【0025】
この発泡成形に用いる装置としては、好ましくは以下の構造を具備する装置を使用できる。
(1)オレフィン系樹脂を収納し、温度、圧力を一定に保つ樹脂タンク。
(2)不活性ガスを樹脂タンク内へ供給するガス供給部(ガスボンベ等)。
(3)不活性ガスとオレフィン系樹脂を溶解させる溶解手段(ミキサー等)、
(4)樹脂タンクからホースで連結され、発泡状態のオレフィン系樹脂を所望の位置に吐出する吐出手段(ノズル等)。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例を挙げる。
【0029】
<実施例1>
発泡成形に用いる装置として、ノードソン社製のフォームメルトアプリケーターを用意した。この装置は先に説明した各構造を具備する装置である。
【0030】
この装置のタンク内に、ポリプロピレンを含むオレフィン系樹脂(ポリプロピレン含有量17質量%、190℃における溶融粘度2400mPa・s)を収納した。その後、タンク内をオレフィン系樹脂が発泡しない程度の温度(160℃)に保持して樹脂を溶融状態にした。そして、樹脂タンク内に窒素ガスを0.4〜0.5kgf/cm
2の圧力で吹き込みながら、ミキサーで撹拌して樹脂中に窒素ガスを溶解させた。
【0031】
次いで、窒素ガスが溶解した樹脂を加圧してホースに送り込み、ホース先端のノズルから外部に吐出することによって樹脂を発泡させ(発泡倍率3.3倍)、同時にこれを基材上に塗布し、発泡体から成る厚み5mmの塗膜(塗布型吸音材)を形成した。
【0032】
この塗布型吸音材の断面を電子顕微鏡にて観察した。
図1は、本実施例の塗布型吸音材の表層部付近の電子顕微鏡断面写真(拡大倍率100倍)である。また、
図2及び
図3は、本実施例の塗布型吸音材の発泡体部分の電子顕微鏡断面写真(拡大倍率50倍、100倍)である。これら断面写真から、塗布型吸音材の表層部にスキン層が存在していることが分かり、また開口を有する気泡が多数存在することも分かる。具体的には、本実施例の塗布型吸音材の気泡の平均直径は50μm〜200μmの範囲内、開口率(連泡率)は80%、スキン層の厚さは10μm〜60μmの範囲内であった。
【0033】
<実施例1の接着性試験>
実施例1の塗布型吸音材に対する接着性試験を、IMV社の動電式振動試験機を用い、全振幅2〜2.5mm、振動加速度:34.3m/s
2、振動回数150万回の条件で行なった。試験後も吸音材は剥がれることなく、良好な接着性を有することが分かった。
【0034】
この試験は、自動車の一生涯における悪路走行の振動状況を想定したものである。この結果から、本発明の塗布型吸音材は、自動車の内装部品として使用した際も剥がれ等の問題が生じないことが分かる。
【0035】
<比較例1>
発泡倍率を30倍にしたこと以外は、実施例1と同様にして厚み5mmの塗膜(塗布型吸音材)を形成し、その断面を電子顕微鏡にて観察した。
図11は、本比較例の塗布型吸音材の発泡体部分の電子顕微鏡断面写真(拡大倍率100倍)である。この断面写真から、塗布型吸音材内の気泡は独立した気泡、すなわち開口を持たない気泡であることが分かる。具体的には、本比較例の塗布型吸音材の開口率は30%であった。
【0036】
<実施例1と比較例1の吸音性能比較>
実施例1と比較例1の塗布型吸音材の垂直入射吸音率を、JIS A1405「音響−インピーダンス管による吸音率及びインピーダンスの測定−定在波比法」記載の方法に順じ、試料ホルダーの背面板に密着させて測定評価した。その測定結果を
図4に示す。
【0037】
図4から明らかなように、実施例1と比較例1とでは、1250Hz付近以下の周波数においては同等の吸音性能であるが、1250Hz付近を超える周波数において、大きな差が生じている。比較例1の吸音率は1250Hz付近を超えても0.1付近で変化しないが、実施例1の吸音率は周波数が高くなるにつれて大きくなり、例えば5000Hz周辺では、およそ0.4になる。したがって、本発明の発泡剤から成る吸音材は、従来の独立した気泡の発泡材よりも良好な吸音性能を備えていることが分かる。
【0038】
<実施例2、3>
発泡成形時の樹脂タンク内の温度を、170℃(実施例2)、180℃(実施例3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚み5mmの塗膜(塗布型吸音材)を形成し、吸音性能を測定評価した。その測定結果を、実施例1の測定結果と共に
図5に示す。
【0039】
図5から明らかなように、実施例1〜3の何れも良好な吸音性能を示すが、特に樹脂タンク内の温度が160℃という低い温度にした実施例1が、最適な吸音性能を示すことが分かる。
【0040】
<比較例2>
厚さ5mmの従来のフェルト製吸音材(反毛フェルト)に対して、同様に吸音性能を測定評価した。その測定結果を、実施例1の測定結果と共に
図6に示す。この反毛フェルトは、吸音材として用いられることが多い従来品であり、その密度は0.055kg/m
3である。
【0041】
図6から明らかなように、実施例1と比較例1とでは、1250Hz付近以下の周波数においては同等の吸音性能であるが、1500Hz付近を超える周波数において、大きな差が生じている。例えば3000Hz周辺においては、実施例1の吸音率は0.25であるが、比較例1の吸音率は0.1強である。したがって、本発明の発泡剤から成る吸音材は、従来のフェルト製吸音材よりも良好な吸音性能を備えていることが分かる。また、人が会話する際の周波数の範囲は200〜6300Hzなので、実施例1の方が人の会話の明瞭度を改善する効果が得られると言える。
【0042】
<開口率と吸音性能の関係>
開口率を30〜90%の各値になるように発泡倍率を変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜(塗布型吸音材)を形成し、吸音性能を測定評価した。その測定結果を、比較例2の測定結果と共に
図7に示す。また、発泡倍率と開口率の関係について
図8に示す。
図7から明らかなように、開口率が70%の場合は良好な吸音率を示し、80%の場合は2000Hz以上の周波数においてより良好な吸音性能を示し、90%の場合は最も優れた吸音性能を示す。また、
図8の結果から、2.7〜4.0倍の範囲内の発泡倍率とすることにより、開口率70%以上の発泡体が得られることが分かる。
【0043】
<スキン層の厚さと吸音性能の関係>
スキン層の厚さを10〜100μmの各値になるように発泡倍率を変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜(塗布型吸音材)を形成し、吸音性能を測定評価した。その測定結果を、
図9に示す。
図9から明らかなように、スキン層の厚さが10〜60μmであると、特に2500Hz以上の周波数に対する良好な吸音性能を示し易いことが分かる。
【0044】
<気泡の平均直径と開口率の関係>
気泡の平均直径を10〜200μmの各値になるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜(塗布型吸音材)を形成し、その開口率を測定評価した。その測定結果を、
図10に示す。
図10から明らかなように、平均直径が50μm〜200μmであれば開口率が70%以上となり易いことが分かる。