特許第5675058号(P5675058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5675058
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   A61B5/05 370
   A61B5/05 376
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-126282(P2009-126282)
(22)【出願日】2009年5月26日
(65)【公開番号】特開2010-273706(P2010-273706A)
(43)【公開日】2010年12月9日
【審査請求日】2012年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】森 秋夫
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−082703(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/122878(WO,A1)
【文献】 特開2008−065478(JP,A)
【文献】 特開平06−254073(JP,A)
【文献】 特開2004−216154(JP,A)
【文献】 特開2000−296120(JP,A)
【文献】 特開平09−016805(JP,A)
【文献】 特開2008−142137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU外部との間のデータ転送速度に比較してより高速なデータ転送が可能な高速バスで相互に接続された複数のCPUコアを備え、
検体の撮影に関して実行される、前記複数のCPUコアの個数よりも少ない数の複数の処理それぞれを、1つ以上の前記CPUコアに割り当てるものであって、
前記被検体の撮影に関して実行される前記複数の理は、少なくとも、
磁気共鳴イメージングエコー信号の生データとして、前記被検体の動き検出に用いられる動き検出用の生データ及び画像の再構成に用いられる画像再構成用の生データを収集する生データ収集処理と、
前記生データ収集処理によって収集された動き検出用の生データを用いて前記被検体の動き補償に用いられる補償用の制御データを生成し、生成した補償用の制御データを、前記画像再構成用の生データの収集開始までに出力する動き補償処理とを含むものであって、
前記複数のCPUコアに対する、前記被検体の撮影に関して実行される前記複数の処理それぞれの割り当てを、撮影条件に基づき判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定された結果に基づき、前記複数の処理それぞれを、1つ以上の前記CPUコアに割り当てる割当手段とを備え、
前記複数のCPUコアそれぞれは、前記割当手段によって割り当てられた処理を実行することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記高速バスで相互に接続された複数のCPUコアは、
複数のCPUコアを有するCPUチップが配置された基板、1つのCPUコアを有するCPUチップが複数配置された基板、又は複数のCPUコアを有するCPUチップが複数配置された基板によって備えられることを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置という)は、被検体の撮影に関して各種処理を実行する。例えば、撮影条件に基づき撮影を制御する撮影制御処理や、MRIエコー信号の生データを収集する生データ収集処理、生データを用いて画像を再構成する再構成処理などを実行する。これらの処理それぞれは、その処理負荷が高いことなどを理由に、複数の中央演算処理装置(以下、CPU(Central Processing Unit)という)それぞれに割り当てられることが多い。なお、これらのCPU間は、外部バスやネットワークで相互に接続される。
【0003】
例えば特許文献1には、被検体の呼吸運動に付随した心臓の位置ずれを、横隔膜の動きから推定して補償する動き補償の手法が開示されている。動き補償の手法では、MRI装置は、横隔膜の動きを検出するための生データを、画像再構成用の生データを収集する前に収集する。そして、MRI装置は、収集した動き検出用の生データを用いて動き補償に用いられる補償用の制御データを生成し、補償用の制御データを用いて画像再構成用の生データを収集する。これらの処理それぞれはその処理負荷が高いため、複数のCPUそれぞれに割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の技術では、高速処理が要求される撮影手法に対応することが難しいという課題があった。例えば、動き補償の手法は、高速処理が要求される撮影手法の一つであり、動き検出用の生データを収集する処理や補償用の制御データを生成する処理などを高速に処理しなければならないとともに、CPU間のデータ転送も高速に処理しなければならない。もっとも、上記したように、CPU間は外部バスやネットワークで相互に接続されているため、データ転送速度には限界がある。このため、例えば別途ハードウェアを組み込んだ特別な構成にするなどして対応せざるを得ず、その対応は難しいものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速処理が要求される撮影手法にも簡易に対応することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置は、CPU外部との間のデータ転送速度に比較してより高速なデータ転送が可能な高速バスで相互に接続された複数のCPUコアを備え、検体の撮影に関して実行される、前記複数のCPUコアの個数よりも少ない数の複数の処理それぞれを、1つ以上の前記CPUコアに割り当てるものであって、前記被検体の撮影に関して実行される前記複数の理は、少なくとも、磁気共鳴イメージングエコー信号の生データとして、前記被検体の動き検出に用いられる動き検出用の生データ及び画像の再構成に用いられる画像再構成用の生データを収集する生データ収集処理と、前記生データ収集処理によって収集された動き検出用の生データを用いて前記被検体の動き補償に用いられる補償用の制御データを生成し、生成した補償用の制御データを、前記画像再構成用の生データの収集開始までに出力する動き補償処理とを含むものであって、前記複数のCPUコアに対する、前記被検体の撮影に関して実行される前記複数の処理それぞれの割り当てを、撮影条件に基づき判定する判定手段と、前記判定手段によって判定された結果に基づき、前記複数の処理それぞれを、1つ以上の前記CPUコアに割り当てる割当手段とを備え、前記複数のCPUコアそれぞれは、前記割当手段によって割り当てられた処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気共鳴イメージング装置によれば、高速処理が要求される撮影手法にも簡易に対応することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るMRI装置の概要を説明するための図である。
図2図2は、実施例1に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施例1における撮影制御部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、動き補償処理を説明するための図である。
図5図5は、動き補償処理を説明するための図である。
図6図6は、動き補償処理を説明するための図である。
図7図7は、実施例1の効果を説明するための図である。
図8図8は、実施例2に係るMRI装置の概要を説明するための図である。
図9図9は、実施例2に係るMRI装置による処理手順を示すフローチャートである。
図10図10は、他の実施例における複数のCPUコアの実装例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るMRI装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
[実施例1に係るMRI装置の概要]
まず、図1を用いて、実施例1に係るMRI装置の概要を説明する。図1は、実施例1に係るMRI装置の概要を説明するための図である。
【0012】
実施例1に係るMRI装置は、高速バスで相互に接続された複数のCPUコアを備える。例えば、MRI装置は、図1に示すように、高速バスで相互に接続され、1枚の基板上に密な結合で配置されたCPUコア#1、CPUコア#2、及びCPUコア#3を備える。
【0013】
また、実施例1に係るMRI装置は、複数のCPUコアそれぞれに、被検体の撮影に関して実行される処理それぞれを割り当てる。例えば、MRI装置は、図1に示すように、動き検出用の生データ及び画像再構成用の生データを収集する生データ収集処理をCPUコア#3に割り当て、動き検出用の生データを用いて補償用の制御データを生成する動き補償処理をCPUコア#2に割り当て、画像再構成用の生データを用いて画像を再構成する再構成処理をCPUコア#1に割り当てる。
【0014】
このようなことから、実施例1に係るMRI装置によれば、高速処理が要求される動き補償の手法にも簡易に対応することが可能になる。
【0015】
すなわち、従来の技術では、生データ収集処理や動き補償処理、あるいは再構成処理などは、外部バスやネットワークで相互に接続された複数のCPUそれぞれに割り当てられていた。このため、データ転送速度には限界があり、例えば別途ハードウェアを組み込んだ特別な構成にするなどして対応せざるを得ないといった難しさがあった。
【0016】
しかしながら、実施例1に係るMRI装置では、生データ収集処理や動き補償処理、あるいは再構成処理などは、外部バスでのデータ転送速度に比較してより高速なデータ転送が可能な高速バスで相互に接続されたCPUコアそれぞれに割り当てられる。この結果、CPU間では、従来に比較して例えば10倍以上高速なデータ転送が可能になり、そのままの構成で動き補償の手法に対応することが可能になる。言い換えると、例えば別途ハードウェアを組み込んだ特別な構成にするといった必要もなくなり、動き補償の手法に安価に対応することも可能になる。
【0017】
[実施例1に係るMRI装置の構成]
次に、図2図6を用いて、実施例1に係るMRI装置の構成を説明する。図2は、実施例1に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、MRI装置100は、主に、静磁場磁石1と、傾斜磁場コイル2と、傾斜磁場電源3と、寝台4と、送信RF(Radio Frequency wave)コイル5と、受信RFコイル6と、RFアンプ7と、RF部8と、リアルタイムシーケンサ9と、撮影制御部10と、ホストコンピュータ20とを備える。
【0019】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1には、例えば、永久磁石、超伝導磁石などが利用される。
【0020】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置され、傾斜磁場電源3から電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。また、傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わせて形成され、3つのコイルは、傾斜磁場電源3から個別に電流の供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0021】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX、Y、Zの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0022】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。具体的には、傾斜磁場電源3は、リアルタイムシーケンサ9による制御の下、リアルタイムシーケンサ9から受信したシーケンス情報に従ってシーケンスを実行し、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0023】
寝台4は、被検者Pが載置される天板4aを備え、天板4aを、被検者Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0024】
送信RFコイル5は、高周波磁場を発生する。具体的には、送信RFコイル5は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、RFアンプ7からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0025】
受信RFコイル6は、MRIエコー信号を受信する。具体的には、受信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検者Pから放射されるMRIエコー信号を受信する。また、受信RFコイル6は、受信したMRIエコー信号をRF部8に送信する。
【0026】
RFアンプ7は、増幅したRFパルスを送信RFコイル5に送信する。具体的には、RFアンプ7は、RF部8から受信したRFパルスを増幅し、増幅したRFパルスを送信RFコイル5に送信する。
【0027】
RF部8は、ラーモア周波数に対応するRFパルスを生成し、また、MRIエコー信号の生データを生成する。具体的には、RF部8は、リアルタイムシーケンサ9による制御の下、リアルタイムシーケンサ9から受信したシーケンス情報に従ってシーケンスを実行し、RFパルスを生成する。また、RF部8は、生成したRFパルスをRFアンプ7に送信する。
【0028】
また、RF部8は、リアルタイムシーケンサ9による制御の下、リアルタイムシーケンサ9から受信したシーケンス情報に従ってシーケンスを実行し、受信RFコイル6からMRIエコー信号を受信する。また、RF部8は、受信したMRIエコー信号の生データを生成し、生成した生データを撮影制御部10に送信する。例えば、RF部8は、MRIエコー信号について、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換処理を施して生データを生成する。
【0029】
リアルタイムシーケンサ9は、傾斜磁場電源3及びRF部8を制御する。具体的には、リアルタイムシーケンサ9は、撮影制御部10から送信された制御データに従って、傾斜磁場電源3及びRF部8にシーケンス情報を送信する、なお、シーケンス情報とは、一連のシーケンスに従って傾斜磁場電源3及びRF部8を動作させるための情報である。
【0030】
撮影制御部10は、図2に示すように、画像再構成部11と、リアルタイムマネジャー部12と、生データ収集部13とを有する。ここで、実施例1における撮影制御部10は、図3に示すように、高速バスで相互に接続され、1枚の基板上に密な結合で配置されたCPUコア#1、CPUコア#2、及びCPUコア#3を備える。なお、図3は、実施例1における撮影制御部の構成を示すブロック図である。
【0031】
また、図3に示すように、CPUコア#1、CPUコア#2、CPUコア#3は、相互にCPUバス15で接続され、それぞれ独立したメモリ11a、メモリ12a、メモリ13aを有する。また、図3に示すように、CPUバス拡張部16が、CPUバス15と、ネットワークI/F17やその他のI/F18とに接続され、CPUコア#1、CPUコア#2及びCPUコア#3とCPU外部との間のデータ転送を行う。ここで、CPUバス15は、CPU外部との間のデータ転送速度に比較してより高速なデータ転送が可能な高速バスである。例えば、CPUバス15は、10倍以上高速なデータ転送を行う。
【0032】
実施例1における撮影制御部10は、複数のCPUコアそれぞれに、被検体の撮影に関して実行される処理それぞれを割り当てる。例えば、撮影制御部10は、図3に示すように、生データ収集部13をCPUコア#3に割り当て、リアルタイムマネジャー部12をCPUコア#2に割り当て、画像再構成部11をCPUコア#1に割り当てる。
【0033】
リアルタイムマネジャー部12は、撮影条件を解析し、解析した撮影条件に基づき撮影を制御する。具体的には、リアルタイムマネジャー部12は、ホストコンピュータ20から受信した撮影条件を解析し、解析した撮影条件に基づき、リアルタイムシーケンサ9を制御する。
【0034】
生データ収集部13は、生データを収集する。具体的には、生データ収集部13は、RF部8から送信された生データを収集し、アベレージング処理、バリカン処理に伴う位相補正、並べ替えなどの補正処理を行う。
【0035】
画像再構成部11は、生データから被検者Pの医用画像を生成する。具体的には、画像再構成部11は、生データ収集部13によって記憶されている生データに対してフーリエ変換などの再構成処理を施し、被検者Pの医用画像を生成する。
【0036】
ここで、実施例1における生データ収集部13、リアルタイムマネジャー部12及び画像再構成部11は、上記した一般的な処理の他に、動き補償処理も行う。図4図6を用いて動き補償処理を説明する。図4図6は、動き補償処理を説明するための図である。
【0037】
動き補償の手法では、MRI装置100は、横隔膜の動きを検出するための生データを画像再構成用の生データを収集する前に収集し、動き検出用の生データを用いて動き補償に用いられる補償用の制御データを生成し、補償用の制御データを用いて画像再構成用の生データを収集する。
【0038】
具体的には、リアルタイムマネジャー部12は、心電同期部(図示を省略)から被検体の心電信号を取得し、生データ収集部13が動き検出用の生データを図4に示すPAの期間に収集するように、リアルタイムシーケンサ9を制御する。
【0039】
すなわち、リアルタイムマネジャー部12による制御の下、図4に示すPAの期間、生データ収集部13は、図5のA1に示す領域を対象領域として撮影された生データを収集することになる。この時、被検体Pの体軸方向(図5のZ軸方向)にRFパルスが印加され、肝臓と肺との境界付近の領域が対象領域として撮影される。
【0040】
生データ収集部13は、収集した生データを、高速バスで相互に接続されたリアルタイムマネジャー部12に送信する。すると、リアルタイムマネジャー部12は、心拍ごとに、受信した生データに対してフーリエ変換を実行し、肝臓と肺との境界位置として横隔膜の位置を検出する。
【0041】
ここで、横隔膜の位置は、図6の(a)に示す呼気時の位置と(b)に示す吸気時の位置とを往復する。そこで、リアルタイムマネジャー部12は、心拍ごとに、例えば呼気時の位置を基準位置として横隔膜の位置の変位量を求め、この変位量が予め定められた許容範囲(例えば2.5mm)内であるか否かで、続くPCの期間に収集する生データを、画像再構成用の生データとして採用するか否かを決定する。
【0042】
また、リアルタイムマネジャー部12は、RFアンプ7が脂肪抑制用の励起を図4に示すPBの期間に実行するように、リアルタイムシーケンサ9を制御し、生データ収集部13が画像再構成用の生データを図4に示すPCの期間(心臓の拡張期に相当)に収集するように、リアルタイムシーケンサ9を制御する。この時、リアルタイムマネジャー部12は、画像再構成用の生データの動き補償に用いられる補償用の制御データを生成する。例えば、リアルタイムマネジャー部12は、横隔膜の変位量から心臓の位置の変化(例えば、スライス方向、リードアウト方向、フェーズエンコード方向の位置ずれ量)を推定する。そして、リアルタイムマネジャー部12は、推定した位置ずれ量から、傾斜磁場波形やRFパルスを変化させた補償用の制御データを生成し、生成した制御データをリアルタイムシーケンサ9に送信する。
【0043】
すると、リアルタイムマネジャー部12による制御の下、図4に示すPCの期間、生データ収集部13は、図5のA2に示す領域を対象領域として撮影された生データを収集することになる。
【0044】
生データ収集部13は、収集した生データを、高速バスで相互に接続されたリアルタイムマネジャー部12に送信する。すると、リアルタイムマネジャー部12は、先ほど求めた変位量が許容範囲内である場合には、続くPCの期間に生データ収集部13によって収集され、リアルタイムマネジャー部12に送信された当該生データを、高速バスで相互に接続された画像再構成部11に転送する。一方、変位量が許容範囲外である場合には、リアルタイムマネジャー部12は、続くPCの期間に生データ収集部13によって収集され、リアルタイムマネジャー部12に送信された当該生データを破棄する。なお、変位量が許容範囲外である場合には、生データ収集部13がPCの区間に生データを収集しないように、リアルタイムシーケンサ9を制御してもよい。
【0045】
なお、リアルタイムマネジャー部12、生データ収集部13、画像再構成部11との間で行われる情報の送受信は、上記した例に限られない。例えば、生データ収集部13によって収集された画像再構成用の生データは、リアルタイムマネジャー部12を経由せずに画像再構成部11に直接送信されるように制御してもよい。
【0046】
ホストコンピュータ20は、図2に示すように、記憶部21と、制御部22と、入力部23と、表示部24とを備える。
【0047】
記憶部21は、MRI装置100の全体制御に必要なデータなどを記憶する。
【0048】
制御部22は、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部22は、入力部23を介して入力された操作者からの指示に基づいて、リアルタイムマネジャー部12による撮影の制御などを行う。例えば、制御部22は、操作者によって撮影条件が指示されると、指示された撮影条件をリアルタイムマネジャー部12に送信する。
【0049】
入力部23は、操作者からの指示などを受け付ける。例えば、入力部23には、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチなどの選択デバイス、あるいはキーボードなどの入力デバイスなどが利用される。
【0050】
表示部24は、各種情報や医用画像データなどを表示する。例えば、表示部24には、液晶表示器などの表示デバイスなどが利用される。
【0051】
[実施例1の効果]
上記してきたように、実施例1に係るMRI装置100によれば、高速処理が要求される動き補償の手法にも簡易に対応することが可能になる。
【0052】
すなわち、従来の技術では、生データ収集処理や動き補償処理、あるいは再構成処理などは、外部バスやネットワークで相互に接続された複数のCPUそれぞれに割り当てられていた。このため、データ転送速度には限界があり、例えば別途ハードウェアを組み込んだ特別な構成にするなどして対応せざるを得ないといった難しさがあった。
【0053】
例えば、特別な構成としては、図7に示すような構成が考えられる。上記してきたように、動き補償の手法において、リアルタイムマネジャー部は、PAの期間に収集され生データ収集部から送信された生データを用いて横隔膜の位置を検出するとともに、横隔膜の位置の変位量を求めて補償用の制御データを生成する。そして、リアルタイムマネジャー部は、生成した補償用の制御データを、続くPCの期間前までにリアルタイムシーケンサ9に送信しなければならない。
【0054】
このため、生データ収集部、リアルタイムマネジャー部、画像再構成部それぞれが割り当てられたCPUが、図7に示すようにネットワークで相互に接続していると、CPU間のデータ転送速度は遅くならざるを得ず、図7のループ2の経路では、動き補償の手法に対応することは難しかった。このため、例えば、図7に示すように、別途生データバッファ基板を組み込むとともに生データバッファ基板とリアルマネジャー部とを接続するデータバスも新たに配設し、ループ1の経路を作らなければならないと考えられる。
【0055】
これに対し、実施例1に係るMRI装置100では、生データ収集処理や動き補償処理、あるいは再構成処理などは、外部バスでのデータ転送速度に比較してより高速なデータ転送が可能な高速バスで相互に接続されたCPUコアそれぞれに割り当てられる。この結果、CPU間では、従来に比較して例えば10倍以上高速なデータ転送が可能になり、そのままの構成で動き補償の手法に対応することが可能になる。
【0056】
すなわち、リアルタイムマネジャー部と生データ収集部との間のデータ転送が高速化され、リアルタイムマネジャー部と画像再構成部との間のデータ転送が高速化される結果、リアルタイムマネジャー部において横隔膜の位置検出や補償用の制御データの生成に割り当てられる時間が長くなり、リアルタイムマネジャー部は、これらの処理に十分に対応することが可能になる。また、基板上に配置されるCPUコア及びメモリは、処理ごとに独立に接続され、各処理が動作することによって互いに阻害されない構成である。このため、例えば再構成処理のような重い処理が行われていても、撮影制御処理や生データ収集処理が遅延したり停止したりすることもない。こうして、別途ハードウェアを組み込んだ特別な構成にすることなく、動き補償の手法に安価に対応することも可能になる。
【実施例2】
【0057】
さて、これまで実施例1として、複数のCPUコアそれぞれに、被検体の撮影に関して実行される処理それぞれが予め割り当てられた事例を説明してきた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、CPUコアに対する処理の割り当てを、撮影条件に基づき動的に行ってもよい。以下、図8及び図9を用いて、実施例2に係るMRI装置を説明する。図8は、実施例2に係るMRI装置の概要を説明するための図であり、図9は、実施例2に係るMRI装置による処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
例えば、図8に示すように、実施例2に係るMRI装置が、CPUコアを4つ備えていたとする。すると、生データ収集処理をCPUコア#3に割り当て、動き補償処理をCPUコア#2に割り当て、再構成処理をCPUコア#1に割り当てるといった固定的な割り当てでは、CPUコア#4がいずれの処理にも割り当てられずに空きとなってしまい、リソースの有効活用という観点からも望ましくない。
【0059】
この点、実施例2に係るMRI装置は、図8に示すように、撮影条件に基づき、例えば収集レートが高い撮影の場合には、CPUコア#4に生データ収集部を動的に割り当て、チャネル数が多い撮影の場合には、CPUコア#4に画像再構成部を動的に割り当てるといった制御を行う。
【0060】
すなわち、図9に示すように、実施例2においては、リアルタイムマネジャー部12が、ホストコンピュータから撮影条件を受け付けると(ステップS101肯定)、受け付けた撮影条件に基づき、収集レートが4倍速以上であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0061】
収集レートが4倍速以上である場合には(ステップS102肯定)、リアルタイムマネジャー部12は、CPUコア#4に生データ収集部を割り当てるよう制御する(ステップS103)。
【0062】
一方、収集レートが4倍速以上でない場合には(ステップS102否定)、リアルタイムマネジャー部12は、撮影条件に基づき、チャネル数が4チャネル以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0063】
4チャネル以上である場合には(ステップS104肯定)、リアルタイムマネジャー部12は、CPUコア#4に画像再構成部を割り当てるよう制御する(ステップS105)。
【0064】
一方、4チャネル以上でない場合には(ステップS104否定)、リアルタイムマネジャー部12は、初期設定の割り当てとなるよう制御する(ステップS106)。なお、初期設定の割り当てとして、生データ収集部か画像再構成部のいずれかを割り当てるように設定しておけば、どのような撮影条件の場合にもリソースを有効に用いることができる。
【0065】
[実施例2の効果]
上記してきたように、実施例2に係るMRI装置は、被検体の撮影に関して実行される処理それぞれの割り当てを、撮影条件に基づき判定し、判定結果に基づき、複数のCPUコアそれぞれに処理それぞれを割り当てる。このようなことから、実施例2に係るMRI装置によれば、撮影条件に応じて動的に割り当てを変更する結果、撮影ごとに最適なハードウェア構成で撮影を実行することが可能になり、効率的かつ高度な撮影を実現することが可能になる。
【実施例3】
【0066】
なお、これまで本発明の実施例1及び2について説明してきたが、本発明は上記の実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0067】
[CPUコア]
例えば実施例1では、MRI装置が、高速バスで相互に接続された複数のCPUコアとして、複数のCPUコアを有するCPUチップが配置された基板を備える事例(図10の(A)を参照)を説明してきた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、1つのCPUコアを有するCPUチップが複数配置された基板であってもよいし、図10の(B)に示すように、複数のCPUコアを有するCPUチップが複数配置された基板であってもよい。なお、例えば図10の(B)の場合、CPUチップとCPUチップとの間も、CPU間の専用バスによって高速なデータ転送が可能なものとする。
【符号の説明】
【0068】
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
5 送信RFコイル
6 受信RFコイル
7 RFアンプ
8 RF部
9 リアルタイムシーケンサ
10 撮影制御部
11 画像再構成部
12 リアルタイムマネジャー部
13 生データ収集部
20 ホストコンピュータ
21 記憶部
22 制御部
23 入力部
24 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10