(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674939
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】車両シート用ヘッドレストを製造する方法及び当該ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/48 20060101AFI20150205BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
B60N2/48
A47C7/38
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-523540(P2013-523540)
(86)(22)【出願日】2011年5月3日
(65)【公表番号】特表2013-533166(P2013-533166A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011057036
(87)【国際公開番号】WO2012019791
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2013年2月27日
(31)【優先権主張番号】102010034274.2
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ、 クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイシンジャー、 ユージニー
(72)【発明者】
【氏名】プロツナー、 ミシェル
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−328248(JP,A)
【文献】
米国特許第4848836(US,A)
【文献】
米国特許第5664840(US,A)
【文献】
特開平08−266756(JP,A)
【文献】
特開2007−307037(JP,A)
【文献】
実開平02−088569(JP,U)
【文献】
特開昭58−072428(JP,A)
【文献】
特開平05−301236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレスト本体及び少なくとも一つの支持要素(4)を有する車両シート用ヘッドレスト(1)であって、
前記ヘッドレスト(1)の表面を形成するカバー(3)が前記ヘッドレスト本体の外面上に少なくとも部分的に設けられ、
前記カバー(3)は、少なくとも一つの接続シーム(5)によってバルーン又はバッグの態様で互いに結合される少なくとも一つの前部分(3.1)及び一つの後部分(3.2)から形成され、
輪郭要素(6)が、前記少なくとも一つの接続シーム(5)の中に圧力嵌め及び/又は形状嵌めにより少なくとも部分的に組み入れられ、前記ヘッドレスト(1)の表面上にショルダー、突起、及び/又はエッジ(2)を形成し、
前記輪郭要素(6)は少なくとも部分的に可撓性に構成されるヘッドレスト(1)。
【請求項2】
前記輪郭要素(6)は矩形断面を有する、請求項1に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項3】
前記輪郭要素(6)は、プラスチック材料又はプラスチック混合物から製造される、請求項1または2のいずれか一項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項4】
前記輪郭要素(6)は、前記ヘッドレスト(1)まわりの外周全体又はほぼ全体に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のヘッドレスト(1)を製造する方法であって、
第1方法ステップにおいて、前記カバー(3)の前記前部分(3.1)及び前記後部分(3.2)が、これらの外面が互いの上になるように配置されて第1シーム(8.1)によって互いに縫いつけられる方法。
【請求項6】
第2方法ステップにおいて、前記輪郭要素(6)が、その下面(9)が前記第1シーム(8.1)上になるように配置され、その結果、前記輪郭要素(6)の内側面(10)が、互いに縫いつけられた前記カバー(3)の2つの前記部分(3.1、3.2)の端領域(11)と面一又はほぼ面一に終端し、前記輪郭要素(6)が、互いに縫いつけられた前記部分(3.1、3.2)に第2シーム(8.2)によって縫いつけられ、前記第2シーム(8.2)は、前記輪郭要素(6)の外側面(12)の領域に延びる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第3方法ステップにおいて、前記前部分(3.1)の自由端が、前記輪郭要素(6)の外側面(12)及び上面(13)のまわりに案内されて第3シーム(8.3)によって縫いつけられ、前記第3シーム(8.3)は、前記端領域(11)、前記輪郭要素(6)、及び前記カバー(3)の前部分(3.1)を貫通して延び、前記第3シーム(8.3)は、前記輪郭要素(6)の内側面(10)の領域に配列される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第4方法ステップにおいて、前記カバー(3)が鋳型に導入されて液体プラスチック材料又はプラスチック混合物による発泡を受け、前記カバー(3)の接続シーム(5)及び輪郭要素(6)に対応する溝が前記鋳型の中に形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第5方法ステップにおいて、前記カバー(3)の内部において凝固したプラスチック材料又は凝固したプラスチック混合物から発泡体(14)が形成され、前記発泡体は、前記カバー(3)の内部を完全に又はほぼ完全に充填する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の車両シート用ヘッドレストに関する。本発明はさらに、請求項5のプリアンブルに記載のヘッドレストを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡プラスチック材料からヘッドレストを製造することは従来技術により周知である。ここで、例えば皮革又は織物のようなヘッドレストの表面を形成する材料が鋳型の中に導入された後、液体プラスチック材料によって発泡を受ける。当該プラスチック材料はその後、鋳型において硬化される。
【0003】
特許文献1は、車両用ヘッドレスト、ヘッドレスト製造方法、及びヘッドレストを含む車両シートを開示する。当該ヘッドレストは、ヘッドレスト本体及びヘッドレスト支持要素を有する。充填材料が接続部品とカバーとの間に与えられる。接続部分及びカバーは、充填材料に対し、そのプロセス中の状態において実質的に密封された空間を画定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公告第102005015292(B3)号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に対して改善された車両シート用ヘッドレストと、従来技術によりも特に効率的な、車両シート用ヘッドレストの製造方法とを特定することにある。これらによって、ヘッドレストの表面にショルダー、突起、及び/又はエッジを組み入れることができる。
【0006】
車両シート用ヘッドレストに関して、本目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。ヘッドレストの製造方法に関して、本目的は、請求項5に記載の特徴によって達成される。
【0007】
本発明の有利な進展が従属項の主題を形成する。
【0008】
ヘッドレスト本体及び少なくとも一つの支持要素を有する車両シート用ヘッドレストにおいて、当該ヘッドレスト本体の外面上に少なくとも部分的にカバーが設けられる。前記カバーは当該ヘッドレストの表面を形成する。本発明によれば、当該カバーは、少なくとも一つの前部分及び一つの後部分から形成される。これらは、少なくとも一つの接続シームによってバルーン又はバッグの態様で互いに結合され得る。当該少なくとも一つの接続シームには輪郭要素が
圧力嵌め及び/又は
形状嵌めにより組み入れられ、当該ヘッドレストの表面上にショルダー又は突起の態様で周縁エッジ
を形成
する。その結果、従来の発泡方法において、当該表面にショルダー、突起、及び/又はエッジを有するヘッドレストの製造が許容される。
【0009】
この場合、当該少なくとも一つの支持要素をヘッドレスト本体に接続する接続部材が、当該ヘッドレスト本体の内部に設けられる。当該接続部材とカバーとの間に、特に発泡体である充填材料が配列される。当該充填材料は、そのプロセス中の状態において実質的に液体であるように与えられる。当該カバーは、その内部において、当該プロセス中の状態の充填材料に対する、密封されたキャビティを形成する。
【0010】
当該輪郭要素は、好ましくは、少なくとも部分的に可撓性である。その結果、有利なことに、当該輪郭要素は、ヘッドレストの輪郭に適合することができる。
【0011】
有利なことに、当該ショルダー、突起、及び/又はエッジは、ヘッドレストの平坦表面領域及び湾曲又は丸まった表面領域双方に配列することができる。
【0012】
特に好ましくは、当該輪郭要素は矩形断面を有し、プラスチック材料又はプラスチック混合物から製造される。この場合、当該輪郭要素は、当該ヘッドレストまわりの外周全体又はほぼ全体に形成される。
【0013】
第1方法ステップにおいて、カバーの前部分及び後部分が、これらの外面が互いの上になるように配置されて第1シームによって互いに縫いつけられる。
【0014】
第2方法ステップにおいて、輪郭要素が、その下面が第1シーム上になるように配置される。その結果、当該輪郭要素の
内側面が、互いに縫いつけられた当該カバーの2つの部分の端領域と面一又はほぼ面一に終端する。当該輪郭要素は、当該互いに縫いつけられた部分に、第2シームによって縫いつけられる。前記第2シームは、当該輪郭要素の
外側面の領域に延びる。
【0015】
第3方法ステップにおいて、当該前部分の自由端が、当該輪郭要素の
外側面及び上面のまわりに案内されて第3シームによって縫いつけられる。前記第3シームは、当該端領域、当該輪郭要素、及び当該カバーの前部分を貫通して延びる。当該第3シームは、当該輪郭要素の
内側面の領域に配列される。この場合、これらのシームは、引き続いてカバーがプラスチック材料の発泡を受けても、当該輪郭要素のねじれが確実に防止されるように配列される。
【0016】
第4方法ステップにおいて、当該カバーは鋳型に導入されて液体プラスチック材料又はプラスチック混合物による発泡を受ける。当該カバーの接続シーム及び輪郭要素に対応する溝が鋳型の中に形成される。当該カバーが発泡を受ける鋳型に当該カバーを挿入することは、当該ヘッドレストのカバーに縫いつけられた輪郭要素によって単純化される。当該縫いつけられた輪郭要素によって当該カバーに形成されるエッジは、当該鋳型におけるショルダー又は溝に対応する。これにより、ヘッドレストのカバー全体が、当該挿入と発泡プロセスとの間の期間中、当該鋳型に確実に固定される。
【0017】
第5方法ステップにおいて、当該カバーの内部において凝固したプラスチック材料又は凝固したプラスチック混合物から発泡体が形成される。前記発泡体は、当該カバーの内部を完全に又はほぼ完全に充填する。
【0018】
本発明に係る、ショルダー、エッジ、又は突起を有するヘッドレストの製造にとって、特に有利な態様では、付加的な操作ステップが不要である。
【0019】
特に有利なことに、本発明によって、ヘッドレストの製造中に多数の異なる設計及び形状が許容される。
【0020】
添付の概略図面を参照して本発明が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る方法によって製造されたヘッドレストを、斜視図において周縁エッジにより概略的に示す。
【
図3】カバーに縫い込まれた接続シーム及び輪郭要素の断面図を概略的に示す。
【
図4】発泡カバーにおける輪郭要素の断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
互いに対応する部材には、すべての図面において同じ参照番号が与えられる。
【0023】
図1において、本発明に係る方法によって製造されたヘッドレスト1が、斜視図において周縁エッジ2により概略的に示されている。
【0024】
当該ヘッドレスト1は、ヘッドレスト1の表面を形成するカバー3を含む。カバー3は、少なくとも一つの前部分3.1及び後部分3.2から形成される。
【0025】
カバー3は、例えば織物又は皮革からなる。
【0026】
ヘッドレスト1の下面には、少なくとも一つの支持要素4が配列される。支持要素4によってヘッドレスト1は、図示しない車両シートに締結される。この態様において、高さ及び/又は傾斜が調整され得る。
【0027】
ヘッドレスト1の製造方法において、前部分3.1及び後部分3.2からなるカバー3は、バルーン又はバッグの態様で互いに縫い合わせられる。その結果、カバー3の内部にはキャビティが形成される。
【0028】
引き続き、カバー3が従来の態様で、図示しない鋳型に導入されて液体プラスチック材料又はプラスチック混合物によって発泡を受ける。前記プラスチック材料又はプラスチック混合物は、その後鋳型において硬化されて
図4に示される発泡体14を形成する。その後、ヘッドレスト1は鋳型から取り外される。
【0029】
前記発泡によっては通常、ヘッドレスト1の表面上又はその部位にエッジ2を製造することができない。エッジ2はまた、ショルダー又は突起として形成され得る。
【0030】
ヘッドレスト1の周囲表面により鋭く画定されるエッジ2を、従来の発泡方法によって製造するべく、輪郭要素6が、前部分3.1と後部分3.2との接続シーム5上に又はこれの中において、カバー3に組み入れられる。
【0031】
接続シーム5及び輪郭要素6に対応する溝(詳細には図示せず)が、発泡を目的としてカバー3が導入される鋳型に形成される。
【0032】
当該輪郭要素が
図2に概略的に示される。輪郭要素6は、好ましくはプラスチック材料から形成され、少なくとも部分的に可撓性である。
【0033】
この部分的可撓性をもたらすべく又は補助するべく、輪郭要素6には、その湾曲部の外面において互いに隣接配列される複数の切れ込み7が設けられる。
【0035】
エッジ2は
、好ましくは、5から8mmの範囲にある輪郭要素6厚さに対応する高さhを有する。
【0036】
カバー3に縫い込まれた接続シーム5及び輪郭要素6の断面図が
図3に概略的に示される。
【0037】
接続シーム5は好ましくは、3つの別個のシーム8.1から8.3から形成される。
【0038】
第1方法ステップにおいて、前部分3.1及び後部分3.2が、これらの外面が互いの上になるように配置されて第1シーム8.1によって互いに縫いつけられる。
【0039】
第2方法ステップにおいて、輪郭要素6が、その下面9が第1シーム8.1上になるように配置される。その結果、輪郭要素6の
内側面10が、互いに縫いつけられた2つの部分3.1及び3.2の端領域11と面一又はほぼ面一に終端する。
【0040】
引き続き、輪郭要素6が、互いに縫いつけられた部分3.1及び3.2に、第2シーム8.2によって縫いつけられる。前記第2シーム8.2は、輪郭要素6の
外側面12の領域に延びる。
【0041】
第3方法ステップにおいて、前部分3.1の自由端が、輪郭要素6の
外側面12及び上面13のまわりに案内されて第3シーム8.3によって縫いつけられる。前記第3シーム8.3は、端領域11、輪郭要素6、及びカバー3の前部分3.1を貫通して延びる。第3シーム8.3は、輪郭要素6の
内側面10の領域に配列される。
【0042】
第4方法ステップにおいて、カバー3は鋳型に導入されて液体プラスチック材料又はプラスチック混合物による発泡を受ける。カバー3の接続シーム5及び輪郭要素6に対応する溝が鋳型の中に形成される。
【0043】
3つのシーム8.1から8.3によって、カバー3は接続シーム5の領域に密封される。その結果、液体プラスチックがカバー3の内部に充填されるとき、プラスチック材料が、シーム8.1から8.3を通ってカバー3の外面まで流れることがなくなる。
【0044】
第5方法ステップにおいて、カバー3の内部において凝固したプラスチック材料又は凝固したプラスチック混合物から発泡体14が形成される。前記発泡体は、カバー3の内部を完全に又はほぼ完全に充填する。
【0045】
図4において、発泡カバー3における輪郭要素6の断面図が概略的に示されている。
【符号の説明】
【0046】
1 ヘッドレスト
2 エッジ
3 カバー
3.1 前部分
3.2 後部分
4 支持要素
5 接続シーム
6 輪郭要素
7 切れ込み
8.1 第1シーム
8.2 第2シーム
8.3 第3シーム
9 下面
10
内側面
11 端領域
12
外側面
13 上面
14 発泡体
h 高さ