特許第5675045号(P5675045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5675045-バッテリシステム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5675045
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】バッテリシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20150205BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20150205BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02H7/00 L
   H02H7/18
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2008-301743(P2008-301743)
(22)【出願日】2008年11月26日
(65)【公開番号】特開2010-130768(P2010-130768A)
(43)【公開日】2010年6月10日
【審査請求日】2011年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 準也
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦穂
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−153827(JP,A)
【文献】 特開2007−006559(JP,A)
【文献】 特開2000−340264(JP,A)
【文献】 特開2008−182779(JP,A)
【文献】 特開2003−040050(JP,A)
【文献】 特開平11−206025(JP,A)
【文献】 特開2003−061209(JP,A)
【文献】 特開平09−284981(JP,A)
【文献】 特開2006−278003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00
H02H7/00
H02H7/18
H01M10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電できる電池(1)と、
前記電池(1)と直列に接続され、それ自体に流れる過電流で溶断されるヒューズ(8)と、
前記電池(1)の出力側に直列に接続されるリレー(2)と、
前記リレー(2)をオンからオフに制御する電流遮断回路(4)とを備え、
前記電流遮断回路(4)は、
前記電池(1)の許容充放電電流の最大値を越えた電流が流れる過電流を検出する検出部と、
該検出部が過電流を検出してから前記リレー(2)がオフ状態になるまでの遅延時間を特定するタイマ部(24)とを含み、
前記遅延時間経過後に前記リレー(2)をオンからオフに切り替えた際に、前記リレー(2)が溶着せずに電流を遮断できる最大電流を最大遮断電流とし、
前記ヒューズ(8)は、前記遅延時間における溶断電流が、前記リレー(2)の最大遮断電流以下であって、前記電池(1)の許容充放電電流の最大値以上の値に設定されることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリシステムにおいて、
前記電池(1)は、充電できる複数の電池セル(5)を含み、
さらに、前記電池セル(5)に内蔵され、過電流または過充電で電池セル(5)の内部接続回路を遮断する内部電流遮断部を備え、
前記ヒューズの溶断特性が、前記内部電流遮断部の遮断特性よりも小さい電流で溶断される特性であることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリシステムにおいて、
前記内部電流遮断部は、前記タイマ部(24)の遅延時間における遮断電流をリレー(2)の最大遮断電流よりも大きく設定されることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項4】
前記電池セル(5)の内部電流遮断部がCID(Current Interrupt Device カレントインタラプトデバイス)である請求項2または3に記載されるバッテリシステム。
【請求項5】
前記電池(1)の出力電圧が10V以上で500V以下である請求項1
ないし4のいずれかに記載されるバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適なバッテリシステムに関し、とくに、過電流を検出して電池の電流をヒューズとリレーで遮断するバッテリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の過電流を防止するためにヒューズとリレーとを直列に接続しているバッテリシステムは開発されている。(特許文献1参照)
特許文献1のバッテリシステムは、図1に示すように、電池91を2組の電池ブロック95に分割して、電池ブロック95をヒューズ98を介して直列に接続している。さらに、電池91の出力側にはリレー92を接続している。このバッテリシステムは、走行用バッテリに過電流が流れるとヒューズ98を溶断して電池91の電流を遮断する。さらに、このバッテリシステムは、リレー92のオンオフを制御する制御回路94でリレー92をオフに切り換えて、電池91の電流を遮断する。バッテリシステムの制御回路94は、電池91の電流を検出する電流検出回路99を備えており、検出電流で電池91の充放電を管理している。電流検出回路99は、電池91を正常に充放電する電流範囲、たとえば車両用のバッテリシステムにあっては、200A以下の電流を検出している。電池にこの電流よりも大きな電流が流れると、すなわち電池に異常な過電流が流れると、リレーをオフに切り換えて電池の電流を遮断している。図1のバッテリシステムは、過電流でヒューズ98を溶断し、もしくは、過電流でリレー92をオフに切り換えることで高い安全性を実現する。
【特許文献1】特開2008−193776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ただ、図1に示すバッテリシステムは、電池91の過電流でヒューズ98を溶断し、また、過電流でリレー92をオフに切り換えることができないことがある。それは、過電流を検出してリレーをオフに制御するとき、リレーの接点が大電流で溶着してオフに切り換えできなくなることがあるからである。リレーは、最大遮断電流を超える電流を遮断しようとすると、遮断時に発生するアークで接点が溶着することがある。このため、図1に示すバッテリシステムは、制御回路94が電池91の過電流を検出してリレー92をオフに制御するとき、過電流が最大遮断電流よりも大きいとリレー92の接点が溶着して電流を遮断できなくなる弊害がある。
【0004】
本発明の第1の目的は、以上の弊害を避けることを目的とするものであって、本発明の大切な目的は、リレーの接点を溶着させることなく電池の電流を確実に遮断できるバッテリシステムを提供することにある。
【0005】
さらに、電池は異常な充電状態になると電流を遮断するCID(Current Interrupt Device カレントインタラプトデバイス)等の内部電流遮断部を備えることがある。この内部電流遮断部は、電池が異常な充電状態になったときに電流を遮断して、電池の安全性を確保する。たとえば、内部電流遮断部のCIDは、電池の内圧が異常に高くなったときに電流を遮断して電池の安全性を確保するものである。CIDが動作して電流を遮断するのは、電池が過充電されて内圧が異常に上昇した状態であるから、CIDが電流を遮断する状態は、電池が過充電された状態を保持してしまうこととなる。したがって、CIDは安全性を確保する装置ではあるが、その動作は極力少なくすることが大切である。ところがCIDは電流遮断するように設計されているため、電池構造中、比較的電流耐量が低くなっている。そのため過大な電流によりCIDが電流を遮断してしまうことがある。
【0006】
本発明の第2の目的は、以上の欠点を解決する、すなわち電池のCIDを動作させることなく、ヒューズやリレーで電池の過電流を確実に遮断できるバッテリシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1のバッテリシステムは、充電できる電池1と、この電池1と直列に接続されてそれ自体に流れる過電流で溶断されるヒューズ8と、電池1の出力側に直列に接続してなるリレー2と、電池1の過電流を検出してリレー2をオンからオフに制御する電流遮断回路4とを備えている。電流遮断回路4は、電池1の過電流を検出してリレー2をオンからオフに切り換えるまでの遅延時間を特定するタイマ部24を備えている。ヒューズ8は、タイマ部24の遅延時間における溶断電流を、リレー2の最大遮断電流以下であって、電池1の許容充放電電流の最大値よりも大きく設定している。このバッテリシステムは、電池1にリレー2の最大遮断電流よりも大きな過電流が流れる状態において、タイマ部24の遅延時間内ではヒューズ8が溶断され、遅延時間が経過したタイミングでは電流遮断回路4がリレー2をオンからオフに切り換える。
【0008】
以上のバッテリシステムは、リレーの接点を溶着することなく、リレーで電池の過電流を確実に遮断し、さらにヒューズによっても電池の過電流を確実に遮断できる特徴がある。それは、以上のバッテリシステムが、電池の過電流を検出してリレーをオンからオフに切り換えるまでに遅延時間を設け、この遅延時間におけるヒューズの溶断電流をリレーの最大遮断電流以下であって、電池の許容充放電電流の最大値よりも大きく設定しているからである。このバッテリシステムは、電池にリレーの最大遮断電流よりも大きな過電流が流れる状態においては、遅延時間内ではヒューズが溶断されて遮断すると共に、遅延時間が経過したタイミングではリレーをオフに切り換えて遮断する。したがって、リレーの接点を溶着することなく、リレーとヒューズの両方で電池の過電流を確実に安全に遮断できる。逆に、過電流が遅延時間以上に継続する場合は、ヒューズの溶断特性よりも低い電流であるが、リレーの最大遮断電流よりは低いため、リレーを溶着させることなく電流を遮断することが可能である。
【0009】
本発明の請求項2のバッテリシステムは、充電できる複数の電池セル5を備える電池1と、この電池1と直列に接続されてそれ自体に流れる過電流で溶断されるヒューズ8と、電池セル5に設けられて、過電流または過充電で電池セル5の内部接続回路を遮断する内部電流遮断部とを備えている。ヒューズ8の溶断特性は、内部電流遮断部の遮断特性よりも小さい電流で溶断する特性に設定している。このバッテリシステムは、電池1に過電流が流れる状態において、電池セル5に内蔵される内部電流遮断部よりもヒューズ8が先に溶断される。
【0010】
本発明の請求項3のバッテリシステムは、充電できる複数の電池セル5を備える電池1と、この電池1の出力側に直列に接続してなるリレー2と、電池1の過電流を検出してリレー2をオンからオフに制御する電流遮断回路4と、電池セル5に内蔵されて、過電流または過充電で電池セル5の内部接続回路を遮断する内部電流遮断部とを備えている。電流遮断回路4は、電池1の過電流を検出してリレー2をオンからオフに切り換えるまでの遅延時間を特定するタイマ部24を備えている。内部電流遮断部は、タイマ部24の遅延時間における遮断電流をリレー2の最大遮断電流よりも大きく設定している。このバッテリシステムは、電池1に過電流が流れる状態において、内部電流遮断部が電流を遮断しない状態で、リレー2がオンからオフに切り換えられて電池1の電流を遮断する。
【0011】
以上のバッテリシステムは、電池セルに内蔵される内部電流遮断部を動作させることなく、ヒューズやリレーで電池の過電流を確実に遮断できる特徴がある。それは、以上のバッテリシステムが、電池の内部電流遮断部が電流を遮断するよりも先に、ヒューズやリレーで電池の電流を遮断するからである。
【0012】
本発明のバッテリシステムは、電池セル5の内部電流遮断部をCID(Current Interrupt Device カレントインタラプトデバイス)とすることができる。
【0013】
さらに、本発明のバッテリシステムは、電池1の出力電圧を10V以上で500V以下とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのバッテリシステムを例示するものであって、本発明はバッテリシステムを以下のものに特定しない。
【0015】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0016】
図2に示すバッテリシステムは、ハイブリッドカー、燃料電池車、電気自動車等の車両に搭載されて、負荷10として接続されるモーター11を駆動して車両を走行させる。電池1の負荷10となるモーター11は、インバータ12を介して電池1に接続される。インバータ12は、電池1の直流を3相の交流に変換して、モーター11への供給電力をコントロールする。
【0017】
この図のバッテリシステムは、電池1と、この電池1と直列に接続しているヒューズ8と、この電池1の出力側に接続されて、負荷10への電力供給をオンオフに切り換えるリレー2と、このリレー2をオンに切り換える前に、負荷10のコンデンサ13をプリチャージするプリチャージ回路3と、このプリチャージ回路3とリレー2をオンオフに制御する電流遮断回路4とを備える。
【0018】
電池1は、インバータ12を介して車両を走行させるモーター11を駆動する。モーター11に大電力を供給できるように、電池1は多数の充電できる電池セル5を直列に接続して出力電圧を高くしている。電池セル5は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池が使用される。電池セルをリチウムイオン電池とするバッテリシステムは、複数のリチウムイオン電池を直列に接続している。電池セルをニッケル水素電池とするバッテリシステムは、複数のニッケル水素電池を直列に接続して電池モジュールとし、さらに複数の電池モジュールを直列に接続して出力電圧を高くしている。バッテリシステムは、電池をリチウムイオン電池やニッケル水素電池に特定しない。電池には、ニッケルカドミウム電池などの充電できる全ての電池を使用できる。
【0019】
電池1は、モーター11に大電力を供給できるように、たとえば、出力電圧を200〜400Vと高くしている。ただし、バッテリシステムは、電池の出力側にDC/DCコンバータ(図示せず)を接続して、電池の電圧を昇圧して、負荷に電力を供給することもできる。このバッテリシステムは、直列に接続する電池の個数を少なくして、電池の出力電圧を低くできる。したがって、電池1は、たとえば出力電圧を150〜400Vとすることができる。
【0020】
電流遮断回路4は、電池1の充放電を制御するために、電池1を構成する電池セル5の電圧を検出する電圧検出回路22と、電池の電流を検出する電流検出回路21を備えている。
【0021】
電圧検出回路22は、複数の電池セル5の電圧を検出し、あるいは複数の電池セルを直列に接続している電池モジュールの電圧を検出する。電池をリチウムイオン電池とするバッテリシステムは、電圧検出回路でもって各々のリチウムイオン電池の電圧を検出し、電池をニッケル水素電池とするバッテリシステムは、電圧検出回路でもって、複数のニッケル水素電池を直列に接続している電池モジュールの電圧を検出する。
【0022】
電流検出回路21は、電池セル5の残容量を検出するために、電池1に流れる電流を電流センサ9で検出する。バッテリシステムは、電池1の残容量を検出して、電池1を充放電する電流をコントロールするので、電流検出回路21を備えている。電流遮断回路4は、電流検出回路21で検出される電池1の電流を積算して残容量を演算する。バッテリシステムは、電池1の残容量を50%付近とするように、車両側に信号を伝送して、充放電の電流をコントロールする。種々の走行状態で電池1の劣化をできるかぎり少なくするためである。電池1の残容量は、充電電流の積算値で増加し、また、放電電流の積算値で減少するので、充電電流と放電電流の積算値で演算できる。
【0023】
電流遮断回路4は、過電流を検出してリレー2をオンからオフに切り換えて電池1の電流を遮断する。電流遮断回路4の電流検出回路21は、電池1の電流を検出するが、電池1を充放電する範囲での電流を検出している。したがって、電池1に過電流が流れる状態で過電流の大きさを検出することはできない。すなわち、電流検出回路21は、過電流が流れたかたどうかは検出できるが、過電流の大きさは検出できない。したがって、電流遮断回路4は過電流を検出すると、その電流の大きさに関係なくリレー2をオンからオフに切り換えて、電池1の電流を遮断する。ただし、電流遮断回路4は、過電流を検出して直ちにリレー2をオフには切り換えない。
【0024】
電流遮断回路4は、過電流を検出してからリレー2をオフに切り換える遅延時間を記憶するタイマ部24を備えている。電流遮断回路4は、過電流を検出した後、このタイマ部24に記憶される遅延時間が経過したタイミングで、リレー2をオンからオフに切り換える。図3は、電流遮断回路4がリレー2をオフに切り換える遅延時間を0.3秒に設定している。この電流遮断回路4は、過電流を検出して、遅延時間の0.3秒が経過したタイミングでリレー2をオフに切り換えて、電池1の電流を遮断する。すなわち、過電流を検出して0.3秒経過するまでは、電池1の電流を遮断しない。
【0025】
リレー2は、電流遮断回路4で接点をオンオフに切り換える。リレー2は、図示しないが、接点をオンオフに切り換える励磁コイルを備えている。電流遮断回路4は、この励磁コイルの電流を制御して接点をオンオフに切り換える。通常のリレーは、励磁コイルに通電して接点をオン、励磁コイルの電流を遮断して接点をオフに切り換える。
【0026】
一般に、リレーは、電流を遮断できる最大遮断電流が特定される。最大遮断電流は、接点容量を大きく、可動接点を固定接点に強く押圧して大きくできる。ただ、最大遮断電流の大きいリレーは、可動接点と固定接点が大きく、また、大きな可動接点を速やかに固定接点から引き離すためにバネを強く、また、可動接点を固定接点から速く離すために、可動接点を往復運動させるストロークも大きくする必要がある。強いバネのリレーは、励磁コイルを大きく、また、その電流を大きく、すなわち励磁コイルを大きくして消費電力を大きくする必要がある。励磁コイルの消費電力は、接点をオンに保持する状態で常に消費される。消費電力の大きなリレーは、励磁コイルの発熱も大きく、また、接点をオンに保持する状態で大きな電力を消費する欠点がある。このため、電力の最大遮断電流は、大きさや消費電力、さらに発熱量からその用途に応じて最適な電流値に設定される。
【0027】
たとえば、車両用のバッテリシステムにあっては、リレーの小型化と軽量化が必須であるから、最大遮断電流をむやみに大きくすることはできない。ところが、負荷に供給する電力を大きくするために、バッテリシステムの出力電圧を高くすると、負荷をショートして流れるショート電流は極めて大きくなる。さらに、ショート電流のエネルギーは電流の二乗に比例して大きくなる。このため、バッテリシステムは、負荷をショートして大きなショート電流が流れる状態でリレーをオフに制御すると、可動接点が固定接点に溶着してオフに切り換えできなくなることがある。
【0028】
リレー2の接点溶着を防止し、電池1の過電流を確実に遮断し、さらに、過電流よりも小さい電流範囲では電池1の電流を遮断しない特性を実現するために、ヒューズ8を独特の特性としている。ヒューズ8が溶断して電流を遮断する時間は、図3の曲線Aで示すように、電流が大きくなると短くなる。ヒューズ8は、それ自体の発熱で溶断されることから、溶断する電流値を正確にコントロールするのが難しい。溶断しやすいヒューズは、電池の充放電を許容する電池の許容充放電電流の範囲で溶断してしまう。反対に溶断し難いヒューズは、リレーの接点溶着を確実に防止できない。本発明のバッテリシステムは、ヒューズ8とリレー2との特性を好ましい状態に設定することで、リレー2の接点が溶着するのを確実に阻止し、さらに、電池1の過電流または過充電をリレー2とヒューズ8とで確実に遮断する。このことを実現するために、ヒューズ8が溶断する溶断電流は、電流遮断回路4のタイマ部24の遅延時間における溶断電流をリレー2の最大遮断電流よりも小さくしている。
【0029】
図3は、リレー2の最大遮断電流を500A、遅延時間を0.3秒としているので、ヒューズ8の0.3秒後の溶断電流を500Aよりも小さくしている。このヒューズ8は、タイマ部24がカウントする0〜0.3秒の間で、リレー2の接点が溶着するよりも大きい電流、すなわちリレー2の最大遮断電流よりも大きい電流で溶断して、電池1の電流を遮断する。したがって、遅延時間の0.3秒までの間にヒューズ8が溶断しない過電流は、リレー2の接点が溶着しない電流であるから、遅延時間の0.3秒後にリレー2をオフに切り換えて接点が溶着することはない。また、遅延時間の0.3秒が経過した後は、ヒューズ8が溶断されたか否かに関わらず、リレー2が電池1の電流を遮断するので、ヒューズ8には、遅延時間の0.3秒後の溶断特性は要求されない。ヒューズ8に要求される溶断特性は、過電流が流れた瞬間から遅延時間まで、すなわち0〜0.3秒までの間の溶断特性である。とくに、過電流が流れて遅延時間の0.3秒後の溶断電流のみが要求される特性である。ただ、ヒューズ8は、電池1の充放電を許容する許容充放電電流の範囲で溶断することは好ましくない。したがって、ヒューズ8は、遅延時間である0.3秒後の溶断電流を、電池1の許容充放電電流の最大値である200Aよりも大きくしている。このことから、ヒューズ8は、図3の曲線Aと「電池の許容充放電電流の最大値」の間の電流で溶断するように設計される。曲線Bの溶断特性のヒューズ8は、遅延時間の0.3秒が経過した後に、電池1を充放電する最大電流である200Aよりも小さい電流で溶断されて、電池1の許容充放電電流の範囲で充放電できなくしてしまう。そのため、正常電流値においてバッテリシステムを使用できなくするため採用できない。
【0030】
さらに、電池1を構成する電池セル5は、過電流または過充電等の異常な状態になると、電池セル5の内部接続回路を遮断して、すなわち自己で電流を遮断する内部電流遮断部を備えている。この内部電流遮断部には、電池内圧の異常な上昇で動作して電流を遮断するCIDがある。CIDが動作して電流を遮断するのは、電池セル5が過充電されて内圧が異常に上昇した状態にあるが、電流を遮断する構造のため、他の電池セル構造部材と比較して過電流耐量が低くなっている。そのため、過電流発生時は、電池セルの中で最も溶断が発生しやすい。
【0031】
図3の曲線Cは、内部電流遮断部が動作して電流を遮断する遮断特性を示している。ヒューズ8の溶断特性(曲線A及び曲線B)は、内部電流遮断部の遮断特性よりも小さい電流で溶断するように設定している。したがって、遅延時間0.3秒より前では、ヒューズ8が溶断することで、内部電流遮断部による電流遮断を防止できる。
【0032】
さらに、図3の曲線Cで示すように、内部電流遮断部の遮断特性は、タイマ部24の遅延時間である0.3秒より後における遮断電流をリレー2の最大遮断電流の500Aよりも大きく設定している。このバッテリシステムは、電池1に過電流が流れる状態において、内部電流遮断部が電流を遮断するよりも小さい過電流でリレー2をオンからオフに切り換えて電池1の電流を遮断するので、内部電流遮断部が電流を遮断するよりも先に、電池1の電流を遮断する。このため、内部電流遮断部の動作を防止しながら、過電流を遮断することができる。
【0033】
電池1に接続される負荷10は、インバータ12の出力側にモーター11を接続している。負荷10であるインバータ12は、並列に大容量のコンデンサ13を接続している。このコンデンサ13は、リレー2をオンに切り換える状態で、電池1と両方から負荷10のインバータ12に電力を供給する。とくに、コンデンサ13からは、負荷10のインバータ12に瞬間的に大電力を供給する。電池1に並列にコンデンサ13を接続することで、負荷10に供給できる瞬間電力を大きくしている。コンデンサ13から負荷10のインバータ12に供給できる瞬間最大電力は、静電容量に比例するので、このコンデンサ13は、たとえば4000〜6000μFと極めて大きい静電容量としている。放電状態にある大容量のコンデンサ13が、出力電圧の高い電池1に接続されると、瞬間的に極めて大きいチャージ電流が流れる。コンデンサ13のインピーダンスが極めて小さいからである。
【0034】
プリチャージ回路3は、イグニッションスイッチ14から入力されるオン信号で、リレー2をオンに切り換えるに先だって、負荷10のコンデンサ13をプリチャージする。プリチャージ回路3は、コンデンサ13の充電電流を制限しながらコンデンサ13をプリチャージする。プリチャージ回路3は、プリチャージ抵抗6にプリチャージスイッチ7を直列に接続している。プリチャージ抵抗6は、負荷10のコンデンサ13のプリチャージ電流を制限する。プリチャージ回路3は、プリチャージ抵抗6の電気抵抗を大きくしてプリチャージ電流を小さくできる。たとえば、プリチャージ抵抗6は、10Ω、30Wのセメント抵抗である。このプリチャージ抵抗6は、出力電圧400Vの電池1がコンデンサ13を充電するピークの充電電流を40Aに制限する。
【0035】
プリチャージ回路3は、リレー2の接点に並列に接続される。図のバッテリシステムは、プラス側とマイナス側の両方にリレー2を設けて、プラス側のリレー2Aの接点と並列にプリチャージ回路3を接続している。このバッテリシステムは、マイナス側のリレー2Bをオンとし、プラス側のリレー2Aをオフとする状態で、プリチャージ回路3でコンデンサ13をプリチャージする。プリチャージ回路3でコンデンサ13がプリチャージされると、プラス側のリレー2Aをオフからオンに切り換えて、プリチャージ回路3のプリチャージスイッチ7をオフに切り換える。
【0036】
プリチャージ回路3は、プリチャージスイッチ7をオンにして、コンデンサ13をプリチャージする。プリチャージスイッチ7は、リレー等の機械的な接点を有するスイッチである。ただ、プリチャージスイッチは、トランジスターやFET等の半導体スイッチング素子も使用できる。半導体スイッチング素子のプリチャージスイッチは、接点のような劣化がないので寿命を長くできる。また、非常に短時間で高速にオンオフに切り換えできるので、コンデンサをオンオフに切り換えながらプリチャージすることができる。
【0037】
プリチャージ回路3でコンデンサ13がプリチャージされた後、プリチャージ回路3と並列に制御しているプラス側のリレー2Aをオンに切り換えて、電池1から負荷10に電力を供給できる状態、すなわち電池1でモーター11を駆動して車両を走行できる状態とする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本出願人が先に出願した電源装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施例にかかるバッテリシステムの概略構成図である。
図3】本発明の一実施例にかかるバッテリシステムのヒューズとリレーと内部電流遮断部が電流を遮断する特性を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…電池
2…リレー 2A…プラス側のリレー
2B…マイナス側のリレー
3…プリチャージ回路
4…電流遮断回路
5…電池セル
6…プリチャージ抵抗
7…プリチャージスイッチ
8…ヒューズ
9…電流センサ
10…負荷
11…モーター
12…インバータ
13…コンデンサ
14…イグニッションスイッチ
21…電流検出回路
22…電圧検出回路
24…タイマ部
91…電池
92…リレー
94…制御回路
95…電池ブロック
98…ヒューズ
99…電流検出回路
図1
図2
図3