(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電体の複数の撚り対を備えるケーブルコアであって、前記撚り対が、撚り長さで撚られ、かつ1MHzから500MHzまでの周波数範囲内の通信信号を伝送し、前記周波数の各々における通信信号が、対応する波長を有する、ケーブルコアと、
前記ケーブルコアを取り囲む穿孔テープであって、厚さ方向に変形される、穿孔テープと、
前記穿孔テープを取り囲むマトリクステープであって、前記マトリクステープが、ギャップによって分離された導電性セグメントの第1のバリヤ層を備え、前記マトリクステープの縦方向に対応する前記導電性セグメントの縦方向長さが、前記撚り長さの最長部よりも大きいが、導電体の前記撚り対を介して送信される最高周波数信号の前記波長の4分の1よりも小さい、マトリクステープと、
を備え、
前記穿孔テープが前記ケーブルコアと前記マトリクステープとの間に配置される、通信ケーブル。
前記マトリクステープが、ギャップによって分離された導電性セグメントの第2のバリヤ層と、前記第1のバリヤ層の前記導電性セグメントを前記第2のバリヤ層の前記導電性セグメントから分離する絶縁層と、をさらに備え、前記導電性セグメントが、前記第2のバリヤ層の前記導電性セグメントが前記第1のバリヤ層の前記ギャップと整列するようなパターンで設けられる、請求項1に記載の通信ケーブル。
前記導電性セグメントが、前記マトリクステープの横断方向に対応する方向において横方向幅を有し、前記横方向幅は、前記通信ケーブルの半径方向外側で前記撚り対のうちの1つを覆うのに十分に広い、請求項1に記載の通信ケーブル。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明による、複数の通信ケーブルを含む通信システムの一実施形態の概略図である。
【
図2】
図1の切断線2−2に沿って取られた、通信ケーブルのうちの1つの断面図である。
【
図3】本発明による、
図1および
図2のケーブルで使用されるマトリクステープの一実施形態の断片平面図である。
【
図4】
図3の切断線4−4に沿って取られた、
図3のマトリクステープの断面図である。
【
図5】2本の従来技術のケーブルの寄生容量モデリングの縦方向断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による2本のケーブルの寄生容量モデリングの縦方向断面図である。
【
図7】従来技術の2本のケーブルの寄生誘導モデリングの縦方向断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による2本のケーブルの寄生誘導モデリングの縦方向断面図である。
【
図9】ケーブル内でのマトリクステープの設置のスパイラル状の性質を示す、
図1のケーブルの一実施形態の斜視図である。
【
図10】本発明によるマトリクステープの別の実施形態の断片平面図である。
【
図12】本発明の一実施形態による、2ブリック両面マトリクステープが採用された10Gb/s Ethernet(登録商標) U/UTP Cat 6aケーブルの断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態による、3ブリック両面マトリクステープが採用された10Gb/s Ethernet(登録商標) U/UTP Cat 6aケーブルの断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態による3ブリック両面マトリクステープである。
【
図15】本発明の一実施形態による、3ブリック両面マトリクステープが採用された10Gb/s Ethernet(登録商標) U/UTP Cat 6aケーブルの断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態による、4ブリック両面マトリクステープが採用された10Gb/s Ethernet(登録商標) U/UTP Cat 6aケーブルの断面図である。
【
図17】金属形状によって覆われた撚り線対に関連して、マトリクステープからみた金属形状(すなわち、ブリックまたは導電性セグメント)の等価斜視図を示す概念図である。
【
図18】2本の同様に構築されたケーブル間に440MHz付近の高レベルの差動モード結合が存在するように、特定の金属形状周期を有するマトリクステープを採用するケーブル構成について、電力和エイリアンNEXT(PANEXT)仕様およびケーブル応答レベルを示すグラフである。
【
図19】マトリクステープをもつU/UTPケーブルとマトリクステープをもたないU/UTPケーブルとについて、差動モードエイリアンクロストーク結合メカニズムと共通モードエイリアンクロストーク結合メカニズムを示す概念図である。
【
図20】マトリクステープをもつU/UTPケーブルについて、差動モードエイリアンクロストーク結合メカニズムと共通モードエイリアンクロストーク結合メカニズムを示す概念図である。
【
図21A】金属形状周期と撚り線対周期との関数としてコヒーレンス長を示す概念図である。
【
図21B】2本の隣り合うケーブル中のブリック間の容量結合を示す概念図である。
【
図22A】線対がブリックの下で撚られる際のブリック上の相対的な電荷を示す概念図であり、ケーブルに沿って長手方向に進む連続する断面図として示されている。
【
図22B】線対がブリックの下で撚られる際のブリック上の相対的な電荷を示す概念図であり、ケーブルに沿って長手方向に進む連続する断面図として示されている。
【
図23】ブリック長が撚り対レイに関して変化する際のブリック上の相対的な電荷を示す概念側面図である。
【
図24A】マトリクステープ周期と撚り対レイとの間のオフセットの異なる倍数についてコヒーレント差動モード結合が生じる周波数を示す図である。
【
図24B】マトリクステープ周期と撚り対レイとの間のオフセットに対するコヒーレンス長依存性を示す概念図である。
【
図24C】マトリクステープ周期と撚り対レイとの間のオフセットに対するコヒーレンス長依存性を示す概念図である。
【
図24D】マトリクステープ周期と撚り対レイとの間のオフセットに対するコヒーレンス長依存性を示す概念図である。
【
図25】(A)は金属形状の所与の周期に関する「キープアウト」撚りレイ長を列挙した表であり、(B)は
図25(A)に示された設計ガイドラインに適合する例示的な撚り対レイセットの表である。
【
図26】長方形ブリックパターンおよび非規則的な平行四辺形ブリックパターンについて、ブリックの下における位置的変動を示す概略図である。
【
図27】それぞれの線対に位置合わせされた平行四辺形ブリックのパターンを示す概略図である。
【
図28】線対レイに関する導電性エレメントの位置のシフトが、線対レイ長のプラスマイナス約10%である場合に生じ得る電荷変動を示す概念図である。
【
図29】(A)はケーブルコアおよびバリヤのまわりに巻き付けられた長方形ブリックマトリクステープの斜視図であり、(B)はケーブルコアおよびバリヤのまわりに巻き付けられた長方形ブリックマトリクステープに関する、スパイラル巻きされた重複静電容量と重複静電容量とを示す概念図であり、(C)は
図29(B)の構成の等価回路図である。
【
図30】(A)はケーブルコアおよびバリヤのまわりに巻き付けられた長方形ブリックマトリクステープの斜視図であり、(B)はケーブルコアおよびバリヤのまわりに巻き付けられた非規則的な平行四辺形ブリックマトリクステープに関する、スパイラル巻きされた重複静電容量と重複静電容量とを示す概念図であり、(C)は
図30(B)の構成の等価回路図である。
【
図31】減衰に関するTIA568使用に関連して、マトリクステープをもつU/UTPケーブルとマトリクステープをもたないU/UTPケーブルの減衰スペクトルをそれぞれ示す表である。
【
図32A】マトリクステープをもつU/UTPケーブルとマトリクステープをもたないU/UTPケーブルを取り囲む磁界をそれぞれ示す概念図である。
【
図32B】マトリクステープをもつU/UTPケーブルとマトリクステープをもたないU/UTPケーブルを取り囲む磁界をそれぞれ示す概念図である。
【
図33】エンボスフィルムを絶縁層として組み込んだケーブルの断面図である。
【
図36】穿孔バリヤ層を製造するためのデバイスデバイスを示す。
【
図39】穿孔バリヤ層を有するケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ここで図面を、より具体的には
図1を以下で参照すると、機器24に接続された少なくとも1つの通信ケーブル22、23を含む通信システム20が示される。機器24は、
図1ではパッチパネルとして示されているが、機器は受動機器でも能動機器でもよい。受動機器の例は、モジュラーパッチパネル、パンチダウンパッチパネル、カプラーパッチパネル、壁ジャックなどであってよいが、それらに限定されない。能動機器の例は、イーサネット(登録商標)スイッチ、ルータ、サーバ、物理レイヤ管理システム、およびデータセンター/電気通信室内で見られるようなパワーオーバーイーサネット(登録商標)機器、セキュリティデバイス(カメラおよびその他のセンサなど)およびドアアクセス機器、ならびに電話、コンピュータ、ファクシミリ機械、プリンタ、およびワークステーション領域で見られるようなその他の周辺機器であり得るが、それらに限定されない。通信システム20は、例えば、キャビネット、棚、ケーブル管理および頭上ルーティングシステムをさらに含むことができる。
【0007】
通信ケーブル22、23は、非シールド対撚り(UTP)水平ケーブル22の形態で、および/またはパッチケーブル23として、より具体的には、
図2により具体的に示され、以下により詳細に記載される、500MHzおよび10Gb/sで動作することができるカテゴリー6Aケーブルであり得る。しかしながら、本発明を、既に記載されたようなさまざまな通信ケーブル、ならびにその他のタイプのケーブルに適用し、および/またはそのようなケーブル中で実装することができる。ケーブル22、23を、機器24中に直接終端させることができ、あるいは代替的には、さまざまなプラグ25またはジャックモジュール27(RJ45タイプなど)、ジャックモジュールカセット、Infinibandコネクタ、RJ21、および多くのその他のコネクタタイプ、あるいはそれらの組合せ中で終端させることができる。さらに、ケーブル22、23を処理してケーブルのルームまたは束にすることができ、さらに処理して所定のルームにすることができる。
【0008】
通信ケーブル22、23を、パッチコード、ゾーンコード、バックボーンケーブリング、および水平ケーブリングを含む、さまざまな構造のケーブリング用途で使用することができるが、本発明はそのような用途に限定されるものではない。一般に、本発明は、軍事用用途、工業用用途、住宅用用途、電気通信用途、コンピュータ用途、データ通信用途、およびその他のケーブリング用途で使用することができる。
【0009】
図2をより具体的に参照すると、ケーブル22、23の横方向断面図が示される。ケーブル22、23は、一般的にはクロスウェブ28を用いて分離されている、4本の導電性撚り線対26の内側コア29を含む。内側絶縁層30(例えば、プラスチック絶縁テープまたは押出し絶縁層、例えば、10ミル(0.254mm)厚の内側絶縁ジャケット材料)は、導電性線対26およびクロスウェブ28を取り囲む。マトリクステープ32(「バリヤテープ」としても知られる)のラッピングは、内側絶縁層30を取り囲む。マトリクステープ32を、絶縁層30のまわりにらせん状に巻き付けることができる。ケーブル22、23はまた、外側絶縁ジャケット33を含む。マトリクステープ32は、
図2に、より単純化して示され、絶縁基板42と導電性セグメント34および38とのみを示す。
【0010】
また、
図3および
図4を参照し、以下により詳細に示されるように、マトリクステープ32は、ギャップ36によって分離された導電性セグメント34を備える第1のバリヤ層35(
図2では内側バリヤ層として示される)と、セグメント38の導電性材料においてギャップ40によって分離された導電性セグメント38を備える第2のバリヤ層37(
図2では外側バリヤ層として示される)と、第1の導電層の導電性セグメント34およびギャップ36を第2の導電層の導電性セグメント38およびギャップ40から分離する絶縁基板42とを含む。第1および第2のバリヤ層、より具体的には、導電性セグメント34および導電性セグメント38は、外側バリヤ層のギャップ40が内側バリヤ層の導電性セグメント34と整列するように、ケーブル内で互い違いになっている。マトリクステープ32は、内側絶縁層30のまわりにらせん状にまたはスパイラル状に巻き付けることができる。代替的には、当該マトリクステープを、非らせん状(例えば、タバコ状にまたは長手方向に)に絶縁層のまわりに適用することができる。
【0011】
外側絶縁ジャケット33は、15〜16ミル(0.381mm〜0.4064mm)厚であり得る(しかしながら、他の厚さが可能である)。ケーブル22の直径全体は、例えば、300ミル(7.62mm)未満であり得るが、270〜305ミル(6.858〜7.747mm)の範囲、または他の厚さなど、他の厚さが可能である。
【0012】
図3は、絶縁性基板上のパターニングされた導電性セグメントを示す、マトリクステープ32の平面図であり、連続しない導電性材料の2つのバリヤ層35および37が使用される。導電性セグメント34および38は、下側基板42の縦方向と横方向の両方に沿った一連の平面図において、モザイクとして配列される。記載されるように、パターニングされた導電性セグメントの複数のバリヤ層を使用することにより、ケーブル22、23のよる隣接するケーブルへの結合を効果的に低減することによって、および、その他のケーブルからの結合に対するバリヤを提供することによって、エイリアンクロストークの減衰を高めることができるようになる。導電性セグメント34および38の不連続性は、バリヤ層35および37から放射を低減または除去する。図示の実施形態では、2層グリッド様の金属パターンがマトリクステープ32に組み込まれ、これは例示的な高パフォーマンス10Gb/sケーブルの撚り線対26のまわりにスパイラル状に巻き付く。バリヤ層の導電性セグメントが隣り合うバリヤ層からのギャップ36、40と重なるように、パターンを選ぶことができる。
図3および
図4では、例えば、上部バリヤ層35と底部バリヤ層37は両方とも、一連の約330ミル(約8.382mm)×330ミル(8.382mm)の(丸みを帯びた角部をもつ)正方形に配列された導電性セグメントを有し、それらの正方形間には60ミル(1.524mm)のギャップサイズ44がある。1つの実施形態によると、丸みを帯びた角部の半径は約1/32インチ(約0.794mm)である。
【0013】
内側バリヤ層35を参照すると、導電性材料の任意の単一の層の性能は、連続しないパターンのギャップサイズ44と連続しないセグメントの縦方向長さ46とに依存し、また、導電性セグメントの横方向幅48に少なくともいくらか依存することがある。一般に、ギャップサイズ44がより小さくなり、縦方向長さ46がより長くなると、ケーブル間クロストーク減衰がより良好になる。しかしながら、縦方向のパターン長さ46が長過ぎる場合、連続しない導電性材料の層は放射し、関連する周波数範囲内の電磁エネルギーの影響を受けやすくなる。1つの解決策は、縦方向のパターン長さ46を、取り囲まれたケーブル内の導電性撚り線対の最も長い対レイよりもわずかに大きいが、その線対を介して伝送される最も高い周波数信号の波長の4分の1よりも小さくなるように設計することである。対レイは撚り線対の1つの完成した撚りの長さに等しい。
【0014】
高性能ケーブル(例えば、10Gb/s)の典型的な撚り長さ(すなわち、対レイ)は、0.8cmから1.3cmの範囲である。したがって、導電性セグメント長さは、一般的には、500MHzの周波数で使用するように適合されたケーブルの場合、約1.3cmから約10cmの範囲内である。より高い、またはより低い周波数では、導電性セグメント長さは、それぞれより低く、またはより高くに変動することになる。
【0015】
さらに、500MHzの周波数を有する信号の場合、伝搬速度が20cm/nsであるとき、波長は約40cmとなる。この波長において、バリヤ層の導電性セグメントの長さは、導電性セグメントが放射しないように、または電磁エネルギーの影響を受けやすくならないように、10cm(すなわち、波長の4分の1)未満でなければならない。
【0016】
また、導電性セグメントの横方向幅48が、ケーブルコア内で撚る際に撚り線対を「被覆する」ことが望ましい。換言すると、導電性セグメントの横方向幅48は、ケーブルの中心から半径方向外向きに撚り対を覆うのに十分に広いことが望ましい。一般に、横方向幅48がより広くなると、ケーブル間クロストーク減衰はより良好になる。さらに、マトリクステープ32は、ケーブルのコアのツイストレートとほぼ同じレートで、ケーブルコアのまわりにらせん状に巻き付けられるのが望ましい。高性能ケーブル(例えば、10Gb/s)の場合、典型的なケーブルストランドレイ(すなわち、ケーブルのコアのツイストレート)は、約6cmから約12cmの範囲である。本発明によるマトリクステープは、ケーブルストランドレイと同じレートで巻き付けられるのが好ましい(すなわち、約6cmから約12cmの範囲で1巻きを完了する)。しかしながら、本発明は、この範囲の巻き長さに限定されず、より長いまたはより短い巻き長さを使用することができる。
【0017】
連続しない導電性セグメントのマトリクステープの高性能な用途は、ケーブル間クロストーク減衰を増大させるために、1つまたは複数の導電性バリヤ層を使用することである。複数層のバリヤの場合、バリヤ層は、層同士が互いに直接電気接触しないように基板によって分離される。2つのバリヤ層35および37が図示されているが、本発明は、単一のバリヤ層、または3つ以上のバリヤ層を含んでもよい。
【0018】
図4は、2つのバリヤ層35および37とともに採用されるマトリクステープ32の断面図をより詳細に示す。各バリヤ層は、基板50と、導電性セグメント34または38とを含む。基板50は絶縁性材料であり、例えば、約0.7ミル(約0.01778mm)厚であり得る。導電性セグメントの層は、平面図形、例えば、約0.35ミル(約0.00889mm)の厚さを有するアルミニウムの、丸みを帯びた角部をもつ正方形を含む。本発明のその他の実施形態によると、導電性セグメントは、正多角形、不規則な多角形、その他の不規則な形状、曲線閉形状、導電性材料クラックによって形成された分離領域、および/または上記の組合せなど、様々な形状で作製することができる。銅、金またはニッケルなど、その他の導電性材料を導電性セグメントに使用してもよい。同じように、それらの区域に半導電性材料を使用してもよい。絶縁性基板の材料の例には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、およびその他の材料が含まれる。
【0019】
導電性セグメント34および38は、スプレー糊の層52を介して、共通の絶縁性基板42に取り付けられる。例えば、スプレー糊の層52は0.5ミル(0.0127mm)厚であり得、絶縁性基板42の共通の層は、1.5ミル(0.0381mm)厚であり得る。各層の例示的な厚さが示されていると仮定すると、
図4のマトリクステープ32の厚さ全体は約4.6ミル(約0.11684mm)である。異なる層には、異なる材料厚さを採用することができることを理解されたい。いくつかの実施形態によると、導電性セグメント34と導電性セグメント38の2つの層間の距離を、それらの層間の静電容量を低減するように大きく保つことが望ましい。
【0020】
連続しない導電性材料の複数の層をバリヤ材料として使用するとき、層同士のギャップカバレージは、ケーブル間クロストークを減少させるのに役立つ。これは、ケーブル同士の静電容量結合と誘導結合とを試験することによって、最もよく理解することができる。
【0021】
図5は、従来技術のケーブル401および402の寄生容量結合のモデルを示す。ここで、2本のケーブル401および402は、標準的な10Gb/sイーサネット(登録商標)ツイスト長さ54(対レイ)の2つの撚り線対403間のケーブル間クロストークを減衰する方法として、絶縁ジャケット404を採用する。得られた寄生容量結合は、モデル化されたキャパシタ405〜408によって示されるように、著しいケーブル間クロストークを生成する。キャパシタ405〜408は、
図5のモデルを目的として集中容量素子として示されるが、実際には分布容量である。
【0022】
対照的に、
図6は、本発明のバリヤ技法を使用した2本のケーブル22aおよび22bの寄生容量結合を示す。分布容量から効果全体が得られるが、分布寄生容量結合を示すことを目的として、集中素子キャパシタモデルが示される。撚り対26aの第1の撚り線101および第2の撚り線102は差動信号を担持し、反対の極性を有するものとしてモデル化することができる。第1の撚り線101が担持する「正」極性信号と、第2の撚り線102が担持する「負」極性信号とは、ほぼ等しく導電性セグメント34aに結合する。この結合は、キャパシタ504および505によってモデル化される。その結果、非常にわずかな実効電荷が撚り対26から導電性セグメント34a上に容量的に結合され、無視できない電位差を生じる。どのくらいわずかな電荷が導電性セグメント34a上に結合されるかについては、ケーブル22aの外側バリヤ層中の導電性セグメント38aおよび38b上に、モデル化されたキャパシタ506および507を介して結合することによってさらに分布される。また、導電性セグメント38aおよび38bは、追加の内側導電性セグメント34bおよび34cと容量的に結合するので、容量結合の量は、撚り線101および102の反対の極性から生じるキャンセレーション効果により、さらに緩和される。追加のモデル化されたキャパシタ508〜513を介して同様のキャンセレーション効果がもたらされ、それにより、第1のケーブル22aの撚り対26aと第2のケーブル22bの撚り対26bとの間の容量結合全体は、従来技術のシステムと比較すると、実質的に減少する。マトリクステープの2つのバリヤ層におけるギャップ36とギャップ40との間隔は、直接的なケーブル間容量結合の可能性を大幅に低減する。
【0023】
誘導モデリングに目を向けると、
図7は、2本の従来技術のケーブルの寄生分布誘導モデリングを示す。
図7および
図8において、導電体中の電流が磁界を生成し、導電体の分布インダクタンスにより、矢印で示される誘導結合が生じる。例示を目的として、磁界の特定の区域を矢印で示すが、磁界は、実際には、図示された区域全体に分布している。ここで、ケーブル601と602は両方とも、標準的な10Gb/sイーサネット(登録商標)ツイスト長さ54(対レイ)の2つの撚り線対605の間のケーブル間クロストークを減衰する方法として、絶縁ジャケット604のみを採用する。606〜609でモデル化された、得られた寄生誘導結合は、著しいケーブル間クロストークを生成する。
【0024】
図8は、本発明の対象となるバリヤ技法を使用した2本のケーブルの誘導モデリングを示す。ケーブル22aおよび22bの2つ撚り線は、撚り対26aおよび26bをそれぞれ含み、従来技術と同じ標準的な10Gb/sイーサネット(登録商標)ツイスト長さ56(対レイ)を有する。しかしながら、2本のケーブル22aおよび22bは、マトリクステープ32を用いて保護される。バリヤ層35および37は、導電性材料セグメント34および38が放射しないように、導電性材料中にそれぞれ対応するギャップ36および40を含んでいる。導電性セグメントは、導電性材料中のほとんどのギャップが隣接する層の導電性セグメントと整列するように、ケーブル内で互い違いになっている。
【0025】
撚り線対26aによって、第1のケーブル22a中に磁界が誘起される。しかしながら、磁界は、マトリクステープ32の内側バリヤ層を通過する際に、導電性セグメント中に渦電流を生成し、その結果、電磁結合710および711の程度が低減され、ケーブル間クロストークが低減される。しかしながら、バリヤ層35および37中にギャップ36および40が必要とされることにより、磁界のいくつかの部分が境界またはギャップの近くを通ることになる。渦電流は、境界またはギャップの近くで強力に誘起されるものではないが、これらの領域における通過する磁界をほとんど低減しない。
【0026】
さらに1つの解決策は、1つの層からのギャップが隣接する層からの導電性材料によって被覆されるように複数のバリヤ層35および37を使用することである。第2のケーブル22bは、内側バリヤ層35中のギャップ36を被覆する外側バリヤ層(具体的には、導電性セグメント38)を示す。上述のように、導電層35および37を通過する磁界は、渦電流が、境界あるいはギャップ36および40の近くでは強力に誘起されないので、より多くのエネルギーを失うことはない。しかしながら、内側バリヤ層35中のギャップ36が外側バリヤ層からの導電性セグメントによって確実に被覆されるようにするために、内側バリヤ層を通過する磁界は、外側バリヤ層を通過しながらより強い渦電流を生成し、したがって、それらのエネルギーが低減され、ケーブル間クロストークが低減される。したがって、バリヤ層のギャップ36および40を、隣接するバリヤ層からの導電性セグメントと整列するように配列することが望ましいが、バリヤ層中のいくつかのギャップは、本発明のケーブル間クロストーク減衰に大幅に影響を与えることなく、被覆されないままでいる。
【0027】
図9は、マトリクステープ32が絶縁層30とケーブル22の外側ジャケット33との間でどのようにスパイラル状に巻き付けられているかを示す。代替的には、マトリクステープを、非らせん状(例えば、タバコ状にまたは長手方向に)に絶縁層のまわりに適用することができる。マトリクステープ32は、ケーブル22のコアレイ長さとほぼ同じラップレート(すなわち、ケーブルの撚り対26が互いに巻き付くレート)でらせん状に巻き付けられるのが好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態では、マトリクステープ32は、ケーブル22のコアレイ長さよりも大きいまたは小さいラップレートでらせん状に巻き付けられてもよい。
【0028】
図10は、本発明によるマトリクステープ80の別の実施形態を示す。マトリクステープ80は、マトリクステープ80が上側の長方形導電性セグメント82と下側の長方形導電性セグメント83とを備えることを除いて、図示および上記されたマトリクステープ32と同様である。各層上の長方形セグメントは、ギャップ84によって分離されている。長方形導電性セグメント82および83は、縦方向長さ86および横方向幅88を有する。1つの実施形態によると、各長方形導電性セグメント82の縦方向長さ86は約822ミル(約20.8788mm)であり、横方向幅88は約332ミル(約8.4328mm)である。この実施形態では、ギャップ84は約60ミル(約1.524mm)幅である。導電性セグメントの形状およびサイズは変動し得るので、ギャップ幅も変動し得る。例えば、ギャップは、55ミル(約1.397mm)でも他の幅でもよい。一般に、導電性セグメントの縦方向長さとギャップ幅の比が大きくなると、クロストーク減衰がより良好になる。しかしながら、所望のケーブルの性能特性にも応じて、異なる寸法にしてもよい。長方形導電性セグメント82は丸みを帯びた角90を備え、例示された実施形態では、丸みを帯びた角部90の半径は約1/32インチ(約0.794mm)である。
【0029】
本発明による導電性セグメントは、より鋭角な角部が使用される場合に生じ得る望ましくない電界効果の機会を低減させるために、湾曲した角部を備えることが望ましい。本発明のいくつかの実施形態によれば、10ミル(0.254mm)から約500ミル(約12.7mm)の範囲の半径を有する湾曲した角部が好ましいが、ある特定の実施形態ではより大きなまたはより小さな半径が有効なことがある。
図11は、
図10の線11−11に沿って取られたマトリクステープ80の断面図である。マトリクステープ80は、絶縁性基板92と、長方形導電性セグメント82を有する上側バリヤ層91と、長方形導電性セグメント83を有する下側バリヤ層93とを備える。長方形導電性セグメント82および83は、スプレー糊の層94によって基板92に取り付けられ、外側基板層96によって境界されている。1つの実施形態によると、絶縁性基板92の厚さは約1.5ミル(約0.0381mm)であり、スプレー糊層94の厚さは約0.5ミル(約0.0127mm)であり、導電性セグメント82および83の厚さは約1ミル(約0.0254mm)であり、外側基板層96の厚さは約1ミル(約0.0254mm)である。マトリクステープ80の所望の物理的および性能品質に応じて、各層にその他の厚さを使用してもよい。
【0030】
マトリクステープを利用したケーブル内の内部ニアエンドクロストーク低減
上記の議論の多くは、もっぱらエイリアンケーブル間クロストークに焦点をあててきた。ケーブル設計において考慮されるべき別の電気特性は、内部ニアエンドクロストーク(NEXT)としても知られる、線対間のNEXTである。線対とマトリクステープとの間のバリヤの設計、ならびにマトリクステープ自体のパターン設計は、内部NEXTを低減させるように選択することができる。以下の議論は、ケーブル間の著しいエイリアンクロストーク減衰を依然として維持しながら、そのようなNEXTを低減するために利用することができる、いくつかの可能な設計選択について記載する。
【0031】
内部NEXTは、一般的には、2つのパラメータ、すなわち、(1)各対のツイストレイおよび(2)2つの対との間の距離によって制御される(一般には、ケーブル直径を最小限に抑えるように小さく保たれる)。マトリクステープ(マトリクステープ26など)がケーブル中に導入されたとき、さらなるクロストークメカニズムが導入される。このメカニズムは、マトリクステープを介する、2つの線対間の容量結合である。この結合に関する制御パラメータは、(1)線対とマトリクステープとの間の距離および(2)マトリクステープ自体の金属パターンである。
【0032】
線対とマトリクステープとの間の距離は、マトリクステープへの線対が有する容量結合の量を制御する。内側絶縁層(例えば、
図2の内側絶縁層30)は、この距離の大部分を構成するので、対の特性インピーダンス(または反射性減衰量)は、内側絶縁層分離と内側絶縁層の誘電率とによって制御される成分を有する。バリヤとして使用すべき好ましい材料は、約1.7の誘電率を提供するので、発泡ポリプロピレンまたはポリエチレンである。そのような材料を用いると、10ミル(0.254mm)の内側絶縁層厚さは、適当な分離距離を提供する。より一般的には、内側絶縁層に関する好ましい距離(単位:ミル。1ミルは0.0254mmである。)と誘電率の比(ddr)は、約5.88よりも大きい(すなわち、ddr>約5.88)。比率がより高いと、内部クロストークをさらに低減させるのに役立つことになる。
【0033】
線対とマトリクステープとの間の距離に加えて、マトリクステープを介する2つの線対間の容量結合を制御するための別のパラメータは、マトリクステープ自体の設計である。
図12〜
図16は、容量結合を異なるように制御するための異なるマトリクステープ設計を示す。以下の議論において、導電性セグメントは、「ブリック」と称される。これは単に便宜上のものであり、導電性セグメントがブリック形状でなければならないことを示唆することを意図するものではない。先に述べたように、本発明の実施形態の範囲から逸脱することなく、多くの異なる形状を使用してもよい。
【0034】
図12は、(
図10および
図11に示されたもののような)2ブリック両面マトリクステープ80が採用された10Gb/sイーサネット(登録商標)U/UTP Cat 6aケーブル1200の断面図である。
図10および
図11を参照すると容易にわかるように、マトリクステープ80は両面テープであり、各面は、絶縁性基板92によって分離された、長方形導電性セグメントの2つの平行な列またはブリック82および83を含む。ケーブルは、クロスウェブ1210によって互いに分離された4つの線対1202〜1208を含む。バリヤ1212(内側絶縁層)は、線対1202〜1208およびクロスウェブ1210を取り囲む。外側絶縁ジャケット1214は、バリヤ1212のまわりにスパイラル巻きされるマトリクステープ80を取り囲む。
【0035】
図12に示されたマトリクステープ80の2ブリック両面構成の結果として、容量結合C1、C2、C3およびC4、ならびに単純にするために図示されていないその他の結合が生じる。C1は第1の線対1202とマトリクステープ80との間の結合であり、C2は第2の線対1204とマトリクステープ80との間の結合であり、C3は第3の線対1206とマトリクステープ80との間の結合であり、C4は第4の線対1208とマトリクステープ80との間の結合である。理解されるように、C1およびC2は、共通のブリック83aまたは導電性セグメントを共有しているので、C1とC2との間の結合は著しくなる。同様に、C3およびC4は共通のブリック83bを共有しているので、C3とC4との間の結合は著しくなる。その結果、第1の対1202と第2の対1204との間のクロストークが著しくなり、第3の対1206と第4の対1208との間のクロストークが著しくなる。この内部クロストークは、ケーブル1200の性能を劣化させるので望ましくない。
【0036】
図13〜
図15は、3ブリック両面マトリクステープ1302(
図14参照)が採用された10Gb/sイーサネット(登録商標)U/UTP Cat 6aケーブル1300を示す。両面マトリクステープ1302の各面は、絶縁性基板1308によって分離された、長方形導電性セグメントの3つの平行な列またはブリック1304および1306を含む。上側ブリック1304および下側ブリック1306は、ケーブルと隣り合うケーブルとの間のエイリアンクロストークを減衰させるために、互いの対応するギャップ1310および1312と実質的に重なる。ケーブル1300のその他の部分は、
図12のケーブル1200と非常に類似しており、したがって、同様の番号が使用されている。
【0037】
図12に示されたマトリクステープ80の2ブリック両面構成と同様に、
図13〜
図15を示したマトリクステープの3ブリック両面構成により、容量結合C1、C2、C3およびC4、ならびに単純にするために図示されていないその他の結合を生じる。しかしながら、2ブリック構成とは異なり、C1およびC2は共通のブリックを共有しないので、3ブリック構成は、C1とC2の結合が最小となる。かわりに、C1はブリック1306aに結合し、C2はブリック1306bに結合する。したがって、ブリック1306aおよび1306bは別個の導電性セグメントであるので、第1の対1202と第2の対1204と間の内部NEXTは最小になる。C3およびC4は共通のブリック1306bを共有するので、C3とC4との間の結合は著しくなる。その結果、第3の対1206と第4の対1208との間の内部NEXTが著しくなる。したがって、3ブリック両面ケーブル1300の場合、対3と対4の間の内部NEXTは依然として著しいが、対1および対2に関する内部NEXTは、
図12のケーブル1200によって改善される。
【0038】
図16は、4ブリック両面マトリクステープが採用された10Gb/sイーサネット(登録商標)U/UTP Cat 6aケーブル1600の断面図である。理解されるように、結合C1〜C4はそれぞれ、別個のブリック1602〜1608に結合され、それにより、C1〜C4の各々の間の結合が最小になる。したがって、隣り合う対1202〜1206の内部NEXTも最小となる。ブリックの数が増加するにつれて、すべての線対間の結合が少なくなることが予想されるであろう。しかしながら、数多くのブリックを有することに対する不利益は、対応する数多くのギャップおよびブリック端部が生成されることである。これは、ギャップの量を増やし、ブリック端部は、隣り合うケーブル間の誘導結合減衰を低減し、したがって、エイリアンクロストーク減衰が犠牲となる。
【0039】
図12〜16を参照して上記で論じたように、マトリクステープ自体の設計が、マトリクステープによって2つの線対間の容量結合を制御するために使用することができるパラメータである。(1)隣り合うケーブル間のエイリアンクロストークを減衰させることと、(2)ケーブルを用いて内部NEXTを低減することとの相反する目的のバランスをとるためには、マトリクステープの好ましい構成は、
図13および
図14に示された3ブリック両面構成である。もちろん、内側絶縁層厚さが増大した場合、または内側絶縁層のDDRが実質的に増大した場合には、両方の指標(エイリアンクロストークおよび内部NEXT)が改善されるであろう。しかしながら、そのようにすると、ケーブルの直径も増大することになり、それは、一般的には望ましくない。
【0040】
マトリクステープを利用したケーブル内のコヒーレント差動モード結合の回避
ケーブルの構造中にマトリクステープを導入することは、(例えば、TIA 568Cによって規定されるような)エイリアンクロストーク仕様を満たすのに役立つ。マトリクステープ技法は、(ケーブル間のエアギャップまたは間隔とは対照的に)ケーブルの直径を(例えば、350ミル(8.89mm)から可能であれば280ミル(7.112mm)以下まで)さらに低減させる。直径をこのように低減させることは、ケーブルを設備中に設置するときに有益となる。しかしながら、マトリクステープの具体的な設計に応じて、ある特定の周波数におけるエイリアンクロストークを、ケーブル間の高差動モード結合により、増強され得る。この結合は、(撚り線対に常駐する)印加された差動モード信号と、マトリクステープの金属形状と線対のレイ長さとの相互作用の周期との間で求められるコヒーレンスの程度により、コヒーレント差動モード結合と呼ばれる。コヒーレント差動モード結合応答の振幅および帯域幅は、マトリクステープ周期および撚り線対レイ長さの精度または確度に関係する。ピーク応答の帯域幅は、これらの長さが変動するにつれて広くなる。このコヒーレント差動モード結合は、ある特定の設計予防措置(以下に示す)が取られない場合、エイリアンクロストーク仕様を満たすのを難しくすることがある。
【0041】
コヒーレント差動モード結合は、主に、不変の長さの金属形状が不変の周期パターンで利用される構成における潜在的な課題である。
図2〜
図4、
図6および
図8〜
図16に示された実施形態は、そのような構成の例である。金属形状のランダムパターンまたは擬ランダムパターンを採用するマトリクステープは、撚り線対レイ長さの選択の幅が広がるので、コヒーレント差動モード結合の影響を受けにくい。真ランダム性は、金属形状の撚り線対レイと長さ周期度との間の依存性が除去されるので好ましい。しかしながら、典型的な製造プロセスは、しばしば、真ランダムパターンを達成できず、著しい偽ランダムパターン長ささえも達成できない。その結果、マトリクステープは、共通して、不変の周期的長さの金属形状を有する。
【0042】
金属形状が不変の周期的長さを有する場合、対象の周波数におけるコヒーレント差動モード結合を回避するために、線対の長さをその不変の周期的長さに調整することが1つの課題となる。
図17〜
図28および関連する議論は、コヒーレント差動モード結合(一般には、結合)について述べ、ワイヤ対の長さを不変の周期的長さに調整するプロセスをもとに記載される。図示の例では、ケーブルは、3ブリック両面マトリクステープ1302が採用された10Gb/sイーサネット(登録商標)U/UTP Cat 6aケーブルである。
図13〜
図15を参照されたい。
【0043】
図17A〜
図17Cは、金属形状によって覆われた撚り線対に関して、マトリクステープから見た金属形状(すなわち、ブリックまたは導電性セグメント)の等価斜視図を示す概念図である。これらの等価斜視図は、ケーブルの物理的構造を正確には表しておらず、金属形状と対応する撚り線対との間の相対的な配置を示すことを意図していることを留意されたい。
【0044】
図17Aは、マトリクステープが、線対の場合と同じケーブルストランドレイを用いてケーブルのまわりにらせん状に巻き付けられている場合を示す。この場合、金属形状1700の周期は、テープ自体の寸法(すなわち、縦方向長さおよび横方向幅)の周期に等しい。
【0045】
図17Bは、マトリクステープが縦方向構成で巻き付けられている場合を示す。ここで図示されるように、テープの金属形状1700の周期は、その形状の対角線にほぼ等しい。同様に、
図17Cは、周期がより複雑で、したがって、コヒーレント差動モード結合周波数の計算がより複雑である場合を示す。
【0046】
図18は、2つの同様に構築されたケーブル間に440MHz程度の高いレベルのコヒーレント差動モード結合1806が存在するように、特定の金属形状周期を有するマトリクステープを採用するケーブル構成に関する、電力和エイリアンNEXT(PANEXT)仕様1802と、ケーブル応答レベル1804とを示すグラフ1800である。この具体的に示されたケーブル設計は、U/UTP Cat 6A 10G Base−T アプリケーションに必要とされる仕様を含まない。440MHzにおけるピーク結合の外側のエイリアンクロストーク性能は、大幅なマージンで非常によく仕様を満たすことを留意されたい。金属形状の周期の長さに対する修正、および/または線対レイの長さの変化を用いると、以下に記載され、本発明で使用されるように、グラフ1800に示された高い程度の結合を除去することができる。
【0047】
類似するが別個に構築された2本のケーブル中の撚り線対でエイリアンクロストークを生じさせ得る2つの基本的な結合メカニズムがある。すなわち、容量結合および誘導結合に基づく、電磁放射結合メカニズムおよび非放射結合メカニズムである。非放射メカニズムは、主に、隣り合うケーブルの近接性および対象の周波数範囲(例えば、1MHzから500MHz)により、エイリアンクロストークよりも優勢である。以下の議論は、これらの非放射結合メカニズムを対象とする。これらの結合メカニズムの理解は、コヒーレント差動モード結合の性質を理解するのに役立つ。
【0048】
図19A〜
図19Dおよび
図20A〜
図20Dは、マトリクステープが組み込まれていない状態(
図19A、
図19C)とマトリクステープが組み込まれた状態(
図19B、
図19Dおよび
図20A〜
図20D)のU/UTPケーブルのための差動モード(DM)エイリアンクロストーク結合メカニズムおよび共通モード(CM)エイリアンクロストーク結合メカニズムを示す概念図である。各図は、どのようにマトリクステープ(金属形状の連続しない周期的なセット)がこれらの結合メカニズムに減衰を与えることができるかを示す。
【0049】
図19A〜
図19Dにおいて、結合の大きさは、矢印の長さおよび太さによって示される(矢印の長さが長くなるほど、および/または太くなるほど大きさが大きくなる)。典型的なU/UTPケーブルでは、線対上の伝搬する信号はDMであり、DMからCMへの変換は非常に低い(例えば、−40dB)ので、DM結合がCM結合よりも優勢である。
【0050】
図19Bは、マトリクステープがケーブル中に組み込まれたときに、DM結合は(電気的にも磁力的にも)、(
図19Aに示されたものから)大幅に低減されることを示している。応答性減衰メカニズムは
図20Aおよび
図20Cに示される。同様に、
図19Dは、CM電気(容量)結合がわずかに増加し、CM磁気(誘導)結合がわずかに低減されることを示す。応答性減衰メカニズムは、
図20Bおよび
図20Dに示される。以下に
図20A〜
図20Dについてさらに詳細に記載する。
【0052】
磁気(誘導)結合が、異なるが同様に構築された2本のケーブル中の2つの撚り線対2000(
図20に示される)と別の線対(図示せず)との間で線対2000中の異なる差動電流から生じる場合、渦電流2004は、磁界2006が金属形状2008を通過する場合に生成される。この渦電流は、磁界2006に(電流の平方によって乗算された抵抗のレートの)電力損失を提供し、したがって、電磁結合に関連付けられるエイリアンクロストークを低減させる。
図20Cは、線対2000上の差動モードにより、どのように電界の大きさが減衰されるかを示す。金属形状2008は、金属形状2008が被覆する線対2000の長さ全体に実質的に等しい電位を提供し、したがって、カバレージ長さ全体に平均した効果を提供する。等電位値は、被覆された長さが線対周期の整数倍に近づくにつれて、ゼロに向かう傾向がある。同様に、等電位値は、被覆された長さが線対周期の半整数倍に近づくにつれて、最大の大きさに向かう傾向がある。等電位値がより低くなると、異なるケーブルの線対間の電界結合がより低くなる。
【0053】
共通モード結合に関して、
図19Cおよび
図19Dは、どのように磁界結合がわずかに減衰し、電界結合が実際にわずかに増加するかを示した。
図20Bは、磁界2012の大きさが、磁界の形状により、ほんのわずかに減衰されることを示す。これは、金属形状2008と関連する磁界2012の法線ベクトル成分のみが、渦電流2014を生成するからである。法線成分は、DM信号中の対応する法線成分よりも小さいので、これにより、より小さい減衰を生じる。電界結合は、実際には、共通の大きさの電位における線対2000の長さを被覆している金属形状2008のサイズにより、より大きくなる。ここで、金属形状は、本質的には、物理的「スプレッダー」として作用し、それにより、より容易なケーブル間結合が提供される。
【0054】
エイリアンクロストークを担う主な結合メカニズムに関する上記の説明は、不変の長さの周期的な金属形状をもつスパイラル巻きされたマトリクステープを有する通信ケーブル間で、どのようにしてコヒーレント差動モード結合が生じ得るかを理解することをもとにしている。
図21〜
図25は、コヒーレント差動モード結合が生じ得る設定を示す概念図である。これらの図面は、ブリック(金属形状)2100と撚り対2102および2104とを参照する。
【0055】
図21Aに示されるように、特定の金属形状周期(長さL)の場合、マトリクステープを構成する金属形状上に、非ゼロ等電位を生成する撚り線対レイ(周期x)が存在する。そのような周期的な関係における非ゼロ等電位は、長手軸方向に沿って周期的な値を有することがあり、各周期は、特徴的な周期的長さ(「コヒーレンス長さ」2106)を有する。
図22A〜
図22Bおよび
図23A〜
図23Dは、これを、ケーブルの長さに沿った横方向断面図および縦方向断面図で象徴的に示す。
図22A〜
図22Bは、撚り対2102がブリック2100の下で撚られる際のブリック2100上の相対的な電荷を示す。
図23Aおよび
図23Dは、ブリック2100の長さLが撚り対2102の対レイxに関連して変化する際のブリック2100上の相対的な電荷を示す。差動モード信号は、そのレイ長さ間にそのような周期的関係を有し、マトリクステープの金属形状周期をもつ撚り線対に印加される場合、強い結合は、2つの同様に構築されたケーブル間の2つの撚り対の間で生じ得る。2つの異なるケーブルの2つの撚り対間の結合は、
図21Bに示されるように、非常に容量性である。この強い結合は、印加された信号が、長手方向に周期的な等電位にコヒーレントな場合(あるいは換言すると、印加された信号の波長が前述の
図21Aに示されたコヒーレンス長2106に等しい場合)に生じる。
【0056】
同様の構造の隣り合うケーブル間に大きな結合が存在する信号周波数の(周期的な等電位の周期として規定される)コヒーレンス長2106が存在する。この信号周波数(存在する場合)対象の周波数範囲外となるのが好ましい。対処の周波数範囲は、ケーブルが送信するアプリケーションの周波数範囲である(例えば、10Gb/s Base−Tケーブルは、1から500MHzのアプリケーション周波数範囲を有する)。したがって、関係する信号周波数が、送信されるアプリケーションの周波数範囲外となるように、コヒーレンス長2106を生成するのが望ましい。
【0057】
コヒーレント差動モード結合が生じる信号周波数が対象の周波数範囲外であるケーブルを設計するために、(上記で規定された)Lおよびxに関する値を調整することができる。コヒーレンス長2106と信号周波数との間の関係は、以下のとおりである。
周波数(Hz)=(位相速度)/(コヒーレンス長さ)
位相速度とは、撚り線対内における差動モード信号の伝搬速度である。一般的には、(媒体に依存する)この速度は、約20cm/nsである。したがって、60cmのコヒーレンス長が生じる場合、高結合の周波数は約333MHzである。これは、333MHzで生じることを除いて、
図18に示されたPSANEXTピーク1806に同様である。
【0058】
この形態のコヒーレント結合を生成するために、マトリクステープを構成する金属形状2100の周期は、撚り線対レイ長さxの整数倍または半整数倍でなければならない。さらに、この状態が存在するとき、得られたコヒーレンス長2106は、撚り線対レイ長さxと金属形状周期Lとの間の長さの差δに依存する。この長さの差δは、L−xの大きさに等しい。したがって、Lがxの整数倍に完全に等しい(すなわち、δ=0)とき、得られたコヒーレンス長は大きい(周波数は非常に低い)。しかしながら、Lとxの倍数との間のわずかな差またはオフセットが(すなわち、δが非ゼロある)場合、得られるコヒーレンス長は、より短くなり(周波数はより大きくなり)、あるいはより大きくなる(周波数はより小さくなる)。
【0059】
図24Aおよび
図24Dは、コヒーレント差動モード結合がL=2xのときにδ(L−x)の様々な倍数に関して生じる周波数を示す。この関係を使用して、Lおよびxの「適切な」値を選択するための設計ガイドを構築することができる(すべての撚り線対は、この設計ガイドに適合しなければならないことを了解されたい)。撚り線対レイ長さxは、得られる周波数(コヒーレンス長さから導出される)が、そのために設計されたアプリケーションで使用される最大周波数よりも小さくなるように制限される。例えば、10G Base−Tアプリケーションでは、指定される最大周波数は500MHzであり、したがって、線対ツイストレイは、500MHzよりも小さいコヒーレント周波数をもたらさない値から選択することができる。したがって、このアプリケーションをサポートするコヒーレンス長の最も大きな許容可能な値は、40cmである。
【0060】
上記の概念を使用して、金属形状の所与の周期に関する「キープアウト」ツイストレイ長さの表を作成することができる。
図25Aは、そのような表の例2300を示す。
図25Bは、この設計ガイドラインに適合する例示的な撚り対レイセット2302を示す。このガイドラインによると、隣り合うケーブルは、500MHzの最大印加周波数を含む高いコヒーレント差動モード結合を経験することはない。
【0061】
長さLが十分に長く、次いで、結合が小さい振幅および広い帯域幅を有する場合、マトリクステープの金属長さ周期Lの最大値には制限がある。例えば、200MHzで撚り線対上を伝搬する差動モード信号の波長は、約100cmである。マトリクステープの金属形状周期Lが約1インチ(2.54cm)であるとき、約40個の金属形状2100が、この周波数におけるコヒーレンス長2106を構成する。得られる応答スペクトルの振幅は非常に大きく、帯域幅は狭い。しかしながら、形状周期が約10インチ(25.4cm)である場合、4つの形状のみで同じ周波数におけるコヒーレンス長を構成し得る。この10インチ(25.4cm)金属形状周期Lを使用するコヒーレント差動モード結合が存在する場合、エイリアンクロストーク応答は、広帯域幅をもつより小さい振幅をもつピークを有する。
【0062】
また、金属形状周期は、放射性電磁エネルギーの感受性(および放出)起因する上限を有することを了解されたい。この上限は、主に、線対2102が低バランス(すなわち、ケーブル内における、またはチャネルの接続性におけるDMからCMへの、またはCMからDMへの変換)を有する場合にのみ有効(または重要)である。当該の効果は、CM信号がDMに変換され、したがって、ノイズ寄与因子として現れるときに、またはDM信号がCM信号に変換され、(すなわち、隣り合うケーブルに)放射するときに得られる。金属形状の周期的長さLが、サポートしなければならない最大周波数に対して整数倍関係を有するとき、マトリクステープは、線対2102上に伝搬する共通モード信号から、またはその信号中にエネルギーを放射する。例えば、500MHzでは、撚り線対2102上で伝搬する共通モード信号の波長は、約40cmである。金属形状2100の周期的長さLが(4分の1波長アンテナに対応して)約10cmである場合、マトリクステープは、ケーブルからエネルギーを効果的に放射する。もちろん、このシステムは、マトリクステープが、外部ソースから、または別の同様に構築されたケーブルからこの放射エネルギーを受けることができるような相互関係を有する。いずれの場合も、望ましくないエイリアンクロストークに寄与する。
【0063】
金属形状の周期的長さLの上限に加えて、撚り線対2102のレイ長さxによって主に設定される下限も存在する。電磁界減衰は、金属形状長さLが撚り線対レイ長さxに近づく(またはそれよりも小さくなる)につれて低減される。この感受性は、さらに、電界および磁界に起因する減衰によって制御される。例えば、金属形状2100が撚り線対長さxの約半分の長さを有する場合、線対長さの第1の半分を補償する第2の半分がないことにより、有益な電界下減衰は最小になる。また、磁界結合の有益な減衰は、金属形状長さLが線対レイ長さxよりも小さいときに小さくなる。低減された減衰は、主に、渦電流が効果的に設定できない、金属形状端部の増加量に起因する。
【0064】
金属形状の周期的長さLまたはレイ長さxを変動させることに加えて、別の技法は、特定の金属形状(すなわち、ブリック)の下の線対の位置の(ケーブルの周囲の)固有変動性を利用することを含む。この位置変動は、約60ミル(約1.524mm)となり得る。
図26Aに示されるように、「長方形」ブリックパターンの場合、線対2102の位置変動は、ブリック2100が被覆する線対の領域を変更しない。しかしながら、
図26Bに示されるように、非規則的な平行四辺形ブリックパターンの場合、線対2102の位置変動は、ブリックが被覆する線対の領域を変動させることでき、増強された電荷の値を変化させ、コヒーレント差動モード結合につながり得る、任意の周期的な縦方向の電荷分布を破壊するのに役立つ。
【0065】
図27は、対応する線対2102と整列した不規則な平行四辺形ブリック2100のそのようなパターンを示す。平行四辺形の角度が20度である場合、線対位置が60ミル(1.524mm)変化すると、線対長さは約22ミル(約0.5588mm)だけシフトする。この22ミル(0.5588mm)のシフトは、典型的な線対の長さの約5%を表し、コヒーレント差動モード結合のピークの振幅を低減させるのに役立ち、それにより、その帯域幅を増大させる(ピークは本質的に低減され、ピーク幅は広がる傾向がある)。
図28A〜
図28Cは、線対レイ長さの約プラスマイナス10%である場合に生じ得る電荷変動を示す。平行四辺形の角度を増大させると、この変動はさらに増大する。
【0066】
要するに、マトリクステープを使用してケーブル中のコヒーレント差動モード結合を回避するために、(1)(上述の原理を使用して)許容可能なコヒーレンス長をもたらすために、固定された金属形状の対レイ長さおよび周期長さを選択すること、(2)金属形状パターン、個々の金属形状の寸法、または対レイ長さに、ランダム性または十分な擬ランダム性を導入すること、あるいは(3)線対のストランドレイに関してマトリクステープストランドレイをランダム化することのうちの1つまたは複数を使用することができる。また、その他の同様の技法が可能であり、本発明の1つまたは複数の実施形態によって包含され得る。
【0067】
マトリクステープを有する通信ケーブルの改善された電磁両立性(EMC)
ケーブルの縦方向インピーダンスが低すぎる場合、共通モード信号は、マトリクステープの金属形状(ブリック)上で伝搬することができ、潜在的には、ケーブルを放射させ、電磁放射の影響を受けやすくする。EMC感受性または放射を最小限に抑えるために、縦方向インピーダンスを増加させなければならない。
【0068】
図29A〜
図29Cおよび
図30A〜
図30Cを参照して以下に記載するように、マトリクステープを巻き付けたケーブルの縦方向インピーダンスは、マトリクステープ状の金属形状のパターンを、不規則な平行四辺形の金属形状の規則的なパターンとなるように選択することによって増大させることができる。さらに、これにより、金属形状の両端で重なる2つの金属形状の間の)重複静電容量と、(ケーブルコアのまわりに巻き付けられているマトリクステープにより重ねられた2つの金属形状の間の)スパイラル巻き重複静電容量が低減される。スパイラル巻き重複静電容量(
図29A〜
図29Bおよび
図30A〜
図30B)は、一般に、1つのブリックから、縦方向に数ブリック離れて配置された別のブリックまで延びる静電容量を示すので、縦方向インピーダンスの優勢な成分となる。
【0069】
図29A〜
図29Cは、規則的な平行四辺形の金属形状(すなわち、長方形)がブリックとして使用される場合を示すが、
図30A〜
図30Cは、不規則な平行四辺形の金属形状(すなわち、平行四辺形)が使用される場合を示す。(
図29Bおよび
図30Bとあわせると)
図29Cおよび
図30Cの等価回路図からわかるように、スパイラル巻き重複静電容量は、本質的に、一連のキャパシタストリングと平行である。一連のキャパシタストリングがある場合、総静電容量は、直列のキャパシタの数に比例して低減される(したがって、より短いブリックは、撚り高い所望の縦方向インピーダンスにつながる)。らせん状にスパイラル巻き重複静電容量が平行に配置されると、総静電容量が増加し、それにより、縦方向インピーダンスが低減させ。一方、不規則な平行四辺形の規則的なパターンが使用され(
図30A〜
図30C)、スパイラル巻き重複静電容量はより少ない数の一連のキャパシタストリングと平行に配置され、総静電容量の減少と、それに対応する縦方向インピーダンスの増加をもたらす。この結果、電磁放射および感受性が低減される。
【0070】
改善された信号減衰特性
マトリクステープの仕様は、さらなる利点、すなわち、改良された減す特性を提供し、その結果、信号対雑音比、およびこれから導くことができるその他の利点(例えば、チャネルデータレート容量)が増大する。この改善された減衰スペクトルは、(マトリクステープが提供する新しい境界状態に対応する)電磁界の再配向から生じ、線対の電流密度を再分布する。電流密度の再分布は、増大した断面積を有し、それにより、線対内の減衰が低減される。
【0071】
イーサネット(登録商標)ネットワーク装置の受信側における信号レベルは、ケーブル内の減衰によって大幅に制御される。ケーブルには2つの主な寄与因子がある。それらは、(1)伝導損失(銅直径および表面粗さに関連する導体伝導率および損失)、および(2)(銅線を取り囲む誘電材料内の損失に関係する)誘電損失である。マトリクステープを線対に緊密に配置することにより、ワイヤ間の中心からわずかに外に広がるように電磁界が変化する(すなわち、電界のより高い密度は、金属形状上で終端する)。これは、3つの主な理由による。第1に、銅線内の電流密度に対する断面積を増大させ、それにより、伝導損失が低減される。第2に、電磁界のいくつかは、より低い損失の誘電媒体を通過することができるので、誘電損失を低減させる。第3に、マトリクステープは、他の場合には誘電損失に寄与し得る外側ジャケット材料の誘電体に達する電磁界の量を低減させる。
図31および
図32A〜
図32Bは、これらの利点の概念図を提供する。これらの図面は、マトリクステープをもつ10Gb/sケーブル、FR添加(難燃性)ポリエチレン誘電体が銅を取り囲む銅線(約25ミル(約0.635mm)直径の銅)の4つの対(約46ミル(約1.1684mm)直径)、線対を分離する発泡ポリエチレン製スペーサ(約15ミル(約0.381mm)幅×155ミル(3.937mm)長)、線対とマトリクステープとの間の発泡ポリプロピレンまたはポリエチレン製バリヤ(約10ミル(約0.254mm)幅)、および外側のポリ塩化ビニル(PVC)製ジャケット(約16ミル(約
0.4064mm))を仮定する。(例えば、
図13を参照されたい。)
【0072】
線対によって生成された電磁界は、ワイヤ誘電体、セパレータ、バリヤ、およびマトリクステープを貫通する。電磁界は、マトリクステープの外側で大幅に低減される。したがって、ケーブルの外側の外側ジャケットおよびエレメントは、線対の減衰に最小限にしか影響を与えない。
図31は、マトリクステープを採用するU/UTPケーブルの減衰スペクトル3102と、マトリクステープを使用しないU/UTPケーブルの減衰スペクトル3104と、減衰のTIA568仕様の減衰スペクトル3106とを記載する表3100を示す。マトリクステープを利用したケーブルの減衰スペクトルの改善を留意されたい。
【0073】
図32Aは、マトリクステープを利用しないU/UTPケーブル3202を取り囲む磁界3200の概念図である。銅線3206a〜b内の電流密度3204は、これらの電磁界3200に従って分布することを留意されたい。線対3206a〜b中の電流3204の、この得られた小さな断面分布は銅線の間に集中しており、線対中に浅い深さで貫通している。
図32Bに示されるように、導電表面(例えば、マトリクステープ)が線対3206a〜bの隣接するとき、電磁界3208は再分布し、電流3210を銅線3206a〜b中に再分布させる。この再分布により、伝導断面積がより大きくなり、従って、減衰量がより小さくなる。このメカニズムは、減衰低減の導電部分を考慮する。また、電磁界3200、3208の再分布により、誘電損失が低減され、それにより、電磁界は、ケーブル内の誘電材料の部分へと広がり、損失係数がより低くなる。ケーブル内における伝導損失および誘電損失のこの低減の結果として、改善された信号対雑音比により、10Gb/sイーサネット(登録商標)チャネル性能がより高く発揮される。
【0074】
マトリクステープをもつ内側絶縁層として使用される代替的なエンボスフィルム
図33は、撚り線対26とマトリクステープ32との間の絶縁層としてエンボスフィルム132を有する別のケーブル130の断面図である。いくつかの実施形態によれば、エンボスフィルム132は、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはフッ化エチレンプロピレン(FEP)などのポリマーで作製されたエンボステープの形態である。いくつかの実施形態では、エンボスフィルム132は、発泡ポリエチレンまたはポリプロピレンのエンボス層で作製される。ベース材料として、非発泡難燃性ポリエチレンを使用してもよい。フィルム132をエンボス加工することにより、フィルムのベース材料の厚さよりも非常に大きな厚さ全体を有する絶縁層を提供する。これにより、非エンボス固形または発泡フィルムよりも単位量当たりの厚さが厚い層が生成される。エンボス加工を介して、層により多くの空気を組み込むと、得られる層の誘電率がより低くなり、層の誘電率全体が低くすることで、より高い誘電定数をもつ材料のより厚い層と同様のレベルの性能が可能になるので、ケーブル直径全体をより小さくすることができる。エンボスフィルムの使用は、ケーブル中の固形材料の量を少なくすることによって、ケーブルのコスト全体を低減し、また、固形絶縁層が使用される場合よりも少ない量の可燃性材料がケーブル内に提供されるので、ケーブルの燃焼性能を改善する。また、エンボスフィルムを絶縁層として使用すると、ケーブルの挿入損失性能が改善されることが分かった。本発明による絶縁層は、ケーブルコアのまわりに、スパイラル状に、または他の方式で巻き付けることができる。
【0075】
図34は、エンボスフィルム132の1つの実施形態の平面図である。また、詳細な側面
図Sが
図34に示される。
図34に示された実施形態では、エンボスフィルム132は、発泡ポリエチレンまたはポリプロピレン、あるいは非発泡ポリエチレンまたはポリプロピレンのいずれかのなど、ベース材料中のエンボス加工された正方形140の反復パターンの形態をとる。好ましい実施形態では、発泡ポリマーフィルム材料が使用される。エンボスフィルム132のアスペクト比は、エンボスフィルムの実効厚さteとベース材料の厚さtbの比である。いくつかの実施形態によれば、例えば、エンボスフィルムのベース材料厚さが3ミル(0.0762mm)で、実効厚さが15ミル(0.381mm)の場合、最大5のアスペクト比が使用される。その他の有用な比率は、3ミル(0.0762mm)のベース材料厚さと14ミル(0.3556mm)の実効厚さ、5ミル(0.127mm)のベース材料厚さと15ミル(0.381mm)の実効厚さと含む。いくつかの実施形態によれば1.5から7ミル(0.0381mm〜0.1778mm)の範囲のベース材料を、8ミルから20ミル(0.2032mm〜0.508mm)の実効厚さにエンボス加工する。エンボス加工された正方形140が
図34に示されているが、他の形状を使用してもよく、パターニングされたエンボス加工の使用を含めてフィルム132の長さにわたって異なる形状の組合せが可能である。
【0076】
図35〜
図39は、穿孔フッ化エチレンプロピレン(FEP)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムなどの穿孔フィルムで作製されたバリヤ層の代替実施形態を示す。この実施形態では、固形フィルムに穿孔またはその他の変形を施すと、フィルムの平面の上に材料を移動させることによってフィルムの厚さが増加する。
図35(a)は、孔のないフィルム3500の層の側面図であり、
図35(b)は、フィルム全穿孔厚さを増加させた、孔3502をもつ同じフィルム3500を示す。このように穿孔し、変形させた結果、ケーブル用途において、フィルム層の穿孔厚さが増大する。この結果、固形テープのよりも単位量当たりのバリヤ厚さが大きくなる。また、フィルム3500をバリヤ層として使用すると、ケーブルの撚り対とマトリクステープとの間の空気がより多くなり、バリヤ層の誘電率が低減され、バリヤ層の所要の厚さを低減することになる。得られるバリヤ層の全誘電率が低くなるので、より小さな直径のケーブルを製造することができる。さらに、ケーブル中の材料の全体量を減らすことにより、ケーブルのコスト全体を減らし、ケーブルのUL燃焼性能を改善する。
【0077】
本発明による、ケーブル中で使用するための例示的な初期フィルム厚さは、0.0055インチ(約0.127mm)および0.004インチ(約0.102mm)であるが、例えば、0.002インチ(約0.051mm)から0.020インチの厚さ(約0.508mm)を使用してもよい。穿孔後、フィルムの実効厚さ(つまり、穿孔の「ピーク」からフィルムの対向する層までの距離)は、約2倍単位で増加する。このように厚さを効果的に2倍にすることは、穿孔フィルムが圧縮されるにつれて、ケーブル構築中にいくらが低減される。実効厚さのより多い、またはより少ない増大は、異なる穿孔技法を使用して達成することができる。
【0078】
本発明による穿孔フィルムを製造する1つの方法は、フィルムを穿刺するために加熱された「ニードルダイ」を使用することである。このプロセスに使用された熱は、材料の得られる変形を「セットする」のに役立つ。
図36は、回転している加熱されたニードルダイ3602と、対向するローラーブラシ3604とを示す。製造中、穿孔すべき材料は、回転しているニードルダイ3602とローラーブラシ3604との間から供給される。
【0079】
図37および
図38は、永久変更セットを備える孔3502を有する穿孔フィルム3500の斜視図を示す。
【0080】
図39は、(セパレータ3902を含み得る)ケーブルコアとマトリクステープ32の層との間のバリヤ層として設けられた穿孔フィルム3500を有するケーブル3900の断面図を示す。ジャケット33は、マトリクステープ32を取り囲む。
【0081】
本発明によるマトリクステープは、撚り対間のクロストーク減衰を改善するために、スパイラル状に、またはその他の方式でケーブル内の個々の撚り対のまわりに巻き付けることができる。さらに、本発明によるバリヤ層を、絶縁層、外側絶縁ジャケット、または撚り対ドライバ構造を含む、ケーブル内の様々な構造に組み込むことができる。
【0082】
前述の説明から、その他の電磁特性を向上させながらケーブル間クロストークの減衰を増加させるために、ケーブルの向上された性能に関する特長が提供されてきたことが理解できよう。本発明の特定の実施形態について図示および説明してきたが、当業者には、本発明から逸脱することなく、そのより広い態様において変更および修正を行うことができることが明らかであろう。したがって、本発明の趣旨および範囲内となるような全ての変更および修正を網羅することを意図するものである。前述の説明および添付の図面に記載された事項は単に説明のために提供されたものであり、限定するために提供されたものではない。