(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
実施の形態1.
[画像形成装置の構成]
図1は、実施の形態1における定着装置100を有する画像形成装置1の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置1は、印刷媒体上の現像剤像を定着装置100により定着して画像を形成する装置である。具体的には、画像形成装置1は、電子写真方式の印刷装置であり、例えば、複写機、プリンタ、複合機(MFP)、ファクシミリである。画像形成装置1は、
図1の例ではカラー画像を形成するものであるが、単色の画像を形成するものであってもよい。
【0011】
画像形成装置1は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の画像を形成する画像形成部10K,10Y,10M,10Cを有する。画像形成部10K,10Y,10M,10Cは、それぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の画像情報に応じて各色の現像剤像を形成する。
【0012】
画像形成部10Kは、静電潜像担持体としての感光体ドラム11K、帯電装置12K、露光装置13K、現像装置(または現像剤供給装置)14K、およびクリーニング装置15K等を有する。感光体ドラム11Kは、静電潜像を担持する部材であり、所定の回転方向(
図1の矢印A1方向)に回転する。帯電装置12K、露光装置13K、現像装置14K、およびクリーニング装置15Kは、感光体ドラム11Kの回転方向A1に沿って順に配置される。帯電装置12Kは、感光体ドラム11Kの表面に電荷を与え、当該表面を一様に帯電させる。露光装置13Kは、帯電された感光体ドラム11Kの表面に、画像情報に応じた露光光を照射して静電潜像を形成する。現像装置14Kは、感光体ドラム11Kに形成された静電潜像を現像剤により現像して現像剤像を形成する装置であり、感光体ドラム11Kに現像剤を供給する現像ローラ14aを有する。クリーニング装置15Kは、後述する転写領域を通過した後の感光体ドラム11Kの表面に残留した現像剤を除去する。なお、静電潜像担持体は、ドラム状に限られず、例えばベルト状であってもよい。
【0013】
画像形成部10Kと同様に、画像形成部10Y,10M,10Cは、それぞれ、感光体ドラム11Y,11M,11C、帯電装置12Y,12M,12C、露光装置13Y,13M,13C、現像装置14Y,14M,14C、およびクリーニング装置15Y,15M,15C等を有する。なお、画像形成部10Y,10M,10Cの構成については、画像形成部10Kと同様であるので、説明を省略する。
【0014】
画像形成装置1は、画像形成部10K,10Y,10M,10Cに印刷媒体Pを供給するための給紙機構20を有する。給紙機構20は、現像剤像が形成される媒体である印刷媒体Pを保持する給紙カセット21を有する。また、給紙機構20は、給紙カセット21内の印刷媒体Pを1枚ずつ分離して搬送する機構を有する。具体的には、給紙機構20は、給紙カセット21に積載された用紙等の印刷媒体Pを1枚ずつ取り出すピックアップローラ22と、給紙カセット21から取り出された印刷媒体Pを、画像形成部における画像形成のタイミングにあわせて送り出すレジストローラ23と、レジストローラ23により送り出された印刷媒体Pを後述する転写領域に向けて搬送する媒体搬送用ローラ24,25とを備える。
【0015】
また、画像形成装置1は、画像形成部10K,10Y,10M,10Cにより形成された現像剤像を印刷媒体P上に転写する転写装置30を有する。転写装置30は、各画像形成部10K,10Y,10M,10Cに対向して配置され、各画像形成部10K,10Y,10M,10Cとの間で転写領域を形成するベルト式の転写装置である。転写装置30は、無端状(エンドレス)の転写媒体としての転写ベルト31と、転写ベルト31を駆動するドライブローラとしての転写媒体張架ローラ32と、転写ベルト31に張力を付与するテンションローラとしての転写媒体張架ローラ33と、転写ローラ34K,34Y,34M,34Cとを有する。転写ベルト31は、給紙機構20からの印刷媒体Pを搬送する部材であり、転写媒体張架ローラ32および33によって走行自在に張架される。転写ベルト31は、その表面で印刷媒体Pを保持するとともに、転写媒体張架ローラ32の回転によって所定の走行方向(
図1の矢印A2方向)に走行し、画像形成部10K,10Y,10M,10Cに沿って印刷媒体Pを搬送する。転写ローラ34K,34Y,34M,34Cは、それぞれ、感光体ドラム11K,11Y,11M,11Cに形成された現像剤像を印刷媒体Pに転写するための部材であり、転写ベルト31を挟んで感光体ドラム11K,11Y,11M,11Cと対向するように配置される。感光体ドラム11K,11Y,11M,11Cと転写ベルト31との間には、現像剤像が印刷媒体Pに転写される領域である転写領域が形成される。
【0016】
さらに、画像形成装置1は、転写装置30により印刷媒体P上に転写された現像剤を定着する定着装置100を有する。この定着装置100については、後に詳しく説明する。
【0017】
定着装置100の印刷媒体Pの搬送方向下流側には、定着装置100により現像剤像の定着が行われた印刷媒体Pを搬送する媒体搬送用ローラ51と、媒体搬送用ローラ51からの印刷後の印刷媒体Pが排出される印刷媒体排出口52と、印刷媒体排出口52から排出された印刷後の印刷媒体Pを積載する排紙積載部53とが配置される。
【0018】
[定着装置の構成]
図2は、実施の形態1における定着装置100の構成を示す概略断面図である。
図2において、定着装置100は、定着部材としてのベルト(または定着ベルト)110、発熱部材としてのヒータ120、熱伝達部材130、弾性部材としてのばね140、第1のローラとしての定着ローラ150、加圧部材としての加圧パッド160、第2のローラとしての加圧ローラ170、および温度センサ180を有する。
【0019】
ベルト110は、所定の移動方向(または搬送方向、
図2の矢印A3方向)に移動する無端状の部材であり、印刷媒体P上の現像剤像Dを加熱して溶融するための部材である。ベルト110は、定着ローラ150、熱伝達部材130、および定着装置100の本体フレーム100aに固定された支持部材190に設置されたガイド部材191により張架され、これらの周りを回転移動する。ベルト110は、その移動方向および厚さ方向と直交する方向に幅を有し、ベルト110の幅方向である長手方向の位置は、図示せぬフランジ部により規制される。ベルト110は、例えば、その内面を構成するポリイミドの基材と、当該基材の外周に形成されるシリコーンゴムによる弾性層と、当該弾性層の外周に形成される表層であるPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブとを有する。なお、以下の説明では、ベルト110の移動方向を「ベルト移動方向」と称する。
【0020】
ヒータ120は、発熱部を有し、被加熱体であるベルト110を加熱するための部材である。発熱部は、ヒータ120のうち発熱を行う部分であり、具体的には発熱体が配置される部分である。ヒータ120は、長手方向に延びる部材であり、当該長手方向がベルト110の厚さ方向およびベルト移動方向と直交するように(すなわち当該長手方向がベルト110の長手方向と平行となるように)配置される。
【0021】
図3は、ヒータ120の構成を示す斜視図である。
図3において、ヒータ120は、面状ヒータであり、発熱部としての発熱面120aを有する。発熱面120aは、ヒータ120を構成する面のうち発熱を行う面であり、具体的には発熱体が配置される面である。また、ヒータ120は、発熱面120aの反対側の面である裏面120bと、ベルト移動方向下流側の端部(または側面)120cと、ベルト移動方向上流側の側部(または側面)120dとを有する。ヒータ120は、例えば、長手方向に垂直な断面において矩形状の断面形状を有する。
【0022】
図4は、ヒータ120の構成を示す分解斜視図である。
図4において、ヒータ120は、長手方向に延びる平面状(または平板状)の基材121を有する。基材121の表面121aには、発熱を行う発熱体としての抵抗線122が設けられ、発熱面120aが構成される。抵抗線122は、電流が流れることによって発熱する抵抗発熱体である。抵抗線122の上下には、それぞれ保護層123,124が設けられる。すなわち、抵抗線122は、保護層124を介して基材121上に設けられ、保護層123により被覆される。保護層123,124は、抵抗線122に流れる電流が基材121または他の部材にリークすることを防止する働きを有する。また、抵抗線122は、配線125によりコンタクト部126に接続される。配線125は、保護層124を介して基材121上に設けられ、保護層123により被覆される。配線125は、電流が流れることによって発熱する抵抗線として機能してもよい。コンタクト部126は、保護層124を介して基材121上に設けられ、図示せぬコネクタに接続されて後述の定着制御部208に接続され、コネクタを介して定着制御部208からの電力供給を受ける。
【0023】
再び
図2を参照すると、熱伝達部材130は、ヒータ120とベルト110との間に配置され、ヒータ120と当接してヒータ120の熱をベルト110に伝達する部材である。熱伝達部材130は、長手方向に延びる部材であり、当該長手方向がベルト110の厚さ方向およびベルト移動方向と直交するように(すなわち当該長手方向がベルト110の長手方向と平行となるように)配置される。
【0024】
図5は、熱伝達部材130の構成を示す斜視図である。
図5(a)はベルト110側から見た図であり、
図5(b)はベルト110の反対側であるヒータ120側から見た図である。
図5において、熱伝達部材130は、被加熱体であるベルト110と接触する面(以下、「ベルト接触面」と称す)130aと、当該ベルト接触面130aの反対側の面(以下、「裏面」と称す)130bとを有する。裏面130bには、ヒータ120の発熱部と接触する面(以下、「ヒータ接触面」と称す)130cが設けられる。ベルト接触面130aは、熱伝達部材130の長手方向から見てベルト110側に凸の曲面である。ベルト接触面130aのベルト移動方向に沿った幅は、ベルト110へ安定的に熱を伝える観点より、30[mm]以上であることが望ましい。ヒータ接触面130cは、熱伝達部材130の長手方向に延びる平面である。
【0025】
図6は、熱伝達部材130の構成を示す側面図である。
図6において、熱伝達部材130は、第1の部材131と、第2の部材132と、第3の部材133とで構成される。第1の部材131、第2の部材132、および第3の部材133は、いずれも熱伝達部材130の長手方向に延びる部材である。ベルト移動方向において、第1の部材131の下流側に第2の部材132が配置され、第1の部材131の上流側に第3の部材133が配置される。
【0026】
第1の部材131は、ヒータ120に形成された発熱部としての発熱面120aと当接し、発熱面120aからの熱をベルト110に伝達する部材であり、熱伝達部とも呼べる。第1の部材131は、抵抗線122からの熱をベルト110に伝達する。本例では、第1の部材131は、抵抗線122と保護層123を介して当接する。第1の部材131は、ベルト接触面130aのベルト移動方向における中央領域R1を構成するベルト接触面131aと、ヒータ接触面130cとを有し、ヒータ接触面130cにて発熱面120a(または抵抗線122)からの熱を受け、当該熱をベルト接触面131aからベルト110に伝達する。
【0027】
第2の部材132は、ヒータ120のベルト移動方向における下流側への移動を規制してヒータ120の位置を規制する部材であり、下流側規制部とも呼べる。具体的には、第2の部材132は、発熱部としての発熱面120a(または発熱体としての抵抗線122)と当接せずに、基材122の端部と当接または対向して、ヒータ120の端部の位置を規制する。より具体的には、第2の部材132は、ヒータ120のベルト移動方向下流側の端部120cと当接または対向する規制面132bを有し、当該規制面132bにより端部120cの位置を規制する。また、第2の部材132は、ヒータ120の端部120cからの熱と、第1の部材131から伝達される熱とを、ベルト移動方向における下流側に向けて伝達する。さらに、第2の部材132は、ベルト接触面130aのベルト移動方向における下流領域R2を構成するベルト接触面132aを有し、当該ベルト接触面132aからベルト110へ熱を伝達する。
【0028】
第3の部材133は、ヒータ120のベルト移動方向における上流側への移動を規制してヒータ120の位置を規制する部材であり、上流側規制部とも呼べる。具体的には、第3の部材133は、発熱部としての発熱面120a(または発熱体としての抵抗線122)と当接せずに、基材122の端部と当接または対向して、ヒータ120の端部の位置を規制する。より具体的には、第3の部材133は、ヒータ120のベルト移動方向上流側の端部120dと当接または対向する規制面133bを有し、当該規制面133bにより端部120dの位置を規制する。また、第3の部材133は、ヒータ120の端部120dからの熱と、第1の部材131から伝達される熱とを、ベルト移動方向における上流側に向けて伝達する。さらに、第3の部材133は、ベルト接触面130aのベルト移動方向における上流領域R3を構成するベルト接触面133aを有し、当該ベルト接触面133aからベルト110へ熱を伝達する。
【0029】
図5に示されるように、第2の部材132は、穴部としての孔132hを有し、第3の部材133は、穴部としての孔133hを有する。穴部については、後に詳しく説明する。
【0030】
図5および
図6の例では、熱伝達部材130は、ヒータ接触面130aを外周面として有する部分円筒状の部材であり、熱伝達部材130の内周面である裏面130bには、熱伝達部材130の長手方向に延びる凹部130dが形成される。凹部130dは、ヒータ接触面130cを底面とし、規制面132bをベルト移動方向下流側の側面とし、規制面133bをベルト移動方向上流側の側面として有する。そして、熱伝達部材130の凹部130dのベルト移動方向下流側の部分に孔132hが設けられ、ベルト移動方向上流側の部分に孔133hが設けられる。
【0031】
さらに、熱伝達部材130は、その長手方向両端部に一対の支点130eを有し、当該支点130eを本体フレーム100aに保持された状態で設置され、支点130eを中心とした回転変位が可能である。
図5および
図6では、一対の支点130eは、熱伝達部材130のベルト移動方向における上流側の端部に配置されている。
【0032】
再び
図2を参照すると、ヒータ120と熱伝達部材130のヒータ接触面130cとの間には、熱伝達グリス192が塗布される。この熱伝達グリス192は、ヒータ120と熱伝達部材130のヒータ接触面130cとの間に存在する微小な空隙を埋めることで、両者間の熱伝達効率を高める働きをする。
【0033】
ばね140は、ヒータ120を熱伝達部材130に押し付け、熱伝達部材130をベルト110に押し付ける弾性部材である。具体的には、ヒータ120の発熱面120aの反対側の裏面120bには、加圧プレート193が配置され、ばね140は、定着装置100の本体フレーム100aに固定された支持部材190と加圧プレート193との間に設置され、熱伝達部材130を押圧してベルト110を張架する方向(+Y方向)に加圧プレート193を押圧する。これにより、加圧プレート193がヒータ120に圧接し、ヒータ120が熱伝達部材130のヒータ接触面130cに圧接する。また、熱伝達部材130が定着装置100の本体フレーム100aに対して支点130eを中心に回転自在に固定されているため、ばね140の付勢によって、熱伝達部材130のベルト接触面130aがベルト110の内面に圧接し、ベルト110が張架される。
【0034】
定着ローラ150は、ベルト110の内面と接触するように、ベルト110の内周側に配置される。定着ローラ150は、長手方向に延びる部材であり、当該長手方向がベルト110の厚さ方向およびベルト移動方向と直交するように(すなわち当該長手方向がベルト110の長手方向と平行となるように)配置される。また、定着ローラ150は、その長手方向に平行な回転軸150aを中心として回転可能に設置される。具体的には、定着ローラ150は、芯金部151と、当該芯金部151の外周に形成される弾性層152とを有する。芯金部151の長手方向両端部は、本体フレーム100aに配置された図示せぬ回転軸受けにより支持される。芯金部151の長手方向における片側の端部には図示せぬ駆動系が接続され、当該駆動系から芯金部151に動力が付与されることで、定着ローラ150は回転運動が可能である。本例では、定着ローラ150は、回転軸150aを中心として矢印A4方向に回転する。
【0035】
加圧パッド160は、ベルト110の内面と接触するように、ベルト110の内周側に配置され、ベルト移動方向における定着ローラ150の上流側に配置される。加圧パッド160は、長手方向に延びる部材であり、当該長手方向がベルト110の厚さ方向およびベルト移動方向と直交するように(すなわち当該長手方向がベルト110の長手方向と平行となるように)配置される。加圧パッド160は、加圧ローラ170と当接する方向(Y軸方向)のみに変位可能な状態で、本体フレーム100aに配置された図示せぬ支持部材により長手方向両端部を保持され、弾性部材としてのばね194により、ベルト110を介して加圧ローラ170を加圧する方向(−Y方向)に加圧される。
【0036】
加圧ローラ170は、ベルト110を介して定着ローラ150および加圧パッド160と対向するように配置される。加圧ローラ170は、長手方向に延びる部材であり、当該長手方向がベルト110の厚さ方向およびベルト移動方向と直交するように(すなわち当該長手方向がベルト110の長手方向と平行となるように)配置される。また、加圧ローラ170は、その長手方向に平行な回転軸170aを中心として回転可能に設置される。具体的には、加圧ローラ170は、芯金部171と、当該芯金部171の外周に形成される弾性層172とを有する。芯金部171の長手方向両端部は、本体フレーム100aに配置された図示せぬ回転軸受けにより支持される。また、加圧ローラ170は、図示せぬ加圧機構により+Y方向へ加圧される。これにより、加圧ローラ170の弾性層172は、ベルト110を介して定着ローラ150の弾性層152および加圧パッド160に圧接され、ベルト110との間にニップ領域(またはニップ部)Nを形成する。加圧ローラ170は、定着ローラ150の回転に伴い、回転軸170aを中心として矢印A5方向に回転する。
【0037】
温度センサ180は、ベルト110の温度を検出するセンサである。具体的には、温度センサ180は、ベルト110の内面に接し、ベルト110の温度を示す温度情報を後述する定着制御部208に送る。温度センサ180は、例えばサーミスタである。
【0038】
[制御系の構成]
図7は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。
図7において、画像形成装置1は、画像形成制御部200、インタフェース(I/F)制御部201、帯電電圧制御部202、露光制御部203、現像電圧制御部204、転写電圧制御部205、画像形成駆動制御部206、ベルト駆動制御部207、定着制御部208、および給紙搬送駆動制御部209を有する。
【0039】
画像形成制御部200は、画像形成装置1の全体の制御を司るものであり、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等により構成される。画像形成制御部200は、I/F制御部201を介して、パーソナルコンピュータ等のホスト装置(または上位装置)220から画像情報としての印刷データおよび制御コマンドを受信して画像形成装置1のシーケンス制御を行う。
【0040】
I/F制御部201は、ホスト装置220に画像形成装置1の情報(プリンタ情報等)を送信すると共に、ホスト装置220から送信されたコマンドの解析や、ホスト装置220から送信されたデータの処理を行う。
【0041】
帯電電圧制御部202は、画像形成制御部200からの指示に従い、画像形成部10K,10Y,10M,10Cの各感光体ドラムの表面をそれぞれ一様に帯電させるため、帯電ローラ12K,12Y,12M,12Cに帯電電圧を印加する制御を行う。
【0042】
露光制御部203は、画像形成制御部200からの指示に従い、各感光体ドラムの表面を露光して静電潜像を形成するため、印刷データに従って、露光装置13K,13Y,13M,13Cを駆動する制御を行う。
【0043】
現像電圧制御部204は、画像形成制御部200からの指示に従い、各感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を現像するため、現像装置14K,14Y,14M,14Cに現像電圧を印加する制御を行う。
【0044】
転写電圧制御部205は、画像形成制御部200からの指示に従い、各感光体ドラムの表面に形成された現像剤像(例えばトナー像)を印刷媒体Pに転写するため、転写ローラ34K,34Y,34M,34Cに転写電圧を印加する制御を行う。
【0045】
画像形成駆動制御部206は、画像形成制御部200からの指示に従い、画像形成部10K,10Y,10M,10Cの各々の感光体ドラム、帯電ローラ、および現像ローラを回転駆動するため、画像形成部毎に設けられたモータ211K,211Y,211M,211Cを駆動する制御を行う。
【0046】
ベルト駆動制御部207は、画像形成制御部200からの指示に従い、ドライブローラとしての転写媒体張架ローラ32を回転させて転写ベルト31を駆動するため、ベルト駆動モータ212を駆動する制御を行う。なお、ドライブローラとしての転写媒体張架ローラ32の駆動に伴い、転写媒体としての転写ベルト31、テンションローラとしての転写媒体張架ローラ33、および転写ローラ34K,34Y,34M,34Cも従動回転する。
【0047】
定着制御部208は、定着装置100の温度を検出する温度センサ180から検出温度の入力を受け、当該検出温度に基づき、定着装置100のヒータ120への通電を制御(例えばオン・オフ制御)する。具体的には、定着制御部208は、温度センサ180からの検出温度に基づき、ベルト110の温度が良好な定着を行える所定温度となるように、ヒータ120への通電を制御する。また、定着制御部208は、画像形成制御部200からの指示に従い、定着装置100の定着ローラ150を回転させる定着駆動モータ214を駆動する制御を行う。なお、定着ローラ150にベルト110を介して当接する加圧ローラ170およびベルト110は、定着ローラ150に従動回転する。
【0048】
給紙搬送駆動制御部209は、画像形成制御部200からの指示に従い、印刷媒体Pを給紙および搬送するため、給紙モータ215および搬送モータ216を駆動する制御を行う。給紙モータ215は、ピックアップローラ22を回転駆動し、搬送モータ216は、レジストローラ23および媒体搬送用ローラ24,25,51を回転駆動する。
【0049】
[画像形成装置の動作]
次に、画像形成装置1の動作を説明する。
画像形成装置1の画像形成制御部200は、ホスト装置220からの印刷命令を受けると、ピックアップローラ22を回転させ、給紙カセット21から印刷媒体Pを繰り出し、当該印刷媒体Pをレジストローラ23および媒体搬送用ローラ24,25により転写ベルト31へ搬送する。
【0050】
また、画像形成制御部200は、画像形成部10K,10Y,10M,10Cを用いて、感光体ドラム11K,11Y,11M,11C上に各色の現像剤像を形成する。この場合、画像形成部10Kにおいて、感光体ドラム11Kの矢印A1方向の回転に伴い、感光体ドラム11Kの表面は、帯電装置12Kにより帯電された後、露光装置13Kによって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。感光体ドラム11K上に形成された静電潜像は、現像装置14Kにより現像され、感光体ドラム11K上に現像剤像が形成される。他の画像形成部10Y,10M,10Cにおいても、画像形成部10Cと同様に、それぞれ感光体ドラム11Y,11M,11C上に現像剤像が形成される。
【0051】
転写ベルト31に送られた印刷媒体Pは、画像形成制御部200の制御により、転写ベルト31の走行に伴って矢印A2方向に搬送され、画像形成部10K,10Y,10M,10Cを順に通過する。このとき、転写ローラ34K,34Y,34M,34Cは、それぞれ、感光体ドラム11K,11Y,11M,11C上に形成された各色の現像剤像を転写ベルト31上の印刷媒体P上に転写する。これにより、印刷媒体Pには、各色の現像剤像が順次重ねて転写され、カラーの現像剤像が形成される。転写後に感光体ドラム11K,11Y,11M,11C上に残留している現像剤は、それぞれクリーニング装置15K,15Y,15M,15Cによって掻き取られる。クリーニング後の感光体ドラム11K,11Y,11M,11Cの表面は、次の帯電に供される。現像剤像が形成された印刷媒体Pは、転写ベルト31から定着装置100へと搬送される。
【0052】
定着装置100では、定着装置100が印刷媒体P上に形成された現像剤像を熱圧着するのに十分な熱量を有するように、画像形成制御部200の制御により、ヒータ120の抵抗線122に電流が流され、ヒータ120が発熱する。また、ヒータ120が発熱すると同時に、定着ローラ150は、画像形成制御部200の制御により、図示せぬ駆動系からの動力を受けて回転を開始する。この定着ローラ150の回転と連動して、ベルト110および加圧ローラ170も回転を開始する。ヒータ120から発生した熱は、熱伝達グリス192と熱伝達部材130のヒータ接触面130cとを介して熱伝達部材130へ伝わり、さらに熱伝達部材130からベルト110へ伝わり、これによりベルト110が加熱される。熱伝達部材130により加熱されたベルト110の部分は、ベルト110の回転に伴ってニップ領域Nへ搬送される。
【0053】
転写ベルト31からの印刷媒体Pは、
図2に示されるように、矢印A6方向に搬送され、定着装置100のニップ領域Nへ搬送される。印刷媒体Pがニップ領域Nを通過する際、当該ニップ領域Nにて、印刷媒体P上に形成された現像剤像Dが、加熱されたベルト110により熱圧着される。
【0054】
ニップ領域Nにて熱圧着された印刷媒体Pは、媒体搬送用ローラ51により印刷媒体排出口52を経て排紙積載部53に搬送される。
【0055】
上記ヒータ120による加熱が行われる際、熱伝達部材130において、抵抗線122(または、抵抗線122および125)と面する第1の部材131が、ヒータ120の端部を規制する第2の部材132および第3の部材133と比較して高温となる。
【0056】
[熱伝達部材の穴部]
次に、熱伝達部材130の穴部について説明する。
図8は、比較例の熱伝達部材830を示す図である。
図8(a)は上面図であり、
図8(b)は側面図である。
図9は、比較例の熱伝達部材830の熱変形の一例を示す図である。
図9において、実線は変形前の熱伝達部材830を示し、一点鎖線は変形後の熱伝達部材830を示す。比較例の熱伝達部材830は、穴部が設けられていない点を除き、実施の形態1の熱伝達部材130と同様のものである。
図8および
図9において、実施の形態1の熱伝達部材130と同様の部分には、同一の符号が付されている。
【0057】
まず、
図8および
図9を参照して、穴部が設けられていない比較例の熱伝達部材830が用いられる場合について説明する。第2の部材132および第3の部材133は、第1の部材131と比較して、発熱部としての発熱面120a(または発熱体としての抵抗線122)から離れた位置に位置し、ヒータ120から受ける熱量が少ない。このため、熱伝達部材830がヒータ120により加熱されると、第1の部材131が、第2の部材132および第3の部材133よりも高温となり、第1の部材131が第2の部材132および第3の部材133に比べて大きく膨張する。
図8において、矢印E1,E2,E3は、それぞれ第1の部材131、第2の部材132、および第3の部材133の熱膨張を表し、各矢印の長さは熱膨張量を表現している。第2の部材132および第3の部材133と第1の部材131との間で熱膨張量に差が生じると、熱膨張量が大きい第1の部材131が熱膨張によって変位するときに、第1の部材131に比べて熱膨張量が小さい第2の部材132および第3の部材133が第1の部材131に追従して変位しないため、熱伝達部材830が不均一に変形し、第1の部材131、第2の部材132、および第3の部材133により形成されるベルト接触面130aがベルト110に対して不均一な状態となる。例えば、熱伝達部材830の形状等によって異なるが、
図9に示されるように、熱伝達部材830の長手方向における両端側よりも中央側がベルト110に近接するような反りが発生する。すなわち、熱伝達部材830の長手方向両端部がベルト110から乖離する変形が生じる。
【0058】
図10は、実施の形態1の熱伝達部材130を示す図である。
図10(a)は上面図であり、
図10(b)は側面図である。
図11は、実施の形態1の熱伝達部材130の熱変形の一例を示す図である。
図11において、実線は変形前の熱伝達部材130を示し、一点鎖線は変形後の熱伝達部材130を示す。以下、
図10および
図11を参照して、本実施の形態の熱伝達部材130について説明する。
【0059】
熱伝達部材の不均一な変形を低減する観点より、本実施の形態の熱伝達部材130では、第2の部材132および第3の部材133に、それぞれ穴部としての孔132hおよび孔133hが設けられる。この場合、孔132hおよび孔133hの周辺にて剛性が低下し、
図10に示されるように、最も高温となる第1の部材131の熱膨張に追従して孔132hおよび孔133hの周辺が変位を起こす。
図10において、矢印E11,E21,E31,E22,E32は、それぞれ第1の部材131、第2の部材132の孔132h周辺以外の部分、第3の部材133の孔133h周辺以外の部分、第2の部材132の孔132h周辺の部分、および第3の部材133の孔133h周辺の部分の熱膨張を表し、各矢印の長さは熱膨張量を表現している。
【0060】
上記の穴部周辺の変位により、第2の部材132および第3の部材133と第1の部材131との間の熱膨張量の差が小さくなり、熱伝達部材130の不均一な変形が回避または軽減される。例えば、
図11に示されるように、第1の部材131が第2の部材132および第3の部材133と比較して高温となっても、熱伝達部材130の長手方向両端部がベルト110から大きく乖離する変形は発生せずに、熱伝達部材130の長手方向の長さが増加する変形が生じる。このため、熱伝達部材130がベルト110と圧接した状態に保たれ、熱伝達部材130の熱は長手方向に対して安定的(または均一)にベルト110へ伝えられる。
【0061】
ここで、穴部は、部材間(第1の部材と第2の部材との間または第1の部材と第3の部材との間)の熱膨張量の差が小さくなるように、または熱伝達部材130の不均一な変形が低減するように設定され、穴部の形状、個数、配置などは、適宜決められればよい。
【0062】
本例では、第2の部材132は、その長手方向に沿って複数の孔132hを有し、第3の部材133は、その長手方向に沿って複数の孔133hを有する。また、複数の孔132hは、第2の部材132の長手方向に略等間隔で配置され、複数の孔133hは、第3の部材133の長手方向に略等間隔で配置される。ここで、略等間隔とは、隣り合う孔の間隔をL1,L2,L3,・・・としたとき、間隔L2,L3,・・・が間隔L1の70〜130%の範囲内にあることをいう。また、孔132hおよび133hは、貫通孔であり、具体的には、ベルト接触面130aと裏面130bとの間で熱伝達部材130の厚さ方向に貫通する孔である。
【0063】
仮に、第2の部材132の孔132hと第3の部材133の孔133hとがベルト移動方向において同一直線上に位置するように配置されると、ベルト110の特定の領域が両方の部材の孔またはその周辺を通過することになり、これによって熱伝達が不均一になる可能性がある。例えば、上記ベルト110の特定の領域では、ベルト110と熱伝達部材130との接触面が大幅に低減し、ベルト110の長手方向に大きな温度むらが発生する可能性がある。
【0064】
上記の熱伝達の不均一や温度むらを防止する観点より、本例では、
図5および
図12に示されるように、第2の部材132に形成される孔132hと、第3の部材133に形成される孔133hとは、ベルト移動方向において同一直線上に位置しないように(ベルトの移動方向において孔132hの領域と孔133hの領域が重ならないように)配置される。この場合、
図12に示されるように、第3の部材133の孔133hまたはその周辺を通過したベルト110の領域110hは、第2の部材132の孔132hまたはその周辺を通過しない。このため、ベルト110の特定の領域が両方の部材の孔またはその周辺を通過することによる悪影響(例えば熱伝達の不均一や温度むら)が低減される。
【0065】
さらに、本例では、
図5および
図12に示されるように、第2の部材132に形成される孔132hと、第3の部材133に形成される孔133hとは、熱伝達部材130の長手方向に千鳥状に(または互い違いに)配置される。
図12では、孔132hおよび孔133hは、熱伝達部材130の長手方向において、隣り合う孔132hと孔133hとの間隔が略等間隔となるように配置されている。
【0066】
穴部が設けられた熱伝達部材130を有する定着装置100では、ベルト110は、長手方向全域において熱伝達部材130と圧接され、長手方向において良好な温度分布を有するように加熱された後に、ニップ領域Nへ搬送され、当該ニップ領域Nにて印刷媒体P上に形成された現像剤像の熱圧着を行う。
【0067】
[定着装置の具体例]
以下、定着装置100の具体例を示す。
ベルト110の内径はφ45[mm]である。ベルト110は、厚さ0.1[mm]のポリイミドの基材層と、その外周に形成された厚さ0.2[mm]のシリコーンゴムの弾性層と、さらにその外周に形成されたPFAのチューブ層とを有する。
【0068】
ヒータ120は、長さ350[mm]、幅10[mm]、厚さ0.6[mm]のステンレス(SUS)製の基材121としての基板上に、ガラス製の保護層124と、銀−パラジウム合金の線幅3[mm]の抵抗線122と、ガラス製の保護層123とを順に積層して構成される。また、抵抗線122の出力は1200[W]である。
【0069】
熱伝達部材130の材料は、アルミニウムの押し出し材であるA6063である。
図13に示されるように、熱伝達部材130は、部分円筒形状であり、熱伝達部材130の厚さT
1は約1[mm]、曲面部であるベルト接触面130aの曲率半径Rは25[mm]、ベルト接触面130aの幅L
Cは30[mm]、平面部であるヒータ接触面130cの幅L
Fは10.2[mm]である。孔132hおよび孔133hの直径は4[mm]である。複数の孔132hは、第2の部材132の長手方向に約50[mm]間隔で直線状に配置され、複数の孔133hは、第3の部材133の長手方向に約50[mm]間隔で直線状に配置される。複数の孔132hおよび複数の孔133hは、熱伝達部材130の長手方向に千鳥状に配置される。
【0070】
熱伝達グリス192は、シリコーンオイルに酸化亜鉛の粉末を混合し、熱伝達性を向上させたものである。
【0071】
加圧プレート193は、長さ350[mm]、幅10[mm]、厚さ2.0[mm]のアルミニウム(A5052)製である。
【0072】
弾性部材であるばね140は、合計4[kgf]の加圧力で加圧プレート193を+Y方向に均等に加圧している。
【0073】
定着ローラ150の外径はφ25[mm]であり、定着ローラ150の弾性層152はシリコーンスポンジであり、当該弾性層152の厚さは2[mm]である。
【0074】
加圧パッド160の素材はアルミニウムの押し出し材であるA6063である。加圧パッド160は、ベルト110との接触面にシリコーンゴムによる約1[mm]の厚さの弾性層を有すると共に、弾性部材としてのばね194により−Y方向に3.5[kgf]の加圧力が付与されている。
【0075】
加圧ローラ170の外径はφ35[mm]であり、加圧ローラ170の弾性層172はシリコーンゴムであり、当該弾性層172の厚さは2[mm]であり、当該弾性層172の外周層はPFAチューブにて構成される。また、加圧ローラ170の芯金部171の両端は、図示せぬ加圧部材により+Y方向に20[kgf]の加圧力が付与されている。
【0076】
[定着装置の評価]
実施の形態1の定着装置と、比較例の定着装置との評価を行った。本評価では、実施の形態1の定着装置として、上記具体例の欄に記載の構成を有する定着装置を用いた。また、比較例の定着装置として、穴部が設けられていない熱伝達部材を用い、他の条件は実施の形態1の定着装置と同様である定着装置を用いた。
【0077】
本評価では、ベルトの端部温度および定着率を測定した。具体的には、ベルト110の長手方向中央部と、中央部から150[mm]離れた端部とにサーミスタを取り付けて、ベルト110の中央部および端部の温度を測定可能にした。そして、定着装置のすべての部材が25[℃]である状態にて、ヒータ120の抵抗線122に電流を投入し、これと同時に定着ローラ150に駆動力を付与して、定着ローラ150、ベルト110、および加圧ローラ170を回転させた。そして、ベルト110の中央部の測定温度が印刷媒体上の現像剤像を良好に定着可能な温度である160[℃]に最初に達した際に、ベルト110の端部温度を測定すると共に、A4横送り35[ppm]の印刷速度で印刷媒体をニップ領域Nに搬送し、当該印刷媒体上の現像剤像の定着率を測定した。
【0078】
ここで、定着率について説明する。4色(CMYK)の現像剤としてのトナーにより各色のべた画像を印刷媒体上に形成し定着を行う。当該印刷媒体上に定着された各色の現像剤像の濃度Nbを測定する。その後、各色の現像剤像の上から所定の粘着テープを貼り付け、500[g]の荷重をかけて現像剤像と粘着テープとを密着させた後、粘着テープを剥離し、再度各色の現像剤像の濃度Naを測定する。このように測定された濃度値NbおよびNaを用い、下記式により定着率を算出する。
定着率=(Na/Nb)×100[%]
【0079】
本評価では、印刷媒体のうち、長手方向中央部および長手方向端部のサーミスタそれぞれに対応する位置に各色の現像剤像を形成して定着を行い、中央部および端部における各色の現像剤像の定着率を測定した。
【0080】
なお、定着率が70%を下回るような場合、定着後の現像剤をユーザが指で触れると、現像剤像の一部が印刷媒体から剥離し、ユーザの指に付着する。このため、良好な定着を行う観点からは、70%以上の定着率を確保することが必要となる。
【0081】
各定着装置の評価結果を下記表1に示す。
【表1】
表1には、実施の形態1の定着装置および比較例の定着装置の各々について、ベルト110の中央部の測定温度である「ベルト中央部温度」と、ベルト110の端部の測定温度である「ベルト端部温度」と、ベルト中央部温度とベルト端部温度との差である「温度差(中央−端部)」と、端部における各色の現像剤像の定着率である「端部の定着率」とが示されている。なお、「端部の定着率」には、4色の現像剤像の定着率の範囲が示されている。また、表1には示されていないが、実施の形態1および比較例のいずれの定着装置においても、中央部における各色の現像剤像の定着率は、96〜100[%]であった。
【0082】
表1を見ると、比較例の定着装置ではベルト中央部とベルト端部との温度差が14[℃」であるのに対し、実施の形態1の定着装置では5[℃]であり、比較例に対して長手方向の温度差が9[℃]減少している。そして、比較例の定着装置では端部の定着率が72〜79[%]であるのに対し、実施の形態1の定着装置では86〜93[%]であり、比較例に対して定着率が増加している。これは、実施の形態1の定着装置では、比較例と比べて、ベルト端部の温度が高く、現像剤像をより熱定着しやすいためである。
【0083】
比較例の定着装置における端部の定着率72〜79[%]は、評価基準としている70[%]を上回っているが、ばらつきの下限は70[%]に近く、マージンが非常に小さい。これに対して、実施の形態1の定着装置における端部の定着率86〜93[%]は、評価基準としている70[%]を大幅に上回っており、安定した定着が行われていることが分かる。
【0084】
[効果]
以上説明した本実施の形態1によれば、下記(1)〜(4)の効果が得られ得る。
(1)本実施の形態では、発熱部を有する発熱部材と、当該発熱部材と当接する熱伝達部材とを備える定着装置において、熱伝達部材は、発熱部材の発熱部と当接して発熱部の熱を伝達する第1の部材と、発熱部材の位置を規制する第2の部材とを含み、第2の部材は、穴部を有する。本実施の形態によれば、熱伝達部材の不均一な変形を低減することができる。具体的には、第2の部材の穴部周辺の変形により、第1の部材と第2の部材との間の熱膨張量の差を低減することができ、両部材間の熱膨張量の差に起因する熱伝達部材の変形を低減することができる。これにより、例えば、発熱部材の熱を熱伝達部材から被加熱体(例えばベルト)へ均一に伝達することができ、被加熱体による良好な定着が可能となる。例えば、ベルトにおける長手方向の温度むらを低減し、印刷媒体の長手方向全域において良好な定着が可能となる。
【0085】
(2)第2の部材は穴部を複数有し、当該複数の穴部は、第2の部材の長手方向に略等間隔で配置される。本態様によれば、より好適に熱伝達部材の不均一な変形を低減することができる。例えば、複数の穴部周辺が変形するので、1個の穴部周辺が変形する場合と比較して、全体の変形量を大きくすることができ、部材間の熱膨張量の差をより小さくすることができる。また例えば、複数の穴部が長手方向に略等間隔で配置されるので、第2の部材を長手方向についてより均一に変形させることができる。
【0086】
(3)定着装置は、熱伝達部材と当接して移動するベルトを備え、熱伝達部材は、ベルトの移動方向において第1の部材を挟んで第2の部材の上流側に位置し、発熱部材の位置を規制する第3の部材を含み、第3の部材は穴部を有し、第2の部材に形成される穴部と、第3の部材に形成される穴部とは、ベルトの移動方向において同一直線上に位置しない。本態様によれば、ベルトの特定の領域が第2の部材および第3の部材の両方の穴部を通過することによる熱伝達の不均一やベルトの長手方向における温度むらを防止することができる。
【0087】
(4)定着装置は、熱伝達部材と当接して移動するベルトを備え、熱伝達部材は、ベルトの移動方向において第1の部材を挟んで第2の部材の上流側に位置し、発熱部材の位置を規制する第3の部材を含み、第3の部材は複数の穴部を有し、第2の部材に形成される穴部と、第3の部材に形成される穴部とは、熱伝達部材の長手方向に千鳥状に配置される。本態様によれば、熱伝達部材が第3の部材を含む構成において、より好適に熱伝達部材の不均一な変形を低減することができる。例えば、第3の部材において複数の穴部周辺が変形するので、1個の穴部周辺が変形する場合と比較して、第3の部材の全体の変形量を大きくすることができ、部材間の熱膨張量の差をより小さくすることができる。また、第2の部材の穴部と第3の部材の穴部とが熱伝達部材の長手方向に千鳥状に配置されるので、ベルトの特定の領域が第2の部材および第3の部材の両方の穴部を通過することがない。これにより、ベルトの特定の領域が第2の部材および第3の部材の両方の穴部を通過することによる熱伝達の不均一やベルトの長手方向における温度むらを防止することができる。
【0088】
実施の形態2.
図14は、実施の形態2における熱伝達部材230の構成を示す斜視図である。
図14(a)はベルト110側から見た図であり、
図14(b)はベルト110の反対側から見た図である。以下、
図14を参照して、実施の形態2における熱伝達部材230について説明する。この熱伝達部材230は、実施の形態1における熱伝達部材130に対し、穴部の形状が異なっており、その他の部分については略同様である。また、熱伝達部材230は、実施の形態1の定着装置100および画像形成装置1において、熱伝達部材130の代わりに用いられるものである。以下の説明では、実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0089】
本実施の形態における熱伝達部材230では、第2の部材132および第3の部材133に形成される穴部の形状は、溝形状である。
【0090】
図14の例では、第2の部材132は、その長手方向に沿って複数の溝232hを有し、第3の部材133は、その長手方向に沿って複数の溝233hを有する。また、複数の溝232hは、第2の部材132の長手方向に略等間隔で配置され、複数の溝233hは、第3の部材133の長手方向に略等間隔で配置される。また、溝232hおよび233hは、熱伝達部材230の裏面130bに形成される。また、溝232hおよび233hは、それぞれ規制面132bおよび133bを切り欠くように形成される。また、第2の部材132に形成される溝232hと、第3の部材133に形成される溝233hとは、ベルト移動方向において同一直線上に位置しないように配置される。さらに、第2の部材132に形成される溝232hと、第3の部材133に形成される溝233hとは、熱伝達部材230の長手方向に千鳥状に(または互い違いに)配置される。
図14では、溝232hおよび溝233hは、熱伝達部材230の長手方向において、隣り合う溝232hと溝233hとの間隔が略等間隔となるように配置されている。
【0091】
上述の通り、本実施の形態の熱伝達部材230では、第2の部材132および第3の部材133に、穴部としての溝232hおよび溝233hが設けられる。このため、溝232hおよび溝233hの周辺にて剛性が低下し、最も高温となる第1の部材131の熱膨張に追従して溝232hおよび溝233hの周辺が変位を起こす。当該溝周辺の変位により、第2の部材132および第3の部材133と第1の部材131との間の熱膨張量の差が小さくなり、熱伝達部材230の不均一な変形が回避または軽減される。例えば、第1の部材131が第2の部材132および第3の部材133と比較して高温となっても、熱伝達部材230の長手方向両端部がベルト110から大きく乖離する変形は発生せずに、熱伝達部材230の長手方向の長さが増加する変形が生じる。このため、熱伝達部材230がベルト110と圧接した状態に保たれ、熱伝達部材230の熱は長手方向に対して安定的(または均一)にベルト110へ伝えられる。
【0092】
さらに、本実施の形態の熱伝達部材230では、溝232hおよび233hがベルト110と圧接されるベルト接触面130aに含まれず、ベルト接触面130aが穴部(孔や溝等)の無い面であり、ベルト接触面130aに穴部(孔や溝等)が存在することによる悪影響が防止される。例えば、熱伝達の不均一やベルト110の温度むらなどが低減される。また例えば、ベルト110が穴部を通過しないので、ベルト110が熱伝達部材230に均一かつ安定的に圧接され、ベルト110の摩耗や変形が低減する。
【0093】
以上説明した本実施の形態2によれば、上記(1)〜(4)の効果の他に、下記(5)の効果が得られ得る。
(5)穴部は、溝形状であり、熱伝達部材の被加熱体(例えばベルト)と接触する面には設けられない。本態様によれば、熱伝達部材の被加熱体と接触する面に穴部が存在することによる悪影響を回避することができる。例えば、ベルト接触面に穴部が有る場合と比較して、熱伝達部材からベルトへの熱伝達を均一にすることができ、ベルトの長手方向における温度むらを低減することができる。これにより、印刷媒体の長手方向全域において良好な定着が可能となる。また、熱伝達部材とベルトとを均一または安定的に圧接させることができ、ベルトの摩耗や変形を低減することができ、長期間にわたる使用が可能となる。したがって、耐久性に優れた定着装置の実現が可能となる。
【0094】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3における熱伝達部材330の構成を示す斜視図である。
図15(a)はベルト110側から見た図であり、
図15(b)はベルト110の反対側から見た図である。以下、
図15を参照して、実施の形態3における熱伝達部材330について説明する。この熱伝達部材330は、実施の形態1における熱伝達部材130に対し、穴部の形状が異なっており、その他の部分については略同様である。また、熱伝達部材330は、実施の形態1の定着装置100および画像形成装置1において、熱伝達部材130の代わりに用いられるものである。以下の説明では、実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0095】
本実施の形態における熱伝達部材330では、第2の部材132および第3の部材133に形成される穴部の形状は、切り欠き形状である。
【0096】
図15の例では、第2の部材132は、その長手方向に沿って複数の切り欠き部332hを有し、第3の部材133は、その長手方向に沿って複数の切り欠き部333hを有する。また、複数の切り欠き部332hは、第2の部材132の長手方向に略等間隔で配置され、複数の切り欠き部333hは、第3の部材133の長手方向に略等間隔で配置される。また、切り欠き部332hは、ベルト接触面130aと裏面130bとの間で熱伝達部材330の厚さ方向に貫通するとともに、ベルト移動方向下流側が開放された形状を有する。切り欠き部333hは、ベルト接触面130aと裏面130bとの間で熱伝達部材330の厚さ方向に貫通するとともに、ベルト移動方向上流側が開放された形状を有する。すなわち、切り欠き部332hは、熱伝達部材330のベルト移動方向下流側の端部を切り欠いた形状を有し、切り欠き部333hは、熱伝達部材330のベルト移動方向上流側の端部を切り欠いた形状を有する。また、第2の部材132に形成される切り欠き部332hと、第3の部材133に形成される切り欠き部333hとは、ベルト移動方向において同一直線上に位置しないように配置される。さらに、第2の部材132に形成される切り欠き部332hと、第3の部材133に形成される切り欠き部333hとは、熱伝達部材330の長手方向に千鳥状に(または互い違いに)配置される。
図15では、切り欠き部332hおよび切り欠き部333hは、熱伝達部材330の長手方向において、隣り合う切り欠き部332hと切り欠き部333hとの間隔が略等間隔となるように配置されている。
【0097】
上述の通り、本実施の形態の熱伝達部材330では、第2の部材132および第3の部材133に、穴部としての切り欠き部332hおよび333hが設けられる。このため、切り欠き部332hおよび333hの周辺にて剛性が大幅に低下し、切り欠き部332hおよび333hの周辺が、実施の形態1における孔周辺よりもさらに変形し、最も高温となる第1の部材131の熱膨張に追従する。当該切り欠き部周辺の変形により、第2の部材132および第3の部材133と第1の部材131との間の熱膨張量の差が小さくなり、熱伝達部材330の不均一な変形が回避または軽減される。例えば、第1の部材131が第2の部材132および第3の部材133と比較して高温となっても、熱伝達部材330の長手方向両端部がベルト110から大きく乖離する変形は発生せずに、熱伝達部材330の長手方向の長さが増加する変形が生じる。このため、実施の形態1の熱伝達部材130以上に、熱伝達部材330がベルト110と圧接した状態に保たれ、熱伝達部材330の熱は長手方向に対してより安定的(または均一)にベルト110へ伝えられる。
【0098】
以上説明した本実施の形態3によれば、上記(1)〜(4)の効果の他に、下記(6)の効果が得られ得る。
(6)穴部の形状は、切り欠き形状である。本態様によれば、穴部が貫通孔である場合よりも、穴部周辺の変形量を大きくすることができ、上記(1)の効果をより良好に得ることができる。例えば、部材間の熱膨張量の差をより小さくすることができ、ベルトにおける長手方向の温度むらをより低減することができ、印刷媒体の長手方向全域においてより良好な定着が可能となる。
【0099】
なお、本件明細書において、「一致」、「直交」、「平行」、「垂直」とは、それぞれ、厳密な意味での一致、直交、平行、垂直に限定されるものではなく、略一致、略直交、略平行、略垂直も含む。
【0100】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様で実施することができる。
【0101】
例えば、実施の形態1〜3では、加圧パッド160が設けられているが、加圧パッド160は省略されてもよい。なお、加圧パッド160を有する構成によれば、ニップ領域Nを拡大することができ、例えば高速印刷に対応することができる。
【0102】
また、実施の形態1〜3では、ニップ領域Nから離れた位置に熱伝達部材が配置されているが、熱伝達部材は、ニップ領域Nに対応する位置(例えば加圧パッド160が設置されている位置)に配置されてもよい。例えば、ベルト110を介して加圧ローラ170と対向するように熱伝達部材が配置され、熱伝達部材によりニップ領域Nが形成されてもよい。
【0103】
また、実施の形態1〜3では、熱伝達部材はベルト110の内側からベルト110に圧接しているが、熱伝達部材はベルト110の外側からベルト110に圧接してもよい。
【0104】
また、実施の形態1〜3では、ニップ領域Nの形成に加圧ローラ170が設けられているが、加圧ローラ170の代わりに、ローラ形状以外の摺動部材が設けられてもよい。
【0105】
また、実施の形態1〜3では、定着ローラ150が駆動源として使用されているが、加圧ローラ170が駆動源として使用されてもよい。