特許第5674672号(P5674672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5674672タービンエンジンのロータまたはステータ要素を締結するための環状フランジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674672
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】タービンエンジンのロータまたはステータ要素を締結するための環状フランジ
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/06 20060101AFI20150205BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20150205BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20150205BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20150205BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   F01D5/06
   F01D9/04
   F01D25/00 F
   F01D25/24 D
   F02C7/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-535147(P2011-535147)
(86)(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公表番号】特表2012-508347(P2012-508347A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】FR2009001164
(87)【国際公開番号】WO2010052379
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年9月7日
(31)【優先権主張番号】0806241
(32)【優先日】2008年11月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルモント,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ランジユバン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ル・ゴフ,ステバン
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0059164(US,A1)
【文献】 特開2004−245220(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/144409(WO,A1)
【文献】 特開2005−299650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/06
F01D 9/04
F01D 25/00
F01D 25/24
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械タービンのロータまたはステータ要素の半径方向環状フランジ(38)であって、内周に中実部分(48、49)と中空部分(46、66、72)とを交互に含み、
中実部分(48、49)は、締結ボルトを通すためのオリフィス(58)を含み、
中空部分(46、72)は、その底部(54、70)がほぼ平坦であり、
前記底部がほぼ平坦な中空部分の少なくとも1つである、内周のキーイング機能中空部分(46)の底部(54)は、フランジの軸を中心とし、中実部分(48、49)のオリフィス(58)に対して当該フランジの軸に関する外側で接する円(60)の半径方向内側に位置し、
キーイング機能中空部分(46)の両側に位置する2つの中空部分(66)は、前記キーイング機能中空部分以外の中空部分(72)の底部(70)に比べて半径方向外側に位置する凹曲面形状の底部(68)を有する、フランジ。
【請求項2】
ターボ機械タービンのロータまたはステータ要素の半径方向環状フランジ(38)であって、外周に中実部分(48、49)と中空部分(74、76、82)とを交互に含み、
中実部分(48、49)は、締結ボルトを通すためのオリフィス(58)を含み、
中空部分(74、82)は、その底部(73、80)がほぼ平坦であり、
前記底部がほぼ平坦な中空部分の少なくとも1つである、外周のキーイング機能中空部分(74)の底部(73)は、フランジの軸を中心とし、中実部分(48、49)のオリフィス(58)に対して当該フランジの軸に関する内側で接する円(75)の半径方向外側に位置し、
キーイング機能中空部分(74)の両側に位置する2つの中空部分(76)は、前記キーイング機能中空部分以外の中空部分(82)の底部(80)に比べて半径方向内側に位置する凹曲面形状の底部(78)を有する、フランジ。
【請求項3】
前記2つの中空部分(66、76)の凹曲面底部(68、78)が、フランジの軸に垂直な断面において、半径R2の円弧の形であることを特徴とする、請求項1または2に記載のフランジ。
【請求項4】
前記2つの中空部分(66、76)の凹曲面底部(68、78)が、前記垂直な断面において、半径R1の円弧によって隣接する中実部分に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載のフランジ。
【請求項5】
前記2つの中空部分(66、76)の凹曲面底部(68、78)の半径R2が、隣接する中実部分への接続部(56、57)の半径R1より大きいことを特徴とする、請求項4に記載のフランジ。
【請求項6】
前記2つの中空部分(66、76)の凹曲面底部(68、78)の半径R2が、隣接する中実部分への接続部(56、57)の半径R1の3倍以上であることを特徴とする、請求項5に記載のフランジ。
【請求項7】
前記接続部(56、57)の半径R1が、4mmから6mmであることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載のフランジ。
【請求項8】
前記2つの中空部分(66、76)の凹曲面底部(68、78)が、約18mmの半径を有することを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載のフランジ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の環状フランジ(38)を少なくとも1つ含むことを特徴とする、ターボ機械の低圧タービン。
【請求項10】
請求項9に記載の低圧タービンを含むことを特徴とする、ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンのロータまたはステータ要素を締結するための環状フランジに関し、さらにこのようなタービンを含むターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械では、ロータディスク(例えば、タービンディスク)は、環状フランジによってそれらの半径方向内側周縁で互いに接続され、これらのフランジはボルト締めによって互いに押圧され締結される。
【0003】
ラビリンスシールのための環状支持体のような他の要素も同様に、その内周に環状フランジを含む場合がある。このフランジは、ロータディスクと同じボルトによって2つの環状ロータディスクフランジ間で固定され締結される。
【0004】
前記環状フランジは通常フェスツーン状にされる、すなわち、環状フランジは重量を低減するように交互に中実部分と中空部分とを有する。締結ボルトを通す穴は、中実部分を通って形成される。
【0005】
複数の並んだフランジを互いに締結するために、フランジの1つの中空部分が他のフランジの中実部分に形成されたボルトが通る穴と位置合わせするのに角度的にずれないように、フランジの中実部分を通って形成された穴の全てが位置合わせされる必要がある。その結果、フランジは2つの他のフランジに締結されずに2つの他のフランジ間で固定される。
【0006】
本出願人の仏国特許第08/02918号明細書では、内周にある中空部分の少なくとも1つの底部がフランジの軸を中心とした円の半径方向内側および中実部分のオリフィスの接線方向外側に配置されることが提案されている。したがって、フランジのオリフィスが他のフランジのオリフィスと位置合わせされない形でフランジが角度的にずれる場合には、前記フランジの少なくとも1つの中空部分の底部が少なくとも1つの締結ボルトの挿入路に位置して、ボルトが他のフランジのオリフィスに挿入されるのを妨げ、それによりフランジが不適切に組み立てられる危険性を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第08/02918号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キーイング機能を果たすこの中空部分はフランジにおける接線応力線を変化させ、そのことでキーイング機能中空部分に隣接する中実部分における応力集中が高くなることがわかった。これらの応力は、キーイング機能中空部分に隣接する中実部分の次の中空部分に接続されるゾーンで最大となる。また、キーイング中空部分に隣接する中実部分のオリフィスで応力が増加することもわかる。
【0009】
このような局部的な応力集中は、応力が集中するゾーンに亀裂を形成し、それによりフェスツーン状フランジの寿命を制限してしまう可能性がある。
【0010】
本発明の特定の目的は、上述の問題に対して、簡単で、費用がかからず、効果的な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明は、ターボ機械タービンのロータまたはステータ要素の半径方向環状フランジで、フランジは内周(または外周)に中実部分と中空部分とを交互に含み、中実部分は締結ボルトを通すためのオリフィスを含み、中空部分の底部はほぼ平坦であり、内周(または外周)の少なくとも1つのキーイング機能中空部分の底部はフランジの軸を中心とした円の半径方向内側(または外側)および中実部分のオリフィスの接線方向外側(または内側)に位置するようなフランジであって、キーイング機能中空部分の両側に位置する2つの中空部分は、他の中空部分の底部に比べて半径方向外側(または内側)に位置する凹曲面形状の底部を有することを特徴とするフランジを提供する。
【0012】
キーイング機能中空部分の両側を平坦な底部に替えて凹曲面形状の底部にして、これらの凹曲面形状の底部を他の中空部分の平坦な底部に比べて半径方向外側(または内側)に位置決めすることによって、接線応力がそれぞれの凹曲面底部の長さ全体に分散するようになる。
【0013】
したがって、本発明により、キーイング機能中空部分に隣接する中実部分のオリフィスの縁部、さらには前記隣接する中実部分を凹曲面形状の中空部分に接続するゾーンにおける接線応力の増加を避けることができる。
【0014】
2つの中空部分の凹曲面底部は、半径R2の円弧の形であるのが好ましい。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、2つの中空部分の凹曲面底部は、半径R1の円弧によって隣接する中実部分に接続される。前記2つの中空部分の凹曲面底部の半径R2は隣接する中実部分への接続部の半径R1の3倍以上である。
【0016】
有利には、前記2つの中空部分の凹曲面底部の半径R2は隣接する中実部分への接続部の半径R1より大きい。
【0017】
接続部の半径R1は4mmから6mmとし、前記2つの中空部分の凹曲面底部の半径は約18mmとしてもよい。
【0018】
本発明はさらに、上述した少なくとも1つの環状フランジを含むことを特徴とするターボ機械用の低圧タービンを提供する。
【0019】
本発明はさらに、上述したタイプの低圧タービンを含むことを特徴とする、ターボジェットまたはターボプロップなどのターボ機械を提供する。
【0020】
非限定的な例として添付図面を参照して考察された以下の説明を読めば、本発明はより十分に理解され、本発明の他の詳細、利点、特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】低圧タービンの片側軸方向部分断面図である。
図2】先行技術による中空キーイング機能部分を含む半径方向環状フランジの正確な角度位置決めを示した部分正面図である。
図3】本発明の半径方向環状フランジの部分正面図である。
図3a図3の細部IIIaの拡大図である。
図4】本発明の半径方向環状フランジの別の実施形態の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、図1について説明する。図1は、外側ケーシング16内に収容された可動ブレード12と固定翼14とを交互に備えた軸10の低圧タービンロータを示す。可動ブレード12の半径方向内側端部は、ロータディスク18、20、22、24の外周に締結される。各ディスク18、20、22、24は、半径方向内側に伸びてボルト33によって互いに締結される環状フランジ30、32によって他のディスクと接続する外周に、上流側および下流側円錐台形壁26、28を有する。ディスクの組は、ディスク20、22の環状フランジ30、32の間で固定される環状フランジ38を含む駆動コーン36を介してタービンシャフト34に接続される。
【0023】
固定翼14の列の内周とディスクの下流側および上流側円錐台形壁26、28との間の望ましくない空気流を防ぐために、外周にラビリンスシール40を有する半径方向環状フランジ38がディスクの上流側および下流側円錐台形壁26、28の半径方向フランジ30、32間に介在される。ラビリンスシール40は、固定翼14の列の内周に取り付けられたアブレイダブル材料42のトラックと協働する。
【0024】
上流側および下流側円錐台形壁26、28の半径方向環状フランジ30、32およびラビリンスシール40の半径方向フランジ38は、重量を低減するためにフェスツーン状であり、交互に中空部分と中実部分とを備える。図2は、ラビリンスシールの半径方向フランジ38と組み立てられた上流側円錐台形壁の半径方向環状フランジ30を示す。ラビリンスシールの半径方向フランジ38の中空部分44、46および中実部分48、49、50と半径方向環状フランジ30の中空部分および中実部分がそれぞれ軸方向に位置合わせされる。
【0025】
半径方向フランジ38の中空部分44、46は、ほぼ平坦な底部52、54を有し、曲面ゾーン56、57を介して中実部分48、49に接続される。中実部分48、49は、円形であり、上流側および下流側円錐台形壁の環状フランジ30、32とラビリンスシールの環状フランジ38とを締結することができる締結ボルトを受けるためのオリフィス58を含む。
【0026】
ラビリンスシールのフランジ38の少なくとも1つの中空部分46の底部54がフランジ38の軸を中心とした円60の半径方向内側および中実部分のオリフィス58の接線方向外側に配置されることで、確実にラビリンスシールのフランジ38が円錐台形壁の環状フランジ30、32間に正確に位置決めされる(図2)。
【0027】
したがって、中空部分44、46が円錐台形壁の環状フランジ30、32の中実部分50と軸方向に位置合わせするように、円錐台形壁の2つの環状フランジ30、32間にラビリンスシールのフランジ38を環状にオフセットして組み立てると、中空部分46の底部54はボルトの挿入路に位置し、このことで円錐台形壁の環状フランジの中実部分のオリフィス58に締結ボルトを挿入できなくなる。
【0028】
しかしながら、キーイング機能中空部分46を組み込むことで、ラビリンスシールの半径方向フランジ38における接線応力線62を変化させる。少なくとも1つの中空部分46の底部54は半径方向内側にオフセットし、接線応力線62もキーイング機能中空部分46付近で半径方向内側にオフセットされる。
【0029】
応力線のこの変化は、キーイング機能中空部分46に隣接する中実部分49における応力を増加させることになる。応力は、キーイング機能中空部分46の両側に位置する中実部分49と中空部分44との間の接続ゾーン57で最大になる。応力が最大である上述の接続ゾーン57と周方向に位置合わせして配置された隣接する中実部分49のオリフィス58の縁部64でも接線応力の増加が見られる。
【0030】
応力線のこの変化は亀裂を形成する可能性があり、そのことで動作時にフランジの機械的挙動に悪影響をもたらす可能性がある。
【0031】
本発明によれば、これらの欠点は、キーイング機能中空部分46の両側に位置する2つの中空部分66が他の中空部分72の底部70に比べて半径方向外側に位置する凹曲面形状の底部68を有することで避けられる(図3)。
【0032】
したがって、接線応力はキーイング機能中空部分46の両側に位置する中空部分66の凹曲面底部68の長さ全体に分散され、このことで凹曲面底部68をキーイング機能中空部分46に隣接する中実部分49に接続するゾーン57における応力の増加を避けることができる。応力のレベルはまたこれらの隣接する中実部分49のオリフィス58の近傍で減少する。
【0033】
図4に示された本発明の変形実施形態では、環状フランジの外周にフェスツーン加工が施される。この状況では、キーイング機能中空部分74は、フランジの軸を中心とした円75の半径方向外側および中実部分48、49のオリフィス58の接線方向内側に位置する平坦な底部73を有する。キーイング機能中空部分74の両側に位置する中空部分76は、他の中空部分82の平坦な底部80に比べて半径方向内側に位置する凹曲面形状の底部78を有する。
【0034】
内周または外周の凹曲面底部68、78は、半径R1の円弧56、57によって隣接する中実部分48、49に接続される半径R2の円弧である。半径R1は、凹曲面底部の半径R2未満である。
【0035】
凹曲面底部68、78の半径R2は、隣接する中実部分48、49に接続する円弧56、57の半径R1の3倍以上である。
【0036】
半径R1は、4mmから6mmとしてもよい。
【0037】
本発明の別の変形実施形態では、環状フランジ38は、内周または外周に少なくとも1つのキーイング機能中空部分46、74を含み、他の中空部分72、82の全てが上述した凹曲面底部68、78を有する。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、環状フランジの外周にフェスツーン加工が施され、2つの直径方向反対側にあるオリフィス58の心間距離は530mmである。凹曲面底部78は、約15mmの弓形で、約18mmの半径R2を有する。
【0039】
上述の凹曲面底部68、78は、キーイング機能中空部分46、74の両側に位置する中空部分66、76に追加の機械加工を施すだけで十分であるので、すでにキーイング機能中空部分46、74を有するフランジに単純な方法で作られる。
図1
図2
図3
図3a
図4