(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5675022
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】磁性粒子を用いた、微生物を迅速に検出するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20150205BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20150205BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20150205BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20150205BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
G01N33/569 B
C12M1/34 B
C12M1/34 F
C12Q1/02
G01N33/553
G01N33/531 B
【請求項の数】16
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2011-528373(P2011-528373)
(86)(22)【出願日】2008年9月26日
(65)【公表番号】特表2012-503766(P2012-503766A)
(43)【公表日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】ES2008000613
(87)【国際公開番号】WO2010034846
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2011年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】511077328
【氏名又は名称】ビオティカ,ビオキミカ アナリティカ,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】BIOTICA,BIOQUIMICA ANALITICA,S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス アルバラテ,ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】ヒメニス ボノ,マリア ルイサ
(72)【発明者】
【氏名】カノス マルティ,ダニエル
【審査官】
加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−163164(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/091630(WO,A1)
【文献】
Journal of Immunological Methods,2004年,Vol.293,p97-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め培養した微生物を含まない溶液または懸濁液にて微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うためのプロセスであって、以下の工程:
(a)微生物を含有することが疑われるサンプルを、
(i)少なくとも1つの型の常磁性粒子を含むpH緩衝化懸濁物であって、該常磁性粒子は、測定されるべき微生物に特異的な捕捉抗体がその表面に結合されている、pH緩衝化懸濁物;および
(ii)上記抗体によって占有されていない上記磁性粒子の表面に対する、過剰量の、少なくとも1つの型のブロッキング剤分子
とともに混合する工程;
(b)得られた混合物を所定の時間にわたって、微生物−磁性粒子の複合体を形成するに適切な条件下にてインキュベートする工程;
(c)形成した微生物−磁性粒子の複合体の分離および濃縮のために磁場をかけ、引き続いて上清を回収する工程;
(d)pH緩衝化溶液中にて上記微生物−磁性粒子の複合体を再懸濁する工程であって、該溶液は、過剰量の、少なくとも1つの型のブロッキング分子、およびマーカー(酵素)で標識された読取り抗体を含んでいる、工程;
(e)得られた混合物を所定の時間にわたってインキュベートして、標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体を形成する工程;
(f)形成した上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体の分離および濃縮のために磁場をかけ、引き続いて上清を回収する工程;
(g)上記粒子を洗浄して剰余量の読取り抗体を除去し、引き続いて上清を回収する工程;
(h)液体媒体中で、形成した上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体を、再懸濁する工程であって、該液体媒体は、
マーカーとして作用する酵素によって発色させるために必要な基質;
結合したブロッキング分子に向けてシフトした吸収平衡を維持し得る濃度でのブロッキング剤;および
1つまたは数個の上記基質と競合する内因性の微生物の酵素に対して特異的であって、50mMの濃度を有するリン酸−クエン酸緩衝液中の0.01%の濃度のアジ化ナトリウムおよびトリアゾールからなる群より選択される阻害剤、ならびに、過酸化水素および過酸化尿素からなる群より選択される前記読取り抗体に結合した酵素に対する基質
を同時に含んでいる、工程;
(i)得られた混合物を所定の時間にわたってインキュベートしてシグナルを発生させる工程;
(j)上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体が形成した結果として生じたシグナルを検出および定量し、該シグナルを目的の微生物の存在および定量と関連付ける工程、を含んでおり、
用いられる前記ブロッキング分子は、0.1〜10%濃度のウシ血清アルブミン(BSA)であることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記サンプルが、周囲環境に由来するもの、食品に由来するもの、または生物学的流体から得られたものである、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記微生物が、微小な原核生物、または微小な真核生物である、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記微生物が細菌である、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記微生物が、病原菌の群に属する、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
目的の微生物を読取りおよび/または捕捉する抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記磁性粒子が球体であり、その直径が0.5μm〜2μmの範囲内である、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記磁性粒子が化学的に、−NH2基、−COOH基または−OH基で機能化されており、微生物の検出を行うための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
非特異的な吸着を持続的に防止した同一の支持体の上に、多量の同一サンプルを用いるおよび/または同一サンプルを連続的にロードすることによって感度が増加される、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
検出感度が1mLあたり1個の細胞である、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
1時間以内で結果が得られる、微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うための、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセスを実行するためのキットであって、
インサイチュでの分析に手動で用いるための再利用可能なポータブル器具、および
該分析を行うための、反応性の媒体または組成物
を備え、
これらの全てが冷却プレートを組み込んだ容器内に配置されており、
前記反応性の媒体または組成物は、
アジ化ナトリウムおよびトリアゾールからなる群より選択される、内因性の微生物の酵素に対して特異的な酵素阻害剤、ならびに、過酸化水素および過酸化尿素からなる群より選択される前記読取り抗体に結合した酵素に対する基質を含んでおり、
前記反応性の媒体または組成物が、
(a)液体培地中に免疫磁性粒子の懸濁液を含んでいる、目的の微生物を捕捉するための組成物であって、
該免疫磁性粒子が、その表面上に共有結合によって捕捉抗体を固定化しており、該抗体によって占められていない表面に非共有結合によって結合したブロッキング剤を有しており、
該液体培地が、(i)該ブロッキング剤と同一のもの、(ii)キレート剤、(iii)界面活性剤、(iv)殺生剤、および(v)静菌剤、を溶液中に含んでおり、かつ、90mM〜500mMの間の濃度を有するリン酸緩衝化溶液に相当する高いイオン強度を有している、組成物;
(b)マーカーとして作用する酵素と複合体化した読取り抗体を含んでいる、目的の微生物に対する標識組成物であって、
(i)ブロッキング剤、(ii)前記読取り抗体に結合した酵素において競合し得る、微生物中に存在する酵素の活性の阻害剤、を溶液中に含んでおり、かつ、30mM〜90mMの間の濃度を有するリン酸緩衝化溶液に相当する中程度のイオン強度を有している、組成物;
(c)読取り反応の発色に必要な酸化可能な基質を、リン酸二ナトリウムの弱塩を含む溶液中に含んでいる、目的の微生物に対する読取り組成物であって、該基質の自己酸化を低減させるための、組成物;
(d)読取り反応の発色に必要な酸化基質をリン酸−クエン酸緩衝化溶液中に含んでいる、目的の微生物に対する読取り組成物;
(e)強酸または強塩基を含んでいる、該読取り反応を停止させる停止組成物;
(f)ブロッキング剤、界面活性剤および静菌剤を含んでいる、免疫磁性粒子を洗浄するための組成物であって、5mM〜30mMの間の濃度を有するリン酸緩衝化溶液に相当する低度のイオン強度を有している、組成物
であり、
前記ブロッキング分子は、ウシ血清アルブミン(BSA)であることを特徴とする、キット。
【請求項13】
前記器具が、
少なくとも2つのキュベット、および磁石を有する支持体、ならびに
結果の解釈を補正するためのカラーチャート
を備えている、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記(a)のイオン強度が、100mM〜200mMの間の濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液に相当し、
前記(b)のイオン強度が、50mMかつpH6.0のリン酸−クエン酸緩衝液に相当し、
前記(d)のリン酸−クエン酸緩衝液が、pH6.0および50mMの濃度を有し、
前記(e)の強酸または強塩基の濃度が、1M〜5Mの間であり、
前記(f)のイオン強度が、pH7.0かつ20mM〜30mMの濃度のリン酸ナトリウム緩衝液に相当する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載のキットであって、
競合的な微生物の酵素に対する前記阻害剤が、アジ化ナトリウムおよびトリアゾールより選択され、かつ、前記読取り抗体に結合した酵素に対する基質が、過酸化水素および過酸化尿素より選択され、
前記酸化可能な基質が、オルソ−フェニレンジアミン、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾアソリン−6−スルホン酸)、および5−アミノサリチル酸より選択され、
前記強酸が、塩酸、硝酸および硫酸より選択され、
前記強塩基が、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムより選択され、
前記弱塩が、リン酸二カリウムまたはリン酸二ナトリウムであり、
前記キレート剤が、2,2’−ビピリジル,ジメルカプトプロパノール,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジオキシ−ジエチレン−ジニトリロ−四酢酸、エチレン−グリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、オルソ−フェナントロリン、サリチル酸およびトリエタノールアミン(TEA)より選択され、
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤が、ポリエトキシル化されたアルキルフェノール、ポリエトキシル化された脂肪アルコール、ポリエトキシル化された脂肪酸、アルカノールアミン、または縮合物、およびソルビタンモノラウレート(Tween 20)からなる群より選択され、
前記静菌剤が、p−ニトロフェニル−ジ−クロロアセトアミドプロパンジオール(クロラムフェニコール)、スルファニルアミド、2,4−ジアミノ−5−(3,4,5−トリメトキシベンジル)ピリミジン(トリメトプリム)、および2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸のナトリウム塩(チメロサール)より選択され、
前記殺生剤が、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、およびアジ化ナトリウムより選択される、キット。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載のキットであって、
(a)目的の微生物を捕捉するための組成物において、懸濁液中にて、前記免疫磁性粒子が、球体であり、0.8μm〜1.1μmの平均直径を有しており、前記捕捉抗体が、該粒子の表面に共有結合しているモノクローナルまたはポリクローナルの抗レジオネラ抗体であり、前記ブロッキング剤が、10%濃度のウシ血清アルブミン(BSA)であり、前記キレート剤が0.1%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、前記界面活性剤が1%ソルビタンモノラウレートであり、前記殺生剤が0.1%濃度のアジ化ナトリウムであり、前記静菌剤が0.01%濃度のチメロサールであり、これらの全てが、150mMの濃度のリン酸緩衝化溶液(pH7.0)中に存在し、該組成物が1/10の割合でサンプル中に混合され、
(b)前記読取り抗体が、ペルオキシダーゼ複合体化抗レジオネラ抗体である、目的の微生物に対する標識組成物において、(i)前記ブロッキング剤が0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)であり、(ii)前記読取り抗体に結合した酵素において競合し得る、微生物中に存在する酵素の活性の阻害剤が、50mMの濃度のリン酸−クエン酸溶液(pH6.0)中の0.01%トリアゾールであり、該標識組成物がこれらを含んでいる溶液であり、
(c)目的の微生物に対する読取り組成物において、読取り反応の発色に必要な酸化可能な基質が、0.1% 5−アミノサリチル酸、および前記弱塩が該基質の自己酸化を低減させるための0.1Mの濃度のリン酸二ナトリウム(pHが7.5〜8.0の間)であり、
(d)目的の微生物に対する読取り組成物において、読取り反応の発色に必要な酸化基質が、50mMの濃度のリン酸−クレン酸緩衝化溶液(pH6.0)中の、過酸化水素または過酸化尿素であり、
(e)該読取り反応を停止する停止組成物において、前記強酸が5M塩酸または1M硫酸であり、前記強塩基が3M水酸化ナトリウムであり、
(f)前記免疫磁性粒子を洗浄するための組成物において、前記ブロッキング剤が0.1%ウシ血清アルブミンであり、前記界面活性剤が25mMの濃度のリン酸緩衝化溶液(pH7.0)中での0.01%チメロサールである、キット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、免疫磁性粒子を用いた、溶液または懸濁液中の生きた微生物の、迅速な検出、半定量および定量を行うためのプロセスに関し、このプロセスは、微生物の培養を通じて予め富化することを必要としない。本発明はまた、上記プロセスを実施するためのキット、および自動化したバイオセンサ装置によって検出された微生物の定量に関する。
【0002】
〔背景技術〕
微生物の夾雑は、ヒトおよび周囲環境の健康についての深刻な要因であり、ヘルスケアおよび予防に対するその効果に起因するだけでなく、長期にわたるその経済的な影響にも起因する(Hutton G, Bartram J, “Global costs of attaining the Millennium Development Goal for water supply and sanitation”, Bulletin of the World Health Organization, 86(1): 13-9, 2008)。細菌、ウイルス、酵母および原虫は、非常に多くの疾患の原因因子である。
【0003】
これらの感染性の微生物は、キャリアとして機能する支持体を介してその宿主に到達し、宿主の体内にて確率され、損傷を引き起こす、生物学的な因子である。本発明に従えば、微生物は、原核生物の微生物でも真核生物の微生物でもあるが、ウイルスを含まない。
【0004】
細菌は、基本的には、病原性細菌として知られるもの(例えば、腸内細菌科、ビブリオ科、バチルス属、大腸菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、サルモネラ属、レジオネラ、エンテロバクター属など)を含む。
【0005】
細菌は、種々の方法によって、特に食品(例えばサルモネラ)、夾雑した飲料(例えば大腸菌)、大気中からの水滴(例えばレジオネラ)を介して、脊椎動物へ伝播し得る。よって、病院およびホテル、公共の建物(例えば学校)、スイミングプール、体育館、保養所、スパなどにおける冷却塔、水路のような場所では、細菌が存在しないことが、定期的にチェックされなければならない。本発明のプロセスは、一般に病原性細菌に適用される。
【0006】
上述した支持体は感染性の微生物を含み得る。これは、その増殖を可能にするに十分な時間にわたって損傷または疾患を引き起こす。その結果、たった2〜3時間または2〜3日間の間に感染可能な濃度に到達し、宿主に損傷を引き起こす可能性が極めて高い。
【0007】
関連する周囲環境および健康上のリスクの正確な予防達成するために、病原性の生物学的因子が宿主に到達するためのキャリアとして機能する上述した支持体において、病原性の生物学的因子の存在および濃縮を検出する必要があるということは自明である。特に、迅速に結果を得ることおよび生物学的因子の存在および濃縮を測定するためのプロセスを単純化することは、効果的な予防および制御された戦略を規定するための基本的な2つの論点を可能にする:(1)個人適用を容易にする安くて手頃な価格によって分析頻度を増加させる;および(2)感染可能な濃度が長時間にわたって維持されることを避けて、疾患に罹患する可能性を最小化するために、インサイチュでの分析を短時間で行い、補正測定を適切に適用することを可能にすること。このことは、日常のモニタリングでの分析
および危険環境の操作の統合を可能にする。
【0008】
微生物を検出および算出する従来の方法は、時間を要旨かつ複雑であるので、数回の操作工程を行うために習熟者を要する(Noble RT, Weisberg SB. “A review of technologies for rapid detection of bacterium in recreational waters”. Journal of Water and Health, 3(4):381-92, 2005 ; Gracias KS., McKillip JL., “A review of conventional detection and enumeration processes for pathogenic bacterium in food”, Canadian Journal of Microbiology, 50(11):883-90, 2004; Rompre A., Servais P., Baudarts J., de-Roubin MR., Laurent P., “Detection and enumeration of coliforms in drinking water: current processes and emerging approaches”, Journal of Microbiological Processes, 49(1):31-54, 2002)。標準的な方法は、特定の培養条件下で増殖した細菌のコロニーを単離する工程および計数する工程を包含する。これはまた、中でも、微生物に関連するリスクを正確に防止するために、以下のような重大な制限を有している:(1)サンプル中で測定されるべき微生物の濃度が低い可能性があること、さらに他の異なる微生物が付随し得ること。その結果として、微生物からなる群より選択されるを培養培地に播種する前に分離することが必要になり得る。さもなければ、上記微生物群は、培養培地中で都合よく競合し得、測定されるべき微生物の増殖をマスクするか防止するまで増殖し得る;および、(2)その数を得るまでのサンプリングに要する時間は、二重にされるべき微生物に必要な時間よりも一般的に長く、数時間までであり、いくつかの場合において、数日間または数週間までである。この時間は、その微生物が感染可能な濃度に達するに必要な時間よりも顕著に長い。よって、サンプル中の微生物の、短時間(例えば約1時間)での検出を可能にすることが必要である。
【0009】
このような制限は、他の代替法の開発を促進する。特に、認識生物分子(例えば、広範な種々の支持体(固相)上に固定化された抗体、抗原および核酸)の使用は、環境分野、食品分野、バイオ医薬分野、工業分野および分析化学分野におけるイムノアッセイの開発に非常に興味深い。
【0010】
従来の技術に置き換わるいくつかの方法(例えば、イムノアッセイ技術およびPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術)が開発されている。これらは、わずかに迅速であることに加えて、かなり特異的でありかつ感度がよい。
【0011】
抗原−抗体反応に基づくイムノアッセイは、最近開発されたものであり、主に、疾患を生じさせる病原性の微生物を検出するために使用されている(Meer RR, Park DL., “Immunochemical detection methods for Salmonella spp., Escherichia coli O157:H7, and Listeria monocytogenes in foods”, Reviews of environmental contamination and toxicology, 142:1-12, 1995)。しかし、これらの方法は、重大な欠点を有している。このような欠点のいくつかを以下に示す:
(1)ネガティブな結果は、分析したサンプル中に微生物が存在していることを否定しない。なぜなら、微生物はこの方法の検出限界よりも濃度が低い可能性があるからである。よって、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)型を含むイムノアッセイにおいて、制限されたアッセイ容量(一般的に0.1mL〜1.0mLの間)において、最小濃度の細胞(10
5〜10
6個)が微生物の検出に必要とされる。この制限はかなり条件付けられている。なぜなら、これらの方法は、多くの市販のイムノアッセイが、検出のために最小濃度の微生物細胞を必要としているので、多量のサンプルを用いることを許容していないからであり、このことはサンプルを予め富化しておくことを必要とし、その結果アッセイ時間を顕著に延長させ、測定されるべき微生物が十分な細胞濃度に達することを必要とする。
(2)さらに、この方法は生菌と死菌とを区別しない。なぜなら、遊離した抗原もまた検出され、そして殺生剤処理を適用した後には、死菌または遊離の抗原の存在に起因して疑陽性が得られ得るからである。
(3)このアッセイの検出限界は、サンプルの微生物学的組成および化学的組成に、非常に大きく依存している。なぜなら、特定の化学物質の存在または他の微生物の酵素活性の存在、あるいは分析されるべき微生物自身の存在が、分析されるべき微生物の検出および定量に干渉し得るからである。
【0012】
別のセットの技術(上述したPCR技術)は、微生物ゲノムの特定フラグメントの増幅に基づいている。サンプルの核酸が抽出され、精製され、次いで、(ポリメラーゼ酵素によって)酵素的に繰り返し増幅され、電気泳動または蛍光プローブを用いた標識によって発色される。これらの方法の主たる制限は、結果が高度に可変的に示されることであり、この結果は、分析されるマトリクス(Yaradou DF, Hallier-Soulier S, Moreau S, Poty F, Hillion Y, Reyrolle M, Andre J, Festoc G, Delabre K, Vandenesch F, Etienne J, Jarraud S. “Integrated real-time PCR for detection and monitoring of Legionella pneumophila in water systems”, Applied Environmental Microbiology, 73(5): 1452-6, 2007; Joly P, Falconnet PA, Andre J, Weill N, Reyrolle M, Vandenesch F, Maurin M, Etienne J, Jarraud S., “Quantitative real-time Legionella PCR for environmental water samples: data interpretation”, Applied Environmental Microbiology, 72(4):2801-8, 2006)、および、核酸の抽出前にサンプルを調製するプロセスに依存し、さらに、サンプル中に存在し得る、ポリメラーゼ酵素に対する多様な阻害剤に依存する。
【0013】
液体サンプル中の細菌をPCRによって分析する代表的な特許文献はWO01/40505A1である。この文献は、免疫捕捉工程を用いたレジオネラの存在についての文責プロセスを記載し、結果を要するまでに10〜15日間を従来の培養方法と比較して、PCRによってレジオネラを検出する主要な利点が、この方法によって分析を行う場合に必要な時間が24〜48時間であることを述べている。この文献において、細菌は、抗体で活性化した支持体を用いて捕捉され得る。そして、この文献は、磁気ビーズを用い、PCRを行う目的で細胞を破壊しDNAを抽出する可能性を述べている。よって、この方法は、微生物の完全な状態を破壊することを必要とし、従来公知の欠点を有するPCRに供する方法である。本発明はまた、本方法を行うためのキットに関する。
【0014】
全ての型のサンプルにおいて再現性のある結果をPCR技術によって得ることを可能にするような、サンプルの調製について世界的に受け入れられている方法は、現在存在しない。よって、反応の阻害剤の除去およびこれと同時に微生物の効率的な回収を可能にする新たな方法を開発し続けることが必要である。
【0015】
別のオプションは、微生物の免疫捕捉であり、これは、問題の微生物の抗原に対する抗体で被覆された、常磁性の粒子または球体を用いることによって測定される。これらの常磁性粒子は、サンプルと混合されて、特定の微生物との免疫複合体を形成し、磁場をかけることによって捕捉した微生物を分離および濃縮し、測定を干渉し得るサンプル中の他の成分を除去することを可能にする。
【0016】
例えば、目的の微生物の抗原に対する抗体で被覆した超常磁性の粒子または球体による免疫磁性分離を、リアルタイムPCR技術と組み合わせて使用することが記載されている(Yanez MA, Carrasco-Serrano C, Barbera VM, Catalan V. “Quantitative detection of Legionella pneumophila in water samples by immunomagnetic purification and real-time PCR amplification of the dotA gene”, Applied Environmental Microbiology, 71 (7):3433-41, 2005)。しかし、分析される水の複雑さの増加とともに、微生物の回収率およびその捕捉の再現性が低減する。
【0017】
免疫吸収アッセイの感度を増加させるための技術は、より効率的な読取り分子およびよりよい検出器を用いてシグナル伝達の効率を増加させることにフォーカスされている(L.J. Kricka, “Selected strategies for improving sensitivity and reliability of immunoassays”, Clinical Chemistry, Vol 40, 347-357, 1994)。これらの技術が、サンプルを予め富化するための時間の低減に含まれている。8時間以上であり、検出限界が10
6cfu/Lであるが。例えば、微生物の免疫捕捉のための方法の感度を増加するために、いくつかの方法(例えばUS2005/0202518A1)が適用され、この方法は,例えば、8〜15時間にわたって培養物を予め富化する工程の後ではあるが、免疫捕捉工程において免疫磁性ミクロスフェアを適用する。
【0018】
特許文献US2006/0246535A1は、予め富化させることなく、溶液または懸濁液における微生物を抗体で被覆したラテックスミクロスフェアを用いて検出し、次いで、凝集を測定することによって微生物を検出することを記載する。
【0019】
文献ES 2237272A1は、Legionella pneumophilaの抗原で感作したラテックス粒子の凝集−沈降による、血清学的サンプル中のL. pneumophilaに特異的な抗体を検出および定量するためのプロセスを記載している。この文献はまた、感作したラテックス粒子、および免疫反応が行われる反応緩衝液を得る方法を記載する。
【0020】
いくつかの特許が、磁性ナノ粒子 対 磁性マイクロ粒子(1μm=1000nm)を用いることによって微生物の検出の感度を向上させることを意図している。例えば、US特許2006/292555A1は、「培養プロセスを介して細菌を予め富化することなく、10
2コロニーよりも少ない濃度で細菌を検出し得る、一般的かつ満足のいくアッセイが、今日まで存在しない」ことを記載している。特に、上述した特許は、10〜100個の細菌/mLのオーダーでの感度の達成が、1ナノメーターではなく1ミクロンのオーダーの直径であるマイクロ粒子によって達成し得ないことを記載する。よって、このような特許文献は、FePt(鉄−プラチナ)のナノ粒子の表面に結合した抗生物質であるバンコマイシンによって形成された磁性ナノ粒子を用いる工程を包含する、病原体を検出するための方法を記載する。
【0021】
固相支持体上の粒子の磁気的な誘引を含む方法について、いくつかの文献が存在する。例えば、特許文献US5,834,197およびUS6,159,689(両方の著者が同じ)は、種を捕捉しかつ標識するための方法を記載し、この方法は、探索される上記種に対するアフィニティを有する粒子の誘引を含んでいる。この方法は、磁力によって固相支持体上に上記粒子を磁気的に誘引し、固定化し、次いでサンプルの循環を引き起こし、上記支持体を通過させることを含む。一方では、抗原−抗体相互作用に好ましい衝突の数がより少ないことが明らかである。なぜなら、この粒子は指示体に固定されており、表面の一部が抗体によってカバーされているのでアクセスできないからである。そして、他方では、露出した領域は常に同一であり、そしてこの領域の一部のみが実際に利用可能であり、その結果、最初から捕捉されている細菌に起因する立体障害が、新たな衝突の効率を速やかに制限する。有効な領域の損失は、支持体と永続的に接触することにだけ起因するでなく、粒子の凝集にも起因する。これは、粒子が支持体上に残存し互いに非常に近接する場合に好ましく、この効率の損失をより増加させる。さらに、同一サンプルが、残存した粒子を有する支持体を介して反復して再循環される。よって、ロード中にサンプルが清浄化される可能性がなく、再循環あたり単一のサンプルロードが用いられる。
【0022】
文献WO02/101354 A2はサンプル中の微生物を検出するためのキットおよび方法に関し、微生物のマーカーに特異的な捕捉抗体を固相支持体に付着する工程、次いで、第二の抗体を添加する工程を含む方法も記載する。この第二の抗体は、微生物の存在を示す分子、好ましくは検出され得る光に複合体化され得る。
【0023】
文献ES 2208121 A1はまた、分析物の同定および定量のための方法に関し、ここで、抗体および抗原が、WO 02/101354 A2,US5,834,197およびUS6,159,689に記載の固相支持体の代わりに、バイオセンサとして用いられる磁性シリカ粒子に固定化される。この磁性粒子は、Massart法によって得られた酸化鉄ナノ粒子であり、5〜30nmのサイズであり、30〜100nmの厚さのシリカ層によって被覆されている。
【0024】
文献WO 2006/123781 A1のアブストラクトには、サンプルからの微生物の回収のための方法における磁性シリカ粒子の使用が記載されている。ここで、サンプルは微生物を吸収する粒子と接触される。この粒子は、直径6μm以下であり、その特異的表面領域が50m
2/g以下である。
【0025】
文献US2006/0211061 A1は、イムノアッセイのよって流体中の病原性微生物を迅速に検出するための方法に関する。この方法は、抗体を用いて、流体中の微生物の第一のエピトープに磁性マイクロ粒子を結合させる工程;微生物に結合した磁性マイクロ粒子を、磁場を用いて分離する工程;第二の抗体を用いて、問題の微生物の第二のエピトープにグルコース分子を結合する工程;および、サンプル中のグルコースを検出して微生物の存在および濃度を測定する工程からなる。このマイクロ粒子は、ポリマーまたはタンパク質(例えばアルブミンまたはアビジン)で被覆された超常磁性材料のマイクロスフェアを含む。
【0026】
しかし、これらの方法は、産業への適用を妨げる欠点を有している。これらの欠点としては以下が挙げられる:
(1)磁性粒子の表面上への抗体の固定化は、その表面上に官能基(例えば、水酸基、アミノ基またはカルボキシル基)の存在を必要とする。一旦、これらの官能基によって表面上に抗体が結合されると、サンプル中に存在する他の化合物に対して活性な部位を提示する遊離基が存在し得、これが抗原−抗体相互作用を干渉し得る。また、発色試薬の組成物中に存在する他の化合物、または、外部媒体に対する指向性が変更された、固定化された抗体そのものもまた結合し得、抗原との相互作用を形成し、引き続いて微生物の捕捉および回収を低下させるようだ。
【0027】
(2)免疫磁性粒子が互いに衝突し、その結果、これらが弱い結合で相互作用し得る。これは、サンプルと混合される前またはサンプルと混合された後に凝集を形成するに好ましい。この効果は、粒子の濃度および接触時間に依存する。このことは、粒子の量を増加させることによって検出限界を低減させる可能性を制限し、粒子を用いることに基づく方法の有用期間を制限する。
【0028】
(3)複合サンプルと混合した磁性粒子は、凝集の形成に好ましいいくつかの成分と相互作用し得る。その結果、粒子と微生物との相互作用が低減するようだ。そして、磁気保持の効果が低減し、次いで、目的の微生物の捕捉および回収を低下させ、その効率を下げる。
【0029】
(4)免疫磁性粒子の量的な回収および操作は、上述した欠点に根本的に起因し、そして主に多量のサンプルにおいて、可能でない。次いで、多量のサンプルによる検出限界を低減させることもまた可能でない。なぜなら、免疫磁性粒子の変動しやすい喪失、および免疫磁性粒子と微生物との間の複合体の喪失が存在するからである。
【0030】
(5)複合サンプル中に存在するいくつかの成分、または分離工程のいずれかまたはいくつかにおいて粒子との接触を生じさせる溶液中に存在するいくつかの成分が、官能基が露出したブロッキング分子の脱離に好都合な自身によるコーティングを変更し得る。ここで、微生物と固定化された抗体(捕捉抗体)との相互作用に有害であり得る他の分子、上記捕捉抗体、または読取り抗体が吸収され得る。
【0031】
(6)微生物がその表面上に露出する種々の抗原の組成および濃度が、環境条件の変化に応じて変化し得る(Albers U, Tiaden A, Spirig T, Al Alam D, Goyert SM, Gangloff SC, Hilbi H., “Expression of Legionella pneumophila paralogous lipid A biosynthesis genes under different growth conditions”, Microbiology, 153(Pt 11):3817-29, 2007)。その結果、微生物の測定の感度および再現性は、サンプルの期限およびその環境条件に依存する。
【0032】
(7)免疫磁性粒子によって捕捉された目的の微生物は、この粒子との複合体の読取りと干渉する内因性の酵素を有し得る。そして、捕捉された微生物の全体構造を変更することなく分離したり除去したりすることができない。これらの干渉は、捕捉された微生物の濃度に依存し、その結果、高濃度の微生物について、この干渉は、定量的な測定または半定量的な測定における微生物の量の過小評価を引き起こし得る。あるいは、定量的な測定における疑陰性を引き起こし得る。特に、絶対嫌気性でない(好気性、通性嫌気性、酸素耐性嫌気性、および微好気性の)微生物(例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ、クレブシエラ、バチルス、サルモネラ、カンピロバクターまたはリステリア)は、内因性の酵素カタラーゼを有している。この酵素は、通常読取り抗体に複合体化されているペルオキシダーゼ酵素の基質として添加される過酸化水素に競合する。
【0033】
ここ数年において、複合サンプルにおいて、分析物の多様な性質の測定に関する情報についての要求が増加してきており、より多様な領域においてますます、迅速かつ単純かつ感度よい様式にて増加してきている。この要求を満たすことを妨げる従来の方法における困難性を克服するために、分析装置の分野におけるより大きな努力が、専門的な監督を必要とせず、操作が単純であり低コストである使用に用いるための、迅速かつ選択的、感度よい、信頼性の高い、そして分散化した様式での分析情報を提供し得る装置を得ることに向けられている。
【0034】
このような要求は、従来の分析装置に代わる分析としての、分析物が存在する複合マトリクスから分析物を分離し、その存在およびその濃度を測定するためのバイオセンサの開発を好んだ。
【0035】
磁性粒子の使用に基づくバイオセンサの調製は、固相支持体を用いる任意の分析、特に自動化システムへの適用に新たな手法を切り開いた。
【0036】
バイオセンサとして機能し微生物の検出のために扱われる装置に関する特許文献がいくつか存在する。文献ES 2220227 A1は、1または数個のサンプルの分析から物質すなわち分析物を検出するための方法および装置に関する。この発明は、遠隔操作が可能であるロボット装置、および天然の複数サンプルの分析を可能にする方法に関する。この発明は、タンパク質およびDNAのマイクロアレイの技術に役立つ。この装置は、サンプルが操作され、処理され、分析される、一連の操作モジュール、そして該操作モジュールの操作を監督する一連の制御モジュールを備えている。サンプルを分析する方法は、サンプルをバイオセンサと反応させる工程、反応しない過剰なサンプルを洗浄する工程、およびバイオセンサ中に残っているサンプルを検出する工程を包含する。文献WO 93/25909 A1は、サンプル中の目的の分析物の存在を検出するための装置、特にバイオセンサに関し、分析物の存在を検出するための方法に関する。文献US 7220596 B2は、食品のようなサンプルから捕捉および検出され得る抗原を検出することに関し、例えば、粒子に結合された抗体を含むモジュールを介してサンプルを通過させることを含む装置および方法を用いることによって約30分間で検出する。修飾された粒子を介するサンプルの流れは、0.2〜1.2L/分である。これにより、抗原は抗体によって捕捉され、次いで、抗体の検出が、蛍光技術、化学発光技術、または顕微鏡技術によって行われる。
【0037】
したがって、例えば、特定の病原性微生物の検出および半定量を短時間(例えば1時間)で可能にするキットによって、必要な測定を迅速にインサイチュで行われ得る方法がなお必要とされている。
【0038】
このように、本発明は、環境または食品に由来する広範なサンプル、および生物学的流体において微生物の存在を、懸濁物中の免疫磁性粒子を用いて迅速かつ感度よく測定するための、単純なキットおよびプロセスを提供し、従来の欠点を克服して、細胞1個/mLのオーダーでの目的の微生物の濃度についてのインサイチュでの分析結果を、サンプルの容量を制限することなく、1時間以内に得ること、そして工業的な適用を可能にすることを目的としている。
【0039】
〔発明の概要〕
1つの実施形態において、本発明は、サンプル中の生きた微生物をインサイチュで検出および半定量するための方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、サンプルからの生きた微生物を研究室内にて定量するための方法を提供する。そして、別の実施形態において、本発明は、自動化されたバイオセンサ装置によって生きた微生物を検出および定量する方法を提供する。
【0040】
高度に特異的でありかつ高感度なバイオセンサを用いる方法を使用することによって、生物学的サンプル中のレジオネラ、サルモネラまたは大腸菌のような病原性細菌の存在または非存在を検出することが可能であることを見出したことは驚くべきことである。これらは、常磁性粒子であり、その表面上に、検出されるべき微生物に特異的な抗体、および生物学的サンプル中に存在する夾雑分子の結合を阻止するブロッキング剤を有している。
【0041】
本発明のプロセスは、粒子が分析の間にわたって保護されている事実による結果として粒子間に生じ得る弱い相互作用を、ブロッキング分子の吸収−脱離平衡が吸収された分子へ向けてシフトする際に得られる、その表面の安定なブロッキングによって取り除く。このブロッキングは、ダイナミックな不活性化または被覆を可能にし、これは粒子の表面の官能基を隠し、上記相互作用を妨げる。その結果、粒子の凝集、および表面への付着が低減する。同時に、吸収され得るブロッキング分子の量を決定するブロッキング剤の濃度、および、ブロッキング分子が粒子の表面に接近することを可能にするイオン強度を決定する緩衝液の濃度が、吸収されたブロッキング分子の必要量および適切なイオン強度を全ての時点で維持することを可能にし、その結果、上記分子は、支持体の表面に接近する他のものと迅速に置換され得、その結果、読取り分子が、捕捉された微生物に接近する。さらに、粒子の磁性の保持に有害な不溶性の複合体の形成に起因するサンプルの干渉を低減するために、合わせられたキレート剤および界面活性剤を使用し、そして、潜在的に干渉する微生物の活性の阻害剤が、測定されるシグナルの発色のために上記分子によって使用される基質について読取り分子と競合し得る。よって、目的の微生物の細胞の吸収量、ならびに微生物の衝突、捕捉および保持の可能性が増大するならば、これらの全てが、粒子を定量的に回収することを可能にし、多量の操作、および本方法の感度の改善を可能にする。
【0042】
本発明は、サンプル中の特定の細菌によって産生される抗原の存在または非存在についての検出キットに関する。このキットは、特定の細菌の対応する抗原に対する特定の抗体に結合された磁性粒子、ならびにブロッキング分子、第二の標識化抗体を備えており、試薬のすべてが本プロセスを行うために必要である。
【0043】
さらに、本発明はまた、研究室内における、サンプルからの生きた微生物の検出および/または半定量および/または定量のための、自動化されたバイオセンサ装置に関する。
【0044】
本発明に従えば、微生物は、任意の微小原核生物(細菌を含む。)、または任意の微小真核生物(原虫、藻類、酵母および真菌を含む。)であり、ウイルスは含まれないことが理解される。
【0045】
基本的には、細菌としては、公知の病原性細菌が挙げられ、例えば、腸内細菌科の種、ビブリオ科の種、バチルス属の種、大腸菌属の種、連鎖球菌の種、シュードモナス属の種、サルモネラ属の種、レジオネラ菌の種、エンテロバクター属の種などが挙げられる。
【0046】
支持体は、ポリマー材料によって形成された固相として理解され、その表面上に、目的の分子を固定するために必要な多数の化学基を有している。
【0047】
定量は、サンプル中の目的の微生物の濃度または量を正確な様式で測定することとして理解される。
【0048】
半定量は、サンプル中の目的の微生物の濃度を適切な様式で測定することとして理解される。
【0049】
検出は、サンプル中の目的の微生物の存在−非存在を決定することとして理解される。
【0050】
本発明において、「サンプル」は、微生物を含むことが予想されるものとしてみなされる。サンプルは、一般に環境由来であるか食品由来であり、特定の場合において、生物学的な流体(例えば血清、呼吸器の分泌物または肺組織)である。
【0051】
抗体は、目的の微生物において露出している特定の分子(抗原ともいわれる。)を特異的に認識し得、この分子と特異的に結合し得る分子として理解される。このような抗体は、捕捉抗体または読取り抗体であり得、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。
【0052】
モノクローナル抗体は、単一のハイブリドーマクローンに由来する、同質な抗体として理解され、よって、これらの全てが同一の抗原認識部位を有している。
【0053】
ポリクローナル抗体は、同一の抗原の種々の部位に対して標的化された抗体の異種のセットとして理解される。
【0054】
読取り抗体は、微生物の細胞表面上に露出した対応する抗原と相互作用し、検出可能なシグナルを産生し得る分子(例えば、色または吸光度の変化を生成する反応を触媒する酵素、または例えば、蛍光発光を生成し得る分子)と複合体化された抗体として理解される。
【0055】
捕捉抗体は、支持体の表面上に固定化された抗体であり、微生物の細胞表面上に露出した対応する抗原と相互作用して支持体−微生物複合体を形成する抗体であると理解される。酸化基質は、還元反応において電子を獲得する化学物質をいう。
【0056】
酸化可能な基質は、還元反応において電子を供給する化学物質をいう。これはまた、還元基質ともいう。
【0057】
強酸は、水溶液中にて、その構成成分であるイオンに完全に解離されて、媒体に水素イオン(H
+)を提供する酸である。
【0058】
強塩基は、水溶液中にて、その構成成分であるイオンに完全に解離されて、水酸化物イオン(OH
−)を提供する塩基をいう。
【0059】
弱塩は、水溶液中にて、その構成成分であるイオンに、100%解離される強塩と比較して低度に解離される塩であると理解される。
【0060】
キレート剤は、金属イオンと安定な複合体を形成する化合物をいい、キレータともいう。
【0061】
界面活性剤は、二相の間で接触する表面上での表面張力を低減させる因子をいう。
【0062】
静菌剤は、微生物を殺すことなくその増殖および再生を阻害する化学物質であると理解される。
【0063】
殺生剤は、微生物を破壊する化学物質をいう。
【0064】
このように、本発明の第一の目的は、予め培養した微生物を含まない溶液または懸濁液にて微生物の検出および/または半定量および/または定量を行うためのプロセスを提供することであり、該プロセスは、以下の工程(a)〜(j)を包含する:
(a)微生物を含有することが疑われるサンプルを、
(i)少なくとも1つの型の常磁性粒子を含むpH緩衝化懸濁物であって、該常磁性粒子は、測定されるべき微生物に特異的な抗体がその表面に結合されている、pH緩衝化懸濁物;および
(ii)上記抗体によって占有されていない上記磁性粒子の表面に対する、過剰量の、少なくとも1つの型のブロッキング剤分子
とともに混合する工程;
(b)得られた混合物を所定の時間にわたって、微生物−磁性粒子の複合体を形成するに適切な条件下にてインキュベートする工程;
(c)形成した微生物−磁性粒子の複合体の分離および濃縮のために磁場をかけ、引き続いて上清を回収する工程;
(d)pH緩衝化溶液中にて上記微生物−磁性粒子の複合体を再懸濁する工程であって、該溶液は、過剰量の、少なくとも1つの型のブロッキング分子、およびマーカー(酵素または蛍光団)で標識された第2の抗体を含んでいる、工程;
(e)得られた混合物を所定の時間にわたってインキュベートして、標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体を形成する工程;
(f)形成した上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体の分離および濃縮のために磁場をかけ、引き続いて上清を回収する工程;
(g)上記粒子を洗浄して剰余量の第2の抗体を除去し、引き続いて上清を回収する工程;
(h)液体媒体中で、形成した上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体を、再懸濁する工程であって、該液体媒体は、
マーカーとして作用する酵素によって発色(develop)させるために必要な基質;
結合したブロッキング分子に向けてシフトした吸収平衡を維持し得る濃度でのブロッキング剤;および
1つまたは数個の上記基質と競合する内因性の酵素に対して特異的な阻害剤
を同時に含んでいる、工程;
(i)得られた混合物を所定の時間にわたってインキュベートしてシグナルを発生させる工程;
(j)上記標識された抗体−微生物−磁性粒子の複合体が形成した結果として生じたシグナルを検出および定量し、該シグナルを目的の微生物の存在および定量と関連付ける工程。
【0065】
上記プロセスにおいて、
・上記サンプルは、周囲環境に由来するもの、食品に由来するもの、または生物学的流体から得られたものであり、
・上記微生物は、微小な原核生物、好ましくは細菌であり、微小な真核生物、好ましくは原虫、藻類、酵母および真菌であり、病原菌、例えば、腸内細菌科の種、ビブリオ科の種、バチルス属の種、大腸菌属の種、連鎖球菌の種、シュードモナス属の種、サルモネラ属の種、レジオネラ菌の種、エンテロバクター属の種などであり、あるいは真核生物、好ましくは原虫、藻類、酵母および真菌であり、
・目的の微生物を読取り(reading)および/または捕捉する抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり、
・上記磁性粒子は球体であり、その直径が0.5μm〜2μm、好ましくは0.7μm〜1.5μm、より好ましくは0.8μm〜1.0μmの範囲内であり、該粒子は化学的に、特に−NH
2基、−COOH基または−OH基で機能化されており、
・少なくとも1つの型のブロッキング分子が全ての工程の間にわたって過剰濃度で維持されており、その結果、吸着−脱離の平衡が、吸着された分子へ向けてシフトされて、上記磁性粒子上での非特異的な吸着を防止して擬陽性または擬陰性を防止し、
・前記ブロッキング分子が、タンパク質、好ましくはウシ、血清アルブミン、乳カゼイン、コールドウォーターフィッシュの皮膚のゼラチン、ブタの皮膚のゼラチン、脱脂粉乳であり、または炭水化物、好ましくはポリデキストランであり、
・上記微生物の存在が、溶液または懸濁液にて可視的に検出され、色の生成が該微生物の存在を示し、
・所望されない吸着を持続的に防止した同一の支持体の上に、多量の同一サンプルおよび/または同一サンプルを連続的なロードを用いて感度が増加させることを可能にし、
・検出感度が1mLあたり1個の細胞であり、
・1時間以内で結果が得られる。
【0066】
本発明の別の目的は、以下のようなプロセスに関する:上記磁性粒子の表面を持続的に保護することが、分析全体を通して非特異的に吸着の増加を防止するという事実に起因して感度が増加されることによって、免疫学的に捕捉する工程における時間が増加される。
【0067】
本発明の別の目的は、上述したプロセスを行うためのキットに関し、本キットは、インサイチュでの分析に手動で用いるための再利用可能なポータブル器具、および、該分析を行うための、反応性の媒体または組成物を備えており、これらの全てが冷却プレートを組み込んだ容器内に配置されている。本キットは、少なくとも2つのキュベット、および磁石を有する支持体、ならびに、結果の解釈を補正するためのカラーチャート、を備えており、上記反応性の媒体または組成物は、
(a)液体培地中に免疫磁性粒子の懸濁液を含んでいる、目的の微生物を捕捉するための組成物であって、
該免疫磁性粒子が、その表面上に共有結合によって捕捉抗体を固定化しており、該抗体によって占められていない表面に非共有結合によって結合したブロッキング剤を有しており、
該液体培地が、(i)該ブロッキング剤と同一のもの、(ii)キレート剤、(iii)界面活性剤、(iv)殺生剤、および(v)静菌剤、を溶液中に含んでおり、かつ、90mM〜500mMの間、好ましくは100mM〜200mMの間、より好ましくは150mMの濃度を有するリン酸緩衝化溶液に対応する高いイオン強度を有している、組成物;
(b)読取り分子または蛍光基質と複合体化した読取り抗体を含んでいる、目的の微生物に対する標識組成物であって、
(i)ブロッキング剤、(ii)該読取り分子において競合し得る、微生物中に存在する酵素の活性の阻害剤、を溶液中に含んでおり、かつ、30mM〜90mMの間の濃度を有するリン酸緩衝化溶液に対応する中程度のイオン強度、好ましくは50mMのpH6.0リン酸−クエン酸緩衝液を有している、組成物;
(c)読取り反応の発色に必要な、酸化可能な基質を含んでいる、目的の微生物に対する読取り組成物であって、該基質の自己酸化を低減させるための、リン酸二ナトリウムの弱塩を溶液中に含んでいる、組成物;
(d)読取り反応の発色に必要な酸化基質をリン酸−クエン酸緩衝化溶液(好ましくはpH6.0で濃度50mM)中に含んでいる、目的の微生物に対する読取り組成物;
(e)強酸または強塩基を含んでいる、該読取り反応を停止させる停止組成物;
(f)ブロッキング剤、界面活性剤および静菌剤を含んでいる、免疫磁性粒子を洗浄するための組成物であって、5mM〜30mMの間の濃度を有するリン酸緩衝化溶液(好ましくはpH7.0で濃度20〜30mMの間、好ましくは25mM)に対応する低度のイオン強度を有している、組成物
である。
【0068】
上記キットにおいて、
・上記ブロッキング剤は、炭水化物またはタンパク質であり、好ましくはタンパク質であり、より好ましくは、血清アルブミン、粉末乳カゼイン、溶液乳カゼイン、コールドウォーターフィッシュの皮膚のゼラチン、ブタの皮膚のゼラチン、脱脂粉乳からなる群より選択されるタンパク質、ポリデキストランであり、
・微生物の酵素活性の、読取り分子との競合が、この活性に特異的な阻害剤(アジ化ナトリウムまたはトリアゾールなど、好ましくはトリアゾール)によって、または読取り酵素(好ましくは、ペルオキシダーゼ)に対する酸化基質として、微生物の酵素活性によって認識されない、置換された過酸化物、より好ましくは過酸化尿素を用いることによって、除去され、
・上記酸化基質が、過酸化水素、および過酸化尿素、好ましくは0.05%過酸化尿素より選択され、
・上記酸化可能な基質が、5−アミノサリチル酸、オルソ−フェニレンジアミン、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、好ましくは0.1% 5−アミノサリチル酸より選択され、
・上記強酸が、塩酸、硝酸および硫酸、好ましくは5M塩酸および1M硫酸より選択され、
・上記強塩基が、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム、好ましくは3M水酸化ナトリウムより選択され、
・上記弱塩が、リン酸二カリウムまたはリン酸二ナトリウム、好ましくは0.1Mリン酸二ナトリウムであり、
・上記キレート剤が、2,2’−ビピリジル,ジメルカプトプロパノール,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジオキシ−ジエチレン−ジニトリロ−四酢酸、エチレン−グリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、オルソ−フェナントロリン,サリチル酸およびトリエタノールアミン(TEA)、好ましくはEDTAより選択され、
・上記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、好ましくはポリエトキシル化されたアルキルフェノール、ポリエトキシル化された脂肪アルコール、ポリエトキシル化された脂肪酸、アルカノールアミン、または縮合物、より好ましくはソルビタンモノラウレート(Tween 20)より選択され、
・上記静菌剤が、p−ニトロフェニル−ジ−クロロアセトアミドプロパンジオール(クロラムフェニコール)、スルファニルアミド、2,4−ジアミノ-5-(3,4,5-トリメトキシベンジル)ピリミジン(トリメトプリム)、好ましくは2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸のナトリウム塩(チメロサール)より選択され、
・上記殺生剤が、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、およびアジ化ナトリウム、好ましくはアジ化ナトリウムより選択される。
【0069】
本発明の別の目的は、以下の特徴点を有する上記キットによって形成される:
(a)目的の微生物を捕捉するための組成物において、懸濁液中にて、免疫磁性粒子が、球体であり、0.8μm〜1.1μmの平均直径を有しており、捕捉抗体が、この粒子の表面に共有結合しているモノクローナルまたはポリクローナルの抗レジオネラ抗体であり、ブロッキング剤が、10%濃度のウシ血清アルブミン(BSA)であり、キレート剤が0.1%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、界面活性剤が1%ソルビタンモノラウレートであり、殺生剤が0.1%濃度のアジ化ナトリウムであり、静菌剤が0.01%濃度のチメロサールであり、これらの全てが、150mMの濃度のリン酸緩衝化溶液(pH7.0)中に存在し、上記組成物が1/10の割合でサンプル中に混合される点;
(b)読取り抗体が、ペルオキシダーゼ複合体化抗レジオネラ抗体である、目的の微生物に対する標識組成物において、(i)ブロッキング剤が0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)であり、(ii)読取り分子において競合し得る、微生物中に存在する酵素の活性の阻害剤が、50mMの濃度のリン酸−クエン酸溶液(pH6.0)中の0.01%トリアゾールであり、該標識組成物がこれらを含んでいる溶液である点;
(c)目的の微生物に対する読取り組成物において、読取り反応の発色に必要な酸化可能な基質が、0.1% 5−アミノサリチル酸であり、弱塩がこの基質の自己酸化を低減させるための0.1Mの濃度のリン酸二ナトリウム(pHが7.5〜8.0の間)であり、
(d)目的の微生物に対する読取り組成物において、読取り反応の発色に必要な酸化基質が、50mMの濃度のリン酸−クエン酸緩衝化溶液(pH6.0)中の、過酸化水素または過酸化尿素、好ましくは0.05%過酸化尿素である点;
(e)読取り反応を停止する停止組成物において、強酸が5M塩酸または1M硫酸であり、強塩基が3M水酸化ナトリウムである点;
(f)免疫磁性粒子を洗浄するための組成物において、ブロッキング剤が0.1%ウシ血清アルブミンであり、界面活性剤が25mMの濃度のリン酸緩衝化溶液(pH7.0)中での0.01%チメロサールである点。
【0070】
本発明の別の目的は、本発明のプロセスに従う、溶液または懸濁液にて微生物の検出または定量を行うための、再利用可能な手動の分析デバイスに関する。この再利用可能な手動の分析デバイスは、ベース(2)を備えた支持体(1)、および側方に傾斜した2つの平面(3);磁石(5)を支持し、該支持体に関して該磁石の脱離を可能にするモバイルシャフト(4);クランプ(7)の形態にある、少なくとも1つの留め具;および、
図2に示すように、該ベース上にて静止してクランプ(7)の形態にて該留め具によって固定されている少なくとも1つのキュベット(6)を備えている。
【0071】
本発明の別の目的は、インサイチュでの分析を行うための、上記手動のデバイスの、使用に関する。
【0072】
本発明の別の目的は、上記プロセスを実行するための、自動化されたバイオセンサであって、
自動化された様式において、
図2に示されたような以下の(i)〜(ix):
(i)目的の微生物を捕捉および標識する反応のためのセル;
(ii)選択された波長での吸光度、または選択された励起波長での蛍光を読み取るためのセル;
(iii)レジオネラの場合に、分光光度計または分光蛍光光度計からなる、光変換器;
(iv)種々の液体を操作するための流体回路;
(v)分析を連続的に制御し、シグナルを取得するための、マイクロプロセッサ;
(vi)データを処理するためのコンピュータ、および該マイクロプロセッサとの該コンピュータの通信
(vii)撹拌装置;
(viii)磁性保持装置;および
(ix)温度自動調節装置
を備えている統合されたシステムからなることによって特徴付けられる、バイオセンサに関する。このバイオセンサにおいて、各測定サイクルが、ブランクの分析およびサンプルの分析を包含し、得られた吸光度の値が、サンプルのシグナルからブランクのシグナルを差し引いた結果である。
【0073】
本発明の別の目的は、水中の微生物を捕捉するための免疫磁性粒子のディスポーザブルなアリコートの使用に基づく、該微生物の濃度をオンラインでモニタリングするための、上記のバイオセンサの、使用に関する。特定の実施形態において、これらの微生物が、レジオネラ、および/またはサルモネラ、および/または大腸菌、および/またはリステリア、および/またはブドウ球菌、および/または連鎖球菌、および/またはブレタノマイセスである。
【0074】
〔図面の説明〕
図1は、本発明において手動分析を行うために用いられる装置の構成を示す。図面に示されるように、この装置は、基体(2)と2つの側方の斜面(3)とを含む支持体(1)、磁石(5)を支持し上記支持体に対し磁石を変位させる可動軸(4)、締め具(7)の形態の少なくとも1つの留め具、及び上記基体上で静止し締め具(7)の形態の上記留め具により位置が固定された少なくとも1つのキュベット(6)を備えている。
【0075】
図2は、本発明において自動分析を行うために用いられる自動バイオセンサの構成を示す。この図面に示されるように、このバイオセンサは、2つのコンパートメントA及びBを備え、BはAに含まれている。コンパートメントAは、蠕動ポンプ及び貯蔵タンクの集合体を備えている。標準物質またはブランクは、蠕動ポンプ(1)により、貯蔵タンク(22)から反応セル(11)へ運搬される。試料(サンプル)は、蠕動ポンプ(6)により、サンプル採取点から反応セル(11)へ運搬される。免疫磁性粒子の懸濁液を含む組成物は、攪拌装置により均質化され、蠕動ポンプ(3)により、対応する貯蔵タンク(15)から反応セル(11)へ運搬される。攪拌装置(17)により、反応セル(11)内の混合物が均質化することが可能になる。磁気保持装置(12)により、反応セル(11)に対し磁界を与える(activating)、あるいは与えるのを停止する(deactivating)ことが可能になる。蠕動ポンプ(8)により、反応セル(11)の内容物を残留物へ排出することが可能になる。所望の微生物に対し直接的な抗体(読取り抗体と呼ばれる)を含む組成物は、蠕動ポンプ(2)により、その貯蔵タンク(14)から反応セル(11)へ運搬される。免疫磁性粒子の洗浄を可能にする組成物は、蠕動ポンプ(7)により、その貯蔵タンク(20)から反応セル(11)へ運搬される。ペルオキシダーゼ酵素の基質を含む組成物(読取り組成物)は、蠕動ポンプ(4)により、貯蔵タンク(13)から反応セル(11)へ運搬される。停止試薬を含む組成物は、蠕動ポンプ(5)により、その貯蔵タンク(21)から反応セル(11)へ運搬される。蠕動ポンプ(18)は、蠕動ポンプ(9)により、反応セル(11)から、その内容物を、残留物へ排出される流れに通過させながら、読取りセル(18)へ運搬する。流体回路のための洗浄組成物は、蠕動ポンプ(10)により、その貯蔵タンク(19)から反応セル(11)へ運搬される。上記読取りセルは、変換器(18)に連結されており、コンパートメントAの外部に配置されている。反応セル(11)及び磁気保持装置(12)は、コンパートメントB内、言い換えるとコンパートメントAの内部に存在し、その他の全要素は、コンパートメントA内に存在する。コンパートメントAは、4〜8℃の温度に調温制御され、コンパートメントBは、24〜26℃に調温制御されている。読取りセル(18)は、室温である。
【0076】
図3は、自動バイオセンサにて得られた、ブランク(レジオネラなし)の信号及びサンプル(レジオネラあり)の信号の記録を示す。
図3は、550nmで読み取った吸光度の、長時間にわたる継続的な記録を提示し、自動バイオセンサの測定サイクルに対応する。この測定サイクルは、ブランク(1)及びレジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(2)を濃度2×10
6cfu/Lで含むサンプルに対して得られた信号を有する。この濃度は、培養法により並行して決定される。サンプルの吸光度の最大値からブランクの吸光度の最大値を差し引いた結果得られた値が、サンプルにおけるレジオネラ ニューモフィラの濃度に対応する。
【0077】
図4は、吸光度と清浄水中のレジオネラの濃度との間の相関関係を示す。
図4は、レジオネラの濃度及び測定された吸光度の間で得られた相関関係を提示する。清浄水サンプル中でのこれらの階級は、両方とも対数の形態で表わされる。相関係数は高く(r=+0.99)、このことは、測定された信号とサンプル中の所望の微生物濃度の値との間に、一貫性の度合いが高いことを暗示する。
【0078】
図5は、清浄水サンプルに対し、自動バイオセンサで得られた結果及び培養法で得られた結果を示す。
図5は、種々の清浄水サンプルに対し自動バイオセンサによって得られた値、及びこれらの値と、10
3cfu/Lと10
8cfu/Lとの間の広い濃度範囲での培養法により得られた対応する値との対比を提示する。
【0079】
図6は、その測定感度での捕捉した微生物の内因性活性の効果を示す。
図6は、微生物を含まないブランクについて、同一の(of one and the same)微生物(Escherichia coli)濃度である2つのサンプルの動的な読取りにおける405nmでの吸光度の経時変化を提示する。(□の符号で示した)一方のサンプルにおいては、上記内因性活性(カタラーゼ)は、阻害されていない。(○の符号で示した)他方のサンプルにおいては、上記活性は、阻害されている。図面から、捕捉した微生物の内因性活性が、基質の1つ(過酸化水素)に対し読取り分子(ペルオキシダーゼ)と競合することにより(本発明においてなされたように)阻害されたとき、分析感度(長時間にわたる吸光度の変化として表わされる)は著しく増加することがわかる。
【0080】
図7は、レジオネラ属の半定量測定を示す。
図7の表によれば、サンプル中のレジオネラの濃度の階級は、リッター当たりのコロニー形成単位(cfu/L)で表わされ、キットにより発色された色に基づいて算出され得る。作り出される種々の色強度に対応する吸光度の異なる範囲は、光学的な読取りを必要とせずに視覚的に区別可能である。
【0081】
図8は、レジオネラの定量測定を示す。
図8の表は、培養(1)により得られる値と本発明の処理により得られる値との間でのレジオネラ濃度の対応を示す。定量的な実行(1)及び定量的な実行(2)の両方において、本発明によりサンプル中の所望の微生物の存在または量の確実な測定が可能になることを観察することができる。
【0082】
図9は、粒子の動的コーティングと比較した静的コーティングにおける非特異的な吸着に対する保護効果の比較を示す。
図9の表は、免疫磁性粒子の2つの異なるタイプのコーティングに対して、異なる濃度の大腸菌(Escherichia coli)をアッセイすることで得られる、405nmで読み取られる吸光度を示す。静的コーティングは、粒子(A)表面上のポリマーの共有結合に関連し、動的コーティングは、蛋白の吸着−脱離平衡の吸着分子(B)への強制シフトにより長時間持続する蛋白の非共有結合に関連する。後者は、本発明により実行される方法である。サンプル中の大腸菌(Escherichia coli)の濃度の識別能、及び上記濃度で得られる読取りの釣り合いは、本発明により実行される動的コーティングで良好である。
【0083】
図10は、非特異的な吸着に関し、免疫磁性粒子表面での、ブロッキング試薬の長時間持続する圧力の保護効果を示す。
図10の表は、抗大腸菌免疫磁性粒子表面での読取り抗体の非特異的な吸着に対応する信号の依存性を提示する。この表によれば、ブロッキング分子の吸着−脱離平衡は、維持されている(b)、あるいは吸着の方へシフトしている(a)。永続的なブロッキングストラテジーが分析中のブロッキング圧力の維持に基づくことにより、非特異的な吸着が顕著に低減する。それゆえ、ブランクとサンプルとの間の信号の差が顕著に大きくなるので、良好な感度が得られる。
【0084】
図11は、連続した捕捉により測定を改善する。
図11の表は、同じ水のサンプルでレジオネラ濃度を測定するための、本発明における2つの特定の実施形態間の比較を提示する。一方の実施形態(A)では、分析は単一の捕捉事象を含み、他方の実施形態(B)では、分析は3つの連続した捕捉事象を含む。結果から、Bにより、ブランクの信号を増加させることなくサンプルの信号を増加させることができ、アッセイ時間が増加しても検出をより高感度にすることが示された。
【0085】
図12は、免疫捕捉時間の増加による測定の改善を示す。
図12の表は、水のサンプルでレジオネラ濃度を測定するための、本発明における2つの特定の実施形態間の比較を提示する。一方の実施形態(a)では、分析は15分の捕捉事象を含み、他方の実施形態(b)では、分析は16時間の捕捉事象(一晩)を含む。結果から、bにより、ブランクの信号を増加させることなくサンプルの信号を増加させることができ、アッセイ時間が増加しても検出をより高感度にすることが示された。本発明により提案された2つの実施形態の何れの場合においても、信頼できる結果を招来した。
【0086】
図13は、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の検出における、死菌と生菌との間の識別能を示す。
図13の表は、レジオネラ ニューモフィラ生細胞及びレジオネラ ニューモフィラ死細胞を異なる濃度で含むサンプルを分析する際のキットにより得られた結果を提示する。図面は、本発明の結果として、どの程度、不活性化している死細胞はアッセイした濃度の何れにおいても検出されてない一方、生細胞は濃度に比例して検出されるかを示す。
【0087】
図14は、産業用水のサンプルの、PCRによる分析及び本発明による分析に関する定量結果の比較を示す。
図14の表は、2つのタイプの水サンプル中(冷却塔からのサンプル及び排水からのサンプル)のレジオネラ濃度を、プレート培養、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び本発明の方法により決定する分析の比較を示す。結果は、一貫性の度合いが高いことを示す。
【0088】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、サンプル中の微生物の、検出及び/またはインサイチュ(in situ)半定量の処理を提供する。この処理は、以下のステップを含む。
a)超常磁性粒子の懸濁液に、アッセイするサンプルを混合する。この超磁性粒子は、表面に結合して、測定される微生物に対し特異的な抗体を有する。抗体により占有されていない上記粒子の活性表面は、少なくとも1つのブロッキング試薬により占有されている。ブロッキング試薬は、上記懸濁液をサンプルとともに希釈する際に、ブロッキング分子の、抗体により占有されていない上記粒子表面に対する圧力を一定に保つことができるような、pH、イオン強度、及び濃度の条件で、上記表面に吸着される。よって、結合したブロッキング試薬と遊離しているブロッキング試薬との平衡は、常に、結合したブロッキング試薬の方へシフトしている。
【0089】
上記懸濁液は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び少なくとも1つのキレート剤を含み、抗原−抗体の相互作用に影響せずに、粒子の凝集を最小にしている。
b)微生物−磁性粒子複合体の形成に適した条件下で、上記混合物を所定の時間インキュベートする。
c)形成された微生物−磁性粒子複合体の分離及び凝縮、並びに上清除去のために磁界を加える。
d)洗浄された微生物−磁性粒子複合体を、少なくとも1つのタイプの過剰なブロッキング分子と、マーカーラベルされた二次抗体(酵素または蛍光体)とを含むpH緩衝液溶液に再懸濁する。
e)ラベルされた抗体−微生物−磁性粒子複合体を形成するために、所定の時間上記混合物をインキュベートする。
f)形成されたラベルされた抗体−微生物−磁性粒子複合体の分離及び凝縮のために磁界を加える。
g)上記粒子を洗浄し、二次抗体の残余分を取り除き、上清を除去する。
h)形成されたラベルされた抗体−微生物−磁性粒子複合体を、液体媒体に再懸濁する。この液体媒体は、マーカーとして作用する酵素による発色に必要な基質、吸着平衡が結合されたブロッキング試薬分子の方へシフトすることが可能になる濃度のブロッキング試薬、及び上記基質の1つまたはいくつかと競合する内在酵素に特異的な阻害剤を含む。
i)信号を発色するために、上記混合物を所定時間インキュベートする。
j)ラベルされた抗体−微生物−磁性粒子複合体の形成の結果生じる信号を検出し定量する。この信号は、求められる微生物の存在または定量に関連する。
【0090】
本発明は、ナノ粒子の使用の必要性がない技術創作により感度を増加させる。本発明は、むしろマイクロ粒子で、1cell/mL(1000cells/L)の感度を実現する。この階級は、従来技術においてナノ粒子の使用により実現される最大感度よりも高い。
【0091】
本発明において、「サンプル」は、微生物を含むことが予想されるものとして考慮される。上記サンプルは、一般的に、環境または食物の起源からなり、所定の場合では、例えば、唾液、気道分泌物、または肺組織といった生物学的流体である。
【0092】
本発明は、以下のステップにより一般的に準備されたものを使用する。
a)1%の濃度で表面にカルボキシル基を有する磁性粒子の懸濁液を準備する。
b)抗体と共有結合できるように、カルボキシル化された磁性粒子の懸濁液を化学処理し、粒子を活性化する。
c)表面に抗体が結合した免疫磁性粒子を得るために、活性化した磁性粒子に抗体を混合する。
d)抗体により占有されていない表面をブロックするために、ステップc)にて得られた免疫磁性粒子を処理する。
e)安定な懸濁液を得るために、ステップd)にて得られた、ブロックされた免疫磁性粒子を処理する。
【0093】
本発明の磁性粒子は、ポリマー、一般的には45−48%の磁性色素、好ましくは磁鉄鉱封入体を有するポリスチレンに基づいて形成される。これらは、球状タイプであり、直径の範囲が、0.5μmから2μmまで、好ましくは0.7μmから1.5μmまで、より好ましくは0.8μmから1.0μmまでである。これらは、特に、−NH
2基、−COOH基、または−OH基、好ましくは70−85μeq/gの−COOH基で、表面が化学的に官能化されている。他の支持体(例えばケミセル製の、例えば直径が200−400nmオーダーの磁性粒子(ナノ粒子)を含む磁性流体)は、同様の形式で活性化され得る。
【0094】
上述の方法の一実施形態では、ステップb)の処理は、エチレンジカルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム(スルホ−NMS)で実施する。スルホ−NMSを用いることで、水溶性EDCは、磁性粒子のカルボキシル基に活性化したエステル官能基を形成する。スルホ−NMSエステルは、抗体のアミノ基に速やかに反応する活性親水性基である。
【0095】
本発明は、環境サンプルまたは食物サンプル中の所望の微生物の検出または定量のための、再利用可能な分析装置を提供する。分析装置は、基体(2)と2つの側方の斜面(3)とを含む支持体(1)、磁石(5)を支持し上記支持体に対し磁石を変位させる可動軸(4)、締め具(7)の形態の少なくとも1つの留め具、及び上記基体上で静止し締め具(7)の形態の上記留め具により位置が固定された少なくとも1つのキュベット(6)を備えている。所望の微生物を含む、あるいは潜在的に含み、検出または定量の全てのステップが発生するサンプルは、キュベットに塗布される。これらステップは、(a)選択的に検出または定量する微生物を対象とする識別生体分子に感作する超常磁性粒子の懸濁液で、サンプル中に存在する、あるいは潜在的に存在する所望の微生物を選択的に捕捉及び分離するためのアッセイ混合物を形成するステップであって、上記アッセイ混合物は、非特異的な吸着及び粒子間の凝集から粒子を保護する組成物の捕捉媒体を取り込むステップ、(b)上記識別生体分子が所望の微生物への結合するに十分な条件下で、上記アッセイ混合物をインキュベートし、粒子−微生物複合体を形成するステップ、(c)磁界を加えることにより、粒子−微生物複合体を含む、粒子を全て分離するステップ、(d)以降の分析ステップで潜在的に干渉する成分を取り除き、非特異的な吸着及び粒子間の凝集から粒子を保護する洗浄媒体で、粒子を全て洗浄するステップ、(e)(i)選択的に検出または定量する微生物を対象とする読取り生体分子、及び(ii)非特異的な吸着及び粒子間の凝集から粒子を保護する組成物のラベリング媒体を含む、アッセイ混合物を、洗浄された上記粒子の再懸濁により形成するステップ、(d)上記読取り分子の結合が可能になる十分な条件下で、上記アッセイ混合物をインキュベートし、粒子−微生物−読取り分子複合体を形成するステップ、(e)磁界を加えることにより、粒子−微生物−読取り分子複合体を含む、粒子を全て分離するステップ、(f)粒子−微生物複合体に結合していない読取り分子を取り除くために十分な条件下で、非特異的な吸着及び粒子間の凝集から粒子を保護する媒体で粒子を全て洗浄するステップ、及び(e)サンプル中の測定対象である細胞のタイプに起因する干渉を取り除く組成物の読取り媒体中の、上記粒子−微生物−読取り分子複合体の存在または量を測定するステップを含む。
【0096】
本発明では、抗体は、特定のタイプに限定されず、測定する微生物に対し特異的な、従来技術で知られる、いかなるタイプの抗体または断片が使用され得る。ポリクローナル光体、モノクローナル抗体、組み換え型抗体等を含む。抗体は、微生物の種、または測定される微生物の遺伝型(この場合、例えば食物中の大腸菌 O157:1−17といった特定の混入菌の測定に有効である)に対し特異的であり得る。あるいは、抗体は、微生物の属、科、または目全てと反応し得る。この場合、一般的な混入があり特定生物の混入がない場合に微生物を測定するときに有効である。
【0097】
特異性が高い、あるいは低い抗体の製造方法は、当業者にとって知られている。一般的に、本発明の方法は、水溶液または懸濁液中の少なくとも1つの微生物の検出に用いられる。それゆえ、上記方法は、水溶液または懸濁液に抗体で被覆された細粒を混合することを含む。抗体の例は、例えばBionova Cientifia, S. L. の抗体といった市場で入手可能なものである。ポリクローナル抗体は、実際に種々の抗体の集合体であるので、一般的に、上記変化が細菌の生細胞表面における抗原の発現の変化を緩和させ得るように、本発明の方法に用いられる。例えばレジオネラの検出の場合、免疫原としてレジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株、ATCC#33152の全細胞を用いたウサギ抗体が、対応する場合で用いられる。細粒に用いられる各抗体に適した量は、ルーチン実験を用いて当業者により容易に決定し得る。
【0098】
本発明の一態様では、ステップe)の処理は、ブロックされた免疫磁性粒子に、ステップc)で用いた余剰量のブロッキング試薬、殺菌試薬、静菌試薬、界面活性剤、及びキレート試薬を含む溶液を混合することにより実行される。
【0099】
上記ブロッキング試薬は、とりわけ中でも、ウシ血清アルブミン(BSA)、牛乳カゼイン粉末、溶解状態の牛乳カゼイン、水冷の魚皮ゼラチン、豚皮ゼラチン、スキムミルク粉末、ポリデキストラン等であり得る。
【0100】
上記殺菌試薬は、とりわけ中でも、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、好ましくはアジ化ナトリウムであり得る。
【0101】
上記静菌試薬は、とりわけ中でも、p−ニトロフェニル−ジ−クロロアセトアミドプロパンジオール(クロラムフェニコール)、スルファニルアミド、2,4−ジアミノ−5−(3,4,5−トリメトキシベンジル)ピリミジン(トリメトプリム)、好ましくは2−(エチルマーキュロメルカプト)安息香酸ナトリウム塩(チメロサール)であり得る。
【0102】
上記界面活性剤は、必須には、例えば、ポリエトキシル化アルキルフェノール、ポリエトキシル化脂肪アルコール、ポリエトキシル化脂肪酸、アルカノールアミン、または縮合物等といった非イオン性界面活性剤、好ましくはソルビタンモノウラレート(Tween20)であり得る。
【0103】
上記キレート試薬は、とりわけ中でも、2,2’−ビピリジル、ジメルカプトプロパノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジオキシ−ジエチレン−ジニトリロ−四酢酸、エチレン−グリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、オルト−フェナントロリン、サリチル酸、及びトリエタノールアミン(TEA)、 好ましくはEDTAであり得る。
【0104】
特定の形態では、上記ブロッキング試薬はウシ血清アルブミン(BSA)であり、静菌試薬はチメロサールであり、殺菌試薬はアジ化ナトリウムであり、界面活性剤はソルビタンモノウラレートであり、キレート試薬はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0105】
上述の方法の形態では、ステップg)で、ペルオキシダーゼと結合した抗体を安定化するために、例えばチメロサールといった防腐剤が添加される。ペルオキシダーゼとの反応に用いる補基質の自己酸化を遅延させるために、弱い2ナトリウムリン酸塩が用いられる。リン酸−クエン酸緩衝液に溶解して、2ナトリウムリン酸塩を他の補基質に混合するに際し、ペルオキシダーゼ活性の最適pHは、基質の自己酸化の程度がわずかであり、かつペルオキシダーゼに利用できる濃度が最小であり自己酸化を無視できるレベルから開始するように、元に戻される。補基質と弱塩との混合物は、補基質がペルオキシダーゼと接触したときに最終的に補基質がリン酸−クエン酸緩衝液に混合され、最小の自己酸化の初期レベル及びペルオキシダーゼの最適pHで反応が起こるように、既に安定になり得ると考えられる。
【0106】
上述の方法の形態では、ステップh)で、例えば3−アミノ−1,2,4−トリアゾールといった、ペルオキシダーゼと競合する内因性酵素の阻害剤が添加される。3−アミノ−1,2,4−トリアゾールは、発色基質(the development substrate)(過酸化水素)に対しペルオキシダーゼと競合し得る微生物のカタラーゼを選択的に不活性化するが、ペルオキシダーゼを阻害しない。他の可能性は、カタラーゼにより認識されずペルオキシダーゼにより認識される、例えば過酸化尿素といった、置換した過酸化物を用いることである。
【0107】
抗体により占有されていない粒子表面をブロックすることにより、一方では、サンプル中に存在する他の分子の粒子上での吸着、すなわち所望の微生物の捕捉を妨害し得る非特異的な吸着(偽陰性を有利にすること)が防止され、他方では、捕捉された微生物の読取りに用いられる分子の粒子上での吸着(偽陽性を有利にすること)も防止される。
【0108】
ブロッキング分子は、固定された抗体が表面上で傾き、認識部位が外部媒体に対し露出することなく吸着され得ることを防止するので、磁性粒子に固定された抗体の吸着も回避される。粒子同士の凝集は減少し、粒子を含む、あるいはその中で粒子を取り扱う容器の壁といった、他の表面に対する粒子の接着が防止される。
【0109】
このようにして得られた免疫磁性粒子は、懸濁液中で長期間安定であり、磁界を印加することにより速やかに集まり、磁界を取り除いて軽く攪拌することで容易に再分散する。
【0110】
本発明は、測定、及び、さらにはサンプルの接触から分析結果を得るまでの測定プロセス中に適用される、粒子懸濁液を安定化する手段により、定量的な取り扱いを達成し、上記条件は、長時間持続する。
【0111】
この安定化は、粒子数が分析プロセス中減少せず、かつ測定対象であり微生物と異なり、その測定に干渉し得る他の微生物または分子に粒子が結合しないように、決して粒子がその含んでいる表面に接着しないことを意味する。
【0112】
この特徴は、抗体(微生物を捕捉するために用いられるリガンド)により占有されていない粒子表面のブロッキングが必要である。ブロックされていない表面は、サンプル中に存在する他の分子または微生物が相互作用し測定対象の微生物との相互作用を伴って干渉するように、ある種の反応性を有している。ポリマー(例えばデキスタラン)といったブロッキング試薬を用い、その粒子表面への共有結合によって粒子または支持体をコートする方法がある。しかし、これらの技術により、コーティングの程度の再現性ある制御を達成させることができず、結果物がかなり変動し得る、あるいは粒子に塗布するために妥当であるように、表面の抗体の部分をコートすることがむしろ容易である。
【0113】
免疫アッセイの測定の特定のステップでは、ELISAプレートといった固定化された支持体の表面を保護するために、ブロッキング試薬を使用することが知られている。ブロッキングステップは、ブロッキング試薬を含む緩衝液でプレートを一時インキュベートすることにより実行される。ブロッキング分子の一部は吸着され、未吸着の分子は、その後洗浄され、測定のための発色へ進む。洗浄緩衝液の組成において、塩化ナトリウム及びリン酸塩は、共通して存在する。しかし、粒子表面が脱保護され、分析中に起こる可能性がある非特異的な相互作用に有利に働き得るので、これら化合物(特に塩化ナトリウム)は、まれに(in little time)、特定のタンパクといった、ブロッキング試薬から脱離される。
【0114】
明らかに、抗体で活性化した磁性粒子といった、遊離した支持体を使用することにより、抗体と(微生物中に存在する)抗原との間の衝突を増加させ、これら衝突の全部でない一部が抗原−抗体の相互作用となり、所定時間での微生物の捕捉を最も効率よくすることができる。しかし、サンプル中の、粒子表面との反応基を有する他の分子は、同様の様式で有利に働き得る。これらの不要な相互作用は、所望の抗原−抗体の相互作用に干渉し得る。
【0115】
その一方で、固定された支持体(例えばELISAプレート)及び遊離支持体(粒子または球体)の両方において、洗浄ステップは、洗浄緩衝液の組成、または単純な希釈及びそれに続くブロッキング試薬の吸収平衡のシフトにより、表面保護の度合いに影響を与える。そして、上記表面が分析中同じ度合いで保護されていることは確かでない。
【0116】
懸濁液中の粒子といった遊離支持体において、保護対象の表面は、懸濁液中で自由に運動する粒子の表面である。文献では、この問題は、ポリアルコール型の合成ポリマーを適用することにより、対処されている(approached)。これらのポリマー化合物は、粒子製造中のステップで即座に添加され、表面に直接結合する。本発明では、常に、ブロッキング分子の吸着は有利に働く。これを受けて、吸着平衡は、常に、ブロッキング分子吸着の方へシフトしたままである。好ましくは、このブロッキング試薬は、タンパクである。
【0117】
支持体表面上の合成ポリマーの堆積及び共有結合に伴う反応制御は再現性がないので、達成されるコーティングの度合いは、かなり変動し得、実際には、コート対象の粒子表面に固定された抗体の一部分(必ずしも同一部分とは限らないが)に対し、共通して、抗原との相互作用能が欠損している。
【0118】
このような事例となる理由は、用いられる化学成分(chemistry)が常に、抗体が有する、非常に多様化した反応基に影響を与え、ポリマーが反応基のいくつかと相互作用するが避けられないこと、または、ポリマーが、完全または部分的にいくつかの抗体上に堆積され、これにより抗原との相互作用に立体障害が生じることである。
【0119】
それゆえ、再現性があり、かつ微生物の測定プロセスのための環境条件の変化に依存しない粒子の不活化を達成することが必要である。
【0120】
本発明は、上記問題を解決し、決定プロセス中、インキュベーション、洗浄、及び分離の両方においてブロッキング試薬を一定圧力に維持することに基づくプロセスにより、上記不活化を達成する。一時表面から離れた(abandoning)ブロッキング試薬分子の数は、常に、その位置を占有するブロッキング試薬分子の相当数により補償される。これは、次の態様を考慮することを含む。
a)免疫試薬(固定化された抗体を有する粒子)の製造プロセスの最終ステップとして、分析実行用サンプルに対し予見量の懸濁液を添加するに際し、得られる希釈率がブロッキング試薬の最適濃度を維持し得る濃度で、ブロッキング試薬を添加すること。
b)分析の全ステップでブロッキング試薬の最適濃度が維持されるように、分析に伴う全溶液にブロッキング試薬を導入すること。
c)表面へのブロッキング試薬の相互作用は、共有結合である必要がなく、むしろ弱い多点相互作用に基づいており、吸着平衡が支持体との結合へシフトした支持体に対する吸着を確立すること。これは、抗体を有する活性化粒子の「動的な」保護システムであり、これにより、ポリマー合成及び共有結合の導入の必要がなくなる。
【0121】
よって、本発明は、次の効果が長時間持続する頑強な測定プロセスを提供する。
1)粒子表面が脱保護されず、これにより非特異的な吸着が最小になる。
2)抗体は、支持体が固定点の周囲を回転運動するに際し、支持体の近傍を運動し得ず、実際の支持体に吸着されており、これにより生物学的活性の欠損がなくなる。
3)粒子の取り扱い、抗体を有する粒子、免疫複合体を有する粒子、及び(測定用の)ラベルされた免疫複合体を有する粒子は、常に定量的であり、ELISA、または従来の磁性粒子で起こったことと違って、組成に関わらず、測定の可変性の影響を排除する。
【0122】
非常に興味深い態様は、非特異的な吸着に対する粒子表面の保護を持続したことにより、粒子に捕捉された微生物と読取り抗体との衝突の可能性を増加させるために、低いイオン強度条件下で読取り抗体の量を増加させることが可能になる点である。これが可能になるのは、低いイオン強度条件下において、読取り抗体と、捕捉された微生物表面に露出した抗原との間の静電反発力が減少することが理由である。よって、読取り抗体は、抗原の近傍であっても運動し得、短時間で有利な衝突の回数を増加させることができる。それと同時に、ブロッキング分子と捕捉抗体に占有されていない粒子表面との相互作用は、有利に働く。それゆえ、非特異的な吸着に対する粒子表面の効率的な保護、及び抗体−抗原の効率的な相互作用が同時に起こる。したがって、高い信号/ノイズ比を維持して、測定感度が増加する。
【0123】
非常に興味深い他の態様は、制御された一定の環境下で粒子を定量的に取り扱うことにより、大容量のサンプルの、取り扱い測定感度を増加させることができる点である。サンプルの容量を増加させることにより、感度を増加させることが可能になる。このことは、ELISA技術といった他の免疫アッセイ技術において、非常に重大な限界である。
【0124】
本発明では、同じ粒子に同じサンプルの(容積で等量の)負荷をいくつかかけることによっても感度を増加させることが可能である。所定のサンプル負荷で捕捉を実行したとき、非常に多くの微生物細胞が存在し、粒子と微生物との間の接触に非常に有利に働き、微生物の捕捉が抗原−抗体の相互作用により起こることが初期に知られている。
【0125】
一般的に、時間経過に従い、微生物を捕捉した粒子集合体に有利に、(微生物と結合していない)「空の」粒子の集合体が減少し、サンプル中の遊離している微生物の数が減少する。そして、微生物が既に微生物細胞を結合し他の細胞の侵入が困難になること、及びサンプル中の遊離した微生物が少なくなり有利に衝突する可能性が小さくなることにより、粒子は、次第に捕捉効率が小さくなる。この理由により、免疫アッセイにおけるインキュベーション時間は、通常長く、例えば30分と3時間との間である。
【0126】
特定の形態では、本発明は、インキュベーション時間を変更させない、あるいはインキュベーション時間を減少させても、捕捉効率を向上させるプロセスを提供する。このプロセスは、等量かつ等質のアリコート(負荷)にサンプルを分割し、時間t1未満で抗体で活性化した磁性粒子に第1の負荷を接触させること、上記粒子を保持しサンプルを除去しサンプルの新たな負荷に置換し、同じ粒子(粒子表面の一部が占有されているので、粒子がいくつかの細胞を捕捉する能力を有するという意味では消耗している)を再び同じ濃度の遊離細菌を有する環境に置き、時間t1よりも大きい時間t2で新たな相互作用を有利に働かせること、及び必要とする多くの負荷について同じことを行うことからなる。このとき、T=t1+t2+・・・+tn,ただしTは全免疫捕捉時間である(
図11)。
【0127】
他の特定の形態では、本発明は、粒子表面の持続的な保護により非特異的な吸着が増加しないので、単一の免疫捕捉ステップの時間を増加させることで所望の微生物の測定感度を増加させるプロセスを提供する(
図12)。
【0128】
よって、本発明は、より容量が多いサンプル及び/または微生物濃度が同じである連続した負荷を用いること、プロセス中に不要な吸着に対し絶え間なく保護する支持体を用いることができるので、非常に顕著な様式で感度を増加させるプロセスを提供する。
【0129】
本発明は、微生物測定用キットを提供する。上記測定の範囲は、半定量または定量であり得る。半定量は、結果がサンプル中の微生物濃度の階級の概算であるものとして理解される。上記キットにより、単純でかつ迅速な形式で、水または食物のサンプル中の所望の微生物を選択的な捕捉、微生物の濃縮及びサンプル中の残りの要素からの分離、並びに微生物の比色分析測定が可能になり、インサイチュ測定が可能になる。上記キットには、所望の微生物に対する抗体がその表面に固定された超常磁性粒子を用いる。この抗体は、供給される反応媒体内で、サンプル中に存在する、あるいは存在する可能性がある所望の微生物に対し特異的に結合する。携帯機器の取り扱いが容易であることにより、反応キュベットに離接して(closer to and away from)磁石を移動させることができる。これにより、免疫磁性捕捉分析中に粒子を保持し再懸濁すること、所望の微生物を分離し濃縮することが可能になる。最後に、キュベット内の反応媒体は、色を発色する。この色は、色チャートと比較され、所望の微生物の存在を視覚的に測定し、サンプル採取と結果取得との間の約60分間でその階級を概算する。
【0130】
特定の形態では、上記キットは、インサイチュ分析のための手動の携帯機器と、1組の組成物、すなわち分析を実行するための反応媒体とを備え、全てが冷却プレートを組み込んだ容器内に配されている。分析の全ステップは、上記機器内で行われる。この機器は、2つのキュベット及び磁石を有する支持体と、結果を正確に解釈するための色チャートとを備えている。上記組成物すなわち反応媒体は、以下のとおりである。
a)(上記捕捉抗体が共有結合により表面に固定され、ブロッキング試薬が上記抗体により占有されていない表面に非共有結合により結合している)免疫磁性粒子を、同じブロッキング試薬、キレート試薬、界面活性剤、殺菌試薬、及び静菌試薬を含む液体媒体中で懸濁した液を含む、所望の微生物を捕捉するための組成物。上記組成物は、濃度150mMのリン酸ナトリウム緩衝液に相当する高いイオン強度を有している。
b)例えば過酸化水素または蛍光基質といった読取り分子に会合する読取り抗体を、ブロッキング試薬、及び微生物に存在し上記読取り分子に競合する酵素の活性阻害試薬を含有する溶液中に含む、所望の微生物用の標識組成物。上記組成物は、50mMリン酸−クエン酸緩衝液及びpH6.0に相当する中程度のイオン強度を有している。
c)読取り反応の発色に必要な酸化可能な基質を、上記基質の自己酸化を低減するための弱いリン酸二ナトリウムを含有する溶液中に含む所望の微生物の読取り組成物。
d)読取り反応の発色に必要な酸化基質を、pH6.0、濃度50mMのリン酸−クエン酸緩衝液溶液中に含む、所望の微生物の読取り組成物。
e)1Mと5Mとの間の濃度、好ましくは3Mで強酸または強塩基を含む、読取り反応の停止組成物。
f)濃度25mM、pH7.0のリン酸ナトリウム溶液に相当する低いイオン強度で、ブロッキング試薬、界面活性剤、及び静菌試薬を含む、免疫磁性粒子を洗浄するための組成物。
【0131】
特定の形態では、本発明は、抗レジオネラ免疫磁性粒子の使い捨てアリコートの利用に基づいて水中のレジオネラ濃度をオンラインでモニタリングする自動バイオセンサ設備を提供する。
【0132】
水中のレジオネラ濃度の連続的なモニタリングのためのバイオセンサの構成を以下に記載する。上記バイオセンサは、
i)所望の微生物(この例ではレジオネラ)の捕捉反応及び標識反応のためのセル、
ii)選択された波長での吸光度、または選択された放出長での蛍光を読み取るためのセル、
iii)光学変換器(レジオネラの場合では分光光度計、または分光蛍光光度計)、
iv)種々の液体を取り扱うための流体回路、
v)分析の逐次制御及び信号の収集のためのマイクロプロセッサ、
vi)データ処理及び上記マイクロプロセッサとの通信処理のためのコンピュータ、
vii)攪拌装置、
viii)磁気保持装置、
ix)温度自動調節装置
を含む集積システムである。
【0133】
図2は、上記バイオセンサの構成を示す。種々のセルにおいて、一方では、所望の微生物の捕捉及び標識が起き、他方では、得られた信号の読取りが行われる。上記流体回路は、液体の取り扱いを可能にする蠕動ポンプが構成されている。磁気保持装置により、反応セル内での免疫磁性粒子の取り扱いが可能になる。反応セル内では、所望の微生物の捕捉及び標識が行われる。信号の読取りは、上記変換器の要素に組み込まれた他の異なるセル内で、流れのもとで行われる。抗原−抗体相互作用に有利な温度、及び読取り分子の活性に適した温度に維持するために、上記反応セル及び磁気保持装置は、恒温化コンパートメント(B)に配されている。同様に(in turn)、上記コンパートメントは、上記分析に伴う試薬及び溶液の保存に有利な温度で、より大きな他の恒温化コンパートメント(A)の内部にある。
【0134】
各測定サイクルにおいて、サンプル中に存在する所望の微生物の捕捉、分離及び濃縮、並びにそれに続く読み取りが行われる。所望の微生物のない溶液を含むブランクの測定は、サイクルの第1ステップで行われる。そして、サンプル中の所望の微生物の測定は、第2ステップで行われる。上記機器は、上記ブランクの読取り及びサンプルの読取りを記録し(
図3)、両者の差、サンプル中の微生物濃度に相関する値を計算する(
図4)。最終的には、
図2に示した自動装置(下からブラケット間で同一である種々の集積部分)を用いて、各場合において、上記ブランク及び上記サンプルの両方に対し、次順の所定量の次の組成物が添加される。(a)所定量のサンプルは、蠕動ポンプ(6)により、サンプル採取点から、恒温化コンパートメント(B)に配された反応セル(11)へ運搬される。(b)免疫磁性粒子の懸濁液を含む組成物のアリコートは、攪拌装置により均質化された後、蠕動ポンプ(3)により、対応する貯蔵タンク(15)から反応セル(11)へ運搬される。c)サンプル及び免疫磁性粒子の混合物は、一定の時間間隔で所定期間、攪拌装置(17)により均質化され、これにより、所望の微生物が、抗原−抗体の相互作用によって免疫磁性粒子に捕捉され得、粒子−微生物複合体を形成する。d)遊離している免疫磁性粒子、及び所望の微生物と複合体を形成している磁性粒子の両方が反応セル(11)の領域内で保持されるような、磁気保持装置(12)の活性化による磁界印加。e)蠕動ポンプ(8)による、上清の液体の残留物への排出。f)磁気保持装置(12)の不活性化による、磁界印加の解除。g)所望の微生物に対し直接的な抗体(例えば過酸化水素といった読取り分子と会合するので読取り抗体と呼ばれる)を含む所定量の組成物は、蠕動ポンプ(2)により、その貯蔵タンク(14)から反応セル(11)へ運搬される。h)反応セル(11)内の上記組成物及び磁性粒子の混合液は、一定の時間間隔で所定期間、攪拌装置(17)により均質化され、これにより、上記読取り抗体は、免疫磁性粒子上で捕捉された微生物と結合し得る。i)遊離している免疫磁性粒子、並びに所望の微生物及び読取り抗体と複合体を形成している磁性粒子の両方が反応セル(11)の領域内で保持されるような、磁気保持装置(12)の活性化による磁界印加。j)蠕動ポンプ(8)による、上清の液体の残留物への排出。k)磁気保持装置(12)の不活性化による、磁界印加の解除。l)免疫磁性粒子の洗浄が可能な所定量の組成物は、蠕動ポンプ(7)により、その貯蔵タンク(20)から反応セル(11)へ運搬される。ll)免疫磁性粒子と洗浄組成物との混合液は、攪拌装置(17)で均質化される。m)洗浄された免疫磁性粒子が反応セル(11)の領域内で保持されるような、磁気保持装置(12)の活性化による磁界印加。n)上清の液体は、蠕動ポンプ(8)により、反応セル(11)から残留物へ排出される。o)磁気保持装置(12)の不活性化による、磁界印加の解除。p)ペルオキシダーゼ酵素の基質を含む所定量の組成物(読取り組成物)は、蠕動ポンプ(4)により、その貯蔵タンク(13)から反応セル(11)へ運搬される。q)磁性粒子及び上記組成物の混合液は、所定期間、攪拌装置(17)により均質化され、この混合物中では、ペルオキシダーゼが触媒となり、水溶性着色産物が得られる。r)停止試薬を含む所定量の組成物は、蠕動ポンプ(5)により、その貯蔵タンク(21)から反応セル(11)へ運搬され、読取り分子により引き起こされる反応を停止する。rr)免疫磁性粒子が反応セル(11)の領域内で保持されるような、磁気保持装置(12)の活性化による磁界印加。s)上清は、読取りセル(18)を通過する流れの下に通過させながら、蠕動ポンプ(9)により、反応セル(11)から残留物へ運搬される。上記セルは、所望の微生物の存在または量を測定するために、上記上清の通過中に吸光度読取りの記録を可能にする光学変換器に収納されている。
【0135】
上記ブランクは、サンプルに先立って、サンプルと同じ形式で分析される。これを受けて、上記ブランクは、蠕動ポンプ(1)により、その貯蔵タンク(22)から反応セル(11)へ運搬される。
【0136】
最終的に、ブランクに対して得られた読取りは、サンプルに対して得られた読取りと比較される。上記比較は、サンプルに対し記録された吸光度の最大値から、ブランクから記録された吸光度の最大値を差し引くことからなる。
【0137】
測定サイクルが終了すると、蠕動ポンプ(10)により、クリーニング溶液をその貯蔵タンク(19)から反応セル(11)へ通過させて、バイオセンサの液体回路が洗浄される。反応セル(11)中に含まれるクリーニング溶液は、攪拌装置(17)により、所定時間攪拌され、蠕動ポンプ(9)によって、読取りセル(18)を介して残留物へ通過される。
【0138】
いくつかの実施例を以下に記載する。ただし、多くの他のものは、当業者に自明な様式で、発明の範囲内に備えられている。
【0139】
〔実施例〕
〔実施例1:清浄水サンプル中のレジオネラの検出〕
ポリスチレンからなり、その表面にカルボキシル基を有する超常磁性粒子(平均粒径0.9μm、45.7%磁性顔料−Estapor Merck France)を用いた。抗レジオネラポリクローナル抗体は、これら粒子に固定された。免疫磁性粒子は、1%BSAとともに、25mMリン酸緩衝液(pH7.0)で、緩やかに攪拌して、12時間インキュベートされた。結果物である免疫磁性粒子は、10%BSA、1.0%Tween20、0.01%チメロサール、及び0.1%アジ化ナトリウムを含む150mMリン酸緩衝液溶液中で、1/40の比率で懸濁された。最終的な免疫磁性粒子の懸濁液は、
図1に示されかつ上述されたものと類似する、インサイチュ分析用の携帯機器に配置される。
【0140】
キュベットから磁石を離して、容量1.0mLの免疫磁性粒子懸濁液がキュベット内部に配置された。そして、容量10.0mLの冷却塔から直接的な水サンプルが、免疫磁性粒子に添加され、上記機器による緩やかな攪拌により均質化された混合物を形成し、この混合物を室温で15分間インキュベートした。このインキュベーション時間が経過した後、磁石は、キュベットの外壁に接触し、キュベットの内壁で免疫磁性粒子が磁石付近の領域に引き付けられ保持されるまで、近接して移動する。上清は、磁界により保持された免疫磁性粒子を巻き込まないように、キュベットから排出される。
【0141】
そして、キュベット内で保持された免疫磁性粒子は、容量1.0mLの50mMリン酸−クエン酸緩衝液溶液(pH5.0)に再懸濁される。この緩衝液溶液は、0.1%BSA、0.01%チメロサール、及び4.0μg/mLの、ペルオキシダーゼと会合する抗レジオネラ属ポリクローナル抗体を含有する。この混合物は、機器の緩やかな攪拌により均質化され、そして、室温で10分間インキュベートされる。インキュベート後、磁石は、キュベットの外壁に接触し、キュベットの内壁で免疫磁性粒子が磁石付近の領域に引き付けられ保持されるまで、近接して移動する。上清は、磁界により保持された免疫磁性粒子を巻き込まないように、キュベットから排出される。
【0142】
キュベットから磁石を離して、免疫磁性粒子は、10%BSA、0.1%Tween20、及び0.1%チメロサールを含有する、容量4.0mLの25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)に再懸濁することにより洗浄される。そして、再度磁石を近接して移動しキュベットに接触させることにより、上記洗浄された免疫磁性粒子を保持し、上清を除去した。この洗浄ステップは、2回以上実行される。
【0143】
最後の洗浄後、磁界が解除される、すなわち、磁石がキュベットから離れるように移動される。免疫磁性粒子は、容量1.0mLの50mMリン酸−クエン酸緩衝液溶液(pH5.0)に再懸濁される。この緩衝液溶液は、0.5%過酸化尿素及び0.1%アミノサリチル酸を含有する。この混合物は、機器の緩やかな攪拌により均質化され、そして、室温で2分間インキュベートされる。この間、ペルオキシダーゼは、抗レジオネラ抗体と会合しており(言い換えれば、免疫磁性粒子及びレジオネラ細胞により形成された複合体に結合しており)、過酸化尿素によるアミノサリチル酸の酸化を触媒する。この反応により、機器内の混合物が呈色する。
【0144】
上記インキュベーションが経過後、上記混合物に、0.15mLの3M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液が添加され、ペルオキシダーゼにより触媒された上記反応を停止する。インキュベーション後1分経過後、磁石は、キュベットの外壁に接触し、キュベットの内壁で免疫磁性粒子が磁石付近の領域に引き付けられ保持されるまで、近接して移動する。
【0145】
レジオネラの検出において、呈色することは陽性の結果として解釈され、呈色しないことは陰性の結果として解釈される。最終的に得られた呈色強度により、レジオネラ濃度(リッター当たりのコロニー形成単位(cfu/L)で表わされる)の階級を視覚的に概算することができる(
図7)。
【0146】
波長550nmでの吸光度の読取りを実行するため、上清が除去され得る。ブランクで読み取る吸光度について、上記吸光度は、サンプル中のレジオネラ濃度に相関する(
図2)。
【0147】
この吸光度は、免疫磁性粒子により捕捉されたレジオネラの量に比例する、言い換えれば、サンプルに存在するレジオネラの量に比例する。
【0148】
サンプル当たり15レプリカで、種々のレジオネラ濃度のサンプルに対して得られた結果は、定性的及び定量的の両方において、培養法と本発明で提供された方法との間で一致している(
図8)。
【0149】
これらの結果から、サンプルからの生きている微生物の検出及び/もしくは半定量、または定量に対する、本発明により提供されるプロセスの有効性が確認される。
【0150】
〔実施例2:(冷却塔及び排水)産業用水の定量分析〕
本発明の実施例1により提供されるプロセスに基づき、冷却塔からのサンプル及び排水からのサンプルという、2つのタイプの水サンプルが分析された。各タイプのサンプルに対して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、プレート培養を用いてレジオネラ濃度が測定され、分析は本発明の方法により実行され、550nmでの吸光度の読取りを得た。本発明の方法でアッセイされた各サンプルの容量は、10.0mLであり、サンプルは前処理されていない。
【0151】
図14からわかるように、得られた結果は、アッセイされた2つのタイプのサンプルについて、サンプル中のレジオネラ濃度と550nmでの吸光度との間で一貫性の度合いが高いことが示す。
【0152】
よって、本発明により提供された方法は、種々のタイプの水についてレジオネラ濃度の確実な概算を得ることができ、用いられる他の技術に対し顕著な利点を有し、特に結果を得る時間が1時間未満であり、インサイチュ分析を実行することができ、かつ制御された実験室環境での専門的な監視を必要としない。
【0153】
〔実施例3:自動バイオセンサによるレジオネラの定量〕
この実施例は、サンプル当たり7レプリカで種々のレジオネラ濃度の清浄水サンプルに対し、上述した自動バイオセンサ設備(
図3)を用いることにより得られた結果を提示する。この自動バイオセンサ設備は、抗レジオネラ免疫磁性粒子の使い捨てアリコートの利用に基づいて水中のレジオネラ濃度をオンラインでモニタリングするためのものである。
【0154】
各測定サイクルは、ブランクの分析及びサンプルの分析を含み、対応する信号は、自動バイオセンサ(
図4)により記録される。サンプルの信号からブランクの信号を差し引いた結果得られた吸光度の値は、清浄水サンプル中のレジオネラ濃度と高い相関がある(相関係数r=+0.99)(
図2)。
【0155】
図5に示されるように、培養法、及び自動バイオセンサに対し本発明で提供された方法により得られた結果は、類似するものである。測定サイクルは、分析サンプル当たり所要時間が1時間である。
【0156】
このことから、上記バイオセンサは、主に危険設備において、水中のレジオネラ濃度のモニタリング及び監視、並びに殺生剤量またはその他の訂正措置に適応し比例した形式で適用することにも用いられ得ることが示唆される。特に、上記バイオセンサは、危険設備が、長時間保持された感染性レジオネラの濃度に達するのを防止し、関連する危険の可能性を低減するために用いられ得る。これらの濃度は、冷却塔及び類似の装置において、10
4−10
5cfu/Lに達する、あるいは超える濃度で確立することが報告されている(World Health Organization, “Legionella and the prevention of legionellosis”, 2007)。これらの濃度は、12〜15日間の培養により測定される。危険設備においてレジオネラの濃度が数分で10または100倍になり得ること(Bentham & Broadbent, “The Influence of the Sessile Population in the Legionella Colonization of Cooling Towers in: Legionella - Current Status and Emerging Perspectives, Eds. Barbaree, J. M., Breiman, R.F. and Dufour, A.P., ASM Press. Washington, DC, 1993)を考慮すると、培養法は、防止目的で用いられ得ず、むしろ検査道具としてのみ用いられ得る。
【0157】
一方、本発明により提示されたバイオセンサは、専門的な監視を必要とせずに、レジオネラ濃度をオンラインでモニタリングするために危険設備に組み込まれ得る。これにより、レジオネラに関連する生物学的危険に対し効率的な防止ストラテジーが可能になる。
【0158】
〔実施例4:粒子の動的なコーティングと比較した、静的コーティングの非特異的な吸着に対する保護効果の比較〕
2つの異なるタイプの免疫粒子表面の挿入について、保護効果の比較が実行された。一方は、デキストラン−アスパラギン酸−アルデヒド(DAA)の共有結合によるものであり、他方は、本発明にて後に記載されている、タンパク、ウシ血清アルブミン(BSA)の非共有結合によるものであり、免疫磁性粒子の微環境において、その濃度は過度に維持され、上記粒子は予め上記ブロッキング試薬でブロックされている。
【0159】
2つのタイプの抗大腸菌免疫磁性粒子に対し、分離して、特定化されたプロトコールが適用される。これらのうち1つでは、上記粒子は、BSAでブロックされる。もう1つの場合では、粒子は、DAAでブロックされる。全ての場合において、分析中、BSAは、過剰に維持されている。各タイプの粒子に対し、大腸菌が0cfu/mL、10cfu/mL、10
2cfu/mL、及び10
3cfu/mLである4つのサンプルで、上記プロトコールが適用される。
【0160】
この比較は、次のプロトコールに従い実行される。i)4.0mLのサンプル(全サンプルは、150mMリン酸(pH7.0)に2%BSAを含む)に抗大腸菌免疫磁性粒子の懸濁液25μLを添加する。ii)室温で15分間緩やかに攪拌する。iii)免疫磁性粒子を保持し上清を除去する。iv)150mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで連続して3回洗浄し、最後に25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで洗浄する。v)抗大腸菌ウサギ抗体を含む(希釈率1/200)、1.0mLの25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで、免疫磁性粒子を再懸濁する。vi)室温で15分間緩やかに攪拌する。vii)150mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで連続して3回洗浄し、最後に25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで洗浄する。viii)ペルオキシダーゼと会合した抗ウサギ抗体を含む(希釈率1/200)、1.0mLの25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで、免疫磁性粒子を再懸濁する。ix)室温で15分間緩やかに攪拌する。x)150mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで連続して3回洗浄し、最後に25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)及び2%BSAで洗浄する。xi)50mMリン酸緩衝液(pH6.0)及び0.03%H
2O
2の5mMABTS溶液1mLで免疫粒子を再懸濁する。xii)長時間、405nmでの吸光度を読み取る。
【0161】
図9に示されるように、本発明で提案したように、磁性粒子をBSAでブロックし分析中一定のBSA圧を受けさせることにより、アッセイされた大腸菌濃度を全て識別することができる。一方、磁性粒子をDAAでブロックすることにより、アッセイされた大腸菌濃度を識別することができない。
【0162】
このことから、DAAは、非特異的な吸着から粒子を保護するが、固定化された抗体の認識部位をも被覆し、抗原−抗体の相互作用及びこれによる大腸菌細胞の捕捉を妨げることが示唆された。
【0163】
〔実施例5:読取り分子の非特異的な吸着に対する免疫粒子の連続的な保護の効果〕
免疫粒子の2つのアリコート25μLに対し、分離して、上記プロトコールが適用された。両方とも最初にBSAでブロックされたが、一方の場合ではプロトコールの種々のステップで上記緩衝液(1%BSA)を用い、他方の場合ではBSAを用いていない。
【0164】
分析の全てのステップにおいて免疫粒子の濃度をおよそ過剰に維持して、免疫磁性粒子での読取り分子の非特異的な吸着に関する、ブロッキング試薬ウシ血清アルブミン(BSA)存在下での効果を測定した。上記分析は、次のプロトコールに従って実行された。i)抗大腸菌ヤギ抗体を有する免疫磁性粒子25μLを、容量1.0mLの150mMリン酸緩衝液(pH7.0)で懸濁する。ii)室温で15分間緩やかに攪拌する。iii)免疫磁性粒子を保持し上清を除去する。iv)150mMリン酸緩衝液(pH7.0)の、抗大腸菌ウサギ抗体の1/200溶液1.0mLで、免疫磁性粒子を再懸濁する。v)室温で30分間緩やかに攪拌する。vi)25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)で連続して5回洗浄し、免疫磁性粒子を保持し上清を除去する。vii)ペルオキシダーゼと会合した、抗ウサギ読取り抗体の1/200溶液で免疫磁性粒子を再懸濁する。viii)室温で15分間緩やかに攪拌する。ix)25mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)で連続して3回洗浄し、免疫磁性粒子を保持し上清を除去する。x)1mMABTS及び0.03%H
2O
2の溶液1mLで免疫粒子を再懸濁する。
【0165】
分析中ブロッキング試薬の圧力を一定にしたプロトコールにより処理され、ブロックされた免疫磁性粒子は、ブロッキング試薬を含まないこと以外同じプロトコールにより処理されブロックされた免疫磁性粒子に対し、読取り分子の非特異的な吸着の減少を示した(
図10)。
【0166】
このことから、ブロッキング試薬のない緩衝液を用いた洗浄ステップ、及びサンプルの希釈においては、初期に粒子表面に吸着したブロッキング分子が媒体へ放出されることが示唆される。よって、読取り分子と会合した抗体が非特異的な形式で吸着している反応基は、露出され得る。これら条件では、上記分析の最終的な読取りの重要な部分は、上記非特異的な吸着に起因し、信号/ノイズ比が顕著に減少する。
【0167】
それゆえ、非特異的な形式で読取り分子を吸着しない免疫磁性粒子を生成するためには、上記粒子にブロッキング試薬を予め吸着し上記相互作用をブロックするだけでは不十分である。表面に対しブロッキング試薬の最大負荷を得るために、分析中、粒子の微環境において上記ブロッキング試薬を十分な濃度に維持することが必要である。これにより、洗浄及び希釈に対し保護効果を維持することができる。
【0168】
〔実施例6:活性内因性カタラーゼ存在下での、磁性粒子に捕捉された大腸菌(Escherichia coli)の読取り依存性〕
図6は、1.1×10
6cfu/mLを含む懸濁液から磁性粒子で捕捉した大腸菌(Escherichia coli)のカタラーゼ活性の阻害を伴う、反応(比色)の読取り率の依存性を示す。
【0169】
2つのサンプルを調製した。サンプル全てについて最終濃度が1.1×10
6cfu/mLになるように、各サンプルは、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む20mMリン酸緩衝液溶液(pH7.0)15.0mLに対し、1.1×10
7cfu/mLの大腸菌(Escherichia coli)懸濁液1.5mLを含む。抗大腸菌ポリクローナル抗体を有する、容量25.0μLの磁性粒子が、各サンプルに添加される。上記混合物は、室温で90分間の緩やかな攪拌下で、インキュベートされる。コントロールは、同じ形式で調製され、大腸菌を含まない点だけが上記サンプルと相違する。
【0170】
インキュベーション後、コントロール及びサンプルは、容量5.0mLの150mMリン酸緩衝液溶液(2%BSA含有)で3回洗浄される。3回目の洗浄後、コントロール及びサンプルについて、遊離した磁性粒子及び大腸菌細胞と磁性粒子との間で形成された免疫複合体を含むペレットは、抗大腸菌ウサギ抗体の1/200溶液(容量1.0mL)で再懸濁される。上記混合物は、室温で15分間の緩やかな攪拌下で、インキュベートされる。
【0171】
インキュベーション後、ペレットは、容量5.0mLの150mMリン酸緩衝液溶液(2%BSA含有)で3回洗浄される。ここで、2つのサンプルのうち1つについて、ペレットは、BSAを含む150mMリン酸緩衝液(pH7.0)に3.0mg/mLのアジ化ナトリウムを含む溶液1.0mLで再懸濁される。インキュベーション後、ペレットは、容量5.0mLの150mMリン酸緩衝液溶液(2%BSA含有)で徹底的に洗浄される(6回以上の洗浄)。最後に、各ペレットは、ペルオキシダーゼと会合した抗ウサギポリクローナル抗体(容量1.0mL)で再懸濁される。上記混合物は、室温で15分間の緩やかな攪拌下で、インキュベートされる。インキュベーション後、ペレットは、容量5.0mLの150mMリン酸緩衝液溶液(2%BSA含有)で3回洗浄される。
【0172】
ペルオキシダーゼ活性のアッセイを実行するために、各ペレットは、5mMABTS及び50mMリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(容量1.0mL)内に置かれ、15μLの0.035%H
2O
2が添加される。反応は全て、4分間モニタリングされ、各分で405nmで吸光度を読み取る。
【0173】
アジ化ナトリウムは、磁性粒子で捕捉した大腸菌(Escherichia coli)に存在するカタラーゼ活性を阻害する。しかし、アジ化ナトリウムは、抗ウサギポリクローナル抗体と会合する、言い換えれば捕捉された細胞の表面に結合する抗大腸菌ウサギポリクローナル抗体と結合する、ペルオキシダーゼも阻害する。よって、ペルオキシダーゼと会合する抗体溶液を添加する前に、免疫捕捉されインキュベートされた大腸菌細胞を含むペレットを、アジ化ナトリウムで徹底的に洗浄することが非常に重要である。
【0174】
図5では、カタラーゼが阻害されていないサンプルは、四角の符号で示されており、丸の符号で示されたカタラーゼ活性が阻害されたサンプルと細菌濃度が同じである。
【0175】
この結果から、捕捉された微生物の内因性酵素が阻害されていない場合、上記活性は、読取り分子と競合し得、捕捉された微生物の生存細胞量に比例して、サンプル中の微生物濃度を過小に見積もり得る。
【0176】
この効果は、分析で用いられ得るサンプルの容量に影響を与える。分析の検出限界を低減するためには、サンプルの容量を増加させ、サンプル中の微生物の総細胞数をより多くすることが最適である。しかし、これにより、読取り分子と競合する内因性酵素の量が増加し、偽陰性を得る、あるいは微生物濃度を過小に評価する可能性がより大きくなる。
【0177】
〔実施例7:連続的な捕捉による水中でのレジオネラの測定感度の向上〕
所望の微生物(この実施例ではレジオネラ)の免疫捕捉プロセス中、捕捉率は、必須に次の2つの要因によって、長時間にわたり減少した。
1)細菌が占有されている(細菌サイズを考えると、立体障害が引き起こされ得る)ので、細菌の結合点が次第に少なくなる。
2)媒体中の遊離レジオネラ濃度が長時間にわたり減少し、それに比例して衝突が少なくなるので、捕捉率が減少する。
【0178】
第1の点の解決策は、磁性粒子の濃度及び捕捉抗体の濃度を増加させることであり、これにより、より多くの、微生物の固定点の数を提供する。しかし、粒子における比特異的な吸着の活性表面は、増加する。
【0179】
第2の点の解決策は、免疫捕捉プロセスの時間を増加させ捕捉率の減少を補償することであり、長期間、免疫磁性粒子の表面が脱保護されていなければ、非特的な信号が増加せずにサンプルの信号が増加することが期待され得る。本発明の形態では、免疫捕捉ステップは、一晩の所要時間を有する(16hr)。
図12は、免疫捕捉ステップの時間を15分から16時間へ増加させたときに得られた結果を提示する。サンプルの信号は顕著に増加したが、ブランクの信号は増加しなかった。このことから、この時間中、免疫磁性粒子が非特異的な吸着に対する保護を欠損せずに、微生物の捕捉が起き続けていることが示唆される。
【0180】
本発明の他の形態では、レジオネラの測定は、各ステップでサンプルが新たなサンプルに置換されるように、免疫捕捉ステップの繰り返すことにより実行される。このプロセスは、各ステップにおける同一(one and the same)容量の新たなサンプルを対象とし、免疫磁性粒子の量(並びに、抗体及び潜在的な固定点の量)を一定に保つことである。第1の捕捉は、容量9.0mLで実行される。上清が除去され、新たなサンプル9.0mLのアリコートで捕捉が繰り返される。このプロセスは、3回繰り返される(全サンプル27.0mL)。そして、結果を比較したとき、捕捉プロセスにおいて、媒体中のレジオネラ濃度の影響が見られ得た。
図11は、水中のレジオネラ測定に対し、本発明における2つの可能な形態間の比較を提示する。上記2つの可能な形態は、単一捕捉(A)または連続した数回の捕捉(B)を含む測定に基づく。このプロセスにより、アッセイ時間が約40分増加し、60分から110分までになった。しかし、
図11に示されるように、サンプルの信号は、約50%増加し、ブランクの信号は、変化しないままであった。
【0181】
〔実施例8:レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の検出における、細菌の生細胞と死細胞との間の識別〕
レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の濃度が異なるサンプルが、本発明により提供された定量プロセスによって分析された。細菌を熱失活したサンプル、及びこのような失活が起こらず細菌細胞が生存したままであるサンプルという、2つのタイプのサンプルが区別された。上記生存は、培養によりチェックされ、対応するカウントを得る。
【0182】
上記アッセイを実行するために、容量9.0mLの細菌の各懸濁液、及び容量9.0mLのブランクが準備された。上記ブランク及びサンプルの両方について、実施例1に記載されたプロセスが適用された。結果を
図13に提示する。わかるように、失活した細胞は検出されない一方、生細胞は検出され、各懸濁液に対応する信号は、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の濃度に依存している。
【0183】
このことは、本発明にて提供されたプロセスは、危険設備での消毒処理の後先に、レジオネラの生菌濃度の迅速な評価を実行するために用いられ得ることを示唆する。そして、消毒処理の有効性及びその適用の適合性を測定するために用いられ得る。
【0184】
よって、本発明は、次に要約された既存の方法に対し種々の利点を提供すると結論付け得る。
a)本発明は、ナノ粒子の利用の必要性がなく、むしろマイクロ粒子を伴う技術的創造により感度を増加させ、ナノ粒子の利用により達成される最大感度よりも大きい階級である、感度1cell/mLを実現する。
b)このプロセスは、液体媒体に懸濁され、好ましくは測定対象の微生物に対するポリクローナル抗体が直接的かつ共有結合で固定された超常磁性粒子を得て用いることに基づく。液体媒体の組成物は、細粒の凝集を最小限にすること、非特異的な吸着を最小限にすること、及び分析されたサンプルの干渉を最小限にすることが同時にできる。そして、組成物の濃度は、分析されるサンプルの希釈に対するこれらの影響を維持することができる。
c)これにより、微生物と衝突する粒子の露出表面が常にあり粒子の取り扱いが定量的であることにより抗原−抗体の相互作用の可能性が高く、かつサンプルに存在する他の化学的または生物的要素との相互作用が減少する限り、免疫捕捉に基づく微生物の効率的な回収が可能になる。
d)機械装置を用いることで、半定量値によるインサイチュ測定、及び定量値による実験室での測定の両方を、1時間もかからない時間で実行することができる。自動バイオセンサを得るため、プロセスは自動化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【
図1】本発明において手動分析を行うために用いられる装置の構成を示す。
【
図2】本発明において自動分析を行うために用いられる自動バイオセンサの構成を示す。
【
図3】自動バイオセンサにて得られた、ブランク(レジオネラなし)の信号及びサンプル(レジオネラあり)の信号の記録を示す。
【
図4】吸光度と清浄水中のレジオネラの濃度との間の相関関係を示す。
【
図5】清浄水サンプルに対し、自動バイオセンサで得られた結果及び培養法で得られた結果を示す。
【
図6】その測定感度での捕捉した微生物の内因性活性の効果を示す。
【
図9】粒子の動的コーティングと比較した静的コーティングにおける非特異的な吸着に対する保護効果の比較を示す。
【
図10】非特異的な吸着に関し、免疫磁性粒子表面での、ブロッキング試薬の長時間持続する圧力の保護効果を示す。
【
図12】免疫捕捉時間の増加による測定の改善を示す。
【
図13】レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の検出における、死菌と生菌との間の識別能を示す。
【
図14】産業用水のサンプルの、PCRによる分析及び本発明による分析に関する定量結果の比較を示す。