(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る硬貨処理装置の内部構成を示す側面図である。
図2は、
図1に示す硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、
図1のA−A矢視による側面図である。また、
図3および
図4は、
図1に示す硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、
図2のB−B矢視による側面図である。
【0013】
図1に示すように、硬貨処理装置10は、略直方体形状の筐体20を備えており、この筐体20内には棒金硬貨収納ユニット21が配置されている。また、筐体20内において棒金硬貨収納ユニット21の前方(
図1における右方)には投出ユニット22が昇降自在に配設されている。
棒金硬貨収納ユニット21において、その枠体23に、断面が浅い上向きコ字状を有する多数のガイドレール24が前傾姿勢として上下方向に並ぶよう配設されている。各ガイドレール24には棒金トレイ25が当該ガイドレール24に沿って移動可能となるように装着されている。また、棒金トレイ25の前端近傍の側面にはストッパ26が突設されており、このストッパ26が各ガイドレール24の前端に設けられた各ストッパ27に当接することにより、棒金トレイ25の装着位置が定められるようになっている。
【0014】
棒金硬貨収納ユニット21の後部には、棒金トレイ25の挿脱時に開閉する扉35が設けられている。この扉35は、硬貨処理装置10の筐体20の後面に設けられた扉20aを開けることにより開閉操作することができるようになっている。
この実施形態に係る棒金硬貨収納ユニット21においては、
図1には表わされていないが、2つの棒金トレイ25が横並び状に並列して収納されるようになっている。
【0015】
棒金硬貨収納ユニット21の枠体23の前端位置において、装填された各棒金トレイ25の各取出口に対応する側部には、棒金トレイ25内に棒金硬貨が存在するか否かを検出する反射型のセンサS1が配設されている。
ちなみに
図1に示す実施の形態においては、上部の2段の棒金トレイ25が1円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が5円硬貨用、以下5段分の棒金トレイ25が10円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が50円硬貨用、以下4段分の棒金トレイ25が100円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が500円硬貨用とされており、500円硬貨用の棒金トレイ25は他の金種のものに比べて若干厚く形成されている。
【0016】
投出ユニット22は、硬貨処理装置10の筐体20の前部側(
図1における右側)の内部において各棒金トレイ25の先端に沿って昇降自在に設けられている。以下、このような投出ユニット22の構成について具体的に説明する。
図2に示すように、投出ユニット22を構成する枠体39の一方の側枠39aの外面にはブロック40が取り付けられている。このブロック40は、垂直方向に延びるよう硬貨処理装置10の筐体20内に配設されたガイドロッド41に摺動自在に嵌挿されている。また、枠体39の他方の側枠39b側には一対のローラー43が設けられており、これらのローラー43は、垂直方向に延びるよう硬貨処理装置10の筐体20内に配設されたガイドレール42上でそれぞれ移動するよう回転するようになっている。このことにより、投出ユニット22は水平状態を保ちながらガイドロッド41やガイドレール42に沿って昇降されるようになっている。
【0017】
また、硬貨処理装置10の筐体20内の上下部にそれぞれ軸支されたプーリ44、45間にベルト46が張架されており、このベルト46が投出ユニット22のブロック40に設けられたベルト固定部47に取り付けられている。また、下部のプーリ45はモータ48により回転駆動されるようになっている。モータ48が下部のプーリ45を回転駆動することにより、ベルト46を介して投出ユニット22が昇降される。また、投出ユニット22を各棒金トレイ25に対応した位置に停止させるための位置決めセンサ(図示せず)が、硬貨処理装置10の筐体20内に設けられている。
【0018】
投出ユニット22の枠体39における棒金トレイ25に面する側には、投出レバー50および押し上げ機構51が設けられている。ここで、投出レバー50および押し上げ機構51は、左右に併設される一対の棒金トレイ25にそれぞれ対応して左右一対となるように設けられている。
より詳細には、投出ユニット22の枠体39の左右の側枠39a、39b間において棒金トレイ25に面する側の所要範囲の中央位置には中間枠39cが設けられている。そして、側枠39a、39bと中間枠39cとの間に、左右の棒金トレイ25用の各投出レバー50の各軸52が同一軸線上においてそれぞれ回転自在に設けられている。そして、これらの各軸52における、各棒金トレイ25の各スリット31に対応する位置に、各投出レバー50が左右一対ずつ固着されている。
【0019】
図3および
図4に示すように、軸52の直径線上に対称的に3つの投出レバー52が設けられており、軸52の180°の回転で1つの棒金硬貨を各投出レバー50により投出することができる。ここで、投出レバーの回転半径Rは、投出されるべき棒金硬貨が収納された棒金トレイ25の真上に位置する1段上位の棒金トレイ25には干渉せず、一方、この棒金トレイ25の真下に位置する1段下位の棒金トレイ25には干渉するように設定されている。また、各投出レバー50が回転する際に、これらの投出レバー50は棒金トレイ25の先端に形成されたスリット31を通過するようになっている。
【0020】
図2に示すように、各軸52は、投出ユニット22の枠体39の左右側枠39a、39bの下部内面側に支持された各モータ53により各ベルト54を介して個々独立して回転駆動される。
押し上げ機構51は、投出されるべき棒金硬貨が収納された棒金トレイ25の真下に位置する1段下位の棒金トレイ25を後方へ押し上げて、その取出口29に位置する棒金硬貨Cを投出レバー50の回転半径外に退避させるものである。
図2に示すように、各押し上げ機構51は、投出ユニット22の枠体39の中間枠39cを間にしてその左右位置に設けられている。
【0021】
押し上げ機構51は、
図3および
図4に示されるように、棒金トレイ25の前傾角と等しい傾斜角をもって進退移動する押し上げ部材55を有している。押し上げ部材55は、棒金トレイ25の前端に当接してこれを押動する押し上げ面55aと、側板55bと、上板55cとを有しており、側板55bの長手方向に長穴56が形成されている。そして、押し上げ部材55の長穴56には、中間枠39cに突設されたピン57およびギヤ58の軸59がそれぞれ嵌挿されており、これらのピン57および軸59をガイドとして押し上げ部材55が進退移動するよう支持されている。
【0022】
押し上げ部材55を進退移動させる作動機構について以下説明する。
図3および
図4に示すように、押し上げ部材55の上板55cの下面に形成されたラック60(はすばラック)にギヤ58(はすばギヤ)が噛合されている。また、
図2に示すように、このギヤ58には、枠体39に搭載されたモータ61の出力軸上のウォーム62に噛み合うウォームギヤ63が噛合されている。このことにより、モータ61の駆動によってギヤ58が回転し、ラック60を介して押し上げ部材55が進退移動される。そして、
図4に示すように押し上げ部材55を押し上げた状態でモータ61を停止させてもウォーム62とウォームギヤ63との噛み合いによりこの押し上げ部材55が棒金トレイ25により押し戻されることはない。
【0023】
また、投出ユニット22の枠体39内には、投出レバー50によりすくい上げられた棒金硬貨Cをガイド部材64上から受け入れる収納部65が形成されている。また、ガイド部材64の上方位置には、投出される棒金硬貨Cが投出されるべき金種であるか否かをその外径でチェックする径判別用揺動板66が設けられている。そして、径判別用揺動板66の揺動量をロータリエンコーダE(
図2参照)により検出するようになっている。また、径判別用揺動板66の下方位置には、投出される棒金硬貨Cの孔の有無を判別するセンサS3が設けられている。
【0024】
図3および
図4に示すように、投出ユニット25には略水平方向に延びる平板状の硬貨受け部材70が設けられている。この硬貨受け部材70は、押し上げ部材55の近傍に設けられており、押し上げ部材55の進退移動に連動して水平方向に往復移動を行うようになっている。より詳細には、押し上げ部材55の上板55cの上部には突出部材55dが取り付けられており、この突出部材55dには、上下方向に延びる長穴55eが形成されている。また、硬貨受け部材70の上面にも突出部材71が取り付けられており、この突出部材71にはピン72が突設されている。そして、押し上げ部材55に設けられた突出部材55dには、硬貨受け部材70に設けられた突出部材71のピン72が嵌挿されている。さらに、投出ユニット22の枠体39には、突出部材55dと突出部材70との間でピン72が嵌挿される、水平方向に延びる長穴75が形成されたガイド板(図示せず)が設けられている。このような構成により、押し上げ部材55が進退移動を行うと、この押し上げ部材55に設けられた突出部材55dがピン72を押動することによりこのピン72はガイド板の長孔75に沿って水平に移動し、これに伴ってピン72が嵌挿されている突出部材71およびこの突出部材71が取り付けられた硬貨受け部材70も水平方向に移動する。このようにして、硬貨受け部材70は押し上げ部材55の進退移動に連動して水平方向に往復移動を行う。
【0025】
また、
図2に示すように、硬貨受け部材70は、投出ユニット22の側枠39a、39bと中間枠39cとの間にそれぞれ左右一対となるように設けられている。このように、硬貨受け部材70は、側枠39a、39bと中間枠39cとの間において略水平方向に延びる平板状のものとなっているので、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cが投出される際に、棒金硬貨Cの包装紙が破損してしまった場合でも、ばら硬貨がこの硬貨受け部材70により受けられるようになる。
【0026】
次に、このような構成の硬貨処理装置10の動作について説明する。
まず、硬貨処理装置10に棒金硬貨を補充する動作について説明する。棒金硬貨の補充動作を行うに当たり、棒金トレイ25を硬貨処理装置10の筐体20から取り出し、棒金トレイ25に所定金種の棒金硬貨Cを径方向に整列状態として収納する。そして、筐体20の後面の扉20aおよび棒金硬貨収納ユニット21の後部の扉35を開き、対応する各段のガイドレール24に棒金トレイ25を装填する。これにより、棒金トレイ25はガイドレール24の傾斜によってストッパ26、27が互いに当接するまで下降して停止する。その後、棒金硬貨収納ユニット21の後部の扉35および筐体20の後面の扉20aを閉じる。このようにして、硬貨処理装置10において棒金硬貨Cの投出が可能な状態となる。
【0027】
硬貨処理装置10に対して棒金硬貨Cの投出指令が入力されると、各棒金トレイ25の各取出口29に位置する各センサS1により棒金硬貨Cが存在する棒金トレイ25が検出される。そして、予め設定されている各段の金種情報に基づいて、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25が割り出される。その後、待機位置にある投出ユニット22が、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25に対応する位置まで下降するよう、モータ48の駆動によりベルト46が回動される。この際に、投出ユニット22の押し上げ部材55および硬貨受け部材70は、
図3に示すように各棒金トレイ5に衝突しないような位置にそれぞれ退避している。
【0028】
投出ユニット22が、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25に対応する位置に到達すると、押し上げ機構51のモータ61が起動して、ウォーム62、ウォームギヤ63、ギヤ58、ラック60等を介して押し上げ部材55が
図3に示すような位置からその長穴56とピン57、軸59とをガイドとして斜め上方へ移動し、
図4に示すような位置に到達する。この際に、押し上げ部材55の押し上げ面55aが棒金トレイ25の前端に当接してこれを投出レバー50の回転半径R外へ押し出す。
【0029】
また、押し上げ部材55の移動に伴って硬貨受け部材70も棒金トレイ25に向かう方向に水平移動する。
次いで、投出レバー50がモータ53により
図4における時計回りの方向に回動し、180°回動する間に棒金トレイ25の取出口29に位置する棒金硬貨Cを1本だけすくい上げてガイド部材64上へ移動させる。投出レバー50の180°回転は、センサS3よって停止位置が定められる。
【0030】
ガイド部材64上へ移行した棒金硬貨Cは径判別用揺動板66を押し上げながら通過し、その径判別用揺動板66の揺動量がロータリエンコーダEにより検知されて適正な金種の棒金硬貨であるか否かがチェックされる。また、ガイド部材64上へ移行した棒金硬貨Cが穴開き硬貨であるか否かもチェックされる。その後、棒金硬貨Cが硬貨取出容器65に送られてこの取出容器65に収容される。
【0031】
必要な量または金額の棒金硬貨Cが投出ユニット22の取出容器65に収容されるまでこのような動作を繰り返し行う。そして、必要な量または金額の棒金硬貨Cが投出ユニット22の取出容器65に収容されると、投出ユニット22は最上昇位置へ上昇し、シャッター68が開く。そして、操作者は取出口67から投出ユニット22の取出容器65内の棒金硬貨Cを取り出すことができるようになる。
【0032】
図5は、投出ユニット22の取出容器65の平面図であり、
図6は、取出容器65の側面構造を説明するための、
図5におけるC−C矢視の側面断面図である。
図5および
図6を参照して、取出容器65は、取り出すべき硬貨が収容される硬貨取出容器として機能するもので、上端に開放された取出口67を有している。取出口67は、前述したように、シャッター68により開閉可能になっている。シャッター68は、
図5および
図6に示す開いた状態から、
図5において矢印で示すように下方へスライド移動し、または
図6において矢印で示すように右方向へ水平にスライド移動して、取出口67は閉じた状態となる。硬貨取出容器65は、
図5に示すように、中間枠39cにより左右2室に仕切られている。硬貨取出容器65の内底面80は、横方向(
図5において左右方向)に真っ直ぐで、前後方向(
図5において上下方向)において下方に向かって円弧状に凹湾曲した円弧状面となっていて、内底面80の前後方向中央部に収容された硬貨が集まるようにされている。また、内底面80は、その底面沿いに前後方向に延びるリブ81が等間隔で複数設けられている。リブ81は収容された硬貨を内底面80から少し浮かした状態にして、硬貨を取り出し易くするために設けられたものである。
【0033】
この実施形態に係る硬貨取出容器65においては、内底面80の一端側(たとえば中間枠39c側)に複数個の発光素子82が設けられ、内底面80の他端側(たとえば一方の枠体39a側および他方の枠体39b側)には、それぞれ、複数個の受光素子83が設けられている。より具体的には、
図6に示すように、中間枠39cの下端部において、内底面80に沿うように長窓84が形成されていて、その長窓84から内底面80上を臨むようにたとえば5つの発光素子82が配列されている。受光素子83も、同様の構成で、一方の側枠39aの下端部内および他方の側枠39bの下端部内に、それぞれ、中間枠39の下端部に設けられた発光素子82と内底面80の上を挟んで対向するように設けられている。
【0034】
その結果、左右2つの硬貨取出容器65において、それぞれ、内底面80沿いに、内底面80の上を挟んで左右に延びる5本の検出光の光軸が生じるようになっている。そして、この5本の光軸が硬貨取出容器に収容された棒金硬貨やバラ硬貨により遮られ、硬貨取出容器65内における取り忘れられた残留硬貨の検出ができる構成である。
図7は、一方の硬貨取出容器65に設けられた上述の発光素子82および受光素子83、ならびに発光制御回路を含む残留硬貨検出回路85の構成ブロック図である。残留硬貨検出回路85は、他方の硬貨取出容器65に対応しても設けられており、同様の構成をしている。以下では、一方の硬貨取出容器65に設けられた残留硬貨検出回路85について詳述する。
【0035】
残留硬貨検出回路85は、5つの発光素子82(82a、82b、82c、82d、82e)および5つの受光素子83(83a、83b、83c、83d、83e)を有する5対の発光・受光センサ部を有する。5つの発光素子82は、それぞれ、直流発光制御回路およびパルス発光制御回路87により発光され得る。発光素子82が直流発光制御回路86により直流電流が供給されて連続的に発光するか、パルス発光制御回路87によりパルス電流が供給されてパルス発光するかは、CPU88により制御される切換回路89によって切換えられる。
【0036】
各発光素子82の発する検出光は、対応する各受光素子83で受光される。すなわち、発光素子82aの発する検出光は受光素子83aで受光され、発光素子82bの発する検出光は受光素子83bで検出され、発光素子82cの発する検出光は受光素子83cで受光され、発光素子82dの発する検出光は受光素子83dで受光され、発光素子82eの発する検出光は受光素子83eで受光される。各発光素子82の発光は、同時にではなく1個ずつ順次発光される。そして、各受光素子83が受光した受光信号は直流受光回路90またはパルス受光回路91へ与えられる。直流受光回路90へ与えられるか、パルス受光回路91へ与えられるかは、CPU88により制御される切換回路92により切換えられる。つまり受光素子82が発光素子82の発する連続的な検出光を検出したときには直流受光回路90へ与えられ、発光素子82が発するパルス発光の検出光を受光したときはパルス受光回路91へ与えられるように切換えられる。
【0037】
直流受光回路90には電流/電圧変換回路93、増幅回路94およびアナログ/デジタル変換回路95が含まれている。入力される電流信号は、電流/電圧変換回路93において電圧信号にされ、増幅回路94で増幅され、アナログ/デジタル変換回路95でデジタル信号に変換される。そしてこのデジタル信号はCPU88へ与えられる。
パルス受光回路91には、電流/電圧変換回路96、バンドパスフィルタ97、増幅回路98、整流回路99、平滑回路100、比較回路101および0/1信号生成回路102が含まれている。パルス受光回路91へ入力される検出電流信号は、たとえば
図8(1)の信号波形であり、この電流信号は電流/電圧変換回路96において電圧信号に変換される(
図8(2))。電圧信号に変換された信号成分には、外来光による影響(直流成分)が含まれている。そこで、バンドパスフィルタ97において外来光による直流成分を除去し、信号波形は
図8(3)に示すものとなる。これを増幅回路98で増幅し(
図8(4))、さらに整流回路99によって整流する(
図8(5))。
【0038】
そしてその信号を平滑回路100で平滑すると、
図8(6)に示すようなほぼ一定電圧の信号が得られる。この得られた信号を比較回路101において所定の基準値Vrefと比較し(
図8(7))、その結果に基づいて0/1信号生成回路102で、「0」または「1」のデジタル信号が生成される。生成された信号は、硬貨有り(1)または硬貨無し(0)の信号であり、この信号がCPU88へ与えられる。
【0039】
上記説明から明らかなように、パルス受光回路91の出力は、「0」または「1」の2値信号であって、各受光素子83が受光した光量に応じた出力が出るわけではない。すなわち、外来光による影響を除去するために、パルス受光回路91では、受光素子83が中途半端な光を受光した場合の信号は切り捨てて、2値信号を出力する。
図7に戻って、この実施形態では、シャッター68が開いた状態であるか、閉じた状態であるかに応じて、切換回路89、92により、直流発光制御回路86によって発光素子82を発光させ、その検出光を受光素子83で受光して、直流受光回路90で信号処理をするか、または、パルス発光制御回路87で発光素子82を発光させ、その検出信号を受光素子83で受光して、パルス受光回路91で処理するかを、切換えるようにしている。
【0040】
直流受光回路90の信号処理では、電流信号を電圧信号に変換し、それを増幅して、値そのものをデジタル値として出力するので、出力されるデジタル値は、受光信号の値に応じた、受光信号とリニアな特性を有する値となる。このため、たとえば残留硬貨がバラ硬貨の場合であって、受光素子83で受光される検出信号が中途半端な光の場合であっても、正しくバラ硬貨の有無を検出することができる。
【0041】
より具体的に、
図9および
図10を参照して説明する。
図9は、硬貨取出容器65の内底面80にバラ硬貨が1枚残った状態の模式図で、(B)に示すように2つのリブ81の上にバラ硬貨が乗った状態であるとする。この場合、(A)に示すように、バラ硬貨は受光素子83cの検出光を一部遮り、また受光素子83dの検出光を一部遮る状態であり、受光素子83c、83dへの検出光を全て遮っているわけではない。
【0042】
このため、受光素子83の検出出力は(C)に示すようになり、受光素子83cおよび受光素子83dの検出信号が受光と遮光との間の中間値となってしまう。仮に、かかる値に対して外来光が影響する(加わる)ならば、受光素子83c、83dの検出出力は、受光となり、バラ硬貨を検出することができない可能性がある。
同様に、
図10では、(B)に示すように、バラ硬貨が1本のリブ81に乗り上げて、斜め状態になった場合の模式図である。この場合においても、受光素子83bおよび83cは中途半端な光を検出することになる。従って、外来光の影響があると、受光素子83b、83cは、バラ硬貨を検出できない可能性がある。
【0043】
そこで、この実施形態では、上述したように、CPU88に与えられるシャッター68の開閉信号に基づき、シャッター68が閉じた状態では、受光素子83の受光信号を直流受光回路90へ与えて、各受光素子83の受光信号がバラ硬貨により中途半端に遮断されていても、それを正しく検出して、バラ硬貨の存在を正確に検出できるようにしている。
図11は、
図7に示すCPU88により実行される制御動作の一例を示す。
図11の流れに沿って、
図7に示す残留硬貨検出回路の動作について説明をする。
【0044】
残留硬貨検出回路85は、まず、シャッター68が開かれて、硬貨取出容器65から硬貨が取り出される状態になったか否かの判別をする(ステップS1)。シャッター68が開かず、硬貨取出状態でなければ、制御動作はリターンする。
シャッター68が開いた旨のシャッター開信号が与えられると、CPU88は、切換回路89によってパルス発光制御回路87を選択し、また、切換回路92によってパルス受光回路91を選択する(ステップS2)。選択されたパルス発光制御回路87は、5つの発光素子82を順次パルス発光させる。これに応じて、5つの受光素子83は、順次残留硬貨検出信号を受光して、その信号はパルス受光回路91へ与えられる。そしてパルス受光回路91において、各受光素子83毎に、受光素子の検知出力が有るか(1)、無いか(0)の信号を生成してCPU88へ与える。CPU88では、シャッター68が開いた後、所定時間経過するのを待つ。すなわち、硬貨取出容器65から操作者が硬貨を取り終えるまでの時間を待つ。そして所定時間経過後にパルス受光回路91から残留硬貨有りを示す「1」信号が入力されているか否かを判別し(ステップS4)、入力されている場合は、残留硬貨有りとして、報知器103を用いて、視覚的または聴覚的に、操作者に残留硬貨が残っていることを知らせる(ステップS5)。
【0045】
ステップS4において、所定時間経過後に「1」信号が入力されていなければ、棒金硬貨は全て取り出されたものと判断して、シャッター68を一旦閉じる(ステップS6)。そして切換回路89により直流発光制御回路86を選択し、また切換回路92により直流受光回路90を選択する(ステップS7)。これにより、今度は直流発光制御回路86が5つの発光素子82を順次発光させる。そして対応する5つの受光素子83は検出信号を受光し、その信号は直流受光回路90により処理されて、CPU88にデジタル信号が与えられる。CPU88では、全ての受光素子83が完全に検出信号を検出しておらず、
図9、
図10で説明したように、1つでも受光素子が中途半端な受光状態であったならば(ステップS8でY)、シャッター68を開いて(ステップS9)、報知器103を用いて残留硬貨有りの報知を行う(ステップS10)。
【0046】
なお、ステップS8で、全てのセンサが透光信号を検知している場合には、残留硬貨のない正常な状態であり、処理をリターンする。
この実施形態は、以上のように残留硬貨の検出処理を行っているので、残留硬貨が棒金硬貨であっても、バラ硬貨であっても、外来光の影響を受けることなく、正しく残留硬貨を検出することが可能である。
【0047】
この実施形態では、
図1〜
図4を参照して、硬貨処理装置における硬貨の投出動作や機構を説明したが、かかる機構を備えた硬貨処理装置にこの発明は限定されるものではない。この発明は、取出口がシャッターによって開閉可能な硬貨取出容器を有する種々の硬貨処理装置に適用でき、硬貨取出容器における硬貨の取り忘れ、すなわち残留硬貨の有無検出に適用可能である。
【0048】
また、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、上述の実施形態では、発光素子82および受光素子の対を5対として説明したが、これらの対数は限定されるものではなく、1対であっても構わない。また、上述の実施形態では、直流発光制御回路86とパルス発光制御回路87とが、共通の発光素子82に対して発光制御を行うものとして説明した。しかし、直流発光制御回路86により発光制御される専用の発光素子と、パルス発光制御回路87により発光される専用の発光素子とを個別に設けた構成としてもよい。
【0049】
同様に、受光素子83についても、直流受光回路90で受光信号を処理するための受光素子と、パルス受光回路91で受光信号を処理するための受光素子とを、別々に設けた構成としてもよい。
更に、本実施の形態においては、発光素子82および受光素子83を硬貨取出容器65の内底面80に設けたが、特にこの位置に限定されるものではなく、発光素子82を上方に設け受光素子83を対向する下方に設け、斜め方向に検出するようにしても構わない。
【0050】
また、シャッター68の開閉の制御信号に基づいて発光の方式を変えるようにしたが、外来光の有無によって発光の方式を変えることで、シャッター68が閉まっていても外来光を検知すればパルス発光によって検知することで、より正確に残留検知ができる。