(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674837
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】流路の上部が開放した切削液流路を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-32289(P2013-32289)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-161925(P2014-161925A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2014年3月26日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】稲口 雄三
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭46−016866(JP,Y1)
【文献】
特開昭61−004644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工空間である機械内部を外部から隔離するカバーを有し、主軸に装着された工具とテーブルに設置されたワークとの間で相対移動を行なわせワークを加工する工作機械において、
前記機械内部に配置され、加工によって飛散した切粉が堆積する前記機械内部の所定個所に切削液を供給する側部を備えた切削液流路を備え、
前記切削液流路の上部が流路方向に亘って開放されており、前記切削液供給流路の側部から溢れ出た切削液、および前記切削液供給流路の端部から流出した切削液を前記所定箇所に供給していることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において、機械を覆うカバー内部に切削液を供給する流路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、加工中に発生した切粉が加工領域を覆っている板金カバーの内部もしくはその他のカバー部品の表面に付着及び堆積したりする。工作機械を正常に継続して使用するためには切粉を除去する必要があるが、この際に切削液を使用して切粉を洗い流し、切削液供給装置に回収する方法が一般的である。従来技術として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示される技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−329741号公報
【特許文献2】特許第4022510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、機械の内部に切削液を供給するための角パイプを設置しているため、この角パイプの上面部に切粉が堆積する問題が有る。又、特許文献2の技術は特許文献1の問題を解決しているものの、流体を供給する流路を機械を覆っているカバーの外側に設けているため、構造が複雑になってコストアップと、機械の外観が損なわれる点に改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、構造が簡単で、コストアップを避けることができ、機械の外観を損なうことのない切削液流路を備えた工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明は、加工空間である機械内部を外部から隔離するカバーを有し、主軸に装着された工具とテーブルに設置されたワークとの間で相対移動を行なわせワークを加工する工作機械において、前記機械内部に配置され
、加工によって飛散した切粉が堆積する前記機械内部の所定個所に切削液を供給する
側部を備えた切削液流路を備え、前記切削液流路の上部が流路方向に亘って開放されて
おり、前記切削液供給流路の側部から溢れ出た切削液、および前記切削液供給流路の端部から流出した切削液を前記所定箇所に供給していることを特徴とする工作機械である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、構造が簡単で、コストアップを避けることができ、機械の外観を損なうことのない切削液流路を備えた工作機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明に用いられる切削液流路の断面形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は工作機械の上面模式図である。
図2は工作機械の正面模式図である。
図3は本発明に用いられる切削液流路の断面形状を説明する図である。
【0010】
工作機械1は、工作機械の加工空間を外部から遮蔽して隔離するカバー10を備えている。カバー10に覆われた加工空間には、図示省略したベッドとサドルの上にテーブル7が配設されている。テーブル7上に加工されるワーク20が載置され、主軸8に取り付けられた工具9によってワーク20の加工がなされる。工具9とテーブル7とを相対的に移動させることで、ワーク20に加工を行うことができる。
【0011】
工作機械1は、工作機械の加工空間内においてワークを加工する際に発生する切粉を、カバー10で覆われた加工空間である機械内部から外部に排出する機構として、液体をカバー10内の加工空間に供給する切削液供給装置2を備えている。切削液供給装置2は、クリーン槽12、ダーティ槽11、切削液供給ポンプ3、切削液を機械内部へ導く切削液供給流路4、機械内部に配設され上部が開放した切削液供給流路5を有する。
【0012】
切削液供給流路4は従来と同様の配管によって形成される。上部が開放した切削液供給流路5は、流路の上部が開放された断面形状になっている(
図3参照)。切削液供給流路4を介して切削液供給ポンプ3から供給された切削液は、上部が開放した切削液供給流路5の中を通り、カバー10の内部である機械内部の所定の箇所に流れ出す形態をとる。符号30は切削液供給流路4から流出し上部が開放した切削液供給流路5に流入する切削液、符号32は上部が開放した切削液供給流路の側部から溢れ出した切削液、符号34は上部が開放した切削液供給流路の端部から流出した切削液を表している。
【0013】
この切削液の流れによってカバー10の内部である機械内部から除去された切粉40は、切削液と一緒に切削液排出流路6を通過し、切削液供給装置2のダーティ槽11に回収される。ダーティ槽11に回収された切粉を含む切削液は図示しない浄化手段によって切粉を除去された後、クリーン槽12に流入する。
【0014】
上部が開放した切削液供給流路5について説明する。上部が開放した切削液供給流路5は、切削液供給流路4から供給される切削液を、カバー10によって隔離された機械内部の所定個所に導く手段である。上部が開放した切削液供給流路5は、
図1,
図2に示されるように、水平に機械内部に配置されたときに、上部が開放するように、流路方向に亘って開放した断面形状(つまり、断面が閉曲線で囲まれていない形状)を有する。
図3に上部が開放した切削液供給流路5の断面形状例を図示する。
【0015】
なお、上部が開放した切削液供給流路5は、全長に亘って上部が開放する断面形状とする必要はなく、切粉が降りかからない個所は開放しなくてもよい。また、上部が開放した切削液供給流路の端部5aは壁状に形成してもよいし、開放してもよい。
【0016】
ワークを加工する際に発生した切粉40が上部が開放した切削液供給流路5の上に落下したとしても、上部が開放した切削液供給流路5の流路の上部が開放されているため、切削液供給装置2から供給される切削液と一緒に開放部分から溢れ出して所定箇所に供給される。これによって、従来技術で問題となっていた機械内部に切削液を供給する手段自体に切粉が堆積することがなくなる。
【0017】
そして、切削液の流れによって、機械内部であるカバー内部やその他部品から除去された切粉40と一緒に切削液は、切削液排出流路6を経て切削液供給装置2に回収される。又、切削液を供給する際、閉じた流路より圧損が減少するので、より大量の切削液を供給することができ、切削液が流路から溢れても、カバーの中に落下するのみで、問題とはならない。さらに、上部が開放した切削液排出流路6は簡素な形状とすることができるので、コストアップを低く抑えることが可能である。又、カバーの内部に流路が設置されるため、カバーの外側に流路が設置されることにより、外観上の見栄えが悪くなることを回避することができる。この流路はカバー内部の両側もしくは片側に設置することが可能である。又、流路の上部が開放した断面形状は、
図3の形状例で示される形状に限定するものではなく、これら以外の様々な形状を取ることが可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 工作機械
2 切削液供給装置
3 切削液供給ポンプ
4 切削液供給流路
5 上部が開放した切削液供給流路
5a 上部が開放した切削液供給流路の端部
6 切削液排出流路
7 テーブル
8 主軸
9 工具
10 カバー
11 ダーティ槽
12 クリーン槽
20 ワーク
30 切削液
32 上部が開放した切削液供給流路の側部から溢れ出した切削液
34 上部が開放した切削液供給流路の端部から流出した切削液
40 切粉