【文献】
Massimo Collino, et al.,Modulation of the oxidative stress and inflammatory response by PPAR-gamma agonists in the hippocampus of rats exposed to cerebral ischemia/reperfusion,Eur J Pharmacol,2006年,530(1-2),70-80
【文献】
Karen Fuenzalida, et al.,Peroxisome proliferator-activated receptor gamma up-regulates the Bcl-2 anti-apoptotic protein in neurons and induces mitochondrial stabilization and protection against oxidative stress and apoptosis,J Biol Chem,2007年,282(51),37006-15
【文献】
Ulf Riserus, et al.,Activation of peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)delta promotes reversal of multiple metabolic abnormalities, reduces oxidative stress, and increases fatty acid oxidation in moderately obese men,Diabetes,2008年,57(2),332-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は一部、本明細書で開示する特定の化合物が、スーパーオキシド捕捉潜在性を有する、および/または癌細胞、例えば結腸直腸癌細胞における複製忠実度を改善する能力を有することを発見したことによるものである。一態様では、その開示は、例えば結腸癌を発症するリスクのある、および/または結腸癌を発症しやすいことを示す危険因子を有する患者の癌、例えば結腸癌、を予防するまたはその発生率を低減する方法を対象とする。他の態様では、本開示は、患者における酸素フリーラジカルを弱める(attenuate)方法および/またはそうしたフリーラジカルの過剰と関連する疾患を治療する方法を対象とする。本開示の方法は、本明細書で開示する化合物を投与することを含む。
【0018】
本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用する具体的な用語をここに集める。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれるべきであり、当業者によるのと同様に理解されるべきである。別段の定義のない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有するものとする。
【0019】
対象とする方法で扱われる「患者」、「被験体」または「宿主」は、ヒトまたは、例えばマウスもしくはラットなどの小動物およびウマ、ウシ、イヌ、ネコ等を含むヒト以外の動物を意味する。
【0020】
「治療薬」という用語は、当技術分野で認識されており、被験体において局所および/または全身で作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質である任意の化学的部分を指す。「薬物」とも称される治療薬の例は、Merck Index、the Physicians Desk ReferenceおよびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsなどの周知の文献に記載されており、それらには、これらに限定されないが、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または緩和のために使用される物質;身体の構造または機能に影響を及ぼす物質;あるいは生理学的環境に置かれた後、生物学的に活性になるまたはより活性になるプロドラッグが含まれる。
【0021】
「治療効果」という用語は、当技術分野で認識されており、これは、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトにおける薬理学的に活性な物質によって引き起こされる局所的および/または全身的な効果を指す。したがって、この用語は、疾患の診断、治癒、緩和、治療または予防において、あるいは動物またはヒトにおける望ましい肉体的または精神的な成長および/または状態の増進において使用するための任意の物質を意味する。「治療有効量」という語句は、任意の治療に適用できる妥当な利益/リスク比で、何らかの所望の局所的または全身的効果をもたらす物質の量を意味する。そうした物質の治療有効量は、治療を受ける被験体および疾患の状態、被験体の体重および年齢、その病状の重症度、投与の様式などに応じて変わることになるが、当業者はそれを容易に決定することができる。例えば、本発明の特定の組成物は、そうした治療に適用できる妥当な利益/リスク比をもたらすのに十分な量で投与することができる。
【0022】
「治療する(treating)」という用語は、当技術分野で認識されており、これは、任意の状態または疾患の少なくとも1つの症状を治癒させ、また改善することを指す。
【0023】
「アルキル」という用語は、当技術分野で認識されており、それらには、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基が含まれる。特定の実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その主鎖中に約30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C
1〜C
30、分枝鎖の場合C
3〜C
30)、あるいは約20個以下、例えば1〜6個の炭素を有する。同様に、シクロアルキルは、その環構造中に約3〜約10個の炭素原子、あるいは環構造中に約5、6もしくは7個の炭素を有する。「アルキル」という用語は、ハロ置換アルキルも含むように定義される。
【0024】
さらに、「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、炭化水素主鎖の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を指す「置換アルキル」を含む。そうした置換基は、例えば、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族もしくは複素芳香族部分を含むことができる。当業者は、適切な場合、炭化水素鎖上で置換された部分が、それ自体置換されていてよいことを理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基は、置換および非置換形態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)およびシリル基ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを含む)、−CNなどを含むことができる。置換アルキルの例を以下に示す。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル−置換アルキル、−CNなどでさらに置換されていてよい。
【0025】
オルト、メタおよびパラという用語は、当技術分野で認識されており、それぞれ1,2−、1,3−および1,4−ジ置換ベンゼンを指す。例えば、1,2−ジメチルベンゼンとオルト−ジメチルベンゼンという名称は同義語である。
【0026】
任意の構造において2回以上出現する場合、各表現、例えばアルキル、m、nなどの定義は、同一構造内において他の所でのその定義から独立であるものとする。
【0027】
本発明の組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体で存在することができる。さらに、本発明の化合物は光学的に活性であってよい。本発明では、シスおよびトランス異性体、RおよびS鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、そのラセミ混合物およびそれらの他の混合物を含むそうしたすべての化合物が本発明の範囲内に含まれるものとする。追加の不斉炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在することができる。そうしたすべての異性体ならびにその混合物は本発明に含まれるものとする。
【0028】
「置換」または「で置換された(substituted with)」ということは、そうした置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従っており、そして、その置換が安定な化合物、例えば自然発生的に転位、環化、脱離または他の反応などの変換を受けない化合物を生じるという暗黙の条件が含まれるを理解されよう。
【0029】
「置換された(substituted)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことも考慮される。幅広い態様においては、その許容される置換基は、有機化合物の非環式および環状、分枝状および非分枝状の、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基には、例えば本明細書で上記したものが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について1つもしくは複数であってよく、またそれは同じであっても異なっていてもよい。本発明のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満足する本明細書で説明する有機化合物の水素置換基および/または許容される任意の置換基を有していてよい。本発明は、どんな様式でも、有機化合物の許容される置換基によって限定されるものではない。
【0030】
本発明のために、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics、67
th Ed.、1986〜87年の表紙裏の元素周期表、CAS版によって特定される。また、本発明のために、「炭化水素」という用語は、少なくとも1個の水素と1個の炭素原子を有する許容されるすべての化合物を含むものとする。幅広い態様では、その許容される炭化水素は、置換されていても置換されていなくてもよい非環式および環状、分枝状および非分枝状の、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族有機化合物を含む。
【0031】
「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野で認識されており、例えば、本発明の組成物中に含まれるものを含む化合物の比較的非毒性の無機酸付加塩および有機酸付加塩を指す。
【0032】
「薬学的に許容される担体」という用語は、当技術分野で認識されており、これは、任意の対象組成物またはその成分を1つの器官または身体の一部から他の器官または身体の一部へ運ぶまたは輸送するのに関わる、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくはカプセル化材料などの薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルを指す。各担体は、対象組成物およびその成分と適合し、かつ患者に対して有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として働く物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェン除去水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液ならびに(21)製剤において使用される他の非毒性の適合物質が含まれる。
【0033】
化合物
本開示の方法の1つまたは複数において使用するのに考慮される化合物は、式Iで表される化合物
【0034】
【化3】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、HおよびC
1〜6アルキルからなる群から選択され、またはR
1とR
2はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されていてよい5または6個の原子を有する芳香族環または脂肪族環を形成しており、
YおよびZは、それぞれ独立に、H、OH、COOH、−OR
3、−CH(OR
3)COOHからなる群から選択され、
R
3は、H、フェニル、ベンジル、ビニル、アリル、C
1〜6アルキルまたは1個もしくは複数のハロゲンで置換されたC
1〜6アルキルからなる群から選択される)
またはその薬学的に許容される塩、鏡像異性体または立体異性体を含む。
【0035】
一実施形態では、YはHまたはCOOHであってよい。例えば、YはHであってよく、ZはCH(OR
3)COOHであってよく、またYはCOOHであってよく、Zは−OR
3であってよい。いくつかの実施形態では、R
3はメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルであってよい。
【0036】
他の実施形態では、NR
1R
2部分は4’位にあっても3’位にあってもよい。特定の実施形態では、R
1およびR
2はHである。
【0037】
例示的化合物は、式IIaもしくは式IIbで表される化合物
【0038】
【化4】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、HおよびC
1〜6アルキルからなる群から選択され、またはR
1とR
2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5または6個の原子を有する芳香族環または脂肪族環を形成しており、
R
6は、−NHOH、OHおよび−OR
9からなる群から選択され、
R
9はC
1〜6アルキルであり、
R
4は、H、フェニル、ベンジル、ビニル、アリル、C
1〜6アルキルまたは1つもしくは複数のハロゲンで置換されたC
1〜6アルキルから選択され、
R
5およびR
7は、それぞれ独立に、水素またはハロであり、あるいは
R
4とR
5、またはR
4とR
6は一緒になって、ハロまたはC
1〜6アルキルで任意に置換された5または6個の原子を有する縮合複素環を形成しており、
Aは縮合複素環である)
またはその薬学的に許容される塩、鏡像異性体もしくは立体異性体、またはその薬学的に許容される塩も含む。
【0039】
特定の実施形態では、式IIaのNR
1R
2部分は4’位にあってもまた3’位にあってもよい。特定の実施形態では、R
1およびR
2はHである。
【0040】
いくつかの実施形態では、R
9はメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルであってよい。
【0042】
【化5】
(式中、pは1または2であり、R
6はOHまたは−OR
9であり、R
9は上記定義通りであり、R
10は、その出現ごとに独立に、H、ハロまたはC
1〜6アルキル、例えばメチルもしくはエチルからなる群から選択される)
で表すことができる。
【0043】
本明細書で考慮される例示的化合物は、
【0044】
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を含むものとする。
【0045】
いくつかの実施形態では、考慮される化合物は、4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物13);6−メトキシキノリン−5−カルボン酸(化合物36);6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸(化合物37);5−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38)を含む。
【0048】
本明細書で考慮される化合物は、化合物のラセミ混合物および鏡像異性体、例えば、(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20);(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23);(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32);(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33);(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「±34」(ラセミ体);(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39);(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)を含む。
【0049】
例えば、本発明の方法において使用する化合物は以下のラセミ混合物:(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10);(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11);(R,S)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21);(R,S)−2−メトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物22);(R,S)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35);(R,S)−2−メトキシ−3−(4−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)の鏡像異性体、ならびに鏡像異性体、例えば、(+)2−S−メトキシ−3−(4−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34);(−)2−R−メトキシ−3−(4−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)であってよい。
【0050】
考慮される化合物の他のラセミ型混合物には、例えば、(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物10);(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物11);(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)および(±)−2−メトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物22)が含まれる。
【0051】
本開示の方法において使用するのに考慮される他の化合物:5−アミノサリチロ−ヒドロキサム酸(5−aminosalicylo−hydroxamic acid)(化合物5);3−ジメチルアミノサリチル酸(化合物6);2−メトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物7);2−メトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物8);5−メチルアミノサリチル酸(化合物9);4−メチルアミノサリチル酸(化合物12);4−アセチルアミノサリチル酸(化合物16);2−エトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物18);2−エトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物19);4−ジメチルアミノサリチル酸(化合物24);2−エトキシ−4−アミノベンゾイルヒドロキサム酸(化合物25);6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物27);2−(2−プロピル)オキシ−4−アミノ安息香酸(化合物30);4−(1−ピペラジニル)サリチル酸(化合物41);(R,S)5−オキサ−キノリン−6−カルボン酸(化合物15);6−メトキシキノリン−5−カルボン酸(化合物36);6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸(化合物37);5−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38);および4−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物42)。
【0052】
考慮される化合物を作製するための方法は、例えばWO2007/010516およびWO2007/010514に見ることができる。そのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0053】
治療への応用
結腸癌発生(colon carcinogenesis)または結腸癌を予防または低減する方法は本開示の一部を形成する。そうした方法は、患者、例えば結腸直腸癌のリスクのある患者に本明細書で開示するもの、例えば化合物17、29、39または34などの化学予防剤を含む医薬品を投与することを含むことができる。結腸癌または結腸癌発生のリスクのある患者は、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患もしくはクローン病を有する患者を含むことができる。リスクのある患者は、診断で初期段階のクローン病もしくは大腸炎、広範および/または重篤な結腸疾患を有する患者、原発性硬化性胆管炎を有する患者および/または癌の家族歴を有する患者も含むことができる。
【0054】
上記方法を用いて治療される患者は検出可能な結腸直腸癌を有していても有していなくてもよい。別の実施形態では、患者において、本明細書で開示する化合物の最初の投与の前またはその投与過程の間に自然変異頻度の結腸癌細胞が存在していてもいなくてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、開示化合物を投与して、例えば1日、2日、1週間、1カ月または6カ月またはそれ以上の後、患者の中に存在する結腸癌細胞の変異率の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、さらには50%またはそれ以上の減少を有する。理論に拘束されるわけではないが、本明細書で開示する化合物は、細胞周期を通して進行に関係する細胞機構と相互作用することによって、変異率を低減することができる。そうした進行は、細胞周期チェックポイントの開始によってDNA複製(S期)および/または細胞分裂(有糸分裂)などのその過程の減速をもたらすことができ、これは、DNAが遭遇する可能性のある損傷を修復するか、またはアポトーシスを受ける機会を細胞に与える。両方の場合、これは、変異または損傷した細胞の蓄積を防止し、DNAの完全性の維持をもたらす。
【0055】
患者、例えば結腸直腸癌のリスクのある患者における結腸直腸腫瘍または固形腫瘍(例えば、乳癌、前立腺癌、肺癌または肝細胞癌)の臨床症状を遅延させる方法であって、その患者に有効量の本明細書で開示する化学予防化合物、例えば化合物17、29、39または34を投与することを含む方法も本明細書で考慮される。そうした化合物の投与は、例えば少なくとも毎日であってよい。本明細書で開示する化合物の投与の結果としての患者の結腸直腸腫瘍の臨床症状の遅延は、本明細書で開示するものなどの化学予防化合物を投与されていない患者と比較して、少なくとも、例えば6カ月、1年、18カ月、さらには2年またはそれ以上であってよい。
【0056】
乳癌、頸癌(cervix)、膵臓癌、前立腺腺癌および/または肝細胞癌などの固形腫瘍または腺癌を予防または軽減する方法も本開示の一部を形成する。そうした方法は、患者、例えば、そうした癌のリスクのある患者に、本明細書で開示するもの、例えば本明細書で開示する化合物17、29、39または34などの化学予防剤を含む医薬品を投与することを含むことができる。
【0057】
開示化合物(例えば、式I、式IIaまたは式IIb)を投与することを含む、酸素フリーラジカルを弱めることが有用である疾患、例えば、自己免疫、心臓血管および皮膚および/または毛髪の障害に苦しむ患者の治療方法も本明細書で考慮する。
【0058】
例えば、望ましくない脱毛に苦しむ患者の脱毛を治療する方法を考慮する。その方法は、開示化合物、例えば式I、式IIaまたは式IIbの化合物(例えば、化合物17、28、29、34または14)を含む、有効量の組成物を投与することを含む。そうした組成物は、局所的に投与することができる。スーパーオキシドジスムターゼは脱毛の治療に用いられており、一実施形態では、スーパーオキシドジスムターゼ特性を有する開示化合物は、髪の成長を処置するおよび/または脱毛を低減する方法で使用するために考慮される。例えばそうした化合物は、患者に、例えば局所的に投与した場合、毛包のサイズを増大させ、および/または髪の成長速度を増加させることができる。円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia)および/または休止期脱毛症(telogenic defluvium)を治療する方法を考慮する。
【0059】
皮膚に対するフリーラジカル損傷から保護する、および/または皮膚に対するフリーラジカル損傷を改善する方法であって、本明細書で開示する化合物、例えば式I、式IIaまたは式IIbの化合物、例えば化合物17、28、29、34または14を含む、有効量の組成物を投与する(例えば、局所的に投与する)方法を開示する。スーパーオキシドジスムターゼは、例えば、そうした治療用として公知である(例えば、J.Cell.Mol.Med.8巻(1号):109〜116頁(2007年):「Topical superoxide dismutase reduces post−irradiation breast cancer fibrosis」; J. Derm Sci. Suppl 2巻(1号)S65〜S74頁(2006年)を参照されたい)。
【0060】
例えば、開示化合物は、皮膚の瘢痕組織を軽減もしくは改善する、創傷や熱傷を治癒させる、紫外線に対して皮膚を保護する、および/または紫外線への曝露により損傷を受けた皮膚を治癒させるのに使用することができる。例えば、開示化合物は、放射線による線維症を軽減するのに使用することができる。皮膚の小皺、皺またはむらを処置する方法であって、本明細書で開示する化合物、例えば式I、式IIaまたは式IIb(例えば、化合物17、28、29、34または14)を含む、有効量の組成物を局所的に投与することを含む方法も考慮する。
【0061】
尋常性座瘡、面皰型座瘡(comedo−type acne)、多形性座瘡、酒さ性座瘡、嚢胞性座瘡(nodulocystic acne)、集簇性座瘡、老人性座瘡、二次的座瘡、日光性座瘡、薬物性座瘡または職業性座瘡、魚鱗癬、ダリエー病、手掌または足底の角化症、皮膚、粘膜または爪の乾癬、紫外線放射への曝露に起因する皮膚疾患、皮膚の老化、光誘発性または経時的または化学線性の色素沈着および角化症、過脂漏症座瘡(acne hyperseborrhoea)、単純性脂漏症または脂漏性皮膚炎、瘢痕形成障害あるいは皮膚線条の少なくとも1つの治療などの皮膚病変を治療する方法であって、有効量の開示化合物を投与することを含む方法も提供する。アトピー性皮膚炎を治療する方法も考慮する。その組成物は、経口でも局所でも投与することができる。
【0062】
スーパーオキシドは、加齢に伴う疾患、例えば糖尿病、白内障、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患、黄斑変性症、網膜潰瘍および/または網膜血管炎ならびに前立腺癌に関係している(例えば、「Antioxidants, diabetes and endothelial dysfunction」、Cardiovascular Research、47巻(3号)457〜464頁、2000年; Role of anti−oxidant enzymes superoxide dismutase and catalase in the development of cataract: study of serum levels in patients with senile and diabetic cataracts)、J Indian med Assoc. 104巻(7号):394巻、396〜7頁、2006年;「Oxidative stress hypothesis in Alzheimer’s disease」、Free Radical Biology and Medicine、23巻(1号):134〜147頁、1997年;「Oxidative mechanisms in nigral cell death in Parkinson’s disease」、Mov Disord. 1998年;「Involvement of oxidative and nitrosative stress in promoting retinal vasculitis in patients with Eales’ disease」、Clinical Biochemistry、36巻(5号):377〜385頁、2003年を参照されたい。本明細書では、開示化合物を含む、加齢に伴う障害、例えば糖尿病、白内障、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患、黄斑変性症、網膜潰瘍および/または網膜血管炎を治療する方法を考慮する。例えば、本明細書では、黄斑変性症の影響を改善する、軽減する、または黄斑変性症を予防する方法であって、式I、式IIaまたは式IIbで表される化合物(例えば、化合物17、28、29または34)を投与することを含む方法を提供する。
【0063】
一実施形態では、酸化的ストレスを治療することを必要とする患者の酸化的ストレスを治療する方法であって、本明細書で開示する化合物を投与することを含む方法を提供する。例えば、低酸素症を治療することを必要とする患者に本明細書で開示する化合物を投与することを含む低酸素症を治療する方法を提供する。
【0064】
酸化的ストレスは、例えば、酸素を使用する代謝反応からもたらされ得、いくつかの実施形態では、それは、損なわれていない(intact)細胞における酸化促進系/酸化防止系の平衡状態の乱れと説明することができる。酸化的ストレスは、例えば、慢性冠動脈虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、発作および心筋肥大などの心臓および血管の障害および疾患に関係している。例えば、虚血性または再かん流関連の損傷を治療または阻害することを必要とする患者の虚血性または再かん流関連の損傷を治療または阻害する方法であって、患者に、式I、式IIaまたは式IIbの化合物を含む有効量の組成物を投与することを含む方法を提供する。本明細書では、心臓および/または血管の障害を治療することを必要とする患者の心臓および/または血管の障害を治療する方法であって、開示化合物、例えば式I、式IIaまたは式IIbで表される化合物を投与することを含む方法を提供する。慢性閉塞性肺障害を治療する方法であって、開示化合物、例えば式I、式IIaまたは式IIbで表される化合物、例えば化合物17、28、29、34または14を投与することを含む方法も提供する。
【0065】
自己免疫障害を治療する方法、例えばアジソン病、慢性甲状腺炎、皮膚筋炎、グレーブス病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、乾癬または関節リウマチを治療する方法であって、自己免疫障害を治療することを必要とする患者に有効量の式Iの化合物、または例えば化合物17、28、29、34もしくは14を投与することを含む方法も考慮する。
【0066】
一般に、活性成分の治療有効量は、約0.1mg/kg〜約100mg/kg、任意に約1mg/kg〜約100mg/kg、任意に約1mg/kg〜10mg/kgの範囲となる。投与される量は、治療を受ける疾患または適応症の種類および程度、具体的な患者の全体的健康状態、送達される結合タンパク質の相対的な生物学的効能、結合タンパク質の処方、処方物中の賦形剤の存在およびその種類ならびに投与経路などの変数に依存することになる。所望の血中濃度または組織内濃度を迅速に達成するため、投与される最初の投薬量を上記の上限値を超えて増加させることができ、また、最初の投薬量を最適値より少なくすることができる。1日用量は、具体的な状態に応じて治療の過程で漸増させることができる。ヒトへの投薬量は、例えば、0.5mg/kg〜20mg/kgで実施するように設計された慣用的な第I期用量漸増試験(Phase I dose escalation study)で最適化することができる。投薬頻度は、投与経路、投薬量および治療を受ける病状などの因子に応じて変えることができる。投薬頻度の例は、1日1回、1週間に1回および2週間に1回である。
【0067】
考慮される処方物または組成物は、開示化合物を含み、典型的には化合物および薬学的に許容される担体を含む。
【0068】
本発明の組成物は、その目的とする用途に応じて、当技術分野で周知の様々な手段で投与することができる。例えば、本発明の組成物を経口で投与する場合、それらは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤またはシロップ剤として処方することができる。あるいは、本発明の処方物を、注射剤(静脈内、筋肉内または皮下)、点滴製剤または坐剤として非経口で投与することができる。眼の粘膜経路で施すために、本発明の組成物を点眼剤または眼軟膏剤として処方することができる。これらの処方物は慣用的な手段で調製することができ、望むなら、その組成物を、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤またはコーティング剤などの慣用的な任意の添加剤と混合することができる。
【0069】
対象発明の処方物では、湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤が処方される剤中に存在していてよい。
【0070】
対象組成物は、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、経直腸、経膣、エアゾールおよび/または非経口投与に適している。処方物は、単位剤形で存在することが好都合であり、製薬技術分野で周知の任意の方法で調製することができる。単一用量を得るために担体材料と混合できる組成物の量は、治療を受ける被験体および具体的な投与方法によって変わる。
【0071】
これらの処方物を調製する方法は、本発明の組成物と担体および任意の1つまたは複数の副成分を一緒にするステップを含む。一般に、処方物は、剤を液体担体もしくは微粉化された固体担体またはその両方と均一かつ密に一緒にし、次いで、必要なら、その生成物を成形することによって調製する。
【0072】
経口投与に適した処方物は、それぞれが所定量のその対象組成物を活性成分として含むカプセル剤、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ剤(香味付けベース、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いて)、粉剤、顆粒剤の形態であってよく、あるいは水性もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液として、水中油型もしくは油中水型の乳濁液として、エリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性ベースを用いて)としてであってよい。本発明の組成物は、ボーラス投与、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0073】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸薬、フィルムコート錠剤、糖衣錠剤、粉剤、顆粒剤など)では、対象組成物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つもしくは複数の薬学的に許容される担体および/または以下:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤もしくは増量剤;(2)、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)、例えば、アセチルアルコール(acetyl alcohol)およびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその混合物などの滑沢剤;ならびに(10)着色剤のいずれかと混合する。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、組成物は緩衝剤も含むことができる。同種の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として用いることもできる。
【0074】
処方物および組成物は、開示化合物の微粉化結晶を含むことができる。微粉化は、化合物単独の結晶で実施しても、また、結晶と薬学的賦形剤または担体の一部もしくは全体との混合物で実施してもよい。開示化合物の微粉化結晶の平均粒径は、例えば約5〜約200ミクロンまたは約10〜約110ミクロンであってよい。
【0075】
錠剤は、任意に1つもしくは複数の副成分と一緒に圧縮または成形して作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた対象組成物の混合物を適切な機械で成形することによって作製することができる。フィルムコート錠剤または糖衣錠剤、カプセル剤、丸薬および顆粒剤などの錠剤および他の固体剤形は、任意に、割線を入れるか、または腸溶コーティングや製剤処方技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。
【0076】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。対象組成物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリンおよびその混合物を含むことができる。
【0077】
対象組成物に加えて懸濁液は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにその混合物のような懸濁化剤を含むことができる。
【0078】
経直腸または経膣投与のための処方物は坐剤として存在することができる。その坐剤は対象組成物を、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって体腔内で溶融して活性剤を放出する、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスまたはサリチレートを含む1つもしくは複数の適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製することができる。経膣投与に適した処方物には、当技術分野で適切であることが公知である担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡状または噴霧処方物も含まれる。
【0079】
対象組成物の経皮または局所投与のための剤形には、粉剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性成分を滅菌状態下で、薬学的に許容される担体および必要とされる任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合することができる。
【0080】
軟膏剤、ペースト、クリームおよびゲルは、対象組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはその混合物などの賦形剤を含むことができる。
【0081】
粉剤および噴霧剤は、対象組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。噴霧剤は、慣用的な噴射剤、例えばクロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを追加的に含むことができる。
【0082】
あるいは、本発明の組成物および化合物はエアゾールで投与することもできる。これは、化合物を含む水性エアゾール、リポソーム製剤または固体粒子を調製することによって実施される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁剤を使用することができる。対象組成物中に含まれる化合物の分解をもたらし得る、せん断にその剤を曝すことを最少にするので、超音波噴霧器を使用することができる。
【0083】
通常、水性エアゾールは、対象組成物の水溶液または水性懸濁液を慣用的な薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に処方することによって作製する。担体および安定剤は、具体的な対象組成物の要件によって変わってくるが、一般に非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronicまたはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖または糖アルコールを含む。エアゾールは一般に等張液から調製する。
【0084】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、対象組成物を、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、対象レシピエントの血液と等張性の処方物を付与する溶質、懸濁化剤または増粘剤を含むことができる、1つまたは複数の薬学的に許容される滅菌した等張性の水溶液もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくは乳液、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは分散液に再構成することができる滅菌粉末と一緒に含む。
【0085】
本発明の医薬組成物で使用できる適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびその適切な混合液、オリーブ油などの植物油ならびにオレイン酸エチルおよびシクロデキストリンなどの注入可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることによって、分散液の場合は所要粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。対象組成物を用いた治療の効能は、当業者に公知の多数の様式で判定することができる。
【0086】
組成物が特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている説明を通して、組成物は、言及されている成分からも本質的になる、または言及されている成分からもなるものとする。同様に、特定のプロセスステップを有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合、そのプロセスは、言及されているプロセスステップからも本質的になる、または言及されているプロセスステップからもなるものとする。別段の指定のない限り、本発明が使用可能であるならば、そのステップの順番または具体的な作業を行う順番は重要ではない。さらに、別段の記載のない限り、2つ以上のステップまたは作業は同時に行うことができる。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
スーパーオキシド捕捉
化合物17および39を、標準化されたO
2−アッセイを用いて、活性好中球(PMN)によって放出されたスーパーオキシド(O
2−)を捕捉するその潜在性について試験した。簡単に述べると、1×10
6個の新鮮分離した好中球を、化合物の非存在下または存在下(それぞれ5mM)、ホルボール−ミリステート−アセテート(PMA)を用いて活性化させた。活性化の30分後、O
2−放出を、ルミノメーターを用いてルシゲニン増幅した化学発光で測定した。対照として5−ASA(5−アミノサリチル酸)およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を使用した。実験は3通り実施した。
【0088】
化合物17は、5mMでスーパーオキシド(対照の5%)の強力な捕捉剤として作用し、スーパーオキシドジスムターゼとカタラーゼの混合物と同じように活性である。
図1に示すように、化合物39は5−ASAと同様の捕捉特性を有する。
【0089】
(実施例2)
スーパーオキシド捕捉
化合物14および34を、実施例1と同様に標準化されたO
2−アッセイを用いて、活性好中球(PMN)によって放出されたスーパーオキシド(O
2−)を捕捉するその潜在性について試験した。O
2−供与体として活性好中球(PMN)を使用した。簡単に述べると、1×10
6個の新鮮分離した好中球を、100nMホルボール−ミリステート−アセテート(PMA)を用いて活性化させた。O
2−放出を、ルミノメーターを用いたルシゲニン増幅した化学発光によって、15分毎に90分間測定した。スーパーオキシドジスムターゼ(2000U/ml、SOD)でインキュベートした非活性化PMNまたは活性化PMNのいずれかを対照として使用した。実験は3通り実施した。
【0090】
検討した濃度で、どちらの化合物も有意な捕捉特性を示した。
図2Aは化合物14の結果を表し、
図2Bは化合物34の結果を表す。
【0091】
(実施例3)
複製忠実度
様々な濃度の化合物でインキュベートした際の変異率の変化を判定するためのEGFPに基づいたアッセイを用いて、化合物が複製忠実度を改善するかどうかを試験した。簡単に述べると、1×10
3個のEGFP陰性のHCT116A2.1細胞を、FACS Aria上の24ウェルプレートにソーティングした。24時間後、細胞をその化合物で7日間処理し、フローサイトメトリーにより変異画分(mutant fraction)を測定した。
【0092】
化合物17は、1.25mMから出発してすでに低い濃度で細胞成長に影響を及ぼしている。驚くべきことに、化合物17は、5mMの濃度で中間的変異細胞(M1個体群)の50%の減少をもたらす。さらに、化合物17は、2.5〜5mMの濃度で最終的変異細胞(M2個体群)の約30%の減少をもたらした(
図3A)。
【0093】
図3Bは、化合物28は最大で1mMの濃度で有意の変化を引き起こさないようであることを示している。化合物39は、20mMで細胞成長を低下させたが、変異画分M1またはM2を減少させなかった。その代わり、20mMの化合物39での処理はM1の増大をもたらす(
図3C)。これはアスピリンの効果に匹敵する。
【0094】
化合物17、28および39の中で、化合物17は、(CA)13リピートをもつHCT116細胞における複製忠実度に対してプラス効果を示す。この効果は、中間的変異画分M1において見られるだけでなく、最終的変異M2においても見られる。化合物17は最も強力な捕捉剤である。M1またはM2のこの減少は、S期停止に依存するようには見えない(5−ASAについては見られたように;Luciani G、Gastroenterology 2007年)。
【0095】
(実施例4)
実施例3と同様のEGFPに基づいたアッセイを用いて、様々な濃度の開示化合物でインキュベートした際の変異率の変化を判定し、化合物が複製忠実度を改善するかどうかを試験した。EGFPに基づいたアッセイを用いて、様々な濃度の化合物でインキュベートした際の(CA)13リピートでの変異率の変化を判定した。簡単に述べると、1×10
3個のEGFP陰性のHCT116A2.1細胞を、FACS Aria上の24ウェルプレートにソーティングした。24時間後、細胞をその化合物で7日間処理した。合計細胞数(c)およびEGFP陽性画分(変異画分(MF))をフローサイトメトリーで分析した。変異率(m/(CA)13/世代(gen)を、m=MF/(gen+1)およびgen=log2(c/1000×クローニング効率)により推定した。過渡的変異(M1)と最終的変異(M2)細胞は識別された。
【0096】
図4に示すように、化合物39はM1細胞の数を有意に低下させた。これは、10mMから最大で40mM(p<0.05)の濃度で開始する、MMR機能異常HCT116細胞におけるポリメラーゼエラー直後の細胞個体群を反映している。40mMでの永久的変異M2個体群の有意の減少も認められた。
【0097】
(実施例5)
細胞周期分析
BrdU染色を用いて、化合物39で72時間処理した際のHCT116およびHT29細胞における細胞周期変化を分析した。データは3つの独立した実験の平均値で表す(*は対照と比較してp<0.05を示す)
化合物39(10mM〜40mM)は、HCT116細胞の細胞周期分布において有意の変化を誘発しなかった。HT29細胞は、G2期において軽度の増加を示した(6.7%〜13.6%の範囲、p<0.05)。これは、G1個体群の減少とパラレルであった(52.7%〜44.9%の範囲、p<0.05)(
図5Aおよび
図5B)。
【0098】
(実施例6)
細胞増殖
MTTアッセイを用いて、化合物34の細胞増殖に対する阻害効果を検討した。簡単に述べると、5×10
3個のHCT116、HCT116+chr3、HT29およびLovo細胞を、様々な濃度で、96ウェルプレート中で72時間インキュベートした。化合物34はIMDMに可溶性である。100mMのストック液を調製し、pHを7.4に調節した。
【0099】
図6は、化合物34が、細胞型に応じて30〜40mMでIC
50を有することを示している。
【0100】
(参照による援用)
本明細書で参照した特許文献および科学論文のそれぞれの開示全体をすべての目的のために参照により本明細書に援用する。
【0101】
(等価物)
本発明は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化することができる。したがって、上記実施形態は、本明細書で説明する本発明を限定するものではなく、あらゆる点で例示的なものであると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上記説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内にあるすべての変更は本発明に包含されるものとする。