【実施例】
【0029】
(実施例1:SIRP−α経路は、PEへのMDM結合に関与する)
PE表面へのMDM結合におけるSIRPα/CD47経路の寄与を評価し始めるために、MDM細胞系(THP−1)の細胞を、1.6×10
−7Mのホルボール 12−ミリステート 13−アセテート(PMA)を培地に添加して形質導入し、漸増濃度(0μg、2.5μg、5μg、10μg)の、上記タンパク質の細胞外ドメインに対する抗SIRP−α抗体の存在下で、PEフィルム上で培養した。細胞を、48時間にわたって上記PEフィルムに結合させた。その時点で、上記フィルムをPBSで洗浄し、残っている細胞を、4% パラホルムアルデヒドで固定し、核特異的染料DAPIで染色した。
【0030】
細胞保持を、DAPI染色し、9つの別個の200倍率視野を計数することによって決定した。
図2に示されるように、PE表面への形質転換THP−1の結合は、10μgの非特異的IgG抗体の存在に影響されなかった(96±7.9細胞/200倍率視野 対 108±7.7細胞/200倍率視野)。しかし、結合は、2.5μg(64.4±4.7細胞/200倍率視野)もしくは5μg(60.5±4.7細胞/200倍率視野)のSIRP−αブロッキング抗体の存在によって有意に(p<0.001)阻害された。10μgの抗SIRP−αブロッキング抗体の存在下でのPEへのTHP−1結合に、2倍のさらなる低下が認められた。これら結果は、PE表面へのTHP−1結合におけるSIRPα依存性機構を示している。
【0031】
(実施例2:PE表面のCD47固定化の特徴)
初期研究において、ヒト起源のビオチン化CD47(hCD47)を、
図3に示すように、アビジン固定化フィルムに結合させた。全ての研究を、光活性化化学反応を使用して行った。この化学反応は、ポリマー表面(例えば、PVCもしくはPE)への上記アビジンの結合に対して特異的である。いったん上記アビジンが連結されると、上記ビオチン化CD47は、上記アビジンと反応し得る。後の研究では、ヘンゾフェノン(BzPH)光活性基に連結された2−ピリジルジチオ基(PDT)から構成されるポリマー光架橋剤(PDT−BzPh)が関与する新規な表面改変を使用した(Chorny,Mら(2006)Mol.Ther.14:382−91)。
【0032】
ビオチン化CD47を、ミセル懸濁物としてのPDT−BzPhを塗布することによって、上記PE表面に固定化した。UV照射の下で、BzPh基は、PE高分子と共有結合を形成する。次いで、上記PEフィルム上のPDT基を、TCEPの溶液と反応させることによってチオール基に還元した。アビジン(10mg/ml)をSPDPと反応させ、セファデックス(登録商標)(GE Healthcare Bio−Sciences AB LLC,Uppsala Sweden)カラムを通過させることによって精製した。PEフィルムを、上記チオール反応性アビジンと反応させ、室温で一晩インキュベートした。次いで、上記アビジン固定化フィルムを、dH
2Oで5回洗浄し、漸増濃度(3.9ng、7.8ng、15.62ng、31.25ng、62.5ng、125ng、250ng、および500ng)のビオチン化CD47(詳細については以下を参照のこと)を、各フィルムに添加した。
【0033】
上記PE表面上のCD47の固定化を評価するために、コントロールフィルムおよびアビジン架橋フィルムを、マウス抗CD47抗体(ヒトCD47の細胞外ドメインに対して向けられるB6H12)とインキュベートした。抗原抗体複合体を、FITC結合体化マウス2次抗体とインキュベートすることによって検出した。上記免疫複合体を、蛍光顕微鏡およびFITCフィルタセットを使用して可視化した。
【0034】
代表的蛍光顕微鏡写真は、上記コントロールPEフィルムには存在しない、CD47固定化表面において強い蛍光(
図3B)を示す。このことは、上記CD47が、上記PE表面に実際に固定化されたことを示す。FITC結合体化抗CD47抗体でのCD47固定化表面の蛍光標識は、上記光活性化PE表面上に負荷された一定範囲(0〜500ng)のビオチン化CD47が、0〜1200分子のCD47/μm
2のCD47表面濃度範囲に対応することを示した。
【0035】
ビオチン化CD47の供給源。hCD47の細胞外ドメインをコードするプラスミドをPCR増幅し、CD47の細胞外ドメインのC末端においてCD4d3+4ビオチンのインフレーム融合物を形成したベクターpEF−BOS−XBとインフレームで連結した。この構築物を、CHO(−K1)細胞へとトランスフェクトし、分泌されたCD47−CD4d3+4を濃縮し、C末端においてビオチン化し、透析した。上記タンパク質を、モノマーアビジンを使用してアフィニティー精製し、PBSに対して透析した。
【0036】
(実施例3:固定化CD47は、ポリウレタンエラストマーへのMDM結合を阻害する)
PMA活性化THP−1細胞(100,000細胞)を、1cm
2 PE−CD47(一定範囲のCD47濃度にわたって)フィルムおよびコントロールフィルム上に播種した。PE−CD47フィルムを、実施例2に記載されるように、ビオチン化hCD47を用いて調製した。細胞を、48時間にわたって上記PEフィルムに結合させ、その時点で、上記フィルムをPBSで洗浄し、残っている細胞を、4% パラホルムアルデヒドで固定し、上記核特異的染料DAPIで染色した。細胞保持を、DAPI染色し、9個の別個の200倍率視野を計数することによって決定した。
図4は、CD47固定化表面へのTHP−1細胞結合が顕著に阻害されることを示す。
【0037】
最低のCD47表面濃度(約10分子/μm
2)において、非改変コントロール表面(131.23±21.6細胞/200倍率視野)と比較して、THP−1細胞結合(24.6±8.2細胞/200倍率視野)の有意な(p<0.001)低下が認められた。80〜301分子/μm
2の間のCD47濃度におけるPE−CD47表面へのTHP−1結合において、さらに4倍の低下が認められた。細胞結合は、600分子/μm
2より高いCD47濃度において実質的に阻止された。これらデータは、PE上の固定化CD−47が単球結合を低下させたことを示し、固定化CD47分子を有する生体模倣PE表面を確立することの実行可能性についての主な証拠を提供する。
【0038】
(実施例4:CD47をコーティングしたポリビニルクロリド(PVC)心肺バイパスチューブ類への好中球結合の阻害)
表面固定化された、組換えヒトCD47(ビオチン化)が、ポリビニルクロリド(PVC)表面への好中球接着を阻害し得るか否かを決定するために、研究を行った。
【0039】
簡潔には、ヒト好中球細胞系であるHL−60から培養した細胞を、5μg/mlのIgGおよび上記ホルボールエステル(ホルボール 12−ミリステート 13−アセテート(PMA))を補充した増殖培地中で、約1.5×10
6細胞/mlの濃度で懸濁した。上記再懸濁した細胞を、コーティングしていない(コントロール)PVCチューブ類もしくはCD47を(アビジン−ビオチン親和性を介して)上記チューブ類の表面に固定化することによって改変したPVCチューブ類、またはアビジン単独のコーティングを有するPVCチューブ類(アビジンコントロール)に添加した。上記細胞を含むチューブを、両方の末端に蓋をし、3時間にわたって37℃で振盪した。このインキュベーション期間の後、結合していない細胞を含む細胞培地を除去し、上記チューブ類をPBSで4回洗浄し、結合した細胞を、4% パラホルムアルデヒドを添加することによって固定した。上記PVCチューブ類に結合した細胞を、上記蛍光色素DAPI(蛍光顕微鏡写真で青色)で染色することによって定量し、適切なフィルタセットを備える蛍光顕微鏡を使用して可視化した。
【0040】
PVCチューブ類に結合した上記細胞の蛍光顕微鏡写真を、
図5に示す。
図5は、非改変PVC表面(
図5A)もしくはアビジン単独で改変されたPVC表面(
図5B)上の豊富なDAPI(青色)染色によって証拠が示されるように、強い細胞保持を実証する。対照的に、固定化CD47でコーティングした表面へのHL−60結合は、細胞結合を殆ど示さないか全く示さなかった。DAPI染色を有さないこれら画像は掲載していない。これらデータの定量分析の結果は、PVCへのHL−60結合が、表面固定化アビジンの存在によっていくらか阻害されることを示した(
図5C)。しかし、これら結果は、上記PVCコントロールデータとは有意差がなかった(
図5C)。上記PVCバイパスチューブ類へのCD47の表面結合は、
図5Cにおいて示されるように、上記PVCチューブ類へのHL−60結合を実質的にブロックした。
【0041】
これら結果は、生体材料ポリマーの表面に固定化したCD47が、PVCチューブ類(心肺バイパスシステムにおいて使用される代表的なチューブ類)への多形核白血球結合によって引き起こされる急性炎症応答を低下もしくは防止し得ることを強く示唆する。
【0042】
(実施例5:新鮮なヒト全血を使用した心肺バイパスシミュレーションモデルにおけるCD47改変ポリビニルクロリド(PVC)チューブ類への白血球結合の阻害)
上記Chandlerループは、動いている血液(もしくは培養した懸濁細胞)の縦隊(column)が、斜めになった電動ターンテーブル上で回転する環状の閉じたチューブ類のループ中を流れる装置である。心肺バイパス(CPB)回路内の血流の模倣に必要な調査は、しばしば上記Chandlerループを使用する。本実施例において、上記Chandlerループを、模倣血流条件下で全血からPVC表面を保護することに対するCD47の効果を調査するために使用した。
【0043】
簡潔には、10mlのヒト全血を新たに採血し(IRB承認されたプロトコル)、クエン酸ナトリウムを補充して凝固を抑制し、表面を固定化CD47(ビオチン化)で改変した、もしくは非改変(CD47なし、およびアビジンなし(コントロール))であるかのいずれかであるPVCチューブ類(長さ約33cm)から調製したChandlerループに導入した。上記チューブ類を、37℃で3時間にわたって回転させたところ、上記ループ内で血液循環が得られた。上記プロトコルの最後に、上記血液を除去し、上記チューブ類をリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄した。結合した細胞を、4% パラホルムアルデヒドで固定した。
【0044】
チューブ類の長さに沿って規則的な間隔で位置した該チューブ類の5つのセグメント(長さ約3cm)を切り出し、結合したあらゆる細胞を、上記蛍光色素DAPI(蛍光顕微鏡写真で青色)で染色することによって定量し、適切なフィルタセットを備えた蛍光顕微鏡を使用して可視化した。結果を、
図6に示す。
【0045】
図6Aは、強い細胞結合を示す。これは、上記非改変のコントロールPVCチューブ類の表面上の白血球接着を示す。対照的に、CD47がその表面上に固定化された上記PVCチューブ類へは、細胞結合がほとんど認められなかった(
図6B)。定量分析から、上記CD−47表面改変PVCチューブ類と比較して、非改変PVCチューブ類(コントロール)において20倍より高い細胞結合が示された(
図6C)。
【0046】
新鮮なヒト全血で得たこれらデータは、好中球細胞系HL−60細胞を使用して得られた実施例4に示されるデータを裏付ける。さらに、これら結果は、PVCチューブ類に表面結合したCD47の抗炎症特性は、この技術の臨床応用の一例である上記心肺バイパス回路に近いモデルにおいて十分に機能的であることを示す。
【0047】
(実施例6:ポリウレタン±CD47から製造される右側頚静脈ペーサー導線絶縁への生物学的応答についてのブタインプラントモデル)
これは予測実施例である。
【0048】
外移植したペースメーカー導線絶縁の亀裂は、広く注目されてきた(Wiggins,MJら(2001)J.Biomed.Mater.Res.58:302−7;およびSutherland,Kら(1993)J.Clin.Invest.92:2360−7)。これをインビボでモデル化する試みは、酸化的分解に対する耐性についてCD47含有PE改変体をスクリーニングする有用でかつ費用効率的なインビボモデルである、ラット皮下移植片モデルに主に依拠してきた(Schubert,MA(1996)J.Biomed.Mater.Res.32:493−504;Schubert,MAら(1997)J.Biomed.Mater.Res.34:493−505;およびStachelek,SJら(2007)J.Biomed.Mater.Res.A 82:1004−11。しかし、PE分解は、頚静脈ペーサー導線移植のインビボモデルにおいては一度も研究されてこなかった。
【0049】
CD47改変PEの導線処方は、右側頚静脈インプラントモデルにおいて試験する。このモデルの妥当性は、以下のとおりである:1.上記頚静脈インプラントは、臨床的に使用される心臓ペースメーカー導線絶縁としてのPEの使用に近い臨床的に関連するモデルである。2.上記頚静脈インプラントは、移植したPEへの宿主炎症応答に対する、血液接触環境の作用のインビボ試験を可能にする。
【0050】
抗酸化剤で改変したPEの臨床応用を、PEチューブ類±候補のCD47改変を、最大10週間の期間にわたってブタ頚静脈に移植することによってシミュレートする。酸化的分解に関しては、インビボでの10週間が、H
2O
2 CoCl
2の溶液中での2週間の曝露に相当することが報告されている(Christenson,EMら(2004)J.Biomed.Mater.Res.A.70:245−55;およびChristenson,EMら(2004)J.Biomed.Mater.Res.A.269:407−16)。
【0051】
簡潔には、去勢した雄性ブタもしくは非妊娠雌性ブタ(ヨークシャー交配種)を、麻酔して挿管する。頚静脈に対する切断により、PEチューブ類の配置を可能にし、その場所で、PEチューブ類を上記静脈に固定し、残りの部分を、ループ内に固定し、皮下ポケットに配置する。
【0052】
外移植片分析。この研究の最後には、上記動物を、標準的手術手順に従って安楽死させる。導線を外植し、Children’s Hospital of Philadelphiaでのさらなる分析のために一晩で輸送する。上記チューブ類の長さの半分を、移植の結果として、機械的−物理的特性の変化について種々試験を行なう。残りの半分を、生物学的に関連するエンドポイントについて種々試験を行なう。
【0053】
機械的−物理的特性。外移植されたチューブ類を、界面活性剤溶液中で洗浄して、生物学的デブリを除去する。軟質セグメント鎖の切断(soft segment chain scission)および喪失を、FTIR分析を介して評価する。SEMは、上記移植されたPE表面への損傷の定量的評価を提供する。一軸応力−歪み試験(uniaxial stress−strain test)もまた、移植の結果として弾性のあらゆる損失を決定するために行う。
【0054】
生物学的エンドポイント。上記外移植されたチューブ類の半分を、ホルマリン中に入れ、関連する生物学的エンドポイントについて評価する。ギムザ染色を使用して、上記外移植されたPEチューブ類上に存在する細胞タイプを同定する。DAPI染色を使用して、上記外移植されたPE表面上の細胞数を定量する。目的のタンパク質を、免疫蛍光顕微鏡検査を介して同定する。これら生物学的エンドポイントは、機械的エンドポイントと、ならびにラットにおける皮下移植片の初期インビボ研究から得られた結果とも相関する。
【0055】
(実施例7:hCD47およびbCD47を固定化したポリウレタン表面へのMDM結合の阻害)
ポリウレタン(PU)表面へのMDM結合に対するヒト起源(hCD47)もしくはウシ起源(bCD47)の固定化CD47の効力を比較するために、研究を行った。実施例3に記載されるように、PUフィルムを、hCD47もしくはbCD47で同様に改変した。PMAにより活性化したTHP−1細胞を、改変PUフィルム表面上で培養した。必要とする場合、上記改変フィルムを、抗ヒトCD47抗体B6H12とプレインキュベートした。
図7に示されるように、THP−1細胞結合は、非改変PUと比較して、種に拘わらず、表面固定化したCD47の存在によって、有意に低下した。固定化hCD47は、bCD47と比較して、THP−1結合を低下させることにおいて、8倍より効率的であった。これは、上記hCD47固定化フィルムと、上記抗hCD47抗体とをプレインキュベートすることによって逆転し、これにより、THP−1結合を、bCD47固定化フィルムと匹敵するレベルへ増大させた。上記抗体は、bCD47固定化フィルムへのTHP−1結合に対して有意な効果を示さなかった。
【0056】
(実施例8:hCD47およびbCD47を固定化したポリウレタン皮下移植物の酸化的分解の阻害)
ラット皮下移植片モデルは、移植した生体材料に対する慢性炎症的効果を調査するためのインビボモデルとして利用されてきた(Stachelek,SJら(2007)J.Biomed.Mater.Res.A 82(4):1004−11)。実施例6に記載されるPE分解研究と同様に、ポリウレタン(PU)皮下インプラントの亀裂研究を、ラットにおいて行った。
【0057】
全ての手順および動物管理を、Children’s Hospital of PhiladelphiaのIACUCによって承認されたとおり、実験動物の飼育および使用に関するNIH標準に従った。1群あたり5匹のラットの各々に、非改変PUまたは共有結合されたヒトCD47(hCD47)もしくはウシCD47(bCD47)で改変したPU表面、あるいは3つのフィルムの組み合わせから構成される、3つの1cm
2 PUフィルムを与えた。簡潔には、300〜350gの雄性Sprague−Dawleyラットを、イソフルランで麻酔し、痛覚脱失のために、手術後にフルボキサミン(Flunixamine)を投与した。PUインプラントを、個々に切開した背側皮下の嚢に入れた。動物に、研究期間にわたって、通常のPurina Rat Chowを自由給餌させた。上記研究の70日目の終わりには、ラットを二酸化炭素窒息によって安楽死させ、上記皮下インプラントを取り出し、生理食塩水でさっとすすぎ、以下に記載されるようにさらに種々の試験を行なった。
【0058】
上記ラットは、10週間のポリウレタン(PU)皮下インプラントに耐え、病的状態も感染の証拠も示さなかった。外植に際して、全てのサンプルを、容易に同定し、これを酸化関連分解の証拠の評価のために種々の試験を行なった。
図8Aに示されるように、hCD47改変PUフィルムから抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析は、上記10週間の移植後にhCD47の存在を示した。上記非改変PUから抽出したタンパク質において、免疫反応性のバンドは認められなかった。これら結果は、上記CD47改変が、インビボで10週間後ですら維持されていたことを示す。
【0059】
外移植されたフィルムを細胞除去し(decellularized)、FTIRを介して、酸化的分解の証拠について評価した。ポリウレタンエラストマーの酸化は、1174cm
−1スペクトルピークにおいてのピーク強度の増加と一致することが十分に示されてきた(Stachelek,SJら(2006)J.Biomed.Mater.Res.A.78:653−61)。上記1174cm
−1は、酸化的分解のマーカーとして同定された分枝鎖エーテルのυ(C−O−C)に割り当てられ、エーテル架橋の程度は、上記1174cm
−1スペクトルピーク強度を、1595cm
−1スペクトルピークのピーク強度で正規化することによって定量的に決定され得る。上記1595cm
−1ピークは、酸化されていない芳香族環に対応する。
図8Bに示されるように、hCD47もしくはbCD47のいずれかの固定化が、上記ポリウレタンのエーテルの異常な架橋を有意に低下させた。
【0060】
上記外移植したフィルムの走査型電子顕微鏡写真(
図8C〜8E)は、最も広範的な表面亀裂が、上記非改変PU表面上に観察されることを示し、上記CD47改変PU表面は、僅かな亀裂の証拠を示したのみであった。上記hCD47改変表面(
図8D)とbCD47改変表面(
図8E)との間の亀裂の比較は、いかなる認識可能な差異も示さなかった。
【0061】
(実施例9:流動条件下でのCD47改変ポリビニルクロリド(PVC)チューブ類への白血球結合の阻害)
上記Chandlerループを使用して、実施例5に記載されるプロトコルを使用して流動条件下で白血球結合に対する上記CD47改変ポリビニルクロリド(PVC)と、非改変チューブ類もしくはポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)で改変したPVCチューブ類(TerumoのX Coating
TM)との表面の効果を比較した。
【0062】
図9は、上記非改変PVCチューブ類の表面、ならびにPMEAで改変したPVCチューブ類の表面への強い細胞結合を示す。形態は、これら結合した細胞が赤血球ではなく、白血球であることを示す。上記CD47改変PVCチューブ類では、細胞結合が乏しいとの証拠が得られた。定量分析から、上記非改変PVCチューブ類もしくは上記PMEA改変Terumoチューブ類(Terumo−X)と比較して、上記CD47改変表面への細胞結合において20倍の低下が示される。これらデータは、PVCチューブ類に表面結合したCD47の抗炎症性効果を示す。
【0063】
本発明のシステム、方法、および他の局面に関連する種々の用語が、本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される。このような用語は、別段示されなければ、当該分野でそれらの通常の意味を与えられるべきである。
【0064】
本発明は、上記に記載されかつ例示された実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲の等価物の範囲(scope and range)内のバリエーションおよび改変が可能である。