【文献】
Ulrich Katscher et al,Transmit SENSE,Magnetic Resonance in Medicine,2003年 1月,vol.49, no.1,pp.144-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラン画像収集手段は、X=0、Y=0、Z=0の少なくとも1つの断面に対応するプラン画像データを収集するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図、
図2は、
図1に示すガントリ部の横断面図、
図3は
図1に示す送信部および送信用高周波アレイコイルの詳細構成図である。
【0015】
磁気共鳴イメージング装置1は、ガントリ部2および制御系3を備えている。ガントリ部2には、静磁場磁石4、傾斜磁場コイル5、送信用高周波アレイコイル6、受信用高周波アレイコイル7および天板8を備えた寝台9が設けられる。制御系3は、傾斜磁場駆動回路10、送信部11、受信部12、データ収集部13、シーケンスコントローラ14、コンピュータ15、コンソール16およびディスプレイ17を有する。
【0016】
静磁場磁石4は筒状であり、静磁場磁石4の内壁の内側に筒状の傾斜磁場コイル5が同軸状に配置される。傾斜磁場コイル5の内部には、送信用高周波アレイコイル6が配置され、送信用高周波アレイコイル6の内側に撮像領域が形成される。撮像領域には、寝台9の天板8がZ軸方向に移動可能に設けられる。また、天板8上には被検体がセットされる。被検体の周囲には、受信用高周波アレイコイル7が配置される。
【0017】
静磁場磁石4は、被検体に一様な静磁場を印加する機能を有する。傾斜磁場コイル5は、シーケンスコントローラ14からの制御信号に基づいて傾斜磁場駆動回路10から出力された駆動信号に従って、被検体に磁場強度がX, Y, Z方向にそれぞれ直線的に変化する傾斜磁場Gx, Gy, Gzを印加する機能を有する。
【0018】
送信用高周波アレイコイル6は、複数のコイル要素(例えばRFコイル1〜8)を備えている。
図2は、略長方形の8つのRFコイルを円筒状に配置した例を示している。送信用高周波アレイコイル6の各RFコイルは、シーケンスコントローラ14からの制御信号に基づいて送信部11から出力された高周波パルスに従って被検体に高周波磁場を印加する機能を有する。
【0019】
受信用高周波アレイコイル7は、複数の表面コイル(コイル要素)を備えている。各表面コイルは、被検体の所望の撮像領域からの磁気共鳴信号を収集可能な位置に配置される。
図1および
図2に示す例では、受信用高周波アレイコイル7は体部の撮像用に上部と下部の2つの部分から構成されている。すなわち、被検体を挟むように被検体の上下に受信用高周波アレイコイル7が配置されている。そして、受信用高周波アレイコイル7は、単一または複数の表面コイルを用いて被検体からの磁気共鳴信号を受信して、受信部12に出力する機能を備えている。
【0020】
傾斜磁場駆動回路10は、シーケンスコントローラ14からの制御信号に従って傾斜磁場コイル5に駆動信号を印加することにより、傾斜磁場コイル5を駆動させる機能を有する。
【0021】
送信部11は、磁気共鳴信号の受信用に同時に使用する送信用高周波アレイコイル6のRFコイルの数、すなわち送信チャネル数と同数の送信チャネルを有する。
図2は、送信部11および送信用高周波アレイコイル6が共に8つの送信チャネルを備えている例を示している。送信部11は、シーケンスコントローラ14からの制御信号に従って送信用高周波アレイコイル6の各RFコイルに高周波パルスを印加することにより、各RFコイルから高周波磁場信号を発生させる機能を有する。
【0022】
そのために、送信部11には、送信チャネル分の振幅位相制御ユニット20および送信アンプ21が設けられる。各振幅位相制御ユニット20の入力側は、シーケンスコントローラ14と接続され、出力側には対応する送信アンプ21が接続される。そして、各送信アンプ21の出力側に、対応する送信用のRFコイルが接続される。各振幅位相制御ユニット20はそれぞれシーケンスコントローラ14から出力された制御信号の振幅および位相を調整することにより高周波パルスを生成する機能と、生成した高周波パルスを対応する送信アンプ21に出力する機能とを有する。各送信アンプ21は、それぞれ対応する振幅位相制御ユニット20からの高周波パルスの強度を所定の強度に増幅して対応するRFコイルに出力する機能を有する。
【0023】
受信部12は、受信用高周波アレイコイル7が備える表面コイルの数に応じた数の受信チャネルを有する。そして、受信部12は、シーケンスコントローラ14による制御の下、複数の表面コイルから各受信チャネルに出力された磁気共鳴信号を受信して増幅および検波することにより受信データを生成する機能と、生成した受信データをデータ収集部13に出力する機能とを有する。
【0024】
データ収集部13は、シーケンスコントローラ14による制御の下、受信部12から出力された受信データを収集し、受信データのA/D (analog to digital)変換を行ってコンピュータ15に出力する機能を有する。
【0025】
シーケンスコントローラ14は、コンピュータ15からのパルスシーケンスを含む撮像条件情報に従って、傾斜磁場駆動回路10、送信部11、受信部12およびデータ収集部13に制御信号を与えることにより、傾斜磁場駆動回路10、送信部11、受信部12およびデータ収集部13を制御する機能を有する。
【0026】
コンソール16には、マウス、キーボード、キー等の入力装置が備えられる。コンソール16は、コンピュータ15に情報を入力する機能を有する。また、ディスプレイ17は、コンピュータ15から出力された画像信号を表示させる機能を有する。
【0027】
図4は、
図1に示すコンピュータ15の機能ブロック図である。
【0028】
コンピュータ15は、プログラムにより撮影条件設定部30、シーケンスコントローラ制御部31、k空間データベース32、画像再構成部33、画像データベース34および画像処理部35として機能する。尚、プログラムによらず、各種機能を有する回路を磁気共鳴イメージング装置1に設けてもよい。
【0029】
撮影条件設定部30は、コンソール16からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮影条件を設定し、設定した撮影条件をシーケンスコントローラ制御部31に与える機能を有する。そのために、撮影条件設定部30は、撮影条件の設定用画面をディスプレイ17に表示させる機能を備えている。また、撮影条件設定部30は、プラン画像条件設定部36、プラン画像補正部37および励起スライス設定部38を有する。
【0030】
プラン画像条件設定部36は、イメージングスキャンにおいて励起対象となるスライスと交わるスライス断面のプラン画像データ(パイロット画像データ)を収集するための撮影条件を設定する機能を有する。望ましくは、プラン画像データのスライス断面は、イメージングスキャンにおける励起スライス断面と直交する断面に設定される。さらに、望ましくは、プラン画像データのスライス断面は、互に直交する2つまたは3つの断面に設定される。例えば、スライス面の歪みが少ないX=0, Y=0, Z=0の3つの断面のうちの全てまたはいずれか1断面または2断面の撮像を行うことが有効である。また、平行な断面のマルチスライス撮像を行ってもよい。
【0031】
図5は、
図4に示すプラン画像条件設定部36により設定された撮影条件に従って収集されたプラン画像データをそのまま表示させた場合のプラン画像を示す図である。
【0032】
図5において縦軸はY軸方向を示し、横軸はZ軸方向を示す。
【0033】
イメージングスキャンにおけるスライス方向がZ軸方向である場合には、例えばYZ平面に平行なスライスのプラン画像データが収集される。しかし、傾斜磁場のYZ面内における直線性が不十分である場合に、プラン画像データをそのまま表示させると、
図5に示すように格子で示すような歪みのあるプラン画像が表示される。
【0034】
このような歪みのあるプラン画像上において、一点鎖線で示すようなY軸方向に直線的な励起スライスをイメージングスキャン用に設定し、Z軸方向のみの傾斜磁場を印加することによってスライス選択励起を行うと、実際に励起されるスライスは、傾斜磁場の非直線性の影響により歪むこととなる。従って、プラン画像の歪みに沿って点線で示すような湾曲したスライスを設定することが理想的となる。そのためには、2次元のスライス選択励起を行うことが必要となる。
【0035】
換言すれば、
図5に示すように歪んだプラン画像上においてY軸方向に直線的な励起スライスをイメージングスキャン用に設定すると、実際には点線で示すような湾曲したスライスが励起される。従って、一点鎖線で示すような直線性のあるスライスが実際に励起されるように湾曲した励起スライスを設定し、2次元のスライス選択励起を行うことが必要となる。
【0036】
尚、
図5には、YZ平面に平行なプラン画像を示したが、プラン画像がXZ平面に平行な画像またはオブリーク断面画像である場合についても同様である。
【0037】
そこでプラン画像補正部37には、プラン画像データにおける傾斜磁場の非直線性に起因する歪みの補正を行うことによって歪みが補正されたプラン画像データを生成する機能と、歪み補正後のプラン画像データをディスプレイ17に出力することによって、ディスプレイ17に歪み補正された歪みのないプラン画像を表示させる機能を有する。
【0038】
励起スライス設定部38は、ディスプレイ17に表示された歪み補正後のプラン画像上において、コンソール16からの指示情報に基づいてイメージングスキャン用に励起するスライスを撮影条件として設定する機能を有する。
【0039】
図6は、
図4に示す励起スライス設定部38により設定されたイメージングスキャン用の励起スライスの一例を示す図である。
【0040】
図6(a), (b)において縦軸はY軸方向を示し、横軸はZ軸方向を示す。また、
図6(a)は、ディスプレイ17に表示される歪み補正後のプラン画像上において設定された励起スライスを示し、
図6(b)は、制御用に設定される制御座標系における2次元の励起スライスを示す。
【0041】
図6(a)に示すように、プラン画像データに歪み補正処理を施すと、直交座標系のプラン画像をディスプレイ17にさせることができる。このため、ユーザは、直交座標系のプラン画像において、一点鎖線で示すようなY軸方向に直線的な所望の領域を励起スライスとして容易に設定することが可能となる。
図6(a)に示すような歪み補正後の座標系において設定された励起スライスは、
図6(b)に示す制御用の歪み補正前における座標系では、一点鎖線で示すように湾曲した2次元の局所励起スライスとなる。つまり、
図6(a)に示すような線形性を有するプラン画像上において直線的なスライス選択励起領域を設定することは、直線性が乏しく非線形性を有する傾斜磁場分布の影響下における制御用の直交座標軸系において
図6(b)に示すような湾曲した2次元局所スライス選択励起領域を設定したことに相当する。
【0042】
そのために、励起スライス設定部38は、歪み補正処理前後における座標位置間の幾何学的関係を記憶する機能と、歪み補正処理前後における座標位置間の関係に基づいて、歪み補正処理後におけるプラン画像上において設定された励起スライスの座標位置情報から、傾斜磁場の非直線性に適応して実際に励起すべき歪み補正前におけるプラン画像データ上の2次元的な励起スライスの座標位置情報を算出する機能を備えている。
【0043】
2次元的に湾曲したスライスを励起する局所スライス選択励起方法の方法は、公知の方法で行うことができる。一例として、Katscher U et al: Transmit SENSE. Magn Reson Med 49: 144-150 (2003)に局所スライス選択励起方法の詳細が記載されている。この方法は、単一のRF送信コイルを用いて局所スライス選択励起を行うと高周波パルスのパルス長が長くなり、磁場不均一性の影響を受けて励起特性が劣化する恐れがあるという問題を回避するために、送信用高周波アレイコイル6を用いて局所スライス選択励起を行うものである。
【0044】
そこで、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置1は、送信用高周波アレイコイル6が有する複数のRFコイルを用いて高周波パルスを送信することにより、局所スライス選択励起を行うことができるように構成されている。尚、他の方法で、局所スライス選択励起を行う場合には、単一のRFコイルや全身用(whole body)コイルを高周波パルスの送信用に用いてもよい。
【0045】
図7は、
図4に示す撮影条件設定部30において設定されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0046】
図7において、RF1, RF2, …, RF 8は、8チャネルのRFコイルからそれぞれ送信される高周波パルスを示し、Gx, Gy, Gzは、それぞれX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に印加される傾斜磁場パルスを示す。
【0047】
図7は、スピンエコー(SE: spin echo)シーケンスにおいて、8チャネルの送信用RFコイルを用いて局所スライス選択励起を行う場合の例を示している。この場合、各RFコイルから互に波形の異なる2次元選択励起用90度高周波パルスがそれぞれ送信される。90度高周波パルスのパルス波形は、励起すべきスライスの位置、厚さ、枚数、形状および/または曲率に応じて決定される。換言すれば、目的とする位置および厚さの2次元スライスが励起されるように、90度高周波パルスのパルス波形が制御される。
【0048】
さらに、90度高周波パルスに続いて、各RFコイルからそれぞれ波形が同一であるが各RFコイルのXY平面内における配置角度を考慮して位相が調整された180度高周波パルスが送信される。この180度高周波パルスは、1次元選択励起用の通常の選択励起パルスとなる。90度高周波パルスおよび180度高周波パルスの波形や位相の制御は、送信部11の振幅位相制御ユニット20における振幅制御および位相制御によって行うことができる。
【0049】
そして、リードアウト用の傾斜磁場が、Y軸等の所定の印加軸方向に印加されることにより信号観測時間において磁気共鳴信号がエコー信号として観測される。
【0050】
次に、コンピュータ15の他の機能について説明する。
【0051】
シーケンスコントローラ制御部31は、コンソール16からの指示情報に基づいて、シーケンスコントローラ14にパルスシーケンスを含む撮影条件を与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部31は、データ収集部13において収集された磁気共鳴信号の受信データを取得してk空間データベース32に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース32には、受信データがk空間データとして保存される。
【0052】
画像再構成部33は、k空間データベース32からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transformation)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース34に書き込む機能を有する。このため、画像データベース34には、画像再構成部33において再構成された画像データが保存される。
【0053】
画像処理部35は、画像データベース34から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する機能と、生成した表示用の画像データをディスプレイ17に表示させる機能を有する。尚、複数の表面コイルを用いて磁気共鳴信号が受信された場合には、通常、各表面コイルに対応するk空間データがそれぞれ独立に画像再構成処理される。このため、複数の表面コイルに対応する複数の画像データには、例えば、各画像データの2乗和の平方根を計算することにより単一の画像データを生成する合成処理が画像処理部35において施される。
【0054】
次に磁気共鳴イメージング装置1の動作および作用について説明する。
【0055】
図8は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置1において歪み補正されたプラン画像上において2次元の所望のスライスを設定することにより歪みのないスライス選択励起を行って歪みが低減された被検体の画像を得るための手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0056】
まず、予め寝台9に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0057】
次に、ステップS1においてプラン画像条件設定部36においてイメージングスキャンに先立つプレスキャンとしてのプラン画像用のスキャンのための励起面等の撮影条件が設定される。そして、設定された撮影条件に従って、プラン画像用のスキャンが実行される。これにより、データ収集部13においてプラン画像生成用の磁気共鳴信号の受信データが収集され、コンピュータ15のシーケンスコントローラ制御部31を通じてk空間データベース32に保存される。次に、画像再構成部33は、k空間データベース32からプラン画像生成用のk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことによりプラン画像データを生成し、生成したプラン画像データを画像データベース34に書き込む。
【0058】
しかしながら、傾斜磁場の非線形性の影響によりプラン画像データをそのまま表示させると、
図5に示すような歪みのあるプラン画像となる。
【0059】
そこで、ステップS2において、プラン画像補正部37には、プラン画像データにおける傾斜磁場の非直線性に起因する面内の歪みの補正を行うことによって歪みが補正されたプラン画像データを生成する。
【0060】
次に、ステップS3において、プラン画像補正部37には、歪み補正後のプラン画像データをディスプレイ17に出力することによって、ディスプレイ17に歪み補正された歪みのないプラン画像を表示させる。
【0061】
このため、ステップS4において、ユーザは、ディスプレイ17を参照しつつコンソール16の操作によって、歪み補正後におけるプラン画像上においてイメージングスキャン用の2次元スライス選択励起領域を湾曲のない直線的な領域として設定することができる。すなわち、歪み補正されたプラン画像上に通常の長方形のスライス選択励起領域を設定することができる。
【0062】
次に、ステップS5において、励起スライス設定部38は、コンソール16からの指示情報に基づいてイメージングスキャン用の制御座標系におけるスライス選択励起領域を求める。すなわち、励起スライス設定部38は、コンソール16からの歪み補正後におけるプラン画像データ上におけるスライス選択励起領域の位置座標情報を取得して、幾何学的関係に基づいて歪み補正前の座標系に相当する制御座標系における2次元スライス選択励起領域の位置座標を算出する。算出された2次元スライス選択励起領域は、イメージングスキャン用の2次元スライス選択励起領域として撮影条件設定部30において設定される。
【0063】
次に、ステップS6において、撮影条件設定部30において2次元スライス選択励起領域の励起を行うために複数のRFコイルにそれぞれ印加すべき高周波パルスのパルス波形および位相の計算が行われる。つまり、傾斜磁場分布の影響を受けた直交座標軸系において2次元スライス選択励起領域を励起できるような2次元高周波励起パルスが設計される。その際、各RFコイルにより形成されるそれぞれの高周波磁場分布が参照され、複数の高周波磁場分布が合成されることによって形成される高周波磁場が目的とする高周波磁場となるように、各RFコイルにそれぞれ印加すべき高周波パルスのパルス波形および位相が決定される。
【0064】
次に、ステップS7において、設定された高周波パルスを組み込んだパルスシーケンスに従ってイメージングスキャンが実行される。
【0065】
すなわち、コンソール16からシーケンスコントローラ制御部31にスキャン開示指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部31は撮影条件設定部30から2次元スライス選択励起用の高周波パルスを組み込んだパルスシーケンスを取得してシーケンスコントローラ14に与える。シーケンスコントローラ14は、シーケンスコントローラ制御部31から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場コイル駆動回路、送信部11、受信部12およびデータ収集部13を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、送信用高周波アレイコイル6の各RFコイルからそれぞれ所定の振幅および位相の高周波信号を発生させる。
【0066】
このため、被検体P内において励起された2次元スライス選択領域における核磁気共鳴により生じた磁気共鳴信号が、受信用高周波アレイコイル7の各表面コイルにより受信されて受信部12に与えられる。受信部12は、磁気共鳴信号の増幅および検波を行って受信データを生成し、生成した受信データをデータ収集部13に出力する。また、データ収集部13は、受信データを収集し、A/D変換を行ってコンピュータ15に出力する。そうすると、シーケンスコントローラ制御部31は、データ収集部13において収集された磁気共鳴信号の受信データをk空間データベース32に形成されたk空間に配置する。
【0067】
次に、ステップS8において、画像再構成部33は、k空間データベース32から受信データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する。得られた画像データは画像データベース34に書き込まれる。
【0068】
次に、ステップS9において、画像処理部35は、画像データベース34から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する。例えば、画像データのスライス面内における歪み補正処理や、複数の表面コイルに対応する複数の画像データの合成処理が行われる。
【0069】
次に、ステップS10において、画像処理部35は、表示用の画像データをディスプレイ17に表示させる。このため、ユーザは、2次元的に湾曲して励起されたが、傾斜磁場の非線形性の影響によって直線的に励起されたスライスから収集された磁気共鳴信号に基づく良好な画質の画像データを診断用に得ることができる。
【0070】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置1は、傾斜磁場のリニアリティが悪い場合であっても2次元スライス選択励起技術によって平らで歪みのないスライス面を選択励起できるようにしたものである。さらに、磁気共鳴イメージング装置1は、2次元スライス選択励起のための高周波パルスの設計に際して、パルス長を短くするために、送信用高周波アレイコイル6を用いて高周波パルスのparallel transmission技術を用いるようにしたものである。すなわち、磁気共鳴イメージング装置1では、スライス厚やスライス位置に応じてRFパルスのパルス波形や位相が設計されて印加される。
【0071】
このため、磁気共鳴イメージング装置1によれば、傾斜磁場に十分な直線性が得られない場合であっても、位置ずれや歪みが低減されたスライス選択励起を行うことにより、寝台9の天板8を移動させるというような作業を伴うことなく十分に広い撮像にわたってより高画質な画像データを得ることができる。さらに、画像データのスライス面内の歪みについては、従来の歪み補正技術を用いて補正することができるため、3次元方向についての傾斜磁場の非線形性による影響を除去することが可能となる。
【0072】
尚、以上では、1枚のプラン画像における2次元歪みを補正し、2次元のスライス選択励起を行って、歪みのないスライスを励起させる例を示した。しかし、厳密にいえば、
図5に示すようなY-Z面の歪み方は、通常Xの位置によって変わる。つまり、Y軸方向およびZ軸方向の傾斜磁場Gy, Gzの非直線性によってスライスの湾曲の仕方はXの位置によって変化する。このようなY軸方向およびZ軸方向の傾斜磁場Gy, Gz下に置いて平らなスライス励起を行うためには3次元の局所スライス励起が必要となる。3次元の局所励起を行う場合でも、上述した2次元の局所励起を行う場合と基本的な手順は変わらない。
【0073】
図9は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置1において3次元の局所スライス選択励起を行う場合におけるSEシーケンスの例を示す図である。
【0074】
図9において、RF1, RF2, …, RF 8は、8チャネルのRFコイルからそれぞれ送信される高周波パルスを示し、Gx, Gy, Gzは、それぞれX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に印加される傾斜磁場パルスを示す。
【0075】
図9に示すSEシーケンスでは、90度RF励起パルスがRFコイルごとに波形が異なる3次元の選択励起パルスになっている。また、180度RFパルスは1次元の選択スライス励起パルスになっているが、非選択スライス励起パルスにしてもよい。
【0076】
3次元90度RF選択励起パルスのパルス波形は、励起すべき3次元スライスの位置、厚さ、枚数、形状および/または曲率に応じて決定される。換言すれば、目的とする位置および厚さの3次元スライスが励起されるように、3次元90度RF選択励起パルスのパルス波形が制御される。
【0077】
また、180度RFパルスの波形はRFコイルごとに同一であるが、位相は各RFコイルのXY平面内における配置角度を考慮して調整される。3次元90度RFパルスおよび180度RFパルスの波形や位相の制御は、送信部11の振幅位相制御ユニット20における振幅制御および位相制御によって行うことができる。
【0078】
そして、リードアウト用の傾斜磁場が、X軸等の所定の印加軸方向に印加されることにより信号観測時間において磁気共鳴信号がエコー信号として観測される。