては、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等が挙げられる。
【0023】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩では、硫黄酸化物塩層を構成する硫黄酸化物塩は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩では、硫黄酸化物塩層を構成する硫黄酸化物塩の一部が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸イオン(SO
32−)のアルカリ金属塩である。よって、硫黄酸化物塩層を構成する硫黄酸化物塩は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸イオンのアルカリ金属塩と、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等の亜硫酸イオンのアルカリ金属塩以外の硫黄酸化物塩である。
【0024】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩において、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面を覆っている硫黄酸化物塩層の厚みは、0.1〜3000nm、好ましくは0.1〜1000nmである。硫黄酸化物塩層の厚みが上記範囲にあることにより、表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の粘性を抑え且つ強度を保つことができる。なお、本発明において、硫黄酸化物塩層の厚みは、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定される。
【0025】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の亜硫酸イオン(SO
32−)含有量は、0.1質量ppm以上、好ましくは0.5〜6質量ppmである。一般的に亜硫酸イオン(SO
32−)の金属塩は、酸化されやすい性質をもつが、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩では、このような亜硫酸イオン(SO
32−)の金属塩の性質を利用している。そして、亜硫酸イオン(SO
32−)の金属塩は、アルカリ金属珪酸塩から発生する水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を、中和することができるため、継続的に表面改質の効果が得られるものと考えられる。表面の亜硫酸イオン(SO
32−)含有量が0.1質量ppm未満だと、継続的に表面改質の効果が得られない。
【0026】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の硫酸イオン(SO
42−)含有量は、0.1質量ppm以上、好ましくは1〜100質量ppmである。表面の硫酸イオン(SO
42−)含有量が上記範囲にあることにより、耐湿性及び強度が高くなる。
【0027】
なお、本発明において、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の亜硫酸イオン(SO
32−)含有量とは、表面改質アルカリ金属珪酸塩の質量に対する表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面に存在する亜硫酸イオンの質量の百万分率((表面の亜硫酸イオンの質量/表面改質アルカリ金属珪酸塩の質量)×1000000)である。また、本発明において、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の硫酸イオン(SO
42−)含有量とは、表面改質アルカリ金属珪酸塩の質量に対する表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面に存在する硫酸イオンの質量の百万分率((表面の硫酸イオンの質量/表面改質アルカリ金属珪酸塩の質量)×1000000)である。なお、表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面の亜硫酸イオン及び硫酸イオンとは、表面改質アルカリ金属珪酸塩の表面及びその近傍に存在している亜硫酸イオン又は硫酸イオンのことであり、例えば、X線光電子分光(ESCA)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)等により測定される。
【0028】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の平均粒径は、好ましくは40〜400μm、特に好ましくは60〜150μmである。
【0029】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩は、表面が硫黄酸化物塩で改質されているので、耐湿性が高く且つ強度が高いため、アルカリ金属珪酸塩の内部水分の飛沫を防ぐことができることから、ブロッキングが防止されること、溶媒に速やかに溶解すること等、作業性の良いアルカリ金属珪酸塩である。
【0030】
次に、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法を説明する。本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法は、(A)下記一般式(1):
M
2O・nSiO
2・xH
2O (1)
(式中、Mは、アルカリ金属を示し、nは0.5≦n≦5.0、xはx≦1.7である。)
で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を、乾燥させると共に二酸化硫黄を含有するガスと接触させること、
又は(B)前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を、乾燥させてから、二酸化硫黄を含有するガスと接触させること、
により、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている表面改質アルカリ金属珪酸塩を得る接触及び乾燥工程を有することを特徴とする表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法である。
【0031】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法は、接触及び乾燥工程を有する。この接触及び乾燥工程は、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の乾燥及び二酸化硫黄含有するガスとの接触を行い、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている表面改質アルカリ金属珪酸塩を得る工程である。
【0032】
接触及び乾燥工程において用いられるアルカリ金属珪酸塩の水溶液は、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩を水に溶解させた水溶液である。
【0033】
接触及び乾燥工程に係る前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液中のアルカリ金属珪酸塩は、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩であればよく、例えば、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム等のアルカリ金属メタ珪酸塩、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム等のアルカリ金属オルソ珪酸塩などが挙げられ、メタ珪酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を製造する方法は、特に制限されず、例えば、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液としては、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩とを混合し、加熱溶融し、次いで、得られた溶融物を水に溶解させて得られるアルカリ金属珪酸塩の水溶液や、市販されている珪酸ナトリウム水溶液や珪酸カリウム水溶液等のアルカリ金属珪酸塩の水溶液が用いられる。
【0035】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造に用いられる二酸化珪素(SiO
2)としては、特に制限されず、例えば、珪石、珪砂、溶融シリカ、無定形シリカ、シリカゾル等のSiO
2を主成分とする物質が挙げられる。酸化珪素のうち、安価で取り扱いが容易である点で、珪砂が好ましい。
【0036】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造に用いられるアルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。また、反応を促進させる目的でアルカリ金属の水酸化物を添加することもできる。このアルカリ金属の水酸化物により、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩との親和性が増すことから反応促進に繋がる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0037】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩との混合比率は、加熱溶融により得られるアルカリ金属珪酸塩の溶融物のSi
2O/M
2O(Mはアルカリ金属を示す。)のモル比が、好ましくは0.5〜5.0、特に好ましくは0.5〜3.8となるような混合比率である。なお、Mが2種以上の場合は、それらの酸化物(M
2O)の合計モル数で、上記モル比を計算する。
【0038】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩とを加熱溶融する際の温度は、均一なアルカリ金属珪酸塩の溶融物が得られれば良く、900〜1300℃が好ましく、また、加熱溶融時間は、24〜72時間が好ましい。
【0039】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩との加熱溶融における加熱源は、特に制限されないが、例えば、燃焼しても硫黄酸化物や窒素酸化物を発生しない燃料を用い、そのような燃料を燃焼させて、溶融原料混合物を加熱して溶融する方法が挙げられる。燃焼しても硫黄酸化物や窒素酸化物を発生しない燃料としては、液化天然ガス、LPG等の低SO
x燃料、水素等のクリーンエネルギー等が挙げられ、液化天然ガスが好ましい。メタンを主成分とする天然ガスは、通常、水、硫黄酸化物、硫化水素、窒素化合物等の不純物を含有しているが、液化の過程で、このような不純物が除去されるため、液化天然ガスは、燃焼しても硫黄酸化物や窒素酸化物を発生しない燃料として、好適である。
【0040】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩とを加熱溶融させる方法としては、他には、電磁溶融、臨界/亜臨界溶融、加圧溶融等の方法が挙げられる。加熱溶融させる方法として、生産効率に見合った方法を適宜選択するのが好ましい。
【0041】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、二酸化珪素とアルカリ金属の炭酸塩とを加熱溶融することにより得られる溶融物は、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の溶融物であり、これを水に溶解させることにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を得ることができる。また、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属塩の溶融物を水に溶解させるときに、SiO
2/M
2Oモル比を調節することを目的として、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属塩の溶融物と共に、アルカリ金属の水酸化物を加えて、水に溶解させてもよい。
【0042】
アルカリ金属珪酸塩の水溶液の製造において、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の溶融物を水に溶解させる方法としては、特に制限されないが、圧力容器中で、140〜170℃、0.4〜0.7MPaで、好ましくは140〜150℃、0.4〜0.5MPaで、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の溶融物を水に溶解させる方法が挙げられる。
【0043】
そして、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法に係る接触及び乾燥工程では、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の乾燥と、二酸化硫黄を含有するガスとの接触とを行う。
【0044】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法に係る接触及び乾燥工程には、以下の形態がある。
(A)前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を、乾燥させると共に二酸化硫黄を含有するガスと接触させることにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている表面改質アルカリ金属珪酸塩を得る形態(以下、接触及び乾燥工程(A)とも記載する。)
又は(B)前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を、乾燥させてから、二酸化硫黄を含有するガスと接触させることにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている表面改質アルカリ金属珪酸塩を得る形態(以下、接触及び乾燥工程(B)とも記載する。)
【0045】
接触及び乾燥工程では、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液又はその乾燥物を、二酸化硫黄を含有するガスと接触させる。二酸化硫黄を含有するガスは、二酸化硫黄が他のガスで希釈されている二酸化硫黄の希釈ガスであっても、他のガスで希釈されていない二酸化硫黄ガスであってもよい。また、二酸化硫黄を含有するガスは、二酸化硫黄以外のガス、例えば、一酸化硫黄、三酸化硫黄等のガス状の硫黄酸化物や、硫化水素等の硫黄を含有するガス状の無機硫黄化合物や、スルホン酸を有する有機化合物等のガス状の硫黄を含有する有機硫黄化合物などのガス状の硫黄化合物を含有していてもよいし、あるいは、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、窒素等のガス状の硫黄化合物以外のガス状の物質を含有していてもよい。また、重油等の硫黄を含有する燃料の燃焼ガスは、燃焼条件によっては、二酸化硫黄ガスを含有しているので、その場合、接触及び乾燥工程に係る二酸化硫黄を含有するガスとして、硫黄を含有する燃料の燃焼ガスを用いることができる。硫黄を含有する燃料の燃焼ガスを燃焼させた場合、燃焼ガス中に、二酸化硫黄とともに、三酸化硫黄も含まれるのが通常であるが、燃焼ガス中の二酸化硫黄ガスの濃度に比べて、三酸化硫黄ガスの濃度が高過ぎると、アルカリ金属珪酸塩の表面が、SO
32−で改質され難くなるので、燃焼ガス中の二酸化硫黄の濃度に対する三酸化硫黄の濃度は低ければ低いほど好ましい。
【0046】
接触及び乾燥工程(A)では、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の乾燥と硫黄化合物との接触とを、ガス雰囲気中(気相中)で行う。
【0047】
接触及び乾燥工程(A)は、乾燥温度100〜300℃で、二酸化硫黄を含有するガス雰囲気中に、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を噴霧して乾燥させる方法である。接触及び乾燥工程(A)において、乾燥温度は、100〜300℃、好ましくは170〜255℃である。また、接触及び乾燥工程(A)において、雰囲気は、二酸化硫黄を含有するガス雰囲気であり、二酸化硫黄を含有する空気、酸素ガス等のガス雰囲気である。
【0048】
接触及び乾燥工程(A)では、噴霧された前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の液滴が、二酸化硫黄と接触して、液滴の表面が硫黄酸化物で覆われ、次いで、乾燥されることにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子が生じると共に、二酸化硫黄が酸化され、更に前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の粒子の表面で反応して、SO
32−塩又はSO
42−塩等の硫黄酸化物塩となるか、あるいは、噴霧された前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の液滴が、乾燥されて、一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子が生成し、次いで、その粒子が二酸化硫黄と接触して、粒子表面が硫黄酸化物で覆われ、その二酸化硫黄が酸化されて、更に前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の粒子の表面で反応して、SO
32−塩又はSO
42−塩等の硫黄酸化物塩となることによって、粉末状の固体粒子であり、一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で改質されている表面改質アルカリ珪酸塩が得られる。
【0049】
接触及び乾燥工程(A)において、噴霧方法としては、例えば、ローター式、噴霧式等が挙げられる。例えば、100〜300℃に加熱されている乾燥容器内に、二酸化硫黄を含有するガスを供給しつつ、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を導入して、ローターの遠心力により水溶液を霧状にして乾燥させる方法(ローター式)や、噴霧ノズルにより水溶液を霧状にして乾燥させる方法(噴霧式)が挙げられる。具体的には、スプレードライヤー等を使用することができる。
【0050】
スプレードライヤーを用いて、接触及び乾燥工程(A)を行う場合、スプレードライヤー内の温度、すなわち、乾燥温度は、100〜300℃、好ましくは170〜255℃であり、また、スプレードライヤー内の雰囲気は、二酸化硫黄を含有するガス雰囲気であり、また、二酸化硫黄を含有するガス雰囲気中の二酸化硫黄ガスの濃度は、乾燥により生成する前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の粒子の表面に残存するアルカリ金属イオン量により、適宜選択されるが、好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは25〜35ppmである。
【0051】
接触及び乾燥工程(B)では、先ず、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を乾燥させ、次いで、得られる固体の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩を、ガス雰囲気中(気相中)で二酸化硫黄を含有するガスと接触させる。
【0052】
接触及び乾燥工程(B)は、乾燥温度100〜300℃で、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を噴霧して乾燥させて、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子を得、次いで、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子を、二酸化硫黄を含有するガスと接触させる方法である。接触及び乾燥工程(B)において、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を乾燥させる際の乾燥温度は、100〜300℃、好ましくは170〜255℃であり、雰囲気は、特に制限されず、空気、酸素ガス、不活性ガス等が挙げられる。また、接触及び乾燥工程(B)では、乾燥により得られる粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子に、二酸化硫黄を含有する空気、酸素ガス等のガスを接触させる。
【0053】
接触及び乾燥工程(B)では、噴霧された前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の液滴が、乾燥されて、一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子となり、次いで、その粒子が二酸化硫黄を含有するガスと接触して、粒子表面が硫黄酸化物で覆われ、その二酸化硫黄が酸化されて、更に一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子の表面で反応して、SO
32−塩又はSO
42−塩等の硫黄酸化物塩が生じることによって、粉末状の固体粒子であり、一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で改質されている表面改質アルカリ金属珪酸塩が得られる。
【0054】
接触及び乾燥工程(B)において、噴霧方法としては、例えば、ローター式、噴霧式等が挙げられる。例えば、100〜300℃に加熱されている乾燥容器内に、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液を導入して、ローターの遠心力により水溶液を霧状にして乾燥させる方法(ローター式)や、噴霧ノズルにより水溶液を霧状にして乾燥させる方法(噴霧式)で、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子を得、次いで、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子を、100〜300℃に加熱した反応炉内に置き、反応炉内に二酸化硫黄を含有する空気、酸素ガス等のガスを供給することにより、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子に、硫黄酸化物ガスを接触させる方法が挙げられる。
【0055】
接触及び乾燥工程(B)において、スプレードライヤーを用いて、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の水溶液の乾燥を行う場合、スプレードライヤー内の温度、すなわち、乾燥温度は、100〜300℃、好ましくは170〜255℃である。また、接触及び乾燥工程(B)において、粉末状の前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子に、二酸化硫黄を含有するガスを接触させる場合、反応容器には、二酸化硫黄を含有する空気、酸素ガス等のガスを供給し、その二酸化硫黄を含有するガス中の二酸化硫黄ガスの濃度は、乾燥により生成する前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の固体粒子の表面に残存するアルカリ金属イオン量により、適宜選択されるが、好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは25〜35ppmである。
【0056】
このようにして、本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法では、接触及び乾燥工程を行うことにより、前記一般式(1)で表されるアルカリ金属珪酸塩の表面が硫黄酸化物塩で覆われている表面改質アルカリ金属珪酸塩を得ることができる。
【0057】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法を行うことにより得られる表面改質アルカリ金属珪酸塩において、表面を改質している硫黄酸化物塩は、SO
32−塩、SO
42−塩等の硫黄酸化物塩である。
【0058】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法では、接触及び乾燥工程において、噴霧乾燥法により、例えば、スプレードライヤーを用いて乾燥を行うことが、粉末状の表面改質アルカリ金属珪酸塩の固体粒子を得ることができる点で、好ましい。
【0059】
本発明の表面改質アルカリ金属珪酸塩の製造方法を行うことにより得られる表面改質アルカリ金属珪酸塩は、表面が硫黄酸化物塩で改質されているので、耐湿性が高く且つ強度が高いため、アルカリ金属珪酸塩の内部水分の飛沫を防ぐことができることから、ブロッキングを防止すること、溶媒に速やかに溶解すること等、作業性の良いアルカリ金属珪酸塩を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
<珪酸ナトリウムの水溶液の製造>
2100kgの珪砂(SiO
2が約98質量%)と、1100kgの炭酸ナトリウムとを混合し、次いで、得られた混合物を、溶解炉にて1100℃で、36時間加熱溶融して、2500kgの溶融物を得た。このとき、液化天然ガスを燃焼させて、加熱溶融を行った。また、使用した液化天然ガスの燃焼ガス中の硫黄酸化物及び窒素酸化物の濃度を、表1に示す。得られた溶融物は、Na
2O・3.4SiO
2・1.1H
2Oであり、SiO
2/Na
2Oのモル比は、3.4であった。
次いで、得られた溶融物を、水8000kg及び48%NaOHの水酸化ナトリウム水溶液225kg(150リットル、比重=1.50)と共に、圧力容器に投入し、密閉後、150℃、0.5MPaで、加熱溶解して、珪酸ナトリウム水溶液を得た。得られた水溶液中のSiO
2/Na
2Oのモル比は、3.2であった。
<接触及び乾燥>
次いで、スプレードライヤー(大川原化工機社製、ODT78型スプレードライヤー)に、得られた珪酸ナトリウム水溶液及びSO
2ガスを供給して、粉末状の表面改質珪酸ナトリウム粒子500kgを得た。このときの珪酸ナトリウム水溶液の供給速度を、1m
3/時間とし、スプレードライヤー内のSO
2濃度が、表2に示す濃度となるように、SO
2ガスの供給速度を0.3m
3/時間とし、スプレードライの諸条件を、表2に示す通りとした。得られた粉末状の表面改質珪酸ナトリウム粒子の特性を、表3に示す。
【0062】
(比較例1)
<珪酸ナトリウムの水溶液の製造>
実施例1と同様に行い、珪酸ナトリウム水溶液を得た。
<乾燥>
次いで、スプレードライヤー(大川原化工機社製、ODT78型スプレードライヤー)に、得られた珪酸ナトリウム水溶液を供給して、粉末状の珪酸ナトリウム粒子500kgを得た。このときの珪酸ナトリウム水溶液の供給速度を、1m
3/時間とし、スプレードライの諸条件を、表2に示す通りとした。なお、スプレードライヤー内には、SO
2を供給しなかった。得られた粉末状の珪酸ナトリウム粒子の特性を、表3に示す。
【0063】
(比較例2)
<珪酸ナトリウム水溶液の製造>
実施例1と同様に行い、珪酸ナトリウム水溶液を得た。
<接触>
この珪酸ナトリウム水溶液にSO
2ガスを0.3m
3/時間の速度で供給した。
<乾燥>
次いで、スプレードライヤー(大川原化工機社製、ODT78型スプレードライヤー)に、SO
2ガスと接触させた後の珪酸ナトリウム水溶液を供給して、粉末状の珪酸ナトリウム粒子500kgを得た。このときの珪酸ナトリウム水溶液の供給速度を、1m
3/時間とし、スプレードライの諸条件を、比較例1と同様にした。なお、スプレードライヤー内には、SO
2を供給しなかった。得られた粉末状の珪酸ナトリウム粒子の特性を、表3に示す。
【0064】
<分析方法>
(1)平均粒径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 型番LA920)を用いて測定した。
(2)硫黄成分含有量
X線光電子分光装置(PHI社製 PHI5700ESCA System)を用いて測定した。
(3)流動性
円筒回転法安息角測定器(筒井理化学機械(株)社製)を用いて測定した。
(4)固結
試料を静置し、1月後及び6月後の状態を目視により確認した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表3の結果からも明らかなように、実施例1で得られた珪酸ナトリウム粒子は、流動性が高いことから粒子形状が保たれており、強度に優れていることがわかる。また、実施例1で得られた珪酸ナトリウムは、生産後6月を経過しても固結していないことから、耐湿性に優れていることがわかる。