特許第5674997号(P5674997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674997
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】車両シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20150205BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B60N2/14
   B60N2/06
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-515101(P2014-515101)
(86)(22)【出願日】2012年6月30日
(65)【公表番号】特表2014-519443(P2014-519443A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2012002783
(87)【国際公開番号】WO2013013759
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】102011108374.3
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、 イェンス
(72)【発明者】
【氏名】クリストッフェル、 トーマス
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/006592(WO,A1)
【文献】 特開平9−156404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/14
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の下レール(10)において移動可能にガイドされる第1の上レール(16)と、第2の下レール(12)において移動可能にガイドされる第2の上レール(18)と、第1の上レール(16)を駆動する第1のモータ(40)と、第2の上レール(18)を駆動する第2のモータ(42)と、シートシェル(49)とを備える、長手方向に調整可能で回転可能な車両シートの制御方法であって、
下レール(10、12)に対して上レール(16、18)が一致して変位することによって、シートシェル(49)が直線状に変位し、第2の上レール(18)に対する第1の上レール(16)の変位によって、シートシェル(49)が垂直軸を中心に回転し、
初期位置(100)が記憶され、
シートシェル(49)が初期位置(100)から直線状に変位して、開始位置(101)に達し、
シートシェル(49)が開始位置(101)から第1の角度(A)だけ回転して、中間位置(102)に達し、
シートシェル(49)が走行方向に直線状に変位して、第1の中央位置(103)に達し、
シートシェル(49)が第2の角度(B)だけ回転して、終了位置(105)に達することを特徴とする方法。
【請求項2】
初期位置(100)が走行方向において開始位置(101)より前に位置することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シートシェル(49)が終了位置(105)から初期位置(100)に戻ることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の角度(A)だけ回転する際に、第1のモータ(40)が停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
シートシェル(49)が、第1の中央位置(103)から第2の中央位置(104)に達するまで直線状に変位し、その後、シートシェル(49)が終了位置(105)に達するまで第2の角度(B)だけ回転することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の角度(B)だけ回転する際に、第2のモータ(42)が停止することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シートシェル(49)が、終了位置(105)に達するまで、第1の中央位置(103)から第2の角度(B)だけ回転すると同時に直線状に変位することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シートシェル(49)が第2の角度(B)だけ回転する際に、第2のモータ(42)は減速するが、第1のモータ(40)は終了位置(105)に達するまで動作を続けることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
同時にハンドル(80)が、長手方向(x)および/または垂直方向において上方にシートシェル(49)から離間することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の角度(A)だけ回転する際に、ハンドル(80)が、長手方向(x)および/または垂直方向において上方にシートシェル(49)から離間することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の下レールにおいて移動可能にガイドされる第1の上レールと、第2の下レールにおいて移動可能にガイドされる第2の上レールと、第1の上レールを駆動する第1のモータと、第2の上レールを駆動する第2のモータと、シートシェルとを備え、下レールに対して上レールが一致して変位することによってシートシェルが直線状に変位し、第2の上レールに対する第1の上レールの変位によってシートシェルが垂直軸を中心に回転する、長手方向に調整可能で回転可能な車両シートを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向に調整可能で回転可能な車両シートが、WO 2011/006 592 A1に開示されている。この車両シートは、走行方向および走行方向とは逆方向に長手方向の調整を行うために車両シートのシートシェルの変位を可能にするレールシステムを備えている。この場合、このようなレールシステムは、走行方向において互いに平行に延在するとともに車両床部に固定される2本の下レールを有している。また、各下レールにおいて移動可能にガイドされる2本の上レールが、共同でシートシェルを支持している。また、上レールを駆動するための電気モータが設けられている。
【0003】
シートシェル、および/または、シートシェルが固定された支持板は、垂直軸を中心に回転可能に、2本の上レールの一方に取り付けられている。一方の上レールを他方の上レールに対して変位させることにより、シートシェルは前記垂直軸を中心に回転する。このような回転により、乗客の乗り降りが簡単になる。
【0004】
シートシェルの長手方向位置設定によっては、前記シートシェルの回転時に乗客の体の一部が他の車両部品にぶつかることがある。例えば、運転者の膝がハンドルやBピラーにぶつかる場合がある。
【0005】
同様の車両シートが、JP 09 156 404 Aに開示されている。一方の上レールを他方の上レールに対して変位させることにより、シートが垂直軸を中心に回転する。また、駆動用に電気モータが設けられている。
【0006】
また、車両シートの制御方法が、JP 2000 052 824 Aに開示されている。この場合、車両シートは、対応する湾曲トラックによって規定された移動を行う。この移動は、垂直軸を中心とした回転と、直線状の変位とによるものである。
【0007】
DE 10 2006 035 439 A1には、特に、シート位置を記憶する電子メモリ装置を備えた車両アクセスシステムが開示されている。
【0008】
また、車両の内装部品、特にハンドルを調整する装置が、DE 199 16 091 A1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、このように乗客の体の一部が車両部品にぶつかるのを防止する、前述のタイプの車両シートの制御方法を具体的に示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、請求項1に示す特徴を有する方法により達成される。個々に、または、互いに組み合わせて使用することができる有利な各実施形態は、従属請求の主題を構成する。
【0011】
本発明によれば、まず、初期位置が記憶され、その後、シートシェルが初期位置から直線状に変位して開始位置に達し、シートシェルが開始位置から第1の角度だけ回転して中間位置に達し、シートシェルが走行方向に直線状に変位して第1の中央位置に達し、そして、シートシェルが第2の角度だけ回転して終了位置に達する。
【0012】
本発明に係る方法による移動シーケンスにおいては、運転者の体の一部、特に膝が、シートシェルの前方に位置するハンドルにぶつかることを防止する。
【0013】
有利な点として、シートシェルは、終了位置に達するまで、第1の中央位置から第2の角度だけ回転すると同時に直線状に変位する。このような重層的な移動により、シートシェルは車体のBピラーを通過してから、できるだけ厳密にガイドされる。これにより、ハンドルからの距離が最大となる。
【0014】
本発明の有利な一実施形態によれば、ハンドルに調整装置が設けられる場合、同時にハンドルが長手方向および/または垂直方向において上方にシートシェルから離間する。その結果、ハンドルは運転者の膝からさらに離間する。
【0015】
シートシェルが第1の角度だけ回転する際、ハンドルが長手方向および/または垂直方向上方にシートシェルから離間すれば特に有利であることがわかる。
【0016】
車両内に存在する他の駆動部材、例えばドア開閉部材やドア駆動部材も、本発明に有利に組み込むことができる。
【0017】
本発明のさらに他の有利な実施形態は、後述の従属請求項から導くことができる。
【0018】
以下、図面に示す有利な例示的実施形態を参照して、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、この例示的実施形態に限定されるものではない。以下、図面についてである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】既知の車両シートの下部構造を示す図である。
図2】支持板が回転した、図1に示す下部構造を示す図である。
図3】使用位置の車両シートを示す図である。
図4】回転した位置の車両シートを示す図である。
図5】車両シートを制御する制御システムの概略図である。
図6】初期位置の車両シートの概略図である。
図7】開始位置の車両シートの概略図である。
図8】中間位置の車両シートの概略図である。
図9】第1の中央位置の車両シートの概略図である。
図10】第2の中央位置の車両シートの概略図である。
図11】終了位置の車両シートの概略図である。
図12】車両シートの所定の測定点の移動をたどったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
既知の車両シートの下部構造を図1に示す。第1の下レール10と第2の下レール12が、互いに平行に車両床部14に固定されている。第1の下レール10において、第1の上レール16が移動可能にガイドされる。また、第2の下レール12内において、第2の上レール18が移動可能にガイドされる。下レール10、12に対する上レール16、18の移動方向を長手方向xとする。
【0021】
本例では、長手方向xは走行方向と平行に延在する。したがって、上レール16、18は、走行方向にも走行方向と逆方向にも変位可能である。また、下レール10、12を走行方向に対して斜めに、または、傾斜して配置することも考えられる。この場合、上レール16、18は、走行方向に対して斜め、または、傾斜して変位可能となる。
【0022】
上レール16、18に支持板30が突き当たり、固定されている。支持板30には、図3および図4に示すシートシェル49が取り付けられている。本例では、支持板30は、ほぼ長手方向xと、長手方向に垂直な横断方向yと称する方向とに延在する平板形状である。
【0023】
下レール10、12に対して第1の上レール16と第2の上レール18を同時に変位させることにより、支持板30は長手方向xに変位する。
【0024】
長手方向xに垂直、かつ、横断方向yに垂直な方向を、以下、垂直方向とする。
【0025】
支持板30は、第2の上レール18に固定された旋回ピン22が突出する穿孔32を有している。これにより、支持板30は、旋回ピン22の中心軸を中心に回転可能に第2の上レール18に取り付けられている。
【0026】
さらに、支持板30は、第1の上レール16に固定された第1のピン24が突出する第1の凹部34を有している。本例では、第1の凹部34は、横断方向yに延在する直線状のスロット形状であり、第1のピン24の直径に対応する幅を有している。なお、第1の凹部34は、横断方向yに対して斜めに延在してもよい。また、例えば湾曲形状など、別の設計も考えられる。また、第1の凹部34が支持板30の端部まで延在することで、第1のピン24がガイドされる外側に開いたフォーク形状部を構成することも考えられる。
【0027】
また、支持板30は、第2の上レール18に固定された第2のピン26が突出する第2の凹部36を有している。第2の凹部36は、弓形のスロット形状であり、第2のピン26の直径に対応する幅を有している。この弓形の範囲は、第2のピン26の中心軸から旋回ピン22の中心軸の距離に対応している。
【0028】
また、支持板30は、第1の上レール16に固定された第3のピン28が突出する第3の凹部38を有している。第3の凹部38は、湾曲スロット形状であり、第3のピン28の直径に対応する幅を有している。
【0029】
旋回ピン22および各ピン24、26、28の中心軸は、垂直方向において互いに平行に延在する。各凹部34、36、38は、長手方向xにおける第2の上レール18に対する第1の上レール16の変位によって、旋回ピン22の中心軸を中心として支持板30の回転が可能になるように設計されている。
【0030】
このような第2の上レール18に対する第1の上レール16の変位によって達する位置を図2に示す。この場合、支持板30は、垂直方向に延在する旋回ピン22の中心軸を中心として、図1に示す位置から回転している。
【0031】
第1の上レール16を駆動するために第1のモータ40が設けられている。この第1のモータは、本例では、車両床部14に配置されている。また、第2の上レール18を駆動するために第2のモータ42が設けられ、この第2のモータも本例では車両床部14に配置されている。各モータ40、42は、例えば、電子整流モータ(ECM)やブラシ付きDCモータとして設計されている。
【0032】
また、各モータ40、42を、例えば、車両床部14の他の位置に配置したり、上レールに固定したりすることも考えられる。
【0033】
各モータ40、42は、図5に示す制御部70によって互いに独立して作動が可能である。
【0034】
また、モータを1つのみ設けて2本の上レール16、18の駆動することも考えられる。この場合、各上レール16、18について、それぞれ接続および切断が可能な連結器が設けられ、モータとこれらの連結器は、制御部70によって作動することができる。
【0035】
図3に、使用位置における既知の車両シートを示す。ここで示す例示的な実施形態では、前記シートは左ハンドル車の車両シートである。この場合、下レール10、12により定められる長手方向xは、ほぼ走行方向に対応している。
【0036】
支持板30にシートクッション44が固定され、このシートクッションは、長手方向xの前端46と長手方向xの後端48とを有している。シートクッションの後端48の領域に背もたれ50が設けられている。シートクッション44と背もたれ50とが、シートシェル49を構成する。使用位置において、シートクッション44の前端46は、ほぼ走行方向を向き、シートクッション44の後端48は、走行方向とほぼ逆方向を向く。
【0037】
したがって、シートクッション44の前端46の方向への上レール16、18の移動は、ほぼ走行方向への移動に対応する。以下、この移動を前方移動と称する。シートクッション44の後端48の方向への上レール16、18の移動は、走行方向とはほぼ逆方向に対応する。以下、この移動を後方移動と称する。
【0038】
ここで選択された例示的実施形態では、走行方向に向かって見た第1の上レール16と第1の下レール10が、第2の上レール18と第2の下レール12の右側に位置している。したがって、第1の上レール16と第1の下レール10は車両の中央側に向いている。すなわち、横断方向yにおいてトンネル部側に配置されている。第2の上レール18と第2の下レール12は、車体や運転席側のドアの方を向いている。すなわち、横断方向yにおいてシル側に配置されている。
【0039】
第1の下レール10に対して第1の上レール16を前方に移動するとともに、第2の下レール12に対して第2の上レール18を固定することにより、支持板30は、垂直方向に延在する軸を中心に、すなわち、反時計回りに回転する。シートクッション44と背もたれ50も同様に回転することで、シートクッション44の前端46が運転席側のドアの方に移動する。
【0040】
この車両シートの回転位置を図4に示すが、この回転位置ならば、運転者は簡単に運転席に乗車することが可能である。
【0041】
当然、ここで説明した車両シートの反時計回りの回転は、上レール16、18の他の移動によっても行うことができる。例えば、第2の上レール18を後方に変位させるとともに第1の上レール16を固定する、あるいは、第1の上レール16を前方に変位させるとともに第2の上レール18を後方に変位させることによっても、前述の回転を行うことができる。
【0042】
第2の上レール18に対して第1の上レール16が前方に移動すると、車両シートは回転する。
【0043】
さらに、第1の上レール16を前方に変位させると同時に第2の上レール18を後方に変位させることで、使用位置から前述の回転位置に最短時間で達するという利点がある。
【0044】
図1および図2に示す下部構造は、各凹部、特に第2の凹部36と第3の凹部38の配置や寸法により、使用位置から反時計回りの回転にのみ適している。
【0045】
例えば、助手席の場合、車両シートを使用位置から時計回りに回転させることが望ましいが、この場合、支持板30を鏡面対称に設計すればよい。
【0046】
第2の上レール18に対して第1の上レール16が後方に移動すると、車両シートは時計回りに回転する。
【0047】
また、使用位置から時計回りと反時計回りの両方に回転するように、車両シートを設計してもよい。
【0048】
図1および図2に示す下部構造において、使用位置では、第2のピン26が第2の凹部36の一端に突き当たり、第3のピン28が第3の凹部38の一端に突き当たる。使用位置において、第2のピン26が第2の凹部36の中央領域に位置し、第3のピン28が第3の凹部38の中央領域に位置するように、第2の凹部36および第3の凹部38を設計すれば、車両シートを使用位置から時計回りと反時計回りの両方に回転させることが可能である。
【0049】
運転席を時計回りに回転させると、シートクッション4の後端48が運転席側のドアに近付く。車両シートがこの位置にあれば、乗客は簡単に運転席の後ろにある後部座席に乗車することができる。
【0050】
同様に、助手席を反時計回りに回転させれば、乗客は簡単に助手席の後ろにある後部座席に乗車することができる。
【0051】
同様に、第2のシート列に配置された車両シートを対応させて回転させれば、乗客は簡単に第3のシート列にある車両シートに乗車することができる。
【0052】
図示は省略するが、さらの他の実施形態においては、第2のピン26および/または第3のピン28を省略する。この他の実施形態の、上レール16、18に突き当たり固定される支持板は、図1に示す支持板30と同様に穿孔32と第1の凹部34とを備えている。この場合、旋回ピン22が穿孔32から突出し、第1のピン24が第1の凹部34から突出している。
【0053】
好ましくは、軸受が設けられ、この他の実施形態の支持板を垂直方向に支持している。このような軸受は、例えば、ローラ軸受として設計され、長手方向xに延在する軸を中心として回転可能に第2の上レール18に取り付けられたローラを有している。また、この軸受を玉軸受や摩擦軸受として設計してもよい。
【0054】
図5に、車両シートを制御する制御システムを概略的に示す。
【0055】
まず、制御部70は、本発明に係る方法を実行するためのシーケンス制御部により構成される。
【0056】
乗客、特に運転者は、操作部72を介して前述のシーケンス制御部を選択することができる。操作部72は、例えば、複数のスイッチにより構成されるか、タッチスクリーンとして設計される。また、操作部72は、車両の現在位置を示す表示部を有していてもよい。
【0057】
操作部72は、対応する制御信号を制御部70に送信する。本例では、制御部70は、独立した制御装置として設計されている。この制御部を、車両における他の制御装置または他の制御システムと一体化することもできる。前述のように、制御部70は、第1のモータ40と第2のモータ42とをそれぞれ独立して作動させる。
【0058】
特に、モータ40、42のそれぞれが、個別のモータ制御システムを備えることも考えられる。この場合、これらモータ制御システムは、本発明の方法を実行するためのシーケンス制御部を備え、好ましくは、各モータ40、42の近傍、特に各モータ収納部に配置される。したがって、モータ制御システム、および/または、モータ40、42は、例えば、CANバスやLINバスなどの通信インターフェースを使用して、相互間で、さらには、操作部72および/または車両の他の制御システムとデータのやりとりを行うことが可能である。
【0059】
第1の位置検出部74は、第1の下レール10に対する第1の上レール16の位置を検出し、対応する信号を制御部70に送信する。また、第2の位置検出部76は、第2の下レール12に対する第2の上レール18の位置を検出し、対応する信号を制御部70に送信する。
【0060】
本例では、各位置検出部74、76は、対応する上レール16、18の現在位置をアナログまたはデジタル値として判断するセンサを、それぞれ備えている。また、位置検出部74、76をそれぞれ対応するモータ40、42と一体化してもよい。この場合、例えば、対応する上レール16、18の現在位置は、対応するモータ40、42の回転数をカウントすることにより算出される。
【0061】
また、位置検出部74、76が、複数の独立したセンサを備えることも考えられる。この場合、各センサは、対応する上レール16、18の規定可能位置を検出するだけである。
【0062】
本発明に係る方法による車両シートの移動シーケンスにおける複数の位置を、図6図11に示す。この場合、シートシェル49は、初期位置100から終了位置105へと自動的に移動し、運転者は簡単に車両への乗降ができる。
【0063】
この場合、初期位置100は使用位置に対応している。図3にも示すように、運転者が車両を運転するために設定した位置である。終了位置105においては、車両シートのシートシェル49は、長手方向xの比較的かなり前方に位置し、図4にも示すように、垂直軸を中心として初期位置100から回転している。
【0064】
支持板30に固定されたシートシェル49の前方には、走行方向にハンドル80が位置している。Bピラー84およびドア開口部82を含む車体部品が、走行方向において左側、すなわち、シル側に、既知の方法で配置されている。
【0065】
前述の移動シーケンスを詳細に説明するため、基準点90を定める。本例では、走行方向xに向かってシル側にある支持板30の前コーナーに位置する点である。
【0066】
シートシェル49が初期位置100から長手方向xに直線状に変位して開始位置101となるように、2つのモータ40、42が作動する。開始位置101は、この場合、走行方向において比較的かなり後方に位置している。
【0067】
開始位置101に達すると、トンネル部側の第1のモータ40は停止するが、シル側の第2のモータ42は中間位置102に達するまで動作を続ける。中間位置102では、シートシェル49が、旋回ピン22を介して、垂直に延在する軸を中心に開始位置101に対して第1の角度Aだけ回転する。
【0068】
この場合、第1の角度Aは、ほぼ、シートシェル49および支持板30と車体のBピラー84との衝突を避ける最大可能角度である。本例の第1の角度Aは、8度〜12度の範囲内であり、好ましくは10度である。
【0069】
中間位置102に達した後、シートシェル49が長手方向xに直線状に変位して第1の中央位置103に達するように、2つのモータ40、42が作動する。第1の中央位置103は、走行方向において中間位置102の前方の位置している。
【0070】
本方法の第1の変形例によれば、第1の中央位置103に達したときに、シートシェルが長手方向xにおいて直線状にさらに前方に変位して第2の中央位置104に達するように、2つのモータ40、42が再び作動する。この場合、第2の中央位置104は、第1の中央位置103より前で、走行方向において比較的かなり前方に位置している。したがって、この第1の変形例によれば、シートシェル49は、第1の中央位置103を通って、第2の中央位置104に達する。
【0071】
第2の中央位置104に達すると、シル側の第2のモータ42は停止するが、トンネル部側の第1のモータ40は、終了位置105に達するまで動作を続ける。その結果、シートシェル49がさらに回転する。その後、トンネル部側の第1のモータ40も停止する。
【0072】
本方法の第2の変形例によれば、第1の中央位置103に達したときに、シル側の第2のモータ42は減速するが、トンネル部側の第1のモータ40は、終了位置105に達するまで動作を続ける。その結果、シートシェル49がさらに回転するとともに長手方向xにおいて前方に押される。その後、2つのモータ40、42が停止する。この第2の変形例によれば、第2の中央位置104には達していない。
【0073】
したがって、前述の2つの変形例によれば、シートシェル49は同じ終了位置105に到達する。終了位置105において、シートシェル49は、旋回ピン22を介して、垂直に延在する軸を中心に開始位置101に対して第2の角度Bだけ回転する。本例では、第2の角度Bは、40度〜50度の範囲内であり、好ましくは45度である。
【0074】
ここで選択した例では、運転者が選択した使用位置、すなわち、初期位置100は、走行方向において開始位置101より前に位置している。したがって、シートシェル49は、まず後方に変位する。
【0075】
一具体例においては、運転者が選択した使用位置が、走行方向において開始位置101より後ろに位置している。以下、このような使用位置を後方開始位置106と称する。この場合、シートシェル49がまず長手方向xにおいて直線状に前方に変位して開始位置101に達するように、2つのモータ40、42が作動する。
【0076】
しかし、この場合、有利な点として、シートシェル49が後方開始位置106から回転して前述の中間位置102になるように、モータ40、42が作動する。このため、シル側の第2のモータ42が長手方向xの後方にシートシェル49を駆動しつつ、トンネル部側の第1のモータ40が、中間位置102に達するまで長手方向xの前方にシートシェル49を駆動するように、モータ40、42が作動する。
【0077】
他の具体例において、運転者が選択した使用位置が、開始位置101そのものに対応してもよい。この場合、初期位置から開始位置101へのシートシェル49の長手方向変位は省略される。
【0078】
ここで説明した車両シートの移動シーケンスにおける所定の基準点90の移動をたどったグラフを図12に示す。
【0079】
運転者が選択した使用位置が、走行方向において開始位置101より前に位置し、初期位置100として示されているが、基準点90は、この使用位置から開始位置101に達するまで長手方向xの後方に移動する。
【0080】
続いて本例では反時計回りに第1の角度Aだけ回転する際、基準点90は、長手方向xのさらに後方に移動し、中間点102に達するまで横断方向yの左側、すなわち、車体側に移動する。
【0081】
そして、基準点90は、第1の中央位置103に達するまで長手方向xにおいて再び前方に移動する。
【0082】
前述の本方法の第1の変形例の場合をグラフの実線で示すが、この第1の変形例によれば、基準点90は、第1の中央位置103を通過して、第2の中央位置104に達する。
【0083】
続いて本例では反時計回りに第2の角度Bだけ回転する際、基準点90は、終了位置105に達するまで、長手方向xのさらに前方、かつ、横断方向yのさらに左側に移動する。
【0084】
前述の本方法の第2の変形例の場合を移動グラフの破線で示すが、この第2の変形例によれば、基準点90は、同じ終了位置105に達するまで、第1の中央位置103から長手方向xのさらに前方、かつ、横断方向yのさらに左側に移動する。
【0085】
前述の具体例の場合についても移動グラフに示すが、この場合、運転者が選択した使用位置が後方開始位置106に対応している。この場合、有利な点として、基準点90は、叙述の中間位置102に達するまで、長手方向xの後方、かつ、横断方向yの左側に同時に移動する。
【0086】
また、制御部70は、終了位置105から、前に設定した使用位置にシートシェル49を自動的に戻すためのさらなる方法ステップを行うための、さらなるシーケンス制御を備える。このさらなるシーケンス制御は、操作部72を介して選択してもよい。
【0087】
この場合、本発明に係る方法の開始時に、設定された使用位置、すなわち、初期位置100および/または後方開始位置106が記憶される。前述のさらなる方法の場合、前述の各ステップを逆順序かつ逆方向で行う。この場合、シートシェル49は、前に記憶した使用位置に自動的に戻る。
【0088】
車両において、調整駆動装置が設けられたハンドル80は、前述の移動シーケンスの際、長手方向xおよび/または垂直方向において上方にシートシェル49から離間してもよい。特に、このハンドル80の移動は、シートシェル49が第1の角度Aだけ回転する際に行われてもよい。
【0089】
この場合、ハンドル80、または、その調整駆動装置は、通信インターフェースを用いて、制御70またはモータ40、42の制御システムとデータのやりとりを行う。
【0090】
また、任意に、支持板30やシートシェル49にフットレストや下脚支持部を取り付けてもよく、これにより、運転者の足が自動的にシルより高くなる。
【0091】
シルを折り畳み可能に設計すれば同様の改善効果が得られる。また、シルの折り畳みを本発明に係る方法の移動シーケンスに組み込めば有利である。
【符号の説明】
【0092】
10 第1の下レール
12 第2の下レール
14 車両床部
16 第1の上レール
18 第2の上レール
22 旋回ピン
24 第1のピン
26 第2のピン
28 第3のピン
30 支持板
32 穿孔
34 第1の凹部
36 第2の凹部
38 第3の凹部
40 第1のモータ
42 第2のモータ
44 シートクッション
46 シートクッション前端
48 シートクッション後端
49 シートシェル
50 背もたれ
70 制御部
72 操作部
74 第1の位置検出部
76 第2の位置検出部
80 ハンドル
82 ドア開口部
84 Bピラー
90 基準点
100 初期位置
101 開始位置
102 中間位置
103 第1の中央位置
104 第2の中央位置
105 終了位置
106 後方開始位置
A 第1の角度
B 第2の角度
x 長手方向
y 横断方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12