特許第5674961号(P5674961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674961
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】高圧電気ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 9/00 20060101AFI20150205BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20150205BHJP
   H02G 9/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01B9/00 Z
   H01B7/34 C
   H02G9/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-543541(P2013-543541)
(86)(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-505325(P2014-505325A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2010069813
(87)【国際公開番号】WO2012079631
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】511169667
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】エメ, ロベルト
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−051173(JP,U)
【文献】 実開昭63−109522(JP,U)
【文献】 特開昭58−112204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 9/00
H01B 7/42
H02G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのケーブル心線(2a、2b、2c)と、
高分子を含み、冷却液を搬送するように適合された、前記ケーブル心線を冷却するための少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)と、
前記少なくとも1つのケーブル心線および前記少なくとも1つの冷却パイプを取り囲むケーブル被覆(6)と
を備える、高圧電気ケーブル(1)であって、
前記電気ケーブルが、前記少なくとも1つのケーブル心線(2a、2b、2c)を取り囲み、前記少なくとも1つのケーブル心線(2a、2b、2c)および前記少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)と熱接触するように配置された、少なくとも1つの熱伝導性要素(5a、5b、5c)を備え、前記少なくとも1つの熱伝導性要素が、熱伝導性の第1の金属層(5a、5b、5c)であり、前記電気ケーブルが、前記少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)を取り囲み、前記少なくとも1つの冷却パイプおよび前記第1の金属層(5a、5b、5c)と熱接触するように配置された、熱伝導性の第2の金属層(8a、8b、8c)をさらに備える、高圧電気ケーブル。
【請求項2】
前記少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)が可撓性高分子パイプである、請求項1に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項3】
前記第2の金属層(8a、8b、8c)が金属ブレードである、請求項1または2に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項4】
前記第1の金属層(5a、5b、5c)または前記第2の金属層(8a、8b、8c)が、金属ラミネートまたは金属テープである、請求項1または2に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項5】
前記電気ケーブルが、
3つのケーブル心線(2a、2b、2c)であって、各々が、前記ケーブル心線と熱接触するように配置された第1の金属層(5a、5b、5c)によって取り囲まれる、3つのケーブル心線と、
前記3つのケーブル心線(2a、2b、2c)と前記ケーブル被覆(6)との間に形成された空間に配置され、前記第1の金属層と熱接触している、3つの冷却パイプ(7a、7b、7c)と
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項6】
前記電気ケーブルが、前記電気ケーブル(1)の中央の前記3つのケーブル心線(2a、2b、2c)の間に形成された空間に配置され、前記第1の金属層(5a、5b、5c)と熱接触するように配置された、第4の冷却パイプを備える、請求項5に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項7】
前記電気ケーブルが、前記少なくとも1つのケーブル心線(2a、2b、2c)および前記少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)を取り囲み、前記熱伝導性要素(5a、5b、5c)および前記冷却パイプ(7a、7b、7c)と熱接触するように配置された、熱伝導性金属シース(9)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項8】
前記第1の金属層(5a、5b、5c)が、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する、請求項1に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項9】
前記第2の金属層(8a、8b、8c)が、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する、請求項1に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項10】
前記熱伝導性金属シース(9)が、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する、請求項7に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項11】
前記第1の金属層(5a、5b、5c)および/または前記第2の金属層(8a、8b、8c)がアルミニウムで作製され、0.02〜2.0mmインターバルの、好ましくは0.2〜0.6mmインターバルの平均厚を有する、請求項1に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項12】
前記第1の金属層(5a、5b、5c)および/または前記第2の金属層(8a、8b、8c)が銅で作製され、0.01〜1.5mmインターバルの、好ましくは0.1〜0.3mmインターバルの平均厚を有する、請求項1に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項13】
前記少なくとも1つのケーブル心線(2a、2b、2c)と前記少なくとも1つの冷却パイプ(7a、7b、7c)との間に熱伝導性の充填剤が配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載の高圧電気ケーブル。
【請求項14】
前記ケーブルが、冷却液を搬送する少なくとも2つの内蔵型冷却パイプ(7a、7b、7c)を備え、前記内蔵型冷却パイプのうちの1つが、前記冷却液の復帰のために使用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の高圧電気ケーブルを備える冷却系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵型冷却を備える高圧電気ケーブルに関する。電気ケーブルは、少なくとも1つのケーブル心線と、ケーブル心線を冷却するための少なくとも1つの冷却パイプとを備える。
【0002】
「高電圧」とは、10kV以上の電圧を指し、しばしば、100kVのように、それよりもはるかに高くなる。
【背景技術】
【0003】
高電圧電力ケーブルの導体は、電力を送るときに熱を発生する。この熱は、導体の周りに配置されたケーブル絶縁を通して伝達され、ケーブルの周囲における温度は、それらの熱損失に起因して上昇する。導体は、たとえば、銅またはアルミニウムで作製され、本明細書で言及される電気絶縁は高分子とすることができ、さらに、典型的には架橋ポリエチレンまたは油浸紙絶縁を含む。導体中で発生した熱は、導体の温度が規定するインターバル内で維持されない場合、絶縁の劣化につながることがある。導体の温度を規定されたインターバルに保つ1つの方法は、導体面積を増大させることである。しかしながら、導体において使用される材料は高価なので、これは望ましくなく、また、導体面積を増大させることについては、電気絶縁材料の量を増加させることが必要となる。
【0004】
電力ケーブルが地下に置かれる場合、ケーブル中で電力を送るときに生じる熱損失に対処するために様々な方法がある。たとえば、ケーブルに隣接する土壌に、土壌の温度を維持するために冷却液を通すことができるパイプを埋め込むことが可能である。別の方法は、1つまたは複数のケーブルを、冷却媒体、たとえば、空気または水を循環させるパイプまたはダクト中に封入することである。冷却媒体は、導体によって発生するさらなる熱を抽出し、それにより、ケーブルの温度を許容温度限界内に保つ。
【0005】
英国特許第875,930号明細書には、1つまたは複数のケーブル心線を取り囲んでいるシースを封入する、プラスチック材料の外側不浸透性保護カバーまたはシース中で冷却液を循環させるための複数のダクトまたはパイプを備えるケーブルが開示されている。ケーブルが電力を送るときに導体中で発生した熱は、パイプを通って循環する冷却液によって放散され、ケーブルの温度は、許容温度限界内に維持される。
【0006】
特開昭54−056187号要約には、ケーブルのケーブルコア間のすき間に配置された金属またはプラスチック冷却パイプを備える電力ケーブルが開示されている。ケーブルコアの導体中で発生した熱を吸収するように、冷却空気または水が冷却パイプ中に配置される。
【0007】
ヨーロッパ特許第0562331号明細書には、順方向フローおよび逆方向フローのための少なくとも1つの搬送中空ダクトを備える少なくとも1つの1つに束ねられた冷却素子による内蔵型冷却を備える3つのケーブル心線を備える電気ケーブルであって、少なくとも1つの冷却材搬送ケーブル要素が、冷却媒質を保持するためのスチール製の内側パイプを有する、アルミニウムで作製された複合セクションの形態で構築された、電気ケーブルが開示されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、内蔵型冷却パイプを備える従来技術のケーブルと比較して改善された、または少なくとも同じ冷却特性をもち、同時に、製造するための費用効果が高い内蔵型冷却パイプを備える高圧電気ケーブルを提供することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、それらの目的は、少なくとも1つのケーブル心線と、ケーブル心線を冷却するための少なくとも1つの冷却パイプとを備え、冷却パイプが、高分子を含み、冷却液を搬送するように適合された、高圧電気ケーブルを用いて達成される。本電気ケーブルは、少なくとも1つのケーブル心線および少なくとも1つの冷却パイプを取り囲むケーブル被覆をさらに備え、本電気ケーブルは、少なくとも1つのケーブル心線を取り囲み、少なくとも1つのケーブル心線および少なくとも1つの冷却パイプと熱接触するように配置された、少なくとも1つの熱伝導性要素を備える。
【0010】
少なくとも2つのケーブル心線の外側表面と接触するように熱伝導性要素を配置することによって、ケーブル心線から冷却パイプ中に配置された冷却媒体に、効率的な方法で熱が伝導される。また、ケーブル心線の導体中で発生した熱は、ケーブル心線において熱的に均等化される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの熱伝導性要素は、第1の金属層である。第1の金属層は、ケーブル心線を取り囲み、少なくとも1つのケーブル心線と熱接触している。少なくとも1つのケーブル心線の外側表面と接触するように金属層を配置することによって、少なくとも1つのケーブル心線の絶縁全長の周りの温度プロファイルが均等化され、導体から、絶縁を通ってケーブルの半径方向に、ケーブルを取り囲む金属層まで熱が伝達される。また、冷却パイプへの効率的な熱的伝達は、同じ金属層中のケーブル心線からの熱の伝導を介して確保される。また、ケーブルのアースボンディングシステムに応じて、少なくとも1つのケーブル心線を取り囲み得るケーブルスクリーン中に、わずかなまたは大量の総熱損失が発生することがあり、この熱はまた、第1の金属層に伝導される。
【0012】
一実施形態によれば、第1の金属層は、たとえば、アルミニウム、銅またはスチールで作製される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本電気ケーブルは、少なくとも1つの冷却パイプを取り囲み、少なくとも1つの冷却パイプと熱接触するように配置された、熱伝導性の第2の金属層をさらに備える。それにより、冷却パイプの壁を通した熱伝達は、冷却パイプの外周全体の周りで均等化され、冷却パイプ中に配置されるべき冷却液への効率的な熱伝達が達成される。
【0014】
一実施形態によれば、第2の金属層は、たとえば、アルミニウム、銅またはスチールで作製される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの冷却パイプは可撓性高分子パイプで作製される。冷却パイプとして可撓性高分子パイプを電気ケーブル内に配置することによって、内蔵型冷却パイプを備える電気ケーブルの製造が容易になる。ケーブルの組付け中に、可撓性高分子パイプを簡単にケーブル中に組み込むことができるとからである。「可撓性」とは、冷却パイプの柔軟性が、ケーブルの製造中に、3つのケーブル心線と一緒に捩るのに十分であることを意味する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの冷却パイプは、過剰圧力に耐える。冷却パイプに対して少なくとも5バール、好ましくは少なくとも10バールの圧力定格とすることにより、冷却回路を1つだけ備える約1〜4kmのケーブル設備が実現可能になる。冷却パイプの圧力定格が高いほど、よい長い冷却回路を設置することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、冷却パイプ中のポリマーは、たとえば、ラバー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または中間密度ポリエチレン(MDPE)で作製される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、第2の金属層は、少なくとも1つの冷却パイプを取り囲み、少なくとも1つの冷却パイプと熱接触するように配置された、金属ブレードである。金属ブレーディングは、たとえば、スチールまたはアルミニウムで作製される。冷却パイプの周りの第2の金属層として金属ブレーディングを使用することによって、冷却パイプの圧力定格を高めることができ、冷却パイプの柔軟性が促進される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第1の金属層は、ケーブル心線の周りの螺旋状に巻きつけられた金属テープまたは金属ラミネート、あるいは軸方向にケーブル心線の周りに折り畳まれた金属テープまたは金属ラミネートである。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、第2の金属層は、ケーブル心線の周りの螺旋状に巻きつけられた金属テープまたは金属ラミネート、あるいは軸方向にケーブル心線の周りに折り畳まれた金属テープまたは金属ラミネートである。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、本電気ケーブルは、各々がケーブル心線と熱接触するように配置された第1の金属層によって取り囲まれた3つのケーブル心線と、3つのケーブル心線とケーブル被覆との間に形成された空間に配置された3つの冷却パイプとを備える。冷却パイプは、第1の金属層と熱接触している。このように配置することによって、3つのケーブル心線を一緒に置いて撚る3相電気ケーブルの通常の製造中に、ケーブル中に冷却パイプを容易に組み込むことができる。液体冷却のない通常の3相ケーブルでは、実質的に円形形状の外側表面プロファイルが達成されるように、たとえば、製造中にケーブルに組み込まれる充填プロファイルまたはフィラーロープで隙間を充填する。この実施形態にしたがって構成することより、外部磁界が低いコンパクトな3相ケーブルを得、ケーブル心線の導体における銅またはアルミニウムの使用量を最小限に抑えることが可能になる。また、内蔵型冷却を備える3相ケーブルの直径は、内蔵型冷却パイプのない3相ケーブルと実質的に同じであるで、ケーブルの製造も電気ケーブルの運搬も、内蔵型冷却パイプのないケーブルと同程度となる。
【0022】
代替実施形態によれば、本電気ケーブルは、3つのケーブル心線と、電気ケーブルの中央の3つのケーブル心線の間に形成された空間に配置され、第1の金属層と熱接触するように配置された、第4の冷却パイプとを備える。3つの他の冷却パイプは、前述の実施形態に記載したように、3つのケーブル心線と3つのケーブル心線を取り囲むケーブル被覆との間に形成された空間に配置される。それにより、電気ケーブルの通常の製造中に、ケーブル中に冷却パイプを容易に組み込むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、本電気ケーブルは、少なくとも1つのケーブル心線および少なくとも1つの冷却パイプを取り囲み、熱伝導性要素および冷却パイプと熱接触するように配置された、熱伝導性金属シースを備える。次いで、周囲および冷却パイプに伝達された温度が均等化し、各ケーブル部分から周囲と冷却パイプの両方への熱伝導が促進されるように、金属シースが配置される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、熱伝導性金属シースは、銅、アルミニウムおよびスチールうちのいずれかの材料で作製される。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1の金属層は、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する。それにより、ケーブルの熱的性能および費用が最適になる。それらのインターバルのうちの1つにおける第1の金属層の厚さは、十分な熱伝達を提供し、同時に、製造および費用についてケーブル心線に適用すべき好適な厚さとなる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、第2の金属層は、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する。それにより、ケーブルの熱的性能および費用が最適になる。それらのインターバルのうちの1つにおける第2の金属層の厚さは、十分な熱伝達を提供し、同時に、製造および費用について冷却パイプに適用すべき好適な厚さとなる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、熱伝導性金属シースは、0.01〜3.0mmインターバルの、好ましくは0.1〜1.5mmインターバルの平均厚を有する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、第1の金属層および/または第2の金属層はアルミニウムで作製され、熱的性能および費用が最適となるように、0.02〜2.0mmインターバルの、好ましくは0.2〜0.6mmインターバルの平均厚を有する。それらのインターバルのうちの1つにおけるアルミニウム製の第1の金属層または第2の金属層の厚さは、最適な熱伝達を提供し、同時に、製造および費用についてケーブル心線に適用すべき好適な厚さとなる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、第1の金属層および/または第2の金属層は銅で作製され、熱的性能および費用が最適となるように、0.01〜1.5mmインターバルの、好ましくは0.1〜0.3mmインターバルの平均厚を有する。それらのインターバルのうちの1つにおける銅製の第1の金属層または第2の金属層の厚さは、最適な熱伝達を提供し、同時に、製造および費用について冷却パイプに適用すべき好適な厚さとなる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、第1の金属層および/または第2の金属層はスチールで作製され、0.1〜3mmインターバルの、好ましくは0.7〜1.5mmインターバルの平均厚を有する。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、熱伝導性金属シースはアルミニウムで作製され、熱伝導性金属シースの熱的性能および費用が最適となるように、0.02〜2.0mmインターバルの、好ましくは0.2〜0.6mmインターバルの平均厚を有する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、熱伝導性金属シースは銅で作製され、熱伝導性金属シースの熱的性能および費用が最適となるように、0.01〜1.5mmインターバルの、好ましくは0.1〜0.3mmインターバルの平均厚を有する。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、熱伝導性金属シースはスチールで作製され、熱伝導性金属シースの熱的性能および費用が最適となるように、0.1〜3mmインターバルの、好ましくは0.7〜1.5mmインターバルの平均厚を有する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのケーブル心線と少なくとも1つの冷却パイプとの間に熱伝導性の充填剤が配置される。それにより、ケーブル心線から冷却パイプへの熱の移送がさらに促進される。
【0035】
本発明の別の目的は、本電気ケーブルの効果的な冷却を達成するために、高圧電気ケーブルを冷却するための冷却系を提供することである。この目的は、請求項16で規定される冷却系によって達成される。冷却系は、請求項1〜15のいずれかに記載の高圧電気ケーブルを備え、ケーブルは、冷却液を搬送する少なくとも2つの内蔵型冷却パイプを備え、少なくとも2つの内蔵型冷却パイプのうちの1つは、冷却液の復帰のために使用される。冷却システムの一実施形態によれば、冷却液からの熱は、長いケーブル設備の効率的な冷却を達成するために、設置されたケーブルの両端において取り除かれる。
【0036】
代替実施形態による冷却系は、冷却液を備える少なくとも1つの内蔵型冷却パイプを有する請求項1〜15のいずれかに規定された高圧電気ケーブルを備え、冷却パイプは冷却液のための戻りパイプに接続され、戻りパイプは電気ケーブルとは別個に配置される。戻りパイプは、冷却回路中で冷却液を搬送するように配置される。ケーブルからの熱損失は、冷却液のための外部冷却および循環システムによって処理される。
【0037】
冷却系の一実施形態によれば、冷却液は水である。必要なときに、周囲温度が0℃未満になる恐れがあるので、エチレングリコールまたはエタノールのような凍結防止溶液を水に添加してもよい。
【0038】
本発明を備える1つの利点は、内蔵型冷却パイプのないケーブルを製造するためのプロセスと比較して、ケーブルを製造するためのプロセスをわずかに修正するだけで、ケーブル中に冷却パイプを組み込むことが簡単になるということである。その結果、従来技術のケーブル冷却系の多くと比較して、コンパクトなケーブル設備となる。
【0039】
ケーブルにおいて内蔵型冷却を使用することにより、電流定格をより高くすることができるか、あるいは導体中の銅またはアルミニウムを節約することができる。また、ケーブルおよび設備の総寸法を減らすこともできる。導体中の銅またはアルミニウムを節約する効果は、通常の設備において、または、特に、ケーブルから周囲への熱移送が低い設備において、大きい導体または非常に大きい導体を必要とする高電流定格について特に望ましい。具体的な利点は、大きい導体または非常に大きい導体を使用するときの表皮効果による導体金属の非効率的な使用の大部分は、内蔵型冷却回路の効率的な冷却と他よりも小さい導体の使用とによって回避することができる。
【0040】
次に、添付の図面を参照して様々な実施形態を記載することにより、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1の実施形態による3相電気ケーブルの断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による3相電気ケーブルの断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態による3相電気ケーブルの断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態による3相電気ケーブルの断面図である。
図5】本発明の第5の実施形態による3相電気ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の例示的な実施形態を示し、電気絶縁系4a、4b、4cによって取り囲まれている導体3a、3b、3cを各ケーブル心線2a、2b、2cが備える3相電気ケーブル1の断面図である。絶縁系は、導体によって発生した熱が絶縁系を通って径方向に、金属層5a、5b、5cから外に伝達されるように、絶縁系4a、4b、4cの外側表面と熱接触するように配置された熱伝導性金属層5a、5b、5cによって取り囲まれる。3つのケーブル心線2a、2b、2cと、3つのケーブル心線および3つの冷却パイプを取り囲むケーブル被覆6との間に形成される隙間に、3つの冷却パイプ7a、7b、7cが提供される。この実施形態によれば、冷却パイプは、高分子で作製されている。ケーブル導体3a、3b、3c中で発生した熱は、絶縁系4a、4b、4cを通して絶縁系を取り囲む第1の金属層に伝達され、それにより、電気絶縁全体の温度プロファイルが均等化され、金属層5a、5b、5cにおける低い熱抵抗で、冷却パイプ7a、7b、7cに熱が伝導される。
【0043】
通常、ケーブル中の隙間は、ケーブル被覆の外側表面プロファイルが実質的に円形になるように、ケーブル中に組み込まれる充填プロファイルまたはフィラーロープで製造中に充填される。図5に示す例示的な実施形態によれば、ケーブル心線2a、2b、2cと、冷却パイプ7a、7b、7cと、ケーブル被覆6との間に形成された空間に、充填プロファイル11a、11b、11cを配置することができる。それらの充填プロファイルは、もちろん、他の実施形態のいずれかによる電気ケーブル中にも配置することができる。
【0044】
図2は、本発明の第2の実施形態の断面図であり、図1に対する相違は、高分子冷却パイプが第2の熱伝導性金属層8a、8b、8cを備えているということである。第2の金属層は、冷却パイプ7a、7b、7c中に配置された冷却液に効率的に熱を伝導するために、ケーブル心線2a、2b、2cを取り囲む第1の金属層5a、5b、5cと熱接触するように配置される。金属層8a、8b、8cは、高分子冷却パイプを通る熱伝達を、パイプの周囲全体の周りのほぼ均等に拡散し、それにより、金属層のない冷却パイプを使用する場合と比較して、冷却液への熱フローの熱抵抗が著しく低下する。
【0045】
図3は、第3の本発明の例示的な実施形態の断面図であり、図1に対する相違は、熱伝導性金属シース9が、ケーブル心線2a、2b、2cを取り囲んでおり、冷却パイプ7a、7b、7cが、第1の金属層5a、5b、5cおよび冷却パイプ7a、7b、7cと熱接触するように配置されていることである。
【0046】
図4は、第4の本発明の例示的な実施形態の断面図であり、図2に対する相違は、熱伝導性金属シース9が、ケーブル心線2a、2b、2cおよび冷却パイプ7a、7b、7cを取り囲んでおり、第1の金属層5a、5b、5cおよび第2の金属層8a、8b、8cと熱接触するように配置されていることである。
【0047】
図5は、第5の本発明の例示的な実施形態の断面図であり、図2の実施形態に対する相違は、ケーブル心線2a、2b、2cと冷却パイプ7a、7b、7cとの間に熱伝導性充填用コンパウンド10が配置されていることである。充填用コンパウンド10は、たとえば、サーマルペースト、サーマルゲルまたはヒートペーストとも呼ばれるサーマルグリースである。サーマルグリースは、通常、シリコーン、または、鉱油および熱伝導率が高い粒子を含む。粒子は、たとえば、酸化ベリリウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミナまたは酸化亜鉛のようなセラミック、あるいはアルミニウム、銅または銀のような金属の粒子とすることができる。充填用コンパウンドに対する代替として、十分な熱接触が確実に維持されるように、ケーブル心線と冷却パイプとの間に、ガスケットのような何らかの他のタイプの熱伝導性デバイスを使用してもよい。充填剤プロファイル11a、11b、11cは、ケーブルの円形形状を提供し、ケーブル心線と冷却パイプとの間の空きスペースに起因してケーブル表面にくぼみが生じないようにする。充填剤プロファイルは、たとえば、ポリエチレンで作製されおり、図5に示すように、ケーブルの内側の隙間中で充填用コンパウンドの使用と組み合わせることができる。
【0048】
充填剤プロファイル11a、11b、11cおよび熱伝導性コンパウンド10は、図1〜4のいずれかに示すケーブル設計のいずれかの一部とすることができる。
【0049】
冷却パイプは、電気ケーブルの通常の製造中に電気ケーブル中に組み込まれ、3つのケーブル心線をレイアップし、撚り合わせる。ケーブル部分を取り囲んでいる熱伝導性層が冷却パイプと接触する位置では、冷却液への熱伝達が容易になるように、良好な熱接触を有することが重要である。別の例示的な実施形態によれば、電気ケーブルの外側から冷却パイプに圧力を加えることによって、ケーブル心線と冷却パイプとの間の熱接触が達成され、それにより、ケーブル心線および冷却パイプがケーブル部品に対して押しつけられる。これは、たとえば、ケーブル被覆6が、ケーブル心線と冷却パイプとを一緒に保持することによって達成される。ケーブル被覆は、押出し層、あるいは高分子テープまたは金属テープで作製することができる。ケーブル心線および冷却パイプを取り囲み、ケーブル被覆の外または内側に配置された追加の層(図示せず)があってもよい。それらの層は、たとえば、外装、シールド、または外装用のベッディングでもよい。
【0050】
第1の金属層5a、5b、5cは、たとえば、アルミニウムまたは銅で作製されており、たとえば、ケーブル心線の周りの螺旋状に巻きつけられた金属テープまたは金属ラミネートでも、あるいはケーブルの長手方向にケーブル心線の周りに折り畳まれた金属テープまたは金属ラミネートでもよい。代替実施形態によれば、ケーブル心線の周りに配置された金属層は、金網(ブレード)の層とすることができ、金属は、たとえば、アルミニウム、銅またはスチールである。
【0051】
第2の金属層8a、8b、8cは、たとえば、アルミニウムまたは銅で作製されており、たとえば、冷却パイプの周りに螺旋状に巻きつけられた金属テープまたは金属ラミネートでも、あるいはケーブルの長手方向に冷却パイプの周りに折り畳まれる金属テープまたは金属ラミネートでもよい。代替実施形態によれば、冷却パイプの周りに配置された金属層は、金網(ブレード)の層とすることができ、金属は、たとえば、アルミニウム、銅またはスチールである。
【0052】
本発明の例示的な実施形態によれば、液体冷却媒体のための戻りパイプは、電気ケーブルとは別個に配置される。断熱材は、好ましくは、戻りパイプからの熱が、ケーブルとケーブルの内蔵型冷却パイプ中の順方向の冷却液とを加熱しないようにするために、戻りパイプと電力ケーブルとの間に配置される。
【0053】
以下に、図2に関して説明する実施形態による、3つのケーブル部分と3つの冷却パイプとを備える3相ケーブルについての冷却プロパティの改善の一例、すなわち、金属層が、それぞれのケーブル部分および冷却パイプの周りに配置される例について、金属層のないケーブルと比較して説明する。この例では、それぞれのケーブル心線の導体面積は、1520mmであり、絶縁系は、内側伝導層と、26mm厚の外側伝導層とを備える。25℃の穏やかな周囲温度の土壌に埋没深度で埋められるものとして3相ケーブルを計算し、ケーブルスクリーンが導体中の熱損失の大部分を結合した単一の点であると仮定した。これらの状態下の冷却系を1つももたない3相ケーブルの導体電流容量を、1330アンペア(A)で計算した。冷却液は水であり、送られた電流は1720アンペア(A)である。3相ケーブルが内蔵型冷却パイプを備えるが、熱伝導性金属層が1つもない場合、冷却回路がケーブルを出る場所における水の温度は、1720Aを伝達するために23.5℃を超えないことがある。これには、ケーブルの内蔵型冷却パイプに入ってくる水の温度が23.5℃よりもはるかに低い必要がある。入ってくる水の温度が15℃のとき、8.5℃のΔΤと特定の流量とに対応するケーブル全長は、ケーブル部分または冷却パイプの周りに配置された熱伝導性金属層なしに、1つの冷却回路のみを用いて冷却することができる。図2に関して説明する実施形態の場合、すなわち、金属層がそれぞれのケーブル部分と冷却パイプの両方の周りに配置されている場合、冷却回路がケーブルを出る場所における水は、1720Aを伝達するために50の℃を超えないことがある。これは、入ってくる水の温度が15℃のとき、35℃のΔΤと特定の流量とに対応するケーブル全長は、熱伝導性金属層がケーブル部分と冷却パイプの両方の周りに配置されたとき、1つの冷却回路のみを用いて冷却することができる。
【0054】
これは、図2に関して説明した上記の実施形態による電力ケーブルの場合、内蔵型冷却パイプを備えるが、熱伝導性金属層がない電力ケーブルの長さの約4倍の長さであるケーブル設備に、冷却液流量がどちらの場合も同じである場合、同じ量の電流を伝達するために冷却回路を1つだけ設置すればよい。
【0055】
図1による例示的な実施形態の場合、すなわち、熱伝導性金属層が各ケーブル心線の周囲に配置されている場合、冷却回路がケーブルを出る場所における水の最高温度は、40℃よりも高くならないことがある。入ってくる水温が15℃のとき、これは、内蔵型冷却系に入る水とケーブルの内蔵型冷却系を出る水との間に25℃のΔΤを与える。これにより、内蔵型冷却パイプを備えるが、熱伝導性金属層がない電力ケーブルの長さの約3倍の長さの電力ケーブルに、冷却液流量がどちらの場合も同じである場合、1つの冷却回路のみを接地することができるようになる。
【0056】
1つの本発明の例示的な実施形態によれば、図示されていないが、電気絶縁系によって取り囲まれた導体を備える1つのケーブル心線と、ケーブルを冷却するための1つの冷却パイプとを備える電気ケーブルが提供される。冷却パイプは高分子を備え、冷却液を搬送するように適合される。ケーブル心線の絶縁系は、ケーブル心線の外側表面と熱接触するように配置された金属の熱伝導性層によって取り囲まれ、それにより、導体によって発生し、絶縁系を通して伝達された熱が電気絶縁全体で等化される。金属層は、ケーブル心線から冷却パイプに熱損失を低い熱抵抗で伝導するために、冷却パイプと熱接触するように配置される。
【0057】
上述した実施形態における絶縁系の材料は、通常、架橋ポリエチレンであり、内側伝導層(図示せず)と、絶縁層と、外側伝導層(図示せず)とを備える。ただし、絶縁系は、その代わりに、油浸紙絶縁系としてもよいことを理解されたい。
【0058】
通常第1の熱伝導性金属層と接触しているケーブルスクリーンは、実施形態のいずれにも示されていない。通常のケーブルスクリーンは、スクリーンの個々のワイヤが、ケーブル心線の外周全体のどこでも互いに直接接触してない場合には、熱伝導性の第1の金属層5a、5b、5cを交換することができない。ケーブルスクリーンの上では、ケーブル心線高分子シース、たとえば、ポリエチレンのシースは、しばしば、各ケーブル心線の周りに、すなわち、絶縁系と第1の金属熱伝導性層との間に配置される。図1図5に示したケーブル被覆6は、高分子カバー、たとえば、ポリエチレンのカバーでも、あるいはツイストケーブル心線および冷却パイプの周りの設けられた金属カバーでもよい。高分子テープまたは金属テープのケーブル被覆を、押出し加工するか、または巻きつけることができる。ケーブル被覆は、ケーブル表面全体の周りに連続して適用する必要はないが、たとえば、互いに保持するためにケーブル心線および冷却パイプの周りに螺旋状に巻きつけられたテープとしてもよい。
【0059】
ケーブル設計中に含まれ得る他の層は、たとえば、膨潤テープならびにケーブル被覆の下および/またはその上のベッディング、ならびに3つの位相の組付けの後に3相ケーブルを固定させるための合成テープである。
【0060】
本発明は、上記に示された実施形態に限定されるものではなく、当業者は、もちろん、特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲内の複数の方法でそれらを変更することができる。したがって、機械的な理由および製造上の理由に起因して、ケーブル心線を取り囲み、第1の金属層に外側にそれと接触するように配置された薄い絶縁層があることがあるので、本発明は、ケーブル心線の周りに配置された第1の金属層がケーブル心線の最外層である場合に限定されない。ケーブル心線の周りにある、またはケーブル心線と冷却パイプの両方の周りに同時にある金属層は、ケーブル熱損失の源とケーブル設計の内蔵型冷却パイプ中の冷却液との間の熱抵抗を減少させる。様々な金属層を任意の組合せで一緒に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5