(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674671
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】塩酸シプロヘプタジン軟膏剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4418 20060101AFI20150205BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20150205BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150205BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20150205BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20150205BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20150205BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20150205BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
A61K31/4418
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K9/06
A61P17/00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-534987(P2011-534987)
(86)(22)【出願日】2009年11月9日
(65)【公表番号】特表2012-508193(P2012-508193A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】CN2009001238
(87)【国際公開番号】WO2010054533
(87)【国際公開日】20100520
【審査請求日】2012年8月21日
(31)【優先権主張番号】200810202611.9
(32)【優先日】2008年11月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511103890
【氏名又は名称】常州市第四製薬廠有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU SIYAO PHARMACEUTICALS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】范 新華
(72)【発明者】
【氏名】賀贇
(72)【発明者】
【氏名】楊京華
(72)【発明者】
【氏名】張巍
(72)【発明者】
【氏名】屠永鋭
【審査官】
安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−515498(JP,A)
【文献】
特開2006−028124(JP,A)
【文献】
特開2008−156346(JP,A)
【文献】
特開2001−233764(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/071512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4418
A61K 9/06
A61K 47/06
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/18
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 17/00
A61P 17/04
A61P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下重量部の組成からなることを特徴とする塩酸シプロヘプタジン軟膏剤であって:
塩酸シプロヘプタジン 0.2 〜0.8重量部
メントール微粒子 0.6 〜3重量部
ステアリン酸 5 〜9重量部
モノステアリン酸グリセリン 2 〜6重量部
トリエタノールアミン 0.5 〜1.5重量部
白色ワセリン 5 〜8重量部
グリセリン 5 〜8重量部
エチルパラベン 0.05 〜0.10重量部
香料 0.05 〜0.10重量部
精製水 65 〜75重量部、
前記メントール微粒子のサイズが0.5〜1.0mmであり、メントール含有量が50%であり、
前記メントール微粒子が以下のプロセスを含むことを特徴とするメントール微粒子の調製方法により調製され:
(1)20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリンをマトリックス中心素材として使う;
(2)モノステアリン酸グリセリン中心素材と同じ重さのメントールを50%の薬用エタノール水溶液に溶かして濃度20%のメントールシロップを作る;
(3) コーティング造粒装置にモノステアリン酸グリセリン丸芯を入れて、圧縮空気0.2MPaにより(2)から得たメントールシロップを霧化させ、薬粒子の温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで連続的にコーティングして、直径0.5〜1.0mm、メントール含有量50%のメントール微粒子を調製する;
(4)コーティング造粒装置で(3)から得た微粒子を25℃〜30℃で乾燥させる;
(5)コーティング造粒装置に(4)から得た微粒子を入れて温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで75%エタノール、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる保護層液によりコーティングして保護層を付ける;得た微粒子の重さが0.5%〜1%上がる、
前記75%エタノール、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる保護層液の配合比例は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース:75%エタノール:澱粉=2:1.9:1である、塩酸シプロヘプタジン軟膏剤。
【請求項2】
以下のプロセスを含むことを特徴とする請求項1に記載の塩酸シプロヘプタジン軟膏剤の調製方法であって:
(1)メントール微粒子の調製:まず、20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリン中心素材と同じ重さのメントールを50%の薬用エタノール水溶液に溶かして濃度20%のメントールシロップを作る;コーティング造粒装置に中心素材である20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリン丸芯を入れて、圧縮空気によりメントールシロップを霧化させ、薬粒子の温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで連続的にコーティングして、直径0.5〜1.0mm、メントール含有量50%のメントール微粒子を調製する;その後、コーティング造粒装置の中で25℃〜30℃でメントール微粒子を乾燥させる;次に、コーティング造粒装置に当該微粒子を入れて、温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで75%エタノール、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる保護層液により、コーティング造粒装置で温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmでコーティングすることで当該微粒子に保護層を付ける;得た微粒子の重さが0.5%〜1%上がる;
(2)軟膏剤の調製:ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン及び白色ワセリンを80℃に加熱して溶解させ、油相として使う;トリエタノールアミン、グリセリン、エチルパラベン、及び精製水を加熱して80℃で溶解させ、水相として使う;攪拌しながら水相に油相をゆっくり添加し乳化させ、基剤溶液を調製する;75℃で基剤溶液に塩酸シプロヘプタジンを加え、40分間攪拌してから温度を下げる;40℃でその中にメントール微粒子を入れて30分間攪拌する;得たサンプルを検査して合格だったら、本発明の製品になる、
75%エタノール、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる保護層液の配合比例は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース:75%エタノール:澱粉=2:1.9:1であることを特徴とする、調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製剤として塩酸シプロヘプタジン軟膏剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚病の多くは、過敏性或いは炎症性皮膚炎であり、一部の炎症性皮膚病を除いて、ある程度のかゆみを引き起こす。病状がひどい時に、患者の仕事や生活及び健康に影響を与える。
【0003】
皮膚炎及び湿疹の治療は一般的に全身用薬と局所用薬の併用であり、その中で局所用薬が重要な治療手段である。現在、臨床的に最もよく使用された薬物は糖質コルチコイドであり、そのほかに抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤、抗細菌薬及び抗真菌薬などである。
【0004】
糖質コルチコイド剤は効き目が早くて効果が高いので、非感染性炎症性皮膚病の治療、特に皮膚炎湿疹類過敏性疾患ではよく使用されている。ヒドロコルチゾンが販売されてから、十種類以上の外用糖質コルチコイドが合成された。また、抗生剤或いは抗真菌薬と糖質コルチコイドの併用製剤、例えば、トリアムシノロン合剤も開発された。しかしながら、これらの薬物を長時間で局所使用すると、皮膚萎縮、毛細血管拡張、色素沈着、口周囲皮膚炎及び続発性感染などの副作用が生じる。全身使用すると、副腎の萎縮や機能不全となってしまう可能性がある。
【0005】
現在、臨床的に皮膚炎湿疹類皮膚病の治療で使用される外用軟膏は、例えば、派瑞松乳膏、複方達克寧霜、皮炎平乳膏、皮康霜、皮康王及び恩膚霜などである。上記外用製剤は炎症やかゆみを抑える作用が弱いとか、或いは抗細菌、抗真菌薬物を添加して処方が複雑なので、使用範囲が狭くなり、依存性またアレルギーを引き起こしやすく、臨床治療効果があまりよくない。一方、これらの外用軟膏剤は外観とか、作用効果或いはプラシーボ効果が足りない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記の欠点に鑑み、治療効果が高く、副作用が低く、プラシーボ効果がある皮膚炎症の治療で使用される外用軟膏剤を提供する。
【0007】
本発明は塩酸シプロヘプタジン軟膏剤に関する。
【0008】
本発明の塩酸シプロヘプタジン軟膏剤は下記表に示した重量部の組成物からなる。
【表1】
【0009】
本発明の配合では、塩酸シプロヘプタジンは抗ヒスタミン剤としてヒスタミンによるアレルギー症状を緩和する効果があり、メントールは製剤に香気を付与する効果がある。本発明によれば、マトリックス中心素材であるモノステアリン酸グリセリンがメントールを吸着し、粒子の成長がおこり造粒技術により含有量50%、直径0.5〜1.0mmのメントール微粒子を調製する。この微粒子は体温で自然溶解してメントールを放出し、皮膚粘膜に冷感反射を起こしてプラシーボ効果がある。
【0010】
本発明のもうひとつの目的は以下のメントール微粒子の調製方法を提供する。
(1) 20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリンをマトリックス中心素材として使う。
(2) モノステアリン酸グリセリン中心素材と同じ重さのメントールを50%の薬用エタノール水溶液に溶かして濃度20%のメントールシロップを作る。
(3) コーティング造粒装置にモノステアリン酸グリセリン中心素材を入れて、圧縮空気により(2)から得たメントールシロップを霧化させ、薬粒子の温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで連続的にコーティングして、直径0.5〜1.0mm、メントール含有量50%のメントール微粒子を調製する。
(4) コーティング造粒装置で(3)から得た微粒子を25℃〜30℃で乾燥させる。
(5) コーティング造粒装置に(4)から得た微粒子を入れて温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmでコーティングして保護層を付ける。得た微粒子の重さが0.5%〜1%上がる。保護層液は75%エタノール、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる(配合比例は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース:75%エタノール:澱粉=2:1.9:1)。75%エタノールを溶媒として、その中に5%HPMC溶液及びHPMC溶液重量1/2の澱粉を入れて均一に攪拌してHPMC・澱粉懸濁液を調製する。
【0011】
また、本発明は以下の塩酸シプロヘプタジン軟膏剤の製造方法を提供する。
(1) メントール微粒子の調製:
まず、モノステアリン酸グリセリン中心素材と同じ重さのメントールを50%の薬用エタノール水溶液に溶かして濃度20%のメントールシロップを作る。コーティング造粒装置に中心素材である20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリンを入れて、圧縮空気(圧力0.2MPa)によりメントールシロップを霧化させ、温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmで連続的にコーティングして、直径0.5〜1.0mm、メントール含有量50%のメントール微粒子を調製する。その後、コーティング造粒装置の中に25℃〜30℃でメントール微粒子を乾燥させる。次に、5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液(溶媒は75%エタノールで、澱粉用量はHPMC溶液の1/2)を保護層素材としてコーティング造粒装置で温度25〜30℃、回転速度50〜100rpmでコーティングして保護層を付ける。得た微粒子の重さが0.5%〜1%上がる。保護層の配合比例は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース:75%エタノール:澱粉=2:1.9:1である。
(2) 軟膏剤の調製:
ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン及び白色ワセリンを80℃に加熱して溶解させ、油相として使う。トリエタノールアミン、グリセリン、エチルパラベン、及び精製水を加熱して80℃で溶解させ、水相として使う。攪拌しながら水相に油相をゆっくり添加し乳化させ、基剤溶液を調製する。75℃で基剤溶液に塩酸シプロヘプタジンを加え、40分間攪拌してから温度を下げる。40℃でその中にメントール微粒子を入れて30分間攪拌する。得たサンプルを検査して合格だったら、組み立てて本発明の製品になる。
【0012】
本発明の軟膏剤は水中油型であり、基剤の中に薬物が均一に分散し、肉眼で見える低融点エステル(サイズ0.5〜1.0mmのメントール微粒子)も分散して見た目がよく、清涼感があるから患者らのコンプライアンスが高くなる。本発明は炎症やかゆみを抑える作用を持ち、特別な香り、外観がいい。組成の中にホルモン物質が無いから、長期間使っても依存性がない。本発明は作用メカニズムが新規で投与方法が独特、プラシーボ効果があり、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、皮膚掻痒症および湿疹などの治療で使用される。製品の外観が新穎であり、安定性に優れ、携帯に便利、保存しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0014】
実施例1:Lot No.20080201
【表2】
【0015】
製造方法:
1. メントール微粒子の調製:
(1) 20〜40メッシュのモノステアリン酸グリセリンをマトリックス中心素材として使う。
(2) モノステアリン酸グリセリン中心素材と同じ重さのメントールを50%の薬用エタノール水溶液に溶かして濃度20%のメントールシロップを作る。
(3) コーティング造粒装置にモノステアリン酸グリセリン中心素材を入れて、圧縮空気(圧力0.2MPa)により(2)から得たメントールシロップを霧化させ、薬粒子の温度25〜30℃、回転速度60rpmで連続的にコーティングして、直径0.5〜1.0mm、メントール含有量50%のメントール微粒子を調製する。
(4) コーティング造粒装置で(3)から得た微粒子を25℃〜30℃で乾燥させる。
(5) 保護層液は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び澱粉懸濁液からなる。75%エタノールが溶媒として、その中に5%HPMC溶液とHPMC溶液重量1/2の澱粉を入れて均一に攪拌してHPMC・澱粉懸濁液を調製する(配合比例は5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース:75%エタノール:澱粉=2:1.9:1)。コーティング造粒装置に(4)から得た微粒子を入れて温度25〜30℃、回転速度80rpmで連続的にコーティングして保護層を付ける。得た微粒子の重さが0.5%〜1%上がる。
2.軟膏剤の調製:
(1) ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン及び白色ワセリンを80℃に加熱して溶解させ、油相として使った。
(2) トリエタノールアミン、グリセリン、エチルパラベン、及び精製水を加熱して80℃で溶解させ、水相として使う。
(3) 攪拌しながら水相に油相をゆっくり添加し乳化させ、基剤溶液を調製する。75℃で基剤溶液に塩酸シプロヘプタジンを加え、40分間攪拌してから温度を下げる。40℃でその中にメントール微粒子を入れて30分間攪拌する。
(4) 得たサンプルを検査して合格だったら、組み立てて本発明の製品になる。規格:10g/本
【0016】
実施例2:Lot No.20080202
【表3】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:10g/本
【0017】
実施例3:Lot No.20080203
【表4】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:10g/本
【0018】
実施例4:
【表5】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:20g/本
【0019】
実施例5:
【表6】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:20g/本
【0020】
実施例6:
【表7】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:20g/本
【0021】
実施例7:
【表8】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:30g/本
【0022】
実施例8:
【表9】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:30g/本
【0023】
実施例9:
【表10】
実施例1と同様の調製方法にて調製した。規格:30g/本
【0024】
本発明の軟膏剤の安定性試験及び長期間安定性試験の結果を以下に示す。
一.安定性試験:
1. 遠心法:10gの軟膏を2500rpmで30分遠心し、遠心後相分離が見られなかった。
2. 耐熱試験:55℃で6時間保存し、保存後相分離が見られなかった。
ヒートサイクル試験:60℃に加熱してから室温に戻す。その作業を3回やった後、相分離が見られなかった。
二.長期間安定性試験:
実施例1〜3で調製した軟膏剤(他の実施例の規格が実施例1〜3の2倍或いは3倍で、組成と調製方法が同じである)を4℃、25℃及び40℃で3ヶ月間静置保存し、保存後の状態変化がなかった。結果から見ると、本発明の軟膏剤は安定性が良いことが認められた。
【表11】