(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674805
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】波動エネルギー変換器および電力取り出しシステム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/18 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
F03B13/18
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-539859(P2012-539859)
(86)(22)【出願日】2009年11月23日
(65)【公表番号】特表2013-511651(P2013-511651A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】US2009006272
(87)【国際公開番号】WO2011062576
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2012年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501063427
【氏名又は名称】オーシャン パワー テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】エダー,ジェームス,イー.
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,デヴィット,ビー.
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−518024(JP,A)
【文献】
特開2009−121241(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/117631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/12 〜 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する振幅および周波数の波の動きを受ける水域内に配置するように意図される波動エネルギー変換器(WEC)であって、
波動と全体的に同位相で移動するように意図される第1の浮遊本体と、
前記第1の本体と全体的に位相が不一致で移動するように意図される第2の本体と、
前記第1の本体と前記第2の本体を一緒に、それらの間の相対的な動きを阻止するように、選択的にロックするためのブレーキシステムと、
前記第1の本体と前記第2の本体の間に連結される、それらの相対的な動きを電気エネルギーに変換するための電力取り出しデバイス(PTO)であって、
ラックとピニオンのうちの1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちの1つと連結され、前記ラックとピニオンのうちのもう1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちのもう1つと連結される、ラック・ピニオン装置を備える、電力取り出しデバイス(PTO)とを備え、
前記ピニオン装置が、ジェネレータを駆動するために前記ジェネレータに結合されるピニオン・ギアを含み、前記ジェネレータが前記波動の周波数より少なくとも1桁大きい周波数を有する電圧を生じさせるための多極デバイスである、波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項2】
前記ジェネレータがブラシレス永久磁石デバイスである、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項3】
前記ジェネレータがローターおよびステーターを含み、前記ローターが8つより多い磁極を含み、前記ステーターが前記波動の周波数より相当に大きな周波数の電圧信号を発生させるための複数の巻線を含み、前記ピニオン・ギアが前記ジェネレータの前記ローターに直接連結される、請求項2に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項4】
前記ピニオン・ギアおよび前記ジェネレータが、前記第1の本体と前記第2の本体のうちの1つに固定して取り付けられ機械的ハウジング内に搭載され、前記ラックが前記第1の本体と前記第2の本体のうちのもう1つに連結される、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項5】
前記ブレーキシステムが、前記ラック装置に結合される金属のフランジと、選択的に作動させられるカリパー・ブレーキとを含む、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項6】
前記ブレーキシステムが、電磁気ブレーキを与えるために前記ジェネレータの前記巻線を選択的に短絡させるための手段を含む、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項7】
変動する振幅および周波数の波の動きを受ける水域内に配置するように意図される波動エネルギー変換器(WEC)であって、
波動と全体的に同位相で移動するように意図される第1の浮遊本体と、
前記第1の本体と全体的に位相が不一致で移動するように意図される第2の本体と、
前記第1の本体と前記第2の本体の間に連結される、それらの相対的な動きを電気エネルギーに変換するための電力取り出しデバイス(PTO)であって、
ラックとピニオンのうちの1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちの1つと連結され、前記ラックとピニオンのうちのもう1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちのもう1つと連結される、ラック・ピニオン装置を備える、電力取り出しデバイス(PTO)とを備え、
前記ピニオン装置が、ジェネレータを駆動するために前記ジェネレータに結合されるピニオン・ギアを含み、前記ジェネレータが前記波動の周波数より少なくとも1桁大きい周波数を有する電圧を生じさせるための多極デバイスであって、
前記第1の本体が浮きであり、前記第2の本体が円材であり、前記PTOが前記円材内に配置され、前記浮きの移動が、前記円材内の開口部を通過し前記ピニオンに対する前記ラックの移動を生じさせるように前記ラックに連結されるスラスト・ロッドに連結され、従順な密封部が、海水が前記円材に入るのを遮断し、前記スラスト・ロッドの横方向の移動を可能にするように、前記スラスト・ロッドと前記円材の間に連結される、波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項8】
変動する振幅および周波数の波の動きを受ける水域内に配置するように意図される波動エネルギー変換器(WEC)であって、
波動と全体的に同位相で移動するように意図される第1の浮遊本体と、
前記第1の本体と全体的に位相が不一致で移動するように意図される第2の本体と、
前記第1の本体と前記第2の本体の間に連結される、それらの相対的な動きを電気エネルギーに変換するための電力取り出しデバイス(PTO)であって、
ラックとピニオンのうちの1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちの1つと連結され、前記ラックとピニオンのうちのもう1つが前記第1の本体と前記第2の本体のうちのもう1つと連結される、ラック・ピニオン装置を備える、電力取り出しデバイス(PTO)とを備え、
前記ピニオン装置が、ジェネレータを駆動するために前記ジェネレータに結合されるピニオン・ギアを含み、前記ジェネレータが前記波動の周波数より少なくとも1桁大きい周波数を有する電圧を生じさせるための多極デバイスであって、
前記第1の本体が浮きであり、前記第2の本体が円材であり、前記PTOが前記円材内に配置され、前記浮きの移動が、前記円材内の開口部を通過し、前記ピニオンに対する前記ラックの移動を生じさせるように前記ラック・ピニオン装置に連結されるように設計されるスラスト・ロッドに連結され、前記浮きの動きに起因する力の伝達をより効率的に、信頼性高く、可能にするように前記浮きと前記スラスト・ロッドの間に結合されるボール・ジョイントが含まれる、波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項9】
前記第1の本体が浮きであり、前記第2の本体が円材であり、前記PTOが前記円材内に配置され、前記浮きの移動が、前記ピニオンに対する前記ラックの移動を生じさせるように、前記円材内の開口部を通過するように設計されるスラスト・ロッドに連結され、前記ラックがラック支持アセンブリと前記ラック支持アセンブリから延びるフランジを含み、摩擦ブレーキが前記円材に対して前記浮きをロックし、その間の移動を阻止するように、前記フランジに選択的に適用される、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項10】
PTOが前記円材内に配置され、海水が前記PTOを収容する前記円材の部分内に入るのを防止するための従順な密封部が含まれ、力がより効率的に、信頼性高く伝達されるのを可能にするように、前記浮きの移動と関連する力が、ボール・ジョイントを介して前記ラック・ピニオン装置に連結される、請求項1に記載の波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項11】
波の動きを受ける水域内に配置するように意図される波動エネルギー変換器(WEC)であって、
(a)波動と同位相で移動する傾向のある浮きと、(b)前記浮きと位相が不一致で移動するように意図される円材と、(c)前記浮きと円材の相対的な力および動きを電気エネルギーに変換するために、前記浮きと円材の間に連結されるPTOと、(d)前記浮きと円材の間の動きを選択的に阻止するためのブレーキシステムとを含み、前記PTOが、
直線の往復動する力を伝達するように、前記浮きと円材の間の動きに応答するスラスト・ロッドであって、前記スラスト・ロッドが、前記浮きと前記円材の相対的な移動に応答してラック・アセンブリを前後に移動させるために前記歯付きのラック・アセンブリに連結され、ピニオン・ギアが前記ラック・アセンブリの直線の動きを回転の動きに変換するために前記ラック・アセンブリに係合可能に連結される、スラスト・ロッドと、
ジェネレータを駆動するためにシャフトに結合される前記ピニオン・ギアであって、前記ジェネレータが8つより多くの磁極を有するローターと、複数のコイルを有するステーターとを含み、前記シャフトが前記ローターおよびステーターのうちの1つに連結され、それを前記ローターおよびステーターのうちもう1つの周りに回転させ、前記コイル内に電気信号を生じさせるピニオン・ギアとを含む、波動エネルギー変換器(WEC)。
【請求項12】
最適なインピーダンス整合のために4象限2方向動作を可能にするように、制御ソフトウエアによって使用するための変位測定システムをさらに含む、請求項11に記載のWEC。
【請求項13】
前記ラック・ピニオン・システムが、専ら前記ラック装置と少なくとも1つのピニオン・ギアを含む、請求項11に記載のWEC。
【請求項14】
前記ジェネレータがブラシレス・トルク・ジェネレータである、請求項11に記載のWEC。
【請求項15】
前記ラック・ピニオン・システムが複数のピニオン・ギアを含み、前記ピニオン・ギアの各々がジェネレータに連結される、請求項11に記載のWEC。
【請求項16】
前記PTOが前記円材内に配置され、前記スラスト・ロッドが前記円材内の前記PTOから前記浮きまで延び、海水が前記PTOに到達するのを防止するための、前記円材とスラスト・ロッドの周りに形成される従順な密封部をさらに含み、前記ラック・アセンブリが、前記浮きに対する前記円材の移動を選択的に阻止するためのフランジ手段が結合されるラック支持部を含む、請求項11に記載のWEC。
【請求項17】
前記PTOが前記円材内に配置され、前記スラスト・ロッドが前記円材内の前記PTOから前記浮きまで延び、前記浮きの移動によって発生する前記力が、垂直荷重が前記PTOに伝達されるのを依然として可能にしながら、前記浮きが前記スラスト・ロッドに対して回転するのを可能にするように、ボール・ジョイントを介して前記スラスト・ロッドに伝達される、請求項11に記載のWEC。
【請求項18】
摩擦システムおよび磁気システムが含まれ、前記浮きと円材の間の動きを阻止するように選択的に有効にされる、請求項11に記載のWEC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波動エネルギー変換器(wave energy converter)(WEC)とともに使用するための電力取り出し(Power Take−Off)(PTO)装置に関し、特に往復動する直線の動きを用いる改善されたPTOシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、WECは、大洋の波動内に存在する機械的エネルギーを電気エネルギーまたは任意の他の適切な形態のエネルギーに変換するデバイスである。WECは多くの異なる形態を取ることができる。本発明は、波動エネルギーの動きを実質的に直線である往復動する動きに変換するWECとともに使用するのに極めて適している。
【0003】
図1は、PTOがジェネレータ/モータを駆動するための油圧システムを含む従来技術のWECを示す。
図1に示すWECは、2つの主要な構成部品、すなわちドーナツ形の浮き(1)と円筒形の円材(2)を含み、この浮き(1)は円材(2)の周りに配設される。この構成では、浮きは中立的に浮力があり、それによってその水位線がその高さのほぼ中間のところに実質的に心合わせされるように設計することができる。このシステムの水力学的な設計は、円材(2)は実質的に静止したままである、または少なくともその動的挙動がその慣性力によって支配され、一方浮き(1)は波動の動きに実質的に従う(すなわち、波動と全体的に同位相である)ようなものである。この水力学的な設計に加えて、この円材(2)は(
図1に示すように)海底にアンカー留めすることによって静止して保持することもでき、またはそれは、円材(2)の底部近くに取り付けられるヒーブ・プレート(heave plate)の助けにより相対的に静止して保持することもできる。
【0004】
浮き(1)と円材(2)の間のこの相対的な力および動きは、それらの間に結合されるPTO(10)を使用して電気エネルギーに変換される。
図1ではこのPTOは、電気エネルギーを発生させるためにシャフトを介してジェネレータに連結されるモータを含む油圧システムを含む。波動の相対的に低い周波数に起因して、対応する電気信号は非常に非効率である低い周波数のものになる傾向がある。この問題点を克服するために、生じる電気信号の周波数を増加させるために様々な歯車機構を導入することができる。しかし、知られた歯車機構は、かなりの保守と交換を必要とし、非効率であり信頼できなく傾向がある。
【0005】
知られたシステムに伴う他の問題点は、波動エネルギーの電気エネルギーへの効率的な、信頼性の高い変換に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
知られた問題点のうちの多くを克服し、効率的な、信頼性の高い方式で浮きと円材の相対的な力および動きを電気エネルギーに変換することができる、PTO装置を提供することが本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を実施する波動エネルギー変換器(WEC)は浮きおよび円材を含み、この浮きは、全体的に、波動と同位相で移動するように意図され、円材は、全体的に、浮きと位相が不一致で移動するように意図されている。波動に起因する浮きと円材の間の相対的な動きは直線の動きに変換され、電力取り出しデバイス(PTO)に加えられる力を発生させる。このPTOは、必ずしもその必要はないが、円材内に配置されるのが好ましい。すなわち、このPTOは円材の外に配置できるが、その場合は水の腐蝕性の作用を受けることになる。
【0008】
本発明を実施するPTOは、波動の周波数およびラック・ピニオン機構の基本的な動きに対して相対的に高い周波数の電気信号を発生させるように、高トルクの、多極の、通常8極より多い、永久磁石ジェネレータ(PMG)を駆動するラック・ピニオン機構を含む。本発明によれば、このジェネレータによって生じる電圧の周波数は、波動の周波数より少なくとも1桁大きくなる。これによって、回転速度およびPTOによって生じる電圧の周波数を増加させるための、ラック・ピニオン以外の歯車機構を必要としない、より信頼性の高い、効率的なPTOシステムの構築が可能となる。
【0009】
本発明の一態様によれば、このピニオンはジェネレータのシャフトに一体で結合され、このシャフトはジェネレータのローターに結合され、ジェネレータのローターを駆動する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、このラック・ピニオン機構は円材内に配置され、円材と浮きの間の相対的な動きに応答する、円材内の開口部を通過するスラスト(押し)・ロッドによって駆動される。開口部の部位には、円材内への海水の流入を阻止し、効率的な動作を確実にするために摩擦がほとんどなしにスラスト・ロッドが上下することができるように、従順な密封機構が円材とスラスト・ロッドの間に形成される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、組み合わせることができる出力を発生させる複数のジェネレータを、同時に、駆動するように、複数のピニオン・ギアをラックに沿って搭載することができる。
【0012】
加えて、極めて厳しい波動またはWECが修理点検すべきときなどの特定の条件下、浮きと円材の間の相対的な動きを選択的に阻止するためのブレーキ装置を設けることができる。この「ブレーキ」によって、ピニオン・ギアおよびジェネレータが動作可能な波動状況のみのためのサイズにすることが可能になる。このブレーキ装置は、摩擦ブレーキ(例えば、カリパー・ブレーキ)および/または電磁気ブレーキを含むことができる。
【0013】
さらに本発明を実施するWECは、異なる角度で加えられる力のより円滑な、より効率的な、信頼性の高い伝達を可能にするように、様々な移動部品の間に運動学的なリンケージ(例えば、1つまたは複数のボール・ジョイント)を含む。
【0014】
特定の一実施形態では、波動に起因する浮きと円材の間の相対的な動きは、その歯がピニオン・ギアの歯と係合するラックに対応する直線動きを付与するように、浮きに機械的に連結される押し(スラスト)・ロッドを駆動するために使用され、ピニオン・ギアは円材に対して静止して保持される。このラック・ピニオン機構は、(直接または増速ギアボックスを介してのいずれかで)直線の動きを回転の動きに変換する。その場合、このピニオン・ギアは、ブラシレス・トルク・モータ/ジェネレータのローターに直接連結される。ブラシを有するモータ/ジェネレータも使用できるが、このブラシは摩滅する傾向にあり、頻繁な交換を必要とする。
【0015】
本発明の代替えの実施形態では、このピニオン・ギア(または複数のギア)およびジェネレータ(または複数のジェネレータ)は、前後に(または上下に)移動でき、ラックが円材に対して固定して保持される間、それでもやはり自由に回転できるようにスラスト・ロッドに連結することができる。
【0016】
本発明を実施するWECでは、浮きは比較的粗いシステムを介してスラスト・ロッドに連結されるが、一方内部のラック・ピニオン機構は積極的な連結を増加させ、摩擦を減少させるように、より正確に設計される。
【0017】
縮尺どおりに描かれていない添付の図面では、同様な参照記号は同様な構成部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来技術の波動エネルギー変換器(WEC)の高度に簡略化された線図である。
【
図2】本発明を実施するために使用できる、WECの簡略化された横断面線図である。
【
図3A】本発明を実施するために、
図2のWECに使用できるラック・ピニオンのPTOの3つの簡略化された図である。
【
図3B】本発明を実施するために、
図2のWECに使用できるラック・ピニオンのPTOの3つの簡略化された図である。
【
図3C】本発明を実施するために、
図2のWECに使用できるラック・ピニオンのPTOの3つの簡略化された図である。
【
図4】海水が円材内に配置されるPTOに入るのを遮断するための密封装置の簡略化された図である。
【
図5】ジェネレータを駆動するピニオン・ギアを駆動するラック・アセンブリの追加の詳細を示す簡略化された図である。
【
図6A】本発明を実施するPTOに使用するための、相対的に高い周波数の電圧/電流出力を生じさせるための電気ジェネレータ/モータの線図である。
【
図6B】本発明を実施するPTOに使用するための、相対的に高い周波数の電圧/電流出力を生じさせるための電気ジェネレータ/モータの線図である。
【
図7】ジェネレータ出力の処理手続きを示すブロック線図である。
【
図8】ブレーキを与えるための巻線短絡の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2は、本発明を実施し、変動する振幅および周波数の波の動きを受ける水域内に配置するように意図されるWECを示す。このWECは、往復動する直線の動きを生じさせるのに適切な装置を含む。
図2に示すWECは、2つの主要な構成部品すなわち浮き1と円材2を含む。この浮きは、波動と全体的に同位相で移動するように設計され、円材は、静止している、または波動に対して全体的に位相が不一致で移動するように設計される。したがって、WECが位置決めされる水域内の波動に応答して、浮きと円材の間に相対的な直線の動きが存在する。
【0020】
図2に、鋼から作ることができるヒーブ・プレート3が、円材の底部の潜水した部分に取り付けられて示されている。このヒーブ・プレートは、相当な量の「追加された(added)」質量を円材に供給し、円材が水柱内で相対的に固定されたままであるのを可能にする。この「追加された」質量は、ヒーブ・プレート3を構成する鋼の質量に部分的にしか起因しない。それは、ヒーブ・プレート3を取り囲むはるかに多くの大量の容積の水にほとんど起因する。ヒーブ・プレートを取り囲むこの「追加された」質量の水は、この水は円材2が水柱に対して移動するためにヒーブ・プレートの周りを移動しなければならないので、円材2に効果的に加えられる。したがって、円材の有効な質量は増加し、その移動は、浮きの移動と位相が不一致となる。
【0021】
この浮きは、円材2内に配設されるPTOハウジング10に連結されるスラスト(押し)・ロッド5に固定して取り付けられるブリッジ構造体4に連結される。波が上下に移動するとき、この浮きは、静止したまたは位相が不一致で移動する浮きを伴って上下に移動する。波の動きに対応する、全体的に波の動きと同位相であるこの浮きの動きは、浮きと円材の間に基本的に結合されるPTOシステム10の指定される部分と連通するスラスト・ロッドの実質的に直線の(上/下)動きに形を変えられる。すなわち、PTOの(複数の)部分(例えば、ラック)は、浮きに結合され、浮きと一緒に移動し、PTOの(複数の)部分(例えば、ジェネレータのステーター)は、円材に結合され、円材が移動するとき移動する。
【0022】
円材に対する浮きの、より円滑な動きを与えるために、本発明を実施するWECは、
図2に示すように、浮きを円材に沿って案内するための外部軸受レール7と外部軸受パッド8とを含むことができる。
図2に、このPTOは円材2の内側に埋め込まれて示され、円材外層に嵌合し、円材外層内に収容されるように設計される。このPTOシステムは、厳しい海の環境を直接受けないように円材本体内に収容される。しかしこのPTOシステムは、他のシステムの考慮事項に合致するように、円材の外に配置することができる
【0023】
ブリッジ4からスラスト・ロッド5への、およびスラスト・ロッドからPTOへのより効率的な、信頼性の高い力の伝達をもたらすために、このWECはボール・ジョイント(例えば、6a、6b)を含む。したがって
図2において、ブリッジ4を駆動する浮きの移動は、ブリッジとロッドの間に結合される上側ボール・ジョイント6aを介してスラスト・ロッド5に付与される。このボール・ジョイント(6a)によって、浮きブリッジ(4)は、依然として垂直荷重をPTOに伝達するのが可能なままで、スラスト・ロッドに対して回転するのが可能になる。スラスト・ロッド5の上端部は上側ボール・ジョイント6aに連結されて示され、スラスト・ロッドの底端部は底部ボール・ジョイント6bに連結されて示されている。このスラスト・ロッドは、PTOを収容する円材の部分を密閉して密封するように設計される従順な密封部30を通過する。スラスト・ロッドの底端部は、
図3Aに示すように、ラック12およびPTO10の一部をなす関連する構成部品を(直接にまたは下側ボール・ジョイント6bを介して)駆動するように設計される。このボール・ジョイントによって、異なる角度で加えられる力の、より円滑な、より効率的な、信頼性の高いPTOへの伝達が可能になり、PTO内でより密着する精密軸受を使用するのが可能になる。
【0024】
本発明を実施するこのPTOシステム10は、直線の往復動する動きを電気エネルギーに変換するために
図3A、3Bおよび3Cに示す型式のラック・ピニオンの駆動列を使用することができる。スラスト・ロッド5は、ブリッジ装置4を介してそれが結合される浮き1によって前後に(または上下に)駆動される。このスラスト・ロッド5は、ブレーキ・ローター・フランジ23が結合されるラック支持部13の上に横たわる「歯付きの(toothed)」ラック・アセンブリ12を含むラック装置に結合される。このラック・アセンブリは、スラスト・ロッドの移動と歩調を合わせて移動する。このラック・アセンブリ12は、ピニオン・ギア16が中に配置されるPTOの機械的ハウジング11に沿って、ハウジング11を前後に通過し、ピニオン・ギア16はラック・アセンブリ12の前後する直線の動きの作用として回転する。したがって、直線の力およびの動きは、ブリッジ4とラック12の間に結合されるスラスト・ロッド5を介してPTOシステム10と連通する。次いでこのラック12の直線の力およびの動きは、ピニオン・ギア16がラックの歯と係合するとき、ピニオン・ギア16の使用によって回転トルクおよび回転の動きに変換される。PTO10のこの機械的な/フレームのハウジング11は、浮き1と円材2の間の全ての機械的反作用力を伝達し、PTOの機械的ハウジング11とラック12の間の相対的な直線の動きを有することができるように、円材2の本体に固定して結合される。このPTOハウジング11は、浮き1と円材2の間を連通される荷重および反作用力に耐えるように、十分な厚さ(例えば1インチ)の金属(または任意の他の適切な材料)から構築することができる。PTOのフレーム11は、溶接後機械加工される鋼のパネルから形成することができる。別法として、このPTOフレームは、性能を犠牲にすることなく、重量とコストの改善の両方をもたらすボルトで一緒に締結される構造体であることもできる。このラック・アセンブリとPTOフレーム11および取り付けられた構成部品の質量は、浮き浮力計算および円材浮力計算で説明される。
【0025】
このラック12は、複数のラック・セグメントから形成することができる。ラックの長さおよびその幅は、円材の外層の内側寸法に適合する広い範囲の値を有することができる。ラック12の単位長さ当たりの歯の数は、ジェネレータを駆動する、対応するピニオン・ギア16に適合するように成される。このラック・セグメントは、重量を低く保持しながら必要とされる剛性を与える任意の適切な材料(例えば、アルミニウム)から作られる箱のようなラック支持アセンブリ13(
図3Cおよび5参照)に、ラック支持アセンブリ13の上に搭載することができる。直線軸受が、ピニオン・ギア16を通り越えてラック12を正確に案内する。このキャリッジ軸受は、ラック・アセンブリに対する直線の案内部を提供する。これらの直線軸受は、特別に成形された鋼レール18とこのレール上に乗る対合するセットの直線軸受のキャリッジ・ブロック19から構成される。これらの軸受レール(
図3Aおよび3C参照)は、ラック支持アセンブリ13の下側に搭載され、キャリッジ・ブロックはPTOハウジング11に対して固定される。複数のピニオン・ギアを含むラック・ピニオンPTOは、ラックの歯とピニオン・ギアの歯の間の正確な位置合わせを必要とする。直線軸受とレール(18、19)のセットが、ピニオン・ギア16によって見られる軸外の力を防止し、所要の正確性のラック−ギア界面を維持し、最終的に信頼性の高い、効率的な、長寿命の動作を確実にする。図に示すように、ピニオン・ギア16を固定するのに加えて、ラック・アセンブリ12は1対の成形されたレール直線軸受18、19によって案内される。この成形されたレール18は、ラック・アセンブリ12に直接取り付けられ、一方この成形されたレールの上に乗る軸受キャリッジは、PTOハウジング11に取り付けられる。このようにすると、ラック・アセンブリに加えられる不慮の横方向の力は反動を受け、純粋な直線の動きをラック・アセンブリ12に伝達することができる。
【0026】
ラックおよび関連する構成部品を自動的に潤滑するための手段(図示せず)を設けることができる。
【0027】
図3Aおよび3Bは、2つの対応するジェネレータ(40a、40b)を駆動するために使用される2つのピニオン・ギア(16a、16b)を示す。これらのピニオン・ギアは、ラックの歯に適合する数(例えば20)の歯を有するように設計される。これらのピニオン・ギア16は、ジェネレータのローターを駆動し、その回転の動きが回転軸受14によって支持されるモータ/ジェネレータ・シャフト15に固定して結合される。したがって、このモータ・シャフト15は、単一のピニオン・ギア16内に一体化される(
図3A、3B、3Cおよび5参照)。一体化されるピニオン16とシャフト15の組合せは、ピニオン・ギアとモータ・シャフトの間の高トルク連結をなくす。
【0028】
2つのジェネレータ(40a、40b)がPTOハウジング11内に配置されて示されているが、スペースが許す場合、より多くの(またはより少ない)ジェネレータを使用し、PTO内に配置することができる。本発明を実施するのに使用するための各モータ/ジェネレータ40の構造および動作は、
図5、6Aおよび6Bを参照して最もよく説明される。ジェネレータ40は、PTOフレームに固定して結合することができるステーター部分42と、ピニオン・ギア16によって駆動されるシャフト15に固定して結合されるローター部分41とを含む。このローター部分は、ローターの周囲に沿って配設される多数の(例えば80、またはそれより多い)N極−S極の磁石の対44を含み、ステーター部分はステーターの周囲に沿ってやはり配設される同様な多数のコイル45を含む。この多数(例えば、80)の極(N−S磁石の対)は、ジェネレータによって発生する電圧信号の周波数を波動の周波数よりはるかに高くすることができる。
【0029】
このステーター/ロータージェネレータの設計は、回転速度および出力信号の周波数を増加させるためにピニオン・ギアに連結されるギアボックスの必要性をなくす。ギアボックスは有用な機能を果たすが、WECシステムでは、それらの使用は、慣性力、磨耗および亀裂、交換の困難性、およびシステムの信頼性および効率の減少のために問題がある。
【0030】
例えば一実施形態では、ラック・ピニオン機構の直線の動きは、浮きと円材の間の1秒当たり1メートルの相対的な移動に応答して1秒当たり約2.6回転で(ピニオン・ギアに連結される)ローターを回転させ、1秒当たり約104サイクルの周波数を有するAC電圧を生じさせる。
【0031】
本発明で使用される、提案されるジェネレータは「トルクモータ」と呼ぶことができる。トルクモータは従来型のブラシレスdc永久磁石モータ/ジェネレータの原理と同一の原理で動作するが、このトルクモータは、従来型のモータ/ジェネレータより5から10倍多くの磁極の対を通常有する。これは、所与のシャフト速度に対してトルクモータから発生する電気周波数は従来型のモータの電気周波数の5から10倍になることを意味する。用語「トルク」モータは、所与の電力レベルに対してトルクモータは従来型のモータのトルクの約5〜10倍で動作することから生じている。
【0032】
最適な機械的から電気的への変換のための電気周波数は、トルクモータおよび従来型のモータに対して同様であるので、最適回転速度はブラシレスモータと比較してトルクモータに対して5から10倍より低くなる。直線の動きの入力最大速度は1m/秒の範囲内に固定され、直線の動きを最適速度(約1500RPM)まで変換するために単段のピニオン・ギアを使用することは実用的でないので、従来型のモータと一緒に増速ギアボックスを使用しなければならない。したがって、このトルクモータは、ギアボックスの助けなしで同じ最適な効率を達成することができる。
【0033】
図を参照すると、このステーター部分42は、PTOハウジング11に堅く結合される外側シェル43を有することに留意されたい。このシェル43は、ステーター・サブアセンブリのための外側冷却ジャケットを形成することができる。このジェネレータ/モータ・ステーター・サブアセンブリは、外側円周上に水冷却通路(図示せず)を含むことができる。ローター・サブアセンブリ上の小さな「ウィンド・スクープ(wind scoop)」(やはり図示せず)が、ジェネレータ内の空気の交換を介してローターに冷却をもたらす。
【0034】
言及したように、各ジェネレータ40のローター部分41は、ラック12の移動に応答するピニオン・ギア16によって駆動される、シャフト15の移動によって駆動させられる(回転させられる)。このシャフト15は、やはり回転軸受14内に終端し、回転軸受14によって支持され、これによって直線の反作用力が円材2と連通する経路を提供しながら、ジェネレータ・ローターの円滑な回転が可能になる。
図6Aに対応する
図6Bは、ジェネレータ/モータ40によって発生する電圧信号の有効な周波数を増加させるために使用される、多数の極およびコイルを示す巻線および磁石の簡略化した概略図である。
【0035】
複数のピニオン・ギア(例えば、16a、16b)がラック12の上方に位置決めされ、ラックの前後への移動に応答して回る(回転する)ようにさせられる。この結果、ラックの直線の機械的動きはピニオン・ギア16の回転の動きに変換される。ピニオン・ギアおよびそれらのシャフトの回転速度は、ラックとのそれらのギア比に基づく。各ピニオン・ギア16にブラシレスDCトルクモータ/ジェネレータ40のローター部分41が取り付けられる。直線の力および動きはラックに、トルクモータ/ジェネレータによって与えられる方向と逆である方向に、浮き1と円材2の相互作用を介して加えられる。
【0036】
例えば、
図6Aに示すように、下方に移動する浮き1に応答して、スラスト・ロッド5は(垂直に)下方に移動し、ラック12は下方に移動し、ピニオン・ギアを時計回りの方向に回転させる。ピニオン・ギアのシャフトは、ジェネレータのローターに固定して堅く結合され、磁石を時計回りの方向に回転させる。磁石44が回転するときそれらは、PTOハウジング11を介して円材2に堅く結合されるステーター部分42に沿って分布される、ステーター・コイル45内に電圧を発生させる。本発明を実施するシステムでは、
図6Aおよび6Bに示すように、ローターおよびステーターは、コイル内に発生する電圧信号の周波数が確実にラックの公称の移動(速度)に対しいくらかの値より高くなるように形成できることが重要である。
【0037】
同様に、上方に移動する浮き1に応答してスラスト・ロッド5は上方に(垂直に)移動し、ラック12も上方に移動し、ピニオン・ギアを反時計周りの方向に回転させる。ピニオン・ギアのシャフトは、ジェネレータのローターに固定して堅く結合され、磁石を反時計周りの方向に回転させる。磁石44が回転するときそれらは、PTOハウジング11を介して円材2に堅く結合されるステーター42に沿って分布される、ステーター・コイル45内に電圧を発生させる。すでに言及したように、本発明を実施するシステムでは、
図6Aおよび6Bに示すように、ローターおよびステーターは、コイル内に発生する電圧信号の周波数が確実にラックの公称の移動(速度)に対しいくらかの値より高くなるように形成できることが重要である。この開示される装置は、ジェネレータ要素が低速のブラシレスDCトルクモータ/ジェネレータであることに、以前の実施形態より優れた利点を有する。WECデバイスに対して、直線速度は通常1秒当たり1から2メートルの範囲内にあり、力は500kNにまでなる場合がある。これらの高い力は、通常約150mmの大きなピッチ円直径を有するピニオン・ギアを必要とする。この大きなピッチ円直径のところでは、モータの回転速度は、127から250RPMにしかならない。これらの低い回転速度のところでは、従来型の高速ブラシレスDCモータは極めて非効率である。従来は、約10:1のギア比を有するギアボックスが、ジェネレータによって見られる回転速度を増加させるためにピニオン・ギアとジェネレータの間に使用されたであろう。これらのギアボックスは2つの主要な欠点、すなわちWECの効率および信頼性の両方を低下させる欠点を有する。このギアボックスをなくすことによって、WEC・PTOの効率および信頼性は相当に増大する。
【0038】
図7は、各ジェネレータコイルの出力が整流器に供給され、整流器の出力がDC電圧を形成するように平坦化され、キャパシタ・バンク内に集められることを示す簡略化したブロック線図である。次いでこのキャパシタ・バンクからの出力は、ケーブルを介して電力網に連結できるAC電圧を生じさせるようにACインバーターに連結される。
【0039】
所定の解像度(例えば、0.1mm)の直線位置センサ51(
図3A参照)を、ブイのデータ取得および制御システム(図示せず)に軌道位置を提供するためにラックに沿って搭載することができる。この直線位置センサ51は、ラック・アセンブリ13に取り付けることができる第1の部分51aと、PTOフレーム11に取り付けることができる第2の部分51bとを含む。このセンサの目的は、浮き1と円材2の間の相対的な動きを検出することである。この情報は、PTOのための適切な力を設定するためにPTO制御システム(図示せず)によって使用することができる。この構成によって、最適なインピーダンス整合アルゴリズムを使用し、入射する大洋の波動から最大エネルギーを抽出することが可能になる。
【0040】
この開示される装置は、選ばれた適応インピーダンス整合アルゴリズムと一緒に使用する能力も有する。このPTOは、機械的クラッチ、アキュムレータ等の助けなしで、直接的に2方向の直線力および動きを発電要素に連結するので、このPTOはトルク−速度平面の全ての4つの象限内で動作するのが可能になる。すなわちこのPTOは、両方の方向でジェネレータならびにモータの両方として機能することができる。このPTOはほとんど常にジェネレータとして動作するが、モータとして働く象限内への短時間の偏位は、全体的な電力出力をそのような形態によって改善することができることが示されてきている。
【0041】
インピーダンス整合のいくつかの形態を実施するために、浮きと円材の間の相対的な位置および速度を検知することが必要であり、この情報をWECの機内搭載の制御コンピュータ(図示せず)に供給する必要がある。(
図3Aに示すセンサ51a、51bなどの)直線位置センサを使用することができる。この直線位置センサは、光電子エンコーダー、磁気エンコーダーおよび紐ベースのポテンショメータを含む、磁歪型式または任意の他の適切な型式であることができる。
【0042】
機械的密封部30(以下で論じる、
図2、3Aおよび4参照)が、海水が円材筺体内に入り、PTOに悪影響を及ぼすのを防止するためにスラスト・ロッド(5)の回りの頂部のところに配設される。
図4は、スラスト・ロッド(5)が摩擦がほとんどなしで前後に(上下に、かつある角度で横方向に)移動するのを可能にしながら、ラック・ピニオン・アセンブリが海水によって悪影響を及ぼされることから隔離することができる、密封部30を示す。この密封部は、スラスト・ロッドと円材内のスラスト・ロッドのための開口部の周りに形成され、円材から上向きに延び、カラー(32)を形成する従順なゴムブーツ(31)を含み、このゴムブーツは、ゴムブーツとスラスト・ロッドの間で密封ハウジングの周りに配置される密封材料を有する直線密封ハウジングとして機能する。この従順なブーツ(31)によって、ラック・アセンブリの動きを案内する直線軸受の向きと比べた、浮きおよび円材の外部直線軸受の位置ずれおよび公差によって生じるかなりの横方向の(すなわちスラスト軸に対して垂線の)動きが可能になる。ブーツ(31)およびボール・ジョイント(6a)のこの従順さは、密封部によって見られる横方向の反作用力を減少させることによって、密封部(30)の寿命を延長させるのを助ける。この密封部(30)は、海水によって加えられる圧力より上の圧力に維持される密封材料(33)を含み、その結果海水の円材内への進入を防止する。過剰な密封材料(34)を収容し、ホースまたはパイプを介して密封パッケージに接続される貯蔵器が、密封材料が消費されるときそれを補充する。
【0043】
浮きと円材の間の相対的な動きは、電力取り出し部の過剰なストローク、機械的な端部停止部のWEC機器に対する衝突および/または損傷を防止するために、制御し、制限することができる。円材と浮きを一緒に選択的にロックするための機構は、「ブレーキローター(brake rotor)」と称される鋼プレート、またはフランジ23を含む(
図3A、3C参照)。1インチ厚さのプレートであり得るこのブレーキローター23は、ラック支持アセンブリ13の下側(ラック12が取り付けられる側と反対の側)に取り付けられ、直交して延びる。このブレーキローター23は、カリパー・ブレーキ・アセンブリ20によってクランプすることができ、それでそれは「直線の」ブレーキ「ローター」として使用できる。ばねで荷重の掛けられる、油圧的に開放されるカリパー・ブレーキ・アセンブリ20(
図3A、3C参照)は、ラック・アセンブリ12が荒波または周期的な保守の事象で円材2に対して移動できないように、PTOハウジング11に取り付けられる。このカリパー21は、ラック・アセンブリ12に固定して取り付けられる直線ブレーキ・フィンまたは「ローター」(23)上を締め付けるブレーキパッド(22)を介してブレーキ力を加える。このカリパー・ブレーキ・アセンブリは基本的に摩擦ブレーキである。これに加えてまたは替わりに電磁気ブレーキを使用できることを理解されたい。
【0044】
図3Aおよび3Cを参照して説明できるように、カリパー・ブレーキは浮きと円材の間の動きを制限するように、厳しい嵐の条件下、またはブイの保守、設置/復旧中選択的に適用することができる。このカリパー・ブレーキは、カリパー21と、ラック12が上に搭載されるラック支持部13に取り付けられたブレーキローター23を圧し、それをクランプするように作動させられるブレーキパッド22とを含む。このカリパー・ブレーキはクランプ力を加え、比較的高い摩擦係数を有する。一実施形態では、このカリパー・ブレーキは、通常ロックされる。油圧動力ユニットがロック解除するための圧力を供給する。このブレーキは以下の条件、すなわち1)高波状態、2)低い波動状態、3)保守、4)電力の非同期損失、および5)油圧圧力の不慮の喪失の下でロックする。別法として、それは通常ロック解除され、特定の条件の下でロックすることができる。
【0045】
極めて厳しい条件の下で、このカリパー・ブレーキは、浮きと円材の間の動きを防止するための十分な保持力を有さない可能性がある。この条件が生じるとき(すなわち、カリパー・ブレーキが滑りを許容するとき)、浮きと円材の間の相対的な動きを制限するために、
図8に示すように、ジェネレータの巻線は追加のブレーキを与えるように指令可能な接触器によって短絡させることができる。
【0046】
通常は、浮きと円材の間の相対的な変位、したがってPTOデバイスのストロークは、1つまたは複数のジェネレータによって供給される逆トルクを制御することによって制御することができる。ジェネレータのトルクは、ジェネレータからの/ジェネレータへの電流を調節する「能動整流器(active rectifier)」または「駆動(drive)」によって制御することができる。荒海の条件の下では、このジェネレータの駆動はジェネレータ電流、したがってその逆トルクの十分な制御を発揮するための十分な電流処理能力を有さない可能性がある。そのような場合、(複数の)ジェネレータの電流、およびそれらによって供給される逆トルクは、ジェネレータの外の構成部品でジェネレータの巻線を短絡させることによって増加させることができる。外部短絡は、PTOに対して最大量の受動的ブレーキを与える。いくつかの場合、このジェネレータのブレーキ能力を制限するのが望ましい可能性がある。この場合は、ジェネレータ巻線は、
図8に示すように、低インピーダンスの抵抗器(例えば、47)に結合することができる。
図8では、選択に有効にされる接触器スイッチ46が、ジェネレータ40の出力の両端で直列に抵抗器47と結合される。抵抗器47の抵抗の値を減少させると、電流および動作のブレーキ能力は増加する。
【0047】
上記で説明したように、浮きと円材の相対的な動きは、「駆動」を使用してジェネレータの電流および逆トルクを調節することによって能動的に、またはジェネレータの巻線を外部的に短絡することによって受動的に抑制することができる。動き制限のこれらの手段を使用して、PTO構成部品(例えばピニオン・ギア、ラック)は、結果として得られる力を処理するようなサイズになるに違いない。嵐の力は、しばしば通常の動作可能な力より数桁高くなる。ラック・ピニオンの構成部品のサイズおよびコストを妥当なレベルに維持するために、ラック・ピニオン構成部品を(嵐の間に見られるずっとより高い力ではなく)最大の動作可能な力のためのみのサイズにすることが有利である。したがって、浮きと円材の間の相対的な動きを停止される何らかの他の手段を有することが必要である可能性がある。
【0048】
したがって、本発明を実施するWECは、以下の機構、すなわち
1−多極トルクモータ/ジェネレータを駆動するためのラック・ピニオンを使用するPTOと、
2−ジェネレータのローターに結合されるシャフトに一体に結合されるピニオン・ギアと、
3−より効率的に力を伝達するための運動学的なリンケージ・システムと、
4−従順なフローティング直線密封部と、
5−摩擦ブレーキと、
6−電磁気ブレーキと、
7−インピーダンス整合および他の任務に使用するための(複数の)位置センサとのうちの少なくとも1つを含むことができることが示されてきた。