特許第5674928号(P5674928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5674928-圧延ラインおよびそれに関する方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674928
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】圧延ラインおよびそれに関する方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/46 20060101AFI20150205BHJP
   B21B 1/34 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B21B1/46 B
   B21B1/34
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-514794(P2013-514794)
(86)(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公表番号】特表2013-528500(P2013-528500A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】IB2011001319
(87)【国際公開番号】WO2011158090
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年2月7日
(31)【優先権主張番号】UD2010A000116
(32)【優先日】2010年6月14日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510152666
【氏名又は名称】ダニエリ アンド シー.オフィス メカニケ エスピーエー
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
(74)【代理人】
【識別番号】100117042
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 正志
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】ベネデッティ ジャンピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】ボビグ パオロ
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−185605(JP,A)
【文献】 特開平07−323324(JP,A)
【文献】 特開平08−206704(JP,A)
【文献】 特開平11−315325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00− 1/46
B21C 45/00−49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板製品(111)を製造するための圧延ラインであって、
薄鋼片(11)を連続鋳造するのに適した鋳造機(12)と、
保温および温度均一化ユニット(18)と、
前記保温および温度均一化ユニット(18)の下流に設けられ、少なくともステッケルリバース型のダブル圧延スタンド(23a、23b)を備える圧延ユニット(22)とを備え、
前記圧延ラインは、前記鋳造機(12)の出口直ぐに直接接続され、前記保温および温度均一化ユニット(18)の上流に設けられ、凝固直後の前記薄鋼片(11)を減厚するのに適した、少なくとも形成スタンドまたは粗圧延スタンド(20)とを備え、
前記形成スタンドまたは粗圧延スタンド(20)は、少なくとも前記仕上げ板製品の厚さ、幅、及び材料の種類に応じて、 約30%から約65%の間で、前記薄鋼片(11)の厚さを調整可能に減厚するように構成され、
前記圧延ユニット(22)は、前記形成スタンドまたは圧延スタンド(20)から来る前記圧延製品の厚さを、前記ダブル圧延スタンド(23a、23b)を通る最多で3回のダブル圧延パスで、約1.2mmから約20mmの間の最終厚を有する板製品を製造するように構成されている、
ことを特徴とする圧延ライン。
【請求項2】
前記鋳造機(12)は、約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有する薄鋼片(11)を、約5m/分から7m/分の間の平均鋳造速度で鋳造するのに適しており、
前記形成スタンドまたは粗圧延スタンド(20)は、前記鋳片(11)を約30mmから約80mmの間の厚さに調整可能に減厚するのに適している、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧延ライン。
【請求項3】
前記形成スタンドまたは粗圧延スタンド(20)の各圧延ロールの直径は、約650mmから約750mmの間にある、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延ライン。
【請求項4】
前記保温および温度均一化ユニット(18)は、前記圧延ユニット22が停止中に最速の鋳造速度で少なくとも8分間、前記薄鋼片11を内部に蓄積することが可能な長さに形成されたトンネル炉を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延ライン。
【請求項5】
1個またはそれ以上の形成スタンドまたは粗圧延スタンド(20)を構成する前記圧延スタンドは四重式スタンド型である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか項に記載の圧延ライン。
【請求項6】
前記ラインは、前記鋳造機(12)および前記圧延ユニット(22)の間に、前記鋳造材料の少なくとも一つの急速加熱ユニットを備える、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか項に記載の圧延ライン。
【請求項7】
前記ラインは、前記鋳造の下流で前記形成または粗圧延スタンド(20)の前に、ある寸法に剪断するユニット(14)を備える、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか項に記載の圧延ライン。
【請求項8】
前記ラインは、前記圧延ユニット(22)の下流に、冷却ユニット(24)および1個またはそれ以上の最終製品の巻取ユニット(26)を備える、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか項に記載の圧延ライン。
【請求項9】
板製品(111)を製造する圧延方法で、
薄鋼片(11)の連続鋳造ステップと、
保温および温度均一化ステップと、
前記保温および温度均一化ステップの後のリバース型の圧延ステップとを含み、
前記圧延方法は、凝固直後の前記薄鋼片(11)の減厚に適した、前記鋳造ステップの直後であって前記保温および温度均一化ステップの前に実行される、形成または粗圧延ステップを含み、
前記形成ステップまたは粗圧延ステップは、少なくとも前記仕上げ板製品の厚さ、幅、及び材料の種類に応じて、約30%から約65%の間で、前記薄鋼片(11)を調整可能に減厚し、
前記圧延ステップは、最多で3回のダブル圧延パスを実行して、前記粗圧延ステップから出る圧延製品を約1.2mmから約20mmの間の最終厚さに減厚する、
ことを特徴とする圧延方法。
【請求項10】
前記鋳造ステップは、約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有する薄鋼片に対して約5m/分から7m/分の間の速度で実行され、
前記形成または粗圧延ステップは、前記薄鋼片(11)を約30mmから約80mmの間の厚さに調整可能に減厚する、
ことを特徴とする請求項9に記載の圧延方法。
【請求項11】
第1ダブル圧延パスにおいて約30%から40%の間の第1減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の圧延方法。
【請求項12】
前記第1ダブル圧延パスにおいて約30%から52%の間の第2減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の圧延方法。
【請求項13】
第2ダブル圧延パスにおいて約28%から50%の間の第1減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の圧延方法。
【請求項14】
前記第2ダブル圧延パスにおいて約28%から50%の間の第2減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の圧延方法。
【請求項15】
第3ダブル圧延パスにおいて約24%から39%の間の第2減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載の圧延方法。
【請求項16】
前記第3ダブル圧延パスにおいて約20%から25%の間の第2減厚が実行される、
ことを特徴とする請求項9から15のいずれか一項に記載の圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯または鋼板等の板金属製品を製造するための圧延ラインおよびそれに関する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯(strip)のための圧延ラインとして、年間800,000〜1,000,000トン超の製造を目的とし、鋼片(slab)の連続鋳造から始まり、複数の圧延スタンドを有する連続仕上げトレインを有するものが知られている。
【0003】
130mmまたはそれ以上の厚さを有する厚鋼片を鋳造する場合、リバース粗圧延トレインが連続仕上げトレインの前に設置される。一方、開始鋼片が130mm未満の厚さを有する薄鋼片である場合、直接圧延のため、前記トレインは粗圧延トレインなしに単に5〜9個の連続スタンドによって形成される。年間800,000〜1,000,000トン未満を製造するには、一般的に1個またはそれ以上のリバーススタンドを有するステッケル圧延機が用いられ、通常、150から250mmの厚さを有する鋼片が供給される。
【0004】
厚鋼片から始まる圧延ラインは、一般的に、ステップ加熱炉と、高圧水スケール除去機と、クロップシア(クロップ剪断機)と、1個または2個のスタンドを有するステッケルリバース圧延トレインと、ラミナ冷却システムと、巻取ユニットとを備える。
【0005】
一方、薄鋼片から始まる圧延ラインは、典型的には、薄鋼片用の鋳造機と、鋳材温度の回復、保温または均一化のためのシステム、例えばトンネル炉と、高圧水スケール除去機と、1個または2個のスタンドを有するステッケルリバース圧延トレインと、ラミナ冷却システムと、巻取ユニットとを備える。
【0006】
薄鋼片から始まる圧延プラントは、厚鋼片から始まるものに比べて一般的にエネルギーの節約ができる。これは、クロップ剪断機が必要なく、1個または複数のステッケル圧延スタンドのワークロールの直径を810mmではなく、約740mmに小さくできるという事実に基づく。圧縮を同じとすると、これは、圧延力を20〜30%低くすることとを可能にし、装置のサイズを小さくする。さらに、小さい圧延力は減少した圧延トルクをもたらし、主モーターのサイズは結果として15〜20%よりも少ない小さなトルク値を有する。
【0007】
150から250mmまたはそれ以上の厚さを有する鋼片を用いる1個またはそれ以上のスタンドを有するステッケル型のリバース圧延トレインを有する圧延プラントは、最終鋼帯の生産性、取得可能な最小厚、寸法および表面品質に制限を有することが知られている。開始鋼片の厚さが大きい場合、生産性は、1個または複数のスタンドを通る圧延パスの回数が多いことと、その結果として反転停止時間が長いこと、さらにその結果として、圧延の最初から最後までの総時間が長くなることによって制限される。これにより、鋼帯の温度の均一性の欠如、大きな温度損失とスケールの生成ももたらされる。これらは生産される鋼帯の最終品質に悪影響を与える。
【0008】
さらに、大きな温度損失は、例えば1.8から1.2mmまたはそれ以下の厚さを有する仕上げ製品の、薄鋼片の圧延を不可能にする。
【0009】
さらに、ロール自体の表面を早く損傷させる冷えた先端部および尾部の多数回パスを行ったワークロールを用いることによっても、仕上げ製品の表面品質は影響される。このデメリットを減らすためには、プラントの利用率と生産性を妥協させながら、結果的に停止を伴ないながらワークロールを頻繁に変える必要がある。
【0010】
EP−A−0.625−383により、約50mmの厚さの鋼片を鋳造できる鋳造機、剪断ユニット、誘導炉、トンネル炉、スケール除去機、リバース型のスタンド2個型圧延ユニットまたは5個のスタンドが並んだ連続型の圧延ユニット、冷却ユニット、及び巻取ユニットから構成される圧延ラインが知られている。スタンド2個型リバース圧延ユニットは、約1.5〜2mmである所望の最終値になるように、3回のダブル圧延パスによって鋼片の減厚を行う。この公知の解決法では、リバース圧延ユニットに入る鋼片の厚さは、鋳造される鋼片と同じ一定の厚さである。公知のラインでは、最も少ないパス数で最終製品を得るために、鋼帯の最終厚および幅と鋼鉄の種類とに応じた調整が可能なわけではない。なぜなら、リバース圧延ユニットに入る鋼片の厚さは必ずしも理想的だとは限らないからである。したがって、鋳片の厚さを調整することが必要となるが、それは鋳造プロセスの安定性に悪影響を与える。さらに、圧延パスの回数をもっとも少なくするためには、公知のラインは早い鋳造速度を有する必要があり、なおさらストレスのかかった作業状況を有することになる。
他の鋳造ラインおよび方法は、EP−A1−937.512、US−A−4.675.974、およびUS−A−6.182.490で開示されている。
EP’383同様、どの上述の文献も、鋳造機の直下流形成スタンドまたは粗圧延スタンドを設置することを開示していない。唯一EP’512において、ステッケル圧延ミルの上流に位置する形成または粗圧延スタンドが開示されている。しかし、この場合、形成スタンドは炉の下流に位置しており、鋳造機の直下流に位置していない。さらに、EP’512の圧延スタンドは、50%までの減厚が行われるように設計されている。どの上述の文献においても、圧延ラインで製造できるすべての範囲の厚さに対して、ステッケル圧延ミルの一連のパス回数を低く保つことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一つの目的は、圧延ラインで製造できるすべての範囲の厚さに対して、圧延および反転パスの回数を最小化させ、それにより圧延にかかる総時間を減少させ、その結果圧延ミルの生産性を高めることが可能な、2個のリバーススタンドを有するステッケル圧延トレインを有する圧延ラインを実現し、それに関する方法を完成させることである。
【0012】
他の目的は、ラインに(特に鋳造速度に関して)、大きなストレスのかかった作動作業状況を与えることなく、圧延パスの回数を最小化させることである。
【0013】
本発明の他の目的は、圧延される鋼片の温度の均一性/均質性を高め、全体的な温度損失をより小さくすることである。
【0014】
他の目的は、プラントの利用率を高め、ワークロールの可使時間を伸ばすことである。
【0015】
さらに本発明の他の目的は、連続鋳造機から出てくる製品の粗圧延を実行するために、凝固直後の高温での鋼片の大きな塑性を最大限に利用することにある。これにより、より小さいスタンドを用いることが可能になり、消費電力を少なくすることができ、多量のエネルギーを節約することができる。本出願は、本発明を考案し、実験し、具体化させることで、先行技術の記載における欠点を克服し、これらおよび他の目的および長所を得ている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、独立項で述べられ明らかにされているとともに、従属項では本発明の他の革新的な特徴が記載されている。
【0017】
上述のおよび以下に記載されるすべての目的およびメリットを得るため、本発明では、一定の鋳造厚とライン上で「調整可能性」とを有する薄鋼片を、スタンド2個型ステッケル可逆圧延トレインに供給する。その結果、鋼帯の最終厚および幅と鋼鉄の種類とに応じて、最多で3回のダブル圧延パスで最終製品を得ることが常に可能になる。これは、圧延および反転パスの回数(結果的には、総圧延時間および反転による停止回数)を可能な限り最小化する。それにより、圧延トレインの作動を最大限利用することを可能にし、厚鋼片を用いる従来の場合に比べて約24%その生産性が増加する。更に、本発明では、絶対的な温度低下は少なくなり、鋼帯の均質性と温度の均一性とが改善する。また、冷えた先端部/尾端が作動ロール下を走行する回数が減り、ロールの消耗が減り、最終鋼帯の寸法および表面品質がより良くなり、薄い厚さ(約20mmから約1.2mmまたはそれ未満)に製造することが可能になる。
【0018】
本発明の一構成によると、板製品を製造するための圧延ラインは、薄鋼片を連続的に鋳造するのに適した鋳造機と、保温および温度均一化ユニットと、少なくとも2個のステッケルリバース圧延スタンドを有する圧延ユニットとを備える。
【0019】
さらに、本発明にかかる圧延ラインは、少なくとも形成スタンドまたは粗圧延スタンドを備える。それは、連続鋳造機の出口に直接接続され、保温および温度均一化ユニットの上流にあり、典型的には1,100〜1,180℃の高温である凝固直後の材料の厚さを減らすことができる。
【0020】
前記少なくとも1個の粗圧延スタンドで、65%またはそれ未満の調整可能な減厚を実行することができ、材料が鋳造の出口で高温であることと再結晶の欠如により材料の抵抗が低いこととを最大限に利用する。これにより、より少ない電力を要するより小さいスタンドを用いることが可能になり、多量のエネルギーを節約することができる。ある実施形態において、粗圧延スタンドで実行される調整可能な減厚は、約30%から約65%の間にある。
【0021】
好ましくは、少なくとも1個の粗圧延スタンドが、仕上げ製品を最多で3回のダブル圧延パスで得ることができるように、少なくとも以下のパラメータ、鋼帯厚、鋼帯幅、鋼鉄の種類(または鋼鉄の質)に応じて変更可能なまたは「調整可能な」厚さを有する薄鋼片を、スタンド2個型ステッケル圧延ユニットに供給することができる。
【0022】
ある実施形態において、保温および温度均一化ユニットは十分な長さを有するトンネル炉である。
【0023】
ある実施形態において、トンネル炉内部の温度は、ある閾値(例えば約1,150℃〜1,180℃のある値)よりも低く保たれる。その結果、搬送ロールは水冷式である必要はなく、ドライロールを用いることができる。このようにすると、ロールを介する伝導による鋼片の熱発散を減らすことができる。そして、エネルギーが節約され、整備の必要性が減る。
【0024】
他の実施形態では、トンネル炉の機能は、薄鋼片を保温または加熱し、その出口で約1,150℃〜1,180℃の間の温度を得ることである。
【0025】
更に、本発明のある実施形態では、トンネル炉はある長さを有するように寸法化される。その長さとは、最速の鋳造速度のときに少なくとも8分の停止またはバッファ時間を有して、鋼片が鋳造と圧延ユニットとの間で蓄積、貯蔵することを可能とする長さである。バッファ時間は、鋳造速度を下げることで増やすことができる。これにより、連続鋳造機を停止させることなく、そして生産性を減らすことなく、磨耗したワークロールの事前に計画されたロールの交換を行ったり、または圧延ミルにおける短い中断に対応することが可能になる。
【0026】
本発明のある実施形態によると、鋳造の出口で約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有する薄鋼片の鋳造速度は、約5m/分から7m/分の間である。ある実施形態では、鋳造の出口での厚さは、約30mmから約130mmの間である。他の実施形態では、鋳造の出口での厚さは、約50mmから約100mmの間である。
【0027】
ある変形例では、鋳造機は、改良された治金構造を得るために、液体コアを利用して鋳片を減厚する動的減厚ユニットを(いわゆる「動的軽圧下」)、晶析装置の下流に組み込むことができる。
【0028】
「鋳造の出口での厚さ」の表現は、晶析装置の出口すぐ、または設けられている場合には動的軽圧下ユニットの出口の鋳造製品の厚さを意味していることは明らかである。
【0029】
より具体的には、ある実施形態では、晶析装置の出口で130mmまたはそれ未満の厚さから始まる場合、動的軽圧下で得られる厚さは、60mmから80mmの間にある。
【0030】
軽圧下ユニットが存在しない場合、の最終厚を直接決めるのは晶析装置であり、ある実施形態では、連続鋳造機から出てくる鋼片の厚さは60から80mmの間である。
【0031】
さらに、本発明のある実施形態では、形成または粗圧延スタンドは、薄鋼片の厚さを約30mmから約80mmの間の厚さに調整可能に減厚するのに適している。ある実施形態では、その厚さは約35mmから約75mmの間である。
【0032】
さらに、本発明によると、ステッケルリバース圧延ユニットは、2個の圧延スタンドを通る最多で3回のダブル圧延パスによって、保温および温度均一化ユニットから到着した薄鋼片の厚さを、約1.2mmから約20mmの間の厚さに減厚するのに適している。ある実施形態では、最終厚は約1.4mmから約20mmの間である。
【0033】
ある実施形態において、形成スタンドまたは粗圧延スタンドの各圧延ロールの直径は、約650mmから約750mmの間である。
【0034】
ステッケル圧延ユニットを用いることで、コイル間方式の圧延プロセスを実行することができる。それは、典型的には30から75mの間であり、いずれの場合も20から30トンの間の重量を有するコイルを得ることができる長さを有する鋼片のセグメントから始まる。
【0035】
また、本発明は板製品を製造するための圧延方法にも関する。同方法は、薄鋼片の連続鋳造ステップと、保温および温度均一化ステップと、前記保温および温度均一化ステップ後のリバース圧延ステップと、形成または粗圧延ステップとを有する。形成または粗圧延ステップは、凝固直後の鋼片の厚さを減らすのに適しており、鋳造ステップと保温および温度均一化ステップとの間で実行される。
【0036】
更に、連続鋳造の直下流の形成または粗圧延ステップは、少なくとも仕上げ板製品の厚さ、幅、材料の種類に応じて、鋳造された薄鋼片の厚さの65%未満を調整可能に減厚する。そして、圧延ステップは、最多で3回のダブル圧延パスを用いて、薄鋼片を約1.2mmから約20mmの間の厚さに減厚する。前記方法のある実施形態において前記調整可能な減厚は、約30%から約65%の間である。
【0037】
本発明のある実施形態では、鋳造ステップは約5m/分から7m/分の間の速度で実行され、薄鋼片は鋳造の出口で約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有し、設けられている場合は軽圧下の後に60mmから80mmの厚さを有する。形成または粗圧延ステップは、約30mmから約80mmの間の厚さに薄鋼片の厚さを調整可能に減厚し、ある実施形態では、約35mmから約75mmの間である。前記方法のある実施形態における、鋳造の出口の鋳造製品の厚さは、約30mmから約130mmの間である。また別の実施形態では、鋳造の出口の厚さは、約50mmから約100mmの間である。
【0038】
本発明にかかる方法のある実施形態では、第1ダブル圧延パス中に、約30%から40%の間の第1減厚が行われる。
【0039】
本発明のある実施形態では、第1ダブル圧延パス中に、約30%から52%の間の第2減厚が行われる。
【0040】
さらに、ある実施形態では、第2ダブル圧延パス中に、約28%から50%の間の第1減厚が行われる。
【0041】
本発明にかかる方法のある実施形態では、第2ダブル圧延パス中に、約28%から50%の間の第2減厚が行われる。
【0042】
さらに、ある実施形態では、第3ダブル圧延パス中に、約24%から39%の間の第1減厚が行われる。
【0043】
本発明のある実施形態では、第3ダブル圧延パス中に、約20%から25%の間の第2減厚が行われる。
【0044】
示された百分率は、減厚分を、各回で行われるダブルパスに供給される薄鋼片の厚さの百分率で示したものである。
【0045】
鋳造の直下流に直接接続された粗圧延または形成スタンドを設置することで、鋼片の最終厚および幅と鋼鉄の種類に応じて、最終製品を最多で3回のダブル圧延パスで得られるように種々の厚さを有する鋼片をステッケル可逆圧延ユニットに供給することが可能になる。その結果、粗圧延スタンドによって可逆圧延ユニットに入る鋼片の厚さは常に理想的な厚さになり、鋳片の厚さを調整する必要はなくなり、鋳造プロセスが安定化する。
【0046】
ある実施形態では、縁のひび割れに敏感な鋼鉄において、鋳造の直下流にある形成または粗圧延スタンドの圧延動作は、そのようなひび割れの形成を促しうる。本発明は好ましくは、晶析装置の下流に2次的な冷却システムを導入し、鋼片の縁を「熱く」保つ。
【0047】
粗圧延スタンドを設けることのもう1つのメリットは、確定したライン配置が与えられ、与えられた時間当たりの生産性と保温および温度均一化ユニットの出口での鋼片厚とが同じであるとすると、より遅い速度で鋳造することが可能になることである。その結果、破れ(breakout)および拘束(sticking)等の鋳造における不調が起こるリスクがより少なく、より安定した問題の無い状態での鋳造が可能になることである。
【0048】
または、やはり確定したライン配置が与えられ、凝固速度と保温および温度均一化ユニットの出口での鋼片厚とが同じであるとすると、粗圧延スタンドを設けることで、より厚い鋼片を鋳造することが可能になり、これにより連続鋳造機の生産性が向上する。
【0049】
ある実施形態では、本発明にかかるラインは、少なくとも鋳造材料の急速加熱ユニットを備える。急速加熱ユニットは、例えば、鋳造機と圧延ユニットとの間に設けられる誘導炉である。例えば、急速加熱ユニットは、粗圧延スタンドの上流、または粗圧延スタンドと保温および温度均一化ユニットの間、または保温および温度均一化ユニットの下流、および圧延ユニットの前に置くことができる。
【0050】
ある実施形態では、ラインは、形成または粗圧延スタンドの上流に第1スケール除去機を備える。
【0051】
他の実施形態では、本発明にかかるラインは、保温および温度均一化ユニットの下流に第2スケール除去機を備える。
【0052】
さらに、ある実施形態では、本発明にかかるラインは、鋳造の下流、形成または粗圧延スタンドの前に設けられる、ある寸法に剪断するユニットを備える。
【0053】
さらに、本発明の実施形態のある構成によると、ラインは圧延ユニットの下流に、冷却ユニットと最終製品を巻き取るための1個またはそれ以上のユニットを備える。
【0054】
連続鋳造によって製造される薄鋼片と、それに続く直下流の粗圧延スタンドでの厚さ調整とにより、従来の鋼片ではなく、薄くて調整可能な鋼片を2個のステッケルスタンドに供給することが可能になる。その結果、スタンド内でのパス総回数は平均4〜8回減り、圧延ミルの生産性と最終鋼片の表面および寸法の品質とが上がる。これは、鋼帯の先端部/尾端と中央部との間での温度の変化が減ることと、ワークロールの磨耗が減ることとによる。
【0055】
本発明では、エネルギーを節約することを可能にするだけでなく、厚鋼片を用いる従来プロセスに比べて、約24%生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
発明のこれらおよび他の特徴は、以下の好ましいがこれに限定されない実施形態における記載および添付の図面を参照することにより、明らかにされる。
図1】従来技術における厚鋼片用圧延ラインの一実施形態を模式的に示す。
図2】従来技術における薄鋼片用圧延ラインの一実施形態を模式的に示す。
図3】本発明にかかる圧延ラインの一実施形態を模式的に示す。
図4図1および図2に示す従来技術の圧延ラインと本発明にかかる図3に示す圧延ラインとの生産性を比較した結果を報告する表5を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
添付図面を参照すると、図1は厚鋼片用の従来技術の圧延ライン50を示す。圧延ライン50は、ステップ供給型の1個またはそれ以上の加熱炉51と、高圧水スケール除去機52と、クロップ剪断機53と、縁用のトリマー55を備えたスタンド2個型ステッケル可逆圧延トレイン54と、ラミナシャワー型冷却ユニット56と、巻取ユニット57とを含む。圧延ライン50は、1回またはそれ以上の反転パスによって、標準の厚さを有する鋼片を用いてプロセスを実行する。圧延ライン50は、厚さ220mm、幅800〜160mm、最大長11.6m、最大重量30トンを有する厚鋼片から始まり、厚さ1.6〜20mm、幅800から1600mm、比重量約20kg/mmを有するコイルを製造する。
【0058】
図2は、薄鋼片を製造するための従来技術の圧延ライン60を示す。圧延ライン60は、薄鋼片用の鋳造機61と、回転スケール除去機62と、振り子剪断機63と、トンネル炉64と、被加圧水型のスケール除去機65と、スタンド2個型ステッケル可逆圧延トレイン66と、ラミナシャワー型の冷却ユニット67と、巻取ユニット68とを含む。圧延ライン60では、ステッケル可逆圧延トレインに入る鋼片の厚さは、鋳片の厚さと同じである。圧延ライン60は、厚さ50mmまたは70mm、幅800〜160mm、最大長51.3m、鋼片の最大重量30トンを有する厚鋼片から始まり、厚さ1.4−1.6〜20mm、幅800から1600mm、比重量約20kg/mmを有するコイルを製造する。
【0059】
図3は、板圧延製品(例えば鋼帯/薄鋼板111)を製造するための、本発明にかかる圧延ライン10を示す。圧延ライン10は、ここでは薄鋼片11を製造する連続鋳造機12を有する。ここでの連続鋳造機12は、通過容積タイプのもので、出口における狭辺部の厚さは約30mmから約130mmの範囲から選ばれ、広い範囲の鋼鉄を鋳造できる。伝統的に、連続鋳造機12は、取鍋13と、タンディッシュ15と、晶析装置17とを有する。
【0060】
ある実施形態では、連続鋳造機12は、鋳造の出口、または設置されている場合は晶析装置17または動的軽圧下(後の説明される)の出口で、狭辺が約130mmまたはそれ未満、例えば約30mmから約130mmの厚さを有する薄鋼片11を鋳造するのに適している。晶析装置17の出口部は、広辺が真っ直ぐで平行な、または例えば凹凸またはレンズ型の形状をしていてもよい。一方、狭辺が、真っ直ぐかつ平行に、または例えば凹型に丸くなっていてもよい。
【0061】
ある実施形態では、より良い治金的構造を得るために、図に示された晶析装置17の出口にある曲線経路で、鋼片11に対して液体コアを利用した動的減厚または動的軽圧下が行われてもよい。ある実施形態では、晶析装置17の出口で30mmから130mmの厚さから始まり、動的軽圧下によって得られる厚さは、60mmから80mmの間である。
【0062】
軽圧下が実行されない場合、晶析装置17が、連続鋳造機から出てくる鋼片の最終厚、例えば60mmから80mmの間、を直接定める。
【0063】
具体的には本発明によると、図3の圧延ライン10は、鋳造される薄鋼片から始まる。薄鋼片は、晶析装置17の出口において約30mmから約130mmの間の範囲から選ばれる一定の厚さを有する。ある実施形態では、鋳造機の出口における薄鋼片の厚さは、、晶析装置17の出口直ぐ、または設けられている場合は動的軽圧下の出口直ぐで、約70mmである。
【0064】
ある実施形態では、鋳造される薄鋼片は、幅800〜1600mm、最大長さ73.3m、そして鋼片の最大重量30トンを有する。
【0065】
本発明にかかる圧延ライン10は、全体的に約1.2〜1.6mmから約20mmの厚さを有するコイルを製造するように構成されている。ある実施形態ではコイルは800から1600mmの幅と約20kg/mmの比重量を有する。
【0066】
通常、鋼片11の鋳造速度は3から12m/分である。本発明では、圧延ライン10の鋳造速度は、好ましくは、約5m/分から約7m/分の間の一定値、例えば約5.4/分に保たれる。
【0067】
本発明にかかる圧延ライン10に沿って鋳造および圧延される製品の主方向および前進する方向は、添付図中に矢印Fで示されている。
【0068】
ある実施形態では、プロセスがそのように実施される場合、晶析装置17の後、鋼片11は第1剪断ユニット14に送られ、第1剪断ユニット14によってある寸法に剪断される。
【0069】
第1剪断ユニット14は公知のタイプで、好ましくは鋳造速度と同調する。
【0070】
ある実施形態では、第1剪断ユニット14は振り子剪断機を有することができる。他の実施形態では第1剪断ユニット14は、鋳片11の厚さ次第で、1個またはそれ以上の酸素アセチレントーチを有することができる。
【0071】
製造サイクルの間、第1剪断ユニット14は鋼片11を、最終鋼帯または鋼板のコイルの所望の重量に関連する所望の長さを有するセグメントに剪断する。典型的にはセグメントの長さは30から75メートルである。
【0072】
特に、鋼片のセグメントの長さは、所望の重量、例えば25トン、を有するコイルを得るためで、その結果、圧延プロセスはいわゆるコイル間方式で実施される。
【0073】
第1剪断ユニット14は、200から450mmの間の長さのセグメントに剪断しスクラップを排出する、緊急スクラップにも適している。あるいは、緊急サイクルの中で鋳造機12の緊急速度と協調して、3〜4メートルの短いセグメントの寸法に剪断するのにも適している。
【0074】
ある実施形態では、剪断ユニット14の上流で鋳造後に、第1スケール除去機16を設けてもよい。ある実施形態では好ましくは、第1スケール除去機16は回転ノズルを有する型で、可能な限り最も少ない水の放出で鋳造製品の表面からスケールを精密に除去することにより、鋳造製品の温度低下を僅かに抑える。
【0075】
伝統的には、圧延ライン10上の第1剪断ユニット14の下流には、保温および温度均一化ユニット、ここではトンネル炉18、が設けられる。
【0076】
トンネル炉18は、少なくとも鋼片11の温度を保つ目的を有する。また、トンネル炉18は、材料の温度低下を回避または減らすために加熱および/または断熱されて、鋼片11の温度を均一化させることもあり得る。
【0077】
ある実施形態では、トンネル炉内部の温度は、ある閾値、例えば約1,150℃〜1,180℃、より低く保たれる。その結果、搬送ロールは水で冷却される必要がなく、「ドライロール」を用いることができる。このようにすると、ロールを介する伝導による鋼片の熱発散を減らすことができ、エネルギーが節約され、整備の必要性が減る。
【0078】
本発明によると、鋳造機12の直下流で保温および温度均一化ユニット、ここではトンネル炉18、の上流に、粗圧延スタンド20も設けられる。ある実施形態では、複数の粗圧延スタンド20を直列に設けることができる。典型的には、ある実施形態では、各粗圧延スタンド20は四重式スタンドを有する。
【0079】
本発明によると、粗圧延スタンド20のロールの作動直径は650mmから750mmの間であり、好ましくは675mmから725mmの間、例えば約700mmである。ロールの長さは約1500〜1800mmであり、例えば、直径が700mmのとき約1750mmである。
【0080】
さらに、ある実施形態では、粗圧延スタンド20の圧下力は約3200トン(32000kN)である。
【0081】
さらに、ある実施形態では、通常の作動状況での100〜200rpmの速度値における粗圧延スタンド20のモーターの定格電力は1200kWである。
【0082】
この場合、粗圧延スタンド20は連続鋳造機12の下流で第1剪断ユニット14とトンネル炉18との間に設けられる。
【0083】
粗圧延スタンド20の機能は、凝固したコアがまだ非常に熱い間に鋳造機12の出口直ぐで鋼片11の厚さを調整可能に減厚することである。本発明によると、最初の厚さの約65%未満、例えば、約30%から約65%の間、の調整可能な減厚が行われる。ある実施形態では、粗圧延スタンド20は鋼片11の厚さを30〜80mmまで減厚する。他の実施形態では、減厚は約35〜75mmに達する。
【0084】
粗圧延スタンド20による鋼片11の厚さの減厚処置が、粗圧延スタンド20の出口で鋼片11が前進する速度の増加量を決め、通常は最速で鋳造速度の2倍に等しくなり得る。
【0085】
粗圧延スタンド20を設けることの主なメリットは、鋼片11がまだ熱いコアを有する間に調整可能な減厚が行われることである。これはより小さいスタンドとより少ない電力とを要し、結果的にエネルギーが節約される。
【0086】
本発明のある使用形態では、例えば特にひび割れしやすい等級の鋼鉄を製造する場合、粗圧延スタンド20(場合によっては1個以上の粗圧延スタンド20)は開いた状態に保たれ、つまり、鋼片11の厚さのいかなる減厚も行われない。
【0087】
トンネル炉18の下流には、圧延ライン18は圧延トレイン22を備える。
【0088】
本発明によると、圧延トレイン22はスタンド2個リバース型である。
【0089】
特に、本発明では、巻取/巻戻リール25a、25bに協調する2個のステッケルスタンド23a、23bによって形成されるスタンド2個型ステッケル圧延トレイン22の解決法が採用される。ある実施形態では、巻取/巻戻リール25a、25bは、被加熱リールで、リール炉とも呼ばれる。巻取/巻戻リール25a、25bはそれぞれ、引込ユニット27a、27bと協調する。
【0090】
各ステッケルスタンド23a、23bのロールの作動直径は約740mmで、約2050mmの長さを有する。
【0091】
各巻取/巻戻リール25a、25bのロールの作動直径は約1350mmで、2050mmの長さを有する。
【0092】
本発明にかかる圧延方法では、スタンド23a、23bを通る最多で3回のダブルパスが行われ、それは所望の減厚量を定める。
【0093】
特に、この解決法を用いて鋼帯および/または鋼板111の典型的な製造を行う場合、鋼片11は一連の減厚のために、スタンド23a(第1ダブル圧延パスの第1減厚は約30%から40%の間である)とスタンド23b(第1ダブル圧延パスの第2減厚は約30%から52%の間である)とを通る第1パスを行う。
【0094】
鋼帯が製造される場合、第2スタンド23bから出てくる鋼帯は第2巻取/巻戻リール25b上に巻き取られる。
【0095】
その後、更なる減厚を行うために、鋼帯/鋼板の方向が反転され、スタンド23b(第2ダブル圧延パスの第1減厚は約28%から50%の間である)とスタンド23a(第2ダブル圧延パスの第2減厚は約28%から50%の間である)とを通る第2圧延パスを行う。
【0096】
鋼帯が製造される場合、第1スタンド23aから出てくる鋼帯は第1巻取/巻戻リール25a上に巻き取られる。
【0097】
鋼板を製造する場合、巻取/巻戻リール25a、25bはプロセスから除外され、鋼板の全長が圧延トレイン22の一端から他端に走行する。
【0098】
最後に、所望の最終値に減厚するために、供給方向の3回目の反転が行われ、スタンド23a(第3ダブル圧延パスの第1減厚は約24%から39%の間である)とスタンド23b(第3ダブル圧延パスの第2減厚は約20%から25%の間である)とを通る第3圧延パスを行う。
【0099】
ステッケル圧延トレイン22の出口での厚さは、3回のダブルパスを伴うステッケル圧延トレインでの圧延ステップを実行するのに適した値に設定される。鋼帯111の所望の最終厚に応じて、好ましくは約20mmから約1.2mmまたそれより小さい。
【0100】
本発明の一実施形態によると、圧延ライン10は鋳造機12と圧延トレイン22との間に、少なくとも急速加熱ユニット、例えば図示しない誘導炉を備えても良い。
【0101】
ある実施形態では、鋼片11はトンネル炉18を離れるや否や、第2高速スケール除去機30によってスケール除去が行われ、圧延トレイン22にまで走行する。
【0102】
ある実施形態では、第2スケール除去機30は固定ノズルを有する型で、400気圧(bar)に達しうる非常に高い圧力下で作動する。
【0103】
本発明のある実施形態では、圧延トレイン22が緊急事態(例えば詰まり)または計画されている停止(例えばロールの交換)で停止する場合、トンネル炉18では、鋳造機を停止させることなく予備圧延された鋼片(トランスファバー)をトンネル炉内部に蓄積することが可能なようになっている。これにより、トンネル炉は貯蔵所として機能し、圧延トレイン22が再度開始するとき、トランスファバーを圧延ライン10に再度投入する。バーは、最速の鋳造速度で少なくとも8分間または鋳造速度を適切に落としながらそれ以上、トンネル炉18内に滞在する(バッファ時間)。
【0104】
さらに、圧延トレイン22の後に、圧延ライン10は、速度約1.5〜12m/secの鋼帯/薄鋼板111用の出口圧延路と、冷却ユニット24とを有する。例えば、冷却ユニット24はラミナシャワー冷却型である。
【0105】
冷却ユニット24の下流に、圧延ライン10は、少なくとも、コイルを製造するための巻取ユニット26を備える。例えば、巻取ユニット26は、一連の作動の中で製造される鋼帯/薄鋼板111用の1個またはそれ以上のダウンコイラーによって形成される。
<比較できる例>
【0106】
24%もの生産性の増加が可能な本発明にかかる圧延ライン10を明らかに示すために、以下に従来技術における圧延ライン50、60との比較例を示す。
【0107】
典型的な製造と比較するために、代表的な圧延プログラムを検討した(表1)。
【0108】
【表1】
【0109】
プロダクトミックスを以下の通りに想定する。
・平均鋼帯厚:3.8mm
・平均鋼帯幅:1270mm
・鋼帯の比重量:18kg/mm
【0110】
さらに、以下の圧延プログラム(図2)が、薄鋼片から始まる圧延方式(圧延ライン60、図2、および圧延ライン10、図3)のために計算された。
【0111】
【表2】
【0112】
以降、「鋳片の厚さ」とは、軽圧下が後続するまたは後続しない状態で、鋼片が連続鋳造機から出てくる時の鋼片の厚さを意味する。
【0113】
一例として、本発明(図3)にかかる圧延ライン10における鋳片の厚さを70mmと想定する。粗圧延スタンド20によって鋳造の直下流で熱いコアを利用する減厚が行われる可能性があり、同厚さは約35mmまで減る可能性がある。
【0114】
薄鋼片圧延ライン60において、鋼片厚の生産性に対するインパクトを調べるために、2つの異なる一定厚、50mmおよび70mm、を有する鋳片を検討した。
【0115】
その結果、圧延プログラムは表3にまとめられている以下の4つのプロセスについて計算された。
【0116】
【表3】
【0117】
表4は、事例Bにおけるステッケル可逆圧延トレイン22の重要な圧延パラメータを、5つの圧延プログラム01DAT、02DAT、03DAT、04DATおよび00DATの各々について、まとめる。事例Bでは、スタンド2個型ステッケル圧延トレイン内で3回のダブル圧延パスが行われる。3回のダブル圧延パスは、RF1−1(第1パスの第1減厚)、RF2−1(第1パスの第2減厚)、RF2−2(第2パスの第1減厚)、RF1−2(第2パスの第2減厚)、RF1−3(第3パスの第1減厚)、RF2−3(第3パスの第2減厚)と示される。04DAT圧延プラグラムを除くすべての事例において、ステッケル圧延トレインに供給される中間の薄鋼片の厚さは40mmである。04DAT圧延プログラムでの厚さは50mmである。
【0118】
【表4】
【0119】
図4は、様々な構成の製品を比較した結果を示す表5を示す。
【0120】
様々な構成の比較は、1.2メガトン/年の年間生産量を得る事例Aを参照事例と想定して行われる。事例Aでは、圧延製品は7回のダブルパス、または可能であれば2回の個別パスおよび5回のダブルパスを要し、いずれにせよ回数が多く価格が高い。
【0121】
本発明にかかる圧延ラインおよび方法を示す事例Bでは、事例Aと比べて圧延ミルの生産性を約24%増やすことができ、1.5メガトン/年を得た。連続鋳造機12の出口すぐに直接接続される粗圧延スタンド20による減厚により、やはり3回のダブル搬送が行われるステッケル圧延トレイン22のために、圧延される鋼鉄の種類にも応じて適切な鋼片厚を都度設定することができる。事例Bでは、圧延される鋼片の厚さは70mmに一定に保たれ、連続鋳造操作の安定性と鋼鉄の品質との点において利益がある。一方、圧延スタンド20は、鋳片の厚さを、圧延ミルにとって最適な35から70mmの間の値に変える。この場合、製造要件を満たすために、5.4m/分の平均鋳造速度を要する。
【0122】
事例Cは、70mmの一定な厚さを有する鋳片に関する。この構成は、厚鋼片から始まる方式と比べ、製造におけるいかなる改良も与えない。事例Cでは、圧延プロセスを3回のダブルパスで完了することが不可能であり、同時にパスが過度になり得る。更に、反転巻取パスの制約と合わせて、炉からの取り出し速度の上限により、パスの最適なプログラムが可能でなくなる。平均鋳造速度は製造速度に連動し、事例Cでは約4.4m/分になる。
【0123】
事例Dは、50mmの一定な厚さを有する鋳片に関する。この構成は、事例Aと比べて約15%圧延ミルの生産性を増やすことができ、1.4メガトン/年の年間生産量を得る。鋼帯の最終厚に応じた上記の鋳片の厚さの場合、3回のダブルパス、または3回のダブルパスとその後の2回のシングルパスとによって圧延を完了することが可能である。一方、しかしながら、本構成では平均7.0m/分の早い鋳造速度を要し、これにより更にストレスのかかった作業状況を有することになる。
【0124】
鋼帯の本体の平均温度における著しい違いは、厚鋼片から始まる事例(事例A)でも薄鋼片から始まる事例(事例B、CおよびD)でも見られなかった。熱い本体と冷えた先端部および尾部との間の均一性の欠如が、材料が薄くてバーが長いときの最終圧延パス中に発生する。
【0125】
薄鋼片を用いるプロセスでは、第1ダブルパス後の巻取プロセスによってトンネル炉の出口で温度が一定に保たれるおかげで、本体の温度は鋼片の長さのより長い部分で一定となる。
【0126】
また、薄鋼片を用いるプロセスでは、厚鋼片を用いるプロセスよりも薄い、例えば約1.4mmの厚さを得ることができる。この結果をもたらす一つの理由は、パス回数が少なくて済むおかげで小さな平均圧延荷重で幾何学的なパラメータをより良く制御可能である、より安定した圧延状態に見出すことができる。
【0127】
本発明にかかる事例Bのようにパス回数が最小化したとき、平均圧延温度はより高く、より一定になるので、より穏やかな圧延ステップが可能になる。
【0128】
結論として、本発明にかかる事例Bでは、厚鋼片を用いるプロセスに比べて約25%という、最も大きな生産性の向上が得られる。更に、事例Bでは、薄鋼片を用いるプロセス(事例Cおよび事例D)に比べ、鋳造直後の粗圧延のおかげで、ステッケル圧延トレインの最良の操作状況に適した厚さ(35〜70mm)を有することができ、また厚さ70mmで鋳造を行うのにより安定した作動状況を得ることができる。特に事例Dでは反対に、かなりの生産性の増加(15%)が得られるが、よりいっそうストレスのかかった作業状況を引き起こし、特に早い鋳造速度が必要になる。事例Cは、生産性の点ではプロセスの中でいかなる利益をもたらさない。これは、好ましくない圧延パスの分布によるものである。
図1
図2
図3
図4