(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータコアのスロットの内部に配置される部分に相当するスロット内予定部と前記スロットから突出する部分に相当するコイルエンド予定部を備える巻線に対し成形を行う巻線成形装置において、
互いに直交するX軸とY軸とZ軸を定義するときに、
前記Y軸方向について前記コイルエンド予定部に対し前記巻線の外側に配置される凹型と、
前記Y軸方向について前記コイルエンド予定部に対し前記巻線の内側に配置される凸型と、
前記凹型から前記凸型側に突出した状態で前記凹型に保持される板状の第1ブレードと、
前記凹型から前記凸型側に突出した状態で前記凹型に保持され、前記第1ブレードに対して前記Z軸方向の一方側に位置ずれした状態で前記X軸方向に配置される板状の第2ブレードと、を有し、
前記第1ブレードは前記Z軸方向の一方側の面に前記凹型側に向かうにつれて前記第1ブレードの前記Z軸方向の肉厚を徐々に増加させる第1テーパ面を備え、
前記第2ブレードは前記Z軸方向の他方側の面に前記凹型側に向かうにつれて前記第2ブレードの前記Z軸方向の肉厚を徐々に増加させる第2テーパ面を備えており、
前記Y軸方向について前記凹型と前記凸型とを接近させることにより、前記コイルエンド予定部を前記第1テーパ面と前記第2テーパ面に当接させながら前記凹型に接近させて前記コイルエンド予定部に前記Z軸方向の段差を成形するクランク成形と、前記コイルエンド予定部を前記Y軸方向に凸状に成形する凸成形と、を行うこと、
を特徴とする巻線成形装置。
ステータコアのスロットの内部に配置される部分に相当するスロット内予定部と前記スロットから突出する部分に相当するコイルエンド予定部を備える巻線に対し成形を行う巻線成形方法において、
互いに直交するX軸とY軸とZ軸を定義するときに、
前記Y軸方向について前記コイルエンド予定部に対し前記巻線の外側に配置される凹型と、
前記Y軸方向について前記コイルエンド予定部に対し前記巻線の内側に配置される凸型と、
前記凹型から前記凸型側に突出した状態で前記凹型に保持される板状の第1ブレードと、
前記凹型から前記凸型側に突出した状態で前記凹型に保持され、前記第1ブレードに対して前記Z軸方向の一方側に位置ずれした状態で前記X軸方向に配置される板状の第2ブレードと、を使用し、
前記第1ブレードは前記Z軸方向の一方側の面に前記凹型側に向かうにつれて前記第1ブレードの前記Z軸方向の肉厚を徐々に増加させる第1テーパ面を備え、
前記第2ブレードは前記Z軸方向の他方側の面に前記凹型側に向かうにつれて前記第2ブレードの前記Z軸方向の肉厚を徐々に増加させる第2テーパ面を備えており、
前記Y軸方向について前記凹型と前記凸型とを接近させることにより、前記コイルエンド予定部を前記第1テーパ面と前記第2テーパ面に当接させながら前記凹型に接近させて前記コイルエンド予定部に前記Z軸方向の段差を成形するクランク成形と、前記コイルエンド予定部を前記Y軸方向に凸状に成形する凸成形と、を行うこと、
を特徴とする巻線成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここでは、まず、最終的に製造されるコイルの構造および当該コイルの製造方法、さらに製造されたコイルを使用するステータについての全体的な概要について説明する。そして、その後、凸クランク成形工程で使用する巻線成形装置とその巻線成形方法について詳細に説明する。
【0023】
〔コイルの構造〕
まず、最終的に製造されるコイル1の構造について説明する。ここで、
図1はコイル1の外観斜視図であり、
図2はコイル1の正面図であり、
図3はコイル1の上面図である。なお、
図1において色付け部分は、後述する開き円弧成形工程にて平角導体10が変形する部分を示したものである。コイル1は、平角導体10からなるものである。ここで、平角導体10は、導電性の高い銅やアルミニウム等の金属を矩形断面のワイヤとして形成したものであり、その周囲はエナメル等の絶縁被覆材で覆われている。そして、この平角導体10に対してエッジワイズ曲げ加工やフラットワイズ曲げ加工を行って、コイル1を製造する。ここで、「エッジワイズ曲げ加工」とは、平角導体10の矩形断面における短辺側の一方の面を内径面とし他方の面を外径面として、当該平角導体10を短辺側方向に曲げて成形することである。また、「フラットワイズ曲げ加工」とは、平角導体10の矩形断面における長辺側の一方の面を内径面とし他方の面を外径面として、当該平角導体10を長辺側方向に曲げて成形することである。
【0024】
図1〜
図3に示すように、コイル1は、平角導体10を周状に巻きながら積層して成形されるものである。このコイル1は、隣り合う平角導体10の間に平角導体10の積層方向の隙間δを備える。この隙間δは、平角導体10が挿入できる大きさとしており、詳しくは、平角導体10の短辺幅分の大きさとしている。そして、コイル1は、端部12、端部14、スロット内配置部16、リード側コイルエンド配置部18、反リード側コイルエンド配置部20、折り曲げ部22などを備えている。
【0025】
ここで、スロット内配置部16は、コイル1をステータコア62(
図14参照)に配置するときにスロット66(
図14参照)の内部に配置される部分である。このスロット内配置部16は、
図1や
図2に示すように、図面の上下方向について直線形状に成形されている。
【0026】
また、リード側コイルエンド配置部18は、コイル1をステータコア62に配置するときにスロット66の外部に配置される部分である。このリード側コイルエンド配置部18は、
図1〜
図3に示すように、レーンチェンジ部24と、第1縁部26と、第2縁部28などを備えている。第1縁部26と第2縁部28は、各々、
図3に示すように、平角導体10の積層方向(
図3の上方向)に湾曲する円弧形状部分である。
【0027】
そして、
図3に示すように、レーンチェンジ部24は、リード側コイルエンド配置部18の略中央部(中央部またはその近傍)にて、平角導体10の積層方向(
図3の上下方向)について平角導体10の短辺幅分の大きさの段差からなるものである。なお、リード側コイルエンド配置部18における平角導体10の積層方向(
図3の上下方向)は、コイル1をステータコア62に配置するときのステータコア62の径方向となる。
【0028】
また、第1縁部26と第2縁部28は、
図1と
図2に示すように、各々、R形状部30を備える。このR形状部30は、第1縁部26とスロット内配置部16との接続側端部にてコイル1の周方向について円弧形状に形成され、第2縁部28とスロット内配置部16との接続側端部にてコイル1の周方向について円弧形状に形成される。なお、このリード側コイルエンド配置部18は、ステータコア62の軸方向の端面76(
図14参照)に対し、電源供給用のリード線(不図示)が接続される側に配置される。
【0029】
また、反リード側コイルエンド配置部20は、コイル1をステータコア62に配置するときにスロット66の外部に配置される部分である。この反リード側コイルエンド配置部20は、
図1〜
図3に示すように、レーンチェンジ部32と、第1縁部34と、第2縁部36などを備える。
【0030】
そして、
図2に示すように、レーンチェンジ部32は、反リード側コイルエンド配置部20の略中央部(中央部またはその近傍)にて、平角導体10の積層方向(
図2の上下方向)について平角導体10の短辺幅分の大きさの段差からなるものである。なお、反リード側コイルエンド配置部20における平角導体10の積層方向(
図2の上下方向)は、コイル1をステータコア62に配置するときのステータコア62の軸方向となる。
【0031】
また、折り曲げ部22は、コイル1を用いて環状のコイル籠64(
図14参照)を形成したときの当該コイル籠64の内側に向かって、反リード側コイルエンド配置部20がスロット内配置部16から突出させるために成形された部分である。そして、この折り曲げ部22を有することにより、リード側コイルエンド配置部18における平角導体10の積層方向と反リード側コイルエンド配置部20における平角導体10の積層方向とが直交する。
【0032】
このように、コイル1は、隣り合う平角導体10の間に隙間δを備える。そして、このコイル1は、リード側コイルエンド配置部18に平角導体10の短辺幅分の大きさの段差からなるレーンチェンジ部24を備え、反リード側コイルエンド配置部20に平角導体10の短辺幅分の大きさの段差からなるレーンチェンジ部32を備えている。これにより、詳しくは後述するように、ステータ60のコイルエンドの小型化を可能とする。
【0033】
〔コイルの製造方法〕
次に、以上のような構造のコイル1の製造方法の全体的な概要について説明する。コイル1の製造方法では、巻線工程、凸クランク成形工程、90°曲げ成形工程、開き円弧成形工程の順に行う。
【0034】
(巻線工程)
まず、巻線工程について説明する。巻線工程では、
図4と
図5に示すような形状の巻線38を成形する。このように成形された巻線38は、
図4と
図5に示すように、端部12と端部14を除いて、角丸長方形状(オーバル形状)に成形されている。そして、巻線38は、角丸長方形状に成形された部分において、直線形状のスロット内予定部40と、円弧形状のリード側コイルエンド予定部42と、円弧形状の反リード側コイルエンド予定部44とを備える。また、巻線38は、隣り合う平角導体10の間に隙間δを備える。この隙間δは、平角導体10が挿入できる大きさとし、詳しくは、平角導体10の短辺幅分の大きさとする。このように、巻線工程において、最終形状のコイル1に備わる隙間δが成形される。
【0035】
スロット内予定部40は、前記のコイル1のスロット内配置部16(
図1参照)に相当する部分である。そして、スロット内予定部40は、巻線38の周上にて、互いに対向するように1対備わる。
図4や
図5で示す例では、一例として、スロット内予定部40は合計5対備わる。
【0036】
また、リード側コイルエンド予定部42は、前記のコイル1のリード側コイルエンド配置部18(
図1参照)に相当する部分である。そして、リード側コイルエンド予定部42は、巻線38における周上にて、反リード側コイルエンド予定部44とともに互いに対向するように対をなす一対のコイルエンド予定部を構成する。
図4や
図5で示す例では、一例として、リード側コイルエンド予定部42は合計4つ備わる。そして、リード側コイルエンド予定部42の頂点部46は、平角導体10の積層方向(
図4の奥行き方向)について、巻線38の外周方向(
図4の上下方向)の位置が徐々に高くなっている。これにより、後述する90°曲げ成形工程による成形後において、頂点部46は、平角導体10の積層方向について、巻線38の外周方向の位置が同じ位置に揃う。
【0037】
ここで、リード側コイルエンド予定部42は、スロット内予定部40との接続側端部にてR形状予定部50を備える。このR形状予定部50は、コイル1のR形状部30(
図1、
図2参照)に相当する部分であり、巻線38の周方向について円弧形状に形成される部分である。そして、R形状予定部50は、その曲率がコイル1のR形状部30の曲率と等しくなるように成形されている。そして、本実施例では、この後の各工程を通じてR形状予定部50の曲率に変更を加えることなく、コイル1を製造する。
【0038】
また、反リード側コイルエンド予定部44は、前記のコイル1の反リード側コイルエンド配置部20(
図1参照)に相当する部分である。そして、反リード側コイルエンド予定部44は、巻線38における周上にて、リード側コイルエンド予定部42とともに互いに対向するように対をなす一対のコイルエンド予定部を構成する。
図4や
図5で示す例では、一例として、反リード側コイルエンド予定部44は合計5つ備わる。そして、反リード側コイルエンド予定部44の頂点部48は、平角導体10の積層方向(
図4の奥行き方向)について、巻線38の外周方向(
図4の上下方向)の位置が同じ位置に揃っている。このように、巻線工程から後述する各工程を通して、反リード側コイルエンド予定部44の頂点部48の位置を同じ位置に揃えるように管理することにより、最終形状のコイル1における反リード側コイルエンド配置部20の寸法精度が向上する。これにより、後述するコイル籠64の組み立て性が向上する。なお、巻線工程で使用する巻線装置の詳細については、後述する。
【0039】
(凸クランク成形工程)
次に、凸クランク成形工程について説明する。凸クランク成形工程では、巻線38を
図6と
図7に示すような形状に成形する。このように成形された巻線38は、
図6と
図7に示すように、リード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44が各々、巻線38の外周方向(
図6の上下方向)に突出する凸形状に成形される。なお、
図7に示すように、隣り合う平角導体10の間に備わる隙間δを維持している。
【0040】
リード側コイルエンド予定部42は、その略中央部(中央部またはその近傍)に凸部52を備え、この凸部52を挟んで両側に第1縁部26と第2縁部28を備えるように成形される。なお、リード側コイルエンド予定部42の頂点部46は、平角導体10の積層方向(
図6の奥行き方向)について、巻線38の外周方向(
図6の上下方向)の位置が徐々に高くなっている。
【0041】
また、反リード側コイルエンド予定部44は、その略中央部(中央部またはその近傍)に凸部54を備え、この凸部54を挟んで両側に第1縁部34と第2縁部36を備えるように成形される。なお、反リード側コイルエンド予定部44の頂点部48は、平角導体10の積層方向(
図6の奥行き方向)について、巻線38の外周方向(
図6の上下方向)の位置が同じ位置に揃っている。
【0042】
また、巻線38は、
図6と
図7に示すように、リード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44にて、各々、平角導体10の積層方向(
図7の上下方向)に平角導体10の短辺幅の大きさの段差からなるレーンチェンジ部24,32が成形される。そして、リード側コイルエンド予定部42にて、第1縁部26と第2縁部28との間にレーンチェンジ部24が成形される。また、反リード側コイルエンド予定部44にて、第1縁部34と第2縁部36との間にレーンチェンジ部32が成形される。なお、
図7に示すように、隣り合う平角導体10の間において隙間δを維持している。また、
図7に示すように、レーンチェンジ部24とレーンチェンジ部32とは互いに反対方向に成形されている。このように、凸クランク成形工程において、最終形状のコイル1に備わるレーンチェンジ部24とレーンチェンジ部32とが成形される。
【0043】
(90°曲げ成形工程)
次に、90°曲げ成形工程について説明する。90°曲げ成形工程では、巻線38を
図8と
図9に示すような形状に成形する。このように成形された巻線38は、
図8と
図9に示すように、リード側コイルエンド予定部42での平角導体10の積層方向と反リード側コイルエンド予定部44での平角導体10の積層方向とが直交するように成形される。そして、リード側コイルエンド予定部42の頂点部46は、平角導体10の積層方向(
図8の奥行方向、
図9の上下方向)について、巻線38の外周方向(
図8の上下方向)の位置が同じ位置に揃っている。
【0044】
このように、90°曲げ成形工程を行うことにより、最終形状のコイル1において、スロット内配置部16やリード側コイルエンド配置部18での平角導体10の積層方向と反リード側コイルエンド配置部20での平角導体10の積層方向とが直交するように成形される。
【0045】
(開き円弧成形工程)
次に、開き円弧成形工程について説明する。開き円弧成形工程は、開き成形工程と円弧成形工程とを同時に行う工程である。開き円弧成形工程では、巻線38の周上における一対のスロット内予定部40の間隔が平角導体10の積層方向について徐々に広くなるように成形する開き成形を行う。すなわち、前記の
図3に示すように、コイル1の周上における一対のスロット内配置部16の間隔L1〜L5が平角導体10の積層方向(
図3の上方向)に沿って、間隔L1,L2,L3,L4,L5の順に徐々に広くなるように成形される。これにより、スロット内配置部16をステータ60(
図14参照)の径方向に放射状に形成されるスロット66(
図14参照)内に確実に配置できる。
【0046】
また、同時に、リード側コイルエンド予定部42の第1縁部26と第2縁部28を、平角導体10の積層方向に湾曲する円弧形状に成形する円弧成形を行う。これにより、前記の
図3に示すように、リード側コイルエンド配置部18の第1縁部26と第2縁部28が、平角導体10の積層方向(
図3の上方向)に湾曲する円弧形状に成形される。そして、第1縁部26と第2縁部28を円弧形状に成形することにより、リード側コイルエンド配置部18をステータ60(
図14参照)の周方向に沿って配置することができる。
【0047】
以上のようにして、前記の
図1〜
図3に示すコイル1を製造することができる。
【0048】
〔ステータの製造方法〕
次に、以上のように製造されたコイル1を使用したステータ60の製造方法について説明する。ここで、
図10はステータコア62に配置するために追加工した後のコイル1の正面図であり、
図11はステータコア62に配置するために追加工した後のコイル1の上面図である。また、
図12はコイル籠64において隣り合う2本のコイル1A,1Bを抜き出して示した正面図であり、
図13はコイル籠64において隣り合う2本のコイル1A,1Bを抜き出して示した上面図である。そして、
図14はコイル籠64の一部がステータコア62に挿入される様子を表した斜視図であり、
図15はステータ60の斜視図である。
【0049】
まず、コイル1をステータコア62に配置するために、コイル1に対し追加工を行い、コイル1を
図10と
図11に示すような形状に成形する。具体的には、コイル1の一方の端部12に渡し部68とリード部70を備え、コイル1の他方の端部14に渡し部72と接合部74を備えるように成形する。次に、このように成形したコイル1を複数重ねてコイル籠64を形成する。次に、
図14に示すように、ステータコア62の軸方向からコイル籠64をスロット66に配置するようにしてステータコア62に配置する。以上により、
図15に示すようなステータ60を製造する。
【0050】
ここで、コイル籠64において隣り合う2本のコイル1A,1Bを抜き出して示した図を
図12と
図13に示す。
図12と
図13に示すように、2本のコイル1A,1Bは、お互いの隙間δに入るように噛み合って組み合わされている。そして、リード側のレーンチェンジ部24A,24Bが隣り合うように配置され、また、反リード側のレーンチェンジ部32A,32Bが隣り合うように配置されている。このように、レーンチェンジ部24A,24Bとレーンチェンジ部32A,32Bは、各々、一本の平角導体10をかわすようにして配置されている。
【0051】
このように、コイル1を使用してステータ60を製造するときには、隣り合う2本のコイル1A,1Bについて、一方のコイル1Aにおける隣り合う平角導体10の間の隙間δに他方のコイル1Bの平角導体10を挿入することができる。これにより、コイル1Aの平角導体10とコイル1Bの平角導体10とを交互に配置することができる。さらに、一方のコイル1Aのリード側コイルエンド配置部18と反リード側コイルエンド配置部20に備わるレーンチェンジ部24,32により、他方のコイル1Bの1本の平角導体10の幅をかわすことができる。そのため、前記の従来技術のように複数の導体の幅をレーンチェンジ部でかわす必要がなく、複数の導体の幅分のレーンチェンジ部をステータコア62の軸方向に逃がす必要はない。したがって、ステータ60のコイルエンドの軸方向の高さを短縮できる。以上のようにして、ステータ60におけるコイルエンドの小型化を図ることができる。また、同形状のコイル1を複数使用してステータ60を製造することができるので、ステータ60の組み立て性がよい。
【0052】
〔巻線成形装置および巻線成形方法〕
次に、前記の凸クランク成形工程において使用する巻線成形装置80と、その巻線成形方法について、詳しく説明する。まず、巻線成形装置80の構成について説明する。
【0053】
巻線成形装置80は、
図16〜
図19に示すように、リード側凹型82、ブレード84、リード側凸型86、側面ガイド88、反リード側凹型90、内側ブレード92、外側ブレード94、反リード側凸型96、側面ガイド98などの構成部品を有する。また、巻線成形装置80は、これらの構成部品の駆動を制御する制御部(不図示)を有する。また、巻線38は、そのスロット内予定部40にてキャリア100に保持されている。このキャリア100は、巻線工程、凸クランク成形工程、90°曲げ成形工程、開き円弧成形工程の各工程で使用する装置間にて巻線38を搬送する役割も担っている。なお、
図16は、側面ガイド88や側面ガイド98などを省略して一部を簡略化して示している。また、
図17は、巻線成形装置80の上面図であるが、リード側凹型82の一部を透視図として示している。また、以下の説明において、
図16に示すように、互いに直交するX軸とY軸とZ軸を定義する。
【0054】
リード側凹型82は、
図16に示すように、リード側凸型86とともにY軸方向に配列されている。そして、リード側凹型82は、
図20〜
図22に示すように、凹状壁102、穴104などを備える。凹状壁102は、リード側凸型86が配置される側とは反対側(
図20の紙面奥側)に凹んだ形状となっている。そして、複数の凹状壁102が、
図21に示すように、階段状に配置されている。ここでは一例として、凹状壁102は4つ設けられている。穴104は、横長形状であり、
図20に示すように、リード側凹型82の左右に設けられている。
図20では、一例として、穴104は左側に5つ設けられ、右側に4つ設けられている。また、穴104は、板状のブレード84を保持する穴である。
【0055】
ここで、巻線成形装置80は、ブレード84として、
図23に示すように、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bと第3ブレード84Cを備えている。そして、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bと第3ブレード84Cは、一部が穴104に挿入されることにより、リード側凹型82からリード側凸型86側に突出した状態で、リード側凹型82に保持されている。
【0056】
ここでは一例として、
図23に示すように、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bは各々合計4つ設けられ、第3ブレード84Cは1つ設けられている。そして、4つの第1ブレード84Aと4つの第2ブレード84Bは、Z軸方向(
図23の上下方向)について、各々、平角導体10の幅(詳しくは、平角導体10の短辺幅)の大きさの隙間を空けながら、設けられている。また、1つの第1ブレード84Aと1つの第2ブレード84Bからなる一対のブレード106(
図23参照)において、第2ブレード84Bは、第1ブレード84Aに対して、Z軸方向の一方側(
図23の上側)に位置ずれした状態でX軸方向(
図23の左方向)に配置されている。また、第3ブレード84Cは、4つの第2ブレード84BのZ軸方向の他方側(
図23の下側)に配置されている。
【0057】
なお、前記の
図18に示すように、4つの第2ブレード84BはY軸方向(
図18の左右方向)の長さが各々異なっている。詳しくは、
図18の上側から下側に向かうにしたがって、第2ブレード84BのY軸方向の長さが徐々に小さくなっている。また、4つの第1ブレード84Aについても、同様に、Y軸方向の長さが各々異なっている。
【0058】
ここで、第1ブレード84Aは、
図23〜
図25に示すように、Z軸方向の一方側(
図23の上側)の面108AとZ軸方向の他方側(
図23の下側)の面110Aを備えている。そして、第1ブレード84Aは、その面108Aにて、平面112A(第1平面の一例)、テーパ面114A(第1テーパ面の一例)、平面116Aなどを備えている。ここで、平面112Aと平面116Aは、
図16で定義したXY軸面に沿って設けられている。また、テーパ面114Aは、Y軸方向(
図25の左右方向)についてリード側凹型82側(
図25の右側)に向かうにつれて、第1ブレード84AのZ軸方向(
図25の上
下方向)の肉厚を徐々に増加させるように設けられている。なお、平面112Aは、テーパ面114Aよりもリード側凹型82側に設けられている。
【0059】
また、第1ブレード84Aは、そのY軸方向の先端118Aにて、面取り部120Aを備えている。この面取り部120Aは、リード側凹型82におけるX軸方向の中央部側から端部側に向かうにつれてリード側凸型86が配置される側へ突出するように設けられている。
【0060】
また、第2ブレード84Bは、
図23と
図26と
図27に示すように、Z軸方向の一方側(
図23の上側)の面108BとZ軸方向の他方側(
図23の下側)の面110Bを備えている。そして、第2ブレード84Bは、その面110Bにて、平面112B(第2平面の一例)、テーパ面114B(第2テーパ面の一例)、平面116Bなどを備えている。ここで、平面112Bと平面116Bは、
図16で定義したXY軸面に沿って設けられている。また、テーパ面114Bは、Y軸方向(
図27の左右方向)についてリード側凹型82側(
図27の右側)に向かうにつれて、第2ブレード84BのZ軸方向(
図27の上下方向)の肉厚を徐々に増加させるように設けられている。なお、平面112Bは、テーパ面114Bよりもリード側凹型82側に設けられている。
【0061】
また、第2ブレード84Bは、そのY軸方向の先端118Bにて、面取り部120Bを備えている。この面取り部120Bは、リード側凹型82におけるX軸方向の中央部側から端部側に向かうにつれてリード側凸型86が配置される側へ突出するように設けられている。
【0062】
また、第3ブレード84Cは、
図29に示すように、板厚が均一に成形されている。そして、第3ブレード84Cは、
図28に示すように、そのY軸方向の先端118Cにて、面取り部120Cを備えている。
【0063】
リード側凸型86は、
図16に示すように、リード側凹型82とともにY軸方向に配列されている。そして、
図30〜
図32に示すように、凸状壁124、穴126、溝127などを備える。凸状壁124は、リード側凹型82が配置される側(
図30の右側)に突出した形状となっている。そして、複数の凸状壁124が、
図31に示すように、階段状に配置されている。ここでは一例として、凸状壁124は4つ設けられている。また、穴126は、成形時にブレード84が挿入される穴である。さらに、溝127は、成形時にブレード84が挿入される溝である。
【0064】
側面ガイド88は、前記の
図17に示すように、リード側凹型82の両側に配置されている。
【0065】
反リード側凹型90は、
図16に示すように、反リード側凸型96とともにY軸方向に配列されている。そして、反リード側凹型90は、
図33と
図34に示すように、凹状壁128、穴130などを備える。凹状壁128は、反リード側凸型96が配置される側とは反対側(
図34の紙面奥側)に凹んだ形状となっている。穴130は、横長形状であり、
図34に示すように、反リード側凹型90の左右に設けられている。
図34では、一例として、穴130は左右に6つずつ設けられている。また、穴130は、板状の内側ブレード92と板状の外側ブレード94を保持する穴である。
【0066】
ここで、巻線成形装置80は、内側ブレード92として、
図35に示すように、第1ブレード92Aと第2ブレード92Bと第3ブレード92Cを備えている。そして、第1ブレード92Aと第2ブレード92Bと第3ブレード92Cは、一部が穴130に挿入されることにより、反リード側凹型90から反リード側凸型96側に突出した状態で、反リード側凹型90に保持されている。
【0067】
ここでは一例として、
図35に示すように、第1ブレード92Aと第2ブレード92Bは各々合計5つ設けられ、第3ブレード92Cは合計2つ設けられている。そして、5つの第1ブレード92Aと5つの第2ブレード92Bは、Z軸方向(
図35の上下方向)について、各々、平角導体10の幅(詳しくは、平角導体10の短辺幅)の大きさの隙間を空けながら、設けられている。また、1つの第1ブレード92Aと1つの第2ブレード92Bからなる一対のブレード132(
図35参照)において、第2ブレード92Bは、第1ブレード92Aに対して、Z軸方向の一方側(
図35の上側)に位置ずれした状態でX軸方向(
図35の左方向)に配置されている。また、第3ブレード92Cは、5つの第1ブレード92AのZ軸方向の一方側(
図35の上側)と、5つの第2ブレード92BのZ軸方向の他方側(
図35の下側)に、各々、配置されている。
【0068】
そして、第1ブレード92Aは、
図35〜
図37に示すように、Z軸方向の一方側(
図35の上側)の面134AとZ軸方向の他方側(
図35の下側)の面136Aを備えている。そして、第1ブレード92Aは、その面134Aにて、平面138A(第1平面の一例)、テーパ面140A(第1テーパ面の一例)などを備えている。ここで、平面138Aは、
図16で定義したXY軸面に沿って設けられている。また、テーパ面140Aは、Y軸方向(
図37の左右方向)について反リード側凹型90側(
図37の左側)に向かうにつれて、第1ブレード92AのZ軸方向(
図37の上下方向)の肉厚を徐々に増加させるように設けられている。なお、平面138Aは、テーパ面140Aよりも反リード側凹型90側に設けられている。
【0069】
また、第1ブレード92Aは、そのY軸方向の先端142Aにて、面取り部144Aを備えている。この面取り部144Aは、反リード側凹型90におけるX軸方向の中央部側から端部側に向かうにつれて反リード側凸型96が配置される側へ突出するように設けられている。
【0070】
また、第2ブレード92Bは、
図35と
図38と
図39に示すように、Z軸方向の一方側(
図35の上側)の面134BとZ軸方向の他方側(
図35の下側)の面136Bを備えている。そして、第2ブレード92Bは、その面136Bにて、平面138B(第2平面の一例)、テーパ面140B(第2テーパ面の一例)などを備えている。ここで、平面138Bは、
図16で定義したXY軸面に沿って設けられている。また、テーパ面140Bは、Y軸方向(
図39の左右方向)について反リード側凹型90側(
図39の左側)に向かうにつれて、第2ブレード92BのZ軸方向(
図39の上下方向)の肉厚を徐々に増加させるように設けられている。なお、平面138Bは、テーパ面140Bよりも反リード側凹型90側に設けられている。
【0071】
また、第2ブレード92Bは、そのY軸方向の先端142Bにて、面取り部144Bを備えている。この面取り部144Bは、反リード側凹型90におけるX軸方向の中央部側から端部側に向かうにつれて反リード側凸型96が配置される側へ突出するように設けられている。
【0072】
また、第3ブレード92Cは、
図41に示すように、板厚が均一に成形されている。そして、第3ブレード92Cは、
図40に示すように、そのY軸方向の先端142Cにて、面取り部144Cを備えている。
【0073】
反リード側凸型96は、
図16に示すように、反リード側凹型90とともにY軸方向に配列されている。そして、
図42と
図43に示すように、凸状壁148、穴150などを備える。凸状壁148は、反リード側凹型90が配置される側(
図42の左側)に突出した形状となっている。また、穴150は、成形時に内側ブレード92が挿入される穴である。
【0074】
側面ガイド98は、前記の
図17に示すように、反リード側凹型90の両側に配置されている。
【0075】
次に、このような構成の巻線成形装置80を使用した巻線成形方法について説明する。巻線成形装置80を使用した巻線成形方法では、リード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44に対し、凸成形とクランク成形を一括して行う。
【0076】
まず、反リード側コイルエンド予定部44を成形する。そこで、まず、反リード側凹型90をY軸方向について反リード側凸型96に向かって移動させていき、Y軸方向について反リード側凹型90と反リード側凸型96を接近させていく。なお、ここでは反リード側凸型96は固定された状態としている。すると、
図44に示すように、反リード側コイルエンド予定部44が、第1ブレード92Aの先端142Aと、第2ブレード92Bの先端142Bと、第3ブレード92Cの先端142Cに達する。このとき、第1ブレード92Aは面取り部144A(
図36参照)を備え、第2ブレード92Bは面取り部144B(
図38参照)を備え、第3ブレード92Cは面取り部144C(
図40参照)を備えている。これにより、第1ブレード92Aと第2ブレード92Bと第3ブレード92Cは、反リード側コイルエンド予定部44におけるX軸方向(
図44の上下方向)の外側から内側の順に徐々に巻線38の内側に挿入される。
【0077】
次に、
図45に示すように、さらにY軸方向について反リード側凹型90と反リード側凸型96を接近させていく。すると、反リード側コイルエンド予定部44が第1ブレード92Aのテーパ面140A(
図36参照)と第2ブレード92Bのテーパ面140B(
図38参照)に達する。なお、このとき、第1ブレード92Aや第2ブレード92Bや第3ブレード92Cや外側ブレード94は、反リード側凸型96の穴150(
図43参照)に挿入される。また、このとき、反リード側コイルエンド予定部44におけるX軸方向の両側(
図45の上側と下側)が側面ガイド98に当接するので、反リード側コイルエンド予定部44の位置が安定する。
【0078】
次に、さらにY軸方向について反リード側凹型90と反リード側凸型96を接近させていく。すると、
図46に示すように、反リード側コイルエンド予定部44をテーパ面140Aとテーパ面140Bに当接させながら反リード側凹型90に接近させる。これにより、反リード側コイルエンド予定部44にZ軸方向の段差(すなわち、レーンチェンジ部32)を成形するクランク成形を行う。そして、このとき、5本設けられている反リード側コイルエンド予定部44に対し、同時にクランク成形を行う。そして、クランク成形が終わると、反リード側コイルエンド予定部44は
図47に示すように成形される。
【0079】
次に、さらに、Y軸方向について反リード側凹型90と反リード側凸型96を接近させていく。すると、
図48と
図49に示すように、反リード側コイルエンド予定部44に対し反リード側凹型90と反リード側凸型96によりプレス加工を行う。このとき、反リード側コイルエンド予定部44を、第1ブレード92Aの平面138A(
図36参照)と、第2ブレード92Bの平面138B(
図38参照)と、第3ブレード92Cの面134Cと面136C(
図41参照)に当接させておく。これにより、反リード側コイルエンド予定部44をY軸方向に凸状に成形する凸成形を行う。そして、このとき、5本設けられている反リード側コイルエンド予定部44に対し、同時に凸成形を行う。
【0080】
このように、Y軸方向について反リード側凹型90と反リード側凸型96とを接近させることにより、反リード側コイルエンド予定部44にZ軸方向(平角導体10の積層方向)の段差を成形するクランク成形を行った後に、反リード側コイルエンド予定部44をY軸方向(巻線38の外周方向)に凸状に成形する凸成形を行う。これにより、反リード側コイルエンド予定部44の凸クランク成形が完了する。このとき、巻線成形装置80は
図50に示すようになる。
【0081】
次に、リード側コイルエンド予定部42を成形する。そこで、まず、リード側凹型82をY軸方向についてリード側凸型86に向かって移動させていき、リード側凸型86をY軸方向についてリード側凹型82に向かって移動させていき、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86を接近させていく。すると、
図51に示すように、リード側コイルエンド予定部42が、第1ブレード84Aの先端118Aと、第2ブレード84Bの先端118Bと、第3ブレード84Cの先端118Cに達する。このとき、第1ブレード84Aは面取り部120A(
図24参照)を備え、第2ブレード84Bは面取り部120B(
図26参照)を備え、第3ブレード84Cは面取り部120C(
図28参照)を備えている。これにより、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bと第3ブレード84Cは、リード側コイルエンド予定部42におけるX軸方向(
図51の上下方向)の外側から内側の順に徐々に巻線38の内側に挿入される。
【0082】
次に、
図52に示すように、さらに、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86を接近させていく。すると、リード側コイルエンド予定部42が第1ブレード84Aのテーパ面114A(
図24参照)と第2ブレード84Bのテーパ面114B(
図26参照)に達する。なお、このとき、第1ブレード84Aや第2ブレード84Bや第3ブレード84Cは、リード側凸型86の穴126や溝127(
図32参照)に挿入される。また、このとき、リード側コイルエンド予定部42におけるX軸方向の両側(
図52の上側と下側)が側面ガイド88に当接するので、リード側コイルエンド予定部42の位置が安定する。
【0083】
次に、さらにY軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86を接近させていく。すると、
図53に示すように、リード側コイルエンド予定部42をテーパ面114Aとテーパ面114Bに当接させながらリード側凹型82に接近させる。これにより、リード側コイルエンド予定部42にZ軸方向の段差(すなわち、レーンチェンジ部24)を成形するクランク成形を行う。そして、このとき、4本設けられているリード側コイルエンド予定部42に対し、同時にクランク成形を行う。そして、クランク成形が終わると、リード側コイルエンド予定部42は
図54に示すように成形される。
【0084】
次に、さらに、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86を接近させていく。すると、
図55と
図56に示すように、リード側コイルエンド予定部42に対しリード側凹型82とリード側凸型86によりプレス加工を行う。このとき、リード側コイルエンド予定部42を、第1ブレード84Aの平面112A(
図24参照)と、第2ブレード84Bの平面112B(
図26参照)と、第3ブレード84Cの面108Cと面110C(
図29参照)に当接させておく。これにより、リード側コイルエンド予定部42をY軸方向に凸状に成形する凸成形を行う。そして、このとき、4本設けられているリード側コイルエンド予定部42に対し、同時に凸成形を行う。
【0085】
このように、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86とを接近させることにより、リード側コイルエンド予定部42にZ軸方向(平角導体10の積層方向)の段差を成形するクランク成形を行った後に、リード側コイルエンド予定部42をY軸方向(巻線38の外周方向)に凸状に成形する凸成形を行う。これにより、リード側コイルエンド予定部42の凸クランク成形が完了する。このとき、巻線成形装置80は
図57に示すようになる。
【0086】
次に、
図58に示すように、反リード側凸型96を固定させた状態のままで、反リード側凹型90をY軸方向について反リード側コイルエンド予定部44から退避させる。次に、
図59に示すように、反リード側凸型96を固定させた状態のままで、リード側凹型82とリード側凸型86をY軸方向についてリード側コイルエンド予定部42から退避させる。このように、反リード側凸型96を固定させた状態のままで、反リード側凹型90を退避させ、さらに、リード側凹型82とリード側凸型86を退避させることにより、巻線38が所定の位置からずれることを防止できる。
【0087】
〔本実施例の効果〕
以上のような本実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。本実施例の巻線成形装置80は、凸クランク成形工程において、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86とを接近させる。これにより、リード側コイルエンド予定部42を第1ブレード84Aのテーパ面114Aと第2ブレード84Bのテーパ面114Bに当接させながらリード側凹型82に接近させて、リード側コイルエンド予定部42にZ軸方向の段差(すなわち、レーンチェンジ部24)を成形するクランク成形を行う。また、リード側コイルエンド予定部42をY軸方向に凸状に成形する凸成形を行う。そして、反リード側コイルエンド予定部44に対しても、同様にクランク成形と凸成形を行う。このように、リード側コイルエンド予定部42や反リード側コイルエンド予定部44に対して、巻線成形装置80は、クランク成形と凸成形を一括して行うことができる。そのため、巻線38の成形に要する工程数を減らして巻線38の成形コストを低減させることができる。
【0088】
また、第1ブレード84Aは、Z軸方向の一方側の面108Aにてテーパ面114Aよりもリード側凹型82側の位置にXY軸面に沿って成形される平面112Aを備えている。さらに、第2ブレード84Bは、Z軸方向の他方側の面108Bにてテーパ面114Bよりもリード側凹型82側の位置にXY軸面に沿って成形される平面112Bを備えている。そして、このようにして、巻線成形装置80は、まず、リード側コイルエンド予定部42をテーパ面114Aとテーパ面114Bに当接させながらリード側コイルエンド予定部42に対しクランク成形を行う。そして、その後に、リード側コイルエンド予定部42を平面112Aと平面112Bに当接させながらリード側コイルエンド予定部42に対し凸成形を行う。これにより、リード側コイルエンド予定部42に確実にZ軸方向の段差(すなわち、レーンチェンジ部24)を成形した後、リード側コイルエンド予定部42を確実にY軸方向に凸状に成形することができる。なお、反リード側コイルエンド予定部44に対しても、同様に、クランク成形を行った後に凸成形を行うので、反リード側コイルエンド予定部44に確実にZ軸方向の段差(すなわち、レーンチェンジ部32)を成形した後、反リード側コイルエンド予定部44を確実にY軸方向に凸状に成形することができる。これにより、成形後の巻線38の形状の精度を確保することができる。
【0089】
また、巻線38は、平角導体10が周状に巻かれつつ隣り合う平角導体10の間に平角導体10の幅の大きさの隙間δを備えるように積層して成形されている。そして、リード側凹型82において、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bは、各々、Z軸方向について隙間δを空けながら複数設けられている。また、反リード側凹型90において、第1ブレード92Aと第2ブレード92Bは、各々、Z軸方向について(隙間δと同じ大きさの)隙間を空けながら複数設けられている。これにより、巻線38において、積層した複数のリード側コイルエンド予定部42や複数の反リード側コイルエンド予定部44に対し、一括してクランク成形と凸成形を行うことができる。そのため、複数回巻かれた巻線38の成形に要する工程数をより効果的に減らして、巻線38の成形コストをより顕著に低減させることができる。
【0090】
また、リード側凹型82に保持される第1ブレード84Aはリード側凸型86が配置される側の先端118Aに面取り部120Aを備え、リード側凹型82に保持される第2ブレード84Bはリード側凸型86が配置される側の先端118Bに面取り部120Bを備える。そして、面取り部120Aと面取り部120Bは、リード側凹型82におけるX軸方向の中央部側から端部側に向かうにつれてリード側凸型86が配置される側へ突出するように設けられている。これにより、Y軸方向についてリード側凹型82とリード側凸型86を接近させて第1ブレード84Aと第2ブレード84Bをリード側コイルエンド予定部42に接近させるときに、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bはリード側コイルエンド予定部42におけるX軸方向の外側から内側の順に徐々に巻線38の内側に挿入される。そのため、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bを滑らかに巻線38の内側に挿入することができる。したがって、第1ブレード84Aと第2ブレード84Bの保護を図ることができる。また、確実にリード側コイルエンド予定部42に対してクランク成形と凸成形を行うことができるので、成形後の巻線38の形状の精度が向上する。なお、反リード側凹型90に保持される内側ブレード92や外側ブレード94も同様に、反リード側凸型96が配置される側の先端に面取り部(面取り部144Aや面取り部144Bや面取り部144Cなど)を備えているので、同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、反リード側コイルエンド予定部44に対してクランク成形と凸成形を行った後に、リード側コイルエンド予定部42に対してクランク成形と凸成形を行っている。これにより、クランク成形と凸成形を先に行った反リード側コイルエンド予定部44の位置を基準として、リード側コイルエンド予定部42に対してクランク成形と凸成形を行うことができる。これにより、リード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44の寸法精度のばらつきを抑制できる。
【0092】
また、リード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44に対してクランク成形と凸成形を行った後、反リード側凸型96を固定させた状態で、まず、反リード側凹型90を反リード側コイルエンド予定部44から退避させる。次に、反リード側凸型96を固定させた状態で、リード側凹型82とリード側凸型86をリード側コイルエンド予定部42から退避させる。これにより、反リード側凹型90を反リード側コイルエンド予定部44から退避させるときや、リード側凹型82とリード側凸型86をコイルエンド予定部42から退避させるときに、反リード側凸型96により巻線38の位置決めがなされる。そのため、退避する型にリード側コイルエンド予定部42と反リード側コイルエンド予定部44が引き摺られないので、巻線38が移動しない。したがって、成形後の巻線38の位置精度が確保される。
【0093】
また、反リード側凹型90に保持されるブレードは、内側ブレード92と外側ブレード94に分割されており、反リード側凸型96の穴150に内側ブレード92だけが挿入されるようにしている。これにより、反リード側凸型96の穴150の幅を出来るだけ小さくできる。そのため、反リード側凸型96の強度を確保することができる。
【0094】
なお、上記の実施例では、反リード側凸型96を固定したが、代わりにリード側凸型86を固定してもよい。
【0095】
〔変形例〕
なお、上記の各工程は順序を変更してもよい。例えば、変形例として、巻線工程、90°曲げ成形工程、凸クランク成形工程、円弧開き成形工程の順に行う例も考えられる。また、その他の変形例として、巻線工程、90°曲げ成形工程、円弧開き成形工程、凸クランク成形工程の順に行う例も考えられる。
【0096】
また、その他の変形例として、開き成形工程と円弧成形工程とを別に行うことも考えられる。例えば、巻線工程、凸クランク成形工程、円弧成形工程、90°曲げ成形工程、開き成形工程の順に行うことが考えられる。
【0097】
さらに、その他の変形例として、90°曲げ成形工程を行わない例も考えられる。このように90°曲げ成形工程を行わない例により製造されたコイル2は、
図60〜
図62に示すように、前記のコイル1に対して、折り曲げ部22を有さず、反リード側コイルエンド配置部20の第1縁部34と第2縁部36も各々円弧形状に成形されている点が異なる。なお、
図60はコイル2の外観斜視図であり、
図61はコイル2の正面図であり、
図62はコイル2の上面図である。
【0098】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。