(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施をするための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の工程管理インジケータの好ましい一例について、
図1を参照して説明する。
【0022】
工程管理インジケータ1は、四角いラベル状である。金属塩類又は重金属錯体化合物とそれに高圧蒸気滅菌条件下で反応して不可逆的に有色例えば黒色へ変色する含硫黄化合物とを含む白色の高圧蒸気変色性インキ層で、白色のラベル基材4上に、一次元バーコード例えばJAN(Japanese Article Number)コードやEAN−128コードのような識別コード2が形成されている。白色の識別コード2は、基材4の白地に紛れて見えない。識別コード2と並んで、識別コード2に対応する文字情報3が、黒色の非変色性インキ層により形成されている。
【0023】
この工程管理インジケータ1は、以下のようにして作製される。先ず、金属塩類又は重金属錯体化合物と含硫黄化合物とバインダー樹脂と溶剤とを混練して、白色の高圧蒸気変色性のインジケータインキを調製する。このインジケータインキを、バーコードリーダーで読み取り得る製品番号のような特定データに対応する一次元バーコードとして、白色基材4上に印刷し、白色の水蒸気変色性インキ層で形成された識別コード2とする。次いで、黒色の非変色性インキで、バーコードデータ3を印字すると、ラベル状の工程管理インジケータ1が、得られる。
【0024】
この工程管理インジケータ1を用いた工程管理方法は、以下の通りである。滅菌工程を管理すべき製品に、工程管理インジケータ1を貼付する。このとき、識別コード2は、目視できず、またバーコードリーダーでも読み取り不可能となっているから、工程管理すべき製品が未滅菌状態であることが、一見して分かる。工程管理すべき製品を工程管理インジケータ1ごと高圧蒸気滅菌器に挿入し、密閉してから高圧蒸気で滅菌処理する。滅菌処理されると識別コード2のインキ層中の含硫黄化合物が金属塩類や重金属錯体化合物と反応して黒色の別な硫黄化合物に化学変化する結果、黒色の識別コード2が出現する。工程管理すべき製品を高圧蒸気滅菌器から取り出す。色調変化した黒色の識別コード2は、目視可能であり、またバーコードリーダーでも読み取り可能となっている。目視により又はバーコードリーダーにより識別コード2が認識されると、滅菌が完了したという履歴が、表示されたことになる。この識別コード2は、製品番号のような特定データも表示しているから、一つの識別コードで、滅菌完了履歴のような工程管理情報と、製品番号のような製品管理情報とが、同時に表示されている。
【0025】
文字情報3が、非変色である例を示したが、識別コード2と同様に、インジケータインキで印字することにより、高圧蒸気滅菌条件下で変色させてもよい。
【0026】
別な工程管理インジケータ1の一態様を示す
図2のように、識別コード2が、前記と同様な高圧蒸気変色性インジケータインキ層で形成された変色性識別コード部位6と、黒色の非変色性インキ層で形成された非変色性識別コード部位5とからなっていてもよい。この場合、高圧蒸気滅菌する前には、バーコードの内の一本の変色性識別コード部位6が現れていないから、識別コード2が不完全であって一次元バーコードリーダーで読み取り不能となっている。滅菌後には、変色性識別コード部位6が黒く色調変化する結果、識別コード2が完全になってバーコードリーダーで読み取り可能となる。
【0027】
工程管理インジケータ1は、
図3に示すように、識別コード2が、二次元コード、例えばQRコード(登録商標)であってもよい。
図3の通り、識別コード2が、前記と同様な高圧蒸気変色性インジケータインキで形成されたドット状のデータセル領域である変色性識別コード部位8と、黒色の非変色性インキで形成されており位置検出用のファインダパターンである三隅の非変色性識別コード部位7とからなっていてもよい。この場合、高圧蒸気滅菌する前には、変色性識別コード部位8が現れていないから、識別コード2が不完全であって二次元コードリーダーで読み取り不能となっている。滅菌後には、変色性識別コード部位8が黒く色調変化する結果、識別コード2が完全になってコードリーダーで読み取り可能となる。なお、ファインダパターンである非変色性識別コード部位7が、非変色である例を示したが、データセル領域である変色性識別コード部位8と同様に、インジケータインキで印字することにより、高圧蒸気滅菌条件下で変色させてもよい。
【0028】
工程管理インジケータ1は、
図4に示すように、識別コード2が、非変色性であって、前記と同様な水蒸気変色性インジケータインキ層で形成された被膜10で、全部覆われていてもよい。この場合、高圧蒸気滅菌する前には、識別コード2が現れておりバーコードリーダーで読み取り可能となっている。滅菌後には、被膜10が黒く色調変化する結果、識別コード2が隠蔽されて、目視不能又はバーコードリーダーで読み込み不能となる。被膜10の中ほどの一部で、インキ層が形成されていないことにより、滅菌完了を示す白抜文字9や図形、例えば白抜きの「OK」や「滅菌処理済」の文字を、形成していてもよい。
【0029】
工程管理インジケータ1は、
図5に示すように、識別コード2が、非変色性であって、前記と同様な水蒸気変色性インジケータインキで形成された被膜10で、識別コード2の各バーコードに斜めになるように、一部分だけ覆われていてもよい。この場合、滅菌後に、被膜10が黒く色調変化して、識別コード2上に被膜10により、取消線のような一本又は複数本の交差線が現れる。
【0030】
工程管理インジケータ1は、
図6に示すように、予め印刷してある非変色性のバーコード部に、前記と同様な水蒸気変色性インジケータインキでインキ層が前面に印刷されたシール11が、貼付されているものであってもよい。この場合、シール11は薄白色である為、変色前の時点ではバーコードが読める。このインキ層は紫外線又は放射線で変色するものであるから、シール11を貼付後、紫外線又は放射線照射を行うと、シール11が赤色に発色する。これによりバーコードが読めなくなる。
【0031】
工程管理インジケータの変色性の識別コードや非変色性識別コードを覆う変色性の被膜が、金属塩類又は重金属錯体化合物と含硫黄化合物とを含み高圧蒸気滅菌条件下又はレトルト殺菌下で変色する変色性インキ層で形成された例を示したが、高圧蒸気滅菌条件下又はエチレンオキサイドガス滅菌条件下で変色するアゾ染料と有機酸とを含むインキ層、ホルマリンガス殺菌条件下で変色するアゾ染料及び/又はヒドラジン類を含むインキ層、過熱下で変色する金属錯体化合物を含むインキ層の何れかの変色性インキ層、紫外線や放射線などの電磁波による滅菌又は殺菌条件下で反応して不可逆的に変色するハロゲン基とアセタール基との少なくともいずれかの基及び水酸基を有する高分子化合物と、呈色性の電子供与体有機化合物と、電子供与体有機化合物を呈色させる活性種生成有機化合物と、放射線吸収剤及び/又は放射線蛍光剤とが含まれた放射線呈色性組成物、又はポリアセチレン化合物とジアリールエテン化合物との少なくともいずれかが含まれた放射線呈色性組成物を含むインキ層で、形成されていてもよい。変色性の識別コードが、異なる種類の複数の変色性インキ層で、塗り分けられていてもよい。変色性の識別コードが、滅菌前後で別々なデータとしてコードリーダーで読み取れるものであってもよい。
【0032】
高圧蒸気滅菌用の工程管理インジケータに用いられる金属塩類又は重金属錯体化合物と、含硫黄化合物で形成される変色成分の好ましい組成は、金属塩類又は重金属錯体化合物を2〜30重量部、含硫黄化合物を5〜30重量部である。高圧蒸気下で金属塩類と含硫黄化合物が反応して金属硫化物が生成される結果、インジケータが発色する。
【0033】
金属塩類は、例えば、ビスマス化合物として、シュウ酸ビスマス、硫酸ビスマス、塩化ビスマス、酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸水酸化ビスマス、塩基性酢酸ビスマス、塩基性硝酸ビスマス、安息香酸ビスマス、モリブデン酸ビスマス、三チタン酸ビスマスなどが挙げられ、コバルト化合物として、硝酸コバルト6水和物、塩化コバルト6水和物、無水塩化コバルト、塩基性炭酸コバルト、炭酸コバルト、酸化コバルト、シュウ酸コバルト2水和物、硫酸コバルト7水和物などが挙げられ、ニッケル化合物として、硝酸ニッケル6水和物、無水塩化ニッケル、塩化ニッケル6水和物、塩基性炭酸ニッケル、酢酸ニッケル4水和物、酸化ニッケル、硫酸ニッケル6水和物、硫酸ニッケル7水和物、シュウ酸ニッケル2水和物などが挙げられ、クロム化合物として、硝酸クロム9水和物、塩化クロム6水和物、酸化クロム、硫酸クロムn水和物などが挙げられ、鉄化合物として硫酸鉄、硝酸鉄9水和物などが挙げられ、鉛化合物として硫酸鉛、塩化鉛、酸化鉛、水酸化鉛などが挙げられ、銅化合物として硫酸銅、塩化銅、酸化銅、水酸化銅などが挙げられ、銀化合物として硫酸銀、塩化銀、酸化銀、水酸化銀などが挙げられる。金属塩類は、これらの内の何れか1種類であっても複数種の混合物であってもよい。
【0034】
重金属錯体化合物は、結晶水を含む水和物であってもよく、含水体であってもよい。重金属錯体化合物は、例えば重金属−ヘキサメチレンテトラミン錯体化合物として、硝酸コバルトとヘキサメチレンテトラミンとの錯体の10水和物又は含水体、硝酸コバルトと硝酸ニッケルとヘキサメチレンテトラミンとの錯体の10水和物、硝酸ニッケルとヘキサメチレンテトラミンとの錯体の10水和物、酸化コバルトとヘキサメチレンテトラミンとの錯体の9水和物、塩化コバルトとヘキサメチレンテトラミンとの錯体の10水和物などが挙げられ、重金属−リン酸錯体化合物として、リン酸コバルト8水和物、リン酸コバルトアンモニウム1水和物が挙げられ、重金属−アンモニウム錯体化合物として、塩化コバルトアンモニウム6水和物、硫酸コバルトアンモニウム6水和物、硫酸アンモニウムクロム12水和物などが挙げられる。重金属錯体化合物は、これらの内の何れか1種類であっても複数種の混合物であってもよい。
【0035】
含硫黄化合物は例えば、チオウレア化合物として、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−チオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、1,3−ジトリルチオ尿素、2,2’−ジトリルチオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、アリルチオ尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、エチレンチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリルチオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、1−(3−アセチルフェニル)−2−チオ尿素、1−アリル−3,3−ジエチル−2−チオ尿素、1−ベンゾイル−2−チオ尿素、1−ベンジル−3−フェネチル−2−チオ尿素、1−(2−ブロモフェニル)−2−チオ尿素、1−(2−クロロフェニル)−3−フェニル−2−チオ尿素、1−フェニル−3−(2−チアゾリル)チオ尿素、1,1−ジメチルチオ尿素、1,3−ジベンジルチオ尿素、1−ブチルチオ尿素、1−フェニル−3−チオセミカルバジド、4−フェニル−3−チオセミカルバジド、チオカルボヒドラジドなどが挙げられ、チウラム化合物として、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられ、チアゾール化合物として、2−アミノベンゾチアゾールが挙げられ、含硫アミノ酸化合物として、メチオニン、システイン、チアミン硝酸塩が挙げられ、含硫蛋白質として、前記の含硫アミノ酸化合物を含んでいる蛋白質が挙げられ、含硫有機酸化合物として、チオサリチル酸、チオグリコール酸が挙げられる。含硫黄化合物は、これらの内の何れか1種類であっても複数種の混合物であってもよい。含硫黄化合物は、無害で安全性の高いものが好ましいため、メチオニン、システイン、チアミン硝酸塩、チオサリチル酸、チオグリコール酸のような食品添加物であるとなお一層好ましい。
【0036】
高圧蒸気滅菌又はエチレンオキサイドガス滅菌の工程管理インジケータに用いられるアゾ染料と有機酸又はその塩で形成される変色成分の組成は、アゾ染料を0.1〜10重量部、有機酸又はその塩を1〜30重量部である。高圧蒸気下で生じたプロトンがアゾ染料をカチオン化させてそれの電子密度の変化を生じさせる結果、インジケータが変色する。またエチレンオキサイドが、アゾ染料と反応して共鳴構造が変化し、さらに有機酸の共存によるプロトンの発生で一層反応が促進される結果、インジケータが変色する。
【0037】
アゾ染料は、例えば、C.I.(カラーインデックス)ディスパースレッド4、C.I.ディスパースレッド17、C.I.ディスパースレッド54、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースレッド72、C.I.ディスパースレッド73、C.I.ディスパースレッド88、C.I.ディスパースレッド110、C.I.ディスパースレッド111、C.I.ディスパースレッド117、C.I.ディスパースレッド137、C.I.ディスパースレッド152、C.I.ディスパースレッド153、C.I.ディスパースレッド154、C.I.ディスパースレッド202、C.I.ディスパースレッド206、C.I.ディスパースバイオレット38、C.I.ディスパースバイオレット43、C.I.ディスパースバイオレット93、C.I.ディスパースブルー79、C.I.ディスパースブルー102、C.I.ディスパースブルー165、ソルベンドイエロー2、ソルベンドイエロー14、ソルベンドイエロー16、ソルベンドイエロー56、ソルベンドレッド3、ソルベントレッド18、ソルベントレッド24、アシッドレッド4、アシッドレッド81、アシッドレッド249、アシッドレッド257、アシッドオレンジ7、アシッドイエロー49、アシッドブルー113、ダイレクトイエロー44、ダイレクトイエロー86、ダイレクトレッド31、ダイレクトレッド79、ダイレクトレッド80、ダイレクトブルー71、ダイレクトブラック19、ダイレクトオレンジ26などが挙げられる。
【0038】
その他の染料としてはpH染料、ロイコ染料を使用することも可能である。
【0039】
有機酸やその金属塩は、変色を促進するとともに変色条件を調整する成分である。有機酸としては、例えばアクリル酸、アジピン酸、L−アスパラギン酸、アゼライン酸、安息香酸、アントラニル酸、イソフタル酸、イタコン酸、ウンデシレン酸、クエン酸、グルタコン酸、サリチル酸、シアヌル酸、ジグリコール酸、DL−酒石酸、スルファニル酸、セバシン酸、ソルビン酸、テレフタル酸、ナフテン酸、ニコチン酸、馬尿酸、バルビツール酸、ピバリン酸、ピルビン酸、フタル酸、フマル酸、ベンジル酸、マレイン酸、マロン酸、メタクリル酸及びメタニル酸などが挙げられる。有機酸の金属塩としては、上記の有機酸のカルシウム塩や亜鉛塩などが挙げられる。なかでもサリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛及びアジピン酸が好適である。
【0040】
ホルマリンガス殺菌用の工程管理インジケータに用いられる前記と同種のアゾ染料とピリミジン類、ヒドラジン類で形成される変色成分の好ましい組成は、アゾ染料が0.4〜1.5重量部、ピリミジン類が1〜20重量部、ヒドラジン類が2〜30重量部である。アゾ染料やヒドラジン類やピリミジン類がホルムアルデヒドに曝されて時にpHが変化することにより、インジケータが変色する。
【0041】
ヒドラジン類としては、例えば塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、安息香酸ヒドラジン、カルバジン酸、アセトヒドラジド、ベンズヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド、2,4−ジニトロフェニルヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドが挙げられる。
【0042】
ピリミジン類としては、例えば4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンジクロライド、4−アミノ−6−クロロ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−ピリミジノール、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、4−アミノ−2,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4−アミノ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、2−アミノ−5−ニトロピリミジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、4−クロロ−2,6−ジアミノピリミジン、6−クロロ−2,4−ジメトキシピリミジン、4−クロロ−2−メチルチオピリミジン、2−クロロピリミジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプトピリミジン、4,5−ジアミノピリミジン、2,4−ジクロロ−6−メチルピリミジン、4,6−ジクロロ−2−メチルチオ−5−フェニルピリミジン、4,6−ジクロロ−5−ニトロピリミジン、2,4−ジヒドロキシ−5,6−ジメチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、4,6−ジヒドロキシ−2−メチルメルカプトピリミジン、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシ−5−ニトロピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4−ジメチル−6−ヒドロキシピリミジン、4,6−ジメチル−2−ヒドロキシピリミジン、4,6−ジメチル−2−メルカプトピリミジン、2−ヒドロキシ−4−メチルピリミジン塩酸塩、4−ヒドロキシピラゾロ[3,4d]ピリミジン、2,4,5−トリアミノピリミジン、2−メルカプトピリミジン、5−ニトロ−4,6−トリアミノピリミジンが挙げられる。
【0043】
過熱検知用の工程管理インジケータに用いられる金属錯体化合物は、インキ全体の10〜50重量部で用いられることが好ましい。過熱により金属錯体化合物の構造が変化することにより、インジケータが変色する。
【0044】
金属錯体化合物は、塩化コバルト・ヘキサメチレンテトラミン錯体、硫酸コバルト・ヘキサメチレンテトラミン錯体、硝酸コバルト・ヘキサメチレンテトラミン錯体、塩化ニッケル・ヘキサメチレンテトラミン錯体などが挙げられる。
【0045】
放射線により変色するインジケータに用いられる放射線呈色性組成物は、ハロゲン基とアセタール基との少なくともいずれかの基及び水酸基を有する高分子化合物と、呈色性の電子供与体有機化合物と、電子供与体有機化合物を呈色させる活性種生成有機化合物と、放射線吸収剤及び/又は放射線蛍光剤とが含まれた放射線呈色性組成物、又はポリアセチレン化合物とジアリールエテン化合物との少なくともいずれかが含まれた放射線呈色性組成物が、基材表面の少なくとも一部に付されており、放射線呈色性組成物が、5〜50重量部の前記高分子化合物と、0.01〜50重量部の前記呈色性の電子供与体有機化合物と、0.1〜50重量部の前記活性種生成有機化合物と、0.1〜500重量部の放射線吸収剤及び/又は放射線蛍光剤とを含んでいる組成物であることが好ましい。
【0048】
(上記式中、Xはハロゲン原子、−R
1は水素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、脂肪族カルボニルオキシル基、カルボキシル基、アリールオキシ基、アラルキル基、又はアラルコシ基を示し、l、m、nは任意の比率。)で示され、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい高分子化合物が挙げられる。l:m:nの比は例えばそれらの繰り返し単位を構成するモノマーの重量比50〜99:1〜30:1〜20であることが好ましい。
【0051】
(式(2)中、−R
2及び−R
3は、同一又は異なり、水素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アセトキシ基のような脂肪族カルボニルオキシ基、カルボキシル基、アリールオキシ基、アラルキル基、又はアラルコキシ基を示し、p、q、rは任意の比率。)で示され、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい高分子化合物も挙げられる。p:q:rの当量比は、モル比で、5〜90:10〜50:1〜30であることが好ましい。
【0052】
これらの高分子化合物は、単独で用いられても、複数種混合して用いられてもよく、又、別な高分子化合物が混合されていてもよい。
【0053】
前記呈色性の電子供与体有機化合物は、通常無色又は淡色で、ブレンステッド酸、ルイス酸等の活性種、すなわち電子受容体の作用で発色する性質を有するものである。具体的には、トリフェニルメタンフタリド類例えばクリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン;フルオラン類例えば3−ジエチルアミノベンゾ−α−フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン;フェノチアジン類例えば3,7−ビスジメチルアミノ−10−(4’−アミノベンゾイル)フェノチアジン;インドリルフタリド類例えば3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド;ロイコオーラミン類例えばN−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−フェニルオーラミン;ローダミンラクタム類例えばローダミン−β−o−クロロアミノラクタム;ローダミンラクトン類例えばローダミン−β−ラクトン;インドリン類例えば2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3’−ジメチルインドリン、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー;トリアリールメタン類例えばビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタンが挙げられる。それらは、単独で用いられてもよく、複数種混合して用いられてもよい。
【0054】
前記活性種生成有機化合物は、放射線の照射により不可逆的に活性種が生じるもので、ハロゲン基を有する化合物例えば四臭化炭素、トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホンが挙げられる。
【0055】
前記放射線吸収剤は、バリウム、イットリウム、銀、スズ、ハフニウム、タングステン、白金、金、鉛、ビスマス、ジルコニウム、ユウロピウム、セリウムの金属、及びこれら金属を含む化合物例えばそれらの金属の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩が挙げられる。それらは、単独で用いられてもよく、複数種混合して用いられてもよい。
【0056】
前記放射線励起蛍光剤は、CaWO
4、MgWO
4、HfP
2O
7で示される塩、ZnS:Ag、ZnCdS:Ag、CsI:Na、CsI:Tl、BaSO
4:Eu
2+、Gd
2O
2S:Tb
3+、La
2O
2S:Tb
3+、Y
2O
2S:Tb
3+、Y
2SiO
5:Ce、LaOBr:Tm
3+、BaFCl:Eu
2+、BaFBr:Eu
2+で示される焼成物が挙げられる。ZnS:Agの焼成物は、硫化亜鉛を主成分とし、重金属賦活剤である銀を加えて焼成したものである。他の焼成物も同様にして得られる。それらは、単独で用いられてもよく、複数種混合して用いられてもよい。
【0057】
これら工程管理インジケータを作製する際に用いられるインジケータインキには、上記成分以外に、他の有色顔料や体質顔料、バインダー、溶剤を加えてもよい。例えばシリカ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、セイカファーストイエロー、クロムイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等を添加すれば、インキ状態での保存安定性、変色性の向上が図れる。
【0058】
バインダーとしては、例えば、ブチルゴム、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸ビニル、塩化ビニル、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン、合成樹脂、天然樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、ポリオール樹脂、エポキシポリエステル系樹脂、アルキット変性シリコーン、アルキット樹脂メラミン樹脂混合、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニルメタアクリル酸メチル共重合体樹脂などが挙げられる。
【0059】
溶剤としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサン、イソホロン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−へキサン、イソオクタン、ソルベントナフサ、メチレンクロライド、プロピレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルム、ジクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、酢酸などが挙げられる。それらは、単独で用いられてもよく、複数種混合して用いられてもよい。
【0060】
バインダーや溶剤を混合したインジケータインキのメジウムは市販の物であっても良く、溶媒型メジウム、UV硬化型メジウムであっても良い。
【0061】
インジケータインキは、これらの成分をボールミル、ロールミル、サンドミル、ライカイ機等の混練機を用いて混合する。
【0062】
上記インキを印刷物に識別コードとして印刷する。工程管理インジケータの印刷の基材としては、上質紙やクレープ紙のような紙、プラスチック、金属、合成紙、布帛、又は不織布で形成された基材、例えばカード、テープ、シート、袋、又はこれらの基材で形成された工程管理すべき製品用包装基材、例えば紙製包装シート、紙製包装袋が挙げられる。凸版印刷・オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、コーター印刷、インクジェットプリンタなどにより、インジケータインキを基材又は工程管理すべき製品に直接印刷して識別コードを形成してもよい。印刷に代えてインジケータインキの塗布、噴霧、浸漬によって識別コードを形成してもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の工程管理インジケータ及びそれを用いた工程管理方法の実施例を、具体的に説明する。
【0064】
(実施例1)
高圧蒸気雰囲気下での滅菌の際に使用する工程管理インジケータを以下のようにして作製した。先ず、熱発色性物質として水酸化ビスマスの100g、1−フェニル−2−チオ尿素の50g、炭酸カルシウムの10gと、バインダーとしてUV161(T&K TOKA社製の商品名)の350g及び酢酸エチルの300gを混合したメジウムとを、混練して、高圧蒸気滅菌工程管理用のインジケータインキを調製した。このインキで、凸版印刷により上質タック紙片に、
図1のようなバーコード状の識別コードの印刷を行い、ラベル状の工程管理インジケータを得た。この識別コードは、白色であるので、バーコードリーダーで認識されなかった。このインジケータを、工程管理すべき製品である滅菌バッグに貼付し、オートクレーブである高圧蒸気滅菌器に挿入し、134℃で10分間、滅菌を行った。この条件で十分に滅菌が行われている。滅菌終了後、識別コードが発色しバーコードとして現れており、バーコードリーダーで読み取ることができることを確認し、それにより滅菌工程のデータ管理を行うことができた。
【0065】
(実施例2)
エチレンオキサイドガス雰囲気下での滅菌の際に使用する工程管理インジケータを以下のようにして作製した。先ず、エチレンオキサイド発色性物質としてC.I.ディスパースレッド177の400g、サリチル酸の10kgと、タルクの700gと、バインダーとしてFBHDメジウム(東洋インキ製造株式会社製の商品名)の20kgと、n−プロパノール及び酢酸プロピルの混合溶剤の6kgとを、混練して、エチレンオキサイドガス滅菌工程管理用のインジケータインキを調製した。このインキで、グラビア印刷により上質タック紙片に、
図1のようなバーコード状の識別コードの印刷を行い、ラベル状の工程管理インジケータを得た。その識別コードは、赤色であり、この色調のままでは、バーコードリーダーで認識されなかった。このインジケータを、滅菌バッグに貼付し、エチレンオキサイドガス滅菌器に挿入し、エチレンオキサイドガス濃度530mg/l、温度50℃、相対湿度50%Rhの条件で4時間、滅菌を行った。この条件で十分に滅菌が行われている。滅菌終了後、識別コードが発色し青色のバーコードとして変色して現れており、バーコードリーダーで読み取ることができることを確認し、それにより滅菌工程のデータ管理を行うことができた。
【0066】
(実施例3)
加熱によるレトルト殺菌の際に使用する工程管理インジケータを以下のようにして作製した。先ず、熱変色性物質として水酸化ビスマスの35g、チオ尿素の100gと、バインダーとして13%ブチルゴムのミネラルスピリット溶液の500g及びミネラルスピリッツの300gを混合したメジウムとを、混練して、レトルト殺菌工程管理用のインジケータインキを調製した。
図4のように非変色性インキで上質タック紙片に印刷されたバーコードである識別コードを覆うように、このインジケータインキを塗布して、白色のインジケータインキ層の被膜が付されたラベル状の工程管理インジケータを得た。この識別コードはバーコードリーダーで読み込むことができ、そのデジタルデータを工程開始のデータとして管理した。この工程管理インジケータを、レトルト殺菌すべきレトルトパウチに付し、その後、110℃で20分間、レトルト殺菌を行った。この条件で十分にレトルト殺菌が行われている。殺菌終了後、識別コードを覆う白色のインジケータインキ層の被膜が発色して、識別コードを隠蔽したため、工程開始前であることを示していた識別コードを、目視で確認できずバーコードリーダーでも読み取ることができなくなった。それにより滅菌工程の管理を行うことができた。
【0067】
(実施例4)
ホルマリンガス雰囲気下での滅菌の際に使用する工程管理インジケータを以下のようにして作製した。C.I.ディスパースレッド177の7g、硫酸ヒドラジンの200g、没食子酸n−プロピルの40gと、バインダーとしてエチルセルロールのブチルセロソルブ溶液とを、混練して、ホルマリンガス滅菌工程管理用のインジケータインキを調製した。このインジケータインキで、スクリーン印刷により上質紙カードに、
図1のようなバーコード状の識別コードを印刷し、カード状の工程管理インジケータを得た。この識別コードは、赤色であるので、バーコードリーダーで認識されなかった。このインジケータを、工程管理すべき製品に貼付し、ホルマリンを充填させた状態のデシケータ内に、24時間放置し、ホルマリンガス滅菌を行った。この条件で十分に滅菌が行われている。滅菌終了後、識別コードが発色し青色のバーコードとして現れており、バーコードリーダーで読み取ることができることを確認し、それにより滅菌工程のデータ管理を行うことができた。
【0068】
(実施例5)
ある一定以上の過熱条件に曝されたことを検知するのに使用される工程管理インジケータを以下のようにして作製した。温顔料として塩化コバルト・ヘキサメチレンテトラミン錯体(CoCl
2・2(CH
2)
6N
4・10H
2O)の800gと、バインダーとしてエチルセルロース溶液(キシレン)の1000gと、溶剤であるキシレンの1500gとを、混練して、過熱管理用のインジケータインキを調製した。このインジケータインキで、上質紙片に、
図1のようなバーコード状の識別コードを印刷し、その上をポリプロピレンフィルムによりラミネート加工処理して、ラベル状のインジケータを得た。この識別コードは、薄いピンク色であるので、バーコードリーダーで認識されなかった。このインジケータを、50℃で5分間加熱したところ、識別コードが変色して青色のバーコードとして現れており、バーコードリーダーで読み取ることができることを確認し、それにより過熱のデータ管理を行うことができた。
【0069】
(実施例6)
紫外線照射による殺菌の際に使用する工程管理インジケータを以下のようにして作製した。変色成分として、パーカスクリプトレッドI−6Bを10g、四臭化炭素10g、インクメジウムであるPAS800(商品名:十条ケミカル)を100g混合し、ライカイ機で混錬してインキ化した。そのインキを透明なフィルムに印刷し、その上に粘着材を貼った。40mm×60mmにカットすることで、薄白色のラベルが出来た。そのラベルを工程管理しようとするバーコード上に貼り付けた。その後UVCの紫外線を250mJ/cm
2照射し紫外線殺菌を行った。貼付したラベルは紫外線照射後、赤色に変色しバーコードが読めなくなった。