(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記球状突起は、前記ヘッドの側壁を通過して前記チャンバに入る、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記アンカー部及び前記ネック部は、単一部品として形成されている、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記アンカー部及び前記ネック部は、別個の部品として形成され、相互に嵌合して前記ステムを形成する、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記ステムは、橈骨の髄腔内に収容されるよう構成され、前記ヘッドは、橈骨頭を置換するサイズを有する、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記チャンバは、前記球状突起が前記チャンバ内に配置されると前記球状突起に係合する複数のスプラインを含む、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記ステムは、前記アンカー部の上部にフランジを含み、該フランジの上面は、前記ステムの長さに沿った軸に対して垂直な平面内に配置されている、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記把持部は、前記位置合わせ部の窪みと係合するよう構成されているラグを含む挟持部を備える、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記把持部は、前記位置合わせ部の対応する形状のダブテール側壁と係合するよう構成されている2つの平行プロングを含む、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記テールピース部の前記ブレースはKワイヤを収容可能なスリーブとして構成され、該スリーブの軸は前記第1の長手方向軸と同一である、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記ブレースは、患者の前腕に載るよう構成され、前記第1の長手方向軸上の第2点は、該ブレースの曲率によって規定される弧の中心点とされる、位置合わせ可能な関節補綴システム。
請求項1に記載の位置合わせ可能な関節補綴システムにおいて、前記テールピース部は、前記スペーシングバーに沿って移動可能であり、また該スペーシングバーに対して係止可能である、位置合わせ可能な関節補綴システム。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】人間の腕の橈骨と尺骨との間の相互作用を比喩的に示す。
【
図1B】人間の腕の橈骨と尺骨との間の相互作用を比喩的に示す。
【
図2】橈骨頭補綴具の関節面を小頭及び橈骨切痕に対して関連平面内で正確に位置合わせした、肘に装着した補綴装置の図である。
【
図3A】本発明の特定の一実施形態による補綴装置の正面図である。
【
図3E】本発明の代替的な実施形態による補綴装置の正面図である。
【
図4A】本発明による補綴装置と共に用いることができる複合遠位髄内(medullary)アンカー兼ネックの代替的且つ例示的な実施形態の分解正面図である。
【
図4B】本発明の特定の一実施形態で有用な複合遠位髄内アンカー兼ネックのさらに別の実施形態の分解正面図である。
【
図4C】本発明による補綴装置と共に用いることができる単体ステムのさらに別の例示的な実施形態の側面図である。
【
図5A】工具係合側から見た本発明による補綴装置と共に用いることができる止めねじの斜視図である。
【
図5B】工具係合側の反対側から見た本発明による補綴装置と共に用いることができる止めねじの特定の一実施形態の斜視図である。
【
図5C】工具係合側の反対側から見た本発明による補綴装置と共に用いることができる止めねじのさらに別の特定の実施形態の斜視図である。
【
図6A】本発明の特定の一実施形態による補綴装置のヘッド部の正面図である。
【
図6F】本発明の別の実施形態による補綴装置のヘッド部の正面図である。
【
図7】本発明の方法を実施する補綴システムの一実施形態の部分分解図である。
【
図8】本発明の方法を実施する補綴システムの別の実施形態の部分分解図である。
【
図9】本発明による補綴システムで有用なテールピースの別の実施形態の斜視図である。
【
図11】橈骨頭の除去後の
図10の上橈尺関節の部分図である。
【
図12】除去した橈骨頭の置換用の本発明の一実施形態の補綴装置の分解図である。
【
図13】
図12の補綴装置のステム及びネックを橈骨髄腔に挿入した、
図11の上橈尺関節の部分図である。
【
図14】補綴装置のヘッド、ネック、及びシャフトを本発明の特定の一実施形態に従って挿入した、上橈尺関節の部分図である。
【
図15A】補綴ヘッドを小頭に対して正確な解剖学的アライメントに位置合わせする治具の部分図を含み、このアライメントが本発明の特定の一実施形態に従って止めねじを用いて固定される、
図14の上橈尺関節を示す。
【
図15B】腕を回内させた、すなわち掌を下向きにした状態の、前腕の回転軸に対する
図15Aの治具の位置と、補綴具のヘッドを関節の正確な解剖学的アライメントに位置合わせする治具とを示す。
【
図16】補綴装置を本発明の特定の一実施形態のシステム及び装置に従って装着した、上橈尺関節の拡大図である。
【
図17A】補綴装置を本発明の別の特定の実施形態のシステム及び方法に従って装着した、上橈尺関節の拡大図である。
【
図17B】補綴装置を本発明の別の特定の実施形態のシステム及び方法に従って装着した、上橈尺関節の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、関節の一部を構成する骨部分を置換する装置、システム、及び方法であって、骨部分を置換する装置を正確な幾何学的形状及びアライメントで、すなわち天然の骨部分の本来の解剖学的な幾何学的形状及びアライメントに可能な限り近い状態で装着できるようにする装置、システム、及び方法に関する。本明細書での説明の簡単ために、本発明を肘関節の橈骨頭部分の置換に関連して説明する。しかしながら、本発明の装置、システム、及び方法を身体の他の関節との使用に適合させることができることを理解されたい。
【0013】
より詳細には、ここで
図1A及び
図1Bを参照すると、人間の腕の尺骨Uと橈骨Rとの間の相互作用の比喩的表現が示されている。肘又は近位関節Eにおいて、尺骨Uの橈骨切痕14と橈骨Rの橈骨頭24とが相互作用するとともに上腕骨(図示せず)の小頭と相互作用し、肘の運動を可能にする。手首又は遠位関節Wにおいて、橈骨Rの尺骨切痕22が尺骨Uの頭12との相互作用により関節運動する。前腕の回転軸A−A′は、橈骨の幾何学的形状からではなく橈骨頭24の小窩24a及び尺骨頭12の小窩12aを通る線から位置付けられ得る。橈骨の小窩24aに対して接線方向の仮想平面が、軸A−A′と直角24bをなす(すなわちA−A′に対して垂直である)ことも認められている。
【0014】
本発明によれば、補綴装置30は、関節の一部を構成する骨部分を置換するために提供される。特定の本実施形態では、装置30は、損傷した橈骨頭を置換する補綴装置である。
【0015】
次に
図2を参照すると、肘関節に装着した本発明による補綴装置及びシステムの特定の一実施形態が示されている。特に、橈骨Rの頭を補綴装置30で置換する場合、補綴ヘッド36の凹状関節面36eの中心を上腕骨Hの小頭Cと正確な解剖学的アライメントで固定することにより、最適な結果を得ることができる。先の観察のように、補綴ヘッドの正確な解剖学的アライメントは、凹面36eの底部(すなわち、最深部、又は解剖学的橈骨頭の小窩に対応する「皿」)に対して接線方向の仮想平面により規定され、この仮想平面は、前腕が肘におけるその可動域で回転する際の軸A−A′に対して垂直である。本発明は、手術中に外科医が補綴具のヘッドを正確な解剖学的向きで(すなわち、軸A−A′に対して垂直に)位置合わせしてから固定することを可能にする、補綴装置、システム、及び方法に関する。
【0016】
より詳細には、
図3Dでより明確に見ることができるように、補綴装置30は3つの主要コンポーネント:ステム31、ヘッド36′、及び止めねじ38′から形成されることが示されており、これを以下でさらに説明する。
【0017】
ステム31は、橈骨頭の除去後に橈骨髄腔に定着するようある程度設計される。
図3A〜
図3Dにおいて分かるように、ステム31は、遠位髄内アンカー部32と、
図2により明確に示されているように外科手術中に骨に加えた切断部と面一に着座するようサイズ決定され位置付けられるフランジ32cと、補綴装置30のヘッド36′の空洞又はチャンバ内に係合するよう設計された近位ネック部34とを含む。さらに、ネック部34は、狭窄腰部34bと、それよりも遠位にボール部又は球状突起34cとを含み、ボール部又は球状突起34cは、外科医により所望の正確に位置決めされた永久位置に意図的に拘束されるまで、ヘッド36′内の上記チャンバ又は空洞内での自由な回転(すなわち、旋回)を可能にする。特定の一例では、「所望の正確に位置決めされた永久位置」は、凹面36eの底部に対して接線方向の仮想平面がステム31の長さを通って延びる軸に対して所望の角度で固定される位置に対応する。この「所望の角度」に固定されると、仮想平面は、関節の回転軸に対して実際に垂直(すなわち、直角)になる。
【0018】
次に
図3E〜
図3Gを参照すると、特に異なる構成のステム31′に言及するものとして補綴装置30′の代替的な実施形態が示されている。この特定の実施形態では、ステム31′のネック部34′は、別個の部品として構成され、すなわちステム31′と一体ではなく、遠位髄内アンカー部32′と意図的に連結されると(すなわち、嵌合すると)一体化することが意図される。ここに記載される実施形態の
図3Bにおいてよりよく理解され得るように、遠位髄内アンカー部32′は、髄内アンカー部32′の本体内に開いた中央ボア32bをさらに含む。中央ボア32bは、ネック34′の対応構成のピン端34aを収容して永久係合するよう構成され、これについては以下でより詳細に説明する。髄内アンカー部32′は、種々の解剖学的髄腔直径に適合するようなサイズにされ、一方、ネック34′は、損傷した天然の橈骨頭の除去により残った種々の隙間に適合するよう長さが変わる。ネック部34′を別個の、但し髄内アンカー部32′に永久接合可能な付属物とする有利な目的は、種々の外科的状況に適合するよう達成可能な組み合わせの数を増やすことである。例えば、5個の異なる直径の髄内アンカー部32′及び5個の異なる長さのネック部34′を提供することで、10個の個別部品のみで25通りの異なる組み合わせを得ることが可能となる。
【0019】
補綴装置30′の特に好適な一実施形態では、遠位髄内アンカー部32′の中央ボア32bは、ネック34′のピン部34aに形成したテーパに対応するテーパ状設計(すなわち、モールステーパ)を有する。このテーパは、一旦嵌合すると、遠位髄内アンカー部32′の中央ボア32bに対するネック34′のピン部34aの永久装着を確実にする。本発明の本実施形態では、アンカー部32′及びネック34′は、ステム31′を橈骨髄腔に挿入する前に嵌合される。特定の一実施形態では、最大直径のアンカー部を収容するような寸法の中央ボアを有するブロックが提供される。このブロックは、例えばハンマーで打つことにより、ネック34′のテーパ部34aをアンカー部32′の中央ボア32bと係合させつつアンカー部32′を保持することができる。一旦これが行われたら、構成体が本質的に単体となり、
図3A〜
図3Dの単体ステム31と機能的に同一となることに留意すべきである。
【0020】
次に
図4A〜
図4Cを参照すると、いずれもチタン等の生体適合金属でできているステム31の種々の代替的な実施形態が示されている。
図4A及び
図4Bのステム31′,31″は、ネック34′及び遠位髄内アンカー32′,32″が別個の部品である実施形態の典型であり、各部品は、適切なサイズを外科医が決定及び選択した後に永久接合されることが意図される。これに対して、
図4Cはステム31の単体実施形態である。さらに、
図4Aの遠位髄内アンカー32sの特定の好適な一実施形態は、弾丸形であり、例えば、所望に応じてチタンプラズマスプレー、TCP、又は他のコーティングの塗布により粗面化される。
図4Bでは、遠位髄内アンカー32″はフルート32aを含み、これは、髄腔内へのアンカー32″の挿入を補助し、挿入されると髄腔内でのアンカー32″の回転に抵抗する。
図4Cは、遠位髄内アンカー32の遠位部にフルート32aが付けられた単体ステム31を示す。遠位髄内アンカー32は、所望であればその最近位部がフランジ32cの下側までチタンプラズマスプレーでさらに処理されてもよい。他のサイズ及び幾何学的形状のステムを作製して図示の場所で用いることができる。なお、さらに他のサイズ、本体形状、コーティング、及びフランジ形状を所望に応じて選択できるので、ステムのこれらの特定の例の提供に本発明を限定する意図はない。
【0021】
次に
図5A〜
図5Cを参照すると、止めねじ38の拡大図が示されており、止めねじ38の目的は、ヘッド36をネック34に所望の向き(すなわち「所望の角度」)で係止することである。
図5Aは、本実施形態ではヘクサロビュラである工具係合凹部34rを有する止めねじ38を示す。凹部38rは、アレン、フィリップス、及び/又は別の所望の構成とすることもできる。
図5Bは、平坦遠位端38f(すなわち、ネック部に当接する端)を有する止めねじ38を示す。これに対して、
図5Cは、尖状遠位端38pを有する止めねじ38′を示す。止めねじ38,38′及びヘッド36を、コバルトクロム等のチタンよりも硬質の正体適合金属製として、止めねじ38,38′でのコバルトクロムヘッド36へのチタンネックボール34cの確実な固定を確保することが好ましい。
【0022】
本発明の特定の一実施形態では、外科的処置中に用いる最終的な補綴装置30は、キットの一部として外科医に提供される各種コンポーネントから組み立てることができる。例えば、このようなキットは、複数の補綴ステム31及び/又は31′、及び/又は遠位髄内アンカー32及び/又は32′、すなわち別個のネック34及び/又は単体アンカー兼ネックを有するもの、及びヘッド36及び/又は36′を様々な寸法で含むことにより、補綴装置を置換中の橈骨頭に最も近似するよう適合させ得る最善の選択肢を外科医に提供することができる。特定の一実施形態では、5個の異なる直径及び/又は長さの遠位髄内アンカー32と、5個の異なる長さのネック34と、5個の異なる直径のヘッド36とを有するキットが、交換可能に用いられるよう提供されることにより、15個の個別部品の組から125通りの可能な組み合わせが提供される。別の実施形態では、多種多様な直径及びネック長さを有する単体ステム31が25個提供され、これらを様々な直径の5個のヘッド36と組み合わせて30個の個別部品の組から125通りの組み合わせを供給することも可能である。なお、本発明の範囲から逸脱せずに提供される選択肢を増減させることができるので、これに限定の意味はない。なお、本発明のシステムは、所望に応じて、本明細書に記載のようなキットとして、又は個別の装置及び/又はコンポーネントとして、すなわちキットの一部としてではなく、提供することができる。
【0023】
ステム31,31′(単体、又は別個のネック部を有する)の実施形態の全ての場合において、ネック34のボール34cは、補綴ヘッド36(又は
図3A〜
図3C及び
図6F〜
図6Gのヘッド36′)の空洞に係合し、ヘッド36がヘッド36及び上腕骨小頭の正確な解剖学的アライメントの適切な角度αに円錐状に旋回(すなわち回転)することを可能にする。全関連平面内で正確な解剖学的アライメントに向けられると、ネックに対するヘッドの円錐角「α」(「α」は前腕回転軸A−A′に対して垂直な橈骨頭の皿36eの底部に対して接線方向の仮想平面を作る固有の円錐角である。
図20を参照)は、止めねじ38がボール34cに押し当たりボール34c及びヘッド36を所望の向き(すなわち、所望の角度)に係止するまで、止めねじ38を挿入して締め付けることより固定される。
図3A〜
図3G及び
図20からより詳細に分かり得るように、補綴具30のネック34をさらに用いて、ステムのフランジ32cの上面とヘッド36のラグ36cの下面との間の距離が維持される。ネック34の腰部34bは、ボール34c上でのヘッド36の旋回をさらに促進させる。ネック34に対するヘッド36の許容可能な可動域は、腰部32cの寸法を空洞36aの肩の寸法と組み合わせることにより決定される。
【0024】
図6A〜
図6Gに示すように、補綴ヘッド36,36′は、上腕骨小頭に係合する凹状の近位関節面又は皿36eを有する。上述のように、特定の一実施形態では、ヘッド36及び止めねじ38は、コバルトクロム等のチタンよりも硬質の生体適合金属製であるよう選択される。ヘッド36の下側は空洞36aを含み、これはヘッド36の側壁に開いた開口36hから通じている。チャネル36fが、空洞36aの底部に沿って側壁に開いた開口からヘッド36の中心を過ぎた場所まで延びる。チャネル36fは、ボール34cがヘッド36の側壁の開口36hを通過すると、ネック34の腰部34bに係合してボール34cを空洞36a内に閉じ込める。ヘッド36の側壁の開口36hは、手術中にヘッド36を横からボール34cに取り付けることを可能にすることに留意すべきである。
【0025】
さらに、空洞36aの一部はねじ山36bを含み、これは、止めねじ38を側壁開口36aに挿通させてキャビティ36a内に前進させる際に止めねじ38に係合するためのものである。ねじ山36bは、Spiralock(登録商標)又は同様のもの等のバックアウト防止セルフロッキングタイプであることが好ましい。止めねじ38(
図5A〜
図5Cを参照)は、平坦遠位部38a及びねじ山38bを有する。代替的に、尖状遠位部38pを有する
図5Cの止めねじ38′を用いてもよい。本明細書で説明及び図示するように、雄ねじ38bは、雌ねじ36bに螺合して空洞36aへの止めねじの出入りを案内する。止めねじ38,38′の前進は、止めねじ38,38′の工具係合部38rと係合するアレン又はヘクサロビュラレンチ又は他のタイプのねじ回し等の工具を用いて行われる。
図6Eにより詳細に示すように、空洞36aはスプライン36gを含むことができ、スプライン36gは、止めねじ38がボール34cに対して締め付けられるとボール34cに食い込み、ヘッド36の所望の位置決めが達成されてボール34cが止めねじ38,38′によりキャビティ36aの後面に対して固定された後に、ボール34c上でのヘッドのそれ以上の旋回(すなわち、回転)を防止する。
【0026】
さらに、
図6A〜
図6Eを再度参照すると、本発明の特定の一実施形態によれば、ヘッド36の下側にラグ36cが設けられ、これはヘッド36の底面から離れる方向に、すなわち遠位に突出する。なお、チャネル36fは、ラグ36cの一部をさらに貫通する。本実施形態では、ラグ36cには窪み36dがさらに設けられ、窪み36dは、ラグ36cを1つの特定の向きで工具により把持し回転させることを可能にするものであり、これについては以下でより詳細に説明する。
【0027】
補綴ヘッド36′のさらに別の実施形態を
図6F〜
図6Gに示す。補綴ヘッド36′は、補綴ヘッド36と同様であり、同じ符号は同様の要素を指す。しかしながら、補綴ヘッド36′のラグ36c′は、
図6Dの補綴ヘッド36の窪み36dの代わりに「ダブテール」又は「V字」形の溝36vを含む。なお、他の形態の嵌合ラグ部を補綴ヘッドに設けてもよく、これもやはり本発明の趣旨に沿っている。
【0028】
次に
図7を参照すると、補綴ヘッド36、止めねじ38、ネック34、及び遠位髄内アンカー部32から構成される補綴装置30と、ヘッド36を前腕回転軸A−A′に対して正確な解剖学的アライメントに位置合わせする治具40とを含むシステムが示されている。
【0029】
治具40は、鉗子50、スペーシングバー60、テールピース70、及びノブ75を含み、ノブ75は、テールピース70のねじ孔76を通ってボア74まで延びる止めねじ部75aを有する。Kワイヤ80又は他のタイプのアライメントピン又はポインタが、テールピース70の延長部72の下部にブレース78を通して設けられる。スペーシングバー60は、テールピース70を鉗子50から離間させるために用いられ、前腕の長さを超えて延びるようなサイズである。
図7に示すように、スペーシングバー60は、鉗子50と係合するブラケットに近位端が固定され、テールピース70の一部に開いているボアに遠位端が固定される。したがって、治具40の長さは、ノブ75を緩めてテールピース70をスペーシングバー60の長さに沿って前後に移動させることにより調整することができる。治具40は、ノブ75を締めてノブ75の止めねじ部75aをテールピース70のボア74内のスペーシングバー60に押し付けることにより、所望の長さで係止することができる。
【0030】
鉗子50は、第1端に鋏ハンドル52及び反対側の第2端に挟持部56を含む。挟持部56は、補綴ヘッド36の一部に確実に係合するよう設計される。特定の本実施形態では、挟持部56は、ヘッド36のラグ36cに係合してこれを把持するよう設計される。本実施形態では、挟持部56は、外科医にヘッド36に対する鉗子50の正確な既知のアライメントを提供するために、窪み36dと嵌合する突起56a(例えば、
図6Eを参照)をさらに含む。
【0031】
なお、突起56aを代替品に替えてもよく、又は他の形態のキーイング構造を設けてもよい。例えば、
図8に示すように、治具40の鋏鉗子50は、遠位端に2つの平行プロング56′を有するブレード延長部53′を有するハンドル50′で置き換えられ、プロング56′は、
図6F〜
図6Gのヘッド部36′の相補的形状のダブテール側壁36vと係合するよう構成される。図示のように、
図8のハンドル50′は、さらに別のノブ75′と、ハンドル50′のねじ孔76′(不可視)と嵌合するねじ部75a′とを含むことで、ハンドル50′の位置をハンドル50′のボア54′を通るスペーシングバー60に沿った相対位置で係止するようにする。
【0032】
次にテールピース70を参照すると、前腕回転軸A−A′上の第1点、特に軸の遠位A′側近傍の点の位置付けを容易にするのが、このテールピースの機能である。前述のように、このような点が尺骨の手首関節における小窩12aにあることが既知である。1つのこのような点を位置付けるために、さらに後述するようにKワイヤを尺骨小窩12aに挿入することができ、続いて、テールピース延長部72のブレース78をKワイヤに被せて挿入し、尺骨小窩12aへのKワイヤの進入点に当接するまで近位に摺動させる。これにより、当接点が回転軸A−A′上の1点であることが確実になる。治具40の構成は、テールピース延長部72の寸法がスペーシングバー60の中心線と鋏鉗子50の挟持部56の中心との間の距離と同一であるようなものであることが認められるはずである。換言すれば、スペーシングバー60の軸B−B′は、軸A−A′と常に等距離(すなわち平行)である。
【0033】
鉗子50及び代替的なハンドル50′の構成は、補綴ヘッド36,36′に係合すると、係合した補綴ヘッド36,36′の軸が挟持部56又は平行プロング56′の中心を通る軸A−A′と同一直線上になるようになっている。これにより、ヘッド36の皿36eの最深部に対して接線方向の仮想平面と回転軸A−A′との間の垂直性が所望に応じて確保される。
【0034】
なお、他の形態のテールピースを
図7及び
図8のテールピース70の代わりに用いてもよい。例えば、
図9は、
図7及び
図8の治具40,40′におけるテールピース70の代わりに用いることができるテールピース70′のさらに別の実施形態を示す。テールピース70′は、スペーシングバー60(
図7及び
図8)を収容するボア74と、軸A−A′と軸B−B′との間の平行度を維持するような寸法の延長片72′とを含む点で、テールピース70と同様である。しかしながら、
図7及び
図8のKワイヤ80を受け入れるブレース78の代わりに、
図9のテールピース70′は、患者の遠位前腕上で尺骨茎状突起を覆う患者の皮膚に載るよう設計された曲率を有するブレース79を含む。テールピース70′は、テールピースを患者の手首に強固に装着しておくストラップ(図示せず)に係合するラグ81を含み得る。したがって、
図9のテールピース70′は、回転軸A−A′上の第1点を位置付けるために尺骨の小窩12aにKワイヤを刺入するのに代わって用いられる。
【0035】
次に
図10〜
図16を参照すると、治具を用いて補綴装置の配置を補助する特定の一方法が記載されている。例示のために、本発明の方法は、肘関節の橈骨頭の除去及び置換に関連して説明される。しかしながら、同じ原理を身体の他の関節における他の骨部分の置換に適用できることを理解されたい。
【0036】
除去及び置換すべき損傷した橈骨頭110を含む肘関節100を
図10に示す。患者の前腕を回内させて、外科医は関節100へのアクセスを得るよう側方切開を行い、損傷した橈骨頭及び/又は橈骨頭断片を除去する。
図11は、橈骨頭の除去後の
図10の上橈尺関節を示す。橈骨頭断片を、ヘッドサイジングトレー(図示せず)を用いて又は用いずに組み立てて測定する。測定したサイズを記録し、提供された中で最も近いサイズの補綴ヘッド36,36′の選択に用いる。
【0037】
橈骨頭を除去してから露出したままの橈骨の近位端の部分を切除し、髄腔を露出させる。鉗子を用いて橈骨を側方に逸らせて髄腔へのアクセスを得る。ラスプ(図示せず)を用いて髄腔を拡大し、ラスプのサイズを記録する。これは、天然の橈骨頭に置き換わる橈骨頭補綴具30のステム31の直径に一致するからである。適切なサイズのプレーナ(図示せず)を用いて、前のステップにおける切除により露出した近位橈骨の面を平滑化する。
図11は、橈骨を切除、ラスピング、及びプレーニングしてからの肘関節を示す。
【0038】
図11を再度参照すると、切除済みの橈骨の近位端と小頭との間に残っている隙間を、ネックサイジングゲージ(図示せず)を用いて測定する。このサイズは橈骨頭補綴具に必要となるネックの長さを決定するので、記録しておく。
【0039】
外科医はこのとき、患者に植え込むべき橈骨頭補綴具30の適当な部品を選択するために必要な測定値:ヘッド36の直径;ステムの直径;及びネックの長さを有する。
【0040】
単体ステム31(
図4Cを参照)を用いる場合、これは、提供されたものの中で遠位髄内アンカー32の直径及びネック34の長さに関して記録した測定値に最も近いものから選択される。代替的に、多部品ステム(
図4A及び
図4Bを参照)を用いる場合、対応する測定値に一致する個別の遠位髄内アンカー部32及びネック34を選択する必要がある。続いて、多部品アンカー及びネックを「単体」ステムとして嵌合するか又は組み立てた後に、髄腔に挿入する。
図12は、ヘッド36、ネック34、遠位髄内アンカー部32′、及び止めねじ38から組み立てられる橈骨頭補綴具130を示す。全ての止めねじ38,38′を、選択されたヘッド36に予め整合させてセットとして提供することができることに留意されたい。
【0041】
続いて、組み立てたステム31を橈骨髄腔に挿入し、圧入用のインパクタ(図示せず)で所定位置に打ち込む。なお、
図13に示すように、髄内アンカー部を髄腔に挿入して橈骨のプレーニングした面に圧入した後、フランジ32c′と、最近位部がボール34cであるネック34とは、露出したままである。ステム32の挿入後、ヘッド36をネック34に横から装填する。ボール34c及び腰部34bは、ボール34aが空洞36aの末端にきてそれ以上進むことができなくなるまでチャネル36f及び空洞36a内を摺動する。この構成では、ボール34cは、チャネルの狭窄した肩により空洞内に水平方向に閉じ込められるが、ネックに対するヘッドの旋回は依然として可能にする。
図14に示すように、挿入後、ヘッド36を続いて180度回転させてヘッドの側壁の開口36hが肘の外側に面するようにする。これにより、止めねじ38の遠位面と表面又は空洞36aの一部との間にボール34cを固定するために、開口36hにアクセスして、止めねじ38をねじ山36bに沿って挿入した後に前進させることが可能となる。
【0042】
図7の治具40を用いる場合、回内させて手首を曲げた前腕の遠位端において、Kワイヤ80を概ね橈骨頭の方向で尺骨の小窩に経皮的に刺入する。
図7で見ることができるように、テールピース70のブレース78を続いてKワイヤ80に被せて挿入し、尺骨小窩を覆う手首の皮膚と当接させる。所望の位置になれば、Kワイヤの自由端をブレース78に対して曲げて、テールピースがKワイヤから滑り落ちるのを防止することができる。これにより、治具40の一端を軸A−A′の一点に定着させる。ハンドル又は鉗子50の挟持部56をここで用いて、ヘッド36を関節の回転軸に対して垂直な位置で保持する。より詳細には、ヘッド36をネック34と小頭との間に係合させた後、治具40の近位端にある鉗子50を用いて、ヘッド36の下側のラグ36cを把持する。例えば、
図7、
図15A、及び
図15Bを参照されたい。治具40を通る軸B−B′は、この構成では前腕の回転軸A−A′と平行に保持されるので、治具40の挟持端56は、実際には皿36aの底面を軸A−A′(及び軸B−B′)に対して垂直な平面内で保持している。ヘッド36は、ボール34c上で旋回してこの構成を達成する。したがって、治具40は、ヘッド36をネック及び補綴具の残りの部分に対して関連平面内で正確な解剖学的円錐角「α」で保持している。この正確なアライメントは、
図16で観察することができる。
【0043】
治具40が設定され、治具40の挟持部56が、ヘッド36を補綴具130のネック34及び上腕骨小頭に対して正確な解剖学的アライメントに望ましい角度で保持すると、止めねじ38がボール34cに接触して相応の力を加えるまで、止めねじを挿入してねじ山36b上で螺進させる。硬度の高い止めねじ38及びスプライン36gを高度の低いボール34cに対して係合させることで、ヘッド36及びボール34cが併せて所望の正確な解剖学的アライメントで係止され、ヘッドがボール34c上で所望の角度で固定される。例えば、
図16を再度参照されたい。
【0044】
結果として、補綴ヘッド36の皿36eは、小頭との接触に望まれる正確な解剖学的アライメントで所定位置に係止される。すなわち、ヘッド36は、皿36eの底部に対して接線方向の平面が前腕の回転軸A−A′に対して垂直であるような精密な角度αでステムに固定されることで、ぶれを排除している。
【0045】
図7の治具40(すなわち、鉗子50及びテールピース70を有する)に関連して説明したが、上述のように、位置合わせを行う治具をハンドル50′及び/又はテールピース70′を用いて形成してもよいことに留意することが重要である。同様に、補綴具130は、ヘッド36、ステム32′、ネック34、及び止めねじ38を含むものとして説明したが、別のヘッド、ステム、ネック、及び/又は止めねじ(ヘッド36′、ステム32、ステム32″、ステム32″′、ネック34′、及び/又は止めねじ38′を含むがこれに限定されない)を、本発明による補綴具を形成する同様のコンポーネントの代わりに用いてもよいことが分かり得る。例えば、
図17A及び
図17Bは、
図10〜
図16に関連して上記で行った説明に従った方法により、但し
図7の鉗子50の代わりに少なくとも
図8のハンドル50′を用いて挿入される、補綴具のヘッド36′の使用を示す。
【0046】
本発明は、本明細書において種々の実施形態で図示及び説明されているが、本発明の趣旨から逸脱せずに特許請求項の均等物の範囲内で種々の変更及び構造変化を加えることができるので、本発明を提示した詳細に限定することは意図されない。