特許第5674952号(P5674952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5674952マグネタイト−バーネサイト混合物及びその合成方法並びに水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674952
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】マグネタイト−バーネサイト混合物及びその合成方法並びに水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/08 20060101AFI20150205BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20150205BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20150205BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20150205BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C01G49/08 ZZAB
   B01J20/30
   C02F1/28 E
   B03C1/00 A
   B01J20/06 B
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-531473(P2013-531473)
(86)(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公表番号】特表2013-540093(P2013-540093A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】KR2011004967
(87)【国際公開番号】WO2012165695
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2013年4月1日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0050419
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508298824
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ゲオサイエンス アンド ミネラル リソーセズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ−ゴン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョル−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ホ−チョル
(72)【発明者】
【氏名】ナム,イン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ドン−ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,セ−ウン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−064044(JP,A)
【文献】 特開2006−021132(JP,A)
【文献】 特開2006−225201(JP,A)
【文献】 特開2009−178638(JP,A)
【文献】 特開2004−255376(JP,A)
【文献】 特開2008−284520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0116504(US,A1)
【文献】 特開平10−072218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/00−49/08
B01J 20/00−20/34
C02F 1/20−1/26、1/30−1/38
C02F 1/28
C01B 33/20−39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネタイトを合成する第1合成段階と、
前記マグネタイトの存在下で、塩基性状態を維持するうちマンガンを供給して前記マグネタイトの表面に前記マンガンを吸着させた後、酸化剤とナトリウムとを供給して前記マグネタイトの表面バーネサイトを合成することで、前記マグネタイトと前記バーネサイトとが結合されたマグネタイト−バーネサイト混合物を形成る第2合成段階と、
前記マグネタイトバーネサイト混合物を精製する精製段階と、を含んでなり、
前記マグネタイト−バーネサイト混合物は、6〜60μmの粒度で形成されることを特徴とするマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項2】
記第1合成段階では、空気と接触した状態で、鉄イオンを含む第1溶液と水酸化イオンを含む第2溶液とを互いに混合し、混合液が塩基性状態を維持する状態で前記マグネタイトを合成することを特徴とする請求項1に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項3】
前記第1溶液は塩化鉄溶液であり、
前記第2溶液は水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とする請求項2に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項4】
前記第2溶液を前記第1溶液に混合し、
前記混合液のpH11〜12に維持することを特徴とする請求項2に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項5】
前記第2合成段階では、前記第1合成段階で合成されたマグネタイトにマンガンイオンを含む第3溶液、ナトリウムイオンを含む第4溶液及び前記第3溶液に含まれるマンガンイオンを酸化させるための酸化剤を添加し、前記マグネタイト、前記第3溶液及び前記第4溶液を含む全体溶液のpHを8以上に維持し、前記マグネタイトの表面でバーネサイトを合成ることを特徴とする請求項1に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項6】
前記第3溶液は塩化マンガン溶液であり、
前記酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする請求項5に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項7】
前記第4溶液は、水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とする請求項5に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項8】
前記水酸化ナトリウム溶液のモル濃度は、前記第3溶液のマンガンイオンのモル濃度の3.5〜5倍であることを特徴とする請求項7に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項9】
前記第1合成段階では、鉄イオンを含む第1溶液を用い、
前記第2合成段階では、マンガンイオンを含む第3溶液を用い、
前記第1溶液に含まれる鉄イオンに対する前記第3溶液に含まれるマンガンイオンのル比が0.254であることを特徴とする請求項1に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項10】
前記精製段階では、磁力を用いて、前記マグネタイトバーネサイト混合物を分離することを特徴とする請求項1に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項11】
前記精製段階では、磁石を用い、
前記磁石は、1,000〜5,000ガウスの磁場を形成することを特徴とする請求項10に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項12】
前記マグネタイトバーネサイト混合物は、粒団状(aggregate)であることを特徴とする請求項1に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法。
【請求項13】
陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とを共に除去するためのものであり、
求項1ないし12のいずれか一項に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法によって合成されたことを特徴とするマグネタイト−バーネサイト混合物。
【請求項14】
陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とがいずれも含まれている廃水を処理するためのものであり、
求項1ないし12のいずれか一項に記載のマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法によって合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物を前記廃水に入れ込み、前記陽イオン汚染物質及び前記陰イオン汚染物質を前記マグネタイト−バーネサイト混合物に吸着させて除去することを特徴とする水処理方法。
【請求項15】
前記マグネタイト−バーネサイト混合物を用いて前記陽イオン汚染物質及び前記陰イオン汚染物質を除去した後、磁力を用いて前記陽イオン汚染物質及び前記陰イオン汚染物質が吸着ているマグネタイト−バーネサイト混合物を前記廃水から分離することを特徴とする請求項14に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記マグネタイトを合成するための鉄イオンのモル濃度に対する前記バーネサイトを合成するためのマンガンイオンのモル濃度を調節することで、前記マグネタイト−バーネサイト混合物で前記マグネタイトと前記バーネサイトとの含量比を定め、
前記廃水の成分分析により、前記陰イオン汚染物質が前記陽イオン汚染物質に比べて多い場合、前記マグネタイト−バーネサイト混合物で前記マグネタイトの含量を前記バーネサイトの含量より高くし、逆の場合、前記バーネサイトの含量を前記マグネタイトの含量より高くして前記陽イオン汚染物質及び前記陰イオン汚染物質を除去することを特徴とする請求項14に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理技術分野に係り、特に、陽イオン汚染物と陰イオン汚染物とを同時に吸着して除去できる吸着剤と、この吸着剤を製造するための方法及び吸着剤を使う水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水の浄化には吸着、膜分離、沈澱、生物学的分解、化学的分解などの多様な方法が適用されている。産業廃水、鉱山排水などの汚水は、Cu2+、Pb2+、Zn2+、Ni2+、Cd2+などの陽イオン汚染物質と、AsO3−、AsO3−、Cr2−、PO3−、F、NO3−などの陰イオン汚染物質とが混在する場合が非常に多い。このような陽イオンと陰イオンとの汚染物質をいずれも含む汚水を浄化させる既存工法は、陽イオン汚染物質を除去する過程と、陰イオン汚染物質を除去する過程との2つ以上の工法を組み合わせて活用している。したがって、既存の汚染浄化方法はいろいろな工法を適用しており、手続きが複雑で高コストがかかるという問題点があった。
【0003】
陽イオンあるいは陰イオン汚染物質を除去する多様な吸着剤が開発され、現場に適用されている。吸着による汚染物質の除去は、吸着剤を汚水に混合して汚染物質を吸着させた後で吸着剤を除去する方法と、吸着剤で充填されたカラムを通過させて汚染物質を除去する方法とに大別される。既存の吸着剤は、陽イオンまたは陰イオンに対する吸着能は高いが、陽イオンと陰イオン汚染物質を同時に除去できる能力を持つ吸着剤は制限的である。
【0004】
また吸着剤を汚水に混合して除去する場合、吸着剤は汚染物質に対する吸着力を高めるために、吸着面積の広い微細な粒子状になっている。
【0005】
例えば、現場に広く使われている活性炭は、廃水から陽イオン及び陰イオン汚染物質を同時に除去できると知られている。そして、活性炭は、比表面積が大きくて吸着能にも優れていると知られている。しかし、活性炭の場合、水処理が終わった後で分離回収し難いという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とを同時に吸着して除去でき、表面積の広い微細粒子で構成されて吸着能に優れ、水処理後の分離効率が向上した吸着剤、この吸着剤を合成するための合成方法及びこの吸着剤を用いる水処理方法を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明によるマグネタイト−バーネサイト合成方法は、マグネタイトを合成する第1合成段階と、前記マグネタイトの存在下で、塩基性状態を維持するうちマンガンを供給して前記マグネタイトの表面に前記マンガンを吸着させた後、酸化剤とナトリウムとを供給して前記マグネタイトの表面にバーネサイトを合成することで、前記マグネタイトとバーネサイトとが結合された混合物を形成させる第2合成段階と、前記マグネタイトとバーネサイトとの混合物を精製する精製段階と、を含んでなることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とを共に除去するためのものであり、前記の合成方法によって合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物を提供する。
【0009】
また本発明は、陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とがいずれも含まれている廃水を処理するためのものであり、前記の合成方法によって合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物を前記廃水に入れ込み、前記陽イオン及び陰イオン汚染物質を吸着させて除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による合成方法によってマグネタイト−バーネサイト混合物を容易に合成する。
【0011】
本発明によって製造されたマグネタイト−バーネサイト混合物は、陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とを同時に吸着でき、廃水処理において効果的である。
【0012】
また、マグネタイト−バーネサイト混合物は粒径が小さくて表面積が広いため、汚染物質の吸着能に優れているという利点がある。またマグネタイト−バーネサイト混合物は、マグネタイトが強磁性体であるので、廃水で汚染物質を吸着した後、磁場を用いて容易に浄化処理された廃水から回収できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態によるマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法の概略的なフローチャートである。
図2】合成時の鉄及びマンガンの濃度によるマグネタイト−バーネサイト混合物の帯磁率を示すグラフである。
図3】合成時の鉄及びマンガンの濃度によるマグネタイト−バーネサイト混合物のXRDパターン写真である。
図4】マグネタイト−バーネサイト混合物の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5】マグネタイト−バーネサイト混合物の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図6】合成時の鉄及びマンガンの濃度の割合によって最終的に合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物の化学組成(鉄及びマンガンの濃度)をウェット分析法で分析した図表である。
図7】本発明の一実施形態による水処理方法の概略的なフローチャートである。
図8】マグネタイト−バーネサイト混合物の陽イオン汚染物質である銅の除去率を実験した結果を示す図表である。
図9】マグネタイト−バーネサイト混合物の陰イオン汚染物質であるヒ素の除去率を実験した結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記目的を達成するための本発明によるマグネタイト−バーネサイト合成方法は、マグネタイトを合成する第1合成段階、前記マグネタイトの存在下で、pHを8以上に維持するうちマンガン及びナトリウムを供給して、前記マグネタイトの表面にバーネサイトが合成されて前記マグネタイトとバーネサイトとが結合された粒団状の混合物を形成させる第2合成段階、及び前記マグネタイトとバーネサイトとの混合物を精製する精製段階を含んでなることに特徴がある。
【0015】
本発明によれば、前記マグネタイトを合成する第1合成段階では、空気と接触した状態で、鉄イオンを含む第1溶液と水酸化イオンを含む第2溶液とを互いに混合してマグネタイトを合成する。
【0016】
そして前記第1溶液は塩化鉄溶液であり、前記第2溶液は水酸化ナトリウム溶液であり、前記第2溶液を前記第1溶液に混合して前記混合液のpHは8以上に維持し、さらに望ましくはpH11〜12に維持する。
【0017】
また前記第2合成段階では、前記第1合成段階で合成されたマグネタイトにマンガンイオンを含む第3溶液と、ナトリウムイオンを含む第4溶液と、前記第3溶液内のマンガンイオンを酸化させるための酸化剤とを添加し、前記マグネタイトと第3溶液及び第4溶液とを含む全体溶液のpHを8以上、望ましくは11〜12に維持して、前記マグネタイトの表面でバーネサイトを合成させることが望ましい。
【0018】
また、前記第3溶液は塩化マンガン溶液であり、酸化剤は過酸化水素であり、前記第4溶液は水酸化ナトリウム溶液が使われる。
【0019】
前記第4溶液の水酸化ナトリウム溶液のモル濃度は、前記第3溶液のマンガンイオンのモル濃度の3.5〜5倍であることが望ましく、前記第1溶液の鉄イオンと前記第3溶液のマンガンイオンとのモル濃度に比べて0.25〜4倍であることが望ましい。
【0020】
そして、前記精製段階では、磁力を用いてマグネタイトとバーネサイトとの混合物を分離し、これに使われる磁石は1,000〜5,000ガウスの磁場を形成することが望ましい。
【0021】
そして、前記合成方法によって製造されたマグネタイト−バーネサイト混合物は、6〜60μmの粒度で形成される。一方、本発明は、前記方法のうちいずれか一つの方法で製造されたマグネタイト−バーネサイト混合物を提供する。
【0022】
また、本発明では、前記方法で製造されたマグネタイト−バーネサイト混合物を用いて廃水を処理する水処理方法を提供し、本水処理方法では、陽イオン汚染物質はバーネサイトに吸着されて除去され、陰イオン汚染物質はマグネタイトに吸着されて除去されるところに特徴がある。
【0023】
また本発明による水処理方法では、前記マグネタイト−バーネサイト混合物を用いて前記汚染物質を除去した後、磁力を用いて前記汚染物質が吸着されているマグネタイト−バーネサイト混合物を廃水から分離する。
【0024】
そして、前記マグネタイトを合成するための鉄イオンのモル濃度に対する前記バーネサイトを合成するためのマンガンイオンのモル濃度を調節することで、最終に製造されるマグネタイト−バーネサイト混合物でマグネタイトとバーネサイトとの含量比を定め、前記廃水の成分分析により、前記陰イオン汚染物質が陽イオン汚染物質に比べて多い場合、前記マグネタイト−バーネサイト混合物で前記マグネタイトの含量を前記バーネサイトの含量より高くし、逆の場合、前記バーネサイトの含量が前記マグネタイトの含量より高くなるように製造して前記汚染物質を除去することが望ましい。
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態によるマグネタイト−バーネサイト混合物とその合成方法についてさらに説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態によるマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法の概略的なフローチャートである。図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるマグネタイト−バーネサイト混合物の合成方法100は、第1合成段階10、第2合成段階20及び精製段階30を含む。
【0027】
第1合成段階10は、マグネタイトを人工的に合成する過程である。マグネタイト(Fe)は、鉄イオンを含む第1溶液に水酸化イオンを含む第2溶液を添加して合成する。そして第1溶液と第2溶液とが互いに反応する時に空気に露出された状態で攪拌して形成する。
【0028】
本実施形態で鉄イオンを含む第1溶液としては塩化第一鉄水和物(FeCl・4HO)溶液が使われる。塩化第一鉄を水和物形態に使うのは、水への溶解度を高めるためである。塩化第一鉄は、第1溶液内には2価の鉄イオンが含まれている。
【0029】
また本実施形態で水酸化イオンを含む第2溶液としては、水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が使われる。水酸化ナトリウム溶液は第1溶液に添加され、第1溶液と第2溶液とが混合した混合液の塩基性状態を維持させる。特に本実施形態で混合液はpH11〜12を維持させる。
【0030】
水酸化ナトリウム溶液は、マグネタイトが合成されるのに十分な水酸化イオンを提供し、本実施形態では0.1〜5M濃度の水酸化ナトリウム溶液を使う。そして塩化第一鉄溶液の濃度は、最終的に合成されるマグネタイト−バーネサイト混合物でマグネタイトの含量によって変わる。
【0031】
第1溶液及び第2溶液を空気に露出させた状態で互いに混合した後、30〜60分ほど反応させれば、下記の反応式(1)のようにマグネタイトが形成される。
【0032】
Fe2++2Fe3++8OH→Fe+4HO (1)
すなわち、第1溶液から溶出された2価鉄イオンのうち一部は溶存酸素によって酸化して3価の鉄イオンになり、2価と3価との鉄イオンが水酸化イオンを消耗しつつマグネタイトを形成する。マグネタイトは固体形態に沈澱される。
【0033】
本実施形態で混合液は塩基性(約pH8以上)を維持せねばならないが、前記の反応式1は塩基性状態で起きるからである。さらに、混合液のpHが高くなるほど合成されるマグネタイトの粒子が小さくなって表面積が広くなるので、吸着効率の優秀なマグネタイトが合成される。但し、pH12を超過する溶液の使用には高コストが要求されるので、第2溶液を添加してpHを11〜12に維持する。
【0034】
第2合成段階20は、第1合成段階10で合成されたマグネタイトの表面にバーネサイトを合成し、マグネタイトとバーネサイトとが結合された混合物を形成する過程である。
【0035】
マグネタイトの表面にバーネサイトを合成するためには、先ず固体状態のマグネタイトの存在下でマンガンイオンを供給する。
【0036】
本実施形態でマグネタイトは、第1合成段階で合成されたものを使うが、第1合成段階でマグネタイトを分離して乾燥させず、固体相のマグネタイトが沈澱されている第1溶液と第2溶液との混合液に、マンガンイオンを含む第3溶液を添加して互いに反応させる。
【0037】
本実施形態でマンガンイオンを含む第3溶液としては、塩化マンガン水和物(MnCl・4HO)溶液を使う。水和物形態の塩化マンガンを使うのは、水への溶解度を高めるためである。塩化マンガン水和物溶液の濃度は、最終的に合成されるマグネタイト−バーネサイト混合物でバーネサイトが占める相対的な割合(含量比)によって、前記塩化第一鉄水和物溶液の濃度との間で定められる。
【0038】
前記第1溶液と第2溶液とが混合された混合液は、塩基性状態、特にpH11〜12を維持している状態で第3溶液を添加した後、10分ほど攪拌しつつ反応させれば、混合液内に沈澱されているマグネタイトの表面にマンガンイオンが吸着される。
【0039】
マグネタイトのPZC(point of zero charge)は約pH8であるので、pHが11〜12である混合液内でマグネタイトの表面は負電荷を帯びる。これに、陽イオンであるマンガンイオンはマグネタイトの表面に電気的に吸着され、残りは混合液内に存在する。
【0040】
マンガンがマグネタイトに十分に吸着されるのを待ってナトリウムイオンを含む第4溶液及び酸化剤を添加する。本実施形態でナトリウムイオンを含む第4溶液としては水酸化ナトリウム溶液を使い、酸化剤としては過酸化水素を使う。
【0041】
酸化剤の濃度は、激しい反応を回避し、かつマンガンイオンの酸化のために3〜6質量%濃度の過酸化水素を使う。すなわち、酸化剤(過酸化水素)の濃度が高すぎれば、熱及び酸素ガスが発生して反応が激しく進行する。そしてバーネサイトが生成されるに十分な量のナトリウムイオンが供給されねばならず、バーネサイト合成過程で生成される水素イオンの中和に必要な十分な量の水酸化イオンが供給されねばならないので、第4溶液は、第3溶液でマンガンのモル濃度の3.5〜5.5倍モル濃度の水酸化ナトリウム溶液を使う。本実施形態では、4倍モル濃度の水酸化ナトリウム溶液を使った。
【0042】
但し、マグネタイトが沈澱されている混合液には、第2溶液である水酸化ナトリウム溶液が含まれているので、混合液内の第2溶液の濃度を鑑みて第4溶液の濃度を定めればよい。
【0043】
第4溶液及び酸化剤を添加すれば、下記の反応式(2)のような反応が起きる。
【0044】
Na+Mn3++Mn4++4OH+15HO→NaMn・15HO+4H (2)
すなわち、酸化剤は、2価のマンガンイオンを3価または4価に酸化させ、酸化されたマンガンイオンとナトリウムイオン及び水酸化イオンとが互いに反応してバーネサイト(NaMn・15HO)を形成する。マンガンイオンがマグネタイトの表面に吸着した状態でバーネサイトに合成されるので、マグネタイトは、バーネサイトが合成される結晶核として作用する。これによって、マグネタイトとバーネサイトとが結合された形態の混合物が形成され、マグネタイトとバーネサイトとは共に粒団(aggregate)を形成する。
【0045】
前記のように、第2合成段階でマグネタイト−バーネサイト混合物が固体状態に合成されれば、この混合物を溶液から分離して精製する精製段階30を行う。
【0046】
精製段階30で、固体状態のマグネタイト−バーネサイト混合物を溶液から分離するために磁石を用いる磁力分離を行う。溶液内には、磁性体であるマグネタイト−バーネサイト混合物以外に、非磁性体である酸化鉄、酸化マンガンが混在する。マグネタイトは強磁性体であり、磁力に敏感に反応して磁石に取り付けられるので、磁性を用いて分離できる。公知のウェット磁力分離器(図示せず)などを用いて、溶液からマグネタイト−バーネサイト混合物を分離する。
【0047】
本実施形態で磁力分離に使う磁石は、1,000〜5,000ガウスの磁場を持つ電磁石である。マグネタイトが強磁性体であるので、磁場の強度が大きくなくても容易に分離できる。
【0048】
磁力分離後には、固液分離及び乾燥過程を通じて最終的にマグネタイト−バーネサイト混合物を精製する。
【0049】
本発明の結果物であるマグネタイト−バーネサイト混合物の特性について概略的に説明する。
【0050】
本発明で合成した吸着剤(マグネタイト−バーネサイト混合物)は、陰イオン汚染物質に対する吸着能に優れ、強磁性のマグネタイトと、陽イオン汚染物質に対する吸着能の優れたバーネサイトとが物理的に一つに固められている粒団状の物質である。
【0051】
マグネタイトは、零電荷点(point of zero charge)がpH8であり、水溶液pH8以下では表面が正電荷を持つ。pH8以下でマグネタイトの表面は正電荷を持つので、陰イオン汚染物質(AsO3−、AsO3−、Cr2−、PO3−、F、NO3−など)を電気的な力によって吸着する。また酸化鉄に対する化学的親和力の高いAsO3−、AsO3−、Cr2−、PO3−は、pH8以上でも化学吸着によって吸着されると分かる。
【0052】
バーネサイトは、陽イオン交換能が240cmol/kgと非常に高く、零電荷点がpH2と知られている。pH2以上でバーネサイト表面は負電荷を持ち、高い陽イオン交換能によって陽イオン汚染物質(Cu2+、Pb2+、Zn2+、Ni2+、Cd2+など)を吸着する能力が非常に高い。
【0053】
また本発明によるマグネタイト−バーネサイト混合物の粒度は、約6〜60μmで非常に小さな粒子を形成した。このように粒子が小さければ、同重量の組み立て粒子に比べて表面積がずっと広くなるので、汚染物質を吸着できる能力が向上するという利点がある。
【0054】
以下、前記方法によるマグネタイト−バーネサイト合成方法の実験例について説明する。
【0055】
先ず、マグネタイトを合成した。0.02Mの塩化第一鉄水和物溶液500mLを1Lプラスチックビーカーに入れ、1Mの水酸化ナトリウム溶液を少しずつ加えつつ攪拌した。混合した溶液はpH11〜12に維持しつつ30分間反応させて合成した。マグネタイトを合成した後、マンガンをマグネタイトに吸着させるために塩化マンガン水和物溶液500mlを添加した後、約10分間攪拌した。この溶液の濃度は、0.005〜0.08Mの範囲(鉄に比べて0.25〜4倍の濃度)内で変化させつつ合成した。
【0056】
次いで、6%濃度の過酸化水素が含有された水酸化ナトリウム溶液500mLを添加した後、10分間攪拌してバーネサイトとマグネタイトとの混合物を合成した。水酸化ナトリウムの濃度は、塩化マンガン水和物溶液のマンガン濃度の4倍にした。
【0057】
最終的に合成物質がビーカー内に沈澱され、懸濁液で磁場1,000−5,000ガウスで高勾配磁力分離器(high gradient magnetic separator)を用い、磁性物質と非磁性物質とを分離して精製した。
【0058】
このように得られた混合物は、X線回折(XRD)を用いる鉱物組成、ウェット分析(dithionite−citrate−bicarbonate)法による化学組成、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いる粒子状及び鉱物組成を分析した。
【0059】
本実験でマグネタイト−バーネサイトを溶液から分離すれば、マグネタイト−バーネサイト混合物が含まれた磁性物質は黒色を帯び、磁性物質が分離された後の非磁性物質のみからなる溶液は透明なことが分かる。
【0060】
また図2には、マグネタイト−バーネサイト混合物で鉄とマンガンとの割合による帯磁率を示すグラフが図示されており、図3には、合成時の鉄及びマンガンの濃度によるマグネタイト−バーネサイト混合物のXRDパターン写真が図示されている。
【0061】
図2から分かるように、マンガンに対する鉄の濃度が増加するほど帯磁率が増加するということが分かる。そして、図3に示したように、X線回折分析結果、合成混合物はマグネタイトとバーネサイトとで構成されており、合成時にMn濃度が増加するほどバーネサイトの含量が増加し、Fe濃度が増加するほどマグネタイトの含量が増加する。
【0062】
また前記の実験例によって合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物写真が、図4及び図5に示されている。図4は、マグネタイト−バーネサイト混合物の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図5は、マグネタイト−バーネサイト混合物の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0063】
図4及び図5を参照すれば、本発明による方法で合成された物質の形態を走査電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡写真で観察した結果、微細な板状のバーネサイトとマグネタイト粒団が観察された。
【0064】
図6は、合成時の鉄及びマンガンの濃度割合によって最終的に合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物の化学組成(鉄及びマンガンの濃度)をウェット分析法で分析した図表である。
【0065】
図6の図表を参照すれば、溶液1(塩化第一鉄水和物溶液)に対する溶液3(塩化マンガン水和物溶液)の濃度が増加するほど、最終合成物におけるマンガンの相対的含量が鉄に比べて増加するということが分かった。
【0066】
一方、本発明では、前記方法で合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物を用いて廃水を処理する水処理方法を提供する。
【0067】
本発明による水処理方法が、図7に示されている。図7は、本発明の実施形態による水処理方法の概略的なフローチャートである。図7を参照すれば、本発明の一実施形態による水処理方法200は、廃水分析210、マグネタイト−バーネサイト合成220、廃水処理230及び分離240の工程により行われる。
【0068】
廃水分析では、処理しようとする廃水内の汚染物質のうち陽イオン汚染物質及び陰イオン汚染物質の含量を分析する。このような分析によりマグネタイト−バーネサイト混合物を合成する時、マグネタイトとバーネサイトとの相対的含量を定められる。すなわち、陰イオン汚染物質が多い場合、合成時に鉄イオンの濃度をマンガンイオンの濃度より相対的に高くして混合物でマグネタイトの含量を高め、陽イオン汚染物質が多い場合、合成時にマンガンイオンの濃度を高めてバーネサイトの含量を高める。
【0069】
こんなに廃水分析が終わった後は、前記の分析結果に基づいて本発明によってマグネタイト−バーネサイト混合物を合成する。そして、合成時にマグネタイトとバーネサイトとの相対的含量を調節する。
【0070】
マグネタイト−バーネサイト混合物が合成されれば、この混合物を廃水に入れ込めば、廃水内の陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とがそれぞれ混合物に吸着され、廃水は浄化処理される。
【0071】
汚染物質がマグネタイト−バーネサイト混合物に吸着された後には、磁力分離器を用いて浄化処理の完了した廃水からマグネタイト−バーネサイト混合物を分離する。マグネタイトは磁性物質であるので、弱い磁場(1,000〜5,000ガウス)でも容易に分離できる。
【0072】
本発明によって製造されたマグネタイト−バーネサイト混合物に対する汚染物質の吸着能を実験し、その結果が図8及び図9に示されている。
【0073】
図8は、マグネタイト−バーネサイト混合物の陽イオン汚染物質である銅の除去率を実験した結果を示す図表であり、図9は、マグネタイト−バーネサイト混合物の陰イオン汚染物質であるヒ素の除去率を実験した結果を示す図表である。
【0074】
陽イオン汚染物質の除去能を試すために、マグネタイト−バーネサイト混合物0.02gとCu 100mg/Lとを含む水溶液10mlを1時間反応させた後、溶液に残留するCuの濃度を測定した。図8を参照すれば、合成物質内の酸化マンガン鉱物であるバーネサイトの含量が増加するほど、合成物質によるCuの吸着が増加した。
【0075】
また、陰イオン汚染物質に対する除去能を試すために、合成物質0.05gとAs(III)1mg/Lとを含む水溶液50mlを1時間反応させた後、溶液に残留するAs濃度を測定した。図9を参照すれば、陰イオン汚染物質であるAs(III)に対する合成物質の吸着は、酸化鉄鉱物であるマグネタイトの含量が増加するほど増加した。
【0076】
すなわち、マグネタイト−バーネサイト混合物で、廃水内の汚染物質の種類によってマグネタイト及びバーネサイトの含量を調節することで、陽イオン及び陰イオン汚染物質の除去率を高めることができる。もちろん、いかなる場合でも、本混合物によって陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とが共に除去される。
【0077】
以上で説明したように、本発明による方法によって合成されたマグネタイト−バーネサイト混合物は、陽イオン汚染物質と陰イオン汚染物質とをいずれも吸着でき、表面積が広くて吸着能に優れるという長所がある。
【0078】
そして、これまで第1合成段階では、塩化第一鉄及び水酸化ナトリウムを用いてマグネタイトを合成すると説明及び図示したが、2価鉄イオン及び水酸化基を提供する物質を用いて合成してもよい。また、固体状態のマグネタイト鉱石を微粉砕して使うことも、第1合成段階による合成の概念に含まれる。
【0079】
本発明は、添付した図面に図示された一実施形態を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は特許請求の範囲のみによって定められねばならない。
図1
図2
図3
図6
図7
図8
図9
図4
図5