特許第5675907号(P5675907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5675907スライダ上の潤滑剤の蓄積を減少するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5675907
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】スライダ上の潤滑剤の蓄積を減少するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/60 20060101AFI20150205BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   G11B5/60 Z
   G11B21/21 101Q
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-149242(P2013-149242)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-22035(P2014-22035A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2013年8月14日
(31)【優先権主張番号】13/553,072
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン・ラマクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】アジャイクマール・ラジャセカーラン
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−144219(JP,A)
【文献】 特開平11−273047(JP,A)
【文献】 特開2008−021375(JP,A)
【文献】 特開2001−126429(JP,A)
【文献】 特開平02−156491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0048120(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0091405(US,A1)
【文献】 米国特許第8199437(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/60
G11B 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞を有する空気ベアリング面を備え、前記空洞は、前記空洞に沿った気流の膨張を和らげるために前記空洞の上流側に移行構造を含み、さらに、
前記空洞の上流側の前記移行構造上に位置決めされる乱流誘発構造を備える、スライダ。
【請求項2】
前記移行構造は、段状である、請求項1に記載のスライダ。
【請求項3】
前記空洞の下流側に移行構造をさらに備える、請求項1または2に記載のスライダ。
【請求項4】
前記空洞の下流側の前記移行構造上に位置決めされる乱流誘発構造をさらに備える、請求項3に記載のスライダ。
【請求項5】
前記空洞は、副周囲空洞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項6】
前記乱流誘発構造は、空洞の底面に位置し、凹凸を付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項7】
底側を備え、前記底側の一部は空洞を限定し、前記空洞は、前記空洞に沿った気流の膨張を和らげるために前記空洞の上流側に移行構造を含み、さらに、
前記空洞のすぐ上流の前記底側に位置決めされる乱流誘発構造を備える、スライダ。
【請求項8】
前記空洞の下流側に移行構造をさらに備える、請求項7に記載のスライダ。
【請求項9】
前記移行構造は、段状である、請求項7に記載のスライダ。
【請求項10】
前記空洞の上流側の前記移行構造上に位置決めされる乱流誘発構造をさらに備える、請求項7〜のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項11】
前記乱流誘発構造は、前記空洞の床に位置決めされる、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項12】
前記乱流誘発構造は、突起部である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項13】
前記乱流誘発構造は、極小空洞である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項14】
前記乱流誘発構造は、前記スライダの底部側の残りよりも高い表面粗さを有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項15】
前記空洞は、前記空洞の上流側に側壁を有し、前記空洞の上流側の前記移行構造は、前記側壁上に設けられる、請求項1〜14のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項16】
前記空洞は、前記空洞の下流側に側壁を有し、前記空洞の下流側の前記移行構造は、前記側壁上に設けられる、請求項3、4、8のいずれか1項に記載のスライダ。
【請求項17】
副周囲空洞と、
前記副周囲空洞の下流方向に沿った気流の膨張を減少させる手段と、
前記副周囲空洞内の乱流を誘発する手段とを備え、前記乱流を誘発する手段は前記副周囲空洞内に位置する、スライダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本開示は、スライダ上の潤滑剤の蓄積を減少するための装置、システム、および方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
潤滑剤は、回転可能な記憶媒体と、ディスクドライブ内のスライダとに用いられ、物理的および化学的な損傷から記憶媒体およびスライダを保護する。記憶媒体に用いられる潤滑剤は、接着部および非接着部を含み得る。潤滑剤の非接着部(または可動部)により、潤滑剤が使い果たされた媒体上の領域が満たされる。しかしながら、可動部は、媒体からスライダに移動して、スライダ上の領域に蓄積する可能性もある。
【0003】
潤滑剤の媒体からスライダへの移動および蓄積の一機構は、副周囲圧力(sub-ambient pressure)を利用するスライダ設計内の吸引空洞の結果である。スライダの後縁での圧力が、周囲圧力であり、定義上、より高い圧力であるため、副周囲圧力の存在は、空洞に向かって上流方向に逆流を引き起こし得る。逆流は、主流と結合して、流れが停滞する領域、すなわち流れがゼロまたはほぼゼロになる領域を形成し得る。移動した潤滑剤は、これらの流れ停滞点に蓄積しがちである。その結果、蓄積した潤滑剤は、スライダの浮上特性に干渉する可能性があり、特に、読込/書込エラー、および/または、データの処理量の減少を引き起こす。
【0004】
潤滑剤の蓄積を和らげるためのいくらかの試みによると、停滞点で潤滑剤を「捕える」溝を利用して、潤滑剤が領域を通り前後に流れたり、読込/書込要素に干渉しないようにする。しかしながら、これらの試みは、根本的な問題、つまり流れの停滞に取り組んでいない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
本発明の一実施形態は、概して、スライダ上の潤滑剤の蓄積を減少するための装置および方法に向けられる。
【0006】
一実施形態において、スライダは、空洞を有する空気ベアリング面を含む。空洞は、当該空洞に沿った気流の膨張を和らげるために当該空洞の上流側に移行構造を含む。乱流誘発構造が、移行構造上に位置決めされる。
【0007】
本開示の一実施形態は、したがって、スライダ上の流れ停滞を減少するための装置および方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スライダ外形の一部の側面図である。
図2図1のスライドの底面図である。
図3】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図4】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図5】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図6】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図7】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図8】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図9A】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
図9B】本開示の一実施形態に従うスライダの外形の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、副周囲空洞102を有するスライダ100の空気ベアリング面(ABS)の一部の外形を示す。図2は、スライダ100および空洞102の底側を示す。スライダ100が記憶媒体の上を浮上すると、主気流は、前縁(上流)から後縁(下流)にABSの上方を流れる。同時に、一部の気流は、後縁から前縁に向って(逆気流)、主気流と反対方向に流れる。主気流がABSを横断して、空洞102に達すると(図2参照)、気流は、空洞102の上流垂直壁106を横切って、空洞102内に膨張または拡散する。この膨張により、主気流が突然および急速に減速し得、空洞102の壁に沿って境界層が分離する可能性もある。減速および分離は、図1および図2の両方に示される状態のように、後縁を横切る逆気流の存在下で悪化し得る。その結果、流れが停滞する可能性が増大し、副周囲空洞の一部に潤滑剤が蓄積する可能性もまた増大する。
【0010】
図3は、スライダ300の空気ベアリング面(ABS)の一部の外形を示す。スライダ300は、空洞302の上流で移行機構304を持つ空洞302を有する。移行機構304は、スライダ300に沿って主気流を緩やかに拡散させる。そのため、移行機構304は、スライダ壁で境界層剥離を減少でき、前述の空洞の設計に典型的に関連付けられる主流の勢いの損失を減少し得る。空洞302において剥離および勢いの損失が減少されることで、空洞302内に停滞域が形成される機会が低下する。図3および後述の図面に示されるように、移行機構は、いくつかある形状の中でも特に、段状、傾斜面、および曲面のような多数の設計を有してもよい。
【0011】
図4〜6は、図3について説明された同様の概念を用いるスライダの設計の実施形態を示す。図4は、副周囲空洞402を有するスライダ400のABSの一部の外形を示す。空洞402は、当該空洞402の下流側に移行機構を有する。ここでは、移行機構404は、逆流を緩やかに拡散させ、それによって、空洞402において逆気流の影響を減少する。移行機構404は、段状として示されるが、他の形状であってもよい。図5は、副周囲空洞502を有するスライダ500のABSの一部の外形を示し、副周囲空洞502は、主流および逆流を緩やかに拡散させるように湾曲している。図6は、副周囲空洞602を有するスライダ600のABSの一部の外形を示す。空洞602は、上流側および下流側に移行構造604を有し、各側は、段差の目盛が異なる構造604を有する。移行構造は、任意の数または可能性の形状を含んでもよいが、全ての可能性が明確に図に示されるわけではない。
【0012】
図7は、移行構造704を持つ副周囲空洞702を有するスライダ700のABSの一部の外形を示す。移行構造704は、乱流または渦誘発構造706を有する。乱流誘発構造706は、移行構造704の凹凸部または粗面部であってもよい。凹凸構造は、たとえば、交互の溝および隆起を含んでもよい。粗面構造は、表面の周囲部分よりも高い表面粗さを有する表面部を含んでもよい。乱流誘発構造706は、たとえば移行構造704上または空洞床708上など、空洞702内の複数の場所に位置決めされてもよい。空気が乱流誘発構造706上を流れると、流れの境界層が乱れ、それにより、回転するディスク近傍の高せん断層から空洞702の壁に近傍の層への大規模な勢いの移行が促進される。この勢いの移行により、主流の勢いが、空洞702の大部分の上方に行きわたり、それゆえに、空洞702内の流れの停滞域の可能性を減少できる。図8は、副周囲空洞802を有するスライダ800のABSの一部の外形を示す。乱流誘発構造804は、空洞802の上流に直接位置決めされ、主流が空洞802に流入すると、主流の乱流を誘発する。
【0013】
図9Aおよび9Bは、移行構造904を持つ副周囲空洞902を有するスライダ900のABSの一部の外形を示す。乱流誘発構造は、空洞の上流に直接位置決めされ、移行構造904にもまた位置決めされる。図9Aに示されるように、乱流誘発構造は、突起部906である。図9Bに示されるように、乱流誘発構造は、極小空洞908である。乱流誘発構造は、スライダの製造過程で使用される方法の中でも、ミリングまたは、エッチングによって形成されてもよい。乱流誘発構造の特徴、形状、および、位置決めは、異なるスライダの設計ごとに最適化されてもよい。たとえば、一実施形態では、および図9Bに示されるように、乱流誘発構造は、空洞内の主流の乱流の混合を高めるために無作為に分布されて配置されてもよい。
【0014】
本発明の様々な実施形態の多くの特徴および利点が、本発明の様々な実施形態の構造および機能の詳細と共に前述の記載で説明されたが、この詳細な記載は一例にすぎず、特に本発明の本質内で、部品の構造および配置については、添付の特許請求の範囲で説明される用語の一般的な広義の意味によって指し示される十分な範囲で、詳細において変更が可能であることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0015】
100,300,400,500,600,700,800,900 スライダ、102,302,402,502,602,702,802,902,908 空洞、106 上流垂直壁、304,404 移行機構、604 移行構造、604 構造、706 乱流誘発構造、706 渦誘発構造、906 突起部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B