特許第5674777号(P5674777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674777
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】分析物モニタリング装置および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   A61B5/14 331
【請求項の数】26
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2012-517811(P2012-517811)
(86)(22)【出願日】2010年6月26日
(65)【公表番号】特表2012-531947(P2012-531947A)
(43)【公表日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】US2010040118
(87)【国際公開番号】WO2011002693
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2013年6月26日
(31)【優先権主張番号】12/495,803
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン,ベンジャミン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カリンカ,シュリダラ アルヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イー
(72)【発明者】
【氏名】ギャラッソ,ジョン アール
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−511374(JP,A)
【文献】 特開平07−311196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型モニタおよびディスプレイユニットにおいて、
筐体、
前記筐体内に配置された無線周波数(RF)レシーバであって、経皮分析物センサからの分析物信号に関連するデータを送信するように構成され配置されたトランスミッタからデータを受信するためのレシーバ、
前記筐体に連結され、生体外分析物センサを収容するように構成された分析物センサポートであって、前記生体外分析物センサが、該生体外分析物センサ上に配置された流体サンプルに関連する分析物信号を発生するものである分析物センサポート、および
前記筐体内に配置されたプロセッサであって、前記生体外分析物センサにより生成された前記分析物信号に少なくともある程度基づいて前記経皮分析物センサからの分析物信号に関連するデータを検証するように構成されたプロセッサ、
を備え、
前記分析物センサポートが、所定の較正パラメータに関連付けられていない第1のタイプの生体外分析物センサおよび前記所定の較正パラメータに関連付けられた第2のタイプの生体外分析物センサを収容するように構成されており、
前記較正パラメータは前記生体外分析物センサを較正するためのものであることを特徴とする一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記第1のタイプの生体外分析物センサが前記分析物センサポート内に収容されたときに、第1の所定のルーチンを実行するように構成されており、該プロセッサが、前記第2のタイプの生体外分析物センサが前記分析物センサポート内に収容されたときに、第2の所定のルーチンを実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項3】
前記分析物センサポートにより配置される生体外分析物センサをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項4】
前記第1のタイプの生体外分析物センサが、該第1のタイプの生体外分析物センサが前記分析物センサポート内に収容された際に、該第1のタイプの生体外分析物センサに関連する較正情報の使用者による入力を要求することを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項5】
前記所定の較正パラメータを記憶するように構成されたメモリをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項6】
前記所定の較正パラメータが較正コードを含むことを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項7】
前記分析物センサポートが、前記第2のタイプの生体外分析物センサの表面上の挿入モニタと接触するように構成され、前記プロセッサが、前記第2のタイプの生体外分析物センサの前記挿入モニタに基づいて前記所定の較正パラメータの関連性を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記挿入モニタの形状に基づいて前記所定の較正パラメータの関連性を決定するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記挿入モニタの位置に基づいて前記所定の較正パラメータの関連性を決定するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記挿入モニタの電気的特徴に基づいて前記所定の較正パラメータの関連性を決定するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記挿入モニタの抵抗に基づいて前記所定の較正パラメータの関連性を決定するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項12】
前記分析物センサポートが、前記挿入モニタと接触するように構成された第1の接触構造および第2の接触構造を含むことを特徴とする請求項7記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項13】
前記第2のタイプの生体外分析物センサが、前記所定の較正パラメータに関連付けられた較正調節された生体外分析物センサであることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項14】
前記所定の較正パラメータが、前記第2のタイプの生体外分析物センサに使用されるユニバーサル較正パラメータであることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記経皮分析物センサからの分析物信号の変化速度が所定の許容範囲内にあるか否かを判定することによって前記データを検証するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記経皮分析物センサからの分析物信号が所定の許容分析物信号範囲内にあるか否かを判定することによって前記データを検証するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記皮下分析物センサからの分析物信号に関連するデータに基づいて治療行為を推奨するおよび/または実行する前に、前記データを検証するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項18】
前記RFレシーバが、所定の時間間隔で前記トランスミッタにより送信されたデータを受信するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項19】
前記分析物がグルコースであることを特徴とする請求項1記載の一体型モニタおよびディスプレイユニット。
【請求項20】
体サンプルがその上に配置された生体外分析物検査片の存在を、該検査片を収容するように構成された検査片ポートを含む一体型モニタを使用して、検出する工程、
記検査片ポート内に前記検査片を検出した際に、該検査片が、使用者が較正情報を入力する必要がある第1のタイプであるか、較正が自動的である第2のタイプであるかを判定する工程、
前記一体型モニタを使用し前記生体外検査片の判定されたタイプに応じて、前記流体サンプルに基づいて前記検査片により生成される1つ以上の信号を処理する工程、および
前記一体型モニタを使用してトランスミッタから、各々がモニタされた分析物レベルに対応する複数の時間間隔の空いた信号を無線で受信する工程、
を有してなる方法であって、
前記検査片により生成された前記1つ以上の信号を処理する工程が、
前記検査片の判定されたタイプが前記第1のタイプであるときに、該検査片に関連付けられた較正パラメータを提供するリクエストを生成し、前記検査片の判定されたタイプが前記第2のタイプであるときに、該検査片に関連付けられた前記較正パラメータを検索するものであり、
前記較正パラメータは前記検査片を較正するためのものであることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記リクエストされた較正パラメータが受け取られたときに、前記第1のタイプの検査片により生成される前記1つ以上の信号に基づいて、対応する分析物レベルを決定する工程、または検索された前記較正パラメータに基づいて第2のタイプの検査片により生成された前記1つ以上の信号に基づいて対応する分析物レベルを決定する工程を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記一体型モニタを使用して、検索された前記較正パラメータに基づいて、使用者のやりとりなく自動的に、前記第2のタイプの検査片により生成された前記1つ以上の信号を較正する工程を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項23】
処理された前記1つ以上の信号に基づいて、前記一体型モニタを使用して、受信された前記複数の時間間隔の空いた信号を較正する工程を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項24】
体、
前記筐体に連結された検査片インターフェース、
前記筐体内に配置された1つ以上のプロセッサ、および
命令を記憶するための、前記筐体内に配置されたメモリ、
を備えた装置であって、
前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたときに、該1つ以上のプロセッサに、
(1)前記検査片インターフェースで流体サンプルがその上に配置された生体外分析物検査片の存在を検出させ、
(2)該検査片インターフェース内で該検査片の存在を検出した際に該検査片が、使用者が較正情報を前記装置に入力する必要がある第1のタイプであるか、較正が自動的である第2のタイプであるかを判定させ、
(3)前記1つ以上のプロセッサを使用し前記検査片の判定されたタイプに応じて、前記流体サンプルに基づいて該検査片により生成される1つ以上の信号を処理させ、
(4)トランスミッタからの、各々がモニタされた分析物レベルに対応する、複数の時間間隔の空いた信号を無線で受信させ、
(5)前記検査片の判定されたタイプが前記第1のタイプである場合には、該検査片に関連付けられた較正パラメータを提供するように、リクエストを生成させるものであり、前記検査片の判定されたタイプか前記第2のタイプである場合には、前記メモリから該検査片に関連付けられた前記較正パラメータを検索させるように、リクエストを生成させるものであり、
前記較正パラメータは前記検査片を較正するためのものであることを特徴とする装置。
【請求項25】
前記メモリが、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたときに、該1つ以上のプロセッサに、検索された前記較正パラメータに基づいて、使用者のやりとりなく自動的に、前記第2のタイプの検査片により生成される前記1つ以上の信号を較正させる命令を含むことを特徴とする請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記メモリが、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたときに、該1つ以上のプロセッサに、前記検査片により生成された前記1つ以上の信号に基づくモニタされた分析物レベルに対応する、受信された前記複数の時間間隔の空いた信号を較正させる命令を含むことを特徴とする請求項24記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2001年1月16日に発行された「分析物モニタリング装置および使用方法」と題する米国特許第6175752号の継続出願である、2003年5月20日に発行された「分析物モニタリング装置および使用方法」と題する米国特許第6565509号の継続出願である、2003年4月18日に出願された米国特許出願第10/420057号の一部継続出願である、2005年11月1日に出願された米国特許出願第11/265787号の一部継続出願である、2009年6月30日に出願された米国特許出願第12/495803号に優先権を主張するものであり、これらの各々の開示を全ての目的についてここに引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、グルコースや乳酸(lactate)などの分析物の生体内(in vivo)モニタのための装置および方法に関する。より詳しくは、本発明は、分析物のレベルについての情報を患者に提供するために電気化学センサを使用した分析物の生体内モニタのための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルコースまたは乳酸や酸素などの他の分析物のレベルのモニタリングが、特定の個人においては、その人達の健康にとって生命にかかわるほど重要である。高レベルまたは低レベルのグルコースまたは他の分析物には有害な影響があるであろう。グルコースのモニタリングは、糖尿病を患った個人にとって特に重要である。何故ならば、その人達は、体内のグルコースレベルを減少させるためにいつインスリンが必要であるかを、または体内のグルコースのレベルを上昇させるためにいつ追加のグルコースが必要であるかを判定しなければならないからである。
【0004】
血糖レベルを個人的にモニタするために多くの糖尿病患者により使用されている従来の技法は、定期的な採血、その血液の検査片への塗布、および熱量、電気化学、または光度検出を使用した血糖レベルの決定を含む。この技法では、体内のグルコースレベルの連続または自動モニタリングが可能ではなく、この技法は定期的に手作業で行わなければならない。残念ながら、グルコースのレベルが調べられる一貫性は、個人個人で幅広く変動する。多くの糖尿病患者は、定期検査を不都合と感じており、時折、グルコースレベルの検査を忘れたり、適切な検査の時間がないことがある。その上、ある個人は、検査に伴う痛みを避けたいと望んでいる。これらの状況のために、高血糖または低血糖が発現されてしまうのであろう。個人のグルコースレベルを連続的または自動的にモニタする生体内グルコースセンサにより、個人がグルコースや他の分析物のレベルをより容易にモニタすることが可能になるであろう。
【0005】
血流中または間質液中のグルコースなどの分析物の連続または自動モニタのために様々な装置が開発されてきた。これらの数多くの装置では、患者の血管中または皮下組織中に直接埋め込まれた電気化学センサが使用される。しかしながら、これらの装置は、多くの場合、再現可能で安価に数多く製造することが難しい。その上、これらの装置は、典型的に大きく、嵩張り、および/または柔軟性がなく、患者が活動を制限されない限り、その多くが、病院や診療室などの管理された医療施設の外部で効果的に使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ある装置は、患者の皮膚の上またはその近くに配置され、センサを適所に保持するために患者に取り付けられるセンサガイドを含む。これらのセンサガイドは、典型的に嵩張り、自由に動かすことができない。その上、センサガイドまたはセンサは、センサからの信号を分析器に送るためにセンサを他の機器に接続するケーブルまたはワイヤを備えている。センサガイドのサイズおよびケーブルやワイヤの存在により、これの装置を毎日の適用に都合よく使用することができなくなる。患者の動作および活動を実質的に制限せずに、センサを作動でき、信号を分析器に提供できる小型で嵩張らない装置が必要とされている。
【0007】
センサが埋め込まれている間の患者の快適さおよび実行できる活動範囲が、グルコースなどの分析物のレベルの連続的または自動的な生体内モニタリングのための長期間使用するセンサを設計する上での重要な検討事項である。グルコースなどの分析物のレベルを連続的にモニタできる一方で、それでも患者が通常の活動に参加できるようにする小型の快適な装置が必要とされている。分析物の連続的および/または自動的モニタリングにより、分析物のレベルが閾値レベルまたはその近くにあるときに、患者に警告を与えることができる。例えば、グルコースが分析物である場合、モニタ装置は、患者に現状のまたは切迫した高血糖症または低血糖症を警告するように構成されるであろう。すると、患者は適切な処置をすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本発明は、皮下埋込可能なセンサを使用した、分析物のレベルの連続的および/または自動的生体内モニタリングのための方法および装置に関する。これらの装置の多くは、小型であり、使用時に快適であり、それによって、幅広い範囲の活動が可能になる。ある実施の形態は、皮膚上に配置するために適合された筐体を有するセンサ制御ユニットである。この筐体は、電気化学センサの一部を収容するようにも適合されている。トランスミッタが、筐体内に配置され、センサを使用して得られたデータを送信するために複数の導電接点に接続される。センサ制御ユニットは、例えば、皮膚に接着するための接着剤、取付ユニット、レシーバ、処理装置、電源(例えば、電池)、警報システム、データ記憶ユニット、監視回路、および温度測定回路などの様々な随意的な構成要素も含んでよい。他の随意的な構成要素が以下に記載されている。
【0009】
本発明の別の実施の形態は、上述したセンサ制御ユニットを含むセンサアセンブリである。センサアセンブリは、少なくとも1つの作用電極および作用電極に連結された少なくとも1つの導体パッドを有するセンサも含む。このセンサは、例えば、対電極、対/参照電極、参照電極、および温度プローブなどの随意的な構成要素も含んでよい。センサの他の構成要素およびオプション部品が以下に記載されている。
【0010】
本発明のさらに別の実施の形態は、上述したセンサ制御ユニットを含む分析物モニタリングシステムである。分析物モニタリングシステムは、少なくとも1つの作用電極および作用電極に連結された少なくとも1つの導体パッドを有するセンサも含む。この分析物モニタリングシステムは、センサ制御ユニットからデータを受信するためのレシーバおよび分析物のレベルを表示するための、レシーバに連結されたディスプレイを有するディスプレイユニットも含む。ディスプレイユニットは、例えば、トランスミッタ、分析器、データ記憶ユニット、監視回路、入力装置、電源、時計、ランプ、ポケットベル(pager)、電話インターフェース、コンピュータ・インターフェース、警報装置または警報システム、および較正ユニットなどの様々な構成要素を必要に応じて含んでよい。ディスプレイユニットのさらに別の構成要素およびオプション部品が以下に記載されている。その上、分析物モニタリングシステムまたは分析物モニタリングシステムの構成要素は、薬剤または治療プロトコルを決定できるプロセッサおよび/または薬剤送達システムを必要に応じて含んでよい。
【0011】
本発明のさらに別の実施の形態は、電気化学センサを患者に挿入するための挿入キットである。挿入キットは挿入機を含む。挿入機の一部分は、電気化学センサの挿入中に、センサを支持するように適合された鋭い剛性の平らな構造を有する。この挿入キットは、電気化学センサおよび挿入機を受け取るように構成されたポートを有する挿入ガンも含む。挿入ガンは、挿入機と電気化学センサを駆動するための駆動機構、およびセンサを患者内に残しながら、挿入機を取り出すための引っ込み式機構を有する。
【0012】
別の実施の形態は、電気化学センサを使用する方法である。取付ユニットを患者の皮膚に接着する。挿入ガンを取付ユニットのポートと整合させる。電気化学センサを挿入ガン内に配置し、次いで、挿入ガンを使用して、電気化学センサを患者の皮膚中に挿入する。挿入ガンを取り外し、センサ制御ユニットの筐体を取付ベースに取り付ける。筐体に配置された複数の導電接点を電気化学センサに配置された複数の導体パッドに連結して、センサを使用する準備をする。
【0013】
本発明のある実施の形態は、埋め込まれた分析物感応センサの故障を検出する方法である。分析物感応センサを患者に埋め込む。分析物感応センサは、Nが整数であり2以上である、N個の作用電極、および共通の対電極を含む。次いで、N個の作用電極の内の1つおよび共通の対電極で発生した信号が得られ、センサが、共通の対電極からの信号が、所定の閾値範囲内である、作用電極の内の1つからの信号のN倍ではない場合、故障したと判定される。
【0014】
さらに別の実施の形態は、患者に埋め込まれた1つ以上の作用電極を有する電気化学センサを較正する方法である。作用電極の各々から信号が発生される。いくつかの条件を検査して、較正が適切であるか否かを判定する。第1に、1つ以上の作用電極の各々からの信号は、第1の閾値量未満しか異なるべきではない。第2に、1つ以上の作用電極の各々からの信号は、所定の範囲内にあるべきである。そして第3に、1つ以上の作用電極の各々からの信号の変化速度は、第2の閾値量未満であるべきである。患者の体液の較正サンプルを検定する較正値を見つける。次いで、その較正値を、上述した条件を満たした場合、1つ以上の作用電極からの信号の内の少なくとも1つに関連付ける。
【0015】
さらに別の実施の形態は、分析物のレベルをモニタする方法である。センサを患者の皮膚内に挿入し、センサ制御ユニットを患者の皮膚に取り付ける。センサ制御ユニット上の2つ以上の導電接点をセンサの導体パッドに連結する。次いで、センサ制御ユニットを使用して、センサが発生した信号から分析物のレベルに関するデータを収集する。収集したデータをディスプレイユニットに送信し、分析物のレベルがディスプレイユニットに表示される。
【0016】
本発明の上述した概要は、本発明の各開示の実施の形態または全ての実施を記載することを意図したものではない。図面と以下の詳細な説明は、これらの実施の形態をより詳しく例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付の図面と共に本発明の様々な実施の形態の以下の詳細な説明を検討した際により完全に理解されるであろう。
図1】本発明による、皮下に埋込可能な分析物センサを使用した皮下分析物モニタのある実施の形態を示すブロック図
図2】本発明による、分析物センサのある実施の形態の平面図
図3A図2の分析物センサの断面図
図3B】本発明による、分析物センサの別の実施の形態の断面図
図4A】本発明による、分析物センサの第3の実施の形態の断面図
図4B】本発明による、分析物センサの第4の実施の形態の断面図
図5図2の分析物センサの先端部分の拡大平面図
図6】本発明による、分析物センサの第5の実施の形態の断面図
図7図6の分析物センサの先端部分の拡大平面図
図8図6の分析物センサの先端部分の拡大下面図
図9図2の分析物センサの側面図
図10図6の分析物センサの平面図
図11図6の分析物センサの下面図
図12】本発明によるセンサおよび挿入装置のある実施の形態の拡大側面図
図13A図12の第1の挿入装置の実施の形態の断面図
図13B図12の第2の挿入装置の実施の形態の断面図
図13C図12の第3の挿入装置の実施の形態の断面図
図14】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットのある実施の形態の断面図
図15図14の皮膚上センサ制御ユニットのベースの上面図
図16図14の皮膚上センサ制御ユニットのカバーの下面図
図17】患者の皮膚上にある図14の皮膚上センサ制御ユニットの斜視図
図18A】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットのある実施の形態のブロック図
図18B】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの別の実施の形態のブロック図
図19A】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の内面に配置された導電接点の第1の実施の形態の断面図
図19B】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の内面に配置された導電接点の第2の実施の形態の断面図
図19C】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の内面に配置された導電接点の第3の実施の形態の断面図
図19D】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の内面に配置された導電接点の第4の実施の形態の断面図
図19E】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の外面に配置された導電接点の第1の実施の形態の断面図
図19F】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットの筐体の外面に配置された導電接点の第2の実施の形態の断面図
図20A】本発明による、分析物モニタ装置に使用する電流・電圧変換器の第1の実施の形態の概略図
図20B】本発明による、分析物モニタ装置に使用する電流・電圧変換器の第2の実施の形態の概略図
図21】本発明による、分析物モニタ装置に使用する開ループ変調システムのある実施の形態のブロック図
図22】本発明による、レシーバ/ディスプレイユニットのある実施の形態のブロック図
図23】レシーバ/ディスプレイユニットの第1の実施の形態の正面図
図24】レシーバ/ディスプレイユニットの第2の実施の形態の正面図
図25】本発明による、薬剤送達システムのある実施の形態のブロック図
図26】本発明による、挿入ガンの内部構造の斜視図
図27A】本発明による、皮膚上センサ制御ユニットのある実施の形態の上面図
図27B図27Aの皮膚上センサ制御ユニットの取付ユニットのある実施の形態の上面図
図28A】本発明による、挿入装置およびセンサの挿入後の皮膚上センサ制御ユニットの別の実施の形態の上面図
図28B図28Aの皮膚上センサ制御ユニットの取付ユニットのある実施の形態の上面図
図28C図28Aの皮膚上センサ制御ユニットの電子部品の少なくとも一部分の筐体のある実施の形態の上面図
図28D図28Cの筐体の下面図
図28E】筐体のカバーが取り外された、図28Aの皮膚上センサ制御ユニットの上面図
図29A】抗凝固剤被覆のないセンサと比べた抗凝固剤が設けられたセンサに関する時間に関するセンサ信号の差を示す例示のチャート
図29B】抗凝固剤被覆のないセンサと比べた抗凝固剤が設けられたセンサに関する時間に関するセンサ信号の差を示す例示のチャート
図30】患者内にセンサを配置して1時間後に較正が行われるシステムに関するクラーク・エラー・グリッド分析(Clarke Error Grid Analysis)を示すチャート
図31】患者内にセンサを配置して10時間後に初期較正が行われるシステムに関するクラーク・エラー・グリッド分析を示すチャート
図32図30の1時間後の較正データと図31の10時間後の較正データとの間の比較を示すチャート
図33図30の1時間後の較正データと図31の10時間後の較正データとの間の全体的な比較を示す表
図34】10時間後に較正したセンサから得られた精度データの臨床的に許容される程度を示す、5日間に亘る、検査片を使用して得られたグルコース計測器の読取値と比べた、10時間後に較正した実施の形態におけるセンサからのデータ精度を示すチャート
図35】5日間に亘る毎日のMARD値の変化を示す表
図36A】使用者の較正コーディングを必要とする生体外(in vitro)分析物検査片および使用者の較正コーディングを必要としない生体外分析物検査片を処理し、生体内分析物検査システムと一体化された、生体外分析物検査システムの実施の形態を示す説明図
図36B】使用者の較正コーディングを必要とする生体外(in vitro)分析物検査片および使用者の較正コーディングを必要としない生体外分析物検査片を処理し、生体内分析物検査システムと一体化された、生体外分析物検査システムの実施の形態を示す説明図
図36C】使用者の較正コーディングを必要とする生体外(in vitro)分析物検査片および使用者の較正コーディングを必要としない生体外分析物検査片を処理し、生体内分析物検査システムと一体化された、生体外分析物検査システムの実施の形態を示す説明図
図36D】使用者の較正コーディングを必要とする生体外(in vitro)分析物検査片および使用者の較正コーディングを必要としない生体外分析物検査片を処理し、生体内分析物検査システムと一体化された、生体外分析物検査システムの実施の形態を示す説明図
図37】本開示のある態様による、図36A〜36Dに示されたレシーバ/ディスプレイユニット446/448の単純化されたブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な改変および代わりの形態にしたがうが、その詳細は、図面に例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、本発明を記載された特定の実施の形態に制限することは意図されていないのが理解されよう。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の精神および範囲内に入る全ての改変、同等物、および代替物を包含する。
【0019】
本発明は、流体中のグルコースや乳酸などの分析物の濃度を生体内測定するための埋込可能なセンサを使用した分析物モニタリングシステムに適用できる。センサは、例えば、患者の間質液中の分析物を連続的または定期的にモニタするために、患者の皮下に埋め込むことができる。次いで、これを使用して、患者の血流中のグルコースレベルを推測することができる。静脈、動脈、または流体を含有する体の他の部分に挿入するための他の生体内分析物センサを本発明にしたがって製造することができる。分析物モニタリングシステムは、典型的に、数日から数週間またはそれより長期に及ぶかもしれない期間に亘り分析物のレベルをモニタするために構成されている。
【0020】
ここに使用されている用語について、以下の定義が与えられる:
「対電極」は、作用電極と対になる電極を称し、作用電極を通る電流と大きさが等しく符号が反対の電流を通す。本発明に関して、「対電極」という用語は、参照電極としても機能する対電極(すなわち、対/参照電極)を含むことを意味する。
【0021】
「電気化学センサ」は、センサにおける電気化学酸化および還元反応によりサンプル中の分析物の存在を検出するおよび/または分析物のレベルを測定するように構成された装置である。これらの反応は、サンプル中の分析物の量、濃度、またはレベルに相関付けられる電気信号に変換される。
【0022】
「電気分解」は、電極で直接、または1種類以上の電子移動剤を通じてのいずれかでの化合物の電気酸化または電気還元である。
【0023】
化合物は、表面上に捕捉されるまたは化学結合されるときにその表面に「固定化」される。
【0024】
「浸出不能な」または「放出不能な」化合物もしくは「浸出不能に配置された」化合物は、センサが使用される期間(例えば、センサが患者に埋め込まれている期間、またはサンプルを測定する期間)に亘り、作用電極の作用表面から離れて実質的に拡散しないようにセンサに取り付けられた化合物を定義することを意味する。
【0025】
成分は、例えば、その成分がセンサの構成要素に共有、イオン、または配位結合されたときに、および/または移動性を妨げる高分子またはゾルゲルマトリクスまたは被膜内に捕捉されたときに、センサ内に「固定化」されている。
【0026】
「電子移動剤」は、直接的に、または他の電子移動剤と協同してのいずれかで、分析物と作用電極との間で電子を伝達する化合物である。電子移動剤の一例は、レドックス・メディエータである。
【0027】
「作用電極」は、分析物(またはそのレベルが分析物のレベルに依存する第2の化合物)が、電子移動剤の媒介にかかわらず、電気酸化または電気還元される電極である。
【0028】
「作用表面」は、電子移動剤で被覆されたかまたはそれに到達でき、分析物含有流体に曝露されるように構成された作用電極の部分である。
【0029】
「検出層」は、分析物の電気分解を促進させる成分を含むセンサの構成要素である。検出層は、電子移動剤、分析物の反応を触媒して電極での応答を生じる触媒、またはその両方などの成分を含んでよい。センサのいくつかの実施の形態において、検出層は、作用電極に隣接してまたはその上に浸出不能に配置されている。
【0030】
「非腐食性」導電材料としては、炭素および導電性高分子などの非金属材料が挙げられる。
【0031】
分析物センサシステム
本発明の分析物モニタリングシステムは様々な条件下で利用できる。この分析物モニタリングシステムに使用されるセンサおよび他のユニットの特定の構成は、分析物モニタリングシステムが意図される用途、および分析物モニタリングシステムが動作する条件に依存するであろう。分析物モニタリングシステムのある実施の形態は、患者または使用者に埋め込まれるように構成されたセンサを含む。例えば、血中の分析物レベルを直接検査するために動脈系または静脈系にセンサを埋め込んでもよい。あるいは、間質液中の分析物レベルを決定するために間質組織内にセンサを埋め込んでもよい。このレベルは、血液または他の流体中の分析物レベルに相関付けてもおよび/または変換されてもよい。埋込みの部位および深さは、センサの特定の形状、構成要素、および形態に影響するであろう。いくつかの場合には、センサの埋込みの深さを制限するために、皮下埋込みが好ましいであろう。他の流体中の分析物レベルを決定するために、体の他の領域にセンサを埋め込んでもよい。本発明の分析物モニタリングシステムに使用するのに適切なセンサの例が、ここに引用する、米国特許第6134461号として発行された米国特許出願第09/034372号明細書に記載されている。
【0032】
埋込可能なセンサ42に使用する、特に皮下に埋込可能なセンサに使用する分析物モニタリングシステム40のある実施の形態が図1にブロック図の形態で示されている。分析物モニタリングシステム40は、最低限で、その一部が患者への埋込み(例えば、皮下、静脈、または動脈埋込み)のために構成されたセンサ42、およびセンサ制御ユニット44を含む。センサ42は、典型的に患者の皮膚に取り付けられるセンサ制御ユニット44に連結される。センサ制御ユニット44はセンサ42を作動させ、これには、例えば、センサ42の電極間に電圧を提供し、センサ42から信号を収集することが含まれる。センサ制御ユニット44は、センサ42からの信号を評価しても、および/または評価のために1つ以上の随意的なレシーバ/ディスプレイユニット46,48に信号を送信してもよい。センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、分析物の現在のレベルを表示するかまたは他の様式で伝達する。さらに、センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、分析物のレベルが閾値レベルまたはその近くにあるときに、例えば、聞こえる、見える、または他の感覚を刺激する警報を通じて、患者に合図する。いくつかの実施の形態において、センサの電極または随意的な温度プローブの一方を通じて、警告として電気ショックを患者に与えても差し支えない。例えば、グルコースをモニタする場合、低血糖または高血糖グルコースレベルおよび/または切迫した低血糖症または高血糖症に対して患者を警告するために、アラームを使用してもよい。
【0033】
センサ
センサ42は、図2に示されるように、基板50上に形成された少なくとも1つの作用電極58を含む。センサ42は、少なくとも1つの対電極60(または対/参照電極)および/または少なくとも1つの参照電極62(図8参照)を含んでもよい。対電極60および/または参照電極62は、基板50上に形成しても、または別個のユニットであってもよい。例えば、対電極および/または参照電極は、これも患者に埋め込まれる第2の基板上に形成されても、または埋込可能なセンサのいくつかの実施の形態について、作用電極が患者に埋め込まれた状態で、対電極および/または参照電極を患者の皮膚の上に配置してもよい。埋込可能な作用電極と共に皮膚上の対および/または参照電極を使用することが、全ての目的のためにここに引用する米国特許第5593852号明細書に記載されている。
【0034】
作用電極58は、基板50上に配置された導電性トレース52を使用して形成される。対電極60および/または参照電極62(図3B参照)、並びに温度プローブ66(図8参照)などのセンサ42の他の随意的部分も、基板50上に配置された導電性トレース52を使用して形成してもよい。これらの導電性トレース52は、基板50の滑らかな表面上に、または例えば、エンボス加工、押込加工、または他の様式で基板50に凹部を形成することによって、通路54(図3A参照)内に形成してもよい。特に分析物が、裸電極上において所望の速度でおよび/または所望の特異性で電気分解できない場合、分析物の電気化学検出およびサンプル流体中のそのレベルの決定を促進するために、作用電極58の少なくとも1つに近接して、またはその上に、検出層64(図3Aおよび3B参照)を形成することが多い。検出層64は、分析物と作用電極58との間に電子を直接的または間接的に移動させるために電子移動剤を含んでもよい。検出層64は、分析物の反応を触媒するために触媒を含有してもよい。検出層の成分は、作用電極58に近接したまたは接触した流体またはゲル内にあってもよい。あるいは、検出層64の成分は、作用電極58に近接したまたはその上にある高分子またはゾルゲルマトリクス内に配置されてもよい。検出層64の成分がセンサ42内に浸出不能に配置されることが好ましい。センサ42の成分がセンサ42内に固定化されることがより好ましい。
【0035】
電極58、60、62および検出層64に加え、センサ42は、温度プローブ66(図6および8参照)、質量輸送制限層74(図9参照)、生体適合層75(図9参照)、および/または以下に記載されるような他の随意的な構成要素も含んでよい。これらのアイテムの各々が、以下に記載するように、センサ42の機能および/またはそれからの結果を向上させる。
【0036】
基板
基板50は、例えば、高分子またはプラスチック材料およびセラミック材料を含む、様々な非導電性材料を使用して形成してよい。特定のセンサ42に適切な材料は、少なくとも一部には、センサ42の所望の用途および材料の性質に基づいて決定してよい。
【0037】
いくつかの実施の形態において、基板は可撓性である。例えば、センサ42が患者内への埋込みのために構成されている場合、センサ42は、センサ42の埋込みおよび/または装着により生じる患者への痛みおよび組織への損傷を軽減するように可撓性(埋込可能なセンサに剛性センサを使用してもよいが)に作製してもよい。可撓性基板50により、患者の快適さが増すことが多く、幅広い範囲の活動が可能になる。可撓性基板50に適した材料としては、例えば、非導電性プラスチックまたは高分子材料および他の非導電性可撓性、変形性材料が挙げられる。有用なプラスチックまたは高分子材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、Mylar(商標)およびポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミドなどの熱可塑性プラスチック、またはPETG(グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート)などのこれらの熱可塑性プラスチックのコポリマーが挙げられる。
【0038】
他の実施の形態において、センサ42は、例えば、曲げまたは破壊に対する構造的支持体を提供するために、比較的剛性の基板50を使用して製造される。基板50として使用してよい剛性材料の例としては、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素などの、導電性の不十分な材料が挙げられる。剛性基板を有する埋込可能なセンサ42の利点の1つは、センサ42が、追加の挿入装置を必要とせずに、センサ42の埋込みを補助する尖った先および/または尖った縁を有し得ることである。
【0039】
多くのセンサ42およびセンサ用途に関して、剛性センサおよび可撓性センサの両方が適切に作動するであろうと認識される。センサ42の可撓性は、例えば、基板50の組成および/または厚さを変えることによって、連続体に沿って制御し、変えてもよい。
【0040】
可撓性に関する検討事項に加え、多くの場合、埋込可能なセンサ42が非毒性の基板50を有するべきことが望ましい。基板50は、生体内用途について、一以上の適切な政府機関または民間団体により承認されることが好ましい。
【0041】
センサ42は、図12に示されるように、埋込可能なセンサ42の挿入を促進するための随意的な特徴構造を含んでもよい。例えば、センサ42は、挿入を容易にするために先端123で尖らせてもよい。その上、センサ42は、センサ42の作動中に患者の組織内にセンサ42をしっかりと固定するのを支援する返し125を含んでもよい。しかしながら、その返し125は、一般に、交換のためにセンサ42を取り出すときに、皮下組織にほとんど損傷が生じないほど十分に小さい。
【0042】
少なくともいくつかの実施の形態において基板50は、センサ42の全長に沿って均一な寸法を有するが、他の実施の形態において、基板50は、図2に示されるように、それぞれ、異なる幅53,55を持つ遠心端67および近接端65を有する。これらの実施の形態において、基板50の遠心端67は、比較的狭い幅53を有するであろう。患者の体の皮下組織または別の部分に埋込可能なセンサ42について、基板50の遠心端67の狭い幅53のために、センサ42の埋込みが容易になるであろう。センサ42の幅が狭いほど、センサの埋込中とその後に患者が感じる痛みが少なくなることが多い。
【0043】
患者の通常の活動中の分析物の連続的または定期的モニタリングのために設計された皮下に埋込可能なセンサ42について、患者内に埋め込むべきセンサ42の遠心端67は、2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の幅53を有する。センサ42が異なる幅の領域を有さない場合、センサ42は、一般に、例えば、2mm、1.5mm、1mm、0.5mm、0.25mm、またはそれ未満の全体の幅を有する。しかしながら、より幅広いまたは狭いセンサを使用してもよい。特に、静脈または動脈中に挿入するため、または患者の動作が制限されている場合、例えば、患者がベッドまたは院内に限られている場合、幅広い埋込可能なセンサを使用してもよい。
【0044】
図2に戻ると、センサ42の近接端65は、制御ユニットの電極および接点の導体パッド49の間の接続を容易にするために、遠心端67より広い幅55を有してもよい。この地点でセンサ42が幅広いほど、導体パッド49を大きく作ることができる。これにより、センサ42を制御ユニット(例えば、図1のセンサ制御ユニット44)上の接点に適切に接続するために必要な精度が減少するであろう。しかしながら、センサ42の最大幅は、センサ42が、患者の便宜および快適さのために、および/または分析物モニタの所望のサイズに適合するように、小さいままであるように制限されるであろう。例えば、図1に示されるセンサ42などの、皮下に埋込可能なセンサ42の近接端65は、0.5mmから15mm、好ましくは1mmから10mm、より好ましくは3mmから7mmに及ぶ幅55を有してよい。しかしながら、この用途と他の生体内用途に、より幅広いまたは狭いセンサを使用してもよい。
【0045】
基板50の厚さは、以下に論じられるように、基板材料の機械的性質(例えば、材料の強度、弾性率、および/または可撓性)、用途により生じる基板50への応力を含むセンサ42の所望の用途、並びに基板50に形成される任意の通路またはくぼみの深さにより決定してよい。一般に、患者が通常の活動に従事している間の分析物のレベルを連続的または定期的にモニタするための皮下に埋込可能なセンサ42の基板50は、50から500μm、好ましくは100から300μmの厚さを有する。しかしながら、特に他のタイプの生体内センサ42において、より厚いまたは薄い基板50を使用してもよい。
【0046】
センサ42の長さは、様々な要因に応じて幅広い範囲の値を有するであろう。埋込可能なセンサ42の長さに影響する要因としては、患者に埋め込む深さ、および小型の可撓性センサ42を操作し、センサ42とセンサ制御ユニット44との間の接続を行う患者の能力が挙げられるであろう。図1に示された分析物モニタのための皮下に埋込可能なセンサ42は、0.3から5cmに及ぶ長さを有してよいが、より長いまたは短いセンサを使用してもよい。センサ42が狭い部分と広い部分を有する場合、センサ42の狭い部分(例えば、患者の皮下に挿入される部分)の長さは、一般に、約0.25から2cmである。しかしながら、より長いまたは短い部分を使用してもよい。この狭い部分の全部または一部のみを患者の皮下に埋め込んでもよい。他の埋込可能なセンサ42の長さは、少なくとも一部には、センサ42を埋め込むべきまたは挿入すべき患者の部分に応じて様々であろう。
【0047】
導電性トレース
少なくとも1つの導電性トレース52を、作用電極58の構築に使用するための基板上に形成する。その上、電極(例えば、追加の作用電極、並びに対、対/参照、および/または参照電極)および温度プローブなどの他の構成要素として使用するために、他の導電性トレース52を基板50上に形成してもよい。導電性トレース52は、図2に示されるように、センサ42の長さ57に沿った距離のほとんどに延在してもよいが、これは必要ではない。導電性トレース52の配置は、分析物モニタリングシステムの特定の構成に依存するであろう(例えば、センサ42に対する制御ユニット接点および/またはサンプルチャンバの配置)。埋込可能なセンサ、特に皮下に埋込可能なセンサについて、導電性トレースは、典型的に、埋め込まなければならないセンサの量を最小にするためにセンサ42の先端に近接して延在する。
【0048】
導電性トレース52は、例えば、フォトリソグラフィー、スクリーン印刷、または他のインパクト印刷またはノンインパクト印刷技法を含む様々な技法によって基板50上に形成してよい。導電性トレース52は、レーザを使用して有機(例えば、高分子またはプラスチック)基板50中に導電性トレース52を炭化させることによって形成してもよい。センサ42を形成するためのいくつかの例示の方法が、ここに引用する、米国特許第6134461号として発行された米国特許出願第09/034422号明細書に記載されている。
【0049】
基板50上に導電性トレース52を配置する別の方法は、図3Aに示されるような、基板50の1つ以上の表面に陥凹通路54の形成およびこれらの陥凹通路54の導電材料56によるその後の充填を含む。陥凹通路54は、押込加工、エンボス加工、または基板50の表面に他の様式で凹部を形成する工程によって形成してもよい。基板の表面に通路および電極を形成するための例示の方法が、米国特許第6103033号として発行された米国特許出願第09/034422号明細書に見つかる。通路の深さは、典型的に、基板50の厚さに関連する。ある実施の形態において、通路は、約12.5から75μm(0.5から3ミル)、好ましくは約25から50μm(1から2ミル)の範囲の深さを有する。
【0050】
導電性トレースは、一般に、カーボン(例えば、グラファイト)、導電性ポリマー、金属または合金(例えば、金または金合金)、または金属化合物(例えば、二酸化ルテニウムまたは二酸化チタン)などの導電材料56を使用して形成される。カーボン、導電性ポリマー、金属、合金、または金属化合物の被膜の形成がよく知られており、その例としては、化学気相成長(CVD)、物理気相成長、スパッタリング、反応性スパッタリング、印刷、被覆、および塗装が挙げられる。通路54を充填する導電材料56は、導電性インクまたはペーストなどの前駆体材料を使用して形成されることが多い。これらの実施の形態において、導電材料56は、被覆、印刷、またはコーティングブレードなどの塗布器具を使用した材料の施用などの方法を使用して、基板50上に堆積される。次いで、通路54藍段の過剰の導電材料は、例えば、基板表面に沿ってブレードを移動させることによって除去される。
【0051】
ある実施の形態において、導電材料56は、例えば、Ercon, Inc.(マサチューセッツ州、ワラム)、Metch, Inc.(ペンシルベニア州、エルバーソン)、E.I.du Pont de Nemours and Co.(デラウェア州、ウィルミントン)、Emca-Remex Products(ペンシルベニア州、モンゴメリーヴィル)、またはMCA Services(英国、メルボルン)から得られる、導電性インクなどの前駆体材料の一部である。導電性インクは、一般に、カーボン、金属、合金、または金属化合物の粒子および溶媒または分散剤を含有する半流動体またはペーストとして施される。基板50上(例えば、通路54内)に導電性インクを施用した後、溶媒または分散剤が蒸発して、導電材料56の固体塊が後に残される。
【0052】
カーボン、金属、合金、または金属化合物の粒子に加え、導電性インクは結合剤を含有してもよい。結合剤を必要に応じて硬化させて、通路54内および/または基板50上に導電材料56をさらに結合させてもよい。結合剤の硬化により、導電材料56の導電率がさらに増加する。しかしながら、導電性トレース52内の導電材料により通る電流は比較的少ない(通常は1μA未満であり、100nA未満であることが多い)ので、このことは一般に必要ではない。典型的な結合剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体、エラストマー、および高フッ素化ポリマーが挙げられる。エラストマーの例としては、シリコーン、高分子ジエン、およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂が挙げられる。フッ素化ポリマー結合例の一例はテフロン(登録商標)(デラウェア州、ウィルミントン所在のDuPont)である。これらの結合剤は、例えば、紫外(UV)線を含む光または熱を使用して硬化される。適切な硬化方法は、一般に、使用される特定の結合剤に依存する。
【0053】
しばしば、導電材料56の液体または半流動体前駆体(例えば、導電性インク)を通路54内に堆積させたときに、その前駆体が通路54を満たす。しかしながら、溶媒または分散剤が蒸発したときに、残る導電材料56は、導電材料56が通路54を満たし続けるか、または満たし続けられないほど体積を失うかもしれない。好ましい導電材料56は、体積を失うので基板50から引き離されず、むしろ通路54内で高さが減少する。これらの導電材料56は、一般に、基板50に良好に接着し、したがって、溶媒または分散剤の蒸発中に基板50から引き離されない。他の適切な導電材料56は、基板50の少なくとも一部に接着する、および/または導電材料56を基板50に接着させる、結合剤などの別の添加剤を含有する。通路54内の導電材料56は、好ましくは浸出不能であり、より好ましくは、基板40上に固定化される。いくつかの実施の形態において、導電材料56は、溶媒または分散剤の除去を間に行いながら、液体または半流動体前駆体を複数回施用することによって形成してもよい。
【0054】
別の実施の形態において、通路54はレーザを使用して形成される。レーザは高分子またはプラスチック材料を炭化する。このプロセスで形成されるカーボンは導電材料56として使用される。導電性カーボンインクなどの追加の導電材料56を使用して、レーザにより形成されたカーボンを補ってもよい。
【0055】
さらに別の実施の形態において、導電性トレース52はパッド印刷技法により形成される。例えば、導電材料の被膜を、連続被膜、またはキャリア・フィルム上に堆積された被覆層のいずれかとして形成する。導電材料のこの被膜をプリントヘッドと基板50との間に持っていく。導電性トレース52の所望のパターンにしたがいプリントヘッドを使用して、基板50の表面にパターンを作製する。導電材料は、導電材料の被膜から圧力および/または熱によって基板50に転写される。この技法では、基板50に通路(例えば、プリントヘッドにより生じた凹部)が生じることが多い。あるいは、導電材料は、実質的な凹部を形成せずに、基板50の表面に堆積される。
【0056】
他の実施の形態において、導電性トレース52は、ノンインパクト印刷技法により形成される。そのような技法としては、電子写真術およびマグネトグラフィーが挙げられる。
【0057】
これらのプロセスにおいて、導電性トレース52の画像がドラム上に電気的または磁気的に形成される。レーザまたはLEDを使用して画像を電気的に形成してもよい。磁気記録ヘッドを使用して、画像を磁気的に形成してもよい。次いで、トナー材料(例えば、導電性インクなどの導電材料)が、その画像にしたがってドラムの部分に引き付けられる。次いで、そのトナー材料を、ドラムと基板との間の接触によって基板に施す。例えば、基板をドラムの上に転がしてもよい。次いで、トナー材料を乾燥させ、および/またはトナー材料中の結合剤を硬化させて、トナー材料を基板に接着してもよい。
【0058】
別のノンインパクト印刷技法としては、導電材料の液滴を所望のパターンで基板上に吐出することが挙げられる。この技法の例としては、インクジェット印刷および圧電ジェット印刷が挙げられる。画像はプリンタに送られ、次いで、このプリンタがパターンにしたがって導電材料(例えば、導電性インク)を吐出する。このプリンタが導電材料の連続流を提供しても、このプリンタが所望の地点で別個の量で導電材料を吐出してもよい。
【0059】
導電性トレースを形成するさらに別のノンインパクト印刷の実施の形態としては、イオノグラフィープロセスが挙げられる。このプロセスにおいて、光重合性アクリル樹脂(例えば、独国、バートクロイツナハ所在のCubitalからのSolimer 7501)などの硬化性液体前駆体を基板50の表面に堆積させる。次いで、導電性トレース52のポジまたはネガ画像を有するフォトマスクを使用して、その液体前駆体を硬化させる。フォトマスクを通して光(例えば、可視光または紫外線)を向けて、液体前駆体を硬化させ、フォトマスクの画像にしたがって基板上に固体層を形成する。未硬化の液体前駆体を除去して、固体層内に通路54が残される。次いで、これらの通路54に導電材料56を充填して、導電性トレース52を形成することができる。
【0060】
導電性トレース52(使用される場合には、および通路54)は、上述した方法によって、例えば、250μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μmまたはそれ未満の幅を含む、例えば、25から250μmの範囲にある比較的狭い幅で形成して差し支えない。基板50の同じ側に2つ以上の導電性トレース52がある実施の形態において、導電性トレース52は、導電性トレース52間の電気伝導を防ぐのに十分な距離だけ離されている。導電性トレース間の縁から縁の距離は、25から250μmの範囲にあることが好ましく、例えば、150μm、100μm、75μm、50μm、またはそれ未満であってよい。基板50上の導電性トレース52の密度は、約150から700μm/トレースの範囲にあることが好ましく、667μm/トレース以下、333μm/トレース以下、またはさらには167μm/トレース以下ほど小さくてよい。
【0061】
作用電極58および対電極60(別個の参照電極が使用される場合)は、カーボンなどの導電材料56を使用して製造されることが多い。適切なカーボン導電性インクは、Ercon, Inc.(マサチューセッツ州、ワラム)、Metch, Inc.(ペンシルベニア州、エルバーソン)、E.I.du Pont de Nemours and Co.(デラウェア州、ウィルミントン)、Emca-Remex Products(ペンシルベニア州、モンゴメリーヴィル)、またはMCA Services(英国、メルボルン)から得られる。一般に、作用電極58の作用表面51は、分析物含有流体と接触する導電性トレース52の少なくとも一部(例えば、患者に埋め込まれた)である。
【0062】
参照電極62および/または対/参照電極は、一般に、適切な参照材料、例えば、銀/塩化銀である導電材料56または導電材料に結合した非浸出性酸化還元対、例えば、炭素結合酸化還元対を使用して形成される。適切な銀/塩化銀導電性インクは、Ercon, Inc.(マサチューセッツ州、ワラム)、Metch, Inc.(ペンシルベニア州、エルバーソン)、E.I.du Pont de Nemours and Co.(デラウェア州、ウィルミントン)、Emca-Remex Products(ペンシルベニア州、モンゴメリーヴィル)、またはMCA Services(英国、メルボルン)から得られる。銀/塩化銀電極は、金属電極と、サンプルまたは体液の成分、この場合は、Cl-との反応を含む参照電極の1つのタイプを示す。
【0063】
参照電極の導電材料に結合するための適切な酸化還元対としては、例えば、酸化還元ポリマー(例えば、多数の酸化還元中心を有するポリマー)が挙げられる。参照電極の表面は、誤った電位が測定されないように非腐食性であることが好ましい。好ましい導電材料としては、金およびパラジウムなどのそれほど腐食性ではない金属が挙げられる。カーボンおよび導電性ポリマーなどの非金属導体を含む非腐食性材料が最も好ましい。酸化還元ポリマーは、導電性トレース52のカーボン表面などの、参照電極の導電材料の上に吸着されるか、またはそこに共有結合され得る。非高分子酸化還元対を同様にカーボンまたは金の表面に結合させても差し支えない。
【0064】
電極表面に酸化還元ポリマーを固定化するために、様々な方法を使用してよい。方法の1つは、吸着性固定化である。この方法は、比較的高分子量の酸化還元ポリマーにとって特に有用である。ポリマーの分子量は、例えば、架橋により増加させてもよい。
【0065】
酸化還元ポリマーを固定するための別の方法は、電極表面の官能化、次いで、酸化還元ポリマーの電極表面上の官能基への化学結合、しばしば共有結合を含む。このタイプの固定化の一例は、ポリ(4−ビニルピリジン)で始まる。ポリマーのピリジン環は、一部、bpyが2,2’−ビピリジンである[Os(bpy)2Cl]+/2+などの還元性/酸化性種と錯体を形成する。ピリジン環の部分は、2−ブロモエチルアミンとの反応により第四級化される。次いで、ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのジエポキシドを使用して架橋される。
【0066】
カーボン表面は、例えば、ジアゾニウム塩の電子還元によって、酸化還元種またはポリマーを付着させるために修飾しても差し支えない。実例として、p−アミノ安息香酸のジアゾ化の際に形成されるジアゾニウム塩の還元により、カーボン表面がフェニルカルボン酸官能基により修飾される。次いで、これらの官能基を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩などのカルボジイミドによって活性化することができる。次いで、活性化された官能基を、上述した第四級化されたオスミウム含有酸化還元ポリマーまたは2−アミノエチルフェロセンなどのアミン官能化酸化還元対と結合させて、酸化還元対を形成する。
【0067】
同様に、金を、シスタミンなどのアミンによって官能化しても差し支えない。[Os(bpy)2(ピリジン−4−カルボキシレート)Cl]0/+などの酸化還元対を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩により活性化して、反応性O−アシルイソ尿素を形成し、これが金結合アミンと反応して、アミドを形成する。
【0068】
ある実施の形態において、電極またはプローブ導線として導電性トレース52を使用することに加え、基板50上の2つ以上の導電性トレース52を使用して、例えば、分析物レベルが閾値レベルを超えたときに、患者に穏やかな電気ショックを与える。このショックは、分析物の適切なレベルに戻すためのある行為を開始させるために、患者に対する警告または警報として働くであろう。
【0069】
この穏やかな電気ショックは、そうしなければ導電路によって接続されない任意の2つの導電性トレース52の間に電位を印加することによって生じる。例えば、電極58,60,62の内の2つまたは1つの電極58,60,62と温度プローブ66を使用して、穏やかなショックを与えてもよい。作用電極58および参照電極62をこの目的に使用しないことが好ましい。何故ならば、これにより、特定の電極上のまたはそれに近接した化学成分(例えば、作用電極上の検出層または参照電極上の酸化還元対)に損傷が与えられるからである。
【0070】
穏やかなショックを発生させるために使用される電流は、一般に、0.1から1mAである。それより高いまたは低い電流を使用してもよいが、患者に損傷を与えないように注意すべきである。導電性トレース間の電位は、一般に、1から10ボルトである。しかしながら、例えば、導電性トレース52の抵抗、導電性トレース52間の距離、および所望の電流の量に応じて、それより高いまたは低い電圧を使用してもよい。穏やかなショックが与えられたときに、作用電極58での電位および温度プローブ66に亘る電位を取り除いて、穏やかなショックを与える導電性トレース52および作用電極58(および/または使用される場合、温度プローブ66)の間の望ましくない電気伝導により生じるそれら構成要素に対する損傷を防いでもよい。
【0071】
導体パッド
一般に、導電性トレース52の各々は導体パッド49を含む。導体パッド49は、単に、導体パッド49が制御ユニット(例えば、図1のセンサ制御ユニット)の導電接点と接触せしめられることを除いて、トレース52の残りから見分けの付かない導電性トレース52の一部分であってよい。しかしながら、より一般には、導体パッド49は、制御ユニット上の接点との接続を容易にするためにトレース52の他の領域より幅が広い導電性トレース52の領域である。導電性トレース52の幅と比べて導体パッド49を比較的大きく作ることによって、導体パッド49と制御ユニット上の接点との間の正確な位置合せの必要が、小さな導体パッドの場合よりも重大ではなくなる。
【0072】
導体パッド49は、一般に、導電性トレース52の導電材料56と同じ材料を使用して製造される。しかしながら、このことは必要ではない。金属、合金、および金属化合物を使用して導体パッド49を形成してもよいが、いくつかの実施の形態において、導体パッド49をカーボンまたは導電性ポリマーなどの他の非金属材料から製造することが望ましい。金属または合金導体パッドとは対照的に、カーボンおよび他の非金属導体パッドは、その導体パッド49が濡れた、湿った、または多湿の環境内にある場合、容易に腐食しない。特に導体パッド49および制御ユニットの接点が異なる金属または合金を使用して作られている場合、金属および合金は、これらの条件下で腐食してしまうであろう。しかしながら、制御ユニットの接点が金属または合金である場合でさえ、カーボンおよび非金属導体パッド49は著しくは腐食しない。
【0073】
本発明のある実施の形態は、導体パッド49を有するセンサ42および導電接点(図示せず)を有する制御ユニット44を含む。センサ42の作動中、導体パッド49および導電接点は互いに接触している。この実施の形態において、導体パッド49または導電接点のいずれかは、非腐食性導電材料を使用して製造される。そのような材料としては、例えば、カーボンおよび導電性ポリマーが挙げられる。非腐食性材料がグラファイトおよびガラス質炭素を含むことが好ましい。反対の導体パッドまたは導電接点は、カーボン、導電性ポリマー、金、パラジウム、または白金族金属などの金属、二酸化ルテニウムなどの金属化合物を使用して作られる。導体パッドおよび導電接点のこの構成により、一般に、腐食が減少する。センサが好ましくは3mMの、より好ましくは100mmのNaCl溶液中に配置されたときに、導体パッドおよび/または導電接点の腐食により生じる信号が、通常の生理学的範囲の濃度の分析物に曝露された場合、センサにより生じる信号の3%未満である。少なくともいくつかの皮下のグルコースセンサについて、通常の生理学的範囲にある分析物により生じる電流は、3から500nAに及ぶ。
【0074】
電極58,60,62の各々、並びに温度プローブ66(以下に記載されている)の2つのプローブ導線68,70が、図10および11に示されるように導体パッド49に接続されている。ある実施の形態において(図示せず)、導体パッド49は、導体パッド49が取り付けられるそれぞれの電極または温度プローブ導線と基板50の同じ側にある。
【0075】
他の実施の形態において、少なくとも一方の側の導電性トレース52は、図10および11に示されるように、基板のビアを通じて、基板50の反対の表面上の導体パッド49aに接続される。この構成の利点は、制御ユニット上の接点と、電極58,60,62の各々および温度プローブ66のプローブ導線68,70との間の接触が、基板50の一方の側から行えることである。
【0076】
さらに他の実施の形態において(図示せず)、基板を通じるビアを使用して、各導電性トレース52について、基板50の両側に導体パッドを提供する。導電性トレース52を導体パッド49aに接続するビアは、適切な地点で基板50を通る孔を形成し、次いで、その孔を導電材料56で充填することによって形成することができる。
【0077】
例示の電極構成
数多くの例示の電極構成を以下に記載するが、他の構成を使用してもよいことが理解されよう。図3Aに示されるある実施の形態において、センサ42は、2つの作用電極58a,58bおよび1つの対電極60を含み、この対電極は参照電極としても機能する。別の実施の形態において、センサは、図3Bに示されるように、1つの作用電極58a、1つの対電極60、および1つの参照電極62を含む。これらの実施の形態の各々は、電極の全てが基板50の同じ側に形成されたものとして示されている。
【0078】
あるいは、電極の内の1つ以上が、基板50の反対側に形成されてもよい。電極が2つの異なるタイプの導電材料56(例えば、カーボンおよび銀/塩化銀)を使用して形成されている場合、このことが都合よいであろう。次いで、少なくともいくつかの実施の形態において、基板50の各々の側にたった1つのタイプの導電材料56を施す必要があり、それによって、製造プロセスにおける工程数を減少させる、および/またはそのプロセスにおける位置合せの制約を緩和する。例えば、作用電極58が炭素系導電材料56を使用して形成され、参照または対/参照電極が銀/塩化銀導電材料56を使用して形成される場合、製造する際に、基板50の反対側に作用電極および参照または対/参照電極を形成してよい。
【0079】
別の実施の形態において、図6に示されるように、2つの作用電極58および1つの対電極60が基板50の一方の側に形成され、1つの参照電極62および2つの温度プローブ66が基板50の反対側に形成されている。センサ42のこの実施の形態の先端の反対側が、図7および8に示されている。
【0080】
検出層
酸素などのある分析物は、作用電極58上で直接、電気酸化または電気還元され得る。グルコースおよび乳酸などの他の分析物については、その分析物の電気酸化または電気還元を促進するために、少なくとも1種類の電子移動剤および/または少なくとも1種類の触媒の存在が要求される。作用電極58上で直接、電気酸化または電気還元され得る、酸素などの分析物に触媒を使用してもよい。これらの分析物について、各作用電極58は、その作用電極58の作用表面に近接してまたはその上に形成された検出層64を有する。一般に、検出層64は、センサ42の先端近くであることが多い、作用電極58の小さい部分の近くに、またはその部分のみに形成される。これにより、センサ42を形成するのに必要な材料の量が制限され、分析物含有流体(例えば、体液、サンプル流体、または分散媒)と接触するための最良の位置に検出層64が配置される。
【0081】
検出層64は、分析物の電気分解を促進するように設計された1種類以上の成分を含む。検出層64は、例えば、分析物の反応を触媒し、作用電極58での応答を生成する触媒、分析物と作用電極58との間で間接的または直接的に電子を移動させる電子移動剤、またはその両方を含んでよい。
【0082】
検出層64は、所望の成分(例えば、電子移動剤および/または触媒)の固体組成物として形成してもよい。これらの成分は、センサ42から浸出不能であることが好ましく、センサ42上に固定化されることがより好ましい。例えば、これらの成分を作用電極58上に固定化してもよい。あるいは、検出層64の成分は、作用電極58上に配置された1つ以上の膜または皮膜内もしくはそれらの間に固定化してもよい。固定化された検出層の例が、ここに引用される、米国特許第5262035号、同第5264104号、同第5264105号、同第5320725号、同第5593852号、および同第5665222号の各明細書、並びに「Electrochemical Analyte Sensors Using Thermostable Soybean Peroxidase」と題し、1998年2月11日に出願され、国際公開第1998/035053号パンフレットとして発行された国際特許出願第US98/002403号明細書に記載されている。
【0083】
いくつかの実施の形態において、検出層64の成分の1種類以上を、固体組成物を形成する代わりに、検出層64内の流体中に溶媒和、分散、または懸濁させてもよい。その流体は、センサ42に与えられても、または分析物含有流体からセンサ42により吸収されてもよい。このタイプの検出層64内に溶媒和、分散、または懸濁される成分は、この検出層から浸出不能である。非浸出性は、例えば、検出層の周りに、検出層64の成分の浸出を防ぐバリア(例えば、電極、基板、膜、および/または被膜)を設けることによって、達成してもよい。そのようなバリアの一例は、分散物を検出層64中に分散させて、検出層64の成分と接触させるが、検出層の成分(例えば、電子移動剤および/または触媒)の検出層64の外への拡散を減少させるかまたはなくす微孔性膜または皮膜である。
【0084】
様々な異なる検出層構成を使用して差し支えない。ある実施の形態において、図3Aおよび3Bに示されるように、検出層64は、作用電極58aの導電材料56上に堆積されている。検出層64は、作用電極58aの導電材料56を越えて延在してもよい。ある場合には、検出層64は、グルコースセンサの性能を落とさずに、対電極60または参照電極62上に延在してもよい。導電材料56が内部に堆積される通路54を利用するセンサ42について、導電材料56が通路54を満たさない場合には、検出層64の一部分が通路54内に形成されてもよい。
【0085】
作用電極58aと直接接触した検出層64は、分析物と作用電極との間で電子を直接的または間接的に移動させる電子移動剤、並びに分析物の反応を促進させる触媒を含有してもよい。例えば、それぞれ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ラッカーゼなどの触媒、およびそれぞれ、グルコース、乳酸、または酸素の電気酸化を促進する電子移動剤を含有する検出層を有するグルコース、乳酸、または酸素電極を形成してもよい。
【0086】
別の実施の形態において、検出層64は、作用電極58a上に直接は堆積されていない。代わりに、図4Aに示されるように、検出層64は、作用電極58aから離れて置かれ、分離層61により作用電極58aから分離されている。分離層61は、一般に、1つ以上の膜または皮膜を含む。分離層61は、作用電極58aを検出層64から分離することに加え、以下に記載するように、質量輸送制限層または干渉除去層としても働くであろう。
【0087】
一般に、作用電極58aと直接接触していない検出層64は、分析物の反応を促進させる触媒を含む。しかしながら、この検出層64は、作用電極58aから離れて置かれているので、一般に、作用電極58aから分析物に直接的に電子を移動させる電子移動剤を含まない。このタイプのセンサの一例は、検出層64中に酵素(例えば、それぞれ、グルコースオキシダーゼ、または乳酸オキシダーゼ)を含むグルコースまたは乳酸センサである。グルコースまたは乳酸は、酵素の存在下で第2の化合物(例えば、酸素)と反応する。次いで、第2の化合物が電極で電気酸化または電気還元される。電極での信号の変化は、流体中の第2の化合物のレベルの変化を示し、グルコースまたは乳酸レベルの変化に比例し、それゆえ、分析物レベルと相関する。
【0088】
別の実施の形態において、図4Bに示されるように、2つの検出層63,64が使用される。2つの検出層63,64の各々は、作用電極58a上にまたは作用電極58aに近接して独立して形成してよい。一方の検出層64は、必然的ではないが、一般に、作用電極58aから離れて置かれている。例えば、この検出層64は、分析物の反応を触媒して、生成化合物を形成する触媒を含んでもよい。次いで、生成化合物は第2の検出層63中で電気分解されるが、この検出層63は、作用電極58aと生成化合物との間で電子を移動させる電子移動剤および/または生成化合物の反応を触媒して作用電極58aで信号を生成する第2の触媒を含むであろう。
【0089】
例えば、グルコースまたは乳酸センサは第1の検出層64を含んでよく、この検出層64は、作用電極から離れて置かれ、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼを含有する。適切な酵素の存在下でのグルコースまたは乳酸の反応により、過酸化水素が形成される。第2の検出層63は、作用電極58a上に直接設けられ、過酸化水素に応答して電極で信号を生成するために、ペルオキシダーゼ酵素および電子移動剤を含有する。次いで、センサが示す過酸化水素のレベルが、グルコースまたは乳酸のレベルに関連付けられる。グルコースまたは乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼの両方が1つの検出層中に堆積された1つの検出層を使用して、同様に作動する別のセンサを製造することもできる。そのようなセンサの例が、ここに引用する、米国特許第5593852号明細書、米国特許第5665222号として発行された米国特許出願第08/540789号明細書、および「Electrochemical Analyte Sensors Using Thermostable Soybean Peroxidase」と題し、1998年2月11日に出願された、国際公開第1998/035053号パンフレットとして発行された国際出願第US98/002403号明細書に記載されている。
【0090】
いくつかの実施の形態において、作用電極58bの内の1つ以上は、図3Aおよび4Aに示されるように、対応する検出層64を有さないか、または分析物を電気分解するのに必要な1種類以上の成分(例えば、電子移動剤または触媒)を含有しない検出層(図示せず)を有する。この作用電極58bで生成される信号は、一般に、流体中のイオンなどの干渉物質または他の供給源から生じ、分析物に応答しない(分析物は電気酸化または電気還元されないので)。それゆえ、この作用電極58bでの信号は、バックグラウンド信号に相当する。このバックグラウンド信号は、例えば、作用電極58bでの信号を作用電極58aでの信号から差し引くことによって、完全に機能する検出層64と関連付けられた他の作用電極58aから得られた分析物信号から除去することができる。
【0091】
多数の作用電極58aを有するセンサを使用して、これらの作用電極58aで生成される信号または測定値を平均化することによって、より正確な結果が得られるであろう。その上、1つの作用電極58aで、または多数の作用電極での多数の読取値を平均化して、より正確なデータを得てもよい。
【0092】
電子移動剤
多くの実施の形態において、検出層64は、図3Aおよび3Bに示されるように、作用電極58の導電材料56と接触した1種類以上の電子移動剤を含有する。本発明のいくつかの実施の形態において、センサ42が患者に埋め込まれている期間中に、作用電極58からの電子移動剤の浸出はほとんどまたは全くない。拡散性または浸出可能な(すなわち、放出可能な)電子移動剤は分析物含有流体中に拡散し、したがって、時間経過でセンサの感度が減少することによって電極の有効性が低下する。その上、埋込可能なセンサ42内の拡散性または浸出性電子移動剤により、患者に損傷が生じるかもしれない。これらの実施の形態において、24時間に亘り、より好ましくは72時間に亘り分析物含有流体中に浸漬された後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%がセンサ上に堆積されたままである。特に、埋込可能なセンサについて、24時間に亘り、より好ましくは72時間に亘り37℃で体液中に浸漬された後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%がセンサ上に堆積されたままである。
【0093】
本発明のいくつかの実施の形態において、浸出を防ぐために、電子移動剤は、作用電極58上に、もしくは作用電極58上に配置された1つ以上の膜または皮膜の間またはその中に結合されているかまたは他の様式で固定化されている。電子移動剤は、例えば、高分子またはゾルゲル固定化技法を使用して作用電極58上に固定化してもよい。
【0094】
あるいは、電子移動剤は、直接的、または次に作用電極58に結合されるポリマーなどの別の分子を通じて間接的のいずれかで、作用電極58に化学的に(例えば、イオン、共有、または配位)結合してもよい。
【0095】
作用電極58a上への検出層64の施用は、図3Aおよび3Bに示されるように、作用電極58aの作用表面を形成する方法の1つである。電子移動剤は、電子の移動を媒介して、分析物を電気酸化または電気還元し、それによって、分析物を介して作用電極58と対電極60との間に電流を流すことができる。電子移動剤の媒介により、電極上での直接の電気化学反応に適していない分析物の電気化学分析が容易になる。
【0096】
一般に、好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)の酸化還元電位より数百ミリボルト高いか低い酸化還元電位を有する電気還元性および電気酸化性イオンまたは分子である。電子移動剤が、SCEに対して、約−150mVより還元性ではなく、約+400mVより酸化性ではないことが好ましい。
【0097】
電子移動剤は、有機、有機金属、または無機であってよい。有機酸化還元種の例は、キノンおよびその酸化状態でナイルブルーおよびインドフェノールなどのキノイド構造を有する種である。いくつかのキノンおよび部分酸化されたキンヒドロンは、システインのチオール基、リシンとアルギニンのアミン基、およびチロシンのフェノール基などのタンパク質の官能基と反応する。分析物含有流体中に干渉タンパク質が存在するので、これらの官能基のために、それらの酸化還元種が本発明のセンサのいくつかにとって不適切になるかもしれない。通常は、置換キノンおよびキノイド構造を有する分子は、タンパク質とそれほど反応性ではなく、好ましい。好ましい四置換キノンは、通常、1,2,3および4位に炭素原子を有する。
【0098】
一般に、本発明に使用するのに適した電子移動剤は、サンプルが分析されている期間中に電子移動剤の拡散損失を防ぐまたは実質的に減少させる構造または電荷を有する。好ましい電子移動剤としては、次に作用電極上に固定化できるポリマーに結合した酸化還元種が挙げられる。酸化還元種とポリマーとの間の結合は、共有結合、配位結合、またはイオン結合であってよい。有用な電子移動剤およびその製造方法が、ここに引用する、米国特許第5264104号、同第5356786号、および同第5320725号の各明細書に記載されている。どのような有機または有機金属酸化還元種もポリマーに結合でき電子移動剤として使用できるが、好ましい酸化還元種は、遷移金属化合物または錯体である。好ましい遷移金属化合物または錯体としては、オスミウム、ルテニウム、鉄、およびコバルト化合物または錯体が挙げられる。最も好ましいものは、オスミウム化合物および錯体である。以下に記載する酸化還元種の多くは、分散媒中または電子移動剤の浸出が許容される場合にはセンサの検出層中の電子移動剤として、一般に、高分子成分を含まずに、使用してもよいことが認識されよう。
【0099】
放出不能な高分子電子移動剤のタイプの1つは、高分子組成物中に共有結合した酸化還元種を含有する。このタイプの媒介物質の一例はポリ(ビニルフェロセン)である。
【0100】
放出不能な電子移動剤の別のタイプは、イオン結合した酸化還元種を含有する。一般に、このタイプの媒介物質としては、反対に荷電した酸化還元種に結合した荷電ポリマーが挙げられる。このタイプの媒介物質の例としては、オスミウムまたはルテニウムポリピリジル陽イオンなどの正に荷電した酸化還元種に結合したNafion(登録商標)(DuPont)などの負に荷電したポリマーが挙げられる。イオン結合した媒介物質の別の例は、フェリシアン化物またはフェロシアン化物などの負に荷電した酸化還元種に結合した第四級化されたポリ(4−ビニルピリジン)またはポリ(1−ビニルイミダゾール)などの正に荷電したポリマーである。好ましいイオン結合した酸化還元種は、反対に荷電した酸化還元ポリマー内に結合した高荷電酸化還元種である。
【0101】
本発明の別の実施の形態において、適切な放出不能な電子移動剤としては、ポリマーに配位結合した酸化還元種が挙げられる。例えば、その媒介物質は、オスミウムまたはコバルト2,2’−ビピリジル錯体のポリ(1−ビニルイミダゾール)またはポリ(4−ビニルピリジン)への配位により形成してもよい。
【0102】
好ましい電子移動剤は、各配位子が2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体などの窒素含有複素環を有する1つ以上の配位子を持つオスミウム遷移金属錯体である。さらに、好ましい電子移動剤は、ポリマー中に共有結合した1つ以上の配位子も有し、各配位子は、ピリジン、イミダゾール、またはそれらの誘導体などの窒素含有複素を少なくとも1つ有する。これらの好ましい電子移動剤は、その錯体を急速に酸化し還元できるように、互いと作用電極58との間で急速に電子を交換する。
【0103】
特に有用な電子移動剤の一例は、(a)ピリジンまたはイミダゾール官能基を有するポリマーまたはコポリマーおよび(b)各配位子が2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体を含有し、必ずしも同じではない2つの配位子と錯体を形成したオスミウム陽イオンを含む。オスミウム陽イオンと錯体形成するための2,2’−ビピリジンの好ましい誘導体は、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジンおよび4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジンなどの、モノ−,ジ−,およびポリアルコキシ2,2’−ビピリジンである。オスミウム陽イオンと錯体形成するための1,10−フェナントロリンの好ましい誘導体は、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリンおよび4,7−ジメトキシ−1,10−フェナントロリンなどの、モノ−,ジ−,およびポリアルコキシ−1,10−フェナントロリンである。オスミウム陽イオンと錯体形成するための好ましいポリマーとしては、ポリ(1−ビニルイミダゾール)(「PVI」と称される)およびポリ(4−ビニルピリジン)(「PVP」と称される)のポリマーおよびコポリマーが挙げられる。ポリ(1−ビニルイミダゾール)の適切なコポリマー置換基としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、および置換または第四級化N−ビニルイミダゾールが挙げられる。最も好ましいものは、オスミウムがポリ(1−ビニルイミダゾール)のポリマーまたはコポリマーに錯化された電子移動剤である。
【0104】
好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)に対して−100mVから約+150mVに及ぶ酸化還元電位を有する。電子移動剤の電位が−100mVから約+150mVに及ぶことが好ましく、その電位が−50mVから約+50mVに及ぶことがより好ましい。最も好ましい電子移動剤は、オスミウム酸化還元中心およびSCEに対して+50mVから−150mVに及ぶ酸化還元電位を有する。
【0105】
触媒
検出層64は、分析物の反応を触媒することのできる触媒も含んでよい。触媒は、いくつかの実施の形態において、電子移動剤として働いてもよい。適切な触媒の一例は、分析物の反応を触媒する酵素である。例えば、分析物がグルコースである場合、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ))、またはオリゴ糖デヒドロゲナーゼなどの酵素を使用してよい。分析物が乳酸である場合、乳酸オキシダーゼまたは乳酸デヒドロゲナーゼを使用してよい。分析物が酸素である、または分析物の反応に応答して酸素が生成されるまたは消費される場合、ラッカーゼを使用してよい。
【0106】
触媒が、センサ中の固体検出層の一部であるか、検出層内の流体中に溶媒和されているかにかかわらず、触媒がセンサ上に浸出不能に配置されていることが好ましい。触媒が作用電極58から患者中に不要に浸出するのを防ぐために、触媒がセンサ内(例えば、電極上および/または膜または皮膜内またはその間)に固定化されていることがより好ましい。このことは、例えば、触媒をポリマーに取り付ける、触媒を別の電子移動剤(上述したように、高分子であって差し支えない)により架橋させる、および/または1つ以上のバリア膜または皮膜に触媒より小さい細孔径を設ける、ことによって行ってもよい。
【0107】
上述したように、第2の触媒も使用してよい。この第2の触媒は、分析物の触媒反応から生じる生成化合物の反応を触媒するために使用されることが多い。第2の触媒は、一般に、電子移動剤と作用して、生成化合物を電気分解し、作用電極で信号を生成する。あるいは、第2の触媒は、以下の記載するように、干渉物質を除去する反応を触媒するために、干渉物質除去層内に提供されてもよい。
【0108】
本発明のある実施の形態は、触媒が、作用電極58の導電性トレース52を形成する導電材料56内で混合されたまたは分散された電気化学センサである。このことは、例えば、酵素などの触媒をカーボンインク内で混合し、その混合物を基板50の表面上の通路54中に施すことによって行ってもよい。触媒は、作用電極58から離れて浸出できないように通路54内に固定化されていることが好ましい。このことは、例えば、結合剤に適した硬化技法を使用して、カーボンインク内で結合剤を硬化させることによって行ってもよい。硬化技法としては、例えば、溶媒または分散剤の蒸発、紫外線への曝露、または熱への曝露が挙げられる。一般に、混合物は、触媒を実質的に劣化されない条件下に施す。例えば、触媒は、感熱性である酵素であってよい。酵素と導電材料の混合物を施し、好ましくは加熱期間を持続せずに、硬化させるべきである。この混合物は、蒸発またはUV硬化技法を使用して、または触媒が実質的に劣化されないほど十分に短い熱への曝露によって硬化させてもよい。
【0109】
生体内分析物センサに関する別の検討事項は、触媒の熱安定性である。多くの酵素は、生体温度で限られた安定性しか有さない。それゆえ、多量の触媒を使用する、および/または必要な温度(例えば、正常な体温について37℃以上)で熱安定性である触媒を使用することが必要であろう。熱安定性の触媒は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも一日、より好ましくは少なくとも三日間に亘り37℃に保持されたときに、その活性の5%未満しか損失しない触媒と定義してよい。熱安定性触媒の一例は、大豆ペルオキシダーゼである。この特別な熱安定性酵素は、同じかまたは異なる検出層中においてグルコースまたは乳酸オキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼと組み合わされた場合、グルコースまたは乳酸センサに使用してよい。熱安定性触媒および電気化学発明への使用のさらなる説明が米国特許同第5665222号明細書、および「Electrochemical Analyte Sensors Using Thermostable Soybean Peroxidase」と題し、1998年2月11日に出願され、国際公開第1998/035053号パンフレットとして発行された国際特許出願第US98/02403号明細書に見つかる。
【0110】
分析物の電気分解
分析物を電気分解するために、作用電極58と対電極60に電位(参照電位に対して)を印加する。印加される電位の最小の大きさは、特定の電子移動剤、分析物(分析物が電極で直接電気分解される場合)、または第2の化合物(そのレベルが分析物のレベルに依存する、酸素または過酸化水素などの第2の化合物が、電極で直接電気分解される場合)に依存することが多い。印加される電位は、通常等しいか、または所望の電気化学反応に応じて、どれも電極で直接電気分解される、電子移動剤、分析物、または第2の化合物の酸化還元電位よりも、酸化性または還元性である。作用電極での電位は、一般に、電気化学反応を完了またはほぼ完了へと推進するのに十分に大きい。
【0111】
電位の大きさは、尿酸塩、アスコルビン酸塩、およびアセトアミノフェンなどの干渉物質の重大な(分析物に応答して生成される電流により測定される)電気化学反応を防ぐために、必要に応じて制限してよい。電位の制限は、これらの干渉物質が、以下に記載するように、干渉物質制限バリアを提供すること、またはそこからバックグラウンド信号が得られる作用電極58b(図3A参照)を含むことなどにより、別の様式で除去された場合には、回避してもよい。
【0112】
作用電極58と対電極60との間に電位を印加すると、電流が流れる。この電流は、分析物またはそのレベルが分析物により影響を受ける第2の化合物の電気分解の結果である。ある実施の形態において、電気化学反応は電子移動剤および随意的な触媒を介して生じる。多くの分析物Bが、適切な触媒(例えば、酵素)の存在下で、電子移動剤Aにより生成物Cに酸化される(または還元される)。次いで、電子移動剤Aが電極で酸化される(または還元される)。電子が電極により収集され(またはそこから除去され)、結果として生じた電流を測定する。このプロセスが反応式(1)および(2)(触媒の存在下での酸化還元媒介物質Aによる分析物Bの還元について、同様の式が記載されるであろう)により示される:
【化1】
【化2】
【0113】
一例として、電気化学センサは、2つの浸出不能なフェロシアン化物陰イオン、2つの水素イオン、およびグルコノラクトンを生成する、グルコースオキシダーゼの存在下でのグルコース分子の2つの浸出不能なフェリシアン化物陰イオンとの反応に基づくものとしてよい。存在するグルコースの量は、浸出不能なフェロシアン化物陰イオンを浸出不能なフェリシアン化物陰イオンに電気酸化し、電流を測定することによって検定される。
【0114】
別の実施の形態において、そのレベルが分析物により影響を受ける第2の化合物が作用電極で電気分解される。ある場合には、分析物Dおよび第2の化合物、この場合、酸素などの反応体化合物Eが、反応式(3)に示されるように、触媒の存在下で反応する。
【化3】
【0115】
次いで、反応体化合物は、反応式(4)に示されるように、作用電極で直接酸化(または還元)される。
【化4】
【0116】
あるいは、反応体化合物Eは、反応式(5)および(6)に示されるように、電子移動剤H(必要に応じて触媒の存在下で)を使用して間接的に酸化(または還元)され、その後、電極で還元または酸化される。
【化5】
【化6】
【0117】
いずれの場合にも、作用電極での信号により示されるような、反応体化合物の濃度の変化は、分析物における変化と逆に対応する(すなわち、分析物のレベルが増加するにつれ、電極での信号および反応体化合物のレベルが減少する)。
【0118】
他の実施の形態において、関連する第2の化合物は、反応式(3)に示されるように、生成化合物Fである。生成化合物Fは、分析物Dの触媒反応により形成され、次いで、電極で直接電気分解されるか、または電子移動剤と、必要に応じて、触媒とを使用して、間接的に電気分解される。これらの実施の形態において、作用電極での生成化合物Fの直接的または間接的な電気分解から生じる信号は、分析物のレベルに直接対応する(生成化合物の他の供給源がない限り)。分析物のレベルが増加するにつれ、作用電極での信号および生成化合物のレベルが増加する。
【0119】
同じ結果を達成する異なる反応、すなわち、分析物またはそのレベルが分析物のレベルに依存する化合物の電気分解が数多くあることが当業者には認識されよう。反応式(1)から(6)は、そのような反応の非限定的例を示している。
【0120】
温度プローブ
様々な随意的アイテムがセンサに含まれてもよい。随意的アイテムの1つは、温度プローブ66(図8および11)である。温度プローブ66は、様々な公知の設計および材料を使用して製造してよい。ある例示の温度プローブ66は、温度依存特徴を有する材料を使用して形成された温度依存性要素72を通じて互いに接続された2つのプローブ導線68,70を使用して形成される。適切な温度依存特徴の一例は、温度依存性要素72の抵抗である。
【0121】
2つのプローブ導線68,70は、一般に、金属、合金、グラファイトなどの半金属、縮退半導体または高ドープト半導体、または小バンドギャップ半導体を使用して形成される。適切な材料の例としては、金、銀、酸化ルテニウム、窒化チタン、二酸化チタン、インジウムドープト酸化スズ、スズドープト酸化インジウム、またはグラファイトが挙げられる。温度依存性要素72は、一般に、プローブ導線と同じ導電材料、もしくは電圧源が温度プローブ66の2つのプローブ導線68,70に取り付けられたときに、温度依存性信号を提供する、抵抗などの温度依存特徴を有する、カーボンインク、炭素繊維、または白金などの別の材料の微細なトレース(例えば、プローブ導線68,70の断面より小さい断面を有する導電性トレース)を使用して製造される。温度依存性要素72の温度依存特徴は、温度により増加しても、または減少してもよい。温度依存性要素72の温度依存特徴は、生体温度の予測範囲(約25から45℃)に亘り温度にほぼ一次的であるが、これは必要ではない。
【0122】
一般に、温度の関数である振幅または他の性質を有する信号(例えば、電流)は、温度プローブ66の2つのプローブ導線68,70に亘り電位を印加することによって得ることができる。温度が変化するにつれ、温度依存性要素72の温度依存特徴は、信号の振幅における対応する変化により増加または減少する。温度プローブ66からの信号(例えば、プローブを流れる電流の量)は、例えば、温度プローブ信号を計測し、次いで、作用電極58での信号に、計測した温度プローブ信号を加えるか、またはそれから差し引くことによって作用電極58から得た信号と組み合わせてもよい。このようにして、温度プローブ66は、作用電極58の温度依存性を相殺するために、作用電極58からの出力の温度調節を行うことができる。
【0123】
温度プローブのある実施の形態は、図8に示されるように、間隔の置かれた2つの通路を接続する連結通路として形成された温度依存性要素72を備えた、間隔の置かれた2つの通路として形成されたプローブ導線68,70を含む。間隔の置かれた2つの通路は、金属、合金、半金属、縮退半導体、または金属化合物などの導電材料を含有する。連結通路は、プローブ導線68,70と同じ材料(その連結通路が、間隔の置かれた2つの通路より小さい断面を有するという条件で)を含有する。他の実施の形態において、連結通路中の材料は、プローブ導線68,70の材料とは異なる。
【0124】
この特定の温度プローブを形成するためのある例示の方法は、間隔の置かれた2つの通路を形成し、次いで、これらの通路に金属または合金導電材料を充填する各工程を含む。次いで、連結通路を形成し、次いで、これに所望の材料を充填する。連結通路中の材料は、間隔の置かれた2つの通路の各々内の導電材料と重なって、電気接続を形成する。
【0125】
温度プローブ66の適切な動作に関して、温度プローブ66の温度依存性要素72は、2つのプローブ導線68,70の間に形成された導電材料によって短絡され得ない。それに加え、体液またはサンプル流体内のイオン種による2つのプローブ導線68,70の間の電気伝導を防ぐために、温度依存性要素72の上に、好ましくは患者内に埋め込まれるプローブ導線68,70の部分の上に、被覆を設けてもよい。その被覆は、例えば、イオン伝導を防ぐために、温度依存性要素72およびプローブ導線68,70の上に配置された非導電性被膜であってよい。適切な非導電性被膜としては、例えば、Kapton(商標)ポリイミド被膜(デラウェア州、ウィルミントン所在のDuPont)が挙げられる。
【0126】
体液またはサンプル流体内のイオン種による伝導をなくすかまたは減少させる別の方法は、プローブ導線68,70に接続されたAC電圧源を使用することにある。このようにして、正と負のイオン種が、AC電圧の各半周期中に交互に引き付け、反発される。これにより、体液またはサンプル流体内のイオンの温度プローブ66への正味の引力は生じなくなる。次いで、温度依存性要素72を通るAC電流の最大振幅を使用して、作用電極58からの測定値を補正してよい。
【0127】
温度プローブは、電極と同じ基板上に配置することができる。あるいは、温度プローブは別個の基板上に配置してもよい。その上、温度プローブは、それ自体で、または他の装置と共に使用してもよい。
【0128】
温度プローブの別の実施の形態では、溶液(例えば、血液または間質液)の導電率の温度依存性を利用する。一般に、電解質含有溶液の導電率は、電解質の濃度が比較的一定であるとすると、溶液の温度に依存する。血液、間質液、および他の体液は、電解質のレベルが比較的一定である溶液である。それゆえ、センサ42は、公知の距離だけ間隔の置かれた2つ以上の導電性トレース(図示せず)を含むことができる。これらの導電性トレースの一部分は溶液に曝露され、導電性トレースの曝露された部分の間の導電率は、公知の技法(例えば、一定または公知の電流または電位の印加および導電率を決定するための、それぞれ、結果として生じた電位または電流の測定)を使用して測定される。
【0129】
導電率の変化は温度の変化に関連付けられる。この関係は、一次、二次、指数、または他の関係を使用してモデル化することができる。この関係に関するパラメータは、一般に、ほとんどの人々の間で著しく変動しない。温度プローブの較正は、例えば、温度を決定する独立した方法(例えば、温度計、光または電気温度検出器、または上述した温度プローブ66)を使用した各センサ42の較正、または1つのセンサ42を較正し、その較正を幾何学の均一性に基づくバッチにおいて他の全てのセンサについてその較正を使用することを含む様々な方法によって決定できる。
【0130】
生体適合層
随意的な生体適合被膜層75が、図9に示されるように、少なくとも、患者の皮下に挿入されるセンサ42の部分を覆って形成されている。この随意的な生体適合被膜層75は1つ以上の機能を果たしてよい。生体適合被膜層75は、大きな生体分子が電極中に浸透するのを防ぐ。このことは、排除すべき生体分子より小さい細孔径を有する生体適合被膜層75を使用することによって行われる。そのような生体分子は、電極および/または検出層64を塞ぎ、それによって、センサ42の有効性を減少させ、所定の分析物濃度について予測される信号振幅を変えてしまうであろう。作用電極58が塞がれると、センサ42の有効寿命が減少するであろう。生体適合層75は、センサ42へのタンパク質の付着、血栓の形成、およびセンサ42と体との間の他の望ましくない相互作用を防いでもよい。
【0131】
例えば、センサは、外部が生体適合被覆で完全にまたは部分的に被覆されていてもよい。好ましい生体適合被覆は、分析物含有流体と平衡状態にある少なくとも20質量%の流体を含有するヒドロゲルである。適切なヒドロゲルの例が、ここに引用する米国特許第5593852号明細書に記載されており、その例としては、ポリエチレンオキシドテトラアクリレートなどの架橋したポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0132】
干渉物質除去層
干渉物質除去層(図示せず)がセンサ42に含まれてもよい。干渉物質除去層は、生体適合層75内、または質量輸送制限層74(以下に記載する)に含まれても、もしくは別個の層であってもよい。干渉物質は、直接的にまたは電子移動剤を介して、電極で電気還元または電気酸化されて、擬似信号を生成する分子または他の種である。ある実施の形態において、被膜または膜が、1種類以上の干渉物質が作用電極58の周りの領域中に浸透するのを防ぐ。このタイプの干渉物質除去層は、分析物に対するよりも、干渉物質に対して、浸透性がずっと少ない。
【0133】
この干渉物質除去層は、高分子マトリクス中に含まれるNafion(登録商標)などのイオン成分を含んで、干渉物質除去層の、このイオン成分と同じ電荷を有するイオン性干渉物質に対する浸透性を減少させてもよい。例えば、負に帯電した化合物または負のイオンを形成する化合物を干渉物質除去層中に含んで、体液またはサンプル流体中の負の種の浸透を減少させてもよい。
【0134】
干渉物質除去層の別の例としては、干渉物質を除去する反応を触媒する触媒が挙げられる。そのような触媒の一例はペルオキシダーゼである。過酸化水素は、アセトアミノフェン、尿酸塩、およびアスコルビン酸塩などの干渉物質と反応する。この過酸化水素は、分析物含有流体に加えても、または例えば、それぞれ、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼの存在下で、グルコースまたは乳酸の反応によって、その場で生成させてもよい。干渉物質除去層の例としては、(a)架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用して架橋されたペルオキシダーゼ酵素、または(b)ペルオキシダーゼ糖酵素中のオリゴ糖基のNaIO4による酸化と、その後、形成されたアルデヒドの、ポリアクリルアミドマトリクス中のヒドラジド基へのカップリングでヒドラゾンを形成することを含み、これらが、ここに引用する米国特許第5262305号および同第5356786号の各明細書に記載されている。
【0135】
質量輸送制限層
分析物、例えば、グルコースまたは乳酸の、作用電極58の周りの領域中への質量輸送の速度を減少させるための拡散制限バリアとして働く質量輸送制限層74をセンサに含ませてもよい。分析物の拡散を制限することによって、作用電極58の近傍にある分析物の定常状態濃度(体液またはサンプル流体中の分析物の濃度に比例する)を減少させることができる。これにより、まだ正確に測定することができる分析物の上限範囲が広がり、電流が分析物のレベルとほぼ線形に増加する範囲も広がるであろう。
【0136】
分析物の制限層74を通る透過率は、温度による電流の変動を減少させるまたはなくすように、温度によりほとんどまたは全く変動しないことが好ましい。この理由のために、約25℃から約45℃、最も重要には30℃から40℃の生体関連温度において、被膜中の細孔径も、水和または膨潤のいずれも、過剰に変化しないことが好ましい。質量輸送制限層は、24時間に亘り5質量%未満しか流体を吸収しない被膜を使用して製造されることが好ましい。これにより、温度プローブのどのような必要性も減少するか回避されるであろう。埋込可能なセンサについて、37℃で24時間に亘り5質量%未満しか流体を吸収しない被膜を使用して、質量輸送制限層を製造することが好ましい。
【0137】
制限層74の特に有用な材料は、センサを検査する分析物含有流体中で膨潤しない膜である。適切な膜は、3から30,000nmの細孔径を含む。明確で均一な細孔径および高アスペクト比を持つ、5から500nmの細孔径を有する膜が好ましい。ある実施の形態において、細孔のアスペクト比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上である。
【0138】
明確で均一な細孔は、加速電子、イオン、または放射性原子核により放出された粒子を使用して、高分子膜をトラックエッチングによって製造することができる。加熱されたときに、細孔の方向におけるよりも、細孔に垂直な方向においてそれほど伸縮しない異方性で高分子のトラックエッチングされた膜が最も好ましい。適切な高分子膜は、Poretics(カリフォルニア州、リバーモア所在、カタログ番号19401、0.01μmの細孔径のポリカーボネート膜)およびCorning Coster Corp.(マサチューセッツ州、ケンブリッジ所在、0.015μmの細孔径のNucleopore(商標)ブランドの膜)からの膜が挙げられる。他のポリオレフィンおよびポリエステル被膜を使用してもよい。質量輸送制限膜の透過率は、膜が皮下間質液内にあるときに、30℃から40℃の範囲で、1℃当たり4%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下しか変化しないことが好ましい。
【0139】
本発明のいくつかの実施の形態において、質量輸送制限層74は、酸素のセンサ42中への流れも制限するであろう。これにより、酸素の分圧の変動がセンサ応答に非線形性を引き起こす状況に使用されるセンサ42の安定性を改善することができる。これらの実施の形態において、質量輸送制限層74は、この層が分析物の輸送を制限するよりも、酸素の輸送を少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%制限する。所定のタイプのポリマーについて、より大きい密度(例えば、結晶性ポリマーの密度に近い密度)を有する被膜が好ましい。ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルが、一般に、酸素に対する透過性が小さく、したがって、ポリカーボネート膜よりも好ましい。
【0140】
抗凝固剤
埋込可能なセンサは、必要に応じて、患者に埋め込まれる基板の一部分の上に配置された抗凝固剤を有してもよい。この抗凝固剤により、特にセンサの挿入後の、センサの周りでの血液または他の体液の凝固が減少するかなくなるであろう。血栓は、センサを塞いだり、センサ中に拡散する分析物の量を再生不可能に減少させてしまうかもしれない。有用な抗凝固剤の例としては、ヘパリンおよび組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)、並びに他の公知の抗凝固剤が挙げられる。
【0141】
抗凝固剤は、埋め込むべきセンサの部品の少なくとも一部分に施してよい。抗凝固剤は、例えば、水浴、吹付け、はけ塗り、または浸漬によって施してよい。抗凝固剤は、センサ42上で乾燥させる。抗凝固剤は、センサの表面上に固定化しても、またはセンサ表面から離れて拡散させてもよい。一般に、センサ上に配置される抗凝固剤の量は、血栓を含む病状の治療に一般に使用される量よりもずっと少なく、したがって、限られた局部的な効果しかない。
【0142】
図29A〜29Bを参照すると、例えば、ヘパリンなどの抗凝固剤または抗血栓剤を含むセンサと、どのような抗凝固剤または抗血栓剤も含まないセンサとの間の時間の経過による信号応答が示されている。図29A〜29Bに示されたデータは、それぞれ、2つの別個の供血者からの全血中に浸漬されたセンサからの電流信号レベルを示している。以下にさらに詳しく記載されるように、ヘパリンを含むセンサ42は、ヘパリンを含まないセンサ42’からの信号と比べて、より長い期間に亘り信号(電流)強度を示す。
【0143】
以下に説明するデータは、全血中のセンサ42について得たが、間質液を使用して、すなわち、ある実施の形態において、センサ42を患者の間質液中に配置して、同じような結果が得られるであろうと理解されよう。センサ42の挿入プロセス中、血管は切断され、それゆえ、患者の皮下に配置される際にセンサ42の位置でまたはその周りの位置で出血が生じる。さらに、時間の経過により間質液が凝固し、これにより、一般に、センサ42の周りに白血球および/または赤血球が凝集するであろう。センサ42の周りのこれらの密集した細胞が、グルコースを消費し、次に、グルコースがセンサ42に到達するのを遮断する。
【0144】
例として、例えば、ヘパリンなどの抗凝固剤または抗血栓剤が設けられた(例えば、それに被覆された)3つのセンサ42を、2人の異なる供血者からの全血中に配置し、センサ42の電気接点をそれぞれの電流モニタ装置に連結する。その上、ヘパリン被覆を有さないいくつかの対照センサ42’も、センサ42’の電気接点をそれぞれの電流モニタ装置に連結して、それぞれ、同じ全血中に配置する。次いで、センサ42,42’の全てからの電流信号レベルを所定の期間に亘り測定する。その結果が図29A〜29Bに示されている。
【0145】
図29A〜29Bを参照すると、3.5時間の期間に亘り、全血と接触した間、ヘパリン被覆を有するセンサ42からの電流信号は、ヘパリン被覆を有さないセンサ42’からの電流信号よりもずっと遅い速度で低下するのが分かる。言い換えれば、全血と接触したセンサ42の面積が、センサ42の周りで血栓を形成し、やがて、センサ42から検出される電流レベルが減衰するほど、センサ42への全信号を実質的に遮断してしまう。図29A〜29Bから、抗凝固剤または抗血栓剤(例えば、ヘパリンなどの)が設けられたセンサ42は、電流信号が減少する(または測定期間に亘り低下する)のにより長い時間がかかり、それゆえ、センサデータの精度が改善される。
【0146】
センサの寿命
センサ42は、生体内分析物モニタ、特に埋込可能な分析物モニタにおいて交換できる構成要素であるように設計してもよい。一般に、センサ42は数日間に亘り作動できる。作動期間は、好ましくは少なくとも一日、より好ましくは少なくとも三日間、最も好ましくは少なくとも一週間である。次に、センサ42を取り出し、新しいセンサと交換できる。センサ42の寿命は、電極のファウリングにより、もしくは電子移動剤または触媒の浸出によって、減少するであろう。センサ42の寿命へのこれらの制限は、上述したように、それぞれ、生体適合層75または浸出不能な電子移動剤および触媒の使用により克服できる。
【0147】
センサ42の寿命への別の主要な制限は、触媒の温度安定性である。多くの触媒は酵素であり、これらは、周囲温度に非常に敏感であり、患者の体温(例えば、人体については、約37℃)で劣化するであろう。それゆえ、入手できる場合には、丈夫な酵素を使用すべきである。センサ42は、十分な量の酵素が失活されて、測定に許容できない量の誤差が導入されたときに、交換すべきである。
【0148】
挿入装置
図12に示されるように、患者の皮下にセンサ42を挿入するために、挿入装置120を使用することができる。挿入装置120は、一般に、金属または剛性プラスチックなどの構造的に剛性の材料を使用して形成される。好ましい材料としては、ステンレス鋼およびABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)プラスチックが挙げられる。いくつかの実施の形態において、挿入装置120は、患者の皮膚の貫通を容易にするために、先端121で尖っているおよび/または鋭くなっている。鋭く薄い挿入装置により、センサ42の挿入の際に患者が感じる痛みが減少するであろう。他の実施の形態において、挿入装置120の先端121は、鈍端または平らな形状を含む他の形状を有する。これらの実施の形態は、挿入装置120が、皮膚を貫通するのではなく、センサ42が皮膚に押し付けられたときにセンサ42の構造的支持体として働く場合に、特に有用であろう。
【0149】
挿入装置120は、図13A,13Bおよび13Cに示されるように、様々な断面形状を有してよい。図13Aに示された挿入装置120は、患者の皮膚へのセンサ42の挿入を容易にするため、また挿入中のセンサ42への構造的支持を提供するために、センサ42に取り付けられたまたは他の様式で連結された剛性材料の平らな、平面状の尖った小片である。図13Bおよび13Cの挿入装置120は、センサ42が挿入中に曲がるまたは撓む量を制限するために、センサ42を支持するUまたはV字形器具である。図13Bおよび13Cに示された挿入装置120の断面幅124は、一般に、1mm以下、好ましくは700μm以下、より好ましくは500μm以下、最も好ましくは300μm以下である。図13Bおよび13Cに示された挿入装置120の断面高さ126は、一般に、約1mm以下、好ましくは約700μm以下、より好ましくは約500μm以下である。
【0150】
センサ42自体が、挿入を容易にするために随意的な特徴を含んでもよい。例えば、センサ42は、図12に示されるように、挿入を容易にするために、先端123で尖っていてもよい。その上、センサ42は、患者の皮下組織中にセンサ42を維持するのを補助する返し125を含んでもよい。返し125は、センサ42の作動中にセンサ42を患者の皮下組織内に固定するのも手伝うであろう。しかしながら、返し125は、一般に、交換のためにセンサ42を取り出すときに、皮下組織にほとんど損傷が生じないほど十分に小さい。センサ42は、挿入中にセンサ42に対して圧力を印加するが、挿入装置120を取り出すときに外れる該挿入装置内の対応構造(図示せず)と共に使用できるノッチ127を含んでもよい。挿入装置内のそのような構造の一例は、挿入装置120の2つの対向する側の間で、挿入装置120の適切な高さにあるロッド(図示せず)である。
【0151】
作動中、センサ42を挿入装置120内またはその隣りに配置し、次いで、センサ42を患者の皮膚中に運ぶために挿入装置120および/またはセンサ42に対して力を印加する。ある実施の形態において、センサ42に力を印加して、このセンサを皮膚中に押し込み、その間、挿入装置120は、静止したままであり、センサ42に構造的支持を与える。あるいは、挿入装置120および必要に応じてセンサ42に力を印加して、センサ42および挿入装置120の両方の一部分を患者の皮膚に通して皮下組織中に押し込む。センサ42と患者の組織との間の摩擦力のためにセンサ42が皮下組織内に留まりながら、挿入装置120を、必要に応じて、皮膚および皮下組織から引き抜く。センサ42が随意的な返し125を含む場合には、この構造は、返しが組織内に引っかかるので、間質組織内にセンサ42を保持するのが容易になるであろう。
【0152】
挿入装置120および/またはセンサ42に印加される力は、手動でまたは機械的に印加してもよい。センサ42を患者の皮膚に再現可能に挿入することが好ましい。ある実施の形態において、挿入ガンを使用してセンサを挿入する。センサ42を挿入するための挿入ガン200の一例が図26に示されている。挿入ガン200は筐体202およびキャリア204を含む。挿入装置120は、一般に、キャリア204上に取り付けられ、センサ42は、挿入装置120中に予め装填される。キャリア204は、挿入ガン200内の、例えば、セットされたまたは巻かれたバネ、圧縮ガスの噴出、第2の磁石により反発した電磁石などを使用して、センサ42および必要に応じて、挿入装置120を患者の皮膚中に押し込む。ある場合において、例えば、バネを使用する場合、キャリア204および挿入装置を、患者の皮膚に向けられるように、動かしても、セットしても、または他の様式で準備してもよい。
【0153】
センサ42が挿入された後、挿入ガン200は、患者の皮膚から挿入装置120を引き抜く機構を含んでもよい。そのような機構では、挿入装置120を除去するために、バネ、電磁石などを使用してよい。
【0154】
挿入ガンは再利用可能であってよい。挿入装置120は、汚染の可能性を避けるために使い捨てであることが多い。あるいは、挿入装置120を殺菌して、再利用してもよい。その上、挿入装置120および/またはセンサ42は、センサ42のファウリングを防ぐために、抗血栓剤で被覆してもよい。
【0155】
ある実施の形態において、センサ42を、皮下埋込みのために患者の間質組織中に2から12mmの間、挿入する。センサを間質組織中に好ましくは3から9mm、より好ましくは5から7mm、挿入する。本発明の他の実施の形態は、例えば、動脈、静脈、または臓器を含む患者の他の部分中に埋め込まれるセンサを含んでよい。埋込み深さは、所望の埋込標的に応じて様々である。
【0156】
センサ42は体内のどこに挿入してもよいが、挿入部位は、多くの場合、皮膚上センサ制御ユニット44を隠せるように配置することが望ましい。その上、挿入部位は、患者への痛みを減少させるために、大抵、神経終末の密度が低い体の位置であることが望ましい。センサ42の挿入に好ましい部位および皮膚上センサ制御ユニット44の位置決めの例としては、腹部、太股、脚、上腕、および肩が挙げられる。
【0157】
挿入角度は、皮膚の面から測定される(すなわち、皮膚に対して垂直にセンサを挿入するのは、90°の挿入角度となる)。挿入角度は、通常、10から90°、一般に、15から60°、たいてい30から45°に及ぶ。
【0158】
皮膚上センサ制御ユニット
皮膚上センサ制御ユニット44は、患者の皮膚上に配置されるように構成されている。皮膚上センサ制御ユニット44は、必要に応じて、患者にとって快適であり、例えば、患者の衣類の下に隠せるような形状で形成される。太股、足、上腕、肩、または腹部が、隠した状態を維持するように皮膚上センサ制御ユニット44を配置するための、患者の体の都合よい部分である。しかしながら、皮膚上センサ制御ユニット44を、患者の体の他の部分に配置してもよい。皮膚上センサ制御ユニット44のある実施の形態は、図14〜16に示されるように、隠しやすいように薄い楕円形状を有する。しかしながら、他の形状とサイズを使用してもよい。
【0159】
皮膚上センサ制御ユニット44の特定のプロファイル、並びに高さ、幅、長さ、質量、および容積は、様々であってよく、少なくとも一部は、以下に記載するように、皮膚上センサ制御ユニット44に含まれる構成要素および関連機能に依存する。例えば、いくつかの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44は、1.3cm以下、好ましくは0.7cm以下の高さを有する。いくつかの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44は、90グラム以下、好ましくは45グラム以下、より好ましくは25グラム以下の質量を有する。いくつかの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44は、約15cm3以下、好ましくは約10cm3以下、より好ましくは約5cm3以下、最も好ましくは約2.5cm3以下の容積を有する。
【0160】
皮膚上センサ制御ユニット44は、図14〜16に示されるように、筐体45を含む。筐体45は、一般に、患者の皮膚上に載置される1つの一体ユニットとして形成される。筐体45は、一般に、以下に記載するように、皮膚上センサ制御ユニット44の電子部品のほとんどまたは全てを収容する。皮膚上センサ制御ユニット44は、通常、他の電子部品または他の装置への追加のケーブルまたはワイヤを含まない。筐体が2つ以上の部品を含む場合、それらの部品は、一般に、互いに嵌って1つの一体ユニットを形成する。
【0161】
図14〜16に示される、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45は、例えば、プラスチックおよび高分子材料、特に剛性熱可塑性プラスチックおよびエンジニアリング・プラスチックを含む、様々な材料を使用して形成してよい。適切な材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマー、およびそれらのコポリマーが挙げられる。皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45は、例えば、射出成形、圧縮成形、注型および他の成形方法を含む様々な技法を使用して形成してよい。皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45内に中空または凹部領域を形成してもよい。以下に記載する皮膚上センサ制御ユニットの電子部品、および電池または警報音のためのスピーカなどの他のアイテムをその中空または凹部領域に配置してもよい。
【0162】
いくつかの実施の形態において、導電接点80は筐体45の外部に設けられる。他の実施の形態において、導体接点80は、例えば、中空または凹部領域内の、筐体45の内部に設けられる。
【0163】
いくつかの実施の形態において、電子部品および/または他のアイテムは、プラスチックまたは高分子材料が成形されるかまたは他の様式で形成されるときに、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45内に組み込まれる。他の実施の形態において、電子部品および/または他のアイテムは、成形材料が冷却されるとき、または成形材料が、柔軟になるように再加熱された後に、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45内に組み込まれる。あるいは、電子部品および/または他のアイテムは、ネジ、ナットとボルト、釘、ステープル、リベットなどの留め具、またはコンタクト接着剤、粘着剤、グルー、エポキシ、接着樹脂などの接着剤を使用して筐体45に固定してもよい。ある場合には、電子部品および/または他のアイテムは、筐体45に全く取り付けられない。
【0164】
いくつかの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45は単体である。導電接点80は、筐体45の外部に、または導電接点80にアクセスするようにセンサ42をそこを通じて向けられるポート78が筐体45内にあるという条件で、筐体45の内部に形成してもよい。
【0165】
他の実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45は、互いに嵌って、筐体45を形成する少なくとも2つの別個の部分、例えば、図14〜16に示されるように、基部34とカバー36に形成される。筐体45の2つ以上の部分は、互いから完全に別々であってもよい。あるいは、筐体45の2つ以上の部分の内の少なくともいくつかは、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45を形成するためのそれらの部分の連結を容易にするために、例えば、ヒンジによって互いに接続されていてもよい。
【0166】
皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45のこれらの2つ以上の別個の部分は、2つ以上の別の部分を容易におよび/またはしっかりと互いに連結できるように、例えば、組み合う複数の隆起部、またはある構成要素上の隆起部と別の構成要素上の相補的隆起部などの、相補的な組み合う構造を有してもよい。このことは、特に構成要素が、例えば、電池またはセンサ42を交換するときに、時折バラバラにされ、互いに嵌められる場合に有用であろう。しかしながら、例えば、ネジ、ナットとボルト、釘、ステープル、リベットなどを含む他の留め具を使用して、2つ以上の構成要素を互いに連結してもよい。その上、例えば、コンタクト接着剤、粘着剤、グルー、エポキシ、接着樹脂などを含む、永久的または一時的の両方の接着剤を使用してもよい。
【0167】
一般に、筐体45は、例えば、導電接点80を含む、筐体内の構成要素と流体の流れが接触するのを防ぐために少なくとも耐水性である。筐体が防水性であることが好ましい。ある実施の形態において、筐体45の2つ以上の構成要素、例えば、基部34とカバー36は、流体が皮膚上センサ制御ユニット44の内部に流入できないように、気密、防水性、または耐水性シールを形成するほど互いにしっかりと嵌る。このことは、特に、患者が、シャワー、入浴、または水泳などの活動に従事するときに、導電接点、電池、または電子部品などの、皮膚上センサ制御ユニット44内のアイテムの腐食電流および/または劣化を防ぐのに有用であろう。
【0168】
ここに用いたように、耐水性は、水深1メートルの海中に浸漬したときに、耐水性シールまたは筐体を通じて水が侵入しないことを意味する。ここに用いたように、防水性は、水深10メートル、好ましくは50メートルの海中に浸漬したときに、防水性シールまたは筐体を通じて水が侵入しないことを意味する。皮膚上センサ制御ユニットの電子回路、電源(例えば、電池)、および導電接点、並びにセンサの導体パッドが、耐水性、好ましくは防水性の環境内に収容されることが望ましいことが多い。
【0169】
基部34およびカバー36などの筐体45の部分に加え、製造中または製造後に組み立てられる、皮膚上センサ制御ユニット44の他の個別に形成された部品があってもよい。個別の形成された部品の一例は、基部34またはカバー36内の凹部に嵌る電子部品のカバーである。別の例は、基部34またはカバー36内に設けられる電池のカバーである。皮膚上センサ制御ユニット44のこれらの個々に形成された部品は、基部34、カバー36、または皮膚上センサ制御ユニット44の他の構成要素に、例えば、電子部品のカバーなどのように永久的に取り付けても、または例えば、電池の取外しできるカバーなどのように取外し可能に取り付けてもよい。これらの個別に形成された部品を取り付ける方法としては、ネジ、ナットとボルト、ステープル、釘、リベットなどの留め具、溝形構造などの摩擦式留め具、およびコンタクト接着剤、粘着剤、グルー、エポキシ、接着樹脂などの接着剤の使用が挙げられる。
【0170】
皮膚上センサ制御ユニット44のある実施の形態は、使い捨てユニットであって、このユニットを作動させるための電池を備えたユニットである。患者が開いたり取り除いたりする必要のあるユニットの部分がなく、それによって、ユニットのサイズが減少し、その構造が単純になる。皮膚上センサ制御ユニット44は、必要に応じて、電池の電力を節約するために、使用前に節電モードのままである。皮膚上センサ制御ユニット44は、使用されており、それ自体が作動していることを検出する。使用の検出は、多数の機構によるものであってよい。これらは、例えば、電気接点間の抵抗の変化の検出、皮膚上センサ制御ユニット44の取付ユニット77(図27Aおよび27B参照)との係合の際のスイッチの作動を含む。皮膚上センサ制御ユニット44は、一般に、もはや閾値範囲内で作動しないとき、例えば、電池または他の電源が十分な出力を生じない場合、交換される。多くの場合、皮膚上センサ制御ユニット44のこの実施の形態は、筐体45の外部に導電接点80を有する。センサ42が患者内に一度埋め込まれたら、導電接点80をセンサ42の導体パッド49と接触させるように、センサ制御ユニット44をセンサ42上に配置する。
【0171】
皮膚上センサ制御ユニット44は、一般に、図17に示されるように、患者の皮膚75に取り付けられる。皮膚上センサ制御ユニット44は、例えば、皮膚75に接触する皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45の少なくとも一部分に設けられる接着剤により皮膚上センサ制御ユニット44を患者の皮膚75に直接接着すること、またはセンサ制御ユニット44の縫合開口部(図示せず)を通して皮膚上センサ制御ユニット44を皮膚75に縫い合わせることを含む様々な技法によって取り付けてよい。
【0172】
皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45を皮膚75に取り付ける別の方法は、取付ユニット77の使用を含む。取付ユニット77は、皮膚上センサ制御ユニット44の一部であることが多い。適切な取付ユニット77の一例は、その一方の面が患者の皮膚の表面に接着され、他方の面が皮膚上センサ制御ユニット44に接着されている、両面接着片である。この実施の形態において、取付ユニット77は、そこを通してセンサ42を挿入できるほど大きい随意的な開口部79を有してよい。あるいは、センサは、薄い接着剤を通じて皮膚中に挿入してもよい。
【0173】
皮膚上センサ制御ユニット44を患者の皮膚75に、直接的または取付ユニット77を使用してのいずれかで接着するために、例えば、粘着剤(PSA)またはコンタクト接着剤を含む様々な接着剤を使用してよい。少なくとも、特定のセンサ42が患者内に埋め込まれている期間に亘り、全てのまたはほとんどの患者にとって刺激性ではない接着剤を選択することが好ましい。あるいは、第2の接着剤または他の皮膚保護化合物が、取付ユニット77上の接着剤により皮膚が刺激を受ける患者が、その第2の接着剤または他の皮膚保護化合物で皮膚を覆い、次いで、その第2の接着剤または他の皮膚保護化合物の上に取付ユニット77を配置できるように、取付ユニットに含まれてもよい。取付ユニット77上の接着剤は、もはや皮膚とは接触していないが、代わりに、第2の接着剤または他の皮膚保護化合物と接触しているので、患者の皮膚の刺激が実質的に防がれるはずである。
【0174】
センサ42を変える場合、例えば、過剰な刺激を避けるために、皮膚上センサ制御ユニット44を、患者の皮膚75の異なる位置に動かしてもよい。あるいは、皮膚上センサ制御ユニット44は、そのユニット44を動かすべきであると判断されるまで、患者の皮膚の同じ位置のままであってもよい。
【0175】
皮膚上センサ制御ユニット44に使用される取付ユニット77の別の実施の形態が図27Aおよび27Bに示されている。取付ユニット77および皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45が、例えば、図27Aに示されるように、組み合う様式で互いに取り付けられる。取付ユニット77は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマー、およびそれらのコポリマーを含む、プラスチックまたは高分子材料を使用して形成される。取付ユニット77は、例えば、射出成形、圧縮成形、注型、および他の成形方法を含む様々な技法を使用して形成してよい。
【0176】
取付ユニット77は、一般に、患者の皮膚に接着するために取付ユニット77の底面に接着剤を含むか、または取付ユニット77は、例えば、両面接着テープなどと共に使用される。取付ユニット77は、典型的に、図27Bに示されるように、センサ42がそこを通して挿入される開口部79を含む。取付ユニット77は、センサ42を適所に、皮膚上センサ制御ユニット44の導電接点80に対して保持するための支持構造220を備えてもよい。取付ユニット77は、必要に応じて、例えば、2つの相補的構造を整合させることによって、センサ42の適切な位置決めを容易にするために、センサ42上の開口部などの構造(図示せず)に対応する、取付ユニット77からの材料の延長部などの位置決め構造222も含む。
【0177】
別の実施の形態において、図28Aに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45を保護するおよび/または収容するための随意的なカバー206を有する接着パッチ204上に、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45と連結された取付ユニット77が設けられている。この随意的なカバーは、筐体45および/または取付ユニット77に取り付けるための接着剤または他の機構を含んでもよい。取付ユニット77は、一般に、図28Bに示されるように、センサ42がそこを通して配置される開口部49を含む。この開口部49は、挿入装置120または挿入ガン200(図26参照)を使用して、センサ42を開口部49に通して挿入できるように、必要に応じて構成されてもよい。皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45は、図28Cに示されるように、基部34およびカバー36を有する。図28Dに示されるような筐体45の下面図は、導電接点(図示せず)が、センサ42上の導体パッドと接触するようにそこを通して延在するポート230を示している。図28Eに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44内に、回路部品を取り付けるためのボード232を必要に応じて設けてもよい。
【0178】
いくつかの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44上および/または取付ユニット77の実施の形態のいずれの上の接着剤も、患者の皮膚75への皮膚上センサ制御ユニット44の接着を維持し、少なくともいくつかの実施の形態において、センサ制御ユニット44中への水の侵入を防ぎながら、シャワーおよび/または入浴などの活動を可能にするように耐水性または防水性である。耐水性または防水性の筐体45と組み合わせて耐水性または防水性の接着剤を使用することにより、センサ制御ユニット44内の構成要素および導電接点80とセンサ42との間の接触が、損傷または腐食から保護される。撥水性の非刺激性接着剤の一例はTegaderm(ミネソタ州、セントポール所在の3M)である。
【0179】
ある実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44は、図14から16に示されるように、センサ42が患者の皮下組織にそこを通って入るセンサポート78を含む。センサ42は、センサポート78を通じて患者の皮下組織に挿入してもよい。次いで、センサ42がセンサポート78に通された状態で、皮膚上センサ制御ユニット44を患者の皮膚上に配置してよい。センサ42の筐体45が、例えば、基部34およびカバー36を有する場合、患者がセンサ42を、導体接点80と接触するための適切に位置に導けるように、そのカバー36を取り外してよい。
【0180】
あるいは、導電接点80が筐体45内にある場合には、導体パッド49と導電接点80とが接触するまで、患者がセンサ42を筐体45内に滑り込ませてもよい。センサ制御ユニット44は、導体パッド49が導電接点80と接触する状態にセンサ42が一度適切に配置されたら、センサ42が筐体中にさらに摺動するのを妨げる構造を有してもよい。
【0181】
他の実施の形態において、導電接点80は、筐体45の外部にある(例えば、図27A〜27Bおよび28A〜28E参照)。これらの実施の形態において、患者は、センサ42の導体パッド49を導電接点80と接触するように導く。ある場合には、センサ42を適切な位置に導く案内構造を筐体45上に設けてもよい。そのような構造の一例としては、筐体45から延在し、センサ42の形状を有する一組のガイドレールが挙げられる。
【0182】
いくつかの実施の形態において、挿入装置120(図12参照)を使用してセンサ42を挿入する場合、挿入装置120または随意的な挿入ガン200(図26参照)の先端を、所望の挿入地点で皮膚または取付ユニット77に対して配置する。いくつかの実施の形態において、挿入装置120は、どのようなガイドも使用せずに皮膚上に配置される。他の実施の形態において、挿入装置120または挿入ガン200は、取付ユニット77内のガイド(図示せず)または皮膚上センサ制御ユニット44の他の部分を使用して配置される。いくつかの実施の形態において、ガイド、取付ユニット77内の開口部79、および/または皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45内のセンサポート78は、開口部79および/またはセンサポートに対する挿入装置120および/または挿入ガン200の向きを制限するように、挿入装置120および/または挿入ガン200の先端の形状に相補的な形状を有する。その結果、開口部79またはセンサポート78の相補形状を挿入装置120および/または挿入ガン200に合わせることによって、センサを患者に皮下挿入することできる。
【0183】
いくつかの実施の形態において、(a)ガイド、開口部79、またはセンサポート78および(b)挿入装置120または挿入ガン200の形状は、2つの形状が1つの向きにだけ合わせられるように構成されている。このことが、新しいセンサを患者に挿入する度にセンサ42を同じ向きに挿入するのに役立つ。いくつかの実施の形態においては、センサ42上の導体パッド49が皮膚上センサ制御ユニット44上の適切な導電接点80と正確に整合されることを確実にするために、挿入方向のこの均一性が要求されるであろう。その上、上述したように挿入ガンを使用することにより、センサ42が均一で再現可能な深さに挿入されることが確実になるであろう。
【0184】
センサ42および皮膚上センサ制御ユニット44内の電子部品は、図14〜16に示されるように、導電接点80を介して連結される。1つ以上の作用電極58、対電極60(または対/参照電極)、随意的な参照電極62、および随意的な温度プローブ66が個々の導電接点80に取り付けられる。図14〜16に示された実施の形態において、導電接点80は皮膚上センサ制御ユニット44の内部に設けられている。皮膚上センサ制御ユニット44の他の実施の形態は、筐体45の外部に配置された導電接点を有する。導電接点80の配置は、センサ42が皮膚上センサ制御ユニット44内に適切に配置されたときに、それらがセンサ42上の導体パッド49と接触するようなものである。
【0185】
図14〜16に示された実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44の基部34およびカバー36は、センサ42が皮膚上センサ制御ユニット44内にあり、基部34とカバー36が互いに嵌められたときに、センサ42が曲がるように形成される。このようにして、センサ42上の導体パッド49が皮膚上センサ制御ユニット44の導電接点80と接触させられる。皮膚上センサ制御ユニット44は、必要に応じて、センサ42を正確な位置に保持する、支持する、および/または案内する支持構造82を含んでもよい。
【0186】
適切な導電接点80の非限定的例が、図19A〜19Dに示されている。ある実施の形態において、導電接点80は、図19Aに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の構成要素、例えば、基部34およびカバー36が互いに嵌められたときに、センサ42上の導体パッド49と接触させられるピン84などである。センサ42上の導体パッド49とピン84との間の適切な接触を促進するために、センサ42の下に支持体82を設けてもよい。これらのピンは、一般に、金属または合金、例えば、銅、ステンレス鋼、または銀などの導電材料を使用して製造される。各ピンは、センサ42上の導体パッド49と接触するために皮膚上センサ制御ユニット44から延在する遠心端を有する。各ピン84は、ワイヤまたは他の導電性ストリップに連結される近接端を有し、次に、ワイヤまたは他の導電性ストリップは、皮膚上センサ制御ユニット44内の電子部品の残り(例えば、図18Aおよび18Bの電源95および測定回路96)に連結される。あるいは、ピン84は、電子部品の残りに直接連結してもよい。
【0187】
別の実施の形態において、導電接点80は、図19Bに示されるように、絶縁領域90が散在した一連の導電領域88として形成される。導電領域88は、位置決めの懸念を緩和するために、センサ42上の導体パッド49と同じくらい大きいか、またはそれより大きいであろう。しかしながら、絶縁領域90は、導電接点80に対するセンサ42と導体パッド49の位置における予測変動に基づいて判定して、1つの導体領域88が2つの導体パッド49と重複しないように十分な幅を有するべきである。導電領域88は、金属、合金、または導電性カーボンなどの材料を使用して形成される。絶縁領域90は、例えば、絶縁性プラスチックまたは高分子材料を含む公知の絶縁材料を使用して形成してよい。
【0188】
さらに別の実施の形態において、図19Cに示されるように、センサ42上の導体パッド49と、皮膚上センサ制御ユニット44内に埋め込まれたか他の様式で形成された導電接点80との間に、一方向導電接着剤92を使用してもよい。
【0189】
さらに別の実施の形態において、導電接点80は、図19Dに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の表面から延在して、導体パッド49に接触する導電部材94である。これらの部材に様々な異なる形状を使用してよいが、それらは互いから電気的に絶縁されるべきである。導電部材94は、金属、合金、導電性カーボン、または導電性プラスチックまたはポリマーを使用して製造してよい。
【0190】
先に記載された例示の導電接点80のいずれも、図19A〜19Cに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の内部の上面から、または図19Dに示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の内部の下面から、もしくは特にセンサ42がそのセンサの両側に導体パッド49を有する場合、皮膚上センサ制御ユニット44の内部の上面と下面の両方から、延在してもよい。
【0191】
筐体45の外部にある導電接点80も、図19Eおよび19Fに示されるように、様々な形状を有してもよい。例えば、導電接点80は、筐体45内に埋め込まれても(図19E)、そこから延在してもよい(図19F)。
【0192】
導電接点80は、センサ42の導体パッド49との接触により腐食しない材料を使用して製造することが好ましい。2つの異なる金属が接触させられたときに、腐食が生じるかもしれない。それゆえ、カーボンを使用して導体パッド49を形成した場合、好ましい導電接点80は、金属または合金を含むどのような材料を使用して製造してもよい。しかしながら、導体パッド49のいずれかが、金属または合金により製造されている場合、金属製の導体パッドと連結するための好ましい導電接点80は、導電性カーボンまたは導電性ポリマーなどの非金属導電材料を使用して製造されるか、または導電接点80および導体パッド49は、一方向導電接着剤などの非金属材料によって隔てられる。
【0193】
ある実施の形態において、センサ42と皮膚上センサ制御ユニット44との間から電気接触がなくされる。電力は、例えば、センサおよび皮膚上センサ制御ユニット上の接近して配置されたアンテナ(例えば、対向したコイル)(図示せず)を使用して、誘導結合により、センサに伝送される。センサ制御ユニット44の電気的特徴(例えば、電流)の変化により、アンテナの近傍に変化する磁場が誘導される。変化する磁場により、センサのアンテナに電流が誘導される。センサと皮膚上センサ制御ユニットが近くに近接することにより、かなり効率的に電力が伝送される。センサ中の誘導電流を使用して、定電位装置、演算増幅器、キャパシタ、集積回路、トランスミッタ、およびセンサ構造中に組み込まれる他の電子部品に電気を供給してもよい。データは、例えば、同じまたは異なるアンテナを介する誘導結合および/またはセンサ上のトランスミッタを通じての信号の伝送を使用して、センサ制御ユニットに戻して伝送される。誘導結合を使用することにより、センサと皮膚上センサ制御ユニットとの間の電気接続をなくすことができる。そのような接続は、一般に、ノイズおよび故障の源である。さらに、センサ制御ユニットを完全に密閉してもよく、これにより、皮膚上センサ制御ユニットの防水性が増すであろう。
【0194】
例示の皮膚上センサ制御ユニット44は、以下のように調製し、使用することができる。下面に接着剤を有する取付ユニット77を皮膚に施す。センサ42および挿入装置120を担持する挿入ガン200(図26参照)を取付ユニット77に対して配置する。挿入ガン200および取付ユニット77は、必要に応じて、これら2つが適切に係合する位置がたった1つしかないように設計される。挿入ガン200を作動させ、センサ42の一部分および必要に応じて、挿入装置120の一部分を皮膚に通して、例えば、皮下組織中に送り込む。挿入ガン200により挿入装置120を引き出して、センサ42の一部分を皮膚を通じて挿入された状態に残す。次いで、皮膚上センサ制御ユニット44の筐体45を取付ユニット77に連結する。必要に応じて、筐体45および取付ユニット77は、これら2つが適切に係合する位置がたった1つしかないように形成される。筐体45および取付ユニット77の係合により、センサ42上の導体パッド49(例えば、図2参照)と皮膚上センサ制御ユニット44上の導電接点80との間に接触が確立される。必要に応じて、この作用により、作動を開始するように皮膚上センサ制御ユニット44が始動する。
【0195】
皮膚上制御ユニット電子装置
皮膚上センサ制御ユニット44は、一般に、センサ42および分析物モニタリングシステム40を作動させる電子部品の少なくとも一部分も含む。皮膚上センサ制御ユニット44内の電子部品のある実施の形態が図18Aのブロック図として示されている。皮膚上センサ制御ユニット44の電子部品は、一般に、皮膚上センサ制御ユニット44およびセンサ42を作動させるための電源95、センサ42から信号を得てこのセンサを作動させるためのセンサ回路97、センサ信号を所望のフォーマットに変換する測定回路96、および最低限で、センサ回路97および/または測定回路96から信号を得、その信号を随意的なトランスミッタ98に提供する処理回路109を含む。いくつかの実施の形態において、処理回路109は、センサ42からの信号を部分的にまたは完全に評価し、その結果得られたデータを随意的なトランスミッタ98に伝達するおよび/または分析物のレベルが閾値を超えた場合に随意的な警報システム104(図18B参照)を起動してもよい。処理回路109はデジタル論理回路を含むことが多い。
【0196】
皮膚上センサ制御ユニット44は、センサ信号または処理回路109からの処理済みデータをレシーバ/ディスプレイユニット46,48に伝送するためのトランスミッタ98;処理回路109からのデータを一時的または永久的に記憶するためのデータ記憶ユニット102;温度プローブ66から信号を受信し、この温度プローブを作動させるための温度プローブ回路99;センサ生成信号との比較のために基準電圧を提供するための基準電圧発生装置101;および/または皮膚上センサ制御ユニット44内の電子部品の作動をモニタする監視回路103を必要に応じて含んでもよい。
【0197】
さらに、センサ制御ユニット44は、トランジスタなどの半導体素子を利用した、デジタルおよび/またはアナログコンポーネントを含むことが多い。これらの半導体素子を作動させるために、皮膚上センサ制御ユニット44は、例えば、アナログおよびデジタル半導体素子に正確にバイアスをかけるためのバイアス電流生成装置105、クロック信号を提供するための発振器107、および回路のデジタル構成要素のためのタイミング信号および論理演算を提供するためのデジタル論理およびタイミングコンポーネント109を含む他の構成要素を含んでもよい。
【0198】
これらの構成要素の作動の一例として、センサ回路97および随意的な温度プローブ回路99が、センサ42からの原信号を測定回路96に提供する。測定回路96は、例えば、電流・電圧変換器、電流・周波数変換器、および/または原信号の絶対値に比例した信号を生成するバイナリカウンタまたは他のインジケータを使用して、原信号を所望のフォーマットに変換する。これを使用して、例えば、原信号を、デジタル論理回路により使用できるフォーマットに変換してもよい。次いで、処理回路109は、必要に応じて、データを評価し、電子部品を作動させるためのコマンドを提供してもよい。
【0199】
図18Bは、例えば、較正データを受信するためのレシーバ91;例えば、工場設定較正データ、レシーバ91を通じて得られた較正データおよび/または、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48または他の外部装置から受信した作動信号を保持する較正記憶ユニット(図示せず);患者に警告するための警報システム104;および警報システムを停止するための作動停止スイッチ111などの随意的な構成要素も含む別の例示の皮膚上センサ制御ユニット44のブロック図を示している。
【0200】
分析物モニタリングシステム40およびセンサ制御ユニット44の機能は、ソフトウェアルーチン、ハードウェア構成要素、またはそれらの組合せのいずれを使用して実行してもよい。ハードウェア構成要素は、例えば、集積回路または個別の電子部品を含む様々な技術を使用して実行してもよい。集積回路を使用することで、一般に、電子部品のサイズが減少し、これは転じて、より小さな皮膚上センサ制御ユニット44をもたらすであろう。
【0201】
皮膚上センサ制御ユニット44およびセンサ42内の電子部品は、電源95を使用して作動させる。適切な電源95の一例は、電池、例えば、多くの腕時計、補聴器、および他の小型電子装置に使用されているものなどの薄いボタン電池である。電池は、好ましくは少なくとも30日の寿命、より好ましくは少なくとも3ヶ月の寿命、最も好ましくは少なくとも1年の寿命を有する。電池は、皮膚上センサ制御ユニット44内の最大の構成要素の内の1つであることが多く、よって、電池のサイズを最小にすることが望ましいことが多い。例えば、好ましい電池の厚さは、0.5mm以下、より好ましくは0.35mm以下、最も好ましくは0.2mm以下である。多数の電池を使用してもよいが、電池を1つだけ使用することが一般に好ましい。
【0202】
センサ回路97は、センサ制御ユニット44の導電接点80を通じて1つ以上のセンサ42,42’に連結される。センサの各々は、最低限で、作用電極58、対電極60(または対/参照電極)、および随意的な参照電極62を表す。2つのセンサ42,42’を使用する場合、それらのセンサは、一般に個別の作用電極58を有してもよいが、対電極60、対/参照電極、および/または参照電極62を共有してもよい。
【0203】
センサ回路97は、センサ42またはセンサ42,42’から信号を受信し、そのセンサを作動させる。センサ回路97は、電流、電量、電位差、電解電量、および/または他の電気化学技法を使用して、センサ42から信号を得てもよい。センサ回路97は、センサ42から電流信号を得るものとしてここに例示されているが、センサ回路は、他の電気化学技法を使用して信号を得るように適切に構成できることが理解されよう。電流測定値を得るために、センサ回路97は、一般に、定電位をセンサ42に与える定電位装置を含む。他の実施の形態において、センサ回路97は、定電流をセンサ42に与え、電量または電位差測定値を得るために使用できるアンペロスタットを含む。
【0204】
センサ42からの信号は、一般に、分析物の濃度により変動する特徴、例えば、電流、電圧、または周波数などの特徴を少なくとも1つ有する。例えば、センサ回路97が、電流測定法を使用して作動する場合、電流信号は、分析物の濃度により変動する。測定回路96は、ある特徴から別のものへと信号の情報担持部分を変換する回路を含んでもよい。例えば、測定回路96は、電流・電圧または電流・周波数変換器を含んでもよい。この変換器の目的は、例えば、より容易に伝送される、デジタル回路により読み取り可能な、および/またはノイズの寄与を受けにくい、信号を提供することにあるであろう。
【0205】
標準的な電流・電圧変換器の一例が図20Aに与えられている。この変換器において、センサ42からの信号が、演算増幅器130(「op amp」)の一方の入力端子134に提供され、抵抗器138を通じて出力端子136に連結される。しかしながら、この特定の電流・電圧変換器131は、集積回路に抵抗器を導入するのが難しいことが多いので、小さなCMOSチップに導入するのは難しいかもしれない。一般に、別個の抵抗素子が使用される。しかしながら、別個の素子を使用すると、回路に必要な空間が増してしまう。
【0206】
代わりの電流・電圧変換器141が図20Bに示されている。この変換器は、入力端子144にセンサ42からの信号が与えられ、入力端子142に基準電位が与えられる、op amp140を含む。キャパシタ145が入力端子144と出力端子146との間に配置されている。それに加え、クロック(CLK)周波数により決定される速度でキャパシタを充放電させるように、スイッチ147a,147b,149a,および149bが設けられている。作動中、半周期中に、スイッチ147aと147bが閉じ、スイッチ149aと149bが開いて、結合された電位VIのために、キャパシタ145を充電することができる。他の半周期中に、スイッチ147aと147bが開き、スイッチ149aと149bが閉じて、接地し、キャパシタ145を一部または完全に放電させることができる。キャパシタ145のリアクタンス性インピーダンスは、抵抗器138(図20A参照)の抵抗と類似であり、キャパシタ145が抵抗器をエミュレートすることが可能になる。この「抵抗器」の値は、キャパシタ145のキャパシタンスおよびクロック周波数に依存する。クロック周波数を変えることによって、キャパシタのリアクタンス性インピーダンス(「リアクタンス値」)が変化する。キャパシタ145のインピーダンス(「抵抗」)の値は、クロック周波数を変化させることによって変えてもよい。スイッチ147a,47b,149a,および149bは、例えば、トランジスタを使用して、CMOSチップに導入してもよい。
【0207】
測定回路96に電流・周波数変換器を使用してもよい。ある適切な電流・周波数変換器は、センサ42からの信号を使用してキャパシタを変化させることを含む。キャパシタに及ぶ電位が閾値を超えた場合、キャパシタが放電させられる。それゆえ、センサ42からの電流が大きいほど、閾値の電位が達成されるのが速くなる。これにより、キャパシタの充放電に対応し、センサ42からの電流の増加により増加する周波数を有する、交互特徴を有する信号がキャパシタに及び生じる。
【0208】
いくつかの実施の形態において、分析物モニタリングシステム40は、1つ以上のセンサ42に亘り分布した2つ以上の作用電極58を含む。これらの作用電極58は、品質管理目的のために使用してもよい。例えば、2つ以上の作用電極58を使用して導かれた出力信号および/または分析データを比較して、作用電極からの信号が所望の許容レベル内で一致するか否かを判定してもよい。出力信号が一致しない場合、患者は、センサを交換するように警告されるであろう。いくつかの実施の形態において、患者は、2つのセンサ間の不一致が所定の期間に亘り持続した場合のみに警告される。2つの信号の比較は、各測定毎に、または定期的に行ってもよい。代わりに、またはそれに加え、患者または別の人が比較を開始してもよい。さらに、両方のセンサからの信号を用いてデータを生成しても、または比較後に一方の信号を切り捨ててもよい。
【0209】
あるいは、例えば、2つの作用電極58が共通の対電極60を有し、分析物の濃度が電流測定法により測定される場合、作用電極が適切に作動していれば、対電極60での電流は、所定の許容レベル内で、作用電極の各々の電流の2倍であるべきである。そうでなければ、上述したように、センサを交換すべきである。
【0210】
品質管理のためにたった1つの作用電極からの信号を使用する例は、1つの作用電極を使用して得られた連続した読取値を比較して、それらが、閾値レベルを超えて異なるか否かを判定することを含む。その差が、1つの読取値について、またはある期間に亘り、もしくはある期間内で所定の数の読取値について、閾値レベルより大きい場合、患者は、センサ42を交換するように警告される。一般に、連続した読取値および/または閾値レベルは、センサ信号の予測される軌跡の全てが所望のパラメータ内にあるように決定される(すなわち、センサ制御ユニット44は、分析物の濃度における真の変化をセンサの故障であると考えない)。
【0211】
センサ制御ユニット44は、必要に応じて、温度プローブ回路99を含んでもよい。温度プローブ回路99は、温度プローブ66に亘り定電流(または定電位)を与える。その結果生じた電位(または電流)は、温度依存性素子72の抵抗にしたがって変動する。
【0212】
センサ回路97および随意的な温度プローブ回路からの出力は、センサ回路97および随意的な温度プローブ回路から信号を得、少なくともいくつかの実施の形態において、例えば、デジタル回路により読み取ることのできる形態の出力データを提供する測定回路96に伝送される。測定回路96からの信号は処理回路109に伝送され、この処理回路は、次に、データを随意的なトランスミッタ98に提供してもよい。処理回路109は、以下の機能の内の1つ以上を有するであろう:1)測定回路96からの信号をトランスミッタ98に送信する、2)測定回路96からの信号をデータ記憶回路102に送信する、3)例えば、電流・電圧変換器、電流・周波数変換器、または電圧・電流変換器を使用して、信号の情報担持特徴をある特徴から別の特徴(例えば、それが測定回路96によって行われなかった場合)に変換する、4)較正データおよび/または温度プローブ回路99からの出力を使用して、センサ回路97からの信号を変調させる、5)間質液中の分析物のレベルを決定する、6)間質液から得られたセンサ信号に基づいて、血流中の分析物のレベルを決定する、7)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度における加速度が1つ以上の閾値を超えるかまたは到達するか否かを判定する、8)閾値が到達されたまたは超えられた場合、アラームを起動させる、9)一連のセンサ信号に基づいて、分析物のレベルにおける傾向を評価する、10)薬剤の投与量を決定する、および11)例えば、多数の作用電極58からの読取値を信号平均化または比較によって、ノイズおよび/または誤差を減少させる。
【0213】
処理回路109は、単純であり、これらの機能の内のたった1つまたは少数を実行してもよく、もしくは処理回路109は、より複雑であり、これらの機能の全てまたはほとんどを実行してもよい。皮膚上センサ制御ユニット44のサイズは、処理回路109が実行する機能の数とそれら機能の複雑さが増えるにつれて、増加するであろう。これらの機能の多くは、皮膚上センサ制御ユニット44内の処理回路109によって実行されなくてもよいが、レシーバ/ディスプレイユニット46,48内の別の分析器152(図22参照)によって行われてもよい。
【0214】
測定回路96および/または処理回路109のある実施の形態は、作用電極58と対電極60との間を流れる電流である、出力データを提供する。測定回路96および/または処理回路109は、センサ42の温度を示す随意的な温度プローブ66からの信号である出力データを提供してもよい。温度プローブ66からのこの信号は、温度プローブ66を流れる電流と同じくらい単純であろう、または処理回路109は、センサ42の温度との相関のために、測定回路96から得られた信号から温度プローブ66の抵抗を決定する装置を含んでもよい。次いで、この出力データはトランスミッタ98に送られ、次いで、このトランスミッタがこのデータを少なくとも1つのレシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信してもよい。
【0215】
処理回路109に戻ると、いくつかの実施の形態において、処理回路109は、より複雑であり、分析物の濃度、または電流または電圧値などの、分析物の濃度を表すある尺度を決定することができる。処理回路109は、作用電極58からの信号または分析データにおける温度補正を行うために温度プローブの信号を組み込んでもよい。このことは、例えば、温度プローブ測定値を評価し(scaling)、評価された測定値を作用電極58からの信号または分析データに加えるか、またはそこから引くことを含む。処理回路109は、作用電極58からの信号または分析データを補正するために、外部源から受信した、または処理回路109に組み込まれた較正データを組み込んでもよい。さらに、処理回路109は、間質分析物レベルを血液分析物レベルに変換するための補正アルゴリズムを含んでもよい。間質分析物レベルの血液分析物レベルへの変換が、例えば、ここに引用する、Schmidtke, et al., "Measurement and Modeling of the Transient Difference Between Blood and Subcutaneous Glucose Concentrations in the Rat after Injection of Insulin", Proc. of the Nat'l Acad. of Science, 95, 294-299 (1998) および Quinn, et al., "Kinetics of Glucose Delivery to Subcutaneous Tissue in Rats Measured with 0.3 mm Amperometric Microsensors", Am. J. Physiol., 269 (Endocrinol. Metab. 32), E155-E161 (1995)に記載されている。
【0216】
いくつかの実施の形態において、処理回路109からのデータは、分析され、使用者を警告するための警報システム104(図18B参照)に向けられる。これらの実施の形態の少なくともいくつかにおいて、センサ制御ユニットが、データの分析および患者の警告を含む必要な機能の全てを実行するときに、トランスミッタは使用されない。しかしながら、多くの実施の形態において、処理回路109からのデータ(例えば、電流信号、変換された電圧または周波数信号、もしくは完全にまたは部分的な分析されたデータ)は、皮膚上センサ制御ユニット44内のトランスミッタ98を使用して、1つ以上のレシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信される。トランスミッタは、筐体45内に形成されたワイヤまたは同様の導体などのアンテナ93を有する。トランスミッタ98は、一般に、手のひらサイズのベルト装着レシーバなどの、小型のレシーバ/ディスプレイユニット46に送信するときに、約2メートルまでまたはそれ以上、好ましくは約5メートルまでまたはそれ以上、より好ましくは約10メートルまでまたはそれ以上、信号を送信するように設計されている。ベッド脇のレシーバなどの良好なアンテナを備えたユニットに送信する場合、有効範囲はより長い。以下に詳しく説明するように、レシーバ/ディスプレイユニット46,48の適切な例としては、容易に着用または運搬できるユニット、もしくは、例えば、患者が寝ているときに、サイドテーブル上に都合よく配置できるユニットが挙げられる。
【0217】
トランスミッタ98は、一般に、処理回路109の精巧さに応じて、様々な異なる信号をレシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信してよい。例えば、処理回路109は、どのような温度または較正の補正もなく、原信号、例えば、作用電極58からの電流を単に提供しても、もしくは処理回路109は、例えば、電流・電圧変換器131または141(図20Aおよび20B参照)を使用して得られる変換信号を提供してもよい。次いで、原測定値または変換信号は、必要に応じて、温度および較正の補正を使用して、分析物のレベルを決定するために、レシーバ/ディスプレイユニット46,48内の分析器152(図22参照)によって処理されてもよい。別の実施の形態において、処理回路109は、例えば、温度および/または較正情報を使用して原測定値を補正し、次いで、トランスミッタ98が、補正された信号、必要に応じて、温度および/または較正情報を、レシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信する。さらに別の実施の形態において、処理回路109は、間質液中および/または血液中(間質液レベルに基づいて)の分析物レベルを計算し、その情報を、必要に応じて、原データおよび/または較正または温度情報と共に、1つ以上のレシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信する。さらに他の実施の形態において、処理回路109は、分析物濃度を計算するが、トランスミッタ98は、原測定値、変換信号、および/または補正信号のみを送信する。
【0218】
皮膚上センサ制御ユニット44が経験するかもしれない潜在的な障害の1つは、時間の経過によるトランスミッタ98の送信周波数の変化である。この潜在的な障害を克服するために、トランスミッタは、トランスミッタ98の周波数を所望の周波数または周波数帯域に戻すことのできる随意的な回路を含んでもよい。適切な回路の一例が、開ループ変調システム251のブロック図として図21に示されている。開ループ変調システム251は、位相検出器(PD)210、チャージポンプ(CHGPMP)212、ループフィルタ(LF)214、電圧制御発振器(VCO)216、およびMによる除算回路分割(÷M)218を含んで、位相同期回路(PLL)220を形成する。
【0219】
分析物モニタ装置40は、トランスミッタ98と、例えば、1つ以上のレシーバ/ディスプレイユニット46,48のレシーバとの間のRF通信のために開ループ変調システム251を使用する。この開ループ変調システム251は、トランスミッタとそれに関連するレシーバとの間に信頼性の高いRFリンクを提供するように設計されている。このシステムでは、周波数変調(FM)を利用し、従来の位相同期回路220を使用して、搬送中心周波数を固定する。作動中、位相同期回路220は、変調前に開かれる。変調中、位相同期回路220は、トランスミッタの中心波長がレシーバの帯域内にある限りは開いたままである。トランスミッタが、中心波長がレシーバの帯域の外に出ていることを検出したときに、レシーバは、中心周波数が捕捉されている間、スタンバイするように信号が送られる。この捕捉後に、送信が開始される。中心周波数の捕捉、位相同期回路220の開放、変調、および中心周波数の再捕捉のこの周期が、必要な周期だけ繰り返される。
【0220】
ループ制御装置240は、位相同期回路220の同期状況を検出し、位相同期回路220の開閉を担う。総合計器(totalizer)255は、ループ制御装置240と共に、中心周波数の状態を検出する。変調制御装置230は、変調信号の生成を担う。適切な送信信号出力を確実にするために、送信増幅器265が設けられている。参照周波数が、非常に安定な信号源(図示せず)から生成され、Nによる除算ブロック(÷N)270によりNで除算される。データおよび制御信号が、データバス280、および制御バス290を通じて、開ループ変調システム251により受信される。
【0221】
開ループ変調システム251の作動は、閉じた状態にある位相同期回路220で始まる。ロック状態がループ制御装置240により検出されたときに、位相同期回路220が開かれ、変調制御装置230が変調信号を生成し始める。総合計器255が、プログラムされた間隔に亘り、VCO周波数(Mで除算された)をモニタする。モニタされた周波数は、総合計器内でプログラムされた閾値と比較される。この閾値は、レシーバの中間周波数段階の3dBカットオフ周波数に対応する。モニタされた周波数が閾値に近づくときに、ループ制御装置240が通告され、スタンバイ・コードがレシーバに送信され、位相同期回路220が閉じられる。
【0222】
この時点で、レシーバは待機モードにある。トランスミッタ内のループ制御装置240が位相同期回路220を閉じる。次いで、変調制御装置230がオフラインにされ、総合計器255のモニタ値がリセットされ、位相同期回路220がロックされる。ループ制御装置240がロック状態を検出すると、ループ制御装置240は位相同期回路220を開き、変調制御装置230がオンラインにされ、位相同期回路220の中心周波数が閾値に近づくまで、レシーバへのデータ送信が開始され、その時点で、スタンバイ・コードを送信するサイクルが始まる。÷N270および÷N218ブロックが、トランスミッタの周波数チャンネルを設定する。
【0223】
したがって、開ループ変調システム251は、分析物モニタリングシステムのために信頼性のある低出力FMデータを提供する。開ループ変調システム251は広帯域周波数変調の方法を提供し、一方で、搬送波の中心周波数はレシーバの帯域内に維持される。トランスミッタの中心周波数を引っ張る寄生キャパシタおよび誘導器の効果は、位相同期回路220によって補正される。さらに、総合計器255およびループ制御装置240は、中心周波数ドリフト検出の新たな方法を提供する。最後に、開ループ変調システム251は、CMOSプロセスにおいて容易に実行される。
【0224】
トランスミッタ98がデータを伝送する速度は、センサ回路97が信号を得るのと、および/または処理回路109がデータまたは信号をトランスミッタ98に提供するのと同じ速度であってよい。あるいは、トランスミッタ98は、より遅い速度でデータを送信してもよい。この場合、トランスミッタ98は、各送信において、複数のデータポイントを送信してもよい。あるいは、各データ送信によりデータポイントが1つだけ送信され、残りのデータは送信されなくてもよい。一般に、データは、少なくとも1時間毎に、好ましくは少なくとも15分毎に、より好ましくは少なくとも5分毎に、最も好ましくは少なくとも1分毎に、レシーバ/ディスプレイユニット46,48に送信される。しかしながら、他のデータ伝送速度を使用してもよい。いくつかの実施の形態において、処理回路109および/またはトランスミッタ98は、条件が示されたとき、例えば、低レベルまたは高レベルの分析物もしくは支障となる低いまたは高いレベルの分析物が示されたとき、より速い速度でデータを処理および/または送信するように構成されている。これらの実施の形態において、加速されたデータ伝送速度は、一般に、少なくとも5分毎、好ましくは少なくとも1分毎である。
【0225】
トランスミッタ98に加え、随意的なレシーバ91が皮膚上センサ制御ユニット44に含まれてもよい。ある場合、トランスミッタ98が、トランスミッタとレシーバの両方として作動するトランシーバである。レシーバ91を使用して、センサ42から較正データを受信してもよい。この較正データは、センサ42からの信号を補正するために処理回路109により使用されてもよい。この較正データは、レシーバ/ディスプレイユニット46,48により、または診療室にある制御ユニットなどの他の供給源から、送信されてもよい。その上、随意的なレシーバ91を使用して、上述したように、レシーバ/ディスプレイユニット46,48から信号を受信する、トランスミッタ98に命令して、例えば、周波数または周波数帯域を変更する、随意的な警報システム104を作動または停止される(以下に記載するように)、および/またはトランスミッタ98に命令して速い速度で送信させてもよい。
【0226】
較正データは、様々な様式で得られるであろう。例えば、較正データは、単に、レシーバ91を使用して皮膚上センサ制御ユニット44に入力できる工場決定較正測定値であっても、もしくは皮膚上センサ制御ユニット44自体の内部の較正データ記憶ユニット内に記憶されてもよい(この場合、レシーバ91は必要ないであろう)。較正データ記憶ユニットは、例えば、読み込み可能なまたは読み取り可能な/書き込み可能なメモリ回路であってよい。
【0227】
代わりのまたは追加の較正データを、医師または他の専門家により、もしくは患者自身により行われた検査に基づいて提供してもよい。例えば、糖尿病患者は、市販の検査キットを使用して、自身の血糖を判定するのが一般的である。適切な入力装置(例えば、キーパッド、光信号レシーバ、またはキーパッドかコンピュータに接続するためのポート)が皮膚上センサ制御ユニット44に組み込まれている場合には、直接的に、もしくは較正データをレシーバ/ディスプレイユニット46,48に入力し、較正データを皮膚上センサ制御ユニット44に送信することにより、間接的に、この検査の結果が皮膚上センサ制御ユニット44に入力される。
【0228】
分析物のレベルを独立して決定する他の方法を使用して、較正データを得てもよい。このタイプの較正データは、工場決定較正値に取って代わるか、またはそれを補完してもよい。
【0229】
本発明のいくつかの実施の形態において、較正データは、正確な分析物レベルが報告されていることを確認するために、定期的に、例えば、8時間毎に、一日一回、または毎週一回、要求されるであろう。較正は、新しいセンサ42が埋め込まれる度に、センサが最小または最大の閾値を超えたら、もしくはセンサ信号の変化速度が閾値を超えたら、要求されるであろう。ある場合には、センサ42が平衡に到達できるように較正する前に、センサ42の埋込み後にある期間に亘り待機する必要があるかもしれない。いくかの実施の形態において、センサ42は、挿入後始めて較正される。他の実施の形態において、センサ42の較正は必要ない。
【0230】
皮膚上センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、例えば、較正の間の所定の時間間隔、または新しいセンサ42の埋込みに基づいて、較正データが必要とされる聴覚的または視覚的指示器を含んでもよい。皮膚上センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、センサ42の較正が所定の時間間隔内でおよび/または新しいセンサ42の埋込み後に行われていないので、分析物モニタ装置40により報告される、分析物レベルなどの情報が正確ではないかもしれないことを患者に思い出させるために聴覚的または視覚的指示器を含んでもよい。
【0231】
皮膚上センサ制御ユニット44の処理回路109および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48の分析器152により、較正データが必要なときおよび較正データが許容されるか否かを決定してよい。皮膚上センサ制御ユニット44は、必要に応じて、例えば、1)温度プローブからの読取値が、所定の許容範囲内(例えば、30から42℃、または32から40℃)にない、もしくは急激に変化している(例えば、0.2℃/分、0.5℃/分、または0.7℃/分以上)温度を示す;2)2つ以上の作用電極58が、互いに所定の範囲内(例えば、10%または20%以内)にない未較正の信号を提供する;3)未較正の信号の変化速度が閾値速度(例えば、0.25mg/dL毎分または0.5mg/dL毎分以上)より大きい;4)未較正の信号が、最大閾値(例えば、5,10,20,または40nA)を超えるまたは最小閾値(例えば、0.05,0.2,0.5,または1nA)未満である;5)未較正の信号が、最大閾値(例えば、200mg/dL、250mg/dL、または300mg/dLの分析物濃度に対応する信号)を超えるまたは最小閾値(例えば、50mg/dL、65mg/dL、または80mg/dLの分析物濃度に対応する信号)未満である;および/または6)埋込みから不十分な時間しか経過していない(例えば、10分以下、20分以下、または30分以下)場合、較正させない、または較正ポイントを拒否するように構成されていてもよい。
【0232】
処理回路109または分析器152は、最新の較正の前後のセンサデータを使用して決定された値がある閾値量を超えて一致しない場合、別の較正ポイントを要求するかもしれない。この不一致は、較正が不正確であるか、またはセンサの特徴が較正の間で根本的に変化したことを示す。この追加の較正ポイントは、その差の源を示すかもしれない。
【0233】
ある実施の形態において、較正を配置後に遅らせ、配置されたセンサが安定化するのを待つことにより、正確なセンサデータが提供される。実際に、以下に詳しく説明するように、ある実施の形態において、最初の較正(すなわち、センサを患者内に配置した後の最初の較正)を行うためにセンサ42の配置後に所定の期間待つことにより、センサ42から受信されるデータの全体的な精度が実質的に増加し、臨床的に許容される程度のセンサの精度が与えられる。例えば、患者の体液(例えば、間質液)中にセンサを配置してから約10時間後に、配置されたセンサ42の最初の工程を行うことにより、センサデータの精度が増す。実際に、ある実施の形態において、センサ42を患者の間質液中に最初に配置したときから約10時間に亘りセンサを安定化させることにより、患者がセンサ42を着用している期間中(例えば、少なくとも1日、例えば、少なくとも3日、例えば、少なくとも5日、例えば、少なくとも7日以上)のセンサ42からの全体のデータ精度が対照と比べて改善する。
【0234】
図30は、センサを配置してから最初の1時間後に、またはその辺りで較正を行ったシステムに関するクラーク・エラー・グリッド分析を示し、図31は、センサを配置してから10時間後に、またはその辺りで較正を行ったシステムに関するクラーク・エラー・グリッド分析を示す。図32は、図30の最初の1時間後の較正データと図31の10時間後の較正データとの比較を示す。図33は、最初の1時間後の較正と10時間後の較正からのデータの全体的な比較を表形式で示しており、ここで、MARD値は、図33から分かるように、1時間後の較正データを10時間後の較正データと比べて、約15.3%から約11.8%に減少した、平均絶対相対差(mean absolute relative difference; MARD)値である。
【0235】
上述したシステムにおいて、センサ42は、患者により着用され、約1日から約5日以上、例えば、7日以上の期間に亘り使用されるように構成されており、ここで、センサの較正は、センサが患者の分析物含有流体、例えば、全血、間質液などと流体接触して配置される、最初にセンサ42が配置されたときから測定して、約10時間、約12時間、約24時間および約72時間の間隔で行われる。このようにして、センサ42の最初の較正を、センサ42の配置から約10時間遅らせることによって、センサ42からのデータ(例えば、センサ42がモニタする分析物のレベル)の精度が増す。このようにして、ある実施の形態において、例えば、血糖測定器を使用して、合計で4回のセンサ較正が行われる。さらに、上述した実施の形態において、センサ42は、約1日以上、例えば、約3日以上、例えば、約5日以上の使用、例えば、約7日以上の使用後に交換されるように構成され、約5日の使用期間について、約110時間の臨床的な分析物モニタを与える(最初の10時間が、センサ42の安定化とその後の初期較正のために予定される場合)。
【0236】
図34は、5日間に亘るグルコース計測器の読取値と比べた10時間の較正の実施の形態におけるセンサからのデータ精度を示している。図34を参照すると、実線が、5日間の期間に亘りセンサ42から受信された測定グルコース値を与えるのに対し、三角形の印は、図に示された別個の時間間隔での血糖計測器を使用して個別の別個のグルコース測定値を示す一方で、正方形の印は、5日間の期間におけるセンサの較正ポイントを示している。
【0237】
図35は、5日間の期間に亘る毎日のMARD値における変化を示す表を与えている。5日間の期間に亘る平均絶対相対差(MARD)値が次第に減少し、センサ42から得られるセンサデータの数(図35の表に示される「n」)がその期間に亘り増加しているのが図35図34に示されたデータから分かる。実際に、図35に示されたデータは、1型糖尿病の患者19人から得たものであり(合計で33個のセンサ)、ここで、個々の血糖測定値の基準値(患者の腕から採血した血液に基づく)は、本発明の譲受人である、カリフォルニア州、アラメダ所在のAbbot Diabetes Care Inc., からの市販の血糖計測器Freestyle(登録商標)から得ている。
【0238】
本発明のある実施の形態において、グルコースセンサは、低グルコースレベルで増加した精度を提供する。さらに、ある実施の形態における5日目のセンサ42は、5日間の期間に亘り約4回の較正測定を要求する一方で、3日目のセンサに匹敵するかまたはそれより改善されたセンサデータ精度を提供する。
【0239】
上述した様式において、センサ42を使用する5日間で、4日目と5日目には較正測定は行わず、較正は、約10時間、約12時間、約24時間および約72時間に行ってよい(ここに記載した較正出来事の期間は、例示目的のためだけであり、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではないことが理解されよう)。さらに、ある実施の形態における較正条件は、約60mg/dLより大きいグルコースレベルで、2mg/dL毎分未満のレートを含んでよい。10時間での最初のセンサ較正について、患者と患者の毎日の日課に大きな不都合なく、朝または夕方に5日間の使用に亘りセンサが挿入されるであろう。さらに、この手法は、患者にとって、予測でき管理されたセンサの挿入、較正および除去の時間も提供し、このことは、患者の毎日の活動をそれほど侵害するものではないようである。
【0240】
一例として、5日間のセンサの挿入および分析物モニタのスケジュールは、以下の出来事を含んでよい。朝にセンサを挿入する場合、例えば、午前7時にセンサを挿入したら、午後5時辺りの最初の較正測定(約10時間後の較正)、その後、午後7時辺りの2回目の較正測定(約12時間後の較正)が必要である。その後、約24時間後の3回目の較正は、翌朝の午前7時辺りとなり、4回目であり最後の較正測定は、3日目の午前7時辺り(約72時間後)に行われる。その後、6日目の午前7時辺りで、センサを取り出し、これを新しいセンサと交換してもよい。
【0241】
就寝時にセンサを挿入する例の場合、センサ42を午後9時辺りに挿入し、最初の較正測定は、翌朝の午前7時辺り(約10時間後の較正)に行ってよい。その後、2回目の較正測定は、午前9時辺り(約12時間後の較正)に行い、その後、3回目の較正は、その夜の午後9時辺り(約24時間後の較正)に行う。最後の較正測定は、その翌日の夜の午後9時(約72時間後の較正)に行い、5日間の使用後、センサ42を取り出し、これを5日目の午後9時辺りで新しいセンサ42と交換してもよい。
【0242】
図18Aに戻ると、皮膚上センサ制御ユニット44は、処理回路109からのデータ(例えば、センサからの測定値または処理データ)を永久的に、またはより一般には一時的に保持するために使用してよい随意的なデータ記憶ユニット102を含んでもよい。データ記憶ユニット102は、例えば、分析物レベルの増加または減少の速度および/または加速度を含む分析物レベルにおける傾向を分析および/または予測するために、処理回路109によりデータを使用できるようにデータを保持してよい。このデータ記憶ユニット102は、また、もしくは代わりに、レシーバ/ディスプレイユニット46,48が送受信範囲内にない期間中にデータを記憶するために使用してもよい。データ記憶ユニット102は、データの伝送速度がデータの取得速度よりも遅いときにデータを記憶するために使用してもよい。例えば、データ取得速度が10ポイント/分であり、伝送が2伝送/分である場合、データポイントを処理する望ましい速度に応じて、データの5ポイントの内の1つが各伝送において送ることができる。データ記憶ユニット102は、一般に、読取り可能/書込み可能メモリ記憶装置も含み、一般に、メモリ記憶装置に書き込むおよび/またはそれを読み込むハードウェアおよび/またはソフトウェアも含む。
【0243】
図18Bに戻ると、皮膚上センサ制御ユニット44は、処理回路109からのデータに基づいて、患者に、分析物の潜在的に有害な状態を警告する随意的な警報システム104を含んでもよい。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御ユニット44は、患者に、低血糖症、高血糖症、切迫低血糖症、および/または切迫高血糖症などの状態を警告する警報システム104を含んでもよい。この警報システム104は、処理回路109からのデータが閾値に到達するかまたは超えたときに、始動される。血糖レベルの閾値の例としては、低血糖症については、約60,70,または80mg/dL;切迫低血糖症については、約70,80,または90mg/dL;切迫高血糖症については、約130,150,175,200,225,250,または275mg/dL;および高血糖症については、約150,175,200,225,250,275,または300mg/dLである。警報システム104に組み込まれるように計画された実際の閾値は、上述した血糖レベルに相関する間質液グルコース濃度または電極測定値(例えば、電流値または電流測定値の変換により得られる電圧値)に対応するであろう。分析物モニタ装置は、これらまたは任意の他の状態についての閾値レベルが患者および/または医療専門家によりプログラム可能であるように構成されてもよい。
【0244】
データポイントが、特定の状態を示す方向に閾値を超えた値を有する場合、閾値が超えられている。例えば、200mg/dLのグルコースレベルに相関するデータポイントは、180mg/dLの高血糖症の閾値を超えている。何故ならば、そのデータポイントは、患者が高血糖状態に入ったことを示すからである。別の例として、65mg/dLのグルコースレベルに相関するデータポイントは、70mg/dLの低血糖症の閾値を超えている。何故ならば、そのデータポイントは、患者が、閾値により定義されるように低血糖症であることを示すからである。しかしながら、75mg/dLのグルコースレベルに相関するデータポイントは、そのデータポイントが、選択された閾値により定義される特定の状態を示さないので、低血糖症に関する同じ閾値を超えないであろう。
【0245】
警報は、センサの読取値が、センサ42の測定範囲を超えた値を示す場合に、起動させてもよい。グルコースについて、生理学的に適切な測定範囲は、間質液中、一般に、50から250mg/dL、好ましくは約40〜300mg/dL、理想的には30〜400mg/dLのグルコースである。
【0246】
警報システム104は、また、もしくは代わりに、分析物レベルの増加または減少の変化速度または変化速度の加速度が、閾値速度または加速度に到達するかまたは超えたときに、起動させてもよい。例えば、皮下グルコースモニタの場合、警報システムは、グルコース濃度における変化速度が、高血糖症または低血糖症の状態が起きそうであることを示すかもしれない閾値を超えた場合、起動させてもよい。
【0247】
随意的な警報システム104は、1つのデータポイントが特定の閾値に到達したかまたは超えたときに、起動するように構成されてもよい。あるいは、警報システムは、所定の量の時間に及ぶ所定の数のデータポイントが閾値に到達したかまたは超えたときに、起動するように構成されてもよい。別の代案として、警報システムは、所定の量の時間に及ぶデータポイントが、閾値に到達するかまたは超えた平均値を有する場合のみに、起動してもよい。アラームを起動できる各状態は、異なるアラーム起動状態を有してもよい。その上、アラーム起動状態は、現在の状態に応じて変化してもよい(例えば、切迫高血糖症の兆候により、高血糖症を判定するために検査されるデータポイントの数または時間の量を変えてもよい)。
【0248】
警報システム104は、1つ以上の個々のアラームを含有してもよい。アラームの各々は、分析物の1つ以上の状態を示すように個々に起動されてもよい。アラームは、例えば、聴覚的または視覚的であってもよい。起動されたときに、加熱する、冷却する、振動する、または穏やかな電気ショックを発生させるアラームシステムを含む他の感覚刺激警報システムを使用してもよい。いくつかの実施の形態において、アラームは、異なる状態を示す異なるトーン、音符、または音量の聴覚のものである。例えば、高音は高血糖症を示し、低音は低血糖症を示してもよい。視覚的アラームは、異なる状態を示すために皮膚上センサ制御ユニット44上における色、輝度、または位置の差を用いてもよい。いくつかの実施の形態において、聴覚的警報システムは、アラームの音量が、アラームが停止されるまで、時間の経過と共に増加するように構成されている。
【0249】
いくつかの実施の形態において、アラームは、所定の期間後に自動的に停止させてもよい。他の実施の形態において、アラームは、データがもはや、アラームを起動させた状態が存在することを示さないときに、停止するように構成されてもよい。これらの実施の形態において、アラームは、1つのデータポイントが、その状態がもはや存在しないことを示したときに停止させても、あるいは、アラームは、所定の数のデータポイントまたは所定の期間に亘り得られたデータポイントの平均が、その状態がもはや存在しないことを示した後に初めて、停止させてもよい。
【0250】
いくつかの実施の形態において、アラームは、自動停止に加え、またはその代わりに、患者によりまたは別の人により手動で停止してもよい。これらの実施の形態において、起動されたときに、アラームを停止させるスイッチ111が設けられている。スイッチ111は、例えば、皮膚上センサ制御ユニット44またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48上の作動装置を作動させることによって、動作可能にスイッチを入れても(またはスイッチの構造に応じて、切られても)よい。ある場合には、作動装置が2つ以上のユニット44,46,48に設けられ、その内のいくつか起動されて、アラームを停止させてもよい。スイッチ111および/または作動装置がレシーバ/ディスプレイユニット46,48上に設けられている場合、信号が、レシーバ/ディスプレイユニット46,48から皮膚上センサ制御ユニット44上のレシーバ104に伝送されて、アラームを停止してもよい。
【0251】
例えば、機械式スイッチ、リード・スイッチ、ホール効果スイッチ、巨大磁気抵抗比(GMR)スイッチ(GMRスイッチの抵抗は磁場依存性である)などを含む様々なスイッチ111を使用してもよい。動作可能にスイッチを入れる(または、切る)ために使用される作動装置は、皮膚上センサ制御ユニット44上に配置され、押しボタンの周囲および筐体内に水が流入できないように構成されるのが好ましい。そのような押しボタンの一例は、筐体と一体となった可撓性高分子またはプラスチック被覆により、完全に被覆された可撓性導電性ストリップである。開位置では、可撓性導電性ストリップは弓形に曲げられ筐体から出っ張っている。患者または別の人が押すと、可撓性導電性ストリップは金属接点に向かって直接押し動かされ、回路を完成しアラームを停止させる。
【0252】
リードまたはGMRスイッチには、弓形に曲げられているか、筐体45およびリードまたはGMRスイッチから出っ張っている可撓性作動装置の永久磁石または電磁石などの一片の磁気材料が使用される。リードまたはGMRスイッチは、可撓性作動装置を押し、磁気材料をスイッチに近づけ、スイッチ内の磁場を増強することにより(アラームを停止させるよう)起動される。
【0253】
本発明のいくつかの実施の形態において、分析物モニタ装置40は、皮膚上制御ユニット44とセンサ42のみを備えている。これらの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44の処理回路109は、分析物のレベルを測定し、分析物レベルが閾値を超えた場合、警報システム104を起動させることができる。これらの実施の形態において、皮膚上制御ユニット44は、警報システム104を有し、また、レシーバ/ディスプレイユニット46,48に関して後で述べるもののような、ディスプレイを備えていてもよい。ディスプレイは、LCDまたはLEDディスプレイであることが好ましい。皮膚上制御ユニット44は、例えば、診療室にある制御ユニットに、例えばデータを送信することが望ましいのでなければ、トランスミッタを備えていなくてもよい。
【0254】
皮膚上センサ制御ユニット44はまた、センサ42から得られた、または、センサ42に使用された電圧または電流との比較に使用するための絶対電圧または電流を提供するために基準電圧発生装置101を備えていてもよい。適切な基準電圧発生装置の一例は、例えば、公知のバンドギャップを有する半導体材料を用いたバンドギャップ基準電圧発生装置である。バンドギャップは、半導体材料が作動中に晒されるであろう温度範囲に亘る温度に対し感受性ではないことが好ましい。適切な半導体材料としては、ガリウム、シリコン、ケイ酸塩が挙げられる。
【0255】
固体電子部品に適切にバイアスをかけるため、バイアス電流発生装置105を設けてもよい。一般にデジタル回路構成に使用されるクロック信号を生成するため、発振器107を設けてもよい。
【0256】
皮膚上センサ制御ユニット44はまた、回路構成、特に、制御ユニット44内のあらゆるデジタル回路構成を検査して、回路構成が正しく動作しているか否かを判断する監視回路103を備えていてもよい。監視回路動作の非限定的例としては、以下の動作が挙げられる:a)監視回路により乱数を生成し、記憶場所にその数を記憶し、監視回路のレジスタにその数を書き込み、そして、その数を再生し、同等であるかどうか比較する;b)アナログ回路の出力をチェックし、出力が所定のダイナミックレンジを超えるか否かを判断する;c)予測されるパルス間隔で信号用タイミング回路の出力をチェックする。監視回路の機能の他の例は、当該技術分野では公知である。監視回路は、エラーを検出した場合、アラームを始動させ、および/または、装置を停止させてもよい。
【0257】
レシーバ/ディスプレイユニット
1つ以上のレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、センサ42によって生成されるデータへのアクセスを容易にするため分析物モニタリング装置40を備えてもよく、また、いくつかの実施の形態においては、皮膚上センサ制御ユニット44からの信号を処理して、皮下組織中の分析物の濃度またはレベルを測定してもよい。小型レシーバ/ディスプレイユニット46は、患者が携帯することもできる。これらのユニット46は、手のひらサイズとすることもでき、および/または、患者が携帯するカバンまたはハンドバック内またはベルト上に収まるように適合させてもよい。小型レシーバ/ディスプレイユニット46の1つの実施の形態は、例えば、使用者が医療装置を使用している人であることが分からないように、ポケットベルの外観を有する。そのようなレシーバ/ディスプレイユニットは、必要に応じて、一方向または双方向の呼出し機能を有してもよい。
【0258】
大型レシーバ/ディスプレイユニット48を使用してもよい。これらの大型ユニット48は、棚またはサイドテーブルに載置するように設計されていてもよい。大型レシーバ/ディスプレイユニット48は、両親が、睡眠中の子供をモニタするため、または、夜中に患者を起こすために使用することもできる。さらに、大型レシーバ/ディスプレイユニット48は、便宜のため、および/またはアラームとして起動させるため、ランプ、時計、またはラジオを備えていてもよい。レシーバ/ディスプレイユニット46、48の内の一方または両方のタイプを使用してもよい。
【0259】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、図22にブロック形式で示されるように、一般に、皮膚上センサ制御ユニット44からデータを受信するレシーバ150、そのデータを評価する分析器152、患者に情報を提供するディスプレイ154、ある状態が生じた時に患者に警告する警報システム156を備えている。レシーバ/ディスプレイユニット46,48はまた、必要に応じて、データ記憶装置158、トランスミッタ160、および/または入力装置162を備えていてもよい。レシーバ/ディスプレイユニット46,48はまた、電源(例えば、電池および/または壁のコンセントから電力を受け取ることのできる電源)、監視回路、バイアス電流発生装置、および発振器などの他の構成要素(図示せず)を備えてもよい。これらの付加的構成要素は、皮膚上センサ制御ユニット44に関して上述したものと同様のものである。
【0260】
1つの実施の形態におけるレシーバ/ディスプレイユニット48は、自宅で患者が使用するためのベッドサイド用ユニットである。このベッドサイド用ユニットは、レシーバと1つ以上の随意的なアイテムとを備えており、そのアイテムとしては、例えば、時計、ランプ、聴覚アラーム、電話接続部、およびラジオが挙げられる。このベッドサイド用ユニットはまた、ディスプレイも備えており、好ましくは、部屋の反対側から読めるほど大きい数字および/または文字を使用したものである。そのユニットは、コンセントにつなぐことにより動作可能で、かつ、必要に応じて電池を予備として備えていてもよい。一般に、ベッドサイド用ユニットは、小型の手のひらサイズの装置よりも良好なアンテナを備えているため、ベッドサイド用ユニットの受信範囲はより広い。
【0261】
アラームが示された場合、ベッドサイド用ユニットは、例えば、聴覚アラーム、ラジオ、ランプを作動させ、および/または、電話を掛け始めてもよい。このアラームは、例えば、眠っていたり、嗜眠状態にあったり、混乱している患者を起こすか、または、刺激するために、小型の手のひらサイズのユニットのアラームよりも強力なものであってよい。さらに、大きな音のアラームにより、糖尿病の子供を夜中にモニタする親に注意を促すこともできる。
【0262】
ベッドサイド用ユニットは、専用のデータ分析器およびデータ記憶装置を備えてもよい。データは、皮膚上センサ制御ユニット、または、手のひらサイズまたは小型レシーバ/ディスプレイユニットなど、別のレシーバ/ディスプレイユニットから伝達されてもよい。このようにして、著しいギャップを生じずにデータをダウンロードし解析できるように、少なくとも1つのユニットが全ての関連データを保有している。
【0263】
必要に応じて、ベッドサイド用ユニットは、小型レシーバ/ディスプレイユニットを設置することもできるインターフェースまたはクレードルを有する。ベッドサイド用ユニットは、小型レシーバ/ディスプレイユニットのデータ記憶および解析能力を利用でき、および/または、この位置で、小型レシーバ/ディスプレイユニットからデータを受信することもできる。ベッドサイド用ユニットはまた、小型レシーバ/ディスプレイユニットの電池を充電できるものであってもよい。
【0264】
レシーバ150は、一般に、公知のレシーバおよびアンテナ回路構成を用いて形成され、多くの場合、皮膚上センサ制御ユニット44のトランスミッタ98の周波数または周波数帯域に合わされているか、合わせられる。一般に、レシーバ150は、トランスミッタ98の送信距離よりも長い距離から信号を受信できる。小型レシーバ/ディスプレイユニット46は、一般に、2メートルまで、好ましくは5メートルまで、さらに好ましくは10メートルまで、または、それ以上離れた皮膚上センサ制御ユニット44から信号を受信することができる。ベッドサイド用ユニットなどの大型レシーバ/ディスプレイユニット48は、一般に、5メートルまで、好ましくは10メートルまで、さらに好ましくは20メートルまで、または、それ以上離れた皮膚上センサ制御ユニット44から信号を受信することができる。
【0265】
1つの実施の形態において、皮膚上センサ制御ユニット44から離れていることのあるレシーバ/ディスプレイユニット46,48が信号を受信できるように、皮膚上センサ制御ユニット44からの信号を増幅するために中継器(図示せず)が使用される。中継器は、一般に、皮膚上センサ制御ユニット44から独立しているが、場合によって、中継器は、皮膚上センサ制御ユニット44に取り付けられるように構成することもできる。一般に、中継器は、皮膚上センサ制御ユニット44から信号を受信するためのレシーバと、受信した信号を送信するためのトランスミッタとを備えている。必須ではないが、中継器のトランスミッタは、皮膚上センサ制御ユニットのトランスミッタよりも出力の高いものであることが多い。中継器は、例えば、子供が身に付けている皮膚上センサ制御ユニットから、子供の分析物レベルをモニタするため親の寝室にあるレシーバ/ディスプレイユニットに信号を送信することを目的として、子供の寝室に使用できる。別の例示の用途は、病院で、患者の皮膚上センサ制御ユニットをモニタするための、ナースステーションのレシーバ/ディスプレイユニットに関する。
【0266】
他の皮膚上センサ制御ユニットを含む、他の装置が存在すると、トランスミッタ98の周波数帯域内でノイズまたは干渉が生じることがある。これにより、誤ったデータが生成されることもある。この潜在的な難点を克服するために、トランスミッタ98は、レシーバ/ディスプレイユニット46,48の範囲内に、複数の皮膚上センサ制御ユニット44または他の送信源がある場合には、例えば、好ましくは固有の識別コードを使用して、特定の皮膚上センサ制御ユニットを識別するコード、および/または送信開始を示すコードを送信してもよい。データと共に識別コードを提供することにより、レシーバ/ディスプレイユニット46,48が、他の送信源からの信号を傍受し解釈する可能性が低下すると共に、別の皮膚上センサ制御ユニット44との「クロストーク」も防止されるであろう。識別コードは、センサ制御ユニット44に記憶された工場設定コードとして提供してもよい。あるいは、識別コードは、センサ制御ユニット44またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48内の適切な回路でランダムに生成(かつ、センサ制御ユニット44に送信)されてもよく、または、識別コードは、患者により選択され、センサ制御ユニット44に接続されたトランスミッタまたは入力装置を介して、センサ制御ユニット44に送られてもよい。
【0267】
「クロストーク」を排除し、適切な皮膚上センサ制御ユニット44からの信号を識別するために、他の方法を使用してもよい。いくつかの実施の形態において、トランスミッタ98は、暗号化技術を使用して、トランスミッタ98からのデータ・ストリームを暗号化することもできる。レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、暗号化されたデータ信号を解読するための鍵を有する。次いで、レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、信号を解読した後に信号を評価することにより、擬似信号または「クロストーク」信号が受信された場合を判定する。例えば、1つ以上のレシーバ/ディスプレイユニット46,48の分析器152が、電流測定値または分析レベルなどのデータを、予測される測定値(例えば、生理学的に適切な分析物レベルに対応する予測範囲)と比較する。あるいは、レシーバ/ディスプレイユニット46,48の分析器は、解読されたデータ信号の識別コードを検索する。
【0268】
一般に、識別コードまたは暗号化方式と共に使用される、「クロストーク」を排除するための別の方法は、「クロストーク」が存在すると判断した際に、送信周波数または周波数帯域を変更する随意的な機構を皮膚上センサ制御ユニット44に設けることを含む。送信周波数または周波数帯域を変更するこの機構は、クロストークまたは干渉の可能性を検出した際に、レシーバ/ディスプレイユニットにより自動的に、および/または患者により手動で始動させてもよい。自動始動においては、レシーバ/ディスプレイユニット46,48が皮膚上センサ制御ユニット44の随意的なレシーバ91に信号を送信して、皮膚上センサ制御ユニット44のトランスミッタ98に、周波数または周波数帯域を変更するように指示する。
【0269】
周波数または周波数帯域の変更の手動での開始は、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48および/または皮膚上センサ制御ユニット44の作動装置(図示せず)を使用して行ってもよく、患者はその作動装置を操作して、トランスミッタ98に周波数または周波数帯域を変更するように指示する。手動で開始される送信周波数または周波数帯域の変更の動作は、レシーバ/ディスプレイユニット46,48および/または皮膚上センサ制御ユニット44からの聴覚的または視覚的信号により周波数または周波数帯域の変更を開始するように患者を促がすことを含んでもよい。
【0270】
レシーバ150の説明に戻ると、レシーバ150が受信したデータは分析器152に送られる。分析器152は、皮膚上センサ制御ユニット44の処理回路109に類似の様々な機能を有してよく、その機能としては以下のものが挙げられる:1)センサ42からの信号を、較正データおよび/または温度プローブ66の測定値を用いて修正する、2)間質液中の分析物レベルを決定する、3)間質液中のセンサ測定値に基づき、血流中の分析物レベルを決定する、4)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度における加速度が、1つ以上の閾値を超えるか、または到達するか否か決定する、5)閾値に到達したまたは閾値を超えた場合、警報システム156および/または94を起動させる、6)一連のセンサ信号に基づいて分析物レベルの傾向を評価する、7)薬剤の投与量を決定する、および7)ノイズまたはエラーの寄与を減少させる(例えば、信号加算平均または複数の電極からの読取値の比較による)。分析器152は、単純なものであってもよく、これらの機能の内の1つのみまたは少数のみを実行してもよく、または、分析器152は、これら機能の全てまたはほとんどを実行してもよい。
【0271】
分析器152からの出力は、一般に、ディスプレイ154に提供される。陰極線管ディスプレイ(特に大型装置について)、LEDディスプレイ、またはLCDディスプレイを含む様々なディスプレイ154を使用してよい。ディスプレイ154は、単色(例えば、白黒)または多色(すなわち、ある範囲の色を有する)のものであってよい。ディスプレイ154は、特定の条件下で作動される標識記号または他の表示を有していてもよい(例えば、センサ42から信号によって高血糖症などの状態が表示されると、特定の標識記号がディスプレイ上で見えるようになる)。ディスプレイ154は、LCDまたはLEDのアルファニューメリック構造体などの、より複雑な構造体を有していてもよく、その複数の部分を作動させ、文字、数字、または標識記号を生成することができる。例えば、ディスプレイ154は、図23に示すように、分析物のレベルを数字で表示する領域164を備えてもよい。1つの実施の形態において、ディスプレイ154はまた、患者に行動するように指示するメッセージを患者に提供する。このようなメッセージとしては、例えば、患者が低血糖症である場合、「砂糖を食べよ」であったり、患者が高血糖症である場合、「インスリンを摂取せよ」といったものが挙げられる。
【0272】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48の一例が図23に示されている。この特定のレシーバ/ディスプレイユニット46,48のディスプレイ154は、センサ42からの信号を使用して、処理回路109および/または分析器152により決定される分析物のレベル、例えば、血糖濃度を表示する部分164を有する。このディスプレイは、特定の条件下で作動する様々な表示166も含む。例えば、グルコースモニタリング装置の表示168は、患者が高血糖症であれば作動される。他の表示は、低血糖症(170)、切迫高血糖症(172)、切迫低血糖症(174)、誤作動、エラー状態の場合、または較正サンプルが必要なとき(176)に作動させることができる。いくつかの実施の形態では、色分けされた表示を使用してもよい。あるいは、血糖濃度を表示する部分164はまた、複合表示180(図24参照)を含んでもよく、その複数の部分は、上記状態のいずれも表示するように適切に作動されるであろう。
【0273】
ディスプレイ154は、図24に示すように、ある期間に亘り分析物レベルのグラフ178を表示できるものであってもよい。有用であろう他のグラフの例としては、時間の経過による分析物レベルの変化速度、またはその変化速度における加速度のグラフが挙げられる。いくつかの実施形態において、レシーバ/ディスプレイユニットは、患者が見たい特定の表示内容(例えば、血糖濃度または、濃度対時間のグラフ)を患者が選択できるように構成される。患者は、例えば、随意的な入力装置162の押しボタンなどを押すことにより、所望の表示モードを選択することもできる。
【0274】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、一般に、警報システム156も備えている。警報システム156を構成するための付加機能は、皮膚上センサ制御ユニット44の警報システム104のものと似ている。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御ユニット44は、低血糖症、高血糖症、切迫低血糖症、および/または切迫高血糖症などの状態を患者に警告する警報システム156を備えてもよい。警報システム156は、分析器152からのデータが閾値に達するかまたは超えたときに起動する。閾値は、上記血糖レベルと相関する間質液中グルコース濃度またはセンサ信号(例えば、電流値または変換された電圧値)に対応したものであってもよい。
【0275】
警報システム156は、同様に、または代わりに、分析物レベルの増加または減少の速度もしくは加速度が閾値に達するか、または、超えた場合に作動させてもよい。例えば、皮下グルコースモニタの場合、警報システム156は、グルコース濃度の変化速度が、高血糖症または低血糖症状態が生じる虞があることを示し得る閾値を超えた場合に起動させてもよい。
【0276】
警報システム156は、単一のデータポイントが特定の閾値に到達するか、または超えた場合に作動するように構成してもよい。あるいは、アラームは、所定の期間に亘る所定数のデータポイントが、閾値に到達するかまたは超えた場合のみ作動させてもよい。別の例として、アラームは、所定の期間に亘るデータポイントが、閾値に到達するかまたは超える平均値を有する場合のみ作動させてもよい。アラームを起動させることのできる各条件が、異なるアラーム作動条件を有してもよい。さらに、アラーム作動条件は、現在の状態に応じて変化してもよい(例えば、切迫高血糖症が表示された場合、高血糖症を判定するために検査されるデータポイント数または期間を変えてもよい)。
【0277】
警報システム156は、1つ以上の個別のアラームを備えていてもよい。各アラームは分析物の1つ以上の状態を知らせるように個別に作動させることもできる。それらのアラームは、例えば、聴覚的または視覚的であってよい。皮膚上センサ制御ユニット44に、加熱、冷却、振動、あるいは、穏やかな電気ショックを発生させるように指示する警報システム156を含む他の感覚刺激警報システムを使用してもよい。いくつかの実施の形態において、アラームは、異なる状態を表す異なるトーン、音色または音量を有する聴覚的なものである。例えば、高音が高血糖症を、低音が低血糖症を表してもよい。視覚的なアラームでは、異なる状態を示すために、色または輝度における差を利用してもよい。いくつかの実施の形態において、聴覚的な警報システムは、アラームが停止するまで、時間の経過と共にアラームの音量が増すように構成してもよい。
【0278】
いくつかの実施の形態において、アラームは、所定の期間後に自動的に停止させてもよい。他の実施の形態において、アラームは、データがもはや、アラームを起動させた状態が存在することを示さないときに、停止するように構成されてもよい。これらの実施の形態において、アラームは、1つのデータポイントが、その状態がもはや存在しないことを示したときに停止させても、あるいは、アラームは、所定の数のデータポイントまたは所定の期間に亘り得られたデータポイントの平均が、その状態がもはや存在しないことを示した後に初めて、停止させてもよい。
【0279】
さらに他の実施の形態において、アラームは、自動停止に加え、またはその代わりに、患者によりまたは別の人により手動で停止してもよい。これらの実施の形態において、起動されたときに、アラームを停止させるスイッチが設けられている。スイッチは、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48上の押しボタンを押すことによって、動作可能にスイッチを入れても(またはスイッチの構造に応じて、切られても)よい。警報システム156のある構成では、切迫した状態(例えば、切迫低血糖症または高血糖症)を知らせるアラームをある期間後に自動的に停止させ、現在の状態(例えば、低血糖症または高血糖症)を知らせるアラームを手動で停止させる。
【0280】
ある実施の形態において、それぞれ、皮膚上センサ制御ユニット44およびレシーバ/ディスプレイユニット46,48の警報システム104,156は、患者が、予測される出来事の発生が近づいたときに、患者に一連の事前通知を与えるように、皮膚上センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48を設定またはプログラムできるようにする累進的な警報または警戒警報特徴を含んでもよい。例えば、患者のモニタされている分析物レベルが所定のレベルに近づいたときに、一連の警戒警報(例えば、音響、振動、音響と振動の組合せ、および/または音量または振動の強度が増加するかまたは減少する、もしくは他の様式で強度が増加する)を受信することが望ましいかもしれない。
【0281】
そのような場合、皮膚上センサ制御ユニット44および/またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48は、患者のモニタされている分析物レベルが所定のレベルに近くなったときに、所定の時間で第1の警戒警報を生成し出力するように構成されてもよい。その後、第1の警戒警報の発生後に、モニタされている分析物レベルが、最初の警戒警報が出力されたときよりも所定のレベルに近づいたときに、第2の警戒警報を生成し出力してもよい。これを、第3、第4・・・などの警戒警報について繰り返してもよい。このようにして、予測された所定の出来事の繰り返しの通知が患者に与えられるように、1つ以上の所定の出来事に基づいて、一連の累進的な警戒警報を患者に与えてもよい。
【0282】
ある実施の形態において、一連のまたは連続した警戒警報または警報は、所定の出来事が近づくにつれて出力音量(または振動式警戒警報の場合には振動の強度)が増加するように構成されてもよく、一連のまたは連続した警戒警報または警報が、一様なテンポの時間だけ離れている。あるいは、一連のまたは連続した警戒警報または警報は、所定の出来事の発生が時間的に近づくにつれて、テンポが速くなるようにしてもよい。
【0283】
ある実施の形態において、所定の出来事の発生は、上限の閾値レベルを超える、または下限の閾値レベルを下回る、モニタされている分析物レベル、高血糖状態、切迫高血糖状態、低血糖状態、切迫低血糖状態、低薬剤投与レベルの表示、低い電池レベルの表示、または較正、グルコース検査(例えば、血糖ストリップメータを使用した)、センサの交換、輸液セットの密封確認などの行動計画を取るように注意喚起の内の1つ以上を含んでよい。
【0284】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48はまた、多数の随意的なアイテムを含んでもよい。その1つは、データ記憶装置158である。データ記憶装置158は、分析器152が分析物レベルの傾向を決定するように構成されている場合、使用するデータを記憶するのが望ましい。データ記憶装置158は、大型ディスプレイユニット48などの別のレシーバ/ディスプレイユニットにダウンロードできるデータを記憶する上でも有用であろう。あるいは、そのデータは、患者の自宅、診療室などで、分析物レベルの傾向を評価するために、コンピュータまたは他のデータ記憶装置にダウンロードされてもよい。レシーバ/ディスプレイユニット46,48にポート(図示せず)を設け、そのポートを通して、記憶されたデータを転送してもよいし、または、随意的なトランスミッタ160を用いて、データを転送してもよい。データ記憶装置158は、例えば、随意的な入力装置162を介して、患者により指示されたときに、データを記憶するように作動させてもよい。データ記憶装置158は、高血糖症または低血糖症の発見、運動、食事などの特定の出来事が生じた際に、データを記憶するように構成されてもよい。記憶装置158は、特定の出来事のデータと共に出来事標識を記憶してもよい。出来事標識は、レシーバ/ディスプレイユニット46,48により自動的に、または患者の入力により生成されてもよい。
【0285】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、その全てが先に記載されている、1)較正情報、2)皮膚上センサ制御ユニット44のトランスミッタ98に送信周波数または周波数帯域を変更するように指示する信号、および/または、3)皮膚上センサ制御ユニット44の警報システム104を作動させるための信号、を送信するために使用できる、随意的なトランスミッタ160も備えていてもよい。トランスミッタ160は、一般に、トランスミッタ98,160間のクロストークを避けるために、皮膚上センサ制御ユニット44のトランスミッタ98とは異なる周波数帯域で動作する。皮膚上センサ制御ユニット44のトランスミッタ98に関して上述したように、擬似信号の受信やクロストークを減少させるための方法を使用してよい。いくつかの実施の形態において、トランスミッタ160は、信号をセンサ制御ユニット44に送信するためだけに使用され、1フィート(約30cm)未満、好ましくは6インチ(約15cm)未満の範囲を有する。これにより、患者または別の人が、データの送信中、例えば、較正情報の送信中、センサ制御ユニット44の近くにレシーバ/ディスプレイユニット46を保持することが必要となる。光送信または有線送信を含むRF送信以外の方法を使用して送信してもよい。
【0286】
その上、本発明のいくつかの実施の形態において、トランスミッタ160は、別のレシーバ/ディスプレイユニット46,48または何らかの他のレシーバにデータを送信するように構成してもよい。例えば、小型レシーバ/ディスプレイユニット46は、図1に示すように、大型レシーバ/ディスプレイユニット48にデータを送信することもできる。別の例として、レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、患者の自宅または診療室のコンピュータにデータを送信することもできる。さらに、トランスミッタ160または別個のトランスミッタに、アラームが作動したとき、および/または所定の期間後、作動したアラームが停止されておらず、患者が助けを必要としていることを示唆する場合、医師または他の人に注意を促す電話または他の通信装置、もしくは、別の装置に送信させてもよい。いくつかの実施の形態において、レシーバ/ディスプレイユニットは、一方向、または双方向の呼び出し機能を有することもでき、および/または、電話線に接続して、患者をモニタしている健康管理者などの別の人にメッセージを送信および/または受信する。
【0287】
レシーバ/ディスプレイユニット46,48用の別の随意的な構成要素は、キーパッドまたはキーボードなどの入力装置162である。入力装置162は、数字または英数字入力ができるものであってよい。入力装置162は、分析物モニタリング装置40の機能を起動させ、および/または分析モニタリング装置40に入力を与える押しボタン、キーなどを備えていてもよい。そのような機能としては、データ転送の開始、トランスミッタ98の送信周波数または周波数帯域の手動変更、警報システム104,156の停止、較正データの入力、および/または出来事を表すデータの記憶を作動させるための出来事の表示が挙げられる。
【0288】
入力装置162の別の実施の形態は、タッチスクリーンディスプレイである。タッチスクリーンディスプレイは、ディスプレイ154に組み込まれても、または別個のディスプレイであってもよい。タッチスクリーンディスプレイは、スクリーンの、所望の機能に対応する「ソフトボタン(sotf button)」により示されている位置に患者が触れると作動する。タッチスクリーンディスプレイは、よく知られている。
【0289】
その上、分析物モニタリング装置40は、データの端末への不当な送信、または装置40に対する設定の不当な変更を防ぐために、パスワード保護機能を備えていてもよい。パスワード保護機能が起動する度に、ディスプレイ154は患者に対して、入力装置162を使用してパスワードを入力するように指示することもできる。
【0290】
入力装置162により作動させることのできる別の機能は、停止モードである。停止モードは、レシーバ/ディスプレイユニット46,48が、データの一部または全てをもはや表示していないことを示すこともできる。いくつかの実施の形態において、停止モードの起動により、警報システム104,156を停止させることさえ可能である。患者に、この特別な行動を確認するように指示することが好ましい。停止モードの間、処理回路109および/または分析器152は、データ処理を停止してもよく、またはデータ処理は継続するが、それをディスプレイに報告しなくてもよく、または必要に応じて、後で検索できるようにそのデータを記憶してもよい。
【0291】
あるいは、入力装置162が所定の期間に亘り作動してしない場合、休眠モードに入ってもよい。この期間は、患者または別の人による調節が可能である。この休眠モードでは、処理回路109および/または分析器152は、一般に、引き続き測定値を得、データを処理するが、ディスプレイは起動されていない。休眠モードは、入力装置162を起動させるなどの行為により停止させてもよい。その後、現在の分析物読取値または他の所望の情報を表示させてもよい。
【0292】
ある実施の形態において、レシーバ/ディスプレイユニット46は、ユニット46が、所定の期間内に皮膚上センサ制御ユニットからの伝送を受信していない場合、聴覚または視覚アラームを始動させる。そのアラームは、一般に、患者が応答するまで、および/または伝送を受信するまで継続する。これは、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46が不注意で置き忘れられていた場合、患者に思い出させることができる。
【0293】
別の実施の形態において、レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、較正ユニット(例えば、図36A〜D参照)と一体化されている。例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、例えば、従来の血糖モニタを備えていてもよい。分析物濃度の電気化学検出を利用する別の有用な較正装置が、例えば、米国特許出願第08/795,767号;米国特許第6338790号;同第6616819号;同第6071391号;第6143164号;同第6749740号;同第6736671号;同第6299757号;同第6591125号;同第6736957号;同第7418285号;および米国特許出願公開第2006/0091006号;同第2008/0267823号;同第2008/0066305号;同第2008/0148873号;同第2007/0068807号;同第2007/0199818号;同第2007/0227911号;同第2007/0108048号の各明細書に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0294】
較正に、電気化学および比色定量血糖アッセイ、間質液または皮膚液のアッセイ、および/または非観血的光学的アッセイを用いて作動する装置を含む、他の装置を使用してもよい。ある態様において、経皮または皮下に埋め込まれたセンサ42の較正が必要な場合、患者は、一体化された生体外モニタを使用して読取値を生成する。次いで、その読取値は、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48により、自動的に使用されて、センサ42を較正することもできる。
【0295】
生体内センサシステムの較正および/または検証は、レシーバ/ディスプレイユニット46,48の筐体に一体化された(または他の様式でそこに連結された)生体外血糖モニタを使用して、1つ以上の血糖測定値(参照測定値または較正データとも称される)を得、得られた1つ以上の生体内センサ測定値の1つ以上を、生体内センサシステムから得られた1つ以上の生体内信号と比較するかまたは相関付ける各工程を含む。比較されたまたは相関付けられた生体外血糖値および生体内信号は、例えば、マイクロプロセッサまたは類似の演算装置またはレシーバ/ディスプレイユニット46,48の構成要素によって、アルゴリズムで使用してまたはルーチンで実行して、実質的にリアルタイムで、および/または過去に遡っておよび/または先を見越してのいずれかで、他の生体内センサ信号(較正値(例えば、mg/dLなどの測定の分析物単位の)および/または原センサ信号または他に処理されたセンサ信号(例えば、nAなどの原信号単位の)のいずれか)を較正してもよい。
【0296】
したがって、生体内システム、例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48、センサ制御ユニット44などは、一体化された生体外較正ユニットから得られた参照データなどの参照データを使用して、生体内センサデータを較正または検証するために、1つ以上のルーチンを実行するためのプログラミングを含んでもよい。ここに記載したように、生体内センサ信号データ(較正されたおよび/または未較正の信号)および/または生体外血糖測定値および/または個別の区別できるデータ値として、もしくは一方または両方を使用することにより得られた結果としての両方を含んでよいデータまたは信号の検証および/または承認(例えば、使用者の肯定的な断定または指示)が、上述したいずれもが認められるか実施される前、または較正が認められるか実行される前に要求されるであろう。ここで、検証としては、以下に限られないが、グルコースなどのパラメータの変化または変動の速度が所定の範囲内または許容範囲内にあることの承認および/または検証、グルコース値などのパラメータが所定の分析物範囲内にあるかの決定、時間関連パラメータ(例えば、特定の許容時間窓内にあるべき参照測定値を得る時間枠と比べた生体内センサデータのサンプル時間に基づく)の決定、1つ以上の生体内センサデータ関連の標準偏差または特徴、そのデータに関連する絶対値、信号アーチファクトの確率、信号中のノイズ寄与、信号安定性分析などの分析が挙げられる。
【0297】
生体内連続分析物システムの較正および検証のための較正および検証プロトコルが、ここと、その開示をここに引用する、米国特許第6284478号;同第7299082号;米国特許出願第11/365340号;同第11/537991号;同第11/618706号;同第12/242823号;同第12/363712号の各明細書に記載されている。
【0298】
特定の実施の形態において、そこに一体化されたか他の様式でそこに連結された(例えば、有線でおよび/または無線で)レシーバ/ディスプレイユニット46,48に利用される較正ユニット、例えば、生物学的流体サンプルを、完全に半ビボ(ex vivo)のグルコース検査片に施し、サンプル中のグルコースの濃度を決定する生体外プロセスによりグルコース濃度を決定する血糖モニタは、コーディングおよびノーコーディングシステムの両方として構成してもよい。コーディング/ノーコーディング較正ユニットは、使用者の較正行動を要求する(例えば、所定の生体外検査片または生体外検査片のバッチについて生体外メータを使用者が設定する(例えば、較正コードなどの検査片パラメータを入力するまたはモニタに提供する)自発的行動を要求する)生体外分析物検査片、および使用者の較正行動を必要としない生体外試験片(すなわち、所定の生体外検査片または生体外検査片のバッチについて血糖モニタを使用者が設定する自発的行動を必要としないノーコーディングシステム)を受け入れ、そこから分析物濃度を正確に決定するように構成することもできる。ここに用いたように、較正コードおよび較正パラメータは、互いに交換可能に使用されるとともに、検査片から対応する分析物レベルを決定するために流体サンプルから生成された信号を処理、検証、確認、またはさもなければ、受け取るのに使用されるグルコース検査片に関連する値、レベル、または特徴に関連することが意図されている。
【0299】
それゆえ、ある態様において、コーディング/ノーコーディング血糖モニタは、コーディングモニタおよびノーコーディングモニタとして機能するようにプログラムすることもできる。言い換えれば、本開示の態様において、例えば、使用者のコーディングを要求する生体外検査片または使用者のコーディングを要求しない生体外検査片のいずれかを使用して、連続分析物センサシステムにより得られた結果に基づいて治療行為を実行する前に、生体内連続分析物検出システムを構成する、および/または生体内連続分析物検出システムの結果を検証するためのユニバーサル較正ユニットを提供することもできる。様々な較正変数およびアルゴリズムをユニバーサル較正ユニットのメモリ内に記憶させ、それに、生体外分析物検査片の特定の較正要件にしたがってアクセスしてもよい。ユニバーサル較正ユニットは、ある実施の形態において、特定の生体外分析物検査片がユニバーサル較正ユニットにより受け入れられたときに、使用者の選択なしで(例えば、選択または検出を自動的に行うことにより)、使用者が較正情報を提供する必要のある生体外検査片と、較正情報の自発的な入力を要求しない生体外検査片とを識別するであろう。他の実施の形態において、使用者は、例えば、使用者の入力ボタンなどの機能セレクタを使用して、ユニバーサル較正ユニットに対して生体外検査片のタイプを示すことを要求されるようにしてもよい。このようにして、ある態様において、ユニバーサル較正ユニットは、コーディングおよびノーコーディング生体外検査片から得られた測定された分析物レベルが、生体外検査片のタイプの使用者による指示またはプログラミング(例えば、検査片が較正コードを要求するか否かまたは検査片が較正コードのないタイプの検査片であるか否か)の有無にかかわらず、正確に報告される(例えば、視覚的ディスプレイを通じて)ように構成することもできる。
【0300】
ある実施の形態において、生体内分析物システムに連結された血糖モニタは、ユニバーサル生体外分析物検査片を受け入れるように構成することもできる。ユニバーサル検査片は、ノーコーディング検査片に使用されるように構成された血糖モニタおよびコーディング検査片に使用されるように構成された血糖モニタに使用できる生体外検査片である。血糖モニタは、ある実施の形態において、ユニバーサル検査片の表示から、例えば、その開示をここに全て引用する、米国特許出願公開第2008/0267823号明細書に記載されているように、較正が自動的(ノーコーディング)であるか否か、もしくは使用者が較正情報を装置に入力する必要があるか否か(コーディングが要求される)を判定してもよい。モニタと接触したユニバーサル生体外分析物検査片の自動認識または検出は、例えば、機械的におよび/または電気的に行われてもよい。
【0301】
コーディングを要求する生体外血糖モニタリングシステムでは、使用者に、例えば、較正コードなどの形態にある較正情報を手動で生体外血糖モニタに、より詳しくは、そのモニタの較正ソフトウェアアルゴリズムに手動で入力させる必要があり、その情報は、所定の検査片、バッチ、または検査片の1つ以上の製造ロットに関連付けられている。較正コードは、製造プロセス中に決定され、通常、製造ロットに特有である。コーディングを要求するシステムにおいて、この較正情報は、グルコースモニタリングシステムに入力するための形式で、例えば、上述したような血糖モニタに手動で入力すべき数字または英数字コードの形態で、もしくはモニタにより受け取られ、検査片の使用前にモニタにより受け取られた較正器から読み取ることのできる較正コード情報を含むデータストリップなどの較正器の形態で、使用者に提供される(例えば、その開示をここに引用する、米国特許第6377894号、および同第6600997号、並びに米国特許出願公開第2007/0118704号の各明細書参照)。
【0302】
ノーコーディング較正ユニットは、システムの生体外グルコース検査片を較正するために使用者の部分へのどのような働きも必要ない血糖モニタリングシステムを含む。そのようなノーコーディング生体外分析物システムは、使用者が較正コードを血糖モニタに入力する必要が無く、センサの製造後に血糖モニタにより他の様式で較正コードが得られないものを含み、あるコードが、血糖モニタにより読まれるかまたは他の様式で得られるが、生体外検査片に適用される生物学的流体のサンプルから分析物を検査するのに必要な通常の行為(例えば、生体外検査片を、レシーバ/ディスプレイユニット46,48の筐体と一体化された生体外グルコースモニタ中に挿入し、体の部分を刺して生物学的サンプルを搾り出し、搾り出した生物学的サンプルを生体外検査片に接触させ、その後、生体外グルコースモニタが、分析物濃度を決定し、その分析物結果を、聴覚的に、触覚出力を使用しておよび/または視覚的に、使用者に報告する)以外に使用者の部分にどのような追加の行為も必要ないものを含む。
【0303】
例えば、ノーコーディングシステムは、較正情報が、グルコースモニタにより自動的に、グルコース濃度を決定するために使用され、かつ較正情報を含んでもよい分析物検査片から直接的に、読まれるかまたは他の様式で得られるものを含む。したがって、ある実施の形態において、生体外血糖モニタ(レシーバ/ディスプレイユニット46,48に組み込まれているか、または他の様式で連結されていてよい)は、モニタにより受け取られる検査片を使用して、正確な(較正されたものを含む)血糖読取値を決定するために、検査片の使用前に、使用者により較正コードの手動入力を必要としない。レシーバ/ディスプレイユニット46,48のメモリは、ノーコーディング検査片ではない生体外分析物検査片の全てに使用できる較正コードまたはアルゴリズムを含んでよい。例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48は、その較正コードまたはアルゴリズムに自動的にアクセスするように構成されていてもよい。
【0304】
コーディングを要求する生体外血糖モニタリングシステムは、使用者が、例えば、較正コード、コードデータストリップなどの形態にある較正情報を、生体外血糖モニタに、より詳しくは、そのモニタの較正ソフトウェアアルゴリズムに入力することを要求し、その情報は、所定の検査片またはバッチもしくは検査片の製造ロットに関連付けられている。この較正コードは、製造プロセス中に決定され、通常、製造ロットに特有である。コーディングを要求するシステムにおいて、この較正情報は、グルコースモニタリングシステムに入力するための形式で、例えば、使用者により手動でメータに入力すべきコードの形式で、またはモニタにより受信されるコードデータストリップなどの較正器の形式で、使用者に提供され、検査片などの使用前にモニタ受信較正器が読むことのできる較正コード情報を含む(例えば、その開示をここに引用する、米国特許第6377894号、米国特許出願第10/326008号の各明細書を参照のこと)。しかしながら、使用者が不正確な較正情報を入力すれば、または誤った較正器がモニタに挿入されれば、グルコースモニタにより決定される分析物読取値は不正確になるか、またはそのような不正確な結果が使用者に示されるであろう。
【0305】
ノーコーディングは、どのような適切な様式で行ってもよい。ある実施の形態において、ノーコーディングは、検査片製造プロセス、例えば、検査片は較正調節されてもよく(例えば、所定の較正基準またはコードを満たすセンサを提供するために、製造中に予備センサを物理的に変更する)、および/またはプロセス制御などにより行ってもよい。製造中の予備センサの物理的な変更が、ここにその開示を全て引用する、米国特許出願公開第2008/0066305号明細書に記載されている。例えば、検査片は、その中に存在する、例えば、メモリに記憶された所定の較正コードを有するメータに使用されるように較正されてもよく、検査片は、記憶されたコードを満たすまたは適合するように標準化された較正基準に合うように製造されてもよい。
【0306】
ある実施の形態において、ノーコーディングは、較正情報を検査片上で(例えば、導電材料を使用して電気的、光学的など)直接コーディングすることによって行ってもよく、その情報は、メータが受け取る生体外分析物検査片から直接的に血糖モニタにより得られるであろう。そのようなコーディング方法および装置の例が、その開示をここに全て引用する、米国特許第6616819号、同第6749740号、および米国特許出願公開第2006/0091006号、同第2008/0267823号の各明細書に記載されている。ある実施の形態において、検査片は、その開示をここに全て引用する、米国特許第7418285号明細書に記載されたような補償電極を含んでもよい。
【0307】
様々な較正変数およびアルゴリズムが、較正ユニットのメモリ内に記憶され、生体外分析物検査片の特定の較正要件にしたがってアクセスされてもよい。例えば、メモリは、較正データ、例えば、ノーコーディング検査片などである全ての生体外分析物検査片に使用できるユニバーサル較正コードまたはアルゴリズムを含んでもよい。記憶された情報はアクセスされてもよく、例えば、ユニットがその情報に自動的などでアクセスしてもよい。例えば、ユニット(例えば、レシーバ/ディスプレイユニット46,48)は、そのようにする使用者の行為なくとも、所定の生体外分析物検査片がユニットに受け入れられたときに、所定の検査片のタイプを識別し、適切な記憶された較正情報にアクセスして、受け入れられた生体外検査片を較正し、しかるべく検査片を較正してもよい。例えば、ここに記載された特許および出願、例えば、その開示をここに全て引用する、米国特許第4714874号、同第5856195号、同第6616819号、同第6773671号、同第7148285号および米国特許出願第11/461725号、同第12/110026号、同第12/110240号の各明細書を参照のこと。
【0308】
図36A〜Dは、センサ制御ユニット取付ユニット477内に配置されたセンサ制御ユニット444、および直接的または取付ユニット477上の随意的な電気接点を通じてのいずれかでセンサ制御ユニット444と電気的に接触した生体内分析物センサ442を備えた生体内連続分析物モニタリングシステム440のある実施の形態を示している。この連続分析物モニタリングシステム440は、使用者のコーディングを要求する生体外検査片および使用者のコーディングを要求しない生体外検査片を受け取り、ユニバーサル生体外検査片を受け取ることもあるユニバーサル血糖モニタ510を含むレシーバ/ディスプレイユニット446,448も備えている。この実施の形態において、血糖モニタ510はレシーバ/ディスプレイユニット446,448と一体化されている。血糖モニタ510は、ノーコーディング生体外検査片、コーディングを要求する検査片、および必要に応じてユニバーサル生体外検査片を受け入れ、受け入れられた生体外検査片がモニタと接触させられたときにこの検査片に施された生物学的流体のサンプル中の分析物、例えば、グルコースの存在および/または濃度を決定することによって、正確な血糖測定データを提供するためのプログラミングを含む。
【0309】
図36A〜Dの実施の形態において、血糖モニタ510は、生体外分析物検査片600(図36C〜D参照)を受け入れるための、レシーバ/ディスプレイユニット446,448の筐体450と一体化した検査片ポート512を含む。検査片600がポート512により受け入れられる前または後のいずれかに、血液サンプルがその検査片に施され、レシーバ/ディスプレイユニット446,448の一体モニタ510が、サンプルから分析物、例えば、グルコースの濃度を正確に決定する。検査片がノーコーディング検査片である場合、分析物の濃度は、使用者が対応する生体外検査片600についてメータを較正するためのどのような自発的行為を行わずに、決定される。検査片が、コーディングを要求するものである場合、分析物の濃度は、使用者が生体外検査片600を較正するための自発的行為を行った後に、決定される。生体外分析物検査の結果は、例えば、レシーバの視覚的ディスプレイにより、または他の様式で、使用者に報告することもできる。
【0310】
図37は、本開示のある態様による図36A〜Dに示されたレシーバ/ディスプレイユニット446/448の単純化されたブロック図である。図37を参照すると、図示されるように、ある態様において、レシーバ/ディスプレイユニット446/448は、その上に分析サンプル(例えば、血液サンプル)を有する生体外分析物検査片を受け入れるための検査片ポート(図示せず)を含む検査片インターフェース3710を備えている。検査片インターフェース3710は、例えば、検査片から検出された1つ以上の信号を含む、検査片インターフェース3710の動作と関連付けられた信号またはデータを送るまたは受信するように処理ユニット3720に動作可能に連結されている。図37にさらに示されるように、ある実施の形態において、入力/出力ユニット3730が、処理ユニット3720に動作可能に連結され、例えば、データ/情報をレシーバ/ディスプレイユニット446/448に入力する、および/またはデータを、視覚的、聴覚的、振動、またはそれらの1つ以上の組合せとして使用者に出力するためのユーザ・インターフェースとして構成されている。
【0311】
ある態様において、処理ユニット3720は、上述したレシーバ/ディスプレイユニット446/448の動作に加え、上述した較正ユニットのデータ処理、分析、および/またはデータ記憶(較正変数、コーディング情報、較正アルゴリズムを含む)を含む機能のいくつかまたは全てを含むように構成されてもよい。図37は、レシーバ/ディスプレイユニット446/448の検査片インターフェース3710、処理ユニット3720および入力/出力ユニット3730を示しているが、本開示の範囲内で、レシーバ/ディスプレイユニット446/448は、分析物モニタリングシステムの動作に関連して上述した追加の構成要素および機能を含む。
【0312】
ユニバーサル生体外血糖モニタは、ここに記載されたような、それと一体化されたかまたは他の様式でそこに連結された(例えば、有線および/または無線で連結された)ものを含む、インスリン送達システムなどの薬剤投与システムに使用してもよい。そのような実施の形態において、薬剤投与システムによる薬剤の送達前に、血糖濃度を確認するために、ユニバーサル生体外血糖モニタを使用してもよい。使用者は、薬剤が投与される前に、推奨される薬剤投与出来事を確認するように要求されるかもれしない。
【0313】
実施の形態は、例えば、レシーバユニットおよび/または薬剤投与装置などのシステムの構成要素と一体化された、ここに記載されたようなユニバーサル生体外血糖モニタを含む、糖尿病をモニタし、治療するための一体型薬剤投与システムを含む。この一体薬剤投与システムは、生体内グルコースセンサであって、少なくともその一部分が、血液、間質液などの生物学的流体と接触する使用者の皮膚表面の下に挿入可能であり配置可能であるように構成され、ここに記載された期間、例えば、約1時間以上、例えば、約24時間以上、例えば、数日間以上、例えば、約1週間以上に亘り使用者内のグルコースを実質的に連続的に測定し、センサのデータポイントを含むデータ・ストリームを出力する生体内グルコースセンサを備えてもよい。このシステムは、一体化された血糖モニタおよび分析物検査ポートを有し、センサのデータ・ストリームを受信するように構成された、ここに記載されたレシーバ/ディスプレイユニット、および受信ユニットに連結された、例えば、受信ユニットに一体化されたおよび/または物理的に取外し可能に接続されたような、インスリン送達装置も備えてもよい。インスリン送達装置としては、注射器、経皮貼布、吸入器または噴霧送達装置、ペンまたはペン型注入器、外部ポンプなどの移動式輸液用器具、埋込可能なポンプが挙げられ、そのいずれもが、例えば、取外し可能に接続された、受信ユニットなどのシステムの構成要素に接続されていてもよい。例えば、レシーバ、および/またはインスリン送達装置および/またはセンサ制御ユニットなどのシステムの構成要素は、ここに記載されたような切迫した臨床的危険性(例えば、低血糖症、切迫低血糖症、高血糖症、切迫高血糖症)を含む臨床的危険性に関連する状態またはパラメータを(例えば、自動的に)検出し、検出された臨床的危険性に基づいて薬剤投与(例えば、インスリン投与量)の推奨を決定してもよい。使用者がシステムの構成要素、例えば、レシーバ、および/またはインスリン送達装置および/またはセンサ制御ユニットを検証するおよび/または確認することを要求するプログラミングが含まれてもよい。例えば、使用者は、ここに記載されたようなユーザ・インターフェースによって促されてもよい。使用してよい薬剤投与システムとしては、以下に限られないが、その開示をここに引用する、米国特許第6916159号、米国特許出願第11/530473号、同第11/462982号、同第11/462974号、同第11/427587号、同第11/427187号、同第11/428299号、同第11/386915号、同第11/106155号、同第12/032593号の各明細書に記載されたものが挙げられる。
【0314】
薬剤投与システムとの一体化
図25は、本発明による、センサに基づく薬剤送達システム250のブロック図を示す。このシステムは、1つ以上のセンサ252からの信号に応答して高レベルまたは低レベルの分析物の影響を打ち消すように薬剤を供給してもよい。あるいは、このシステムは、薬剤が確実に所望の治療域内に留まるように薬剤濃度をモニタする。薬剤送達システムは、1つ以上(好ましくは2つ以上)の皮下に埋め込まれたセンサ252、皮膚上センサ制御ユニット254、レシーバ/ディスプレイユニット256、データ記憶および制御装置モジュール258、および薬剤投与システム260を備えている。場合によって、レシーバ/ディスプレイユニット256と、データ記憶および制御装置モジュール258と、薬剤投与システム260とは、単一ユニット内に一体化されていてもよい。センサに基づく薬剤送達システム250は、1つ以上のセンサ252からのデータを使用して、データ記憶および制御装置モジュール252内の制御アルゴリズム/機構に必要な入力情報を提供し、薬剤の投与を調節する。一例として、グルコースセンサを使用して、インスリンの投与を制御および調節することができるであろう。
【0315】
図25において、センサ252は、患者の体内の薬剤または分析物のレベルと相関関係を有する信号を生成する。分析物のレベルは、薬剤投与システムにより送達される薬剤量によって決まる。レシーバ/ディスプレイユニット256の、または、図25に示すような、皮膚上センサ制御ユニット254のプロセッサ262は、分析物レベル、およびことによると、分析物レベルの上昇または低下の速度またはその速度の加速度などのその他の情報を決定する。そして、この情報は、非一体型レシーバ/ディスプレイユニット256、または、図25に示すような皮膚上センサ制御ユニット254のトランスミッタ264を使用して、データ記憶および制御装置モジュール252に送信される。
【0316】
薬剤送達システム250が、2つ以上のセンサ252を備えている場合、データ記憶および制御装置モジュール258は、2つ以上のセンサ252からのデータを有効であるとして受け取る前に所定のパラメータの範囲内に適合することを確認することもできる。次いで、このデータは、必要に応じて先に得たデータを用いて、データ記憶および制御装置モジュール258で処理され、薬剤投与プロトコルを決定することもできる。薬剤投与プロトコルは、薬剤投与システム260を用いて実行され、この薬剤投与システム260は、内部または外部輸液ポンプ、注射器、経皮吸収送達システム(例えば、皮膚に配置される薬剤含有貼付剤)、または吸入装置であってもよい。あるいは、薬剤貯蔵および制御装置モジュール258は、患者または別の人がそのプロファイルにしたがって患者に薬剤を提供できるように薬剤投与プロトコルを提供することもできる。
【0317】
本発明の1つの実施の形態において、データ記憶および制御装置モジュール258は、訓練可能なものである。例えば、データ記憶および制御装置モジュール258は、所定の期間、例えば、数週間に亘ってグルコースの読取値を記録してもよい。低血糖症または高血糖症の発現が見つかると、そのような事態に至らせた関連経歴を分析して、今後の症状の発現を予測するシステム能力を向上させ得る何らかのパターンを決定してもよい。その後のデータを公知のパターンと比較して、低血糖症または高血糖症を予測し、それに応じて薬剤を送達することも可能である。別の実施の形態において、傾向の分析は、外部システム、または皮膚上センサ制御ユニット254内の処理回路109またはレシーバ/ディスプレイユニット256内の分析器152によって行われ、その傾向は、データ記憶および制御装置258に取り込まれる。
【0318】
1つの実施の形態において、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/または分析器152は、今後の症状の発現に対する患者の反応を予測するために多数の症状の発現からの患者固有のデータを利用する。予測に使用される多数の症状の発現は、一般に、同様のまたは類似の外部もしくは内部刺激に対する反応である。刺激の例としては、低血糖症または高血糖症(またはグルコース以外の分析物に関しての対応する状態)の期間、状態の治療、薬剤送達(例えば、グルコースに対するインスリン)、摂食、運動、絶食、体温変化、体温上昇または低下(例えば、熱)、および、病気、ウイルス、感染などが挙げられる。多数の症状の発現を分析することにより、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/または分析器152は、今後の症状の発現の過程を予測し、例えば、薬剤投与プロトコルを提供するか、あるいは、この分析に基づいて薬剤を投与することができる。今後の分析に使用することを目的として、例えば、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/または分析器152がそのデータを特定の症状の発現から生じるものとしてタグを付けることができるように、特定の症状が発現しているときを示すために、患者または別の人が入力装置(図示せず)を使用してもよい。
【0319】
さらに、薬剤送達システム250は、進行中薬剤感受性フィードバックを提供できるものであってもよい。例えば、薬剤投与システム260による薬剤投与中に得られたセンサ252からのデータは、薬剤に対する個々の患者の反応についてのデータを提供してもよく、そのデータは、現行の薬剤投与プロトコルをそれに従って即座に修正するのに使用できるとともに、今後の修正にも使用できる。各患者に対して取り出せる所望のデータの例としては、薬剤投与に対する反応に関し一定である患者特有の時間(例えば、公知のインスリンボーラスを投与したときに、グルコース濃度がどれだけ迅速に低下するか)が挙げられる。別の例には、様々な量の薬剤投与に対する患者の反応(例えば、患者の薬剤感受性曲線)がある。同様の情報を薬剤貯蔵および制御装置モジュールにより記憶し、その後、患者の薬剤反応の傾向を判断するために使用することもでき、これを、後続の薬剤投与プロトコルを引き出す上で使用し、それによって、患者の必要性に対する薬剤投与プロセスを個人化してもよい。
【0320】
ある実施の形態において、2つの別個のセンサ252からのセンサデータを比較し、それらのデータがある許容範囲内に入ると決定されたら、その許容範囲から外れた患者におけるモニタした分析物のレベルを補正する修正要因を決定するため、あるいは、センサデータに基づいて既存の輸液送達速度に対する適切な変更を決定するため、適切な薬剤注入レベルを計算するように、センサに基づく薬剤送達システム250を構成してもよい。
【0321】
このようにして、本発明のある実施の形態において、2つのセンサから得られたデータが一致した場合、連続モニタリングシステムにセンサ252を使用した、患者の分析物レベルの同時かつ正確な測定に基づく患者の治療のために薬剤送達速度を動的に変更するように、センサに基づく薬剤送達システム250を構成することのできる、閉ループシステムが得られるであろう。
【0322】
他方で、2つのセンサ252からのデータを比較して、データが一致しないか、またはそうでなければ許容範囲内に入らない場合、センサに基づく薬剤送達システム250は、開ループシステムに戻り、使用者である患者に介入するように促し、例えば、患者に、センサデータの精度を確認するようにフィンガー・スティック確認検査を行うように指示する。例えば、システムが、患者に、患者のグルコースレベルをモニタする分析物センサの精度を確認するために血糖メータを使用してフィンガー・スティック(または腕)血糖検査を行うように促してもよい。この場合、患者は、別々に、投与のための適切な投薬量を決定するか、またはそうでなければ、計算された投薬量(例えば、ボーラス、または既存の基本プロファイルに対する変更)を確認してもよい。あるいは、フィンガー・スティック検査からのグルコース読取値に基づいて、例えば、患者は修正ボーラスを、または既存のインスリン注入速度を改善するために既存の基本プロファイルに対する修正を手動で計算してもよい。
【0323】
本発明は、上述の特定の具体例に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲に適切に記載された本発明の全態様を包含するものと理解されるべきである。様々な改変、同等のプロセス、並びに本発明を適用できる多くの構造は、本明細書を見れば、本発明に関連する技術分野の当業者にとっては容易に明白であろう。特許請求の範囲は、そのような改変および装置を包含することを意図したものである。
【符号の説明】
【0324】
42 センサ
44 センサ制御ユニット
46,48 レシーバ/ディスプレイユニット
66 温度プローブ
95 電源
96 測定回路
97 センサ回路
98,160 トランスミッタ
99 温度プローブ回路
101 基準電圧発生装置
102 データ記憶ユニット
103 監視回路
150 レシーバ
154 ディスプレイ
156 警報システム
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
図36C
図36D
図37