特許第5676004号(P5676004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー シルトロン インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ クモー ナショナル インスティテュート オブ テクノロジ インダストリ−アカデミック コーオペレーション ファンデーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676004
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】化合物半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/02 20100101AFI20150205BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01L33/00 100
   H01L21/205
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-536510(P2013-536510)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公表番号】特表2014-501035(P2014-501035A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2011008019
(87)【国際公開番号】WO2012057517
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】511028928
【氏名又は名称】エルジー シルトロン インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513106107
【氏名又は名称】クモー ナショナル インスティテュート オブ テクノロジ インダストリ−アカデミック コーオペレーション ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アン、スンジン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ドングン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソクハン
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/071633(WO,A1)
【文献】 特開2011−009268(JP,A)
【文献】 特開2010−232464(JP,A)
【文献】 特開2009−302314(JP,A)
【文献】 特開2008−277430(JP,A)
【文献】 特開2003−078214(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0266964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第1化合物半導体層から選択されるいずれか一つの上にグラフェンに由来した物質層を形成する工程と、
前記グラフェンに由来した物質層上に、少なくとも一層の第2化合物半導体層を形成する工程と、
前記グラフェンに由来した物質層を変化させて、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層を分離する工程と、
を含む化合物半導体の製造方法。
【請求項2】
前記グラフェンに由来した物質層はグラフェン層である請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項3】
前記グラフェン層は、化学処理方法、熱処理方法及び光処理方法中のずれかによって酸化グラフェン層に変化させられる請求項2に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項4】
前記グラフェンに由来した物質層はグラフェン層であり、前記グラフェンに由来した物質層が変化した物質層は酸化グラフェン層であり、
前記酸化グラフェン層は前記グラフェン層より厚く、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層が持ち上げられる請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項5】
前記グラフェンに由来した物質層は酸化グラフェン層である請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項6】
前記酸化グラフェン層は、化学処理方法、熱処理方法及び光処理方法中のずれかによって変化される請求項5に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理方法によって、前記酸化グラフェン層は、当該酸化グラフェン層より厚さが厚い変形酸化グラフェン層に変化する請求項6に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項8】
前記化学処理方法及び前記光処理方法によって、前記酸化グラフェン層は還元されて類似グラフェン層に変化して厚さが減少する請求項6に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項9】
前記光処理方法は、透過深さ選択型光処理装置を用いて前記光処理装置から照射された光が前記酸化グラフェン層のみに作用するように制御する請求項6に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項10】
前記グラフェンに由来した物質層は、少なくとも一層以上のグラフェンに由来したシートを含み、
前記グラフェンに由来した物質層は、前記基板または前記第1化合物半導体層を前記第2化合物半導体層に露出させる請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層のうち、前記第1化合物半導体層と接する層は前記第1化合物半導体層と同一性質である請求項10に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項12】
前記第1化合物半導体層の下に、別のグラフェンに由来した物質層がさらに形成される工程と、
前記別のグラフェンに由来した物質層の下に、第2基板が形成される工程と、
を含む請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項13】
前記別のグラフェンに由来した物質層は、前記第1化合物半導体層が前記第2の基板に接するように形成される請求項12に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項14】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層中のいずれかの層を分離する工程は、超音波処理で行われる請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項15】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層には、n型化合物半導体層、活性層、p型化合物半導体層、及びp型電極層が含まれる請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項16】
前記p型電極層には反射層が含まれる請求項15に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項17】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層において、前記グラフェンに由来した物質層と接していた層には、n型電極層が形成される請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項18】
前記グラフェンに由来した物質層または前記別のグラフェンに由来した物質層は、被形成面の全体範囲に形成される請求項12に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項19】
ベース物質上にグラフェンに由来した物質層を形成する工程と、
前記グラフェンに由来した物質層上に、少なくとも一層の第2化合物半導体層を形成する工程と、
前記グラフェンに由来した物質層に酸化反応または還元反応を起こして、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層を分離する工程と、
を含む化合物半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子(Light Emitting Diode:LED)は、PN接合ダイオードの一種として、順方向に電圧がかかると短波光(monochromatic light)が放出される現象である電気発光効果(electroluminescence)を用いた半導体素子として、発光素子から放出さされる光の波長は、使用される材料のバンドギャップエネルギー(Bandgap Energy:Eg)によって決定される。発光素子技術の初期には、主に赤外線と赤色光を放出できる発光素子が開発され、青色LEDは、1993年に日亜化学の中村(Nakamura)が、GaNを利用して青色光を生成できることを発見した後から本格的に研究されている。白色は、赤色、緑色、青色の組合せで生成できるという点で、上記GaNに基づいた青色発光素子の開発は、既に開発された赤色及び緑色の発光素子と一緒に、白色発光素子の具現を可能にした。
【0003】
最近、青色波長の発光素子の需要が急増することに伴いGaN薄膜の需要が日々増加しており、発光素子の効率を向上させようとして多様な方法が用いられている。
【0004】
発光効率を高めるための他の手段として、前記発光素子の中でも、基板を除去して発光効率を高めるようにした縦型発光素子が脚光を浴びている。これらの縦型発光素子は、窒化物半導体が蒸着された基板を、レーザーを照射して基板と窒化物半導体を分離する方法(LLO:laser lift off)と、基板を溶かして基板と窒化物半導体を分離する方法(CLO:chemical lift off)などを適用している。これらの方法により、窒化物半導体への悪影響を改善し、複雑な工程上の問題点を改善するために多くの努力がなされているが、まだ所望レベルの高効率の方法には至っていないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、高品質の化合物半導体層を簡素化された工程で形成して、基板と化合物半導体層との間の格子定数の違いによる応力を緩和させることにある。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、化合物半導体への影響を最小化しながら基板と化合物半導体を分離する方法を提案し、化合物半導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化合物半導体の製造方法は、第1基板及び第1化合物半導体層から選択されるいずれか一つの上にグラフェンに由来した物質層を形成する工程と、前記グラフェンに由来した物質層上に、少なくとも一層の第2化合物半導体層を形成する工程と、前記グラフェンに由来した物質層を変化させて、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層を分離する工程とを含む。
【0008】
前記グラフェンに由来した物質層は、グラフェン層からなることができる。前記グラフェン層は、化学処理方法、熱処理方法及び光処理方法中のずれかによって酸化グラフェン層に変化させられる。ここで、前記酸化グラフェン層は、前記グラフェン層より厚いので、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層を持ち上げることができる。
【0009】
前記グラフェンに由来した物質層は、酸化グラフェン層からなることができる。前記酸化グラフェン層は、化学処理方法、熱処理方法及び光処理方法中のずれかによって変化される。ここで、前記熱処理方法によれば、前記酸化グラフェン層は、前記酸化グラフェン層より厚さが厚い変形酸化グラフェン層に変化し、前記化学処理方法または前記光処理方法によれば、前記酸化グラフェン層は還元されて類似グラフェン層に変化して厚さが減少される。一方、前記光処理方法は、透過深さ選択型光処理装置を用いて前記光処理装置から照射された光が前記酸化グラフェン層のみに作用するように制御することができる。
【0010】
前記グラフェンに由来した物質層は、少なくとも一層以上のグラフェンに由来したシートを含み、前記グラフェンに由来した物質層は、前記基板または前記第1化合物半導体層を前記第2化合物半導体層に露出させることができる。
【0011】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層のうち、前記第1化合物半導体層と接する層は、前記第1化合物半導体層と同一性質からなることができる。
【0012】
前記第1化合物半導体層の下に、別のグラフェンに由来した物質層が形成される工程と、前記別のグラフェンに由来した物質層の下に、第2基板が形成される工程を含むことができる。このとき、前記別のグラフェンに由来した物質層は、前記第1化合物半導体層が前記第2の基板に接するように形成することができる。前記グラフェンに由来した物質層または前記別のグラフェンに由来した物質層は、被形成面の全体範囲に形成することができる。
【0013】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層中のいずれかの層を分離する工程は、超音波処理で行うことができる。
【0014】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層には、n型化合物半導体層、活性層、p型化合物半導体層、及びp型電極層が含まれて発光素子に加工される。前記p型電極層には反射層を含むことができる。
【0015】
前記少なくとも一層の第2化合物半導体層において、前記グラフェンに由来した物質層と接していた層には、n型電極層が形成される。
【0017】
また、本発明の化合物半導体の製造方法には、ベース物質上にグラフェンに由来した物質層を形成する工程と、前記グラフェンに由来した物質層上に、少なくとも一層の第2化合物半導体層を形成する工程と、前記グラフェンに由来した物質層に酸化反応または還元反応を起こして、前記少なくとも一層の第2化合物半導体層を分離する工程と、が含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によれば、酸化グラフェンをマスクとして高品質の化合物半導体層を選択的に形成することができ、基板と化合物半導体層との間に酸化グラフェンを提供して、基板と化合物半導体層との間の格子定数の違いによる応力を調節することができる。
【0019】
また、本発明の実施例によれば、グラフェンに由来した多様な物質の物理的特性差を利用して、化合物半導体への悪影響を最小化しながらも多様な界面を簡単に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図4】本発明の一実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図5】本発明の他の実施例による化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図6】本発明の他の実施例による化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図7】本発明の他の実施例による化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図8】本発明の他の実施例による化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
図9】本発明の実施例に係る発光素子の断面図である。
図10】本発明の実施例に係る発光素子の断面図である。
図11】酸化グラフェン膜が蒸着された基板の走査型電子顕微鏡写真である。
図12】酸化グラフェン膜が蒸着された基板の走査型電子顕微鏡写真である。
図13】酸化グラフェン膜が蒸着された基板の走査型電子顕微鏡写真である。
図14】酸化グラフェン膜が蒸着された基板の走査型電子顕微鏡写真である。
図15】基板上に形成された酸化グラフェンのAFM写真である。
図16】本発明の実施例により形成された窒化物半導体のX線ロッキングカーブ(X-ray rocking curve)である。
図17】本発明の実施例により形成された化合物半導体の走査型電子顕微鏡写真であって、窒化物半導体の平面図である。
図18】本発明の実施例により形成された化合物半導体の走査型電子顕微鏡写真であって、窒化物半導体の断面図である。
図19】化合物半導体装置の製造方法を説明するための化合物半導体装置の断面図である。
図20】化合物半導体装置の製造方法を説明するための化合物半導体装置の断面図である。
図21】化合物半導体装置の断面図で、グラフェン層の変化を説明する図である。
図22】化合物半導体装置の断面図で、グラフェン層の変化を説明する図である。
図23】化合物半導体装置の断面図で、酸化グラフェン層の変化を説明する図である。
図24】化合物半導体装置の断面図で、酸化グラフェン層の変化を説明する図である。
図25】化合物半導体装置の走査顕微鏡写真であって、酸化グラフェンの熱処理前の写真である。
図26】化合物半導体装置の走査顕微鏡写真であって、酸化グラフェンの熱処理後の写真である。
図27】化合物半導体装置の断面図で、他の化合物半導体層が介在されている図である。
図28】化合物半導体装置の断面図で、他の化合物半導体層が介在されている図である。
図29】化合物半導体装置の断面図で、酸化グラフェン層の還元を説明する図である。
図30】化合物半導体装置の断面図で、酸化グラフェン層の還元を説明する図である。
図31】化合物半導体装置の断面図で、他の化合物半導体層が介在されている図である。
図32】化合物半導体装置の断面図で、他の化合物半導体層が介在されている図である。
図33】実施例による半導体装置の断面図である。
図34】実施例に係る化合物半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以上の本発明の目的、特徴の及び利点は、添付された図面と以下の好ましい実施例からより明確となる。なお、本発明は、ここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態で具体化できることは勿論である。
【0022】
本明細書では、ある膜(または層)が他の膜(または層)または基板上にあると記述される場合は、他の膜(または層)または基板上に直接形成される場合、またはそれらの間に第3の膜(または層)が介在する場合も含むことができる。また、図面のにおいて、構成のサイズと厚さなどは、説明の便宜を図り誇張される場合もある。また、本明細書の多様な実施例では、第1、第2、第3などの用語が、多様な分野、膜(または層)などを記述するために用いられているが、これらの領域、膜がこのような用語によって限定されるものではなく、単に、ある所定の領域または膜(または層)を別の領域または膜(または層)と区別するために用いられるものである。
【0023】
本明細書で「及び/または」という表現は、前後に記載されて構成要素中の少なくとも一つを含む意味で使用されている。また、明細書全般にわたり、同一符号で表示された部分は同一構成要素を示す。
【0024】
<第1実施例>
【0025】
図1図4は、本発明の第1実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。
【0026】
図1に示すように、基板100上に酸化グラフェン層(graphene oxide layer)110を形成することができる。前記基板100は、サファイア、スピネル、GaAs、InP、SiC、またはSi基板からなることができる。前記酸化グラフェン層110は、複数の酸化グラフェンシートを含むことができる。本明細書では、酸化グラフェンシートは、前記酸化グラフェン層を構成する酸化グラフェンの一部を指すことができる。前記基板100の表面の一部は、前記複数の酸化グラフェンシートの間で露出される。
【0027】
前記酸化グラフェン層110は、多様な方法で形成することができる。一例として、グラファイト(graphite)を硫酸(sulfuric acid)に入れた後、過マンガン酸カリウム(potassium permanganate)を徐々に添加した後、温度を35℃に上げた後、テフロンコーティングされた棒磁石を入れて約2時間攪拌する。その後、十分な量の水を加えて、過酸化水素(hydrogen peroxide)をガスが発生しなくなるまで加える。その後、ガラスフィルター(glass filter)を介して酸化グラファイト(graphite oxide)をろ過した後、常温真空下で約12時間以上乾燥させる。乾燥された酸化グラファイトを使用目的に合わせて適量の水を加えて超音波(sonication)処理により酸化グラファイトを剥離させて酸化グラフェンシートを形成する。前記超音波処理時間が長いほど、形成された酸化グラフェンシートのサイズが小さくなる。また、酸化グラフェンシートの大きさを調節するためにゆっくりテフロンコーティングされた棒磁石で攪拌して酸化グラファイトを剥離させることもできる。また、前記酸化グラフェンシートは、公知の多様な方法によって形成することができる。前記グラフェンシートの形状は、非定形的に、前記酸化グラファイトの形状、超音波処理方法、攪拌方法により多様な形状を呈することができる。
【0028】
上記のように形成された酸化グラフェンシートは、前記基板100上に多様な方法で蒸着することができる。一例として、前記酸化グラフェンシートは、スピンコート(spin coating)、ラングミュア-ブロジェット法(Langmuir-Blodgett method or layer-by-layer method:LBL)、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、またはドロップコーティング(drop coating)中の少なくとも一つの方法で前記基板100上に塗布することができる。このような蒸着工程では、前記酸化グラフェン層110の一部は還元されてグラフェンと類似する構造(graphene-like structure)になることもある。
【0029】
酸化グラフェンの化学的物性または電気的特性などを変えるために、多様な官能基が追加されて機能化されたグラフェンシート(fuctionalized graphene sheet)が形成される。本明細書で酸化グラフェンは、グラフェン単一層(mono layer)だけでなく、単一層が少ない数で積層された層(few layers)を含むことができる。また、酸化グラフェンは、機能化されたグラフェンシートを含むことができる。
【0030】
図11図14は、前記酸化グラフェン層110が形成された基板の走査型電子顕微鏡写真である。写真において、黒色で示された部分が酸化グラフェン層110を構成する酸化グラフェンシートを示す。図11から図14に行くほど、単位媒質当りの酸化グラファイトの濃度は、略1μg/mlから略100mg/mlに順次増加する。図示のように、酸化グラファイトの濃度が高いほど、前記基板100表面の多い面積が前記酸化グラフェン層110によって覆われることになる。前記酸化グラフェンシートの長軸(long axis)の長さは、50nm〜100μmであり、厚さは0.3nm〜2μmである。前記酸化グラフェン層110が前記基板100の上面を覆う割合は、10〜100%の範囲で多様に変更できる。
【0031】
図15は、前記基板100上に形成された前記酸化グラフェン層110のAFM写真である。AFMを利用して前記酸化グラフェン層110の厚さを測定した。a-a’線における前記酸化グラフェン層110の厚さは略0.3nmであり、b-b'線における前記酸化グラフェン層110の厚さは略1nmである。
【0032】
前記酸化グラフェン層110は、前記基板100上に特定パターンの形態で提供される。つまり、前記基板100の一部領域には前記酸化グラフェン層110が形成され、他の領域には前記酸化グラフェン層110が形成されない。一例として、前記酸化グラフェン層110は、前記基板100上にストライプパターンで提供される。
【0033】
このような酸化グラフェン層110の形態、前記酸化グラフェンシートの大きさ、厚さは、使用目的に応じて多様に変形することが可能である。
【0034】
図2図4に示すように、前記酸化グラフェン層110によって露出された前記基板100上に第1化合物半導体層120が形成される。前記第1化合物半導体層120は、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaNまたはAlGaInN中の少なくとも一つを含む窒化物半導体層からなることができる。前記第1化合物半導体層120は、特定の導電型を持つように不純物原子を注入することができる。一例として、前記第1化合物半導体層120は、n型化合物半導体層からなることができる。前記第1化合物半導体層120は、半導体層の用途に応じて多様な不純物原子を注入することができる。一例として、Si、Ge、Mg、Zn、O、Se、Mn、Ti、Ni、またはFe中の少なくとも一つ以上の原子を注入することができる。不純物原子の注入は、in-situドーピング(in-situ doping)、ex-situドーピング(ex-situ doping)またはイオン注入(ion implantation)によって行うことができる。
【0035】
前記第1化合物半導体層120は、前記酸化グラフェン層110をマスクとして使用することにより、露出された前記基板100の表面と接触しながら、選択的に成長する。一例として、前記第1化合物半導体層120は、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、液相エピタキシー法(Liquid Phase Epitaxy:LPE)、気相エピタキシー法(Vapor Phase Epitaxy:VPE)などの方法で形成することができる。一例として、前記第1化合物半導体層120の成長は、約650〜1200℃で行うことができる。前記第1化合物半導体層120は、図示のように、前記酸化グラフェン層110によって露出された前記基板100の表面から徐々に成長し、形成工程が進むにつれて露出された基板の各表面から形成された結晶が側面に成長し、相互接続されて均一な半導体層に成長する。
【0036】
このように、前記基板100の一部から前記第1化合物半導体層120を形成する場合、格子定数の違いによる成長初期に発生する結晶欠陥の数が著しく減少される。また、側方成長が促進されて転位(dislocations)も側方に曲がり、半導体素子の上面まで到達する結晶欠陥の数を減らすことができる。前記酸化グラフェン層110は、高弾性を有する。よって、前記基板100と前記第1化合物半導体層120との間の格子定数の違いによって発生する応力を緩和することができる。
【0037】
<第2実施例>
【0038】
図5図8は、本発明の第2実施例に係る化合物半導体装置及びその製造方法を説明するための断面図である。前の実施例と重複する構成については、前の実施例での説明をそのまま参照することにする。
【0039】
図5に示すように、前記基板100と前記酸化グラフェン層110の間に第2化合物半導体層125が提供される。一例として、前記第2化合物半導体層125の厚さは略1μmである。前記第2化合物半導体層125は、前記第1化合物半導体層120と同一物質からなることができる。前記第2化合物半導体層125は、前記第1化合物半導体層120と同一導電型を有することができる。一例として、前記第1及び第2化合物半導体層120、125は、n型GaN層からなることができる。前記酸化グラフェン層110は、前記第2化合物半導体層125の表面の一部を露出することができる。前記酸化グラフェン層110の酸化グラフェンシートの間に露出された前記第2化合物半導体層125の表面から前記第1化合物半導体層120が選択的に成長する。このような成長工程は、前記第2化合物半導体層125の形成時に発生した多数の転位(dislocations)を遮断して、前記第1化合物半導体層120の結晶欠陥を減らすことができる。
【0040】
図6及び図7に示すように、前記基板100と前記第1化合物半導体層120との間にバッファ層105が提供される。前記バッファ層105は、前記基板100と前記第1化合物半導体層120との格子定数の違いによる結晶欠陥を減らすことができる。前記バッファ層105は、AlN、AlGaN、GaN、InGaN、InN、AlGaInNまたはこれらの組合せからなることができる。前記バッファ層105がAlN、AlGaN、またはAlGaInN層である場合、前記バッファ層105は、約400〜1200℃で略1〜200nmの厚さに形成される。前記バッファ層は、InGaN、InNまたはGaN層である場合、前記バッファ層105は、約400〜1000℃で略1〜100nmの厚さに形成される。このようなバッファ層105上に前記第1化合物半導体層120を形成する場合、界面エネルギーを減らして高密度の核生成が可能である。よって、多くの核から成長した半導体結晶が相互に接触して平面成長が促進される。図6は、前記酸化グラフェン層110が形成される前、前記バッファ層105が形成された実施例であり、図7は、前記酸化グラフェン層110が形成された後、前記酸化グラフェン層110によって露出された前記基板100上に前記バッファ層105が提供される実施例である。
【0041】
図8は、図4で説明した実施例の構成に、前記基板100と前記第2化合物半導体層125との間に第2酸化グラフェン層115が追加された実施例である。前記第2酸化グラフェン層115は、前記基板100及び前記第2化合物半導体層125と接触する。前記第2酸化グラフェン層115は、前記基板100の全面を覆うことができる。前記第2酸化グラフェン層115は、高弾性によって前記基板100と前記第2化合物半導体層125との間の格子不整合による応力を緩和することができる。図示とは違うように、前記第2酸化グラフェン層115は、前記基板100の一部を露出して、第1酸化グラフェン層110と一緒に選択的成長のマスクとして作用することもできる。
【0042】
第2実施例によれば、酸化グラフェン層の上側に提供される化合物半導体層と基板が直接接触しないようにしている。これにより、酸化グラフェン層の上側に提供される化合物半導体層の結晶欠陥及びこれによる応力を緩和させることができ、高品質の化合物半導体層の提供が可能である。
【0043】
<第3実施例>
【0044】
本発明の実施例による化合物半導体の成長方法は、LED、LD、高温/高出力素子、HEMT、HBTなど多様な素子に使用することができる。以下、上述した成長方法によって形成された素子の一例を説明する。説明の簡略化を図り、重複する構造に対する説明は省略する。
【0045】
図9及び図10は、本発明の第3実施例により化合物半導体層が成長した発光素子の断面図である。前記発光素子は、基板100上に順番に積層されたn型化合物半導体層121、活性層130、及びp型化合物半導体層140を含むことができる。一例として、前記n型とp型化合物半導体層の121、140は、それぞれn型またはp型不純物でドーピングされたGaN層からなることができる。図9に示すように、前記酸化グラフェン層110は、前記基板100と前記n型化合物半導体層121の間に提供される。図10に示すように、前記n型化合物半導体層121は、第1半導体層122と第2半導体層123を含み、前記酸化グラフェン層110は、前記第1半導体層122と前記第2半導体層123の間に提供される。
【0046】
前記活性層130は、多重量子井戸層(Multi Quantum Well:MQW)と、前記量子井戸層の間のバリア層を含むことができる。前記量子井戸層は、電子と正孔の再結合によって光を発生させることができる。前記量子井戸層及び障壁層は、組成が異なるInxGa1-xN(0≦x<1)層からなることができる。前記活性層130は、MOCVD、VPE、またはLPEなどによって形成することができる。前記n型化合物半導体層121上にn型電極160が提供され、前記p型化合物半導体層140上にp型電極150を提供することができる。前記n型とp型の電極150、160は、NiとAuを含む物質またはITO(Indium TiN Oxide)を含む物質からなることができる。
【0047】
本発明の実施例に係る発光素子は、前記酸化グラフェン層110によって結晶欠陥を減少させることができる。よって、発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0048】
図16は、本発明の実施例により形成されたGaN層のX線ロッキングカーブ(X-ray rocking curve)である。前記酸化グラフェン層110が蒸着された前記基板100に選択的成長方法によって形成されたGaN層のX線ロッキングカーブ(rocking curve)の半値幅(FWHM)は略0.14°で、本発明の実施例により形成されたGaN層の品質が従来の方法により形成されたGaN層に比べて優れていることが分かる。
【0049】
図17及び図18は、本発明の実施例により形成された窒化物半導体の走査型電子顕微鏡写真で、図17は化合物半導体の平面図であり、図18は断面図である。基板としてはシリコン基板が使用され、化合物半導体はGaN層が蒸着されている。図18に示すように、基板100上に順番にバッファ層105、第2化合物半導体層125、酸化グラフェン層110と、第1化合物半導体層120が形成されている。前記バッファ層105は略77.2nmの厚さで前記基板100上に形成され、前記バッファ層105、前記第2化合物半導体層125、前記酸化グラフェン層110と、前記第1化合物半導体層120の厚さの総和は略1.37μmである。図17に示すように、本発明の実施例により形成された前記第1化合物半導体層120の表面は格子欠陥がほとんどない。
【0050】
第3実施例によれば、高品質の化合物半導体層を得ることができ、より向上された発光効率を有する発光素子を作製することができる。
【0051】
<第4実施例>
【0052】
グラフェン(graphene)は、炭素原子が各炭素原子当り3つの共有結合によって六角形の網状の単一層に配列されている。これらのグラフェンは、単一層としてのグラフェンが積層されてグラフェンシートとなる。単一層として、前記グラフェンの厚さは3Å程度である。前記グラフェンが酸化されて酸化グラフェンとなると、単一層としてのグラフェンの層間に酸素が介入されている。前記酸素の関与の位置は、単一層としてのグラフェンの延長方向とは異なる位置となる。すなわち、グラフェンの延長方向を水平方向としたとき、酸素の位置はグラフェンと垂直方向に離隔される位置に配置される。
【0053】
このような分子構造により、単一層として酸化グラフェンの厚さは5〜10Å程度となり、酸化前のグラフェンの厚さより大きくなる。従って、単一または数層(few layer)のグラフェンが積層されているグラフェンシート及び酸化グラフェンシートも厚さが大きくなる。本実施例では、グラフェンが酸化されることにより起こるこのような現象を利用して、グラフェンを境界とする各層の分離現象を利用した化合物半導体装置及び化合物半導体の製造方法に関するものである。ただし、多くの部分の説明は前の実施例を参照しているので、具体的に説明がない部分は、前の実施例の説明を参照することにする。
【0054】
図19図20は、第4実施例に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための化合物半導体装置の断面図である。
【0055】
グラフェン層210を介して露出された前記基板200上に第1化合物半導体層220が形成される。前記グラフェン層210は、複数のグラフェンシートを含むことができる。本明細書で、グラフェンシートは、前記グラフェン層を構成する酸化されていないグラフェンの一部を指すことができる。前記第1化合物半導体層220は、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaNまたはAlGaInN中の少なくとも一つを含む窒化物半導体層からなることができる。前記第1化合物半導体層220は、特定の導電型を持つように不純物原子を注入することができる。一例として、前記第1化合物半導体層220は、n型化合物半導体層からなることができる。前記第1化合物半導体層220は、半導体層の用途に応じて多様な不純物原子を注入することができる。一例として、Si、Ge、Mg、Zn、O、Se、Mn、Ti、Ni、またはFe中の少なくとも一つ以上の原子を注入することができる。不純物原子の注入は、in-situドーピング(in-situ doping)、ex-situドーピング(ex-situ doping)またはイオン注入(ion implantation)によって行うことができる。
【0056】
前記第1化合物半導体層220は、前記グラフェン層210をマスクとして使用することにより、露出された前記基板200の表面と接触しながら、選択的に成長する。一例として、前記第1化合物半導体層220は、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、液相エピタキシー法(Liquid Phase Epitaxy:LPE)、気相エピタキシー法(Vapor Phase Epitaxy:VPE)などの方法で形成することができる。一例として、前記第1化合物半導体層220の成長は、約650〜1200℃で行うことができる。前記第1化合物半導体層220は、図示のように、前記グラフェン層210によって露出された前記基板200の表面から徐々に成長し、形成工程が進むにつれて露出された基板の各表面から形成された結晶が側面に成長し、相互接続されて均一な半導体層に成長する。
【0057】
図19に示される前記グラフェン層210を酸化させる。図20は、前記グラフェン層210が酸化されて酸化グラフェン層211となった状態の化合物半導体装置の断面図である。図20に示すように、グラフェン層210が酸化グラフェン層211に酸化されるとグラフェンの間に酸素原子が介在されて厚さが増加することがわかる。前記グラフェン層210の厚さの増加により、グラフェン層210に支持されていた第1化合物半導体層220は持ち上げられ、これによって基板200から分離されることになる。もし、化合物半導体の種類などの問題により、基板200から第1化合物半導体層220の分離がスムーズでない場合、基板200を覆うグラフェン層210の面積を大きくするか、場合によっては基板200を完全に覆うこともできる。
【0058】
前記グラフェン層210を酸化させる実施例について説明する。
【0059】
<第1酸化実施例>
【0060】
前記グラフェン層210は、化学処理方法として、いわゆる修正ハマー法(modified hummer's method)によって酸化グラフェンに酸化することができる。詳しくは、酸化対象物を硫酸(sulfuric acid)に入れた後、過マンガン酸カリウム(potassium permanganate((KMn)O)を徐々に添加した後、温度を35℃に上げた後、テフロンコーティングされた棒磁石を入れて約2時間攪拌する。その後、十分な量の水を加えて、過酸化水素(hydrogen peroxide)をガスが発生しなくなるまで加える。その後、乾燥工程を経ると、グラフェンは酸化される。
【0061】
前記した酸化過程中の低温酸処理は、化合物半導体の洗浄にも使用される工程として、化合物半導体装置には悪影響がない。一方、前記グラフェン層は、公知の多様な方法によっても化学的酸化処理を行うことができる。
【0062】
前記グラフェン層210の酸化によって基板200から持ち上げられた化合物半導体層220の分離を促進するために、超音波処理を行って物理的な振動を加えて化合物半導体層220をより迅速に分離することができる。これは、以下の実施例においても同様に適用することができる。
【0063】
<第2酸化実施例>
【0064】
前記グラフェン層210を前記酸化グラフェン層211に酸化させる方法は、熱処理の方法によっても可能である。
【0065】
詳しくは、酸素雰囲気の炉で400℃以上の温度に制御すると、雰囲気中の酸素がグラフェン層211の炭素原子と反応して酸化される。このような熱処理は、大気中に含まれている酸素によっても可能であるので、大気を雰囲気ガスとして使用することもできる。
【0066】
<第3酸化実施例>
【0067】
前記グラフェン層210を前記酸化グラフェン層211に酸化させる方法は、光学処理方法によっても可能である。例えば、高エネルギーのパルス光をグラフェン層210に加えて酸化処理を行うこともできる。
【0068】
以上のように、酸化処理を行うための方法が多数提案されているが、前記グラフェン層210を前記酸化グラフェン層211に酸化させる方法は、化合物の酸化処理時に半導体に影響を与えずに、酸化反応の効率を確保する観点から化学処理方法が好ましい。
【0069】
本実施例によれば、化合物半導体層220と基板を効率よく分離することができ、分離された化合物半導体層220は高効率発光素子として使用することができる。
【0070】
<第5実施例>
【0071】
第4実施例では、基板上に化合物半導体層が接触する形態で提供されているので、格子欠陥が化合物半導体層に伝播されるおそれがある。本実施例では、このような欠点を考慮して提供される実施例である。本実施例を説明するにあたって、前の実施例と重複する構成については、前の実施例での説明をそのまま参照することにする。
【0072】
図21図22は、化合物半導体装置の断面図である。図21に示される化合物半導体装置において、前記グラフェン層210を酸化させる作用によって、図22に示されるように、前記グラフェン層210が酸化グラフェン層211に変化されることになる。
【0073】
図21に示すように、基板200と前記グラフェン層210の間に第2化合物半導体層230が提供される。一例として、前記第2化合物半導体層230の厚さは略1μmである。前記第2化合物半導体層230は、前記第1化合物半導体層220と同一物質からなることができる。前記第2化合物半導体層230は、前記第1化合物半導体層220と同一導電型を有することができる。一例として、前記第1及び第2化合物半導体層の220、230は、n型GaN層からなることができる。前記グラフェン層210は、前記第2化合物半導体層230の表面の一部を露出させることができる。前記グラフェン層210のグラフェンシートの間に露出された前記第2化合物半導体層230の表面から前記第1化合物半導体層220が選択的に積層される。このような積層工程は、前記第2化合物半導体層230の形成時に発生した多数の転位(dislocations)を遮断して、前記第1化合物半導体層220の結晶欠陥を減らすことができる。
【0074】
図22に示すように、グラフェン層210が酸化グラフェン層211に酸化されると、グラフェンの間に酸素原子が介在されて厚さが増加することがわかる。グラフェン層210の厚さの増加により、グラフェン層210に支持されていた第1化合物半導体層220は持ち上げられ、これによって基板200から分離される。もし、化合物半導体の種類などの問題により、基板200から第1化合物半導体層220の分離がスムーズでない場合、基板200を覆うグラフェン層210の面積を大きくするか、場合によっては第2化合物半導体層230を完全に覆うこともできる。もちろん、超音波処理を行うことで、半導体層の分離がスムーズになるようにすることができる。
【0075】
前記グラフェン層210を酸化させる方法として、化学処理方法、熱処理方法、光処理方法を適用することができ、第4実施例の説明を参照することができる。
【0076】
<第6実施例>
【0077】
第4実施例と第5実施例は、グラフェン層を酸化させて酸化グラフェン層を提供して、化合物半導体層を分離する方法が提示されている。これに対し、第6実施例は、半導体装置の積層時に酸化グラフェン層を積層した後、前記酸化グラフェン層を熱処理して化合物半導体層を分離することに特徴がある。本実施例を説明するにあたって、前の実施例と重複する構成については、前の実施例での説明をそのまま参照することにする。
【0078】
図23及び図24は、化合物半導体装置の断面図である。図23に示される化合物半導体装置の酸化グラフェン層211を熱処理すると、図24に示されるように、前記酸化グラフェン層211が変換酸化グラフェン層212に変化されることになる。
【0079】
図23に示すように、基板200、酸化グラフェン層211、第1化合物半導体層220が提供される。図23に示される化合物半導体装置を、アルゴン(Ar)、窒素(N)、酸素(O)雰囲気下で、300℃以上の温度で熱処理を行う。このような条件下で熱処理されると、前記酸化グラフェン層211の酸化グラフェンシートは、化学結合が解除されて交互間に分離が起こり、物理的に変形される。このような変形は、ポップアップ(pop-up)と称することができる。このように熱処理された酸化グラフェンを変形酸化グラフェン層212と称し、変形酸化グラフェン層212に含まれる酸化グラフェンシートを変形酸化グラフェンシートと称することができる。
【0080】
前記変形酸化グラフェン層212は、変形酸化グラフェンシートの物理的な変形に起因して隣接する変形酸化グラフェンシートが干渉されることで、全体的に厚さが増加することになる。これにより、基板200と第1化合物半導体層220が相互分離される現象は、既に前の実施例で説明したとおりである。
【0081】
図25及び図26は、本実施例に係る半導体装置の走査顕微鏡写真で、図25は熱処理前の写真で、図26は熱処理後の写真である。図26に示すように、酸化グラフェンシートが熱処理によって変形して変形酸化グラフェンシート214に変換されていることが分かる。前記変形酸化グラフェンシート214毎に多く変形が起こることになり、そのような変形状態が隣接する変形酸化グラフェンシートと重なることで、前記変形酸化グラフェン層212の厚さは酸化グラフェン層211より増加することになる。
【0082】
本実施例によれば、酸化グラフェン層を変形酸化グラフェン層に変化させて、化合物半導体層を分離させることができる。
【0083】
図27及び図28は、本発明の他の実施例に係る化合物半導体装置の断面図であり、基板200と前記酸化グラフェン層211の間に第2化合物半導体層230が提供される点で、図25及び図26と違いがある。ここで、前記第2化合物半導体層230の厚さは略1μmである。前記第2化合物半導体層230は、前記第1化合物半導体層220と同一物質からなることができる。この化合物半導体装置に熱処理を加える場合にも、前記酸化グラフェン層211が変形酸化グラフェン層212にポップアップされて、第1化合物半導体層220を分離することができる。
【0084】
本実施例によれば、前記第2化合物半導体層230の形成時に発生した多数の転位(dislocations)を遮断して、前記第1化合物半導体層220の結晶欠陥を減らすことができる。
【0085】
<第7実施例>
【0086】
第6実施例は酸化グラフェン層を熱処理して化合物半導体層を分離することに特徴があり、第7実施例は酸化グラフェン層を還元させて化合物半導体層を分離することに特徴がある。前の実施例と重複する構成については、前の実施例での説明をそのまま参照することにする。
【0087】
図29及び図30は、化合物半導体装置の断面図である。図29に示すように、基板200、酸化グラフェン層211、及び化合物半導体層220が提供されている。図29に示される化合物半導体装置の酸化グラフェン層211を還元(reduction)処理すると、図30に示されるように、類似グラフェン層213に変化されることになる。類似グラフェン層213は、既に説明したように、酸化グラフェンシートが還元されてできるグラフェンと類似する構造(graphene-like structure)のグラフェンシートが集まって提供される。
【0088】
前記類似グラフェン層213は、還元作用によってグラフェン間の間隔部に位置していた酸素が抜けて、前記酸化グラフェン層212の元の厚さより厚さが減少される。酸化グラフェン層212の厚さが減少すると、前記化合物半導体層220は類似グラフェン層213によって、これ以上支持されずに浮いている構造を成すことになる。これにより、化合物半導体層220は、外部の小さな衝撃によっても落ちることになり、超音波処理をするとより容易に分離されることになる。なお、酸化グラフェン層211が化合物半導体層220の下面を全体的に覆っている場合は、化合物半導体層220が完全に分離されることになる。
【0089】
図31及び図32は、本発明の他の実施例に係る化合物半導体装置の断面図であり、基板200と酸化グラフェン層211の間に第2化合物半導体層230が提供される。ここで、前記第2化合物半導体層230の厚さは略1μmである。前記第2化合物半導体層230は、前記第1化合物半導体層220と同一物質からなることができる。この化合物半導体装置の酸化グラフェン層211を還元処理する場合にも、前記酸化グラフェン層211が類似グラフェン層213に厚さが減ることになるので、第1化合物半導体層220を分離することができる。
【0090】
本実施例によれば、前記第2化合物半導体層230の形成時に発生した多数の転位(dislocations)を遮断して、前記第1化合物半導体層220の結晶欠陥を減らすことができる。
【0091】
本実施例において、前記酸化グラフェン層211を還元する方法を説明する。
【0092】
まず、化学処理方法を適用することができる。具体的な実験は、以下の条件で実施した。還元剤としては1,1-ジメチルヒドラジン(1,1-Dimethylhydrazine)、ナトリウムボロハイドライド(Sodium borohydride)、ヒドロキノン(hydroquinone)などを使用することができ、溶媒としては水とジメチルホルムアミド(DMF:dimethylformamide)の混合液を使用することができる。実験では、水4mlとDMF36mlを混合した溶媒に、還元剤100mgを混合した還元溶液を使用した。前記還元溶液を利用して前記酸化グラフェン層211を還元させて類似グラフェン層213とした。実験の結果、前記酸化グラフェン層211は、前記類似グラフェン層213に変わりながらその厚さが減り、化合物半導体層が分離されていることを確認できた。
【0093】
別の方法として、光学処理方法を適用することができる。具体的な実験は、以下の条件で実施した。光が吸収される深さを調節する透過深さ選択型光処理装置として、商標名「pulse forge 3300」の光処理装置を使用して化合物半導体装置に光照射を実施した。前記光処理装置は、照射された光が被照射物の特定の深さでのみ光が吸収されるようにするので、酸化グラフェン層211を除いた化合物半導体層には全く悪影響を及ぼさないように調整することができる。光照射の具体的な条件は、バンク電圧450V、パルス持続時間350μs、オーバーラップ係数2.0、FRM〜33のパルスを使用し、出力は100kW/cmとした。上記条件で光照射を実施して前記酸化グラフェン層211を還元させて、類似グラフェン層213を形成した。前記酸化グラフェン層211は、前記類似グラフェン層213に変わりながらその厚さが減り、化合物半導体層が分離されていることを確認できた。
【0094】
ここで、前記光照射は走査方式であってもよく、全面照射方式であってもよい。
【0095】
本実施例によれば、酸化グラフェン層211を類似グラフェン層213に変わりながら、化合物半導体層を分離させることができるようになる。
【0096】
<第8実施例>
【0097】
第7実施例は、酸化グラフェン層の還元作用を利用して化合物半導体を分離できることを提示した。一方、第7実施例で提示した前記の光学処理方法の場合、光が吸収される深さを調節できることを利用して、より質の高い化合物半導体を得ることができる実施例を提示する。具体的な説明がないものは、前述の実施例を参照することにする。
【0098】
図33は、第8実施例に係る半導体装置の断面図である。図33に示すように、基板200と、第1化合物半導体層220と、第2化合物半導体層230と、基板200と第2化合物半導体層230との間に設けられる第1酸化グラフェン層214と、第1化合物半導体層220と第2化合物半導体層230との間に設けられる第2酸化グラフェン層215が図示される。前記化合物半導体層220、230は、同一物質または導電型、または共にn型GaNからなることができる。
【0099】
第7実施例で提示された光処理装置の場合、光が吸収される深さを調節することができる。従って、前記第1酸化グラフェン層214に光を照射する場合、前記基板200と第2化合物半導体層230を分離することができる。この場合、第1、2化合物半導体220、230が付着している状態で半導体装置を使用することができ、基板200は再利用することができる。また、前記第2酸化グラフェン層215に光を照射する場合、前記第1化合物半導体層220と前記第2化合物半導体層230を分離することができる。この場合、高品質の第1化合物半導体層220のみを以後の半導体装置に適用しようとする場合に好適に用いられる。
【0100】
前記酸化グラフェン層214、215が光照射によって分離される原理については、第7実施例で詳しく説明されている。本実施例によれば、化合物半導体装置の多様に相互分離させて使用できる利点を得ることができる。
【0101】
一方、前記光処理装置は、一度に二つ以上の酸化グラフェン層に光を吸収させることもできる。この場合、少なくとも二つ以上の酸化グラフェン層が化合物半導体層を分離させることができるので、より効率的に化合物半導体を作製することができる。
【0102】
第4実施例〜第8実施例では、グラフェン層、酸化グラフェン層、類似グラフェン層、及び変形酸化グラフェン層のようなグラフェンに由来した物質層を、別のグラフェンに由来した物質層に変化させる。これにより、前記グラフェンに由来した物質層の界面とする他の物質層を分離できる思想を提示している。ここで、前記グラフェンに由来した物質層は、以上に提示された実施例に限定されず、他の物質層もグラフェンに由来した物質層に使用することができる。
【0103】
<第9実施例>
【0104】
第9実施例は、第4実施例〜第8実施例により提示した酸化グラフェン層及びグラフェン層の分離方法を利用する化合物半導体装置を開示する。
【0105】
図34は、化合物半導体装置の断面図である。図34を参照して化合物半導体装置の製造方法を詳しく説明する。基板(図9では省略されている)上にグラフェン層(図9では省略されている)や酸化グラフェン層(図9では省略されている)を形成する。その上に、第1化合物半導体層310、活性層320、第2化合物半導体層330を含む化合物半導体装置を形成する。ここで、第1化合物半導体層310はn型、第2化合物半導体層330はp型からなることができる。
【0106】
前記基板は、サファイア単結晶基板からなることができるが、これに限定されるものではない。前記基板に対して湿式洗浄を実施して表面の不純物を除去することができる。その後、前記第1基板上に第1化合物半導体層310を形成する。例えば、前記第1化合物半導体層310は、化学蒸着法(CVD)や分子線エピタキシー法(MBE)或はスパッタリング或は水酸化物気相エピタキシー(HVPE)などの方法によって形成することができる。また、前記第1化合物半導体層310は、チャンバーにトリメチルガリウムガス(TMGa)、アンモニアガス(NH)、窒素ガス(N)、及びシリコン(Si)などのn型不純物を含むシランガス(SiH)が注入されて形成される。
【0107】
次に、前記第1化合物半導体層310上に活性層320を形成する。前記活性層320は、トリメチルガリウムガス(TMGa)、アンモニアガス(NH)、窒素ガス(N)、及びトリメチルインジウムガス(TMIn)が注入されて、InGaN/GaN構造を有する多重量子井戸構造が形成されるが、これに限定されるものではない。
【0108】
以後、前記活性層320上に第2化合物半導体層330を形成する。例えば、前記第2化合物半導体層330は、チャンバーにトリメチルガリウムガス(TMGa)、アンモニアガス(NH)、窒素ガス(N)、及びマグネシウム(Mg)などのp型不純物を含むビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg){Mg(CHCH)}が注入されて形成されるが、これに限定されるものではない。
【0109】
前記第2化合物半導体層330上に第2電極層340を形成することができる。前記第2電極層340は反射層を含むことができ、この場合、前記反射層は、Al、Ag、またはAlやAgを含む合金を含む金属層からなることができる。アルミニウムや銀などは、活性層から発生した光を効果的に反射して、発光素子の光抽出効率を向上させることができる。
【0110】
前記第1化合物半導体層310が露出するように前記基板を分離するが、分離する方法は、第1化合物半導体層310に積層されていたグラフェン層や酸化グラフェン層を、実施例4及び実施例8に提示されたいずれかの方法を利用して分離させる。以後、第1化合物半導体層310上に第1電極層305を形成する。
【0111】
また、前記第1化合物半導体層と基板の間に第3の化合物半導体層がさらに積層されている場合、酸化グラフェン層及び/またはグラフェン層を、基板と、第1化合物半導体層と、第3化合物半導体層中の少なくとものいずれかを介在して、実施例4及び実施例8に開示されるいずれかの方法により、より高品質の化合物半導体装置を得ることもできる。
【0112】
以上、添付図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明はその特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、酸化グラフェン層によって半導体の結晶欠陥を減少させることができ、半導体装置の発光効率を向上させることができる。
【0114】
また、本発明によれば、グラフェンの特性を利用して、化合物半導体への影響を最小化しながらも基板と化合物半導体層を簡単に分離することができ、高品質の化合物半導体層を得ることができる。これらの利点から、高効率の水平型または垂直型発光素子を作製することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34