特許第5674983号(P5674983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5674983
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】LED点灯用電源の遠隔制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H05B37/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-144145(P2014-144145)
(22)【出願日】2014年7月14日
【審査請求日】2014年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106173
【氏名又は名称】サンエー電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】平井 正夫
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−295501(JP,A)
【文献】 特開2012−79546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDモジュールと遠隔制御用交流電源との間に配置されて該LEDモジュールの点灯状態を制御するための点灯制御回路を備えたLED点灯用電源と、該LED点灯用電源の点灯制御回路へ点灯状態指示信号を出力する制御信号判定回路部と、前記遠隔制御用交流電源からの電圧信号の供給及び遮断を行うためにON−OFFするための複数のスイッチ手段と、該複数のスイッチ手段と制御信号判定回路部の間に配置されて遠隔制御用交流電源の電圧信号を前記制御信号判定回路部へ引き込むための50m以上の長さを有する多芯ケーブルと、を備え、
前記制御信号判定回路部は、入力される電圧信号と予め設定されている閾値とに基づいて前記各スイッチ手段がON状態又はOFF状態であるかを判定する判定回路と、該判定回路からの判定信号に基づいて前記LED点灯用電源の点灯制御回路に点灯状態を指示するための点灯状態指示出力回路とを備えているLED点灯用電源の遠隔制御装置であって、
前記多芯ケーブルの芯線間に存在する浮遊容量により発生する浮遊電圧が前記閾値を超えることがないように該浮遊容量を直流充電するための整流ダイオードを、前記制御信号判定回路部の入力部に備えたことを特徴とするLED点灯用電源の遠隔制御装置。
【請求項2】
前記整流ダイオードに直列に、電流制限抵抗を備え、スイッチ手段がONした際の短絡電流を制限することを特徴とする請求項1に記載のLED点灯用電源の遠隔制御装置。
【請求項3】
前記閾値が予め設定される電圧値であり、その電圧値を0Vに設定し、前記浮遊電圧が0Vとなるように、前記浮遊容量を前記整流ダイオードが直流充電することを特徴とする請求項1又は2に記載のLED点灯用電源の遠隔制御装置。
【請求項4】
前記直流充電された浮遊容量を放電させる放電抵抗を更に備え、前記浮遊電圧が前記閾値を超えないように、前記放電抵抗の抵抗値と前記電流制限抵抗の抵抗値とを設定していることを特徴とする請求項2に記載のLED点灯用電源の遠隔制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路や一般道路の路肩、あるいはトンネル内の壁等の屋外に設置されて路面等を照らすLEDモジュールの点灯状態を遠隔より制御するために、LEDモジュールに電力を供給しているLED点灯用電源を遠隔より制御する遠隔制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記LEDモジュールは、消費電力に有利で、しかも長寿命であることから、従来から設置されているナトリウムランプ、水銀灯、蛍光灯等の各種の照明モジュールに代えて用いられるようになってきている。特に、トンネル内に設けられる照明モジュールの場合には、点灯させる時間が多いことから、上記LEDモジュールが注目されている。そして、このLEDモジュールにLED点灯用電源が供給する電力を遠隔から制御するための遠隔制御装置は、従来から設置されている構成のものを利用している。
【0003】
上記LED点灯用電源の遠隔制御装置は、具体的には、LEDモジュールと遠隔制御用交流電源との間に配置されてLEDモジュールの点灯状態を制御するための点灯制御回路を備えたLED点灯用電源と、LED点灯用電源の点灯制御回路へ点灯状態指示信号を出力する制御信号判定回路部と、遠隔制御用交流電源からの電圧信号の接続及び遮断を行うためにON−OFFするための複数のスイッチ手段と、複数のスイッチ手段と制御信号判定回路部の間に配置されて遠隔制御用交流電源の電圧信号を制御信号判定回路部へ引き込むための50m以上の長さを有する多芯ケーブルとを備え、制御信号判定回路部は、入力される電圧信号と予め設定されている閾値とに基づいて前記各スイッチ手段がON状態又はOFF状態であるかを判定する判定回路と、判定回路からの判定信号に基づいてLED点灯用電源の点灯制御回路に点灯状態を指示するための点灯状態指示出力回路とを備えて構成されている。
【0004】
上記LEDモジュールが取り付けられるトンネルは、市街地から遠く離れた山間部に設けられる場合が多い。このため、トンネル内に取り付けられるLEDモジュールの点灯状態を遠隔より制御するためには、LEDモジュールから遠く離れて設置された遠隔制御用交流電源からの電圧信号をトンネルを経由してLEDモジュールまで引き込むための多芯ケーブルを少なくとも50m以上の長いものを用いなければならない。このような50m以上の長さの多芯ケーブルを設置すると、図11(a)に示すように、多芯ケーブルa,b,cの芯線a,b間、芯線b,c間、芯線a,c間に浮遊容量C1,C1,C1が存在している。その結果、一方のスイッチ手段(例えば、図1(a)のS1)がON状態のとき、他方のスイッチ手段(例えば、図1(a)のS2)がOFFであるにもかかわらず、後者スイッチ手段から引き込まれる多芯ケーブルの芯線b,c間に浮遊容量による浮遊電圧が発生してしまう。このため、制御信号判定回路部の入力部に、前記浮遊電圧、つまりLEDモジュールの点灯状態を制御する際に無視できない大きさの意図しない電圧(図11(b)に示すように、入力交流電圧の最大電圧値である約282Vに対してそのほぼ半分の141V)が常に加わった状態になっている。この浮遊電圧を考慮していない状態では、浮遊電圧が閾値よりも高くなることがある。そのため、スイッチ手段がOFF状態であっても、判定回路がON状態であると誤判定してしまうことがあった。
【0005】
そこで、制御信号判定回路部の入力部に閾値を超える浮遊電圧が加わることがないようにブリーダー抵抗(無駄な電力を消費させるための抵抗)を設けて、浮遊電圧が低下するようにしている(例えば、特許文献1参照)。尚、ブリーダー抵抗を用いないで閾値を高くすることも考えられるが、図11(b)に示すように、140V〜282Vまでの狭い範囲に交流電源の電圧変動も考慮した閾値を設定しておかなければならない。このように狭い範囲の閾値では、判定精度の高い判定回路を設けなければ、誤判定をしてしまうため、ブリーダー抵抗により制御信号判定回路部の入力部の電圧を低い値に降下せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−295501号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のブリーダー抵抗を既存の設備の交流回路のままで用いると、プラス電圧とマイナス電圧とが交互に供給されている間中、常にブリーダー抵抗による無駄な電力消費がなされ、大きな電力損失を招いていた。
【0008】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、無駄な電力消費を抑制しながら、判定回路が誤判定することがないLED点灯用電源の遠隔制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置は、前述の課題解決のために、
LEDモジュールと遠隔制御用交流電源との間に配置されて該LEDモジュールの点灯状態を制御するための点灯制御回路を備えたLED点灯用電源と、該LED点灯用電源の点灯制御回路へ点灯状態指示信号を出力する制御信号判定回路部と、前記遠隔制御用交流電源からの電圧信号の供給及び遮断を行うためにON−OFFするための複数のスイッチ手段と、該複数のスイッチ手段と制御信号判定回路部の間に配置されて遠隔制御用交流電源の電圧信号を前記制御信号判定回路部へ引き込むための50m以上の長さを有する多芯ケーブルと、を備え、前記制御信号判定回路部は、入力される電圧信号と予め設定されている閾値とに基づいて前記各スイッチ手段がON状態又はOFF状態であるかを判定する判定回路と、該判定回路からの判定信号に基づいて前記LED点灯用電源の点灯制御回路に点灯状態を指示するための点灯状態指示出力回路とを備えているLED点灯用電源の遠隔制御装置であって、前記多芯ケーブルの芯線間に存在する浮遊容量により発生する浮遊電圧が前記閾値を超えることがないように該浮遊容量を直流充電するための整流ダイオードを、前記制御信号判定回路部の入力部に備えたことを特徴としている。
【0010】
上記のように、多芯ケーブルの芯線間に存在する浮遊容量を直流充電するための整流ダイオードを備えることによって、浮遊容量により発生する浮遊電圧が閾値を超えることを抑制することができる。これにより、判定回路が各スイッチ手段のON状態又はOFF状態を誤判定することがない。また、整流ダイオードによって浮遊容量が直流充電されると、それ以上の電流の流れが発生することがなく、継続的な余分な電力消費を無くすことができる。
【0011】
また、本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置は、前記整流ダイオードに直列に、電流制限抵抗を備え、スイッチ手段がONした際の短絡電流を制限することが好ましい。
【0012】
上記のように、短絡電流を制限する電流制限抵抗を備えることによって、スイッチ手段がONして導通状態となった閉回路が短絡状態になることがなく、回路に備える電子素子(例えばダイオード)の損傷を回避することができる。
【0013】
また、本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置は、前記閾値が予め設定される電圧値であり、その電圧値を0Vに設定し、前記浮遊電圧が0Vとなるように、前記浮遊容量を前記整流ダイオードが直流充電することが好ましい。
【0014】
上記のように、閾値が0Vに設定されていれば、判定回路が0Vを超える電圧が発生しているかどうかを判定するだけでスイッチ手段のON−OFFを的確に判定することができ、高精度の判定回路を不要にし、コスト面において有利な判定回路を用いることができる。
【0015】
また、本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置は、前記直流充電された浮遊容量を放電させる放電抵抗を更に備え、前記浮遊電圧が前記閾値を超えないように、前記放電抵抗の抵抗値と前記電流制限抵抗の抵抗値とを設定している構成であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、放電抵抗を備えることによって、直流充電された浮遊容量の所定量を放電させることができる。また、浮遊電圧が閾値を超えないように、放電抵抗の抵抗値と電流制限抵抗の抵抗値とを設定することによって、判定回路が各スイッチ手段のON状態又はOFF状態を誤判定することがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多芯ケーブルの芯線間に存在する浮遊容量を直流充電するための整流ダイオードを備えることによって、無駄な電力消費を抑制しながら、判定回路が誤判定することがないLED点灯用電源の遠隔制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置を示す概略図、(b)は本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置における交流電源から3芯ケーブルまでを示し、3芯ケーブルに発生する浮遊容量を回路で示した図である。
図2】(a)は、遠隔制御用交流電源から制御信号判定回路部の入力部までを示す第一実施形態を示す回路図、(b)は、図2(a)の回路図において制御信号判定回路部の入力部に発生する電圧波形を示すグラフである。
図3】(a)は、遠隔制御用交流電源から制御信号判定回路部の入力部までを示す第二実施形態を示す回路図、(b)は、図3(a)の回路図において制御信号判定回路部の入力部に発生する電圧波形を示すグラフである。
図4】(a)は、遠隔制御用交流電源から制御信号判定回路部の入力部までを示す第三実施形態を示す回路図、(b)は、図4(a)の回路図において制御信号判定回路部の入力部に発生する電圧波形を示すグラフである。
図5】(a)は、遠隔制御用交流電源から制御信号判定回路部の入力部までを示す第四実施形態を示す回路図、(b)は、図5(a)の回路図において制御信号判定回路部の入力部に発生する電圧波形を示すグラフである。
図6】(a),(b),(c)は制御信号判定回路部の他の構成を示す回路図である。
図7】(a)は、4芯ケーブルの断面図、(b)は、遠隔制御用交流電源から4芯ケーブルまでを示し、4芯ケーブルに発生する浮遊容量を回路で示した図、(c)は、(b)の回路図においてスイッチS1がON状態の時のb−d間に現れる浮遊電圧を示すグラフである。
図8】(a)は、遠隔制御用交流電源から4芯ケーブルまでを示し、4芯ケーブルに発生する浮遊容量を回路で示した図、(b)は、(a)の回路図においてスイッチS2がON状態の時のc−d間に現れる浮遊電圧を示すグラフである。
図9】(a)は、遠隔制御用交流電源から4芯ケーブルまでを示し、4芯ケーブルに発生する浮遊容量を回路で示した図、(b)は、(a)の回路図においてスイッチS1とS2とが共にON状態の時のc−d間に現れる浮遊電圧を示すグラフである。
図10】(a)は、遠隔制御用交流電源から4芯ケーブルまでを示し、4芯ケーブルに発生する浮遊容量を回路で示した図、(b)は、(a)の回路図においてスイッチS1とS3とが共にON状態の時のb−d間に現れる浮遊電圧を示すグラフである。
図11】(a)は、3芯ケーブルの断面図、(b)は、2つのスイッチのうちの一方のスイッチがON状態の時のb−c間に現れる浮遊電圧V1を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)に、本発明のLED点灯用電源の遠隔制御装置の概略図を示している。図1(b)は、3芯ケーブルの芯線a,b間、芯線b,c間、芯線a,c間に発生する浮遊容量C1,C1,C1を回路で表した図である。このLED点灯用電源の遠隔制御装置1は、例えば高速道路や一般道路の路肩、あるいはトンネル内の壁に設置されて路面等を照らすLEDモジュール2に電力を供給するLED点灯用電源9を遠隔で制御するための装置である。
【0020】
<第一実施形態>
具体的には、遠隔制御装置1は、LEDモジュール2と遠隔制御用交流電源3との間に配置されてLEDモジュール2の点灯状態を制御するための点灯制御回路10を備えたLED点灯用電源9と、LED点灯用電源9の点灯制御回路10へ点灯状態指示信号を出力する制御信号判定回路部4と、遠隔制御用交流電源3からの電力の接続及び遮断を行うためにON−OFFするためのスイッチ手段としての複数(2個)のスイッチ手段S1,S2と、スイッチ手段S1,S2と制御信号判定回路部4の間に配置されて遠隔制御用交流電源3の電圧信号を制御信号判定回路部4へ引き込むための50m以上の長さを有する多芯ケーブル(3芯ケーブル)5を備えている。LEDモジュール2の点灯状態を制御するとは、スイッチ手段S1,S2のON−OFFの組み合わせにより単一のLEDモジュール2に流す電流を多段階に調節する、又はLEDモジュール2に流す電流をLEDモジュール2毎に調節することによって、トンネル内のLEDモジュール2の照度を時間帯及び設置位置に応じて変更することである。
【0021】
前記制御信号判定回路部4は、各スイッチ手段S1,S2からの交流電力と予め設定されている閾値とに基づいて各スイッチ手段S1,S2がON状態又はOFF状態であるかを判定する2個の判定回路6,7と、これら判定回路6,7からの判定信号に基づいてLED点灯用電源9の点灯制御回路10に点灯状態を指示するための点灯状態指示出力回路8とを備えて構成されている。前記閾値は、電圧値であり、各判定回路6又は7は、各スイッチ手段S1,S2からの交流電圧信号と閾値の電圧値とを比較して、S1,S2のON−OFFを判定する。遠隔制御用交流電源3とスイッチ手段S1,S2とから、遠隔制御部11を構成している。
【0022】
3芯ケーブル5は、制御用ケーブルでCVVケーブル(制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル)を用いているが、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)や、VVRケーブル(600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル)や、同等のケーブルでもよい。
【0023】
3芯ケーブル5の芯線a,b間、芯線b,c間、芯線a,c間(図11)に存在する浮遊容量C1,C1,C1(いずれも同一の浮遊容量)により発生する浮遊電圧が判定回路6,7の閾値を超えることがないように浮遊容量C1,C1,C1を直流充電するための整流ダイオードD1,D2を備えている。整流ダイオードD1,D2によって、浮遊容量C1,C1,C1を直流充電することによって、スイッチ手段S1,S2がOFF状態の時に、制御信号判定回路部4の入力部に浮遊容量C1,C1,C1に起因する電圧が発生することがない。よって、判定回路6,7の閾値(電圧値)を0Vに設定することができる。
【0024】
また、整流ダイオードD1,D2に直列に、電流制限抵抗R1,R2を設けて、スイッチ手段S1,S2がONした際の短絡電流を制限するようにしている。このように、短絡電流を制限する電流制限抵抗R1,R2を備えることによって、スイッチ手段S1,S2がONして導通状態となった閉回路が短絡状態になることがなく、回路に備える電子素子(例えばダイオードD1,D2)の損傷を回避することができる。各電流制限抵抗R1又はR2の抵抗値は、ダイオードD1、D2を損傷させない程度の短絡電流に抑制する値のものを用いる。図2(a)では、芯線aに接続されるダイオードD1、電流制限抵抗R1、判定回路6を省略している。
【0025】
スイッチ手段S1,S2は、トグルスイッチ、タンブラスイッチ、プッシュスイッチ等の手動式の操作スイッチの他、電磁開閉器やリレー、トライアックのような半導体素子等でもよい。
【0026】
判定回路6,7は、共に同一構成であり、具体的な3つの構成を図6(a),(b),(c)に示している。本発明の構成は、図6(a),(b),(c)いずれの構成でもよい。まず、図6(a)は、フォトカプラPHである。このフォトカプラPHは、発光素子と受光素子とを備えている。発光素子は、入力側に電圧(A>K)を加えて発光素子に電流を流すことでその電流を光に変換し、その光を受光素子で受け取り、トランジスタをONさせて出力側に電流を流す。発光素子は一般的に1V前後の入力電圧で発光する為、本発
明で構成される回路電圧(100数十V以上)においては判定閾値がほぼ0Vとみなせる
。これより、スイッチ手段S1又はS2がON状態すなわち判定回路入力側に電圧が加わったときには、判定回路はスイッチ手段がON状態であると判断し、その信号を点灯状態指示出力回路8に出力する。この点灯状態指示出力回路8から指示信号が点灯制御回路10に出力されることによってLEDモジュール2を点灯するようLED点灯用電源9から電力を供給する。また、前記読み取った電圧値が閾値以下であると判断したときに、スイッチ手段S1又はS2がOFF状態であると判断し、その信号は点灯状態指示出力回路8へ出力されない。
【0027】
図6(b)は、フォトカプラPHと、フォトカプラPHよりも入力側に直列に接続されたツェナーダイオードZDを備えた判定回路6,7を示している。図2(a)の回路では、スイッチS1又はS2がOFFのときに、芯線b,c間に現れる電圧V1が0Vであるため、図6(a)の判定回路6,7を使用できるのであるが、後述する回路(図3(a)、図4(a)、図5(a)に示す回路)では、芯線b,c間に現れる電圧V1が0Vを超えてしまうため、図6(b)に示すように、フォトカプラPHの入力側にツェナーダイオードZDを備えてツェナー電圧の分だけ閾値を上げることで判定回路6,7の検出を良好に行えるようにしている。
【0028】
詳述すれば、図2(a)に示す回路は、浮遊電圧を0Vにしているため、閾値を0Vにした判定回路6,7でスイッチ手段S1又はS2がON状態であるかOFF状態であるかを判定することができる回路である。これに対して、図3(a)、図4(a)、図5(a)に示す回路は、ある程度の大きさの浮遊電圧を発生させた上で、この浮遊電圧が予め設定されている所定電圧以上になった場合に、スイッチ手段S1又はS2がON状態であると判定する回路である。そのため、図6(b)に示すように、ツェナーダイオードZDを備えている。図3(a)、図4(a)、図5(a)では、交流電源の交流電圧が負となるときに、充電された浮遊容量の所定量を放電させる回路構成となっており、放電された所定量の電荷分は、再度交流電圧が正となる時に充電され、この充電時に浮遊電圧として発生する。そのため、判定回路6,7の閾値を交流電圧と浮遊電圧との間に設定するために、ツェナーダイオードZDが設けられ、そのツェナーダイオードZDのツェナー電圧は、交流電源電圧と浮遊電圧との間に設定される。
【0029】
図6(c)は図6(b)にR3を追加した回路構成である。R3は判定回路6,7の入力側に直列に接続される放電抵抗R2と共に判定回路6,7に入力される電圧を分圧(R3/(R2+R3)倍)させている。この場合、判定回路6,7の閾値は、Vin×R3/(R2+R3)とV1×R3/(R2+R3)の間に設定されることによって、判定回路6,7の検出を良好に行える。
【0030】
図2(a)に示した回路において第1段目のスイッチ手段S1をONしたときに、芯線b,c間に現れる電圧V1の波形をオシロスコープにて計測した。その計測した波形を図2(b)に示している。尚、1kmの3芯ケーブル(CVVケーブル)5を配線した時のC1の値が0.064μFで入力交流電圧Vinが200V(50Hz)としている。図2(b)には、入力交流電圧Vinの最大値=実効値×√2=200V×√2=約282Vが示されている。この入力交流電圧Vinに対して芯線b,c間に現れる電圧が0であるため、V1の電圧が0になっている。このとき、一方の第1判定回路6の入力部に電流が流れて前述したように第1判定回路6が、一方のスイッチ手段S1がON状態であると判定する。また、他方のスイッチ手段S2がOFFであるため、他方の第2判定回路7の入力部には、電流が流れない。そのため、閾値(電圧値0V)を超える電圧が発生しない。その結果、第2判定回路7は、スイッチ手段S2がOFF状態であると判定する。
【0031】
前記とは逆に、第2段目のスイッチ手段S2をONした場合には、他方の判定回路7の入力部に電流が流れて前述したように判定回路7はスイッチ手段S2がON状態であると判定する。他方のスイッチ手段S1がOFFであるため、第1判定回路6の入力部には、電流が流れない。このため、閾値(電圧値0V)を超える電圧が発生しない。その結果、第1判定回路6が、スイッチ手段S1がOFF状態であると判定する。
【0032】
<第二実施形態>
図3(a)に本発明の第二実施形態の回路を示している。第一実施形態では、ダイオードD2に直列に電流制限抵抗R2を設けた構成であったが、ダイオードD2と電流制限抵抗R2との直列回路に並列に第2の抵抗(放電抵抗)R21を更に備えた回路としている。図3(a)では、芯線aに接続されるダイオードD1、電流制限抵抗R1、判定回路6を省略している。
【0033】
第2の抵抗R21を設けることによって、スイッチ手段S1がONの時に、交流電源3のプラス電圧が加わっている状態では、正の電流I1,I2が流れ、交流電源3のマイナス電圧が加わっている状態では、負の電流I3が流れる。このとき、正の電流I1,I2が流れたときに、入力交流電圧Vinに対して芯線b,c間に現れる電圧V1の最大値が図3(b)に示すように、約60Vになっている。尚、電流制限抵抗R2の抵抗値が100kΩで、抵抗R21の抵抗値が470kΩである。この回路では、交流電源3のマイナス電圧が加わっている時にも電圧V1(60V)が判定回路7に加わるため、判定回路7(判定回路6も同様)は、図6(b)から構成することになる。
【0034】
<第三実施形態>
図4(a)に本発明の第三実施形態の回路を示している。第一実施形態では、ダイオードD2に直列に電流制限抵抗R2を設けた構成であったが、ダイオードD2と電流制限抵抗R2との直列回路に、整流ダイオードD21と第2の抵抗(放電抵抗)R21の直列回路を並列に設けた回路としている。図4(a)では、芯線aに接続されるダイオードD1、電流制限抵抗R1、判定回路6を省略している。
【0035】
第2の抵抗R21及び整流ダイオードD21を設けることによって、スイッチ手段S1がONの時に、交流電源3のプラス電圧が加わっている状態では、正の電流I1が流れ、交流電源3のマイナス電圧が加わっている状態では、負の電流I3が流れる。このとき、正の電流I1が流れたときに、入力交流電圧Vinに対して芯線b,c間に現れる電圧V1の最大値が図4(b)に示すように、約60Vになっている。尚、電流制限抵抗R2の抵抗値が100kΩで、抵抗R21の抵抗値が470kΩである。この回路では、交流電源3のマイナス電圧が加わっている時にも電圧V1(60V)が判定回路7に加わるため、判定回路7(判定回路6も同様)は、図6(b)から構成することになる。
【0036】
<第四実施形態>
図5(a)に本発明の第三実施形態の回路を示している。第一実施形態では、ダイオードD2に直列に電流制限抵抗R2を設けた構成であったが、ダイオードD2と電流制限抵抗R2との直列回路と、ダイオードD2に第2の抵抗(放電抵抗)R22を並列に設けた回路としている。図5(a)では、芯線aに接続されるダイオードD1、電流制限抵抗R1、判定回路6を省略している。
【0037】
第2の抵抗R22を設けることによって、スイッチ手段S1がONの時に、交流電源3のプラス電圧が加わっている状態では、正の電流I1が流れ、交流電源3のマイナス電圧が加わっている状態では、負の電流I4が流れる。このとき、正の電流I1が流れたときに、入力交流電圧Vinに対して芯線b,c間に現れる電圧の最大値が図5(b)に示すように、約60Vになり、負の電流I4が流れたときに、入力交流電圧Vinに対して芯線b,c間に現れる電圧V1の最大値が図5(b)に示すように、約−40Vになっている。尚、電流制限抵抗R2の抵抗値が100kΩで、抵抗R22の抵抗値が470kΩである。この回路では、交流電源3のマイナス電圧が加わっている時にも電圧V1(60V)が判定回路7に加わるため、判定回路7(判定回路6も同様)は、図6(b)から構成することになる。
【0038】
このように図2の回路では、スイッチ手段S1がONの時に芯線b,c間に現れる電圧が0Vとなり、最適であるが、図3図5の回路においても芯線b,c間に現れる電圧の最大の電圧値を約60Vに抑えることができる。放電抵抗R21,R22を備えることによって、直流充電された浮遊容量の所定量を確実に放電させることができる。また、浮遊電圧が閾値(例えば60V)を超えないように放電抵抗R21,R22の抵抗値と電流制限抵抗R2の抵抗値とを設定していることによって、判定回路6,7が各スイッチ手段S1,S2のON状態又はOFF状態を誤判定することがない。
【0039】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
前記第一〜第四実施形態では3芯ケーブルを示したが、本発明は4芯ケーブル以上の多芯ケーブルにも適用することができる。例えば図7(a)に、4芯ケーブル10の断面図を示し、芯線a,b間、芯線b,c間、芯線c,d間、芯線a,d間が同一の浮遊容量C1を有し、芯線a,c間、芯線b,d間が同一の浮遊容量C2を有している。図7(b)では、第1段目のスイッチ手段S1がON状態になっている状態の回路図を示し、この状態において、芯線b,d間に現れる電圧波形をオシロスコープにて計測し、その計測した波形を図7(c)に示している。尚、1kmの4芯ケーブル(CVVケーブル)5を配線した時のC1の値が0.073μFで、C2の値が0.023μFで入力交流電圧Vinを200V(50Hz)にしている。図7(c)に示すように、入力交流電圧Vinの最大値=実効値×√2=200V×√2=約282Vが示されている。この入力交流電圧Vinに対して芯線b,d間に現れる電圧の最大値が±240Vになっている。この±240Vが浮遊容量により発生する浮遊電圧である。
【0041】
また、図8(a)では図7(b)と同一回路において第2段目のスイッチ手段S2をONしたときに、芯線c,d間に現れる電圧波形をオシロスコープにて計測し、その計測した波形を図8(b)に示している。他の条件は、図7で示した値と同じである。図8(b)では、芯線c,d間に現れる電圧の最大値が±140Vになっている。この±140Vが浮遊容量により発生する浮遊電圧である。
【0042】
また、図9(a)では図7(b)と同一回路において第1段目のスイッチ手段S1と第2段目のスイッチ手段S2とをONしたときに、芯線c,d間に現れる電圧波形をオシロスコープにて計測し、その計測した波形を図9(b)に示している。他の条件は、図7で示した値と同じである。図9(b)では、芯線c,d間に現れる電圧の最大値が±160Vになっている。この±160Vが浮遊容量により発生する浮遊電圧である。
【0043】
また、図10(a)では図7(b)と同一回路において第1段目のスイッチ手段S1と第3段目のスイッチ手段S3とをONしたときに、芯線b,d間に現れる電圧波形をオシロスコープにて計測し、その計測した波形を図10(b)に示している。他の条件は、図7で示した値と同じである。図10(b)では、芯線b,d間に現れる電圧の最大値が±240Vになっている。この±240Vが浮遊容量により発生する浮遊電圧である。
【0044】
図7図10に示した4芯ケーブルで構成される回路において、図2(a)で示した整流ダイオードD2と電流制限抵抗R2との直列回路を3本のケーブルに接続しておけば、芯線c,d間に現れる前述した浮遊電圧を0Vにすることができる。
【0045】
また、第一実施形態では、各芯線a又はb毎に判定回路6,7を設けたが、多芯ケーブルに対して共通(単一)の判定回路を設けて実施してもよい。また、複数の判定回路6,7に対して共通(単一)の点灯状態指示出力回路8を設けたが、各判定回路6又は7に対応するように判定回路と同数の点灯状態指示出力回路を設けて実施してもよい。
【0046】
また、第一実施形態では、電流制限抵抗R1,R2を設けたが、省略してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…遠隔制御装置、2…LEDモジュール、3…遠隔制御用交流電源、4…制御信号判定回路部、5…多芯ケーブル(3芯ケーブル)、6,7…判定回路、8…点灯状態指示出力回路、9…LED点灯用電源、10…点灯制御回路、11…遠隔制御部、12…4芯ケーブル、D1,D2,D21…整流ダイオード、PH…フォトカプラ、R1,R2…電流制限抵抗、R1,R3…分圧抵抗、R21,R22…放電抵抗、S1,S2,S3…スイッチ手段
【要約】
【課題】無駄な電力消費を抑制しながら、判定回路が誤判定することがないLED点灯用電源の遠隔制御装置を提供する。
【解決手段】LEDモジュール2の点灯制御回路10を備えたLED点灯用電源9と、点灯制御回路10へ点灯状態指示信号を出力する制御信号判定回路部4と、遠隔制御用交流電源3からの電圧信号の供給及び遮断を行うためにON−OFFする複数のスイッチ手段S1,S2と、多芯ケーブル5と、を備え、制御信号判定回路部4は、電圧信号と閾値とに基づいて各スイッチ手段S1,S2がON又はOFF状態であるかを判定する判定回路6,7と、判定回路6,7からの判定信号に基づいて点灯制御回路10に点灯状態を指示する点灯状態指示出力回路8とを備え、多芯ケーブル5の芯線間に存在する浮遊電圧が閾値を超えることがないように浮遊容量を直流充電するための整流ダイオードD1,D2を備えた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11