【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、センサの前にポジションセンサの複数の歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値を決定するための方法であって、該方法が、
ポジションセンサの歯および歯ミゾが前記センサの傍らを通過案内されるときに、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号を読み取る読み取りステップと、
前記センサ信号の最小値に基づく第1の値および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、所定の時間間隔内で前記センサ信号から算出する算出ステップと、
前記センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく前記第1の値との差の所定のパーセンテージを表わす差分値を演算する演算ステップと、
前記認識閾値が前記差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第1の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記認識閾値を決定する決定ステップと、
前記センサ信号の最小値に基づく第2の値、および前記センサ信号の最大値に基づく第2の値を、予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出する算出ステップと、
前記センサ信号の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算する演算ステップと、
前記第2の認識閾値が、前記第2の差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定する決定ステップと、
を有している。
【0007】
また本発明は、センサの前にポジションセンサの歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値を決定するための装置において、該装置が、
前記ポジションセンサの歯および歯ミゾがセンサの傍らを通過案内される際に、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号を読み取るためのインターフェースと、
前記センサ信号の最小値に基づく第1の値、および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出し、かつ前記センサ信号の最小値に基づく第2の値および前記センサ信号の最大値に基づく第2の値を、前記予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出するためのユニットと、
前記センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく第1の値との間の差の、予め規定されたパーセンテージを表わす差分値を演算し、かつ前記センサ信号の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算するためのユニットと、
前記第1の認識閾値が前記差分値をセンサ信号の最小値に基づく前記値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値を決定し、かつ前記第2の認識閾値が前記第2の差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定するためのユニットと、
を有している。
【0008】
したがって、この装置は、本発明による方法のステップを実施若しくは実行するために構成されている装置を有している。特に、この装置は、前記方法の各ステップを実行するために構成されている。本発明の装置の形のこの変化実施例によっても、本発明の課題を迅速かつ効果的に解決することができる。
【0009】
この装置は、ここで、センサ信号を処理し、それに応じて制御信号をアウトプットする電気式または電子式の機器であってよい。この装置は、ハードウエア的および/またはソフトウエア的に構成されているインターフェースを有していてよい。ハードウエア的な構成において、インターフェースは、例えば、装置の種々異なる機能を含有している、いわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インターフェースは、固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に不連続的な素子より成っていてよい。ソフトウエア的な構成においては、インターフェースは、例えばその他のソフトウエアモジュールと共にマイクロコントローラ上に設けられたソフトウエアモジュールであってよい。
【0010】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利である。このプログラムコードは、機械読み取り可能な担体例えば半導体メモリー、ハードディスクメモリーまたは光学メモリーに保存することができ、かつプログラムが制御機器または装置において実行されると前記実施例のうちのいずれか1つの実施例にしたがって方法を実行するために使用される。
【0011】
ポジションセンサは、ここに記載した実施例によれば、例えば複数の歯またはカム等の成形部を有する構成部分であってよい。これらの歯またはカムは、例えば直近に存在するかまたは直近で生ぜしめられた磁界に、歯またはカムの位置的な変化つまり強磁性の特性を有するエレメントの変化によって影響を及ぼすことができる。同様に、ポジションセンサは、その伸長を介して永久磁石的な特性を有しており、この永久磁石的な特性によって、ポジションセンサの周囲に、ポジションセンサと共に移動する磁界が生ぜしめられる。ポジションセンサは、例えばラックまたはセンサホイールであってよい。センサホイールは、このセンサホイールの縁部に複数の切欠を有する回転可能に配置されたディスクであってよく、またラックは、このラックの延在方向に亘って複数の切欠を有していてよい。センサホイールが永久磁石的な特性を有していれば、センサホイールは、切欠または歯の角度に応じて所定の位置に変化する、センサホイールと共に回転する磁界を生ぜしめる。センサホイールは、回転運動が監視される軸に堅固に結合されている。ラックが永久磁石的な特性を有していれば、ラックは、このラックと共に移動する磁界を生ぜしめる。磁界の変化は、磁界センサ例えばホールセンサによって検出され、電気信号に変換される。磁界センサは、固有の磁界を生ぜしめるように構成されている。強磁性の対象物例えばセンサホイールまたはラックの磁界に関連した変化はセンサによって記録される。同様に、永久磁石的な特性を有するセンサホイールは、磁石なしのセンサによって検出される。強磁性のセンサホイール、組み込まれた磁石を備えたセンサまたは、磁石なしのセンサによって測定される磁気化されたセンサホイール(いわゆる多極式センサホイール)を使用してもよい。
【0012】
磁界センサは、センサホイールまたはラックに対して相対的に堅固に配置されてよい。同様に、磁界センサは、回転可能または可動に配置されてよい。この場合、センサホイールは定置のセンサリングであってよい。
【0013】
センサの信号またはセンサ信号は、センサとポジションセンサの要素との間の相対運動による磁界の変化を表わす。運動は、所定の時間に亘って進んだ距離であってよい。したがって、センサ信号は磁界の時間的な経過を表わしている。「最小値に基づく値」は、演算ベースとして後続のステップにおいて使用され、最小値を用いて所定の時間間隔内で決定された演算に基づく最小値であってよい。この演算に基づく最小値は、例えば個別の最小値であってよく、この最小値は、前記時間間隔内で発生するかまたは複数の周期を介して平均値が算出された最小値であって、平均化は、所定の時点または所定の時間間隔内で発生する最小値を介して行われる。所定の時間間隔とは、センサ信号の見込まれる信号傾斜の範囲であってよい。例えばこの時間間隔は、数マイクロ秒から数ミリ秒までである。同様に「最大値に基づく値」は、演算ベースとして後続のステップにおいて使用され、最大値を用いて所定の時間間隔内で決定された演算に基づく最大値であってよい。この演算に基づく最大値は、例えば個別の最大値であってよく、この最大値は、前記時間間隔内で発生するかまたは複数の周期を介して平均値が算出された最大値であって、平均化は、所定の時点または所定の時間間隔内で発生する最大値を介して行われる。さらに、差分値は、センサ信号の最大値に基づく値と最小値に基づく値との間の差に、所定のパーセンテージが乗算されることによって得られる値であってよい。この差分値は、認識閾値を得るために、例えば最小値に基づく値に加算される値である。したがって、最大値に基づく値と最小値に基づく値との間の差の所定の部分だけ高められた値が、認識閾値として決定される。
【0014】
本発明は、センサと、認識しようとする成形部との間のエアギャップの大きさが信号レベルに影響する、という認識に基づいている。エアギャップが走査区間に沿って不均一に延在していると、結果として生じた信号は変動を有している。例えばポジションセンサまたはセンサホイールにおける半径方向の振れが、ポジションセンサとしてのセンサホイールの複数の歯によって生ぜしめられた信号の変動を引き起こす。同様に、例えばポジションセンサとしての線形のセンサユニット上に複数の歯が配置される。この場合、種々異なる高さの歯が信号強度の変動を引き起こす。信号は、複数の歯と、これらの歯の間に存在する歯ミゾとの間で、無限の勾配を有していないので、固定レベルまたは固定された信号強度の検出において位置誤差が発生する。センサホイールがポジションセンサとして設けられている場合、半径方向の振れから信号の角度誤差が生じ、線形のユニットがポジションセンサとして設けられている場合、線形の位置誤差が生じる。したがって、各歯の最適なポイントにおいて、つまり所属のセンサ信号のレベルにおいて、歯がセンサを通過したことを検出すれば、有利である。このために、例えば各歯のために、個別の値、すなわち所定の歯がセンサを通過したことが認識される個別の値が、閾値(ここでは認識閾値と称呼されている)として算出される。大抵の場合、複数の測定連続、複数の測定過程または複数の回転を介して得られる、信号におけるこの測定ポイント若しくは閾値は、センサ信号内で最小の変動幅を有しており、したがって測定のために最も適している。歯の個別の高さをセンサの信号から測定するために、先行するおよび/または後続の歯ミゾのうちの1つに対応配置された信号レベルが検出され、またこれに対して相対的な歯の信号レベルが検出される。測定のために最も有利なポイントは、各歯における、歯先を表わす信号に対する歯元を表わす信号の比が同じ個所であってよい。この場合、個別の歯と歯ミゾの対または歯ミゾと歯の対の認識閾値のために絶対的に異なる値が決定され、この際に予め規定されたパーセンテージを選択することによって、各対においてできるだけ僅かな変動幅を有する認識閾値を使用することが、保証されている。特に、種々異なる前記対のために、センサ信号が僅かな変動幅を有する値として顕著である、予め規定された同じパーセンテージが選択される。特に、本発明においては、歯の数が既知であるので、ポジションセンサの種々異なる歯のために種々異なる認識閾値が決定されてよい。これによって、種々異なる認識閾値を使用することによって、種々異なる歯を非常に正確に認識することが保証される。このような形式で、歯または歯ミゾがセンサの前に存在することを非常に正確に認識することができ、この場合、ポジションセンサの歯の数を知ることによって、その都度使用される認識閾値若しくは切換り閾値を、種々異なる切換り閾値から選択することができ、これらの切換り閾値に基づいて、得ようとする歯が決定される。
【0015】
本発明は、種々異なる歯および/または歯ミゾがセンサの前を通過することを表わす、またはセンサに対する前記歯または歯ミゾの相応の間隔を表わす、種々異なるセンサ信号セクションのために、種々異なる認識閾値が提供される、という利点を有している。これによって好適には、センサの次の作動時に、これら個別の種々異なる認識閾値を種々異なる歯を認識するために使用することができ、この際に、高い認識精度が可能である。
【0016】
好適にはさらに、第2の差分値を演算する前記演算ステップで、前記第2の予め規定されたパーセンテージとして、前記差分値を演算する演算ステップにおいて使用される予め規定されたパーセンテージに相当する値が使用される。本発明のこのような実施例は、きわめて簡単な実行可能性の利点を提供する。何故ならば、それぞれの差分値を決定するために、唯一の所定のパーセンテージを使用するだけでよいからである。それと同時に、この所定のパーセンテージは、最小値と最大値(若しくは平均値が算出された最小値と平均値が算出された最大値)との間の信号変化が、所定の時間間隔内でどの個所において最小の変動幅を有しているかに関する経験値に関連して最適でもある。
【0017】
前記方法によって、実際に使用可能な認識閾値だけが可能であり、非常に小さい(例えば測定誤差に基づく)信号変動においても既に認識閾値を決定することがないことを保証するために、最小値に基づく第1の値と最大値に基づく第1の値との間の差および/または最小値に基づく第2の値と最大値に基づく第2の値との間の差が、予め規定された差分値よりも小さいときに、第1の算出ステップにおいてセンサ信号の最小値に基づく第1の値および/若しくは前記センサ信号の最大値に基づく第1の値が拒絶され、かつ/または第2の算出ステップにおいて最小値に基づく第2の値および/若しくは最大値に基づく第2の値が拒絶されてよい。
【0018】
認識閾値を決定する前に、信号変化の最小値の平均化および最大値の平均化が、ポジションセンサの特別な歯に該当する時間ウインドウ内で行われるようにすれば、この方法は特に確実である。この場合、ポジションセンサの歯の数nが知られていなければならない。このために、信号変化における連続する高い値(個別の歯を表わす)およびこれらの値間に存在する低い値(歯ミゾを表わす)より成るパターンが得られる。平均化は、信号変化において、最小値に基づく値が小さい値のそれぞれn個のグループの最小値の平均化によって得られ、最大値に基づく値が大きい値のそれぞれn個のグループの最大値の平均化によって得られるようにして、行われる。歯数nを有するポジションセンサがセンサと組み合わせて使用されている場合、読み取りステップにおいて小さい値の複数のグループおよび大きい値の複数のグループを有するセンサ信号が読み取られ、算出ステップにおいて、センサ信号の最小値に基づく値が、小さい値のそれぞれn個のグループの最小値の平均化によって得られ、センサ信号の最大値に基づく値が、大きい値のそれぞれn個のグループの最大値の平均化によって得られるようにすれば、好適である。
【0019】
ポジションセンサの歯の正確な位置決定を可能にするために、本発明による上記の方法は、予め規定された第1および/または第2の認識閾値を使用してもよい。これによって、一方では最適な認識閾値(工場で予め設定された認識閾値とは異なる)を決定することを可能にし、また他方では例えば劣化時または摩耗時に認識閾値を新たに調整することを可能にする適応センサシステムが実現される。このために、本発明による方法はさらに、センサ信号が認識閾値または第2の認識閾値よりも大きい値を有するときに、ポジションセンサの歯を検出するステップを有していてよい。
【0020】
前もって決定された認識閾値が場合によってはまだ提供されていない、センサのスイッチオン過程の直近において、ポジションセンサの歯の学習若しくは認識を可能にするために、歯の認識が、例えばすべての歯のために同じ一様な初期閾値に基づいて行われてよい。このために、この方法はさらに、算出ステップの前に、ポジションセンサの歯を検出するためのステップを有していてよく、この場合、ポジションセンサの歯は、センサ信号が初期閾値よりも大きい値を有しているときに、検出される。