【実施例】
【0119】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、記載中の「%」は特に断らない限り、質量基準である。
(イソプロピルアルコール生産株の作製)
本実施例で使用した大腸菌株とプラスミドの一覧表を表1及び表2に示した。
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
[実施例1]
<B::atoDAB株の作製>
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリMG1655株のCoAトランスフェラーゼ αサブユニットをコードする遺伝子(以下、atoDと略することがある)の塩基配列も報告されている。すなわちatoDはGenBank accession number U00096に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の2321469〜2322131に記載されている。
【0122】
上記の遺伝子を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgctcaattgcaatgattgacacgattccg(配列番号1)、及びacagaattcgctatttgttagtgaataaaagg(配列番号2)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素MfeI及びEcoRIで消化することで約100bpのGAPDHプロモーターをコードするDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpUC19(GenBank accession number X02514)を制限酵素EcoRIで消化し、さらにアルカリフォスファターゼ処理したものとを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニー10個をそれぞれアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、プラスミドを回収し、制限酵素EcoRI及びKpnIで消化した際、GAPDHプロモーターが切り出されないものを選抜し、さらに、DNA配列を確認しGAPDHプロモーターが正しく挿入されたものをpUCgapPとした。得られたpUCgapPを制限酵素EcoRI及びKpnIで消化した。
【0123】
さらにatoDを取得するために、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgaattcgctggtggaacatatgaaaacaaaattgatgacattacaagac(配列番号3)、及びgcggtaccttatttgctctcctgtgaaacg(配列番号4)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRI及びKpnIで消化することで約690bpのatoDフラグメントを得た。このDNAフラグメントを先に制限酵素EcoRI及びKpnIで消化したpUCgapPと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた菌体からプラスミドを回収し、atoDが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAPatoDと命名した。
なおエシェリヒア・コリMG1655株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0124】
上述した通り、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAにおけるatoDの塩基配列も報告されている。エシェリヒア・コリMG1655株のatoDの5’近傍領域の遺伝子情報に基づいて作成された、gctctagatgctgaaatccactagtcttgtc(配列番号5)とtactgcagcgttccagcaccttatcaacc(配列番号6)を用いて、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより約1.1kbpのDNA断片を増幅した。
【0125】
また、エシェリヒア・コリMG1655株のGAPDHプロモーターの配列情報に基づいて作製されたggtctagagcaatgattgacacgattccg(配列番号7)とエシェリヒア・コリMG1655株のatoDの配列情報に基づいて作製された配列番号4のプライマーを用いて、先に作製した発現ベクターpGAPatoDを鋳型としてPCRを行い、GAPDHプロモーターとatoDからなる約790bpのDNAフラグメントを得た。
【0126】
上記により得られたフラグメントをそれぞれ、制限酵素PstIとXbaI、XbaIとKpnIで消化し、このフラグメントを温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)〔Hashimoto-Gotoh, T., Gene, 241, 185-191 (2000)〕をPstIとKpnIで消化して得られるフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、DH5α株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。このプラスミドをエシェリヒア・コリB株(ATCC11303)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。得られた培養菌体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で培養しコロニーを得た。得られたコロニーを抗生物質を含まないLB液体培地で30℃で2時間培養し、抗生物質を含まないLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0127】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれを、抗生物質を含まないLB寒天プレートとクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。さらにはこれらのクローンの染色体DNAからPCRによりGAPDHプロモーターとatoDを含む約790bp断片を増幅させ、atoDプロモーター領域がGAPDHプロモーターに置換されている株を選抜し、以上を満足するクローンをエシェリヒア・コリ、B::atoDABと命名した。
なお、エシェリシア・コリB株(ATCC11303)は細胞・微生物・遺伝子バンクであるアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0128】
[実施例2]
<プラスミドpIazの作製>
クロストリジウム属細菌のアセト酢酸デカルボキシラーゼはGenBank accession number M55392に、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼはGenBank accession number AF157307に記載されている。
上記の遺伝子群を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。
【0129】
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgagctacatatgcaatgattgacacgattccg(配列番号18)、及びcgcgcgcatgctatttgttagtgaataaaagg(配列番号19)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素NdeI、SphIで消化することで約110bpのGAPDHプロモーターにあたるDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBR322(GenBank accession number J01749)を制限酵素NdeI及びSphIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpBRgapPを回収した。
【0130】
イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を取得するために、Clostridium beijerinckii NRRL B−593のゲノムDNAをテンプレートに用いて、aatatgcatgctggtggaacatatgaaaggttttgcaatgctagg(配列番号8)、及びgcggatccttataatataactactgctttaattaagtc(配列番号9)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SphI、BamHIで消化することで約1.1kbpのイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBRgapPを制限酵素SphI及びBamHIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収しIPAdhが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAP-IPAdhと命名した。
【0131】
アセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子を取得するために、Clostridium acetobutylicum ATCC824のゲノムDNAをテンプレートに用いて、caggatccgctggtggaacatatgttaaaggatgaagtaattaaacaaattagc(配列番号10)、及びggaattcggtaccttacttaagataatcatatataacttcagc(配列番号11)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素BamHI、EcoRIで消化することで約700bpのアセト酢酸デカルボキシラーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-IPAdhを制限酵素BamHI及びEcoRIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、adcが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpIaと命名した。
【0132】
グルコース6リン酸−1−デヒドロゲナーゼ遺伝子(zwf)を取得するためにエシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No. CP000819)をテンプレートに用い
てPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵
素で消化することで約1500bpのグルコース6リン酸1−デヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpIaを制限酵素
で消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地にて37℃で一晩培養し、得られたプラスミドをpIazとした。
【0133】
このプラスミドpIazを実施例1で作製したエシェリヒア・コリB::atoDABコンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDABを得た。
【0134】
[実施例3]
<エシェリヒア・コリB株Δpgi株の作製>
エシェリヒア・コリMG1655のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのホスホグルコースイソメラーゼ(以下pgiと呼ぶことがある)をコードする遺伝子の塩基配列も報告されている(GenBank accession number X15196)。pgiをコードする遺伝子(1,650bp)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、caggaattcgctatatctggctctgcacg(配列番号14)、cagtctagagcaatactcttctgattttgag(配列番号15)、cagtctagatcatcgtcgatatgtaggcc(配列番号16)及びgacctgcagatcatccgtcagctgtacgc(配列番号17)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号14のプライマーは5’末端側にEcoRI認識部位を、配列番号15および16のプライマーは5’末端側にXbaI認識部位を、配列番号17のプライマーは5’末端側にPstI認識部位をそれぞれ有している。
【0135】
エシェリヒア・コリMG1655株(ATCC700926)のゲノムDNAを調製し、得られたゲノムDNAを鋳型とし、配列番号14と配列番号15のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下pgi−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号16と配列番号17のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下pgi−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、pgi−L断片をEcoRI及びXbaIで、pgi−R断片をXbaI及びPstIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のEcoRI及びPstI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、pgiをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の2つの断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認した。得られたプラスミドをXbaIで消化した後、T4DNAポリメラーゼにより平滑末端化処理を行った。本DNA断片と、pUC4Kプラスミド(GenBank accession number X06404)(Pharmacia)をEcoRIで消化することで得られるカナマイシン耐性遺伝子をさらにT4DNAポリメラーゼにより平滑末端化処理を行ったDNA断片とをT4DNAリガーゼを用いて連結した。その後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセルに形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、pgiをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の間にカナマイシン耐性遺伝子が正しく挿入されていることを確認し、pTH18cs1−pgiとした。
【0136】
こうして得られたプラスミドpTH18cs1−pgiをエシェリヒア・コリB株(ATCC11303)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0137】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、カナマイシンを含むLB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、pgi遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されていることで約3.3kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB株pgi遺伝子欠失株(以下B△pgi株と略することがある)と命名した。
【0138】
なおエシェリヒア・コリMG1655株およびエシェリヒア・コリB株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0139】
[実施例4]
<pIaaa/BΔpgi株の作製>
エシェリヒア・コリのチオラーゼおよびエシェリヒア・コリのCoAトランスフェラーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列は既に報告されている。すなわち、チオラーゼをコードする遺伝子はGenBank accession number U00096に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の2324131〜2325315に記載されている。またCoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子は上記エシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の2321469〜2322781に記載されている。これらと共に、後述するクロストリジウム属細菌由来のアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させることでイソプロピルアルコールの生産が可能である。
【0140】
イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を取得するために、Clostridium beijerinckii NRRL B−593のゲノムDNAをテンプレートに用いて、aatatgcatgctggtggaacatatgaaaggttttgcaatgctagg(配列番号20)、及びgcggatccggtaccttataatataactactgctttaattaagtc(配列番号21)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SphI、BamHIで消化することで約1.1kbpのイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと実施例2で作製したプラスミドpBRgapPを制限酵素SphI及びBamHIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP-IPAdhを回収した。
【0141】
エシェリヒア・コリ由来のチオラーゼ遺伝子を取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用い
てPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵
素で消化することで約1.2kbpのチオラーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-IPAdhを制限酵
素で消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP-IPAdh-atoBを回収した。
【0142】
エシェリヒア・コリ由来のCoAトランスフェラーゼ遺伝子を取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用い
てPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵
素で消化することで約600bpのCoAトランスフェラーゼαサブユニットフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-IPAdh-atoBを制限酵
素で消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP-IPAdh-atoB−atoDを回収した。
【0143】
さらにエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用い
てPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵
素で消化することで約600bpのCoAトランスフェラーゼβサブユニットフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-IPAdh-atoB−atoDを制限酵
素で消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−IPAdh−atoB−atoD−atoAを回収した。
【0144】
アセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子を取得するために、Clostridium acetobutylicum ATCC824のゲノムDNAをテンプレートに用い
てPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵
素で消化することで約700bpのアセト酢酸デカルボキシラーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-IPAdh-atoB−atoD−atoAを制限酵
素で消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpGAP−IPAdh-Adc−atoB−atoD−atoAを回収し、pIaaaとした。
【0145】
このプラスミドpIaaaを実施例3で作製したエシェリヒア・コリBΔpgiコンピテントセルに形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaaa/B△pgi株を得た。
【0146】
[実施例5]
<B::atoDABΔpgi株の作製>
実施例1で作製したB::atoDABに実施例3で作製したpTH18cs1−pgiを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0147】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、カナマイシンを含むLB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、pgi遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されていることで約3.3kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB株atoDゲノム強化、pgi遺伝子欠失株(以下B::atoDAB△pgi株と略することがある)と命名した。
【0148】
なおエシェリヒア・コリMG1655株およびエシェリヒア・コリB株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0149】
[実施例6]
<B::atoDAB△gntR株の作製>
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession No.CP000819)、GntRをコードする塩基配列はGenBank accession No.CP000819に記載のエシェリヒア・コリB株ゲノム配列の3509184〜3510179に記載されている。GntRをコードする塩基配列(gntR)の近傍領域をクローニングするため、ggaattcgggtcaattttcaccctctatc(配列番号30)、gtgggccgtcctgaaggtacaaaagagatagattctc(配列番号31)、ctcttttgtaccttcaggacggcccacaaatttgaag(配列番号32)、ggaattcccagccccgcaaggccgatggc(配列番号33)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号30および33のプライマーは5’末端側にEcoRI認識部位をそれぞれ有している。
【0150】
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)を調製し、得られたゲノムDNAを鋳型とし、配列番号30と配列番号31のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号32と配列番号33のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、gntR−LとgntR−R断片を鋳型に配列番号30と配列番号33のプライマーペアで、PCRを行うことにより約2.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−LR断片と呼ぶことがある)。このgntR−LR断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、EcoRIで消化し、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のEcoRI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、gntLR断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpTH18cs1−gntRとした。
【0151】
こうして得られたプラスミドpTH18cs1−gntRを実施例1で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0152】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gntR遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB株atoDゲノム強化、gntR遺伝子欠失株(以下B::atoDAB△gntR株と略することがある)と命名した。
【0153】
[実施例7]
<pGAP−Ia/B::atoDAB△gntR株の作成>
実施例6で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△gntR株を得た。
【0154】
[実施例8]
<pIaz/B::atoDAB△gntR株の作成>
実施例6で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△gntR株を得た。
【0155】
[実施例9]
<B::atoDAB△pgi△gntR株の作製>
実施例5で作製したエシェリヒア・コリB::atoDAB△pgi株に実施例6で作製したプラスミドpTH18cs1−gntRを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0156】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gntR遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB株atoDゲノム強化、pgi遺伝子欠失、gntR遺伝子欠失株(以下B::atoDAB△pgi△gntR株と略することがある)と命名した。
【0157】
なおエシェリヒア・コリMG1655株およびエシェリヒア・コリB株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0158】
[実施例10]
<pIa/B::atoDAB△pgi△gntR株の作成>
実施例9で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△pgi△gntRを得た。
【0159】
[実施例11]
<pIaz/B::atoDAB△pgi△gntR株の作成>
実施例9で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△pgi△gntR株を得た。
【0160】
[実施例12]
<B::atoDAB△gnd株の作製>
ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(gnd)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、cgccatatgaatggcgcggcggggccggtgg(配列番号34)、tggagctctgtttactcctgtcaggggg(配列番号35)、tggagctctctgatttaatcaacaataaaattg(配列番号36)、cgggatccaccaccataaccaaacgacgg(配列番号37)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号34のプライマーは5’末端側にNdeI認識部位を有し、配列番号35および配列番号36のプライマーは5’末端側にSacI認識部位を有している。また、配列番号37のプライマーは5’末端側にBamHI認識部位を有している。
【0161】
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)を調製し、配列番号34と配列番号35のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gnd−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号36と配列番号37のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gnd−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、gnd−L断片をNdeI及びSacIで、gnd−R断片をSacI及びBamHIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のNdeI及びBamHI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、gndをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の2つの断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認し、pTH18cs1−gndとした。
【0162】
こうして得られたプラスミドpTH18cs1−gndを実施例1で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0163】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gnd遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△gnd株と命名した。
【0164】
なおエシェリヒア・コリB株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
【0165】
[実施例13]
<pIa/B::atoDAB△gnd株の作製>
実施例12で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDABΔgnd株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△gnd株を得た。
【0166】
[実施例14]
<pIaz/B::atoDAB△gnd株の作製>
実施例12で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gnd株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△gndを得た。
【0167】
[実施例15]
<B::atoDAB△pgi△gnd株の作製>
実施例5で作製したエシェリヒア・コリB株、B::atoDAB△pgi株に実施例12で作製したプラスミドpTH18cs1−gndを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0168】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gnd遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△pgi△gnd株と命名した。
【0169】
[実施例16]
<pIa/B::atoDAB△pgi△gnd株の作製>
実施例15で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△pgi△gndを得た。
【0170】
[実施例17]
<pIaz/B::atoDAB△pgi,△gnd株の作製>
実施例15で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△pgi△gnd株を得た。
【0171】
[実施例18]
<B::atoDAB△gnd△gntR株の作製>
実施例12で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gnd株コンピテントセルに実施例6で作製したプラスミドpTH18cs1−gntRを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0172】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gntR遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△gnd△gntR株と命名した。
【0173】
[実施例19]
<pIa/B::atoDAB△gnd△gntR株の作製>
実施例18で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gnd△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△gnd△gntR株を得た。
【0174】
[実施例20]
<pIaz/B::atoDAB△gnd△gntR株の作成>
実施例18で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gnd△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△gnd△gntR株を得た。
【0175】
[実施例21]
<B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
実施例15で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd株コンピテントセルに実施例6で作製したプラスミドpTH18cs1−gntRを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
【0176】
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gntR遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△pgi△gnd△gntR株と命名した。
【0177】
[実施例22]
<pIa/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
実施例21で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を得た。
【0178】
[実施例23]
<pIaz/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
実施例21で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を得た。
【0179】
[実施例24]
<pIa/B::atoDAB株の作製>
実施例1で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB株コンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIaを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIa/B::atoDAB株を得た。
【0180】
[実施例25]
<pIaz/B::atoDAB△pgi株の作製>
実施例5で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB株△pgiコンピテントセルに実施例2で作製したプラスミドpIazを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpIaz/B::atoDAB△pgi株を得た。
【0181】
[試験例1]
(イソプロピルアルコールの生産)
本実施例では、WO2009/008377号パンフレット
図1に示される生産装置を用いてイソプロピルアルコールの生産を行った。培養槽は3リットル容のガラス製のものを使用し、トラップ槽は10L容のポリプロピレン製のものを使用した。トラップ槽には、トラップ液としての水(トラップ水)を1槽あたり9Lの量で注入し、2台連結して使用した。なお、培養槽には廃液管を設置して、糖や中和剤の流加により増量した培養液を適宜培養槽外に排出した。
イソプロピルアルコール生産評価に用いた株の一覧を表3として示した。
【0182】
【表3】
【0183】
前培養としてアンピシリン50μg/mLを含むLB Broth, Miller培養液(Difco244620)50mLを入れた500mL容三角フラスコに各評価株を植菌し、一晩、培養温度30℃、120rpmで攪拌培養を行った。前培養45mLを、以下に示す組成の培地855gの入った3L容の培養槽(ABLE社製培養装置BMS−PI)に移し、培養を行った。培養は大気圧下、通気量0.9L/min、撹拌速度550rpm、培養温度30℃、pH7.0(NH
3水溶液で調整)で行った。培養開始から8時間後までの間、50wt/wt%のグルコース水溶液を10g/L/時間の流速で添加した。その後は50wt/wt%のグルコース水溶液を20g/L/時間の流速で、培養槽内にグルコースがなるべく残存しないように適宜添加した。培養開始から72時間までに数回、菌体培養液をサンプリングし、遠心操作によって菌体を除いた後、得られた培養上清中及びトラップ水中のイソプロピルアルコールおよびアセトンの蓄積量をHPLCで定法に従って測定した。なお、測定値は、培養後の培養液とトラップ槽2台中の合算値である。結果を表4に示した。
<培地組成>
コーンスティープリカー(日本食品化工製):20g/L
Fe
2SO
4・7H
2O:0.1g/L
K
2HPO
4:2g/L
KH
2PO
4:2g/L
MgSO
4・7H
2O:2g/L
(NH
4)
2SO
4:2g/L
アデカノールLG126(株式会社ADEKA)0.1g/L
(残部:水)
【0184】
【表4】
【0185】
評価の結果、陰性対照(pla/B::atoDAB)のイソプロピルアルコール生産量は48.7g/L/72hであり、gntRを破壊した株(pla/B::atoDABΔgntR)の生産量は57.3g/L/72hであった。これにより、gntRを破壊すると陰性対照と比較して生産性が約1.2倍に向上することが分かった。
また、gntRとpgiを破壊し且つzwfの発現を強化した株(pIaz/B::atoDABΔpgiΔgntR)の生産量は70.2g/L/72hであり陰性対照と比較して生産性が約1.4倍となった。このことから、gntRのみを破壊したときよりもgntRとpgiを両方破壊し且つzwfの発現を強化した方が生産性が更に向上することが分かった。
【0186】
一方、pgiのみを破壊した場合(pIaaa/BΔpgi)ではイソプロピルアルコールは全く生産されず、zwfを強化しただけの場合(pIaz/B::atoDAB)は生産量が39.4g/L/72hであって、生産性は増加せずにむしろ低下した。
gntRを破壊し且つzwfを強発現した場合(pIaz/B::atoDABΔgntR)、pgiを破壊し且つzwfを強発現した場合(pIaz/B::atoDABΔpgi)及びpgiとgntRを両方破壊した場合(pIa/B::atoDABΔpgiΔgntR)でも生産量が各々33.3g/L/72h、41.1g/L/72h、9.6g/L/72hとなり、イソプロピルアルコールの生産性は増加せずにむしろ低下した。
【0187】
従って、gntRの破壊に加えて他の因子の破壊又は強発現を行う場合、pIaz/B::atoDABΔpgiΔgntR株においてみられる生産性向上の効果は、gntRとpgiを両方破壊し且つzwfを強発現させたときに得られるといえる。
また、生産性の向上が見られたpIaz/B::atoDABΔpgiΔgntR株に更にgnd破壊を施した場合、即ちpgiとgntRとgndを破壊し且つzwfを強発現させた場合(pIaz/B::atoDABΔpgiΔgndΔgntR)のイソプロピルアルコール生産量は75.6g/L/72hとなり、pIaz/B::atoDABΔpgiΔgntR株を上回る高い生産性を示した。
【0188】
一方で、gndのみを破壊した場合ではイソプロピルアルコール生産量は陰性対照より低い45.5g/L/72hであり、gnd破壊のみではイソプロピルアルコール生産性向上の効果はみられなかった。また、gntRとgndを破壊した場合(pIa/B::atoDABΔgndΔgntR)、pgiとgndを破壊した場合(pIa/B::atoDABΔpgiΔgnd)及びpgiとgntRとgndを破壊した場合(pIa/B::atoDABΔpgiΔgndΔgntR)の生産量は各々28.6g/L/72h、2.6g/L/72h、0.8g/L/72hであり、これらの株ではイソプロピルアルコールの生産性が増加せずにむしろ低下した。更にはgndを破壊し且つzwfを強発現させた場合(pIaz/B::atoDABΔgnd)、gntRとgndを破壊し且つzwfを強発現させた場合(pIaz/B::atoDABΔgndΔgntR)及びpgiとgndを破壊し且つzwfを強発現させた場合(pIaz/B::atoDABΔpgiΔgnd)においてもイソプロピルアルコールの生産性は増加せずにむしろ低下していた(生産性は各々、40.7g/L/72h、33.9g/L/72h、34.9g/L/72hであった)。
従って、pIaz/B::atoDABΔpgiΔgndΔgntR株においてみられる生産性向上の効果は、gntRとpgiとgndを同時に破壊しかつzwfを強発現させたときのみに得られるといえる。
また、得られたアセトンは、精製した後に、イソプロピルアルコール生産の原料として用いることができる。
【0189】
(アセトンの製造)
[実施例26]
<イソプロピルアルコール、アセトンの取り出し>
上記pIaz/B::atoDABΔpgiΔgndΔgntR株(実施例23)の培養評価時のトラップ水をGC分析した結果、アセトンが1.2g/L、イソプロピルアルコールは4.3g/L含有されていることがわかった。上記イソプロピルアルコールおよびアセトンを含む水溶液(培養開始72時間後のトラップ水)から蒸留により、イソプロピルアルコール及びアセトンを高濃度化し取り出した。
具体的には最初に上記水溶液2Lを、陽イオン交換樹脂(オルガノ製、アンバーリスト31WET)250mlを充填したカラムに流速500ml/hで通液し、残存するアンモニア等を除去した。この処理液を常圧下蒸留した。沸点53〜81.6℃の留分を取り出し、GC分析した結果、アセトン18.7質量%、イソプロピルアルコール62.6質量%、不明成分が0.2質量%、残りは水であった。これを以下の脱水素反応の原料として用いた。
【0190】
<脱水素触媒ZnO:ZrO
2(94:6)の調製>
500mlの攪拌羽付き丸底フラスコに、炭酸ナトリウム15.94g(0.15mol)及び水130mlを入れ溶解させた。得られた水溶液に、硝酸亜鉛六水和物34.36g(0.11mol)及び酸化二硝酸ジルコニウム二水和物1.30g(0.05mol)を150mlの水に溶解させた水溶液を、1時間半かけて滴下した。そのまま5日間熟成させた後、ろ過し、よく水洗した。得られた白色物を120℃で2時間、400℃で1時間乾燥し、最後に600℃で2時間焼成した。複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(94:6)を白色の粉末として9.50gを得た。
【0191】
<アセトンの生産>
直径1cm、長さ40cmのSUS製反応器に、前記の複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(94:6)1.0g(20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したもの)を充填し、10ml/minの窒素気流下、350℃で上記蒸留液(アセトン18.7質量%、イソプロピルアルコール62.6質量%、不明成分0.2質量%、残りは水)を1.50g/hrの割合で流通させた。反応器の出口を冷却し反応液と反応ガスとを捕集した。反応開始5時間後の生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、表5に示したように高濃度でアセトンが生成していた。なお、表5中「IPA」はイソプロピルアルコールを表す(以下、同様)。
【0192】
[実施例27]
反応温度を400℃とした以外は実施例26と同様に行った。結果は表5に示した。表5に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0193】
[実施例28]
<脱水素触媒ZnO:ZrO
2(88:12)の調製>
500mlの攪拌羽付き丸底フラスコに、炭酸ナトリウム15.94g(0.15mol)及び水130mlを入れ溶解させた。得られた水溶液に、硝酸亜鉛六水和物32.86g(0.11mol)及び酸化二硝酸ジルコニウム二水和物2.66g(0.10mol)を150mlの水に溶解させた水溶液を、1時間半かけて滴下した。そのまま5日間熟成させた後、ろ過し、よく水洗した。得られた白色物を120℃で2時間、400℃で1時間乾燥し、最後に600℃で2時間焼成した。複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(88:12)を白色の粉末として9.94gを得た。
【0194】
<アセトンの生産>
直径1cm、長さ40cmのSUS製反応器に、前記の複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(88:12)1.0g(20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したもの)を充填し、10ml/minの窒素気流下、350℃で上記蒸留液(アセトン18.7質量%、イソプロピルアルコール62.6質量%、不明成分0.2質量%、残りは水)を1.50g/hrの割合で流通させた。反応器の出口を冷却し反応液と反応ガスとを捕集した。反応開始5時間後の生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、表5に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0195】
[実施例29]
反応温度を400℃とした以外は実施例28と同様に行った。結果は表5に示した。表5に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0196】
【表5】
【0197】
(イソプロピルアルコール生産大腸菌に含まれる遺伝子のコドン改変)
本発明のイソプロピルアルコール生産大腸菌に含まれるイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子とアセト酢酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のコドン配列を変更して、イソプロピルアルコール及びアセトンの生産性を以下に示すとおりに確認した。
[実施例30]
<プラスミドpI
*a
*zの作製>
クロストリジウム属細菌のアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子(adc)はGenBank accession number M55392に、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(IPAdh)はGenBank accession number AF157307に記載されている。
上記の遺伝子群を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。
【0198】
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgagctacatatgcaatgattgacacgattccg(配列番号38)、及びcgcgcgcatgctatttgttagtgaataaaagg(配列番号39)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素NdeI、SphIで消化することで約110bpのGAPDHプロモーターにあたるDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBR322(GenBank accession number J01749)を制限酵素NdeI及びSphIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpBRgapPを回収した。
コドン改変したイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(IPAdh
*)を取得するために、Clostridium beijerinckii NRRL B−593のイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のアミノ酸配列をもとにコドン改変したイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を設計し、DNA合成により以下のDNAフラグメント(配列番号40)を作成した。配列を以下に記す。
ATGAAAGGTTTTGCAATGCTGGGTATTAATAAGCTGGGCTGGATCGAAAAAGAGCGCCCGGTTGCGGGTTCGTATGATGCGATTGTGCGCCCACTGGCCGTATCTCCGTGTACCTCAGATATCCATACCGTTTTTGAGGGAGCTCTTGGCGACCGCAAGAATATGATTTTAGGGCATGAAGCGGTGGGTGAAGTTGTGGAGGTAGGCAGTGAAGTGAAGGATTTCAAACCTGGTGACCGTGTTATCGTCCCTTGCACAACCCCGGATTGGCGGTCTTTGGAAGTTCAGGCTGGTTTTCAACAGCACTCAAACGGTATGCTCGCAGGATGGAAATTTTCCAACTTCAAGGATGGCGTCTTTGGTGAGTATTTTCATGTGAATGATGCGGATATGAATCTTGCGATTCTGCCTAAAGACATGCCCCTGGAAAACGCTGTTATGATCACAGATATGATGACTACGGGCTTCCACGGAGCCGAACTTGCAGATATTCAGATGGGTTCAAGTGTAGTGGTCATTGGCATTGGCGCGGTTGGCCTGATGGGGATAGCCGGTGCTAAATTACGTGGAGCAGGTCGGATCATTGGCGTGGGGAGCCGCCCGATTTGTGTCGAGGCTGCCAAATTTTACGGGGCCACCGACATTTTGAATTATAAAAATGGTCATATCGTTGATCAAGTCATGAAACTGACGAACGGAAAAGGCGTTGACCGCGTGATTATGGCAGGCGGTGGTAGCGAAACACTGTCCCAGGCCGTATCTATGGTCAAACCAGGCGGGATCATTTCGAATATAAATTATCATGGAAGTGGCGATGCGTTATTGATCCCGCGTGTGGAATGGGGGTGCGGAATGGCTCACAAGACTATCAAAGGCGGTCTTTGTCCCGGGGGACGTTTGAGAGCAGAGATGCTGCGAGATATGGTAGTGTACAACCGTGTTGATCTCAGCAAACTGGTCACGCATGTATATCATGGGTTCGATCACATCGAAGAAGCCCTGTTACTGATGAAAGACAAGCCAAAAGACCTGATTAAAGCAGTAGTTATATTATAA
【0199】
作成したDNAフラグメントをテンプレートに用いて、acatgcatgcatgaaaggttttgcaatgctg(配列番号41)、及びacgcgtcgacttataatataactactgctttaa(配列番号42)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SphI、SalIで消化することで約1.1kbpのコドン改変イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpUC119を制限酵素SphI及びSalIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収してコドン改変したIPAdh
*が正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpUC−I
*と命名した。
【0200】
プラスミドpUC−I
*を制限酵素SphI及びEcoRIで消化することで得られるIPAdh
*を含むフラグメント、とプラスミドpBRgapPを制限酵素SphI及びEcoRIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収しコドン改変したIPAdh
*が正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAP-I
*と命名した。
【0201】
コドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子(adc
*)を取得するために、Clostridium acetobutylicum ATCC824のアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアミノ酸配列をもとにコドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子を設計し、DNA合成により以下のDNAフラグメント(配列番号43)を作成した。配列を以下に記す。
ATGCTGAAAGATGAAGTGATTAAACAGATTAGCACGCCATTAACTTCGCCTGCATTTCCGCGCGGTCCGTATAAATTTCATAATCGTGAATATTTTAACATTGTATACCGTACCGATATGGACGCCCTGCGTAAAGTTGTGCCAGAGCCTCTGGAAATTGATGAGCCCTTAGTCCGGTTCGAAATCATGGCAATGCATGATACGAGTGGCCTGGGTTGCTATACAGAATCAGGTCAGGCTATTCCCGTGAGCTTTAATGGTGTTAAGGGCGACTACCTTCACATGATGTATCTGGATAACGAGCCGGCAATTGCCGTAGGTCGGGAATTAAGTGCATACCCTAAAAAGCTCGGGTATCCAAAGCTGTTTGTGGATTCAGACACTCTGGTGGGCACGTTAGACTATGGAAAACTGCGTGTTGCGACCGCGACAATGGGGTACAAACATAAAGCCCTGGATGCTAATGAAGCAAAGGATCAAATTTGTCGCCCGAACTATATGTTGAAAATCATCCCCAATTATGACGGCTCCCCTCGCATATGCGAGCTTATCAACGCGAAAATCACCGATGTTACCGTACATGAAGCTTGGACAGGACCGACTCGACTGCAGTTATTCGATCACGCTATGGCGCCACTGAATGACTTGCCGGTCAAAGAGATTGTTTCTAGCTCTCACATTCTTGCCGATATAATCTTGCCGCGCGCGGAAGTCATATACGATTATCTCAAGTAA
【0202】
作成したDNAフラグメントをテンプレートに用いて、acgcgtcgacgctggttggtggaacatatgctgaaagatgaagtgatta(配列番号44)、及びgctctagattacttgagataatcgtatatga(配列番号45)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SalI、XbaIで消化することで約700bpのコドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP−I
*を制限酵素SalI及びXbaIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、adc
*が正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpI
*a
*と命名した。
【0203】
グルコース6リン酸−1−デヒドロゲナーゼ遺伝子(zwf)を取得するためにエシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)をテンプレートに用いてgctctagacggagaaagtcttatggcggtaacgcaaacagcccagg(配列番号46)、及びcgggatccttactcaaactcattccaggaacgac(配列番号47)を用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素BamHI、XbaIで消化することで約1500bpのグルコース6リン酸1−デヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpI
*a
*を制限酵素XbaI及びBamHI消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地にて37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpI
*a
*zを回収した。
【0204】
[実施例31]
<pI
*a
*/B::atoDAB△gntR株の作成>
実施例6で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△gntR株コンピテントセルに実施例30で作製したプラスミドpI
*a
*を形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpI
*a
*/B::atoDAB△gntR株を得た。
【0205】
[実施例32]
<pI
*a
*z/B::atoDAB△pgi△gntR株の作成>
実施例9で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gntR株コンピテントセルに実施例30で作製したプラスミドpIa
*を形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpI
*a
*z/B::atoDAB△pgi△gntRを得た。
【0206】
[実施例33]
<pI
*a
*z/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
実施例21で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株コンピテントセルに実施例30で作製したプラスミドpI
*a
*zを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpI
*a
*z/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を得た。
【0207】
[実施例34]
<pI
*a
*/B::atoDAB株の作製>
実施例1で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB株コンピテントセルに実施例30で作製したプラスミドpI
*a
*を形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpI
*a
*/B::atoDAB株を得た。
【0208】
[試験例2]
(イソプロピルアルコールの生産)
上記[試験例1]と同様にイソプロピルアルコールの生産評価を行った。評価に用いた株の一覧を表6に示した。また、評価結果を表7に示した。
【0209】
【表6】
【0210】
【表7】
【0211】
表7の結果を表4の結果と比較したところ、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子とアセト酢酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のコドンを改変すると、イソプロピルアルコールの生産性が大きく向上することが分かった。
【0212】
[実施例35]
(スクロースからのイソプロピルアルコール生産)
pI
*a
*z/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株に更にスクロースを分解するための酵素インベルターゼ遺伝子(cscA)を導入し、スクロースからのイソプロピルアルコール発酵生産を行った。更に得られた発酵液からアセトン又はプロピレンを製造した。
<pI
*a
*z−cscA/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
エシェリヒア・コリO157株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number AE005174 )、エシェリヒア・コリO157株のインベルターゼをコードする遺伝子(以下、cscAと略することがある)の塩基配列も報告されている。すなわちcscAはGenBank accession number AE005174に記載のエシェリヒア・コリO157株ゲノム配列の3274383〜3275816に記載されている。
【0213】
cscAを取得するために、エシェリヒア・コリO157株のゲノムDNAをテンプレートに用いてgctggtggaacatatgacgcaatctcgattgcatg(配列番号48)、及びttaacccagttgccagagtgc(配列番号49)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントをT4ポリヌクレオチドキナーゼで末端リン酸化することで約1470bpのcscAフラグメントを得た。このDNAフラグメントと実施例30で作成したpI
*a
*zを制限酵素BamHIで消化の後、T4DNAポリメラーゼで平滑末端とし、さらにアルカリフォスファターゼで末端を脱リン酸化したものとを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた菌体からプラスミドを回収し、グルコース6リン酸−1−デヒドロゲナーゼ遺伝子(zwf)の3’末端側とcscAの5’末端側が連結されcscAが正しく挿入されていることが確認されたプラスミドをpI
*a
*z−cscAと命名した。
なおエシェリヒア・コリO157のゲノムは標準物質及び計量技術研究所より入手することができる。
【0214】
実施例21で作製したエシェリヒア・コリ、B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株コンピテントセルに作製したプラスミドpI
*a
*z−cscAを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリpI
*a
*z−cscA/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を得た。
【0215】
[試験例3]
(イソプロピルアルコールおよびアセトンの製造)
エシェリヒア・コリpI
*a
*z−cscA/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を用いた以外は上記[試験例1]と同様にして、イソプロピルアルコールおよびアセトンの製造を行った。ただし培地は50wt/wt%グルコース水溶液の代わりに40wt/wt%スクロース水溶液を用いて行った。その結果、培養72時間目で82.0g/Lのイソプロピルアルコールと23.7g/Lのアセトンが生成した。1台目のトラップ水をHPLC分析した結果、アセトンが0.14質量%、イソプロピルアルコールは0.55質量%含有されていることが分かった。
【0216】
(イソプロピルアルコール、アセトンの取り出し)
上記イソプロピルアルコールおよびアセトンを含むトラップ水から蒸留により、イソプロピルアルコール及びアセトンを高濃度化し取り出した。
具体的には最初に上記水溶液9Lを、陽イオン交換樹脂(オルガノ製、アンバーリスト31WET)250mlを充填したカラムに流速500ml/hで通液し、残存するアンモニア等を除去した。この処理液を常圧下蒸留した。沸点53℃〜81.6℃の留分を取り出し、GC分析した結果、アセトン19.1質量%、イソプロピルアルコール60.5質量%、不明成分が0.5質量%、残りは水であった。これを以下の実施例36〜実施例39の脱水素反応、及び実施例40のプロピレン生産の原料として用いた。
【0217】
[実施例36]
(アセトンの製造)
<脱水素触媒ZnO:ZrO
2(94:6)の調製>
500mlの攪拌羽付き丸底フラスコに、炭酸ナトリウム15.94g(0.15mol)及び水130mlを入れ溶解させた。得られた水溶液に、硝酸亜鉛六水和物34.36g(0.11mol)及び酸化二硝酸ジルコニウム二水和物1.30g(0.05mol)を150mlの水に溶解させた水溶液を、1時間半かけて滴下した。そのまま5日間熟成させた後、ろ過し、よく水洗した。得られた白色物を120℃で2時間、400℃で1時間乾燥し、最後に600℃で2時間焼成した。複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(94:6)を白色の粉末として9.50gを得た。
【0218】
<アセトンの生産>
直径1cm、長さ40cmのSUS製反応器に、前記の複合酸化物触媒ZnO:ZrO2(94:6)1.0g(20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したもの)を充填し、10ml/minの窒素気流下、350℃で上記蒸留液(アセトン19.1質量%、イソプロピルアルコール60.5質量%、不明成分0.5質量%、残りは水)を1.50g/hrの割合で流通させた。反応器の出口を冷却し反応液と反応ガスとを捕集した。反応開始5時間後の生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、表8に示したように大量の水、およびバイオ由来の不純物を含んだアセトンとイソプロピルアルコールを用いた場合でも高濃度でアセトンが生成していた。なお、表8中「IPA」はイソプロピルアルコールを表す(以下、同様)。
【0219】
[実施例37]
反応温度を400℃とした以外は実施例36と同様に行った。結果は表8に示した。表8に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0220】
[実施例38]
<脱水素触媒ZnO:ZrO
2(88:12)の調製>
500mlの攪拌羽付き丸底フラスコに、炭酸ナトリウム15.94g(0.15mol)及び水130mlを入れ溶解させた。得られた水溶液に、硝酸亜鉛六水和物32.86g(0.11mol)及び酸化二硝酸ジルコニウム二水和物2.66g(0.10mol)を150mlの水に溶解させた水溶液を、1時間半かけて滴下した。そのまま5日間熟成させた後、ろ過し、よく水洗した。得られた白色物を120℃で2時間、400℃で1時間乾燥し、最後に600℃で2時間焼成した。複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(88:12)を白色の粉末として9.94gを得た。
【0221】
<アセトンの生産>
直径1cm、長さ40cmのSUS製反応器に、前記の複合酸化物触媒ZnO:ZrO
2(88:12)1.0g(20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したもの)を充填し、10ml/minの窒素気流下、350℃で上記蒸留液(アセトン19.1質量%、イソプロピルアルコール60.5質量%、不明成分0.5質量%、残りは水)を1.50g/hrの割合で流通させた。反応器の出口を冷却し反応液と反応ガスとを捕集した。反応開始5時間後の生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、表8に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0222】
[実施例39]
反応温度を400℃とした以外は実施例38と同様に行った。結果は表8に示した。表8に示したように高濃度でアセトンが生成していた。
【0223】
【表8】
【0224】
[実施例40]
(プロピレンの製造)
実施例35の試験例3に記載の培養液より得られた蒸留液を原料とし、高圧用フィードポンプ、高圧用水素マスフロー、高圧用窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を行った。
内径1cmのSUS316製反応器に、反応器の出口側からまず、銅−亜鉛触媒(SudChemie社製、製品名ShiftMax210、元素質量%Cu 32〜35%、Zn 35〜40%、Al 6〜7%)粉末(250〜500μへ分級したもの)を上流側の触媒層として1.0g充填した。触媒層を分離するため石英ウールを詰めた後、β−ゼオライト(触媒化成社製、20MPaで圧縮成型後、250〜500μへ分級したもの)1.0gを下流側の触媒層として充填した。
【0225】
水素で2.5Mpaまで加圧した後、反応器入口側より20ml/分の水素気流下、180℃で、反応器入口側より上記蒸留液(アセトン19.1質量%、イソプロピルアルコール60.5質量%、不明成分0.5質量%、残りは水)を0.60g/Hrで流通させた。 反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより200ml/分の窒素を導入した。背圧弁直後のラインに気液分離管を設置し、採取したガス成分、液成分をそれぞれGC分析して生成物を定量した。反応結果を表9に示したように大量の水、およびバイオ由来の不純物を含んだアセトンとイソプロピルアルコールを用いた場合でも、高転化率でプロピレンが生成することがわかった。なお、表9中「DIPE」はジイソプロピルエーテルを表す。
【0226】
【表9】
【0227】
2010年8月12日に出願された日本国特許出願第2010−181150号の開示及び2011年3月7日に出願された日本国特許出願第2011−049531号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。