【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、独立項で述べられ明らかにされているとともに、従属項では本発明の他の革新的な特徴が記載されている。
【0017】
上述のおよび以下に記載されるすべての目的およびメリットを得るため、本発明では、一定の鋳造厚とライン上で「調整可能性」とを有する薄鋼片を、スタンド2個型ステッケル可逆圧延トレインに供給する。その結果、鋼帯の最終厚および幅と鋼鉄の種類とに応じて、最多で3回のダブル圧延
パスで最終製品を得ることが常に可能になる。これは、圧延および反転
パスの回数(結果的には、総圧延時間および反転による停止回数)を可能な限り最小化する。それにより、圧延トレインの作動を最大限利用することを可能にし、厚鋼片を用いる従来の場合に比べて約24%その生産性が増加する。更に、本発明では、絶対的な温度低下は少なくなり、鋼帯の均質性と温度の均一性とが改善する。また、冷
えた先端部/尾端
部が作動ロール下を走行する回数が減り、ロールの消耗が減り、最終鋼帯の寸法および表面品質がより良くなり、薄い厚さ(約20mmから約1.2mmまたはそれ未満)に製造することが可能になる。
【0018】
本発明の一構成によると、板製品を製造するための圧延ラインは、薄鋼片を連続的に鋳造するのに適した鋳造機と、保温および温度均一化ユニットと、少なくとも2個のステッケルリバース圧延スタンドを有する圧延ユニットとを備える。
【0019】
さらに、本発明にかかる圧延ラインは、少なくとも形成スタンドまたは粗圧延スタンドを備える。それは、連続鋳造機の出口に直接接続され、保温および温度均一化ユニットの上流にあり、典型的には1,100〜1,180℃の高温である凝固直後の材料の厚さを減らすことができる。
【0020】
前記少なくとも1個の粗圧延スタンドで、65%またはそれ未満の調整可能な減厚を実行することができ、材料が鋳造の出口で高温であることと再結晶の欠如により材料の抵抗が低いこととを最大限に利用する。これにより、より少ない電力を要するより小さいスタンドを用いることが可能になり、多量のエネルギーを節約することができる。ある実施形態において、粗圧延スタンドで実行される調整可能な減厚は、約30%から約65%の間にある。
【0021】
好ましくは、少なくとも1個の粗圧延スタンドが、仕上げ製品を最多で3回のダブル圧延
パスで得ることができるように、少なくとも以下のパラメータ、鋼帯厚、鋼帯幅、鋼鉄の種類(または鋼鉄の質)に応じて変更可能なまたは「調整可能な」厚さを有する薄鋼片を、スタンド2個型ステッケル圧延ユニットに供給することができる。
【0022】
ある実施形態において、保温および温度均一化ユニットは十分な長さを有するトンネル炉である。
【0023】
ある実施形態において、トンネル炉内部の温度は、ある閾値(例えば約1,150℃〜1,180℃のある値)よりも低く保たれる。その結果、搬送ロールは水冷式である必要はなく、ドライロールを用いることができる。このようにすると、ロールを介する伝導による鋼片の熱発散を減らすことができる。そして、エネルギーが節約され、整備の必要性が減る。
【0024】
他の実施形態では、トンネル炉の機能は、薄鋼片を保温または加熱し、その出口で約1,150℃〜1,180℃の間の温度を得ることである。
【0025】
更に、本発明のある実施形態では、トンネル炉はある長さを有するように寸法化される。その長さとは、最速の鋳造速度のときに少なくとも8分の停止またはバッファ時間を有して、鋼片が鋳造と圧延ユニットとの間で蓄積、貯蔵することを可能とする長さである。バッファ時間は、鋳造速度を下げることで増やすことができる。これにより、連続鋳造機を停止させることなく、そして生産性を減らすことなく、磨耗したワークロールの事前に計画されたロールの交換を行ったり、または圧延ミルにおける短い中断に対応することが可能になる。
【0026】
本発明のある実施形態によると、鋳造の出口で約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有する薄鋼片の鋳造速度は、約5m/分から7m/分の間である。ある実施形態では、鋳造の出口での厚さは、約30mmから約130mmの間である。他の実施形態では、鋳造の出口での厚さは、約50mmから約100mmの間である。
【0027】
ある変形例では、鋳造機は、改良された治金構造を得るために、液体コアを利用して鋳片を減厚する動的減厚ユニットを(いわゆる「動的軽圧下」)、晶析装置の下流に組み込むことができる。
【0028】
「鋳造の出口での厚さ」の表現は、晶析装置の出口すぐ、または設けられている場合には動的軽圧下ユニットの出口の鋳造製品の厚さを意味していることは明らかである。
【0029】
より具体的には、ある実施形態では、晶析装置の出口で130mmまたはそれ未満の厚さから始まる場合、動的軽圧下で得られる厚さは、60mmから80mmの間にある。
【0030】
軽圧下ユニットが存在しない場合、の最終厚を直接決めるのは晶析装置であり、ある実施形態では、連続鋳造機から出てくる鋼片の厚さは60から80mmの間である。
【0031】
さらに、本発明のある実施形態では、形成または粗圧延スタンドは、薄鋼片の厚さを約30mmから約80mmの間の厚さに調整可能に減厚するのに適している。ある実施形態では、その厚さは約35mmから約75mmの間である。
【0032】
さらに、本発明によると、ステッケルリバース圧延ユニットは、2個の圧延スタンドを通る最多で3回のダブル圧延
パスによって、保温および温度均一化ユニットから到着した薄鋼片の厚さを、約1.2mmから約20mmの間の厚さに減厚するのに適している。ある実施形態では、最終厚は約1.4mmから約20mmの間である。
【0033】
ある実施形態において、形成スタンドまたは粗圧延スタンドの各圧延ロールの直径は、約650mmから約750mmの間である。
【0034】
ステッケル圧延ユニットを用いることで、コイル間方式の圧延プロセスを実行することができる。それは、典型的には30から75mの間であり、いずれの場合も20から30トンの間の重量を有するコイルを得ることができる長さを有する鋼片のセグメントから始まる。
【0035】
また、本発明は板製品を製造するための圧延方法にも関する。同方法は、薄鋼片の連続鋳造ステップと、保温および温度均一化ステップと、前記保温および温度均一化ステップ後のリバース圧延ステップと、形成または粗圧延ステップとを有する。形成または粗圧延ステップは、凝固直後の鋼片の厚さを減らすのに適しており、鋳造ステップと保温および温度均一化ステップとの間で実行される。
【0036】
更に、連続鋳造の直下流の形成または粗圧延ステップは、少なくとも仕上げ板製品の厚さ、幅、材料の種類に応じて、鋳造された薄鋼片の厚さの65%未満を調整可能に減厚する。そして、圧延ステップは、最多で3回のダブル圧延
パスを用いて、薄鋼片を約1.2mmから約20mmの間の厚さに減厚する。前記方法のある実施形態において前記調整可能な減厚は、約30%から約65%の間である。
【0037】
本発明のある実施形態では、鋳造ステップは約5m/分から7m/分の間の速度で実行され、薄鋼片は鋳造の出口で約130mmまたはそれ未満の一定の厚さを有し、設けられている場合は軽圧下の後に60mmから80mmの厚さを有する。形成または粗圧延ステップは、約30mmから約80mmの間の厚さに薄鋼片の厚さを調整可能に減厚し、ある実施形態では、約35mmから約75mmの間である。前記方法のある実施形態における、鋳造の出口の鋳造製品の厚さは、約30mmから約130mmの間である。また別の実施形態では、鋳造の出口の厚さは、約50mmから約100mmの間である。
【0038】
本発明にかかる方法のある実施形態では、第1ダブル圧延
パス中に、約30%から40%の間の第1減厚が行われる。
【0039】
本発明のある実施形態では、第1ダブル圧延
パス中に、約30%から52%の間の第2減厚が行われる。
【0040】
さらに、ある実施形態では、第2ダブル圧延
パス中に、約28%から50%の間の第1減厚が行われる。
【0041】
本発明にかかる方法のある実施形態では、第2ダブル圧延
パス中に、約28%から50%の間の第2減厚が行われる。
【0042】
さらに、ある実施形態では、第3ダブル圧延
パス中に、約24%から39%の間の第1減厚が行われる。
【0043】
本発明のある実施形態では、第3ダブル圧延
パス中に、約20%から25%の間の第2減厚が行われる。
【0044】
示された百分率は、減厚分を、各回で行われるダブル
パスに供給される薄鋼片の厚さの百分率で示したものである。
【0045】
鋳造の直下流に直接接続された粗圧延または形成スタンドを設置することで、鋼片の最終厚および幅と鋼鉄の種類に応じて、最終製品を最多で3回のダブル圧延
パスで得られるように種々の厚さを有する鋼片をステッケル可逆圧延ユニットに供給することが可能になる。その結果、粗圧延スタンドによって可逆圧延ユニットに入る鋼片の厚さは常に理想的な厚さになり、鋳片の厚さを調整する必要はなくなり、鋳造プロセスが安定化する。
【0046】
ある実施形態では、縁のひび割れに敏感な鋼鉄において、鋳造の直下流にある形成または粗圧延スタンドの圧延動作は、そのようなひび割れの形成を促しうる。本発明は好ましくは、晶析装置の下流に2次的な冷却システムを導入し、鋼片の縁を「熱く」保つ。
【0047】
粗圧延スタンドを設けることのもう1つのメリットは、確定したライン配置が与えられ、与えられた時間当たりの生産性と保温および温度均一化ユニットの出口での鋼片厚とが同じであるとすると、より遅い速度で鋳造することが可能になることである。その結果、破れ(breakout)および拘束(sticking)等の鋳造における不調が起こるリスクがより少なく、より安定した問題の無い状態での鋳造が可能になることである。
【0048】
または、やはり確定したライン配置が与えられ、凝固速度と保温および温度均一化ユニットの出口での鋼片厚とが同じであるとすると、粗圧延スタンドを設けることで、より厚い鋼片を鋳造することが可能になり、これにより連続鋳造機の生産性が向上する。
【0049】
ある実施形態では、本発明にかかるラインは、少なくとも鋳造材料の急速加熱ユニットを備える。急速加熱ユニットは、例えば、鋳造機と圧延ユニットとの間に設けられる誘導炉である。例えば、急速加熱ユニットは、粗圧延スタンドの上流、または粗圧延スタンドと保温および温度均一化ユニットの間、または保温および温度均一化ユニットの下流、および圧延ユニットの前に置くことができる。
【0050】
ある実施形態では、ラインは、形成または粗圧延スタンドの上流に第1スケール除去機を備える。
【0051】
他の実施形態では、本発明にかかるラインは、保温および温度均一化ユニットの下流に第2スケール除去機を備える。
【0052】
さらに、ある実施形態では、本発明にかかるラインは、鋳造の下流、形成または粗圧延スタンドの前に設けられる、ある寸法に剪断するユニットを備える。
【0053】
さらに、本発明の実施形態のある構成によると、ラインは圧延ユニットの下流に、冷却ユニットと最終製品を巻き取るための1個またはそれ以上のユニットを備える。
【0054】
連続鋳造によって製造される薄鋼片と、それに続く直下流の粗圧延スタンドでの厚さ調整とにより、従来の鋼片ではなく、薄くて調整可能な鋼片を2個のステッケルスタンドに供給することが可能になる。その結果、スタンド内での
パス総回数は平均4〜8回減り、圧延ミルの生産性と最終鋼片の表面および寸法の品質とが上がる。これは、鋼帯の
先端部/尾端
部と中央部との間での温度の変化が減ることと、ワークロールの磨耗が減ることとによる。
【0055】
本発明では、エネルギーを節約することを可能にするだけでなく、厚鋼片を用いる従来プロセスに比べて、約24%生産性が向上する。