特許第5674987号(P5674987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674987
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】紙幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   G07D9/00 416C
   G07D9/00 408Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-174283(P2014-174283)
(22)【出願日】2014年8月28日
(62)【分割の表示】特願2013-207112(P2013-207112)の分割
【原出願日】2009年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-220014(P2014-220014A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥
(72)【発明者】
【氏名】青地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 正宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀司
(72)【発明者】
【氏名】金川 武史
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−272027(JP,A)
【文献】 特開平08−180242(JP,A)
【文献】 特開平11−265472(JP,A)
【文献】 特開2009−009605(JP,A)
【文献】 特開平07−249152(JP,A)
【文献】 特開2007−293770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出金用の紙幣を取扱う紙幣取扱装置であって、
紙幣入出金口と、
紙幣の金種を判別する紙幣判別部と、
前記紙幣判別部で判別された紙幣を一時的に収納する一時収納部と、
紙幣を収納する複数の紙幣収納庫と、
前記紙幣収納庫に対して補充する紙幣を保管する装填庫と、
前記紙幣判別部でリジェクトと判別された紙幣を収納するリジェクト庫と、
前記紙幣判別部を通過し、該紙幣入出金口、該一時収納部、及び該複数の紙幣収納庫が接続されて、紙幣を搬送する第一の搬送路と、
前記第一の搬送路と、前記装填庫及び前記リジェクト庫に接続される第二の搬送路との間を接続する接続部を備え、
前記第一の搬送路の両終端は、前記接続部に接続され、前記紙幣入出金口、前記一時収納部、前記複数の紙幣収納庫、前記リジェクト庫及び前記装填庫は、前記第一の搬送路の外側に接続されて、
前記紙幣取扱装置の後部において、前記一時収納部と、前記リジェクト庫と、前記装填庫とを配置し、
前記第一の搬送路は、
前記紙幣入出金口より分離された紙幣を、前記紙幣判別部に搬送する入金計数処理、前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記紙幣入出金口に搬送する出金取引処理、及び前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記装填庫に搬送する回収処理における紙幣の搬送方向である第一の搬送方向と、
前記一時収納部から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する入金収納処理、及び前記装填庫から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する装填処理における紙幣の搬送方向であって、前記第一の搬送方向とは異なる搬送方向である第二の搬送方向と、に搬送
該装置の後面部に前記装填庫が配置され、該装填庫の前に複数の前記紙幣収納庫が配置され、
前記装填庫と複数の前記紙幣収納庫とが着脱可能に搭載される搭載部を有し、前記搭載部は、複数の前記紙幣収納庫を搭載する第一の搭載部と、前記装填庫を搭載する第二の搭載部とに分離可能であり、前記第一の搭載部と前記第二の搭載部とが結合した状態で、全体が装置の背面側に引き出すことが可能である
ことを特徴とする紙幣取扱装置。
【請求項2】
前記第二の搬送路に配置され、前記第二の搬送路から前記リジェクト庫又は前記装填庫へ紙幣を搬送するかを切り替える切替部と、を備え、
前記第二の搬送路と、前記切替部とは、前記第一の搬送路の外側に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【請求項3】
前記第一の搭載部を引き出さずに固定した状態において、前記第二の搭載部のみを引き出すことを可能とする機構を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の紙幣取扱装置。
【請求項4】
入出金用の紙幣を取扱う紙幣取扱装置であって、
紙幣入出金口と、
紙幣の金種を判別する紙幣判別部と、
前記紙幣判別部で判別された紙幣を一時的に収納する一時収納部と、
紙幣を収納する複数の紙幣収納庫と、
前記紙幣収納庫に対して補充する紙幣を保管する装填庫と、
顧客により取り忘れられた紙幣を収納する回収庫と、
前記紙幣判別部を通過し、該紙幣入出金口、該一時収納部、及び該複数の紙幣収納庫が接続されて、紙幣を搬送する第一の搬送路と、
前記第一の搬送路と、前記装填庫及び前記回収庫に接続される第二の搬送路との間を接続する接続部を備え、
前記搬送路の両終端は、前記接続部に接続され、前記紙幣入出金口、前記一時収納部、前記複数の紙幣収納庫、前記回収庫及び前記装填庫は、前記第一の搬送路の外側に接続されて、
前記紙幣取扱装置の後部において、前記一時収納部と、前記回収庫と、前記装填庫とを配置し、
前記第一の搬送路は、
前記紙幣入出金口より分離された紙幣を、前記紙幣判別部に搬送する入金計数処理、前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記紙幣入出金口に搬送する出金取引処理、及び前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記装填庫に搬送する回収処理における紙幣の搬送方向である第一の搬送方向と、
前記一時収納部から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する入金収納処理、及び前記装填庫から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する装填処理における紙幣の搬送方向であって、前記第一の搬送方向とは異なる搬送方向である第二の搬送方向と、に搬送し、
該装置の後面部に前記装填庫が配置され、該装填庫の前に複数の前記紙幣収納庫が配置され、
前記装填庫と複数の前記紙幣収納庫とが着脱可能に搭載される搭載部を有し、前記搭載部は、複数の前記紙幣収納庫を搭載する第一の搭載部と、前記装填庫を搭載する第二の搭載部とに分離可能であり、前記第一の搭載部と前記第二の搭載部とが結合した状態で、全体が装置の背面側に引き出すことが可能である
ことを特徴とする紙幣取扱装置。
【請求項5】
前記第二の搬送路に配置され、前記第二の搬送路から前記回収庫又は前記装填庫へ紙幣を搬送するかを切り替える第一の切替部と、を備え、
前記第二の搬送路と、前記第一の切替部とは、前記第一の搬送路の外側に接続されることを特徴とする、請求項4に記載の紙幣取扱装置。
【請求項6】
前記紙幣判別部でリジェクトと判別された紙幣を収納するリジェクト庫を備え、
前記リジェクト庫は、前記装填庫の前方に配置されることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の紙幣取扱装置。
【請求項7】
前記第二の搬送路に配置され、前記第二の搬送路から前記リジェクト庫へ搬送するように、紙幣の搬送先を切り替える第二の切替部を備えることを特徴とする、請求項6に記載の紙幣取扱装置。
【請求項8】
前記第一の搭載部を引き出さずに固定した状態において、前記第二の搭載部のみを引き出すことを可能とする機構を有することを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の紙幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は利用者の操作によって現金の入出金を自動的に行う現金自動取引装置(ATM)等に実装して使用される紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ATMで取り扱われる現金の多金種化及び大容量化に伴い、可能な限り多くの大容量の紙幣収納庫を実装する紙幣取扱装置が提唱されている。例えば、特許文献1及び2には、複数の紙幣収納庫を紙幣取扱装置の下部に並べて配置し、その他の機構部を装置の上部に集約して配置した紙幣取扱装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された紙幣取扱装置では、紙幣入出金口、紙幣判別部、一時収納部を装置の上部に配置し、下部には縦長の装填庫と複数の紙幣収納庫を装置の前後方向に配置し、これらの機構部を一方向搬送路で接続している。この一方向搬送路による搬送路は複雑になる。特に、入金時の紙幣と出金時の紙幣を紙幣判別部で同一方向に搬送することから、紙幣を常に紙幣判別部入口側へ搬送する専用の搬送路が必要となる。すなわち、紙幣判別部に繋がる1つのループ状の搬送ルートに紙幣入出金口および一時収納部を配置し、一方、紙幣判別部に繋がる他の1つのループ状の搬送ルートに紙幣収納庫を配置する。このため、装置全体にわたって搬送路を構成する構造体の体積が増え、装置全体の大きさのわりには紙幣収納庫が小さくなるという問題がある。
【0004】
特許文献2に開示された紙幣取扱装置では、装置の上部の前面に入出金口部、その後方に一時収納部、紙幣判別部を並べて配置し、下部に装填庫、リジェクト庫、紙幣収納庫を前後方向に並べて配置し、これらの機構部を双方向搬送路で接続している。
【0005】
また、特許文献3に開示された紙幣取扱装置は、特許文献2に開示された紙幣取扱装置と同様に、各機構部を双方向搬送路で接続して搬送路の簡素化を図っている。例えば、図27(第二実施例)には、一時保管庫40、リジェクト庫65及び装填・回収庫83を装置の後方に配置し、入金庫の代用としてのリジェクト庫65に、入金時における一時保管庫40からの非還流紙幣や取り忘れ紙幣を収納し、かつ出金時における一時保管庫40からのリジェクト紙幣を収納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−221636号公報
【特許文献2】特開2009−110230公報
【特許文献3】特開2000−172903公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3に開示された紙幣取扱装置では、一時保管庫40から繰り出された紙幣は、紙幣判別部を通過した後に搬送不良の紙幣を検出してもリジェクト庫に回収できず、リサイクル庫に収納するしかない。そのため、リサイクル庫内で紙幣の集積不良を引き起こし、次回、リサイクル庫から紙幣を繰出す時にジャム等の搬送不良が発生するおそれがある。
【0008】
特許文献2に開示された紙幣取扱装置では、紙幣判別部を紙幣が通過した後に、リジェクト庫と装填庫を切り替える機構を有しているので、特許文献3におけるような、紙幣判別部を通過した後の紙幣の搬送不良は防げそうである。然しながら、特許文献2の装置では、装填庫から紙幣判別部へ紙幣を搬送する専用の搬送路56が必要となり、搬送路が複雑化する。さらにこの構成においては、一時収納部の下面とリサイクル庫の上面の間に、2本の双方向搬送路51b、58と、1本の一方向搬送路55の3層の搬送路を構成する必要があり、装置の高さを圧縮し、コンパクトな装置とリサイクル庫の大容量化を両立させることが困難となる。
【0009】
本発明は、紙幣の搬送路をできるだけ短縮化して紙幣搬送機構の簡素化を図り、装置を小型化することにある。
また、本発明は、リサイクル紙幣を収納する紙幣収納庫に対して、装填庫やリジェクト庫を着脱可能にして、係員による紙幣の取扱いの利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、好ましくは、入出金用の紙幣を取扱う紙幣取扱装置であって、紙幣入出金口と、紙幣の金種を判別する紙幣判別部と、前記紙幣判別部で判別された紙幣を一時的に収納する一時収納部と、紙幣を収納する複数の紙幣収納庫と、前記紙幣収納庫に対して補充する紙幣を保管する装填庫と、前記紙幣判別部でリジェクトと判別された紙幣を収納するリジェクト庫と、前記紙幣判別部を通過し、該紙幣入出金口、該一時収納部、及び該複数の紙幣収納庫が接続されて、紙幣を搬送する第一の搬送路と、前記第一の搬送路と、前記装填庫及び前記リジェクト庫に接続される第二の搬送路との間を接続する接続部を備え、前記第一の搬送路の両終端は、前記接続部に接続され、前記紙幣入出金口、前記一時収納部、前記複数の紙幣収納庫、前記リジェクト庫及び前記装填庫は、前記第一の搬送路の外側に接続されて、前記紙幣取扱装置の後部において、前記一時収納部と、前記リジェクト庫と、前記装填庫とを配置し、前記第一の搬送路は、前記紙幣入出金口より分離された紙幣を、前記紙幣判別部に搬送する入金計数処理、前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記紙幣入出金口に搬送する出金取引処理、及び前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記装填庫に搬送する回収処理における紙幣の搬送方向である第一の搬送方向と、前記一時収納部から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する入金収納処理、及び前記装填庫から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する装填処理における紙幣の搬送方向であって、前記第一の搬送方向とは異なる搬送方向である第二の搬送方向と、に搬送する。
【0011】
また、好ましくは、入出金用の紙幣を取扱う紙幣取扱装置であって、紙幣入出金口と、紙幣の金種を判別する紙幣判別部と、前記紙幣判別部で判別された紙幣を一時的に収納する一時収納部と、紙幣を収納する複数の紙幣収納庫と、前記紙幣収納庫に対して補充する紙幣を保管する装填庫と、顧客により取り忘れられた紙幣を収納する回収庫と、前記紙幣判別部を通過し、該紙幣入出金口、該一時収納部、及び該複数の紙幣収納庫が接続されて、紙幣を搬送する第一の搬送路と、前記第一の搬送路と、前記装填庫及び前記回収庫に接続される第二の搬送路との間を接続する接続部を備え、前記搬送路の両終端は、前記接続部に接続され、前記紙幣入出金口、前記一時収納部、前記複数の紙幣収納庫、前記回収庫及び前記装填庫は、前記第一の搬送路の外側に接続されて、前記紙幣取扱装置の後部において、前記一時収納部と、前記回収庫と、前記装填庫とを配置し、前記第一の搬送路は、前記紙幣入出金口より分離された紙幣を、前記紙幣判別部に搬送する入金計数処理、前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記紙幣入出金口に搬送する出金取引処理、及び前記紙幣収納庫から分離された紙幣を、前記装填庫に搬送する回収処理における紙幣の搬送方向である第一の搬送方向と、前記一時収納部から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する入金収納処理、及び前記装填庫から分離された紙幣を、前記紙幣収納庫に搬送する装填処理における紙幣の搬送方向であって、前記第一の搬送方向とは異なる搬送方向である第二の搬送方向と、に搬送する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紙幣の搬送路を短縮化でき、紙幣搬送機構の簡素化が図れる。これにより、紙幣の搬送機構を装置の上部に配置して上部を小型化でき、さらに装置の下部に配置した紙幣収納部や装填庫の紙幣容量を増やすことができる。
また、紙幣入出金口と一時収納部を紙幣取扱装置の上面に配置する構成や、装填庫やリジェクト庫を着脱可能な構成としたことにより、係員による紙幣の取扱いの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ATMの外観を示す斜視図。
図2】ATMの背面側から見た外観斜視図。
図3】ATMの背面側から見た外観斜視図。
図4】一実施例による紙幣取扱装置の構成を示す側面図。
図5】紙幣取扱装置における入金取引処理動作の説明図。
図6】紙幣取扱装置における入金収納処理動作の説明図。
図7】紙幣取扱装置における出金処理動作の説明図。
図8】紙幣取扱装置における紙幣の装填処理動作の説明図。
図9】紙幣取扱装置における紙幣の装填処理動作におけるリジェクト処理動作の説明図。
図10】紙幣取扱装置における紙幣の回収処理動作の説明図。
図11】紙幣取扱装置における装填庫からの直接出金処理動作の説明図。
図12】紙幣取扱装置における出金時のリジェクト処理動作の説明図。
図13】紙幣取扱装置における取り忘れ紙幣の回収処理動作の説明図。
図14】紙幣取扱装置における入金紙幣の回収処理動作の説明図。
図15】紙幣取扱装置を搭載したATMの側面図。
図16】紙幣取扱装置を搭載したATMの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、紙幣取扱装置を搭載した現金自動取引装置(ATM)の外観図、図2はその背面側から見た図を示す。
ATM101は、キャッシュカードや紙幣、明細票等を取引き媒体とし、利用者の操作によって現金の預け入れや支払い、振り込み等の処理を行う。ATM101の上部には、利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する通帳処理機構106と、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構107が備えられる。通帳処理機構106はスロット106aから投入された利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する。カード・明細票処理機構107はスロット107aから投入された利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出する。ATMの正面前方には、利用者の取引の内容を表示しおよび取引のための種々の情報や項目を入力する操作部104が備えられる。
【0015】
ATM101の下部において、右側には紙幣を処理する紙幣取扱装置1が備えられ、左側には硬貨を処理する硬貨処理装置105が備えられる(図2参照)。紙幣取扱装置1の入出金口20に設けられたシャッタ20aの開閉に応じて紙幣の入出金取引が行なわれる。同様にして、硬貨処理装置105の入出金口に設けたシャッタ105aの開閉に応じて硬貨の入出金取引が行なわれる。なお、ATM101によっては硬貨処理装置105を有しないものもある。
【0016】
図2及び図3は、ATMの背面側から見た図であり、背面の扉102が開状態である。トレイ111には、ATMの背面側から前方に向かって、装填庫70及び複数の紙幣収納庫74〜71が一列に配置して着脱可能に搭載されている(図15も併せて参照)。トレイ111は複数の紙幣収納庫74〜71を搭載する第1トレイ1112と、装填庫70を搭載する第2トレイ1114に分離可能であり、第1トレイ1112と第2トレイ1114とが結合された状態で、全体のトレイ111がレール1102に支持されて背面後方へ引き出し可能である。一方、第1トレイ1112を固定した状態で、第2トレイ1114のみをレール1104に支持されて背面後方へ引き出し可能である。
【0017】
ここで、レール1102及び1104の内部にはそれぞれアクチュエータが実装されており、スイッチ113及び114の操作によって、対応するアクチュエータが動作してレールの移動をロック又はリリースできるようになっている。即ち、スイッチ113が操作されない時には、レール1104内のアクチュエータはロック状態を保ち、第1トレイ1112と第2トレイ1114は結合状態となっている。この状態で、スイッチ113を操作すると、全体のトレイ111がレール1102に支持されて、後方へ引き出される。一方、スイッチ114が操作されず、スイッチ113のみが操作された時には、第2トレイ1114のみがレール1104に支持されて後方へ引き出される。この時、装填庫70のみを着脱することができる。これにより、ATM101の稼動を停止することなく、装填庫70から複数の紙幣収納庫74〜71への紙幣の装填又は回収が可能となる。なお、上記の変形例として、第2のトレイを設けずに、装填庫70及び複数の紙幣収納庫71〜74を全て第1トレイに搭載するようにしてもよい。
リジェクト庫60も紙幣取扱装置1の後方へ着脱可能な機構を有している。
【0018】
図4は、紙幣取扱装置の内部構成を示す側面図である。
紙幣取扱装置1の上部には、取引される紙幣の処理機構が配置され、下部には紙幣の収納機構が配置される。
紙幣取扱装置1の上部において、その前側(利用者に面する側:図4の上部右側)には、利用者が紙幣の投入及び取り出しを行う紙幣入出金口20が配置される。また、中央部に紙幣の判別を行う紙幣判別部30が配置され、後部の上段には利用者が入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時収納部40が配置される。一時収納部40の下側には、入金取引や出金取引に供しない紙幣を収納するためもしくは顧客の抜き取り忘れた紙幣を収納するためのリジェクト庫60が配置される。これらの各機構部は双方向の搬送路により接続される。
【0019】
ここで、紙幣判別部30は前方から後方へ搬送する紙幣、および後方から前方へ搬送する紙幣のどちらであっても金種判別および真偽判別を行うことができる。つまり、紙幣判別部30は、双方向に搬送される紙幣を金種判別および真偽判別でき、紙幣をリジェクトか否か判別することができる。
紙幣入出金口20において、上から投入された紙幣を下方へ繰出す紙幣繰出部20bと、下方から搬送されてきた出金又は返却用の紙幣を集積する紙幣集積部2が、前後に配置されている。
また、一時収納部40の上部には開閉可能な扉402が配置される。この扉402は通常時は閉じているが、不慮の停電や故障によりATMの動作が停止した場合、係員がこの扉402を開いて一時収納部40内に在る紙幣を目視で確認でき、かつ容易に取り除くことができる。
【0020】
紙幣取扱装置1の下部において、前方から背面に向かって、紙幣を金種別に収納する紙幣収納庫71〜74と、これらの紙幣収納庫に紙幣を装填・回収して紙幣装填部として機能する装填庫70が、トレイ111に搭載されて配置される。なお、紙幣収納庫74は入金取引や出金取引に供しない紙幣を収納する為のリジェクト庫として使用されることもある。装填庫70及び紙幣収納庫71〜74の出入り口を通して、紙幣の搬送路70a、71a〜74aが形成される。
このように、装置の背面側において上から、一時収納部40、リジェクト庫60、装填庫70が配置されることになる。なお、上記の各機構部の駆動、例えば、搬送路のローラの駆動、搬送路の振り分けゲートの切り替え等は、制御部(図示省略)により駆動制御される。
【0021】
搬送路について言えば、搬送路10a、10b、10d〜10f、30a、40a、50a〜50b、60等は双方向の搬送路を形成し、矢印の方向は紙幣を搬送する方向を示す。ここで、入出金口20と収納庫71〜73間の双方向の搬送路(10a、30a、10d、10e、10f、50a)を第1搬送路、双方向の搬送路50bを第2の搬送路ということにする。即ち、紙幣入出金口部20、一時収納部40、紙幣収納庫71〜73は第1の搬送路に接続され、収納庫74は振り分けゲート54により第2搬送路50bの左端に接続される。また、装填庫70とリジェクト庫60は、振り分けゲート54及び55により切り替えられて第2搬送路50bに接続される。
【0022】
双方向の搬送路である第1搬送路は、反時計回り方向(図4において左回転)に紙幣を搬送する第1の搬送方向と、時計回り方向(図4において右回転)に紙幣を搬送する第2の搬送方向に搬送する。また、双方向の搬送路である第2搬送路50bは、紙幣収納庫74、装填庫70、リジェクト庫60から振り分けゲート15に向け紙幣を搬送する第1の搬送方向と、振り分けゲート15から紙幣収納庫74、装填庫70、リジェクト庫60に向け紙幣を搬送する第2の搬送方向に紙幣を搬送する。
【0023】
紙幣判別部30と結ばれる第1搬送路において、何れの方向に紙幣を搬送しても、搬送路の終端(搬送路10fの下端と搬送路50aの左端)は、振り分けゲート15により第2搬送路50bの右端に接続される。
なお、紙幣取扱装置1は、搬送路を含む上記各機構部には駆動モータや電磁ソレノイドやセンサなど(図示せず)が取り付けられており、紙幣の取引に応じて必要な駆動モータや電磁ソレノイドが駆動され、センサで紙幣の搬送状態が監視される。
以上のように構成された紙幣取扱装置1により、紙幣の入出金、紙幣補充、紙幣回収、取り忘れ回収取引といった処理を実行することができる。以下、各動作について説明する。
【0024】
図5を参照して、紙幣取扱装置1における入金取引の処理動作について説明する。
入金取引は、紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bに投入された紙幣の真偽判別、金種判別、および計数を行う入金計数処理を主体とする処理である。
まず、紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bにセットされた複数枚の紙幣は一枚ずつ分離して下方の搬送路10bへ繰り出される。搬送路10bへ繰出された紙幣は、搬送路10aより紙幣判別部30内の搬送路30aを前方から後方へ通過する。紙幣判別部30では、その内部に実装されたセンサによって、通過する紙幣の画像が取得され、その紙幣の真偽、金種、および正損状態が判別される。
【0025】
紙幣判別部30を通過した紙幣は、紙幣判別部30の後部から搬送路10dを通って一旦上方へ搬送される。この搬送路10dで搬送している間に、紙幣判別部30による判別が完了して、その判別結果に応じて紙幣振り分けゲート13の切り替えが行われる。即ち、紙幣判別部30によって受け入れ可能な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート13は搬送路10eに接続するように切り替えられ、その紙幣は搬送路10e、40aにより搬送されて一時収納部40内に集積される。一方、紙幣判別部30により受け入れ困難な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート13は搬送路10cに接続するように切り替えられ、その紙幣は紙幣集積部20cに戻されて集積し、利用者に返却される。
この入金計数処理の搬送において、第1の搬送路は、搬送路10a、30a、10d、10eの順に紙幣を第1の搬送方向に搬送する。
【0026】
このようにして紙幣入出金口20に投入された全ての紙幣を処理し、入金された金額と紙幣取扱装置1の計数した金額とが一致し、利用者によって顧客操作部104より入金取引確定が指示入力されると、一時収納部40に一時収納されていた紙幣は紙幣収納庫71〜74へ搬送して収納される(入金収納処理)。
なお、搬送路上の紙幣の搬送動作の起動や停止、搬送方向の切り替え、ゲートの切り替え、等の動作の制御は、制御部(図示省略)の制御により行われる(以下の説明でも同様である)。
【0027】
次に、図6を参照して、入金収納処理動作について説明する。
収納処理では、まず紙幣振り分けゲート13を一時収納部40と紙幣判別部30を接続するように切り替え、紙幣振り分けゲート11を搬送路10aと搬送路50aへ接続するように切り替える。
一時収納部40から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路40a、10e、10dを通って紙幣判別部30へ搬送される。紙幣判別部30を通過した紙幣は、搬送路10aによって搬送され、紙幣振り分けゲート11によって搬送路50aを通じて下部へ搬送される。さらに紙幣は、搬送路50a、50bによって搬送され、紙幣判別部30で判別された金種に応じて紙幣振り分けゲート51〜55が切り替えられて、装填庫70もしくは紙幣収納庫71〜74のいずれかに収納される。なお、装填庫70に紙幣を収納してもよい。
【0028】
ここで、紙幣判別部30によって受け入れできない紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート54、55を搬送路60aに接続するように切り替えられ、その紙幣はリジェクト庫60に収納される。なお、リジェクト庫60を、顧客が抜き取り忘れた紙幣を収納するため回収庫として使用することもあり、その場合は紙幣収納庫74をリジェクト庫として使用する。
一時収納部40から繰出された紙幣の収納に関して、紙幣判別部30を通過した後に振り分けゲート55を配置したことにより、装填庫70は、装填庫としての機能だけでなく、紙幣収納庫としても利用することが可能となる。
このように、入金収納処理では、第1の搬送路及び第2の搬送路は、搬送路10e、10d、30a、10a、50a、50bにおいて、紙幣を第2の搬送方向(第1の搬送方向と逆方向)へ搬送するように動作する。
【0029】
次に、図7を参照して、出金取引処理動作について説明する。
出金取引処理において、金種別に収納された紙幣収納庫71〜73から紙幣が一枚ずつ繰り出されて、搬送路50a,10a,30aを通って紙幣判別部30へ搬送される。紙幣判別部30で当紙幣が出金可能な紙幣か否かを判定する。判別の結果、出金可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート13を搬送路10dと搬送路10cを接続するように切り替えて、紙幣集積部20cに紙幣を集積する。
一方、判別の結果、出金不可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート13を搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替えて、搬送路10f、50bを通して、振り分けゲート54と55により搬送路を接続してリジェクト庫60へ紙幣を搬送する。この紙幣の判別と判別結果による紙幣振り分けゲート13の切り替え制御は、紙幣を搬送路10dに搬送している間に完了する。
【0030】
紙幣の搬送動作が終了すると、紙幣入出金口20のシャッタ20aが開き、紙幣集積部20cに集積した紙幣は利用者に抜き取り可能な状態となる。利用者が紙幣を抜き取るとその旨をセンサ(図示省略)が検知してシャッタ20aを閉じ、一連の出金取引処理を終了する。
このように、出金取引処理動作では、第1の搬送路は、搬送路50a、10a、10d、10e、10f、30aにおいて紙幣を第1の搬送方向へ搬送し、第2の搬送路50bは、紙幣を第2の搬送方向へ搬送するように動作する。
なお、紙幣収納庫74をリジェクト庫として使用する場合には、振り分けゲート54により搬送路を切り替えて、紙幣収納庫74に出金不可能な紙幣を収納することが可能である。
【0031】
次に、図8を参照して、紙幣の装填処理動作について説明する。
この処理は、装填庫70内の紙幣を、紙幣収納庫71〜73へ搬送して収納する動作である。
即ち、装填庫70から搬送路70aに一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路50b、10f、10e、10dを順に通って幣判別部30に搬送され、そこで金種及び装填紙幣として適切なものかを判別される。判別後、紙幣は、搬送路10a、50aを通り、金種に応じて振り分けゲート51〜53で振り分けられて、紙幣収納庫71〜73のいずれかに収納される。
この装填処理動作では、第2の搬送路50bは、紙幣を第1の搬送方向へ搬送し、第1の搬送路は、搬送路10f、10e、10d、30a、10a、50aにおいては、紙幣を第2の搬送方向へ搬送するように動作する。
このような装填処理動作により、装填庫70から繰出された紙幣は、紙幣収納部に一時保管されることなく、紙幣収納庫71〜73に直接振り分けられる。
【0032】
次に、図9を参照して、装填処理中にリジェクト紙幣が発生した場合の処理動作について説明する。この処理は、紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫60又は収納庫74(これをリジェクト庫として使用する場合)に搬送する動作である。
紙幣判別部30による紙幣の判別は、紙幣が搬送路10aを搬送しているときに完了する。一旦、リジェクトと判定された場合は、装填庫70からの紙幣の繰出しを停止する。その後、搬送路70a、50b上の紙幣が、搬送路10fへ受け渡され、搬送路70a、50b上に紙幣が無くなり次第、搬送路70a、50bの搬送を停止する。搬送路50bの駆動が停止した後、搬送路50bを第2の搬送方向へ紙幣を搬送するように搬送方向を切り替えて駆動する。搬送路50bの搬送方向の切り替えと同時に、紙幣振り分けゲート15を搬送路50aと搬送路50bを接続するように切り替える。
【0033】
搬送路50bの搬送方向の切り替えと、紙幣振り分けゲート15の切り替えの間、搬送路10a、10d、10e、10f、30a、50aは停止することなく、紙幣の搬送を継続する。
搬送路50bの搬送方向の切り替えと、紙幣振り分けゲート15の切り替えは、リジェクトと判定された紙幣が搬送路10aを搬送している間に完了する。リジェクト紙幣は搬送路50b、60aを通過して、リジェクト庫60に収納される。
リジェクト紙幣に後続する搬送中の紙幣は、紙幣判別部30で金種及び装填の適格性が判別されるが、リジェクトの判定が無い場合、金種に応じて振り分けゲート51〜53で振り分けられて紙幣収納庫71〜73のいずれかに収納される。リジェクト紙幣と判定された場合、リジェクト庫60に収納される。
搬送路を搬送された紙幣が各収納先の収納庫に収納され次第、装填庫70の紙幣の繰出し動作を再開し、装填処理を継続する。装填庫70内の全ての紙幣又は所定枚数の紙幣が繰出されて各収納先の収納庫に収納されると、装填処理が完了する。
【0034】
なお、リジェクト庫60を顧客が抜き取り忘れた紙幣を収納するための回収庫として使用し、収納庫74をリジェクト紙幣の収納用として使用することも可能である。この場合、リジェクト紙幣は紙幣振り分けゲート54で搬送路を切り替えられて、収納庫74に収納される。
係員は、リジェクト紙幣が収納されたリジェクト庫60をATM101の後面より取り出すことにより、ATM101の稼動を停止することなく、紙幣補充の際のリジェクトと判定された紙幣をATM101から抜き取り回収することができる。
【0035】
ここで、変形例として、紙幣収納庫74を装填庫として使用することがあり、その場合には、紙幣収納庫74内の紙幣を搬送して紙幣収納庫71〜73に収納する。即ち、上記説明において、装填庫70を紙幣収納庫74に、搬送路70aを搬送路74aと置き換えれば、その装填動作を理解できよう。ただし、紙幣収納庫74から紙幣収納庫71〜73へ紙幣を装填する際に紙幣判定部30でリジェクトと判定された紙幣はリジェクト庫60に収納される。
【0036】
次に、図10を参照して、紙幣の回収処理動作について説明する。
この処理は、紙幣収納庫71〜73から装填庫70に紙幣を回収する処理動作である。紙幣の回収は、紙幣収納庫71〜73から繰出された紙幣が、搬送路50a、10aを通って紙幣判別部30に搬送され、その後、搬送路10d、10e、10f、50b、70aを通って装填庫70に収納されることで行われる。紙幣判別部30でリジェクトと判別された紙幣は、紙幣振り分けゲート55により搬送路60aに切り替えられて、リジェクト庫60に収納される。なお、リジェクトと判別された紙幣は、紙幣振り分けゲート54にて搬送路74aに切り替えられ紙幣収納庫74に収納されてもよい。
【0037】
この回収処理の動作では、第1の搬送路は、搬送路10a、10d、10e、10f、30a、50aにおいて、紙幣を第1の搬送方向へ搬送するように動作し、第2の搬送路50bは、紙幣を第2の搬送方向へ搬送するように動作する。
なお、変形例によれば、紙幣収納庫74を、紙幣回収用の臨時の紙幣装填庫として用いてもよい。この場合、紙幣取扱装置1は装填庫70と紙幣収納庫74の2つの装填庫を持つことになり、紙幣の回収時に装填庫70と紙幣収納庫74の2つの回収用庫に紙幣を回収することができ、ATM内の紙幣を一度に一括して回収することが可能となる。
【0038】
次に、図11を参照して、装填庫からの直接出金処理動作について説明する。
この処理は、装填庫70に収納された紙幣を紙幣収納部71〜73に装填することなく、直接に入出金口部20に出金する動作である。
装填庫70から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路70a、50b、50a、10aを通って紙幣判別部30へ搬送され、そこで、出金可能な紙幣か否か判別される。出金可能と判別されると、振り分けゲート13が搬送路10dと搬送路10cを接続するように切り替えて、これらの搬送路10d、10cを通って、紙幣集積部20cに紙幣を集積する。ここまでの装填庫からの出金処理の動作で、第1の搬送路の搬送路10a、10d、10e、30a、50a、第2の搬送路50bは、紙幣を第1の搬送方向へ搬送するように動作する。
【0039】
上記紙幣の判別において、出金不可能と判別された場合、図12に示すように、紙幣振り分けゲート13を搬送路10dと搬送路10eが接続するように切り替える。なお、出金紙幣の判別とその判別結果による紙幣振り分けゲート13の切り替えは、搬送路10dで紙幣を搬送している間に完了する。そして、出金不可能な紙幣(リジェクト紙幣)は、搬送路10e、10f、50b、60aを通ってリジェクト庫60に収納される。
【0040】
図12を参照して、リジェクト紙幣の搬送動作について、もう少し詳細に説明する。一旦、リジェクト紙幣と判定された場合、装填庫70からの紙幣の繰出しを停止する。その後、搬送路70a、50b上の紙幣が全て通過し、搬送路70a、50b上に紙幣が無くなり次第、搬送路70a、50bの搬送を停止する。搬送路50bの停止後、搬送路50bを第2の搬送方向へ紙幣を搬送するように搬送方向を切り替え、動作させる。搬送路50bの搬送方向切り替えと同時に紙幣振り分けゲート15を搬送路50bと搬送路10fを接続するように切り替える。なお、搬送路50bの搬送方向の切り替えと、紙幣振り分けゲート15の切り替えは、リジェクトと判定された紙幣が搬送路10e、10fを搬送している間に完了する。
【0041】
なお、リジェクト庫60を顧客が抜き取り忘れた紙幣を収納するための取り忘れ回収庫として使用する場合がある。この場合、リジェクト紙幣は、紙幣振り分けゲート54で搬送路を切り替えて、紙幣収納庫74に収納するようにしてもよい。
装填庫70は、ATMの運用を停止することなく、装置の背面から着脱可能である。装置内部の紙幣容量が空もしくは減少した際、紙幣を収納した装填庫70を紙幣取扱装置1に装填することにより、紙幣収納庫71〜73へ紙幣を分配装填することなく、装填庫70から直接的に短時間で出金することが可能となる。
【0042】
他の例として、紙幣収納庫74を装填庫として使用する場合もあり、その場合には紙幣振り分けゲート54が切り替えられて、紙幣収納庫74から紙幣が搬送路に繰り出される。その後の紙幣の搬送動作は上述と同様である。なお、紙幣収納庫74から繰出された紙幣であって、紙幣判定部30でリジェクトと判定された紙幣はリジェクト庫60に収納される。
以上の動作により、紙幣収納庫71〜74に収納するには不適であるとリジェクト判定された紙幣を一時収納部40や、紙幣入出金口30などに一時収納することなく、直接リジェクト庫60、もしくは紙幣収納庫74へ直接搬送することができ、装置の処理時間を短縮することができる。
【0043】
ここまでの装填庫からの出金処理動作中にリジェクト紙幣が発生した場合には、第1の搬送路の搬送路10d、10e、10fは、第2の搬送方向に紙幣を搬送したまま、第2の搬送路50bは、第1の搬送方向から第2の搬送方向に紙幣の搬送方向を逆転する。
【0044】
次に、図13を参照して、取り忘れ紙幣の回収処理動作について説明する。
この処理は、入出金口20に出金された紙幣を利用者が取り忘れた際に、その紙幣をリジェクト庫60(又は紙幣収納庫74)に回収する動作である。
紙幣集積部20cに出金されて取り忘れた紙幣は、紙幣集積部20c内で押圧板22に押されて入出金口部前方へ移動しながら、一枚ずつ搬送路10bへ繰出される。紙幣は、搬送路10a、30a、10d、10e、10f、50b、60aを通過して、リジェクト庫60へ収納される。
【0045】
なお、他の例として、取り忘れ紙幣は、搬送路50bを通過した後、搬送路74aに接続され、紙幣収納庫74に収納してもよい。
ここまでの取り忘れ紙幣の回収処理動作において、第1の搬送路の搬送路10a、30a、10d、10e、10fは、第1の搬送方向に紙幣を搬送し、第2の搬送路50bは、第2の搬送方向に紙幣を搬送する。
【0046】
次に、図14を参照して、他の例による入金紙幣の回収処理動作について説明する。
図5の例では、入金計数処理時に、紙幣判別部30で偽札などのように再流通不適紙幣と判別された紙幣は、紙幣振り分けゲート14を切り替えて一時収納部40に収納した。この代替例によれば、再流通不適紙幣を一時収納部40に収納せずに搬送路10d、10e、10f、50b、60aを通過させて、リジェクト庫60に収納することができる。なお、紙幣振り分けゲート14の切り替えは、搬送路10dで紙幣を搬送している間に完了する。
【0047】
ここまでの入金紙幣のリジェクト庫60を利用した回収処理動作において、第1の搬送路の搬送路10a、30a、10d、10e、10fは、第1の搬送方向に紙幣を搬送し、第2の搬送路50bは、第2の搬送方向に紙幣を搬送する。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、装置の後部上段に一時収納部40を、中段にリジェクト庫60を、下段に装填庫70を配置すると共に、それらの機構部と紙幣判別部30とを接続する双方向搬送路10a、10d、10e、10f、50aを第1搬送方向及び第2搬送方向の何れに紙幣を搬送しても、搬送路終端で双方向搬送路50bに接続する搬送路を構成し、それら搬送路に紙幣入出金口部20、一時収納部40、リジェクト庫60、装填庫70、紙幣収納庫71〜74を接続する構成とすることで、従来技術のような「8」の字の搬送ルートでなく、搬送路を簡素化することができる。搬送路を短縮化でき、小型で大容量化した紙幣取扱装置を実現することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、紙幣収納庫71〜74から装填庫70へ紙幣を回収する回収処理は、双方向搬送路10a、10d、10e、10f、50aを第一の搬送方向で搬送し、装填庫70から紙幣収納庫71〜74へ紙幣を装填する装填処理は、第二の搬送方向で搬送する構成としたことにより、回収処理は、紙幣リサイクル庫71〜74から紙幣判別部30、装填庫70の順で紙幣を搬送し、装填処理は、装填庫70から紙幣判別部30、紙幣収納庫71〜74の順で紙幣を搬送することができる。従って、紙幣を判別してから回収または装填する動作を、無駄のない効率よい搬送で実行することができる。
【0050】
また、本実施例によれば、出金取引処理の際、紙幣集積部20cへ出金できないリジェクト紙幣を、紙幣振り分けゲート13の切り替えによってリジェクト庫60へ直接搬送することができる。つまり、一時収納部40に一時収納しておく必要がなく、効率よく処理することができる。
また、本実施例によれば、装填処理の際、紙幣を一時収納部40に一時収納する必要がなく、装填庫70から紙幣判別部30を通って直接的に紙幣収納庫71〜73のいずれか一つに収納することができる。また、紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣も、一時収納部40に一時収納する必要がなく、リジェクト庫60もしくは紙幣収納庫74に直接収納することができ、効率よく処理することができる。
【0051】
また、回収処理の際、紙幣を、一時収納部40に一時収納する必要がなく、紙幣収納庫71〜73から紙幣判別部30を通って直接的に装填庫70に収納することができ、効率よく処理することができる。
また、回収処理の際、紙幣判別部30でリジェクトと判定された紙幣も、一時収納部40に一時収納する必要がなく、リジェクト庫60に直接収納することができ、効率よく処理することができる。
また、リジェクト庫60、装填庫70、紙幣収納庫71〜74の各搬送路へ紙幣を授受するための搬送路接続口は各1つずつで良い構成となり、構成を簡略化することができる。一時収納部40や入出金口部20の、下方の搬送路の階層を少なくし、装置を小型化することができる。
【0052】
また、搬送路50bに接続される装填庫70は紙幣収納庫への紙幣装填や、紙幣収納庫の紙幣を回収する装填庫としての機能だけでなく、紙幣収納庫としての機能をもたすことができる。
また、搬送路50bに接続される紙幣収納庫74は紙幣収納庫としての機能だけでなく、紙幣収納庫71〜73へ紙幣を装填や、紙幣収納庫71〜73の紙幣を回収する装填庫としての機能をもたすことができる。
つまり、双方向搬送路50bに接続された装填庫70もしくは紙幣収納庫74は、ATMに要求される運用に応じて、装填庫の機能、紙幣収納庫の機能、リジェクト庫の機能といった複数の機能形態をとることができ、小型の装置において、紙幣の大容量化と、装置運用に応じた多機能化を同時に実現できる。
【0053】
本実施例によれば、リジェクト庫60を一時収納部の下方に配置し、第1の搬送路における第1の搬送方向の下流に設置することで、入金計数時、紙幣収納庫71〜74に収納するには不適格でかつ入出金口に返却することが不適当な紙幣を、専用の搬送路を用いず直接リジェクト庫60に収納することができる。その後、出金取引など他の取引時に発生したリジェクト判定された紙幣は、リジェクト庫60ではなく、紙幣収納庫74へ収納することによって、装置内のリジェクト判定された紙幣を分類することができる。
【0054】
リジェクト庫60と装填庫70を紙幣取扱装置1の後面に設置することで、ATMの顧客操作取引を一旦停止することなく、リジェクト庫60と装填庫70を紙幣取扱装置1後面から着脱することができ、利便性と装置稼働率が向上する。
また、装填庫70と紙幣収納庫71〜74を紙幣取扱装置1の下部に前後に並べて配置することで、装填庫70と紙幣収納庫71〜74の着脱が同時にできるトレイ111が実現でき、着脱操作が容易になる。
また、装填庫70と紙幣収納庫71〜74を上端の高さを揃えることで、トレイ111を図15図16に示すように、ATM101の後方又は前方に自在に引き出すことができ、利便性が向上する。
【0055】
また、本実施例によれば、紙幣取扱装置1の、装填庫70の搬送路50bへの紙幣授受のための紙幣入出口部となる搬送路70aを装填庫70の中心より紙幣取扱装置1の前面寄りに配置している。もし、搬送路70aを装填庫70の中心より紙幣取扱装置1の後面寄りに配置した場合、リジェクト庫60下面と装填庫70の上面の間に、搬送路70aに接続するための搬送路を追加構成する必要がある。このため、本実施例の方がより構成部品を省略できる。
【0056】
また、紙幣収納庫71〜74の搬送路50aもしくは50bへの紙幣授受のための紙幣入出口部となる搬送路71a〜74aを、各紙幣収納庫の中心より紙幣取扱装置1の後面寄りに配置している。紙幣収納庫71〜74は、紙幣装填庫70と反対向きに配置されることになる。
これにより、係員が装填庫70に紙幣を表向きにセットした場合、紙幣収納庫71〜74のいずれかに紙幣が装填処理された際に、紙幣収納庫には紙幣が表向きにセットされ、装填庫70に紙幣を裏向きにセットした場合には、紙幣収納庫71〜74に装填処理された際、紙幣は裏向きにセットされる。
【0057】
このように、係員がセットした紙幣が紙幣収納庫に装填された後も紙幣の表裏が反転することがないため、係員の装置操作上理解し易い。
一方、もし紙幣収納庫71の搬送路71aを紙幣収納庫71の中心より紙幣取扱装置1の前面よりに配置した場合、搬送路50aを、より紙幣取扱装置1の前面にまで延長して搬送路71aと接続する必要がある。このため、本実施例によれば搬送路50aの長さを短縮でき、構成部品を省略できる。
【0058】
また、図4又は図15のように、装填庫70及び紙幣収納庫71〜74を前後に配置した構成において、更に別の紙幣収納庫を紙幣収納庫71の前方に追加して配置した場合でも、紙幣入出金口部の高さ方向の位置は変わらず、利用者の操作性が落ちることが無い。しかし、もし、リジェクト庫60を装填庫の下段に配置する案があるとすれば、その場合、装填庫の上面から下方へ紙幣を搬送するための専用の搬送路が必要となり、構成部品点数および紙幣取扱装置の容積が増大することになるが、本実施例によればそれを防止できる。
【0059】
また、もし、一時収納部40を装填庫70の下段に配置する案があるとすれば、その場合も装填庫の上面から下方へ紙幣を搬送するための専用の搬送路が必要となり、構成部品点数および紙幣取扱装置の容積が増大する。
特に、装填庫70は、紙幣収納庫71〜74に紙幣を装填し、紙幣収納庫71〜74から紙幣を回収する役割を有しており、一時収納部40、リジェクト庫60と比べ大容量が要求される。このため、装填庫70の容量を確保しつつ、一時収納部40、リジェクト庫60、装填庫70への搬送経路における構成部品点数を減少させるには、本実施例のように、装填庫70を紙幣取扱装置1の後面の下段に配置するのが最適である。
【0060】
次に、一時収納部40を紙幣取扱装置1の中段に配置し、リジェクト庫60を上段に配置し、装填庫70を下段に配置した案があるとすれば、その場合、紙幣収納処理において、一時収納部40から繰出した紙幣が紙幣判別部30を通過した後、リジェクト判定された際、正常と判定されて下方の紙幣収納庫へ搬送される搬送路とは別に、紙幣判別部30を通過した後に一旦上方へ紙幣を搬送し、上段のリジェクト庫60へ接続するための別の搬送路が必要となり、構成部品が増加して搬送機構が複雑となる。本実施例によれば、このような搬送機構が複雑化することを防げる。
【0061】
また、一時収納部40を紙幣取扱装置1の中段以降に配置する案があるとすれば、その場合、紙幣を取り除くための扉は、紙幣取扱装置1の側面に配置することになる。その際、開口部は人のおよそ腰の高さとなる。また、紙幣取扱装置1の中段以降に配置された一時収納部40内の紙幣は紙幣取扱装置1の奥まった場所となるため、紙幣のある空間は光があたらず暗い。そのため、係員は腰をかがめて暗い装置の内部を目視で確認しながら紙幣を抜き取ることになり、その作業性は悪く、取り残された紙幣を見過ごすような作業ミスを誘発しやすい。よって、本実施例のように、一時収納部40を紙幣取扱装置の上段に配置するのが最適である。
【符号の説明】
【0062】
1:紙幣取扱装置、10a〜10f:搬送路、20:入出金口、30:紙幣判別部、40:一時収納部、50a〜50b:搬送路、60:リジェクト庫、70:装填庫、71〜74:紙幣収納庫。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16