【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の1つの実施様態は、
(1)第1成分であって、
(a)(i)基質の酸化を触媒することにより過酸化水素を生成する、該基質に対して特異的なオキシドレダクターゼ酵素(ここで、第1成分は、該オキシドレダクターゼ酵素が存在する媒質中に、ペルオキシダーゼと反応するのに十分な量の過酸化水素を生成するのに十分な量のオキシドレダクターゼ酵素を含む)、及び、
(ii)ペルオキシダーゼと反応するのに十分な量の過酸化水素を生成するのに十分な量のオキシドレダクターゼ酵素により触媒される反応において酸化可能である基質、
のうちの一方、
(b)過酸化水素と、酸素受容体として作用し過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩との間の反応を触媒するペルオキシダーゼ酵素(ここで、該ペルオキシダーゼ酵素はバイオサイドを治療有効濃度で生成するのに十分な量で存在する)、並びに、
(c)存在する場合、該酵素及び該酸化可能な基質が安定である水性又は非水性媒質、
を含む第1成分と、
(2)第2成分であって、
(a)(1)に存在しない、該オキシドレダクターゼ酵素及び該オキシドレダクターゼ酵素により触媒される反応において酸化可能である該基質のうちの他方、
(b)過酸化水素と反応して、酸素受容体として作用し、治療有効濃度のバイオサイドを形成するのに十分な量のバイオサイドを形成することができる塩、並びに、
(c)オキシドレダクターゼ酵素及び酸化可能な基質のうちの他方並びに酸素受容体として作用する該塩が安定である水性又は非水性媒質、
を含む第2成分と、
を含み、但し、第1成分及び第2成分の媒質のうちの一方は水性である治療組成物である。
【0026】
1つの代替例において、(1)の媒質及び(2)の媒質は両方水性である。別の代替例において、(1)及び(2)の媒質のうちの一方は水性であり、(1)及び(2)の媒質のうちの他方は非水性である。
【0027】
典型的には、オキシドレダクターゼ酵素は、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリコールオキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ及びアミンオキシダーゼからなる群から選択される。典型的にはペルオキシダーゼ酵素は、ラクトペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼからなる群から選択される。この組成物は、追加のペルオキシダーゼ酵素をさらに含みうる。
【0028】
典型的には、酸素受容体として作用し、過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩はチオシアン酸塩、ヨウ素酸塩及び塩素酸塩からなる群から選択される陰イオンのアルカリ金属塩である。典型的には、アルカリ金属塩はナトリウム塩及びカリウム塩からなる群から選択される。
【0029】
この組成物は、カタラーゼに特異的な阻害剤を有効量でさらに含みうる。典型的には、カタラーゼに特異的な阻害剤は、アスコルビン酸の塩である。典型的には、アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、パルミチン酸アスコルビル及びそれらの混合物からなる群から選択される。この組成物は、鉄塩をさらに含みうる。典型的には、鉄塩は、硫酸第一鉄、塩化第一鉄及びヨウ化第一鉄からなる群から選択される。
【0030】
この組成物は、形成されるバイオサイドの収率又は蓄積を増加させるのに有効な量のアミノヘキソースをさらに含みうる。典型的には、アミノヘキソースは、アミノグルコースである。典型的には、アミノグルコースは、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びそれらの混合物から選択される。
【0031】
本組成物において、媒質は、水、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール及びそれらの混合物からなる群から各々独立して選択されうるが、媒質のうちの少なくとも1つはかなり大きな割合の水を含む。
【0032】
この組成物は、緩衝剤をさらに含みうる。典型的には、緩衝剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される。
【0033】
この組成物は、リゾチーム、ラクトフェリン又はステロイドのうちのいずれか若しくはすべてをさらに含みうる。典型的には、ステロイドは、ヒドロコルチゾン、ベクロメタゾン、ブデノシド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン並びにそれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、生物学的等価体、加水分解産物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される。好ましくは、ステロイドはヒドロコルチゾンである。
【0034】
本発明による治療組成物の別の実施形態は、
(1)過酸化水素と、酸素受容体として作用し過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩との間の反応を触媒するペルオキシダーゼ酵素、(ここで該ペルオキシダーゼ酵素は該バイオサイドを治療有効濃度で生成するのに十分な量で存在する)、
(2)過酸化水素と反応して、酸素受容体として作用し、治療有効濃度のバイオサイドを形成するのに十分な量のバイオサイドを形成することができる塩、及び、
(3)該ペルオキシダーゼ酵素及び酸素受容体として作用する該塩が安定である水性媒質、
を含む組成物である。
【0035】
本発明の特定の実施形態は、
(1)(a)100グラムあたり
(i)約80gの水、
(ii)約20gのグリセロール、及び、
(iii)約5.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.01ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(2)(a)100グラムあたり
(i)約95.0gの水、
(ii)約5.0gのプロピレングリコール、及び、
(iii)約25.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.1ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(3)(a)100グラムあたり
(i)約50.0gの水、
(ii)約100.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約49.5gのグリセロール、及び、
(iv)約0.5gのクエン酸、
を含む第1成分、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約1.0ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(4)(a)100グラムあたり
(i)約25.0gの水、
(ii)約0.75IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約75.0gのソルビトール、及び、
(iv)約0.5gのラクトフェリン、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.8ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(5)(a)100グラムあたり
(i)約40.0gの水、
(ii)約10.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約1.5gのリゾチーム、及び、
(iv)約60.0gのポリエチレングリコール、
を含む第1成分、並びに、
(b)(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.9ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(6)(a)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約80.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約50.0IUのグルコースオキシダーゼ、及び、
(iv)約20.0gのグリセリン、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約0.15ミリモルのβ−D−グルコース、及び、
(iii)約0.1ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(7)(a)100グラムあたり
(i)約94.0gの水、
(ii)約5.0gのグリセロール、
(iii)約1.0gのソルビン酸カリウム、及び、
(iv)約0.75IUのミエロペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.25ミリモルの塩素酸ナトリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(8)(a)100グラムあたり
(i)約45.0gの水、
(ii)約100.0IUのミエロペルオキシダーゼ、
(iii)約5000IUのガラクトースオキシダーゼ、及び、
(iv)約50.0gのグリセロール、
を含む第1成分、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約1.0ミリモルのチオシアン酸カリウム、及び、
(iii)約60ミリモルのD−ガラクトース、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(9)(a)100グラムあたり
(i)約90.0gの水、
(ii)約50.0IUの西洋ワサビペルオキシダーゼ、及び、
(iii)約10.0gのポリプロピレングリコール、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約99.25gの水、
(ii)約0.001ミリモルのヨウ素酸カリウム、及び、
(iii)約0.75gのアスコルビン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(10)(a)100グラムあたり
(i)約99.0gの水、
(ii)約1.0gのグリセリン、
(iii)約50.0ミリモルのコリン、及び、
(iv)約95.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約1000IUのコリンオキシダーゼ、及び、
(iv)約0.6ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(11)(a)100グラムあたり
(i)約100gのグリセリン、及び、
(ii)約3000IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.6ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(12)(a)100グラムあたり
(i)約80.0gの水、
(ii)約20.0gのソルビトール、及び、
(iii)約5.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約80.0gの水、
(ii)約20.0gのグリセロール、及び、
(iii)約0.0001ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、並びに、
(13)(a)100グラムあたり
(i)約75.0gの水、
(ii)約25.0gのグリセロール、
(iii)約2000IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iv)約1000IUの西洋ワサビペルオキシダーゼ、
(v)約0.01gのアスコルビン酸ナトリウム、
(vi)約0.05gの硫酸第一鉄、及び、
(vii)約0.25IUのグルコースオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約75.0gの水、
(ii)約25.0gのグリセロール、
(iii)約0.05ミリモルのヨウ素酸カリウム、及び、
(iv)約40.0ミリモルのβ−D−グルコース、
を含む第2成分、
を含む組成物、
の群から選択される治療組成物を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の別の様態は、肺の疾患又は状態を処置するためにそれらを必要とする患者において本発明による組成物を使用する方法である。一般に本方法は、組成物の成分が肺に達し、肺内でバイオサイドを発生させて肺の疾患又は状態を処置する経路により肺の疾患又は状態を罹患している患者に本発明による組成物を投与するステップを含む。
【0037】
1つの代替例において、疾患又は状態は、肺炎球菌性肺炎、連鎖球菌性肺炎、ブドウ球菌性肺炎、ヘモフィルスの感染により引き起こされる肺炎及びマイコプラズマ肺炎のような肺炎である。或いは、疾患又は状態は、急性呼吸不全又は急性呼吸促迫症候群である。
【0038】
典型的には、組成物は、ベンチレータ、ベポライザー又はネブライザーを介して肺に取り込まれる。
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの実施様態は、
(1)第1成分であって、
(a)(i)基質の酸化を触媒することにより過酸化水素を生成する、該基質に対して特異的なオキシドレダクターゼ酵素(ここで、第1成分は、該オキシドレダクターゼ酵素が存在する媒質中に、ペルオキシダーゼと反応するのに十分な量の過酸化水素を生成するのに十分な量のオキシドレダクターゼ酵素を含む)、及び、
(ii)ペルオキシダーゼと反応するのに十分な量の過酸化水素を生成するのに十分な量のオキシドレダクターゼ酵素により触媒される反応において酸化可能である基質、
のうちの一方、
(b)過酸化水素と、酸素受容体として作用し過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩との間の反応を触媒するペルオキシダーゼ酵素(ここで、該ペルオキシダーゼ酵素は該バイオサイドを治療有効濃度で生成するのに十分な量で存在する)、並びに、
(c)存在する場合、該酵素及び該酸化可能な基質が安定である水性又は非水性媒質、
を含む第1成分と、
(2)第2成分であって、
(a)(1)に存在しない、該オキシドレダクターゼ酵素及びオキシドレダクターゼ酵素により触媒される反応において酸化可能である該基質のうちの他方、
(b)過酸化水素と反応して、酸素受容体として作用し、治療有効濃度のバイオサイドを形成するのに十分な量のバイオサイドを形成することができる塩、並びに、
(c)該オキシドレダクターゼ酵素及び該酸化可能な基質のうちの他方並びに酸素受容体として作用する該塩が安定である水性又は非水性媒質、
を含む第2成分と、
を含み、但し、第1成分及び第2成分の媒質のうちの一方は水性である治療組成物である。この実施形態は特に、追加の内因性過酸化水素がないか又は疾患経過により生成される最小量の内因性過酸化水素のみがある真菌により引き起こされるような疾患及び状態の処置に適している。したがって、この実施形態において、酸化可能な基質及び基質に特異的なオキシドレダクターゼ酵素は、有効量のバイオサイドを生成するのに十分な量の過酸化水素を確かにするために添加される。
【0040】
典型的には、組成物は、約0.5から約500国際単位のオキシドレダクターゼ酵素を含む。典型的には、組成物は、約0.015から約0.6ミリモルの酸化可能な基質を含む。典型的には、組成物は、約0.05から約30国際単位のペルオキシダーゼ酵素を含む。典型的には、組成物は、酸素受容体として作用する塩を約0.0001から約0.01ミリモル含む。
【0041】
1つの代替例において、第1及び第2成分の媒質は、両方水性媒質である。別の代替例において、第1成分の媒質は、グリセロールのような非水性媒質でありうる。本明細書で使用される場合、用語「水性」は、媒質中にかなりの割合の水が存在する限りグリセロール又はソルビトールのような非水性成分を排除しない。
【0042】
成分は、以下の実施例に示されるように第1と第2の成分の間で置き換え可能である。例えば、オキシドレダクターゼ酵素により触媒される反応において酸化可能な基質は第1成分に含まれ、オキシドレダクターゼ酵素は第2成分に含まれうる。
【0043】
1種を超えるペルオキシダーゼ酵素を含みうる。例えば、第1成分は、ラクトペルオキシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼの両方を含みうる。他のペルオキシダーゼの組合せを使用しうる。
【0044】
第1成分及び第2成分を別々に調製し、使用する前に混合することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語国際単位(IU)は、酵素に関して定義された標準アッセイ条件下、1分間あたり1マイクロモルの基質の変換を触媒する酵素の量として定義される。
【0046】
オキシドレダクターゼ酵素は、典型的にはグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリコールオキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ及びアミンオキシダーゼからなる群から選択される。或いは参考として明細書中に援用されるSchillerらによる米国特許第4,340,448号に記載されるように、他の酵素が代替として使用されうる(例えば、ニトロエタンオキシダーゼ、D−アスパラギン酸オキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、ピリドキサミンリン酸オキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アリールアルコールオキシダーゼ、ピリドキシン4−オキシダーゼ、デヒドロオロチン酸オキシダーゼ、ラソステロールオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、N−メチルアミノ酸オキシダーゼ、N
6−メチルリシンオキシダーゼ、6−ヒドロキシ−L−ニコチンオキシダーゼ、6−ヒドロキシ−D−ニコチンオキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)。
【0047】
これらの酵素に関して、グルコースオキシダーゼはβ−D−グルコース、水及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素及びグルコン酸を生成する。ガラクトースオキシダーゼは、D−ガラクトース及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素及びD−ガラクト−ヘキソジアルドースを生成する。尿酸オキシダーゼは、尿酸、水及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素、アラントイン及び二酸化炭素を生成する。コリンオキシダーゼは、コリン及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素及びベタインアルデヒドを生成する。D−アミノ酸オキシダーゼは、D−プロリン、D−メチオニン、D−イソロイシン、D−アラニン、D−バリン又はD−フェニルアラニンのようなD−アミノ酸の水及び酸素との反応を触媒し、過酸化水素、アンモニア及び酸化されたD−アミノ酸に相当するα−ケト酸を生成する。D−グルタミン酸オキシダーゼは、D−グルタミン酸、水及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素、アンモニア及び2−ケトグルタル酸を生成する。グリシンオキシダーゼは、グリシン、水及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素、アンモニア及びグリオキシル酸を生成する。グリコール酸オキシダーゼ(2−ヒドロキシ酸オキシダーゼとしても公知)は、グリコール酸及び酸素の反応を触媒し、2−ケト酢酸及び過酸化水素を生成する。L−ソルボースオキシダーゼは、L−ソルボース及び酸素の反応を触媒し、5−デヒドロ−D−フルクトース及び過酸化水素を生成する。アルコールオキシダーゼは、低級一価アルコール又は不飽和アルコール及び酸素の反応を触媒し、相当するアルデヒド及び過酸化水素を生成する。アミンオキシダーゼは、典型的には第一級アミンであるが、場合によっては第二級又は第三級アミンでもあるアミン、水及び酸素の反応を触媒し、相当するアルデヒド、アンモニア及び過酸化水素を生成する。例示的な反応において、グルコースオキシダーゼは、外耳に適用する間にβ−D−グルコース、水及び酸素の反応を触媒し、過酸化水素及びグルコン酸を生成する。
【0048】
ペルオキシダーゼ酵素は、典型的にはラクトペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼのうちの一方である。
【0049】
酸素受容体として作用し過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩は、典型的にはチオシアン酸塩、ヨウ素酸塩又は塩素酸塩のような陰イオンのアルカリ金属塩である。このアルカリ金属塩は、典型的にはナトリウム又はカリウムの塩であるが、リチウム又はセシウムのような他のアルカリ金属塩が代わりに使用されうる。
【0050】
本発明による組成物における使用に適した多くの好ましいオキシダーゼの特性が公知である。例えば、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)由来のグルコースオキシダーゼは、150,000の分子量を有することが決定されている(Pazurら(1965))。この酵素は、2分子の酸化還元補酵素フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含む糖タンパク質である。アミノ酸組成は決定されている。酵素の等電点は4.2である。酵素の最適pHは5.5であり、4〜7の広範なpH範囲を有する。酵素の阻害剤は、一価の銀イオン並びに二価の水銀及び銅イオンを含む。
【0051】
ダクチリウムデンドロイデス(Dactylium dendroides)由来のガラクトースオキシダーゼは、分子量42,000を有する。これは1モルあたり1グラム原子の銅を含む金属酵素である。アミノ酸組成は決定されている。酵素の最適pHは7である。
【0052】
ブタ肝臓又は牛肉肝臓由来の尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)は、分子量100,000を有する。これは1モルあたり1グラム原子の銅を含む金属酵素である。酵素の等電点は6.3である。酵素の最適pHは9である。
【0053】
ブタ腎臓由来のD−アミノ酸オキシダーゼは、分子量90,000を有する。この酵素は、2分子のフラビンアデニンジヌクレオチドを含む糖タンパク質である。酵素の最適pHは9.1である。特定の重金属は酵素の阻害剤である。
【0054】
酸化可能な基質は、典型的には治療組成物中に液体1ミリリットルあたり約0.015ミリモルから組成物1グラムあたり約0.6ミリモルの濃度で存在する。好ましくは、酸化可能な基質は、治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.025ミリモルから組成物1グラムあたり約0.1ミリモルの濃度で存在する。酸化受容体として作用する塩は、典型的には治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.0001ミリモルから約0.01ミリモルの濃度で存在する。酸素受容体として作用する塩は、好ましくは治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.001ミリモルから約0.006ミリモルの濃度で存在する。
【0055】
典型的には、オキシドレダクターゼ酵素は治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.5IUから約500IUの濃度で存在する。好ましくは、オキシドレダクターゼ酵素は治療組成物中に組成物1グラムあたり約10IUから約40IUの濃度で存在する。オキシドレダクターゼ酵素は、必要に応じて1グラムあたり又は1ミリリットルベースの国際単位で濃度を明記したラベルを有する乾燥又は液体の形態で供給される。
【0056】
上記のように、本発明による治療組成物はまた、第2の酵素を有する。この第2の酵素は、ペルオキシダーゼである。適したペルオキシダーゼは、ラクトペルオキシダーゼである。ラクトペルオキシダーゼは糖タンパク質であり、1つの商業的実施形態において、牛乳由来の凍結乾燥粉末である。この商業的ペルオキシダーゼは、80IU/mgの活性及びヨウ素化L−チロシンとして推定分子量93,000を有する。ラクトペルオキシダーゼについて報告される物理化学的特性として、分子量78,000、アミノ酸組成を反映する部分比容0.74、及びラクトペルオキシダーゼ1モルあたり1.0モルのヘムの存在が挙げられる。上記のように、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼを含む他のペルオキシダーゼが代わりとして使用されうるが、これらに限定されない。
【0057】
ペルオキシダーゼは、典型的には治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.05IUから約30IUの濃度で存在し、好ましくは、ペルオキシダーゼは治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.1IUから約1.0IUの濃度で存在する。
【0058】
酵素システムの操作可能な整合性は、商業的グルコースオキシダーゼ及び粘膜組織に存在するカタラーゼの存在により影響されうる。本発明の酵素システムの外部にあるカタラーゼは、過酸化水素をめぐってペルオキシダーゼと競合する。カタラーゼの存在を介して過酸化水素の損失を減らすため、カタラーゼに特異的な酵素阻害剤は有効量で、有利に本発明による治療組成物に取り込まれうる。カタラーゼに特異的な、適した酵素阻害剤として、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、パルミチン酸アスコルビル又はこれらの混合物のようなアスコルビン酸の塩が挙げられるがこれらに限定されず、本発明による治療組成物中に含まれうる。本発明による組成物中のアスコルビン酸塩の有効濃度は、治療組成物1グラムあたり約1×10
−6から約1×10
−4ミリモルである。硫酸第一鉄、塩化第一鉄又はヨウ化第一鉄のような鉄塩はまた、カタラーゼ阻害剤の役割をするアスコルビン酸塩の増強剤として本発明による治療組成物に取り込まれうる。特に好ましい鉄塩は、硫酸第一鉄である。
【0059】
本発明による治療組成物はまた、酸化陰イオン殺生剤の収率又は蓄積を増加させるために有利にアミノヘキソースとともに処方され、アミノヘキソースの量は酸化陰イオン殺生剤の収率又は蓄積を増加させるために効果的である。典型的には、アミノヘキソースはアミノグルコースであるが、アミノガラクトースのような他のアミノヘキソースが代わりとして使用されうる。典型的には、アミノグルコースはグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。アミノグルコースは、典型的には治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.0001ミリモルから約0.002ミリモルの濃度で存在する。好ましくは、アミノグルコースは治療組成物中に組成物1グラムあたり約0.0003ミリモルから約0.001ミリモルの濃度で存在する。
【0060】
上記の媒質は、典型的には水、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール及びそれらの混合物からなる群から各々独立して選択されるが、媒質のうちの少なくとも1つはかなり大きな割合の水を含む。本明細書で使用される場合、用語「かなり大きな割合の水」は、イオンが効果的に溶媒和され、イオン種の関与を必要とする酵素反応が効果的に進められうるように2つの成分が混合される場合に十分な量の水として定義される。さらに、非水性媒質は、酵素に対して不変性であり、酵素により触媒される反応の触媒作用に適した媒質として供される実質的に等価な特性を有する溶媒を含みうる。この媒質は、典型的には組成物中に総濃度約80重量パーセントから約96重量パーセントで存在する。好ましくは、この媒質は、組成物中に総濃度約90重量パーセントから約96重量パーセントで存在する。媒質及びその濃度は、適切な圧力応答応用特性を有する組成物を提供するように選択される。
【0061】
いくつかの代替例において、治療組成物の活性化された酵素システムの生成物は、グルコン酸のような弱い有機酸を含む。この場合、これは有機酸を中和するための緩衝剤を有する組成物を製剤化するのに有利である。適した緩衝剤として、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム又はステアリン酸カルシウムのようなステアリン酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいステアリン酸の塩は、ステアリン酸ナトリウムである。これらの塩は、組成物中に約6.0重量パーセントまでの濃度で存在しうる。典型的には、この塩は組成物中に約2.0重量パーセントから約6.0重量パーセントの量で存在する。クエン酸はまた、緩衝剤として使用されうる。
【0062】
この組成物は、ソルビン酸ナトリウム又はソルビン酸カリウムのようなソルビン酸の塩をさらに含みうる。好ましいソルビン酸の塩は、ソルビン酸カリウムである。
【0063】
酵素のリゾチーム、タンパク質のラクトフェリン及び抗炎症薬剤(例えば、これらに限定されないがヒドロコルチゾン、ベクロメタゾン、ブデノシド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロンを含むステロイド)並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、生物学的等価体、加水分解産物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグのような補助的な治療物質は、本発明の酵素製剤に添加されうる。特に好ましいステロイドは、ヒドロコルチゾンである。
【0064】
着色剤、キレート剤、防腐剤及び安定剤を含む薬学分野において一般に公知の他の成分は、本発明による治療組成物に取り込まれうるが、但し、これらの追加の成分は、本発明による組成物の活性が依存する酸化還元反応を阻害しない。
【0065】
流動性を有する液体の形態における二酵素治療組成物は、任意の適した方法(例えば乾燥成分を液体成分にかき混ぜながら均一の混合物が得られるまで混合することにより)で調製されうるが、但し、酵素を含むせん断性成分は、これら成分に対するせん断衝撃を最小にするために最後に添加される。酵素が添加される場合、酵素を含むタンパク質を変性する傾向を有する極端な温度、pH及びイオン強度は避けられるべきである。以下の組成物製剤の流動性を有する液体は、以下に記載されるように使用されうる。例えば、液体は、適用のために適したディスペンサーに充填されうる。
【0066】
本発明の別の実施形態において、オキシドレダクターゼ酵素及び酸化可能な基質は除外される。本実施形態において、組成物はペルオキシダーゼ酵素及び酸素受容体として作用する塩を含み、組成物は肺で起こるように内因性の過酸化水素を分解することにより作用する。
【0067】
一般的に組成物の本実施形態は、
(1)過酸化水素と、酸素受容体として作用し過酸化水素と反応してバイオサイドを形成することができる塩との間の反応を触媒するペルオキシダーゼ酵素(ここで該ペルオキシダーゼ酵素は該バイオサイドを治療有効濃度で生成するのに十分な量で存在する)、
(2)過酸化水素と反応して、酸素受容体として作用し、治療有効濃度のバイオサイドを形成するのに十分な量のバイオサイドを形成することができる塩、及び、
(3)該ペルオキシダーゼ酵素及び酸素受容体として作用する該塩が安定である水性媒質、
を含む。
【0068】
ペルオキシダーゼ酵素及び酸素受容体として作用する塩は上記のとおりである。
【0069】
典型的には、この代替例において、組成物は約0.05から約30国際単位のペルオキシダーゼ酵素を含む。典型的には、組成物は約0.0001から約0.01ミリモルの酸素受容体として作用する塩を含む。
【0070】
組成物は、実施例に示されるように2つのパートに製剤化されうる。この代替例において、1つのパートはペルオキシダーゼ酵素を含み、他方のパートは酸素受容体として作用する塩を含む。この代替例において、1つのパートは非水性媒質を含みうるが、但し、2つのパートが合わせられる場合、合わせた媒質は水性である。しかしながらこの媒質は、これらに限定されないがグリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール又はこれらの混合物のような上記の非水性溶媒をさらに含む。
【0071】
上記のように、この組成物の実施形態は、カタラーゼに効果的な阻害剤を有効量でさらに含みうる。この組成物の実施形態は、上記のように鉄塩をさらに含みうる。この組成物の実施形態はまた、上記のように形成されるバイオサイドの収率又は蓄積を増加させるのに有効な量のアミノヘキソースをさらに含みうる。この組成物の実施形態はまた、上記のように緩衝剤をさらに含みうる。さらにこの組成物の実施形態は、上記のようにリゾチーム、ラクトフェリン又はステロイドのいずれか又はすべてをさらに含みうる。
【0072】
本発明の特定の実施形態は、
(1)(a)100グラムあたり
(i)約80gの水、
(ii)約20gのグリセロール、及び、
(iii)約5.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.01ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(2)(a)100グラムあたり
(i)約95.0gの水、
(ii)約5.0gのプロピレングリコール、及び、
(iii)約25.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.1ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(3)(a)100グラムあたり
(i)約50.0gの水、
(ii)約100.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約49.5gのグリセロール、及び、
(iv)約0.5gのクエン酸、
を含む第1成分、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約1.0ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(4)(a)100グラムあたり
(i)約25.0gの水、
(ii)約0.75IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約75.0gのソルビトール、及び、
(iv)約0.5gのラクトフェリン、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.8ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(5)(a)100グラムあたり
(i)約40.0gの水、
(ii)約10.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約1.5gのリゾチーム、及び、
(iv)約60.0gのポリエチレングリコール、
を含む第1成分、並びに、
(b)(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.9ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(6)(a)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約80.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iii)約50.0IUのグルコースオキシダーゼ、及び、
(iv)約20.0gのグリセリン、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約0.15ミリモルのβ−D−グルコース、及び、
(iii)約0.1ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(7)(a)100グラムあたり
(i)約94.0gの水、
(ii)約5.0gのグリセロール、
(iii)約1.0gのソルビン酸カリウム、及び、
(iv)約0.75IUのミエロペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.25ミリモルの塩素酸ナトリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(8)(a)100グラムあたり
(i)約45.0gの水、
(ii)約100.0IUのミエロペルオキシダーゼ、
(iii)約5000IUのガラクトースオキシダーゼ、及び、
(iv)約50.0gのグリセロール、
を含む第1成分、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約1.0ミリモルのチオシアン酸カリウム、及び、
(iii)約60ミリモルのD−ガラクトース、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(9)(a)100グラムあたり
(i)約90.0gの水、
(ii)約50.0IUの西洋ワサビペルオキシダーゼ、及び、
(iii)約10.0gのポリプロピレングリコール、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約99.25gの水、
(ii)約0.001ミリモルのヨウ素酸カリウム、及び、
(iii)約0.75gのアスコルビン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(10)(a)100グラムあたり
(i)約99.0gの水、
(ii)約1.0gのグリセリン、
(iii)約50.0ミリモルのコリン、及び、
(iv)約95.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、
(ii)約1000IUのコリンオキシダーゼ、及び、
(iv)約0.6ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(11)(a)100グラムあたり
(i)約100gのグリセリン、及び、
(ii)約3000IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約100gの水、及び、
(ii)約0.6ミリモルのヨウ素酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、
(12)(a)100グラムあたり
(i)約80.0gの水、
(ii)約20.0gのソルビトール、及び、
(iii)約5.0IUのラクトペルオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約80.0gの水、
(ii)約20.0gのグリセロール、及び、
(iii)約0.0001ミリモルのチオシアン酸カリウム、
を含む第2成分、
を含む組成物、並びに、
(13)(a)100グラムあたり
(i)約75.0gの水、
(ii)約25.0gのグリセロール、
(iii)約2000IUのラクトペルオキシダーゼ、
(iv)約1000IUの西洋ワサビペルオキシダーゼ、
(v)約0.01gのアスコルビン酸ナトリウム、
(vi)約0.05gの硫酸第一鉄、及び、
(vii)約0.25IUのグルコースオキシダーゼ、
を含む第1成分、並びに、
(b)100グラムあたり
(i)約75.0gの水、
(ii)約25.0gのグリセロール、
(iii)約0.05ミリモルのヨウ素酸カリウム、及び、
(iv)約40.0ミリモルのβ−D−グルコース、
を含む第2成分、
を含む組成物、
の群から選択される治療組成物を含むが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の別の様態は、肺の疾患又は状態を処置するためにそれらを必要とする患者において本発明による組成物を使用する方法である。一般に本方法は、組成物の成分が肺に達し、肺内でバイオサイドを発生させて肺の疾患又は状態を処置する経路により肺の疾患又は状態を罹患している患者に本発明による組成物を投与するステップを含む。
【0074】
本組成物は、ベンチレータ、ベポライザー又はネブライザーを介して肺に導入されうる。酵素、過酸化水素及び基質間の反応は非常に速いので、典型的には本組成物は2つのパートで投与され、第1成分及び第2成分は別々に投与される。そうでなければこの反応は、上部肺気道(upper lung tract)においてより強力に起こりうるが、肺の下部においては十分強力ではない。
【0075】
非常に低用量の吸入療法は最小限の副作用で最適な治療を提供するので、エアロゾル治療はほぼ理想的なリスク対効果比を達成できるようになる。しかしながら、エアロゾル化により投与される薬物の治療効果は、薬物自体の薬理学的特性だけでなく、送達デバイスの特徴にも依存する。送達デバイスの特徴は、肺に沈着する薬物の量及び気道における薬物分布のパターンに影響を与える。
【0076】
エアロゾルは微粒子の浮遊懸濁物である。この粒子は固体又は液体でありうる。エアロゾル粒子は多分散であり(すなわち粒子は様々なサイズである)、エアロゾル粒子のサイズ分布は対数正規分布で最もよく記載される。粒子は積もり(堆積)、お互いに付着し(凝集する)、管組織及び粘膜などの組織に付着する(沈着)する傾向がある。エアロゾルにより送達される粒子は、これらの空気力学的挙動に基づいて都合よく特徴づけられうる。1つのパラメーターは空気動力学的中央粒子径(MMAD)である。定義により1μMのMMADを有する粒子分布は、単位密度及び1μMの直径の液滴と同じ平均沈降速度を有する。
【0077】
呼吸器システムに影響を及ぼす変数でもあるエアロゾル粒子のサイズは、気道における吸入エアロゾルの沈着に影響を与える。一方で、直径が10μMより大きい粒子は肺に沈着する可能性はない。しかしながら、0.5μMより小さい粒子は肺胞に到達する可能性があるか又は吐き出されうる。したがって、1μMと5μMの間の直径を有する粒子は、下気道に最も効果的に沈着される。これらのサイズの粒子は、肺の疾患又は状態の処置のための治療物質の送達に最も効果的である。
【0078】
呼吸に適した液滴内に含まれるエアロゾル質量のパーセンテージ(すなわち、5μMより小さい直径を有する液滴)は、使用される吸入デバイスに依存する。ゆっくりで安定した吸入は、肺の末梢部分に浸透する粒子の数を増加させる。吸入容量が増加すると、エアロゾルは気管支樹へとより末梢に浸透しうる。吸入の完了による呼吸停止期間は、肺の末梢に浸透した粒子を重力により気道へと定着させることができる。典型的に急性喘息を有する患者において観察される増加した吸気流速は、吸入した薬物の損失の増加を生じる。これはエアロゾル粒子が上気道及び最初のいくらかの気管支部分の分岐で衝突するために起こる。肺気道疾患と関連する他の因子はまた、エアロゾル沈着を変えうる。
【0079】
エアロゾルの投与において、鼻は肺に粒子が沈着する前に効率的に粒子を捕捉してしまう。そのためエアロゾル化粒子の口呼吸が好ましい。エアロゾル化粒子は多くの部位から失われる。一般的に小気道に到達するネブライザー投与の量は、≦15%である。多くの場合、約90%の吸入用量が飲み込まれ、次いで消化管から吸収される。気道に到達する用量のごくわずかはまた血流に吸収される。そのため飲み込まれた用量の一部は吸収され、経口製剤と同様の方法で代謝されるが、気道に到達する用量の一部は、血流に吸収され、静脈内投与と同様の方法で代謝される。
【0080】
(肺へのエアロゾル送達を介して)薬物が局所的に投与される場合、望ましい治療効果は局所組織濃度に依存する。さらに経肺吸収に影響を与える因子を考慮するべきである。
【0081】
治療エアロゾルは一般に、ジェットネブライザー内での液体の噴霧により又は静止して貯蔵している液体の振動(超音波噴霧)により生成される。製剤化前のエアロゾルもまた投与されうる。後者の例として、MDI及びドライパウダーデバイスが挙げられる。
【0082】
すべてのジェットネブライザーは同様な操作原理を介して作動し、普通の香水アトマイザーに代表される。液体は密封容器の下部に配置され、エアロゾルは、デバイスを通るコンプレッサー又は圧縮されたガスボンベのいずれかからの空気の噴出により発生される。超音波ネブライザーは、約1mHzの振動数でトランスデューサー上にある液体を振動させることによりエアロゾルを生成する。これはデバイスから患者に気流により運ばれる粒子の集団を生成する。粒子の量、サイズ及び分布の異なるエアロゾルがネブライザーにより生成され、これはネブライザーの設計及び操作方法に依存する。すべてのネブライザーが最適な効果を提供するのに必要とされる仕様(MMAD、流れ、出力)を有するわけではないことを注意すべきである。近年の研究は、健常ボランティアにおいて肺沈着を4つのネブライザーで比較し、ネブライザーに最初に充填された用量のパーセンテージで表される平均肺エアロゾル沈着が2〜19%の範囲であったことを示した。
【0083】
利便性及び有効性のため、定量噴霧吸入器(MDI)は、外来患者への吸入薬物送達のために使用されるおそらく最も広く使用される治療エアロゾルである。現在使用のほとんどのDMIは、プロペラントに薬物の懸濁液を含む。2つの主要なMDIコンポーネントがある:(i)プロペラント、活性薬剤及び定量チャンバーを含む密閉のプラスチック又は金属シリンダーであるキャニスター;及び(ii)キャニスターを保持し患者の気道に向かって放出されるエアロゾルを導く成形されたプラスチック容器であるアクチュエーター。
【0084】
プロペラント混合物は最適な薬物送達に望ましい蒸気圧及びスプレー特性を達成するように選択される。クロロフルオロカーボンは以前使用されていたが、環境問題のため非塩素化プロペラントが現在使用されている。通常1μMより小さい微粉化された薬物粒子を、加圧(液化)プロペラントに懸濁させる。薬物が凝集するのを防ぐために、オレイン酸ソルビタン、レシチン又はオレイン酸のような界面活性剤が典型的に添加される。他の界面活性剤は当該分野において公知である。定量チャンバーには通常25から100μLが入る。定量チャンバーの内容物は、キャニスターがアクチュエーターに押し下げられたときに放出される。ほとんど即座にプロペラントが蒸発し始め、放出された液体の大きな推進力で前に推進される粒子への分解を生じる。最適な肺の薬物沈着のために、薬剤は約5秒続くゆっくりな吸気の始まりで放出され、10秒の呼吸停止が続く。いくつかの吸入補助剤がMDIの有効性を改善するために考案されている。これらは手と呼吸の調整動作がうまくいかない患者に最も有用である。短いチューブ(例えば、円錐状又は球状)は、エアロゾルをまっすぐ口に方向づけることができ、又は折りたたみバッグは、患者が薬物を吸入しうる時間である3〜5秒間、懸濁液中に粒子を維持するエアロゾルリザーバーとして作用することができる。しかしながら、これらデバイスのいずれかを使用する場合、中咽頭に入る際のエアロゾル速度は減少し、肺に対する薬物アベイラビリティー及び中咽頭への沈着は減少する。
【0085】
本発明による方法が使用されうる疾患及び状態は、(1)肺炎球菌性肺炎、連鎖球菌性肺炎、ブドウ球菌性肺炎、ヘモフィルスの感染により引き起こされる肺炎及びマイコプラズマ肺炎を含む肺炎;(2)急性呼吸不全;及び(3)急性呼吸促迫症候群である。本発明による方法はまた、これらに限定されないが、嚢胞性線維症、喘息及び肺癌を含む炎症反応が肺組織に存在する他の疾患及び状態を処置するために使用されうる。
【0086】
投与頻度及び投与される治療組成物の量を含む的確な製剤、投与ルート及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択されうる(例えば、Finglら、The Pharmacological Basis of Therapeutics、1975、Ch.1、p.1を参照)。担当医はどのように、そしていつ毒性又は臓器機能不全により投与をいつ終了、中断又は調整するかを知っていることを留意すべきである。反対に、担当医はまた、臨床反応が十分でない(毒性を除く)場合、処置をより高いレベルに調整することを知っている。関与する疾患の管理における投与量の大きさは、処置される状態の重篤度及び投与経路、並びに肝臓及び腎臓機能のような考慮すべき薬物動態によって変化する。状態の重症度は、例えば部分的には標準的な予測評価方法により評価されうる。さらに、投薬及びおそらく投薬回数はまた、年齢、体重及び個々の患者の反応により変化する。上の議論と類似のプログラムが動物用医薬品において使用されうる。
【0087】
本発明は以下の実施例により例示される。これらの実施例は例示目的のためのみであり、本発明の制限を意味するものではない。