(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンをベースとした接着剤は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等の有機溶剤に溶かす溶剤型が主流のため、環境汚染等の問題が指摘されている。そこで、有機溶剤を使わない、いわゆる水系接着剤の開発が盛んに行われている。しかしながら、従来のポリクロロプレンラテックスでは接着性、耐水性が不十分であるという課題を抱えている。
【0003】
ポリクロロプレンラテックスの製造には、いわゆる乳化重合法が用いられていた。乳化重合法は、ロジン酸石鹸、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩、ポリビニルアルコールなどの乳化剤を用い、クロロプレン又は、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なモノマーを水中で乳化させた後、過硫酸カリウムなどのラジカル開始剤を添加することによりクロロプレンを重合する。しかし、この重合方法では一般に、多量の乳化剤を必要とし、ポリクロロプレン本来の接着性を阻害してしまうため、得られる接着剤の接着物性や耐水性が著しく低下する場合がある。そこで、乳化剤含有量を低減したポリクロロプレンラテックスを製造する種々の試みがなされている。
【0004】
クロロプレンの乳化重合では、分散安定に重合する目的や種々の物性向上の目的から、高分子分散剤を種々の界面活性剤と併用添加する場合がある。高分子分散剤は、一般に界面活性は低いものの、分散性、凝集性、可溶化性等に特徴のあるものが多く、比較的低分子量のものは乳化剤のようにミセルを形成するが、高分子量のものはそれ自体がミセルのような大きさを持つため、ミセル形成に寄与しないと考えられている。クロロプレンの乳化重合で用いられる高分子分散剤としては、特に芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩が汎用的であり、強力な分散能を有するとして広く用いられてきた。
【0005】
ところが、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩をはじめとする高分子分散剤を用いる場合は、過剰量の界面活性剤(乳化能を有するポリマーを含む)と併用して水性媒体中に添加しなければならず、得られる接着剤の接着物性低下を避けることができなかった(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる界面活性剤は、特に制限されるものではなく、公知の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等があげられ、例えば、アニオン性界面活性剤としては、ロジン酸塩、高級脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルスルホベタイン等があげられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、ポリビニルアルコール等があげられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩等があげられる。
【0012】
また、本発明に用いられる芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩も特に制限されるものではなく、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、その他特殊芳香族系スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等があげられるが、特にナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が汎用され好適である。
【0013】
本発明で界面活性剤とは、添加量が増えると水性媒体中でミセル(界面活性剤の集合体)を形成する乳化剤である。また、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩は、それ自体がミセルのような大きさを持つため、添加量を増やしても水性媒体中でのミセル形成に寄与しない。
【0014】
本重合では、水性媒体中に界面活性剤種をCMC未満(添加量ゼロの場合を含む)の条件下で、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩を添加して重合させることを特徴とする。より初期接着強度を高めるためには、界面活性剤を無添加にすることが望ましく、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩を水性媒体100重量部に対して、0.5重量部以下添加することが好ましい。より好ましくは、界面活性剤を無添加かつ芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩を水性媒体100重量部に対して、0.01〜0.1重量部添加する。
なお、本発明でA〜Bとは、A以上B以下の意味であり、Aに単位を付さない場合、Aの単位はBの単位(重量部等)と同じとする。
【0015】
CMCとは、純水中におけるCMCを指し、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)のCMCは純水60℃で1.2mmol/dm
3H
2O(電気伝導度法による)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のCMCは純水50℃で8.1mmol/dm
3H
2O(表面張力法による)である。
【0016】
本発明では、水性媒体を実際に使用する際の温度に関係なく、純水50℃のCMC(表面張力法による)を採用した。実際に使用する水性媒体が水以外の物を含む場合であっても、水性媒体を純水と仮定し、水性媒体中の界面活性濃度を、純水50℃におけるCMC未満となるようにする。例えば、界面活性剤がSDSの場合、SDSのCMCは純水50℃で8.1mmol/dm
3H
2Oだから、水性媒体(水、その他溶媒含む)1dm
3中にSDSを8.1mmol未満含有させる。
【0017】
界面活性剤を二種類以上含有させてもよく、この場合、添加した界面活性剤種のうち、最もCMCの低い界面活性剤のCMCを全界面活性剤添加量の上限とする。すなわち、水性媒体中の界面活性剤量の総和を当該のCMC未満となるようにする。例えば、CMCが1mmol/dm
3H
2Oの界面活性剤Aと、CMCが2mmol/dm
3H
2Oの界面活性剤Bを使用する場合、界面活性剤A、Bの合計濃度を1mmol/dm
3H
2O未満にする。
【0018】
本発明に用いる水性媒体は、水を50重量%以上含む媒体であり、アルコール等の有機溶媒を添加してもよいが、水性媒体中の水の含有量は90重量%以上が好ましい。有機溶媒の添加量が10重量%以上で、水の含有量が90重量%未満になると、クロロプレンラテックスの性質に悪影響を与える。
【0019】
本発明において、界面活性剤、および芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩からなる高分子分散剤の添加方法に特に制限はなく、重合前に初期添加する方法、重合中に分割添加する方法等いずれの方法も可能である。生産性を向上しつつ、特に初期接着強度の大きいポリクロロプレンラテックスを得る目的では、界面活性剤種を添加せず、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩のみ重合前に初期添加する方法が好適である。
【0020】
本発明において、クロロプレンとはクロロプレンのモノマー(クロロプレン単量体)であり、具体的には、2−クロロ−1,3,ブタジエンである。また、クロロプレンと共重合可能なモノマー(単量体)とは、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの1,3−ブタジエン類、スチレン、α-メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネートなどのスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリル酸、アクリル酸、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート等があげられる。中でも、クロロプレンとのラジカル共重合性が比較的高い点で、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸が好ましい。クロロプレンとの共重合性が最も高い2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが更に好適である。また、必要に応じてこれらを2種以上併用することもできる。
【0021】
クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体の添加量は、水性媒体100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、この範囲においては特に安定なポリクロロプレンラテックスを得ることができる。
【0022】
クロロプレンの添加方法は特に限定されるものではないが、重合速度を速くして生産性を高めたい場合は、クロロプレンの一部を重合中に重合系内に連続的、あるいは断続的に添加する方法が好ましい。例えば、クロロプレン100重量部のうち、10〜50重量部を重合系内へ添加して重合を開始し、その転化率が1〜40%になった時点から重合終了までの間に、重合温度より低い温度に保持された残りの単量体を重合系内へ連続的に添加して重合させればよい。この場合、本発明では、重合開始後に水性媒体を変える必要が無く、中和等の調整をしなくても、クロロプレンを重合させることができる。即ち、本発明は、クロロプレンを同一の水性媒体で連続して重合させて、ポリクロロプレンラテックスを得ることが可能である。
【0023】
本発明におけるポリクロロプレンラテックスとは、クロロプレンの単独重合体、クロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との共重合体をいう。ポリクロロプレンラテックスのゲル含有率は、クロロプレンを重合させる際に用いられる連鎖移動剤の使用量、重合温度や重合率を制御することで調整でき、ゲル含有率を高くするためには、連鎖移動剤の使用量を減量する、重合温度を高くする、重合率を大きくするなどの手段をとればよい。
【0024】
連鎖移動剤としては、ポリクロロプレンの製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばn−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等のメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド等のスルフィド類、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、イオウ等、公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0025】
ポリクロロプレンの重合に使用される触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ化合物を用いることができる。これらの中でも、特に安定した重合を行う上で過硫酸カリウムを使用することが好ましい。
【0026】
これらの使用量は適宜決定できるが、クロロプレン100重量部に対して0.01重量部以上10重量部未満程度が好適である。イオン性開始剤を10重量部以上添加すると、イオン強度が高くなり過ぎて粒子が不安定化しやすくなる。なお、これら触媒の添加方法としては特に制限はなく、一括添加、滴下添加、分割添加、あるいはこれらの組み合わせ等の添加方法が挙げられる。
【0027】
クロロプレンの重合に使用される触媒の活性を高めるために、例えば、亜硫酸ソーダ、硫酸第1鉄、アントラキノン−β−スルホン酸ソーダ、フォルムアミジンスルフォン酸、L−アスコルビン酸等を併用して添加してもよい。
【0028】
クロロプレンの重合を停止させる目的で、例えば、チオジフェニルアミン、ジエチルハイドロキシルアミン、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−t−4−メチルフェノール)、4,4−ブチレンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の重合禁止剤を添加してもよい。
【0029】
重合温度については、0〜55℃の範囲であることが重合制御上好ましい。なお重合反応をより円滑に、かつ安全に行うには、重合温度を30〜50℃とすることが特に好ましい。また、重合時間は、目的に応じて適宜調整でき、特に限定はされないが、通常0.5〜10時間程度である。
【0030】
ポリクロロプレンラテックスの固形分濃度は、濃縮あるいは水希釈で必要な濃度に調整できる。より高い固形分濃度とすることで、乾燥速度が速く、初期強度に優れたラテックスとなる。なお、固形分濃度については、重合時のモノマーとの比率によっても調整できる。
【0031】
ポリクロロプレンラテックスの重合直後は酸性であるがPH調整剤等でPHを自由に調整することができる。PH調整剤としては、弱酸の塩が好ましく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム、クエン酸水素2ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の無機塩がある。なお、PH調整剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムでもよく、ジエタノールアミン等の塩基性物質等でもよい。PH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、PH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。
【0032】
本発明で得られるポリクロロプレンラテックスは安定であるが、ポリクロロプレンラテックスの基本特性をさらに安定化させるためには、重合に用いる重合缶の内表面及び重合缶の付帯設備内表面にスケール付着防止剤を塗布して塗膜を形成させてもよい。スケール付着防止剤は、ヒドロキシナフタレン化合物を有する化合物が使用でき、例えば、市販品としてCIRS社製NOXOL WSW、NOXOL ETH、NOXOL ETH/Sなどがある。
【0033】
スケール付着防止剤の塗布方法は、ローラー、ハケなどを用いた塗布、スプレーやスチームエジェクターなどの公知の霧化装置を用いた噴霧などがある。塗布量は、その効果や経済性を考慮して、スケール付着防止剤の固形分として0.001〜0.5g/m
2、好ましくは0.003〜0.3g/m
2の範囲がよい。強固な塗膜を形成させるためには、50℃〜150℃の温度で加温してもよい。塗布に際して、重合缶内表面に塗膜形成を妨げる何らかの汚染物質の存在が予見される場合は、予め、有機溶剤や洗剤などを用いた表面洗浄、純水によるリンス操作などを施し、クリアーな金属面等を露出させることが好ましい。
【0034】
塗膜形成後、重合缶内表面に残った余剰物質を純水で洗い落とすことにより、その効果をより発現できる。1回の塗布によりその効果が減衰するまで1回以上の重合操作が出来る。塗布の頻度は、使用条件によって異なり、効果が減衰する前に再塗布を実施することが好ましい。また、塗膜形成は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。重合缶の材質は、ステンレスなどであり、グラスライニング、ゴムライニングがなされていてもよい。
【実施例】
【0035】
本発明をより具体的に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例
、参考例及び比較例中の重量部は、特に断りのない限り、クロロプレン100重量部に対する部数である。
【0036】
本発明における重合反応器として、一般的に用いられている1500mlのガラス製4つ口セパラブルフラスコ、傾斜パドル、温度計、冷却管、窒素通気管を装着したものを使用した。攪拌翼は板状バッフル4本を装着したものを使用した。
【0037】
<
参考例1>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、DBSと略称、商品名:ネオぺレックスG−65、花王(株)製品)0.02重量部(この添加量は、ネオぺレックスG−65としての添加量であり、DBSの純分換算ではない)と、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名:デモールN、以下デモールNと略称)0.500重量部を加えた純水918.5重量部を仕込んだ。
【0038】
次に、十分な窒素バブリングを行った後、クロロプレン100重量部を仕込み、300rpm攪拌条件下、内温40℃まで昇温した。昇温後、次いで過硫酸カリウム(以下、KPSと略称)4.44重量部、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム0.178重量部と純水217.5重量部からなる開始剤水溶液を一括添加し重合を開始した。重合開始2時間で、クロロプレンの重合転化率は81%に到達した。ラテックス回収の際、付着物等の発生はほとんど見られなかった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去しポリクロロプレンラテックスを得た。なお、この
参考例におけるDBSのCMCは約0.4重量部(50℃の純水100重量部換算では約0.04重量部)である。
【0039】
得られたラテックスは粘度調整せず、以下の測定を行った。
〔接着試験〕
帆布(25×150mm)2枚各々に、150g(固形分)/m
2の接着剤組成物をヘラで塗布し、室温で10分間放置後、完全なウェット状態で塗布面を張り合わせ、ハンドローラーを5往復させて圧着した。これについて、以下の接着力評価試験を行った。
【0040】
〔初期剥離強度〕
室温下、ローラー圧着後10分間のセットタイムをとった後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/分で180°剥離強度を測定した。
参考例1の測定結果を下記表1に示した。
【0041】
<実施例2>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンに、デモールN0.229重量部を加えた純水458.3重量部を仕込み、十分な窒素バブリングを行った後、n−オクチルメルカプタン0.596重量部とクロロプレン100重量部を仕込み、十分な攪拌条件下、内温40℃まで昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.25重量部と純水12.5重量部からなる開始剤水溶液を一括添加し重合を開始した。重合開始3時間でクロロプレンの重合転化率は88%に到達した。ラテックス回収の際、付着物の発生はほとんど見られなかった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去しポリクロロプレンラテックスを得た。
参考例1と同様にして初期剥離強度の測定を行った。実施例2の測定結果を下記表1に示した。
【0042】
<実施例3>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンに、デモールN0.167重量部を加えた純水333.3重量部を仕込み、十分な窒素バブリングを行った後、n−オクチルメルカプタン0.27重量部とクロロプレン45.5重量部を仕込み、十分な攪拌条件下、内温40℃まで昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.19重量部と純水9.1重量部からなる開始剤水溶液を一括添加し重合を開始した。重合開始1時間後に、n−オクチルメルカプタン0.33重量部とクロロプレン54.5重量部を分割添加した。重合開始3時間でクロロプレンの重合転化率は90%に到達し、付着物等の発生はほとんど見られなかった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去しポリクロロプレンラテックスを得た。
参考例1と同様にして初期剥離強度の測定を行った。実施例3の測定結果を下記表1に示した。
【0043】
<比較例1>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンに、純水918.5重量部を仕込んだ。次に、十分な窒素バブリングを行い、クロロプレン100重量部を仕込み、300rpm攪拌条件下、内温40℃まで昇温した。昇温後、次いでKPS2.22重量部、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム0.089重量部と純水108.7重量部からなる開始剤水溶液を一括添加し重合を開始した。しかし、重合開始18時間程で、重合缶内に過剰な付着物が確認されたため重合を停止させた。
【0044】
<比較例2>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンに、DBS0.72重量部と、デモールN0.500重量部を加えた純水919.2重量部を仕込み、次いで十分な窒素バブリングを行った後、クロロプレン100重量部を仕込み、300rpm攪拌条件下、内温40℃まで昇温した。昇温後、KPS4.44重量部、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム0.178重量部と純水217.5重量部からなる開始剤水溶液を一括添加し重合を開始した。重合開始1時間で、クロロプレンの重合転化率は90%に到達した。ラテックス回収の際、付着物等の発生はほとんど見られなかった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去しポリクロロプレンラテックスを得た。
なお、この
比較例におけるDBSのCMCは約0.4重量部(50℃の純水100重量部換算では約0.04重量部)である。
参考例1と同様にして初期剥離強度の測定を行った。比較例2の測定結果を下記表1に示した。
【0045】
<比較例3>
三方コックを備えた1500mlのガラスコルベンを用いて、窒素気流下で、純水100重量部、不均化ロジン酸4.0重量部、水酸化カリウム1.0重量部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.8重量部を仕込み、溶解後、撹拌しながらクロロプレン100重量部とn−ドデシルメルカプタン0.1重量部を加えた。過硫酸カリウムを開始剤として用い、窒素雰囲気下、10℃で重合した。重合開始5時間でクロロプレンの重合転化率は90%まで到達した。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去しポリクロロプレンラテックスを得た。
なお、この
比較例における不均化ロジン酸のCMCは約0.43重量部(50℃の純水100重量部換算でも約0.43重量部)である。
参考例1と同様にして初期剥離強度の測定を行った。比較例3の測定結果を下記表1に示した。
【0046】
【表1】