(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の物質は、原料前駆体、反応前駆体、不活性ガス、反応物ガスまたはそれらの混合物からなる群から選択される1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の蒸着反応器。
前記第2の物質は、原料前駆体、反応前駆体、不活性ガス、反応物ガスまたはそれらの混合物からなる群から選択される1種または2種以上のガスを含むことを特徴とする請求項6に記載の蒸着反応器。
前記少なくとも1つの第1の注入部に連通可能に接続された空隙内の複数の電極に電圧をかけて、前記第1の物質のラジカルを発生させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、例示的な実施形態が示されている添付図面を参照して、例示的な実施形態をより詳細に以下に説明する。しかしながら、本開示は、多数の異なる形態で実現できるものであり、本開示に記載する例示的な実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。そうではなく、これらの例示的実施形態は、本開示を詳細で完全なものとし、当業者に対して本開示の範囲を完全に伝達するために提供するものである。詳細な説明においては、提示する実施形態を不必要に分かり難くするのを避けるために、周知の機能や技法の詳細について省略することがある。
【0013】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定するものではない。本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈により特段の明示がない限り、複数形も含めるものとする。さらに、1つ(「a」、「an」)などの使用は、量的な限定を意味するものではなく、むしろ参照された項目が少なくとも1つ存在することを意味するものである。「第1」、「第2」、その他の同様の用語の使用は、いかなる特定の順序も暗示するものではなく、個別の要素を識別するために含まれるものである。さらに、「第1」、「第2」などの用語の使用は、いかなる順序または重要性を意味するものではなく、「第1」、「第2」などは、1つの要素を別の要素から区別するために含まれるものである。さらに、本明細書において、用語「備える」、「含む」("comprises" and/or "comprising", or "includes" and/or "including")は、記載された特徴、領域、完全体(integer)、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を規定するが、1つまたは複数のその他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことを理解されたい。
【0014】
特に断らない限り、本明細書において使用するすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されるような用語は、関係技術および本開示の文脈におけるその意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書においてそのように明示されない限り、理想化されたり、過度に形式的な意味で解釈されないことをさらに理解されたい。
【0015】
図面においては、同一の参照番号は同一の要素を示している。図面の形状、大きさ、領域その他は、分かり易くするために誇張されていることがある。
【0016】
図2Aは、一実施形態による蒸着反応器の断面図である。
図2Bは、
図2Aの蒸着反応器の斜視図である。蒸着反応器1は、少なくとも部分的に円筒の形状を有してもよい。蒸着反応器1は、薄膜がその中において堆積される管2の中に挿入してもよい。蒸着反応器1は、注入部および排出部を中に有する本体3を備えることができる。ここで、注入部は、薄膜を形成するための反応物等を注入し、排出部は、蒸着反応器1から余分の反応物等を排出する。蒸着反応器1は、本体3を覆うカバー4をさらに備えることができる。
【0017】
蒸着反応器1を管2に対して相対的に移動させ、それによって、蒸着反応器1によって注入された反応物は、管2の内表面に堆積されて、管2の内表面に薄膜を形成する。例えば、管2を固定した状態で、蒸着反応器1を回転させてもよい。あるいは、蒸着反応器1を固定した状態で、管2を回転させてもよい。蒸着反応器1と管2の内表面の間の間隙は、周囲の位置によって異なってもよい。
図2Aにおいて破線の円で特定された区域において、蒸着反応器1の外周部分と、管2の内表面との間の間隙をzとしてもよい。例えば、この間隔zは約0.1から3mmとしてもよい。
【0018】
図3は、
図2Aの蒸着反応器の分解斜視図である。この蒸着反応器は、注入部、排出部等を中に有する本体3と、本体3の両端部をそれぞれ覆うように配置されたカバー4および5とを備えることができる。この場合、反応物および不活性ガスを注入または排出するための1つまたは複数の開口を、一方向のカバー5に形成してもよい。また、1つまたは複数の開口の位置に対応する、1つまたは複数のチャネルを、本体3内に形成してもよい。チャネルのそれぞれは、円筒形の本体3の長手方向に延長させて、反応物または不活性ガスを本体3中に移送してもよい。
【0019】
図4は、
図2Aの蒸着反応器の横断面図および縦断面図を示す。反応物などの注入および排出を行う1つまたは複数のモジュールが、薄膜を形成するために、蒸着反応器の本体3内に形成されている。すなわち、蒸着反応器は、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30を有するユニットモジュール、および第1の部分10’、第2の部分20’および第3の部分30’を有する別のユニットモジュールを備えることができる。蒸着反応器は、それぞれのユニットモジュールに隣接して配置された、第4の部分40および40’をさらに備えることができる。
【0020】
図4Aおよび4Bにおいては蒸着反応器が2つのユニットモジュールだけを備えるように図示されているが、ユニットモジュールの数は、一例にすぎない。すなわち、蒸着反応器は、1つのユニットモジュール、または3つまたは4つ以上のユニットモジュールを備えることができる。
【0021】
1つの蒸着反応器に含まれるユニットモジュールの構成は、同一としてもよい。説明のために、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30を有するユニットモジュールの構成を詳細に説明する。ユニットモジュールにおいて、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30内にそれぞれ形成された凹部または空間は、互いに連通可能に接続(communicatively connected)してもよい。反応物を注入するための1つまたは複数の第1の注入部11を、第1の部分10内に形成してもよい。1つまたは複数の第1の注入部11を、反応物がそれに沿って移送されるチャネル12に接続してもよい。蒸着反応器から余分の反応物などを排出するための排出部31は、第3の部分30内に形成してもよい。
【0022】
一方で、不活性ガスを注入するための1つまたは複数の第2の注入部41を、第4の部分40に形成してもよい。例えば、Arガスを不活性ガスとして使用してもよい。1つまたは複数の第2の注入部41を、不活性ガスがそれを通って移送されるチャネル42に接続してもよい。1つまたは複数の第2の注入部41によって注入される不活性ガスは、1つまたは複数の第1の注入部11を通って注入される物質、および別の1つまたは複数の第1の注入部11’を通って注入される物質を互いにシールド(shield)する。また、この不活性ガスは、蒸着反応器の本体3と曲面との間の間隙を通って流れる間に対象曲面上に吸収された、前駆体などの物理吸収層を除去する働きをする。不活性ガスは、第3の部分30および30’の排出部31および31’を通って、蒸着反応器の外部に排出される。
【0023】
図4の第4の部分40において、1つまたは複数の第2の注入部41は、蒸着反応器の本体3の長さ方向に沿って延びるスリット形の凹部内に形成された穴として構成してもよい。しかしながら、これは、例証のためにだけ提示するものである。別の実施形態において、第4の部分40には、別個の凹部を設けずに、1つまたは複数の第2の注入部41は、蒸着反応器の本体3の表面上に直接形成してもよい。あるいは、第2の注入部41は、蒸着反応器の本体3の縦方向に沿って延びるスリット形の凹部として構成してもよい。
【0024】
上記の蒸着反応器は、反応器パラメータのうちでもとりわけ、第1の部分10および10’のそれぞれの幅w
0およびw
1ならびに高さh
0およびh
1、第2の部分20および20’のそれぞれの高さz
0およびz
1ならびに長さφ
1およびφ
2、第3の部分30および30’のそれぞれの幅E
0およびE
1、ならびに蒸着反応器の本体3の長さLによって特徴づけられる。また、反応に関係するプロセスパラメータとしては、1つまたは複数の第1の注入部11および11’を通って注入される反応物の流量ν
Aおよびν
B、排出部31および31’を通るポンピング速度Ω
AおよびΩ
B、蒸着反応器に対する管の回転速度ω、第1の部分10および10’それぞれの圧力P
A0およびP
B0、第2の部分20および20’それぞれの圧力P
A1およびP
B1、第3の部分30および30’それぞれの圧力P
A2およびP
B2、第4の部分40および40’それぞれの圧力P
S0およびP
S1、などが挙げられる。
【0025】
一実施形態において、蒸着反応器の第4の部分40および40’のそれぞれの圧力P
S0またはP
S1は、第4の部分40および40’のそれぞれに隣接するその他の部分の圧力よりも大きくてもよい。すなわち、第4の部分40の圧力P
S0は、第4の部分40に隣接する第1の部分10および第3の部分1030’の圧力P
A0およびP
B2と同一又はそれ以上であってもよい。第4の部分40’の圧力P
S1は、第4の部分40’に隣接する第3の部分30および第1の部分10’の圧力P
A2およびP
B0と同一又はそれ以上であってもよい。第1の部分10の圧力P
A0は、第2の部分20の圧力P
A1よりも大きくてもよく、第2の部分20の圧力P
A1は、第3の部分30の圧力P
A2よりも大きくてもよい。同様に、第1の部分10’の圧力P
B0は、第2の部分20’の圧力P
B1よりも大きくてもよく、第2の部分20’の圧力P
B1は、第3の部分30’の圧力P
B2よりも大きくてもよい。
【0026】
図5は、
図2Aの蒸着反応器の横断面図および縦断面図を示す。蒸着反応器の本体3の長さ方向に沿って配列された1つまたは複数の第1の注入部11および11’は、第1の部分10および10’それぞれの中に形成してもよい。1つまたは複数の第1の注入部11および11’は、本体3の長さ方向に沿って延在して、反応物がそれを通って移送されるチャネル12および12’に接続してもよい。1つまたは複数の第1の注入部11を通って注入される反応物は、1つまたは複数の第1の注入部11’を通って注入されるものと同一であっても、異なってもよい。
【0027】
図6は、
図2Aの蒸着反応器の横断面図および縦断面図を示す。第1の部分10における1つまたは複数の第1の注入部11は、ある間隔で配列されて、円形断面を有する穴の形状に形成してもよい。しかしながら、これは、説明のためだけに提示するものである。すなわち、1つまたは複数の第1の注入部11は、円形断面と異なる断面を有する穴の形状に形成してもよい。
【0028】
以下では、前述の実施形態による蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法を、
図2から6を参照して説明する。
【0029】
蒸着反応器1が管2の中に挿入された状態において管2が回転すると、管2の内表面は、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30を連続して通過することができる。管2の内表面は、第4の部分40を通過する間に不活性ガスに曝され、次に、その後に第1の部分10を通過する間に、1つまたは複数の第1の注入部11を通って注入された反応物に曝される。注入された反応物は、管2の内表面上に物理吸収層および化学吸収層を形成してもよい。その後、管2の内表面が第2の部分20を通過する間に、反応物の物理吸収層は、第2の部分20の圧力が相対的な低いために、少なくとも部分的に脱着してもよい。脱着した反応物の分子は、管2の内表面が第3の部分30を通過する間に、排出部31を通って蒸着反応器の外部へと放出される。
【0030】
その後に、管2の内表面は、第4の部分40’、第1の部分10’、第2の部分20’および第3の部分30’を通過させてもよい。この場合に、第1の部分10’の1つまたは複数の第1の注入部11’を通って注入された反応物は、第1の部分10の1つまたは複数の第1の注入部11を通って注入された反応物の物理吸収層と反応して、それによって管2の内表面に薄膜を形成してもよい。
【0031】
例えば、原料前駆体と反応前駆体との反応による原子層堆積(ALD)薄膜を、原料前駆体を1つまたは複数の第1の注入部11から注入し、反応前駆体を1つまたは複数の第1の注入部11’から注入することによって、管2の内表面上に形成してもよい。あるいは、反応器パラメータの制御下で物理吸収層を完全に除去することなく、管2の内表面上に原料前駆体および/または反応前駆体の物理吸収層の一部分を残すことによって、数原子層に対応する厚さのナノ層(nanolayer)を、管2の内表面上に形成してもよい。
【0032】
一例として、トリメチルアルミニウム(TMA)を原料前駆体として1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入し、H
2O
2またはO
3を反応前駆体として1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入することによって、Al
2O
3層を管2の内表面上に形成することができる。別の例として、TiCl
4を原料前駆体として1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入し、NH
3を反応前駆体として1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入することによって、TiN層を管2の内表面上に形成することができる。前述の方法において、管2の回転速度は、約10から100rpmに調整してもよい。また、Arガスを、1つまたは複数の第2の注入部41および41’を通して注入される不活性ガスとして使用してもよい。
【0033】
さらに別の例において、テトラエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)とテトラエチルメチルアミノシリコン(TEMASi)の混合物を原料前駆体として1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入してもよい。TEMAZrとTEMASiは先に互いに混合して、同一の第1の注入部11を通して注入するか、またはTEMAZrおよびTEMASiをそれぞれ注入するための2種類の第1の注入部11を設けて、第1の部分10内に形成された凹部内で互いに混合させるようにしてもよい。H
2O
2またはO
3を反応前駆体として、1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入してもよい。結果として、Zr
xSi
i−xO
2層を、管2の内表面上に形成してもよい。最終的に形成されたZr
xSi
i−xO
2層の組成は、原料前駆体として使用したTEMAZrおよびTEMASiの混合比、TEMAZrおよびTEMASiのそれぞれの流量、混合原料前駆体の割合(rate)などに基づいて決めることができる。この場合に、管2の回転速度は、約10から100rpmに調整することができる。また、Arガスを、1つまたは複数の注入部41および41’を通して注入される不活性ガスとして使用してもよい。
【0034】
図7は、
図2Aから6を参照して説明した実施形態による蒸着反応器をプラズマを使用するように改変して得られる、蒸着反応器を示す横断面図である。1つまたは複数の第1の注入部11’に接続された空隙13’を、蒸着反応器に含まれる第1の部分10および10’のいずれか一方にさらに形成してもよい。プラズマを発生させるための複数の電極14’および15’を、空隙13’内に配置してもよい。一実施形態において、複数の電極14’および15’は、同軸容量型(coaxial capacitive type)プラズマを発生させるように、同心円断面を有する内部および外部の電極14’および15’を含むことができる。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、誘導結合プラズマ(ICP)などの異なる種類のプラズマを発生させるための電極構造を使用してもよい。
【0035】
内部電極14’は、空隙13’内に配置されて、円形断面を有する電極としてもよい。一方で、蒸着反応器の本体3が、アルミニウムやインコネルスチールなどの導電性材料で作製されている場合には、別個の要素を外部電極15’として使用せず、内部電極14’に隣接する領域を、蒸着反応器の本体3内の外部電極15’として使用してもよい。一実施形態において、空隙13’は、約10から20mmの直径の円形断面を有する空間としてもよく、蒸着反応器の本体3内の対応する空間を画定する部分を、外部電極15’と対応させてもよい。しかしながら、これは、説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、複数の電極14’および15’のうちの1つまたは2つ以上を、蒸着反応器の本体3と異なる材料で作製された別個の要素としてもよい。
【0036】
プラズマは、複数の電極14’および15’を使用して空隙13’内で発生させてもよい。この目的で、DC電圧、パルス電圧またはRF電圧を、複数の電極14’、15’の両端にかけてもよい。例えば、約500から1500Vの電圧を、複数の電極14’、15’間にかけてもよい。結果として、1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入された物質のラジカルを発生させて、このラジカルを使用してラジカル・アシストALDを実施することができる。この場合に、1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入される物質としては、Arガスなどの不活性ガスおよび/または反応物ガスを含めてもよい。反応物ガスとしては、O
2、N
2OおよびH
2Oなどの酸化性ガス、N
2およびNH
3などの窒化ガス、CH
4などの炭化ガス、またはH
2などの還元性ガスなどが挙げられるが、それに限定はされない。
【0037】
Arガスなどの不活性ガスのラジカル(例えば、Ar
*ラジカル)が空隙13’内に発生すると、不活性ガスのラジカルが、前工程の結果として管2の内表面上に形成された薄膜内の分子間の結合を切断して、その結果、後続の工程において薄膜の堆積特性を改善することができる。一方で、O
2、N
2O、H
2O、N
2、NH
3、CH
4またはH
2などの、反応物ガスのラジカル(例えば、O
*ラジカル、H
*ラジカルまたはN
*ラジカル)が空隙13’内で発生し、発生した反応物ガスのラジカルによって、管2の内表面上で吸収された分子またはラジカルが、第2の部分20’および第3の部分30’を介して排出部31’を通り蒸着反応器の外部に排出される間に、脱着させられる。前述の工程において、短い寿命のラジカル(例えばAr
*ラジカル、H
*ラジカルまたはN
*ラジカル)は、管2の内表面上に吸収された物質とある程度の時間だけ反応して、不活性状態に戻ることがある。不活性状態に戻ったラジカルは、過剰に吸収された前駆体を、排出部31’を通り排出される間に、管2の内表面から除去することができる。
【0038】
図7に示す実施形態において、プラズマを発生させるための電極14’および15’、ならびに空隙13’は、2つの第1の部分10および10’の第1の部分10’だけに設けられている。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、プラズマを発生させるための電極構造を、2つの第1の部分10および10’の両方に設けてもよい。
【0039】
図8は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の断面図である。以下に示す実施形態の説明において、先に記載した実施形態から当業者が容易に理解できる部分の説明は省略し、先に記載した実施形態との差異だけについて説明する。
【0040】
図8を参照すると、この実施形態による蒸着反応器において、ユニットモジュールは、第1の部分10、10’を間にはさんで第2の部分20、20’と反対側に配置された第5の部分50、50’をさらに備えることができる。第6の部分60は、第5の部分50に隣接して位置し、第6の部分60’は、第5の部分50’に隣接して位置してもよい。第1の部分10、第5の部分50および第6の部分60のそれぞれに形成された凹部は、互いに連通可能に接続してもよい。同様に、第1の部分10’、第5の部分50’および第6の部分60’のそれぞれに形成された凹部は、互いに連通可能に接続してもよい。反応物を注入するための1つまたは複数の第3の注入部61および61’は、第6の部分60および60’のそれぞれの中に形成してもよい。1つまたは複数の第3の注入部61および61’は、反応物がそれを通して移送されるチャネル62および62’に接続してもよい。
【0041】
上述のように構成された蒸着反応器を使用して薄膜が形成される場合には、反応器パラメータとしては、
図4を参照して説明した反応器パラメータに加えて、第5の部分50および50’のそれぞれの長さφ
2およびφ
3、第6の部分60の幅および高さ、第6の部分60’の幅w
3および高さh
3、ならびに1つまたは複数の第3の注入部61および61’を通して注入される反応物の流量が挙げられる。
【0042】
ここで、第2の部分20および第5の部分50の長さφ
0およびφ
2は、1つまたは複数の第1の注入部11、および1つまたは複数の第3の注入部51を通して注入された物質の、付着係数(sticking coefficient)またはファンデルワールス力に少なくとも部分的に基づいて決めることができる。同様に第2の部分20’および第5の部分50’の長さφ
1およびφ
3は、1つまたは複数の第3の注入部51’を通して注入された物質の付着係数またはファンデルワールス力に少なくとも部分的に基づいて決めることができる。さらに、第6の部分60と、第6の部分60に隣接する第4の部分40との間の長さφ
4は、1つまたは複数の第3の注入部分61を通して注入された反応物の蒸気圧および拡散率に少なくとも部分的に基づいて決めることができる。同様に、第6の部分60’と、第6の部分60’に隣接する第4の部分40’との間の長さφ
5は、1つまたは複数の第3の注入部分61’を通して注入された反応物の蒸気圧および拡散率に少なくとも部分的に基づいて決めることができる。
【0043】
一実施形態において、第6の部分60の圧力P
A6は、第6の部分60に隣接する第5の部分50の圧力P
A5よりも大きくてもよい。第5の部分50の圧力P
A5は、第3の部分30の圧力P
A3よりも大きくてもよい。同様に、第6の部分60’の圧力P
B6は、第5の部分50’の圧力P
B5よりも大きくてもよく、第5の部分50’の圧力P
B5は、第3の部分30’の圧力P
B3よりも大きくてもよい
【0044】
以下では、前述の実施形態による蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法について
図8を参照して説明する。
【0045】
図8に示す実施形態による蒸着反応器1が管2の中に挿入された状態において、管2が回転される場合には、管2の内表面は、第4の部分40、第6の部分60、第5の部分50、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30を連続して通過してもよい。この場合、反応物は、第6の部分60の1つまたは複数の第3の注入部61を通して注入してもよく、不活性ガスは、第1の部分10の1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入してもよい。例えば、原料前駆体は、1つまたは複数の第3の注入部61を通して注入してもよく、Arガスは、1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入してもよい。余分の原料前駆体分子およびArガスは、第3の部分30の排出部31を通って排出される。結果として、化学吸着された原料前駆体の分子は、第3の部分30を通過する管2の内表面上に残される。
【0046】
その後に、管2の内表面は、第4の部分40’、第6の部分60’、第5の部分50’、第1の部分10’、第2の部分20’および第3の部分30’を連続的に通過してもよい。この場合、反応前駆体は、第6の部分60’の1つまたは複数の第3の注入部61’を通して注入してもよく、Arガスは、第1の部分10’の1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入してもよい。反応前駆体は、管2の内表面上に形成された原料前駆体の化学吸着された分子と反応して、薄膜を形成し、反応後に残された、余分の原料前駆体分子、反応前駆体分子および/またはArガスは、排出部31’を通して蒸着反応器の外部に排出することができる。
【0047】
上記の薄膜を形成する方法によれば、Arガスなどの不活性ガスは、1つまたは複数の第1の注入部11および11’を通して注入され、それによって、物理吸着された原料前駆体の分子、または管2の内表面上に吸収された反応前駆体を除去する。結果として、最終的に形成された薄膜を、単一原子層の形態で得ることができる。
【0048】
図9は、
図8を参照して説明した実施形態による蒸着反応器をプラズマを使用するように改変することによって得られた、蒸着反応器の横断面図である。
【0049】
図9を参照すると、1つまたは複数の第3の注入部61’に接続された空隙63’を、蒸着反応器に含まれる第6の部分60および60’のうちの第6の部分60’内にさらに形成してもよい。プラズマを発生させるための複数の電極64’および65’を、空隙63’内に配置してもよい。例えば、複数の電極64’および65’は、同軸容量型プラズマを発生するように同心円断面を有する内部および外部の電極64’および65’を含むことができる。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。すなわち、誘導結合プラズマ(ICP)などの異なる種類のプラズマを発生するための電極構造を使用してもよい。
【0050】
図9に示す実施形態による蒸着反応器の動作は
図7の実施形態と類似しており、したがって、その詳細な説明は簡単にするために本明細書においては省略する。
【0051】
図10は、さらに別の実施形態による蒸着反応器の断面図である。ユニットモジュールは、第3の部分30、30’を間にはさんで、第2の部分20、20’と反対側に配置された、第5の部分50、50’をさらに備えることができる。第6の部分60は、第5の部分50に隣接して配置してもよく、第6の部分60’は、第5の部分50’に隣接して配置してもよい。第3の部分30、第5の部分50および第6の部分60のそれぞれの中に形成された凹部を、互いに連通可能に接続してもよい。同様に、第3の部分30’、第5の部分50’および第6の部分60’のそれぞれの中に形成された凹部を、互いに連通可能に接続してもよい。反応物を注入するための1つまたは複数の第3の注入部61および61’は、第6の部分60および60’のそれぞれの中に形成してもよい。1つまたは複数の第3の注入部61および61’は、反応物がそれを通して移送されるチャネル62および62’に接続してもよい。
【0052】
以下では、
図10を参照にして説明した実施形態による蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法について説明する。
【0053】
図10に示される実施形態による蒸着反応器1の状態で管2を回転させると、管2の内表面は、第4の部分40、第1の部分10、第2の部分20、第3の部分30、第5の部分50および第6の部分60を連続して通過することができる。この場合、反応物は、1つまたは複数の第1の注入部11を通して注入してもよく、Arガスなどの不活性ガスは、1つまたは複数の第3の注入部61を通して注入してもよい。余分の原料前駆体およびArガスは、管2の中央に配置された排出部31’を通して排出してもよい。結果として、化学吸着された原料前駆体の分子は、第6の部分60を通過する管2の内表面上に残される。
【0054】
その後に、管2の内表面は、第4の部分40’、第1の部分10’、第2の部分20’、第3の部分30’、第5の部分50’および第6の部分60’を連続的に通過させてもよい。この場合、反応前駆体は、1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入してもよく、Arガスは、1つまたは複数の第3の注入部61’を通して注入してもよい。反応前駆体は、管2の内表面上に形成された化学吸着された原料前駆体の分子と反応して薄膜を形成し、反応後に残された余剰の前駆体およびArガスは、管2の中央に配置された排出部31’を通して蒸着反応器の外部に排出することができる。
【0055】
図10に示される蒸着反応器において、ガスの絞り(constriction)およびスキミング(skimming)のための第2の部分20および20’ならびに第5の部分50および50’は、その中に排出部31および31’がそれぞれ形成された、第3の部分30および30’の両側に位置している。ユニットモジュールは、不活性ガスを注入するための第4の部分40および40’によって離隔されている。結果として、管2の内表面上に形成された物理吸着された分子および不活性ガスは、容易に脱着及び排出され、単一原子層を得ることができる。
【0056】
図11は、
図10を参照して説明した実施形態による蒸着反応器をプラズマを使用するように改変することによって得られた、蒸着反応器の横断面図である。1つまたは複数の第3の注入部61’に接続された空隙63’を、蒸着反応器に含まれる第6の部分60および60’のうちの第6の部分60’内にさらに形成してもよい。プラズマを発生させるための複数の電極64’および65’を、空隙63’内に配置してもよい。
図11に示す実施形態による蒸着反応器の動作は、簡単にするために本明細書では省略する。
【0057】
図9および
図11に示す実施形態において、プラズマを発生させる装置は、2つの第6の部分60および60’のうちの第6の部分60’内だけに形成されている。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、プラズマを発生する電極構造を、2つの第6の部分60および60’の両方に適用してもよい。
【0058】
さらに別の実施形態において、プラズマを発生するための電極構造は、第6の部分60’に加えて、第1の部分10’に適用してもよい。この場合には、反応前駆体のラジカルは、第6の部分60’内に形成された1つまたは複数の第3の注入部61’を通して注入してもよく、不活性ガスのラジカルは、第1の部分10’内に形成された1つまたは複数の第1の注入部11’を通して注入してもよい。この場合に、不活性ガスのラジカルは、先行工程の結果として管2の内表面上に形成された薄膜内の分子間の結合を切断し、それによって、後続の工程において薄膜の堆積特性を改善することができる。
【0059】
図12は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。蒸着反応器は、反応物などの注入および排出のための4つのユニットモジュールを備えることができる。ユニットモジュールのそれぞれは、第1の部分から第3の部分を有し、不活性ガスを注入するための第4の部分を、ユニットモジュール間に配置してもよい。すなわち、蒸着反応器は、4つの第1の部分10、10’、10’’および10’’’、4つの第2の部分20、20’、20’’および20’’’、4つの第3の部分30、30’、30’’および30’’’、ならびに4つの第4の部分40、40’、40’’および40’’’を備えることができる。これらの部分のそれぞれの詳細な構成は、
図2から6を参照して説明した実施形態による蒸着反応器の構成と同一である。したがって、その詳細な説明は省略する。
【0060】
以下では、
図12に示す薄膜を形成する方法の実施形態について説明する。
【0061】
一実施形態において、第1の部分10および第1の部分10’’の中に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TMAを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’および第1の部分10’’’の中に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、H
2OまたはO
3を反応前駆体として注入してもよい。この場合に、管は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、2つのAl
2O
3層を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0062】
別の実施形態において、第1の部分10内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TMAを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’’内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、テトラエチルメチアミノチタニウム(TEMATi:tetraethylmethyaminotitanium)を別の原料前駆体として注入してもよい。H
2OまたはO
3は、反応前駆体として、第1の部分10’および第1の部分10’’’の中に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、注入してもよい。この場合に、管2は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、Al
2O
3層およびTiO
2層をナノスケールで積層(nanolaminate)して得られる薄膜を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0063】
さらに別の実施形態において、第1の部分10内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、テトラエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)を原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’’内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、テトラエチルメチルアミノシリコン(TEMASi)を別の原料前駆体として注入してもよい。H
2OまたはO
3は反応前駆体として、第1の部分10’および第1の部分10’’’の中に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、注入してもよい。この場合に、管2は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、ZrO
2層およびSiO
2層をナノスケールで積層して得られる薄膜を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0064】
図13は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。
【0065】
図13を参照すると、この実施形態による蒸着反応器は、反応物などの注入および排出のための3つのユニットモジュールを備えることができ、各ユニットモジュールは、第1の部分から第3の部分を有することができる。不活性ガスを注入するための第4の部分は、ユニットモジュール間に配置してもよい。すなわち、蒸着反応器は、3つの第1の部分10、10’および10’’、3つの第2の部分20、20’および20’’、3つの第3の部分30、30’および30’’、ならびに3つの第4の部分40、40’および40’’を備えることができる。
【0066】
図13に示す蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法の一例として、第1の部分10に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TEMAZrを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TEMASiを別の原料前駆体として注入してもよい。H
2OまたはO
3は反応前駆体として、第1の部分10’’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入してもよい。この場合に、管2は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、Zr
xSi
1−xO
2で構成された均一な層を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0067】
図14は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。蒸着反応器は、反応物などの注入および排出のための3つのユニットモジュールを備えることができる。各ユニットモジュールは、第1の部分、第2の部分、第3の部分、第5の部分および第6の部分を有することができる。不活性ガスを注入するための第4の部分は、ユニットモジュール間に配置してもよい。すなわち、蒸着反応器は、3つの第1の部分10、10’および10’’、3つの第2の部分20、20’および20’’、3つの第3の部分30、30’および30’’、3つの第4の部分40、40’および40’’、3つの第5の部分50、50’および50’’、ならびに3つの第6の部分60、60’および60’’を備えることができる。これらの部分のそれぞれの詳細な構成は、
図8を参照して説明した蒸着反応器の構成と同一であり、したがって、その詳細な説明は省略する。
【0068】
以下では、
図14に示す薄膜を形成する方法の実施形態を説明する。
【0069】
一実施形態において、第6の部分60に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、TEMAZrを原料前駆体として注入してもよく、また、第6の部分60’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、TEMASiを別の原料前駆体として注入してもよい。H
2OまたはO
3は反応前駆体として、第6の部分60’’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して注入してもよい。この場合に、Arガスなどの不活性ガスを、第1の部分10、10’および10’’のそれぞれに形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入してもよい。管2は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、Zr
xSi
1−xO
2製ので構成された均一な層を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0070】
別の実施形態において、第6の部分60および第6の部分60’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、TEMAZrを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10および第1の部分10’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TEMASiを別の原料前駆体として注入してもよい。H
2OまたはO
3は反応前駆体として、第6の部分60’’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、注入してもよい。管2は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器のまわりに一回転するたびに、Zr
xSi
1−xO
2で構成された均一な層を、管2の内表面上に形成させることができる。
【0071】
この場合に、H
2OもしくはO
3、またはArガスなどの不活性ガスを、第1の部分10’’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入してもよい。H
2OまたはO
3を、第1の部分10’’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入すれば、最終的に形成されるZr
xSi
1−xO
2層における酸素濃度を増大させることができる。他方、Arガスが、第1の部分10’’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入される場合には、最終的に形成されるZr
xSi
1−xO
2層内で酸素濃度を減少させることができる。
【0072】
前述の実施形態による蒸着反応器の3つのユニットモジュールを備える蒸着反応器に基づいて、薄膜を形成する方法を上述した。しかしながら、これは、説明のためだけに提示するものである。すなわち、前述の薄膜を形成する方法は、前述の蒸着反応器と異なる蒸着反応器を使用して実施してもよい。例えば、前述の薄膜を形成する方法は、
図10を参照して説明した実施形態による蒸着反応器の3つのユニットモジュールを備える蒸着反応器を使用して形成してもよい。
【0073】
図15は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。蒸着反応器は、その中に形成された穴7を有する本体6を備えることができる。例えば、蒸着反応器の本体6は、円形断面を有する穴7がその中に形成される円筒の形状を有してもよい。蒸着反応器は、穴7の表面上に配列される、反応物の注入および排出のための1つまたは複数のユニットモジュールをさらに備えることができる。ユニットモジュールのそれぞれは、第1の部分10、10’、10’’および10’’’、第2の部分20、20’、20’’および20’’’、ならびに第3の部分30、30’、30’’および30’’’を備えることができる。第4の部分40、40’、40’’および40’’’は、ユニットモジュール間に配置してもよい。
【0074】
薄膜を堆積させるための管2は、蒸着反応器の本体6の穴7の中に挿入してもよい。蒸着反応器内の第1の部分10、10’、10’’および10’’’、第2の部分20、20’、20’’および20’’’、第3の部分30、30’、30’’および30’’’、ならびに第4の部分40、40’、40’’および40’’’は管2の外壁に向かって配列されており、それによって、蒸着反応器と管2とが相対的に移動するにつれて、管2の外壁上に薄膜を形成させることができる。蒸着反応器の詳細な構成は、
図2から6の蒸着反応器と類似しており、したがって、簡単にするために、本明細書においては構成についての詳細な説明は省略する。
【0075】
以下では、
図15を参照して説明した実施形態による蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法について説明する。
【0076】
一例として、第1の部分10および第1の部分10’’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TMAを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’および第1の部分10’’’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、H
2OまたはO
3を反応前駆体として注入してもよい。この場合に、管は、約10から100rpmの回転速度で回転させてもよい。結果として、管2が蒸着反応器内で一回転するたびに、2つのAl
2O
3層を、管2の外壁上に形成させることができる。
【0077】
別の例として、第1の部分10に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TMAを原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、H
2OまたはO
3を反応前駆体として注入してもよい。また、第1の部分10’’内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して、TiCl
4を別の原料前駆体として注入してもよく、また、第1の部分10’’’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、NH
3を別の反応前駆体として注入してもよい。結果として、管2が蒸着反応器内で一回転するたびに、Al
2O
3層とTiN層とを交互に積層して得られる薄膜を、管2の外壁上に形成させることができる。
【0078】
図16は、
図15を参照して説明した実施形態による蒸着反応器を、プラズマを使用するように改変することによって得られた、蒸着反応器の横断面図である。プラズマを発生させるための装置は、蒸着反応器に含まれる、第1の部分10、10’、10’’および10’’’の一部または全部に形成してもよい。例えば、プラズマを発生させるための空隙13および13’’ならびにプラズマを発生させるための複数の電極14、14’’、15および15’’を、第1の部分10および第1の部分10’’にそれぞれ形成してもよい。この場合に、反応物のラジカルを、第1の部分10および第1の部分10’’に形成される1つまたは複数の第1の注入部を通して注入される反応物から、プラズマを使用して発生させてもよい。あるいは、不活性ガスのラジカルを、1つまたは複数の第1の注入部を通して注入される不活性ガスから、プラズマを使用して発生させてもよい。
【0079】
図17は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。蒸着反応器は、その中に形成された穴7を有する本体6を含むことができる。蒸着反応器は、穴7の表面に沿って配列される、反応物の注入および排出のための1つまたは複数のユニットモジュールをさらに含むことができる。ユニットモジュールのそれぞれは、第1の部分10、10’、10’’および10’’’、第2の部分20、20’、20’’および20’’’、第3の部分30、30’、30’’および30’’’、第5の部分50、50’、50’’および50’’’、ならびに第6の部分60、60’、60’’および60’’’を備えることができる。不活性ガスを注入するための第4の部分40、40’、40’’および40’’’は、ユニットモジュール間に配置してもよい。これらの部分のそれぞれの詳細な構成は、簡単にするために、本明細書では省略する。
【0080】
以下では、
図17を参照して説明した実施形態による蒸着反応器を使用して薄膜を形成する方法について説明する。
【0081】
一例として、TEMAZrとTEMASiの混合物を、第6の部分60および第6の部分60’’に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、原料前駆体として注入してもよい。この場合に、TEMAZrとTEMASiは先に互いに混合して、同一の第3の注入部を通して注入するか、またはTEMAZrおよびTEMASiをそれぞれ注入するための2種類の第3の注入部を設けて、第6の部分60および第6の部分60’’に形成された凹部内で互いに混合されるようにしてもよい。H
2OまたはO
3は、第6の部分60’および第6の部分60’’’の中に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、反応前駆体として注入してもよい。この場合に、Arガスなどの不活性ガスは、第1の部分10、10’、10’’および10’’’のそれぞれの中に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して注入してもよい。結果として、管2が蒸着反応器内で一回転するたびに、2つのZr
xSi
1−xO
2層を、管2の外壁上に形成させることができる。
【0082】
別の例として、TEMAZrとTEMASiの混合物を、第6の部分60内に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、原料前駆体として注入し、H
2OまたはO
3を、第6の部分60’内に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、反応前駆体として注入してもよい。一方で、TEMASiを、第6の部分60’’内に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、別の原料前駆体として注入し、NH
3を、第6の部分60’’’内に形成された1つまたは複数の第3の注入部を通して、別の反応前駆体として注入してもよい。結果として、管2が管2のまわりに一回転するたびに、Zr
xSi
1−xO
2層およびSiN層を有する薄膜を、蒸着反応器の外壁上に形成させることができる。
【0083】
図17を参照して説明した実施形態による蒸着反応器において、構成要素の配列は、構成要素が管2の内部に配列されるのではなく、管2の外部に配列されるという違いを除いて、
図1を参照して説明した前述の実施形態による蒸着反応器における配列と一致する。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、蒸着反応器は、前述の配列と異なる配列を有してもよい。例えば、蒸着反応器は、
図10を参照して説明した前述の実施形態による蒸着反応器における構成要素の配列に基づいて、管2の外部に構成要素を配列して構成される。
【0084】
図18は、さらに別の実施形態による蒸着反応器を含むことができる。
図18を参照すると、2種類の蒸着反応器を組み合わせることによって、管の内表面上と外壁上に同時に薄膜を形成することができる。すなわち、本実施形態による蒸着反応器は、2つの本体3および6を備えることができる。一方の本体3は、円筒の形状に形成して、薄膜が堆積される管2の中に少なくとも部分的に注入してもよい。一方、他方の本体6は穴7を有し、薄膜が堆積される管2を、その穴7の中に挿入してもよい。本体3および6のそれぞれに形成された、1つまたは複数の注入部および排出部を使用して、管2の内表面上および外壁上に薄膜を同時に形成してもよい。
【0085】
図19は、さらに別の実施形態による蒸着反応器を含むことができる。
図19を参照すると、この実施形態による蒸着反応器を使用して、フレキシブル基板8の上に薄膜を形成することができる。この場合、フレキシブル基板8は、ロールプラスチックフィルム、ステンレス鋼箔、グラファイト箔または可撓性を有する適当な部材とすることができる。フレキシブル基板8は、蒸着反応器に対して相対的に移動されるローラ9のまわりに部分的に巻回してもよい。
【0086】
蒸着反応器の本体6’は、ローラ9によって移送されるフレキシブル基板8を、少なくとも部分的に取り囲むように配置することができる。本体6’の断面は、円の一部分(例えば、半円)の形状を有してもよい。フレキシブル基板8が、本体6’に形成された第1の部分10、第2の部分20、第3の部分30、第4の部分40、第1の部分10’、第2の部分20’および第3の部分30’を連続的に通過する間に、薄膜を、フレキシブル基板8の上に形成することができる。このことは当業者であれば容易に理解できることであり、したがって、その詳細な説明は省略する。
【0087】
図20は、
図19を参照して説明した実施形態による蒸着反応器を、プラズマを使用するように改変することによって得られた、蒸着反応器の横断面図である。プラズマを発生させるための装置は、蒸着反応器に含まれる第1の部分10および10’の一方または両方に形成してもよい。例えば、プラズマを発生させるための空隙13’およびプラズマを発生させるための複数の電極14’および15’を、第1の部分10’内に形成してもよい。この場合には、反応物のラジカルを、第1の部分10’に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入される反応物から、プラズマを使用して発生させてもよい。あるいは、不活性ガスのラジカルを、1つまたは複数の第1の注入部を通して注入される不活性ガスから、プラズマを使用して発生させてもよい。
【0088】
図19および20に示す実施形態において、蒸着反応器のそれぞれは、第1の部分10、10’、第2の部分20、20’、第3の部分30、30’を備えるユニットモジュール間に第4の部分40を配設することによって構成されている。ここで、これらのユニットモジュールの配列は、説明のためだけに提示するものである。すなわち、これらのユニットモジュールは、本明細書において説明した実施形態のいずれか1つによる蒸着反応器内のユニットモジュールの配列に基づいて構成してもよい。
【0089】
例えば、
図8に示すように、ユニットモジュールのそれぞれは、第6の部分、第5の部分、第1の部分、第2の部分および第3の部分が連続的に接続された構造を有してもよい。あるいは、
図8に示すように、ユニットモジュールのそれぞれは、第1の部分、第2の部分、第3の部分、第5の部分および第6の部分が連続的に接続された構造を有してもよい。この場合に、プラズマを発生させるための空隙、およびプラズマを発生させるための複数の電極を、1つまたは複数の第1の部分、および1つまたは複数の第6の部分に形成してもよい。
【0090】
図21は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。この実施形態の蒸着反応器の本体3’は、フレキシブル基板8を移送するように構成することができる。例えば、本体3’は円筒の形状を有してもよく、フレキシブル基板8は、本体3’のまわりに巻回されている間に移送されるように構成してもよい。すなわち、蒸着反応器の本体3’は、フレキシブル基板8を移送するローラの役割を果たしてもよい。薄膜は、蒸着反応器内で、フレキシブル基板8が第4の部分40、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30を連続的に通過する間に、フレキシブル基板8の表面上に反応物を注入することによって形成してもよい。
【0091】
図22は、
図21を参照して説明した実施形態による蒸着反応器をプラズマを使用するように改変することによって得られる、蒸着反応器の横断面図である。プラズマを発生するための装置を、蒸着反応器の第1の部分10に形成してもよい。例えば、プラズマを発生させるための空隙13、およびプラズマを発生させるための複数の電極14および15を、第1の部分10に形成してもよい。この場合には、反応物のラジカルは、第1の部分10内に形成された1つまたは複数の第1の注入部を通して注入された反応物から、プラズマを使用して発生させてもよい。あるいは、不活性ガスのラジカルは、1つまたは複数の第1の注入部を通して注入された不活性ガスから、プラズマを使用して発生させてもよい。
【0092】
図21および22に示す実施形態において、蒸着反応器には、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30、ならびに第1の部分と隣接する第4の部分を有するユニットモジュールを備える。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。別の実施形態において、蒸着反応器は、第3の部分30に隣接して配置された、追加の第4の部分(図示せず)をさらに備えることができる。この場合には、不活性ガスを注入するための前方部分が、ユニットモジュールの両端に位置しているので、ユニットモジュールに対する大気環境の影響、および反応物の漏洩を最小化することができる。さらに別の実施形態において、蒸着反応器は第4の部分40を備えずに、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30のみを備えることができる。この場合には、反応物の物理吸収層はフレキシブル基板8上に部分的に残されるので、複数の単一原子層を含む、ナノレイヤー(nanolayer)をフレキシブル基板8の表面上に形成させてもよい。
【0093】
図21および22を参照して説明した実施形態において、蒸着反応器のユニットモジュールには、第1の部分10、第2の部分20および第3の部分30が配列されている。しかしながら、これは説明のためだけに提示するものである。すなわち、蒸着反応器のユニットモジュールは、本明細書において説明した実施形態のいずれかによる蒸着反応器のユニットモジュールに対応する構成を有してもよい。あるいは、蒸着反応器は、複数のユニットモジュールを備えることができる。
【0094】
図23は、さらに別の実施形態による、蒸着反応器の横断面図である。本発明の実施形態による2種類の蒸着反応器を組み合わせることによって、フレキシブル基板8の内表面上と外壁上に、薄膜を同時に形成してもよい。すなわち、この実施形態による蒸着反応器は、2つの本体3’および6’を備えることができる。一方の本体3’は、円筒の形状を有してもよく、薄膜が堆積されるフレキシブル基板8が本体3’のまわりに巻回されている間に、移動させてもよい。一方で、他方の本体6’は、穴を有する円筒の形状を有するか、または円筒の一部分の形状を有してもよい。本体3’は、本体6’の内表面上に配置され、フレキシブル基板8は、本体3’と本体6’との間の空間内で移動させてもよい。本体3’および6’のそれぞれの中に形成された、1つまたは複数の注入部および排出部を使用して、フレキシブル基板8の内表面上および外壁上に薄膜を同時に形成してもよい。
【0095】
図24Aは、一実施形態による、蒸着反応器の分解斜視図である。
図24Bは、
図24Aに示す蒸着反応器の縦断面図である。
図24Aおよび24Bは、
図21から23を参照して説明したように、フレキシブル基板を巻回して移送する本体を有する、蒸着反応器の図である。蒸着反応器は、反応物を注入する注入部、不活性ガスを注入する注入部、排出部などを有する本体3’、および本体3’の両端部分を覆うように配置されたカバー4’および5’を備えることができる。この場合、反応物および不活性ガスの注入用または排出用の1つまたは複数の開口を、一方向のカバー5’に形成してもよい。カバー4’および5’の厚さt
0を、約1から5mmとしてもよい。
【0096】
蒸着反応器は、本体3’の端部の両方を覆うカバー4’および5’の外側にそれぞれ配置されたエッジガイド4’’および5’’をさらに備えることができる。エッジガイド4’’および5’’は、フレキシブル基板を移送するように、フレキシブル基板の側面と接触させてもよい。エッジガイド4’’および5’’は、フレキシブル基板の本体3’およびカバー4’および5’よりも大きい直径を有するように構成してもよい。例えば、エッジガイド4’’および5’’の半径は、カバー4’および5’の半径と、約0.1から3mmの差r
0を有してもよい。結果として、エッジガイド4’’および5’’によって移送されるフレキシブル基板は、本体3’と接触していない間に、本体3’に対して相対的に移動させてもよい。
【0097】
図25は、一実施形態による蒸着反応器を含む、蒸着装置の概略図である。本実施形態による蒸着装置は、排出部110、入口部120および出口部130を有するチャンバ100内に、蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’を配列することによって構成することができる。フレキシブル基板8は、ローラ140によって移送されて、入口部120を通ってチャンバ100中に導入される。フレキシブル基板8は、チャンバ100内の蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’によって巻回されることによって移送される。この場合、第1の蒸着反応器1および第3の蒸着反応器1’’が、フレキシブル基板8の表面上に薄膜を堆積させるようにしてもよい。第2の蒸着反応器および第4の蒸着反応器1’および1’’’が、フレキシブル基板8の別の表面上に薄膜を堆積させるようにしてもよい。堆積が完了した後に、フレキシブル基板8を、出口部130を通ってチャンバ100の外部へ移動させてもよい。
【0098】
第1の蒸着反応器から第4の蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’の本体は、約100mmの直径としてもよい。第1の蒸着反応器から第4の蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’のそれぞれは、2つのユニットモジュールを備え、各ユニットモジュールは、TMAを原料前駆体として注入し、H
2Oを反応前駆体として注入するように構成してもよい。TMAおよび/またはH
2Oは、約10から100立法センチメートル毎分(sccm)のArバブリング法を使用して注入してもよい。チャンバ100内の温度は、約50から250℃とし、チャンバ100内の圧力は、約50ミリトル(0.66×10
−5MPa)から約1気圧(0.1013MPa)にしてもよい。フレキシブル基板8は、約0.5mmの厚さを有するポリカーボネート膜としてもよい。ローラ140によるフレキシブル基板8の移送速度は、毎分約100から1000mmとしてもよい。
【0099】
上記のように構成された蒸着装置を使用することによって、フレキシブル基板8が第1の蒸着反応器から第4の蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’を通過する間に、Al
2O
3膜とALD膜をそれぞれフレキシブル基板8の両表面に形成してもよい。この場合、Al
2O
3膜およびALD膜の成長率は、フレキシブル基板8がユニットモジュールを通過する間に、約0.8から1.5Åである。蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’のそれぞれが、2つのユニットモジュールを備えるので、薄膜の成長率は、フレキシブル基板8が蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’を通過する間に、約1.6から3Åである。
【0100】
図25に示すような蒸着装置を使用すれば、より小型のチャンバ100が、従来型のロールツーロール堆積システムのチャンバとして使用されるので、装置の設置面積を低減することができる。装置に含まれる蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’の数、および/または蒸着反応器1、1’、1’’および1’’’のそれぞれに含まれるユニットモジュールの数は増大し、その結果として、装置の設置面積を増大させることなく形成される薄膜の厚さを増大させることができる。堆積は、フレキシブル基板8の両方の表面上で実施されるので、フレキシブル基板8にかかる応力を低減することができる。また、蒸着反応器およびフレキシブル基板8は互いに緊密に固着されるので、低い真空度または大気圧力(ATM)のチャンバ100を使用することができる。
【0101】
図26は、別の実施形態による蒸着反応器を含む蒸着装置の概略図である。この蒸着装置は、互いに隣接して配置された複数のチャンバ100、200および300を備えることができる。第1のチャンバ100の出口部130を出るフレキシブル基板8は、第2のチャンバ200の入口部に入る。第2のチャンバ200の出口部230から出るフレキシブル基板8は、第3のチャンバ300の入口部320に入る。第1のチャンバ100および第3のチャンバ300内に配置された1つまたは複数の蒸着反応器においては、TMAを原料前駆体として注入し、H
2Oを反応前駆体として注入してもよい。他方、第2のチャンバ200内に配置された1つまたは複数の蒸着反応器においては、TEMATiを原料前駆体として注入し、H
2Oを反応前駆体として注入してもよい。
【0102】
結果として、フレキシブル基板8が第1のチャンバ100および第3のチャンバ300を通過する間に、フレキシブル基板8の両表面上にAl
2O
3層を形成することができる。他方、フレキシブル基板8が第2のチャンバ200を通過する間に、フレキシブル基板8の両表面上にTiO
2層を形成してもよい。すなわち、フレキシブル基板8が蒸着装置全体を通過する間に、Al
2O
3/TiO
2/Al
2O
3として構成されたナノスケールの積層膜を形成することができる。フレキシブル基板8が蒸着反応器の各ユニットモジュールを通過する間のAl
2O
3層の成長率は、約0.8から2.5Åとしてもよい。フレキシブル基板8が各蒸着反応器を通過する間のAl
2O
3層の成長率は、約1.6から5.0Åとしてもよい。一方で、フレキシブル基板8が蒸着反応器の各ユニットモジュールを通過する間のTiO
2層の成長率は、約1から5Åとしてもよい。フレキシブル基板8が各蒸着反応器を通過する間のAl
2O
3層の成長率は、約2から10Åとしてもよい。
【0103】
別の実施形態において、前述の実施形態による蒸着反応器を使用して、Alq
3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−hydroxyquinolinato)aluminum))層を形成してもよい。Alq
3層は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ装置などに使用される層としてもよい。Alq
3層を形成するのが望ましい場合には、蒸着装置のチャンバは、約100から350℃に加熱してもよい。例えば、チャンバの温度は約250℃にしてもよい。チャンバの壁が加熱されるので、分子凝縮(molecule condensation)を防止することができる。気相において堆積させようとする反応性分子は、液体供給システム(LDS)または昇華器(sublimer)を介して、チャンバを通って搬送ガス(例えば、アルゴン)で搬送される。チャンバの基礎圧力は約10(1.33×10
−3MPa)から4Torr(5.33×10
−4MPa)であり、チャンバの作動圧力は約10mTorr(1.33×10
−6MPa)から約1Torr(1.33×10
−4MPa)である。
【0104】
この実施形態による蒸着反応器を使用してAlq
3層を形成する工程は次のとおりである。最初に、シード分子層を、堆積させようとする基板の表面にTMAを注入することによって形成してもよい。TMAの注入時間は、蒸着反応器のパラメータおよび/または基板と蒸着反応器の相対移動速度を制御することによって、約10から50ミリ秒に調整してもよい。結果として、基板の表面上に、(CH
3)
2−Al−を共有結合させてもよい。
【0105】
その後に、シード分子層が形成された後に、基板上に8−ヒドロキシキノリン(C
9H
7NO)を注入してもよい。8−ヒドロキシキノリンの注入時間は、約20から100ミリ秒に調整してもよい。8−ヒドロキシキノリンの2つの分子が、シード分子の(CH
3)配位子(ligand)を置換して、基板の表面上にAl(C
9H
6NO)
2を形成する。結果として、基板の表面が(C
9H
6NO)で覆われる。表面は、Alq
3と同じ配位子のために、Alq
3と非常に親和性となる。余分の8−ヒドロキシキノリン分子は、不活性ガスを使用するスキミング工程によって除去してもよい。
【0106】
その後に、有機層を形成するためのAlq
3分子は、基板の表面に注入してもよい。Alq
3分子は、気相状態で注入してもよい。Alq
3分子の注入工程は、所望の厚さの層が得られるまで、反復して実施してもよい。その後に、形成された有機層をプラズマ中で後処理する工程が実施される。この場合、NH
3などから発生した遠隔プラズマを使用して、アミン基を、基板の表面上の反応基として形成してもよい。例えば、基板を、約10ミリ秒から1秒の間、NH
3遠隔プラズマに曝してもよい。
【0107】
その後に、TMAを、基板上に形成された有機層の表面上に注入してもよい。例えば、TMAの注入時間は、約10から50ミリ秒に調整してもよい。上記の工程は、1つまたは複数のAlq
3層を得るように、必要に応じて反復して実施してもよい。Alq
3層の形成に関係して、記述した工程およびパラメータは、説明のためだけに提示するものである。すなわち、Alq
3層の形成工程は、この明細書に記載されていない改変された実施形態によって実施してもよい。
【0108】
この工程を、本明細書においては、本発明の実施形態による蒸着反応器を使用して、管の内壁の曲面上、管の外壁上、フレキシブル基板の前面上、フレキシブル基板の背面上、またはフレキシブル基板の両面上に、形成される薄膜について記述して、例示的に説明した。しかしながら、本発明の実施形態による薄膜を形成するための蒸着反応器および方法を使用して堆積を実施することができる表面は、この明細書に記載されたものに限定されるものではなく、また、本発明の実施形態は、非平坦表面上の薄膜を可能にするように適用してもよい。
【0109】
本発明を、特定の例示的実施形態に関係して説明したが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の趣旨と範囲内に含まれる様々な改変および等価な構成ならびにそれらの均等物を範囲に含めるものとすることを理解されたい。