特許第5676013号(P5676013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676013認識閾値を決定するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676013
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】認識閾値を決定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   G01D5/244 F
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-545126(P2013-545126)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2014-502723(P2014-502723A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】EP2011069148
(87)【国際公開番号】WO2012089366
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年6月25日
(31)【優先権主張番号】102010064203.7
(32)【優先日】2010年12月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド ローレフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレナ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト オピッツ
【審査官】 井上 昌宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−504672(JP,A)
【文献】 特開平11−088689(JP,A)
【文献】 特開平10−020973(JP,A)
【文献】 特開平10−254549(JP,A)
【文献】 特開平07−306218(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02357849(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5/00〜5/62
G01B7/00〜7/34
G01P1/00〜3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ(260)の前にポジションセンサの複数の歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値(T1,T2,T3,T4)を決定するための方法(100)において、
前記方法が、
前記ポジションセンサの歯および歯ミゾが前記センサ(260)の傍らを通過案内されるときに、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号(502)を読み取る読み取りステップ(110)と、
前記センサ信号(502)の最小値に基づく第1の値および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、所定の時間間隔内で前記センサ信号(502)から算出する算出ステップ(120)と、
前記センサ信号(502)の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく前記第1の値との差の所定のパーセンテージを表わす差分値を演算する演算ステップ(130)と、
前記第1の認識閾値が前記差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第1の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値(T1,T2,T3,T4)を決定する決定ステップ(140)と、
前記センサ信号(502)の最小値に基づく第2の値、および前記センサ信号(502)の最大値に基づく第2の値を、予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出する算出ステップ(150)と、
前記センサ信号(502)の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算するための演算ステップ(160)と、
前記第2の認識閾値(T2,T3,T4)が、前記第2の差分値を前記センサ信号(502)の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値(T1;T2;T3)とは異なる第2の認識閾値(T2,T3,T4)を決定するための決定ステップ(170)と、
を有し、
前記センサ信号(502)の変動幅が最小となるポイントにおいて、前記第1の認識閾値および第2の認識閾値が確定されることを特徴とする、認識閾値を決定するための方法(100)。
【請求項2】
前記第2の差分値を演算する前記演算ステップ(160)において、第2の予め規定されたパーセンテージとして、前記差分値を演算する前記演算ステップ(130)において使用される前記予め規定されたパーセンテージに相当する値を使用する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
最小値に基づく前記第1の値と最大値に基づく前記第1の値との間の差および/または最小値に基づく前記第2の値と最大値に基づく前記第2の値との間の差が、予め規定された差分値よりも小さいときに、前記算出ステップ(120)において前記センサ信号の最小値に基づく前記第1の値および/若しくは前記センサ信号(502)の最大値に基づく前記第1の値が拒絶され、かつ/または前記算出ステップ(150)において最小値に基づく前記第2の値および/若しくは最大値に基づく前記第2の値が拒絶されるようにする、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
歯数nを有するポジションセンサが前記センサと組み合わせて使用されており、前記読み取りステップ(110)において、小さい値の複数のグループおよび大きい値の複数のグループを有するセンサ信号(502)を読み取り、前記算出ステップ(120)において、前記センサ信号の最小値に基づく前記第1の値を、小さい値のそれぞれn個のグループの最小値の平均値算出によって生ぜしめ、前記センサ信号の最大値に基づく前記第1の値を、大きい値のそれぞれn個のグループの最大値の平均値算出によって生ぜしめる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記センサ信号(502)が前記認識閾値(T1;T2;T3)または前記第2の認識閾値(T2;T3,T4)よりも大きい値を有するときに、前記決定ステップ(140)の後にさらに、ポジションセンサの歯を検出するステップを設ける、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項6】
センサ(260)の前にポジションセンサの歯または歯ミゾが存在することを認識するための認識閾値を決定するための装置において、
前記装置が、
前記ポジションセンサの歯および歯ミゾが前記センサ(260)の傍らを通過案内される際に、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号を読み取るためのインターフェース(210)と、
前記センサ信号の最小値に基づく第1の値、および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出し、かつ前記センサ信号の最小値に基づく第2の値および前記センサ信号(502)の最大値に基づく第2の値を、前記予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出するためのユニット(220)と、
前記センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく前記第1の値との間の差の、予め規定されたパーセンテージを表わす差分値を演算し、かつ前記センサ信号の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算するためのユニット(230)と、
前記認識閾値が前記差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記認識閾値を決定し、かつ前記第2の認識閾値が前記第2の差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定するためのユニット(240)と、
を有し、前記センサ信号(502)の変動幅が最小となるポイントにおいて、前記第1の認識閾値および第2の認識閾値が確定されることを特徴とする、認識閾値を決定するための装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラムが装置において実行されると、前記プログラムコードが実行される、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載した、認識閾値を決定するための方法、認識閾値を決定するための装置、並びにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位相センサは、センサホイールのジオメトリー(形状)を検出する。このために、磁気的な値を表わす信号が評価される。この磁気的な値は、歯がセンサの傍らを通過するときにセンサによって記録される。センサは、歯がセンサの傍らを通過するのを認識して、「切換り」、つまりセンサによって検出された磁気的な信号の信号振幅の、予め規定された部分を越えたときに、歯がセンサの傍らを通過したことを認識する。この信号振幅およびひいては切換りレベルは、温度、エアギャップまたは劣化を介して変化するので、切換り閾値は運転中常に補正されなければならない。今日のセンサは、すべての運転状態に亘って、センサが作動時に歯および歯ミゾを確実に認識する、作動時に前もってプログラミングされた切換り閾値を使用している。これによって、センサが歯または歯ミゾの前に位置しているかどうかを、センサが作動時に認識する、いわゆるトゥルーパワーオン(True-Power-On)機能が可能となる。次いで、センサは、実際に存在する磁気的な信号振幅に依存する歯と歯ミゾの対を認識するための最適な切換り閾値を学習またはトレーニングする。
【0003】
特許文献1には、磁石を介して固有の磁界を形成し、磁界の変化を記録する位相センサについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第3638622号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような背景から、本発明によれば、独立請求項に記載した、認識閾値を決定するための方法、さらに認識閾値を決定するための装置、並びに相応のコンピュータプログラム製品が提供されている。好適な実施態様は、それぞれの従属請求項および以下の説明に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、センサの前にポジションセンサの複数の歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値を決定するための方法であって、該方法が、
ポジションセンサの歯および歯ミゾが前記センサの傍らを通過案内されるときに、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号を読み取る読み取りステップと、
前記センサ信号の最小値に基づく第1の値および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、所定の時間間隔内で前記センサ信号から算出する算出ステップと、
前記センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく前記第1の値との差の所定のパーセンテージを表わす差分値を演算する演算ステップと、
前記認識閾値が前記差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第1の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記認識閾値を決定する決定ステップと、
前記センサ信号の最小値に基づく第2の値、および前記センサ信号の最大値に基づく第2の値を、予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出する算出ステップと、
前記センサ信号の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算する演算ステップと、
前記第2の認識閾値が、前記第2の差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定する決定ステップと、
を有している。
【0007】
また本発明は、センサの前にポジションセンサの歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値を決定するための装置において、該装置が、
前記ポジションセンサの歯および歯ミゾがセンサの傍らを通過案内される際に、測定された磁界の時間的な経過を表わすセンサ信号を読み取るためのインターフェースと、
前記センサ信号の最小値に基づく第1の値、および前記センサ信号の最大値に基づく第1の値を、予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出し、かつ前記センサ信号の最小値に基づく第2の値および前記センサ信号の最大値に基づく第2の値を、前記予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内で前記センサ信号から算出するためのユニットと、
前記センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく前記第1の値と少なくとも1つの最小値に基づく第1の値との間の差の、予め規定されたパーセンテージを表わす差分値を演算し、かつ前記センサ信号の最大値に基づく前記第2の値と最小値に基づく前記第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす第2の差分値を演算するためのユニットと、
前記第1の認識閾値が前記差分値をセンサ信号の最小値に基づく前記値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値を決定し、かつ前記第2の認識閾値が前記第2の差分値を前記センサ信号の最小値に基づく前記第2の値に加算した結果に相当する値を表わすように、前記第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定するためのユニットと、
を有している。
【0008】
したがって、この装置は、本発明による方法のステップを実施若しくは実行するために構成されている装置を有している。特に、この装置は、前記方法の各ステップを実行するために構成されている。本発明の装置の形のこの変化実施例によっても、本発明の課題を迅速かつ効果的に解決することができる。
【0009】
この装置は、ここで、センサ信号を処理し、それに応じて制御信号をアウトプットする電気式または電子式の機器であってよい。この装置は、ハードウエア的および/またはソフトウエア的に構成されているインターフェースを有していてよい。ハードウエア的な構成において、インターフェースは、例えば、装置の種々異なる機能を含有している、いわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インターフェースは、固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に不連続的な素子より成っていてよい。ソフトウエア的な構成においては、インターフェースは、例えばその他のソフトウエアモジュールと共にマイクロコントローラ上に設けられたソフトウエアモジュールであってよい。
【0010】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利である。このプログラムコードは、機械読み取り可能な担体例えば半導体メモリー、ハードディスクメモリーまたは光学メモリーに保存することができ、かつプログラムが制御機器または装置において実行されると前記実施例のうちのいずれか1つの実施例にしたがって方法を実行するために使用される。
【0011】
ポジションセンサは、ここに記載した実施例によれば、例えば複数の歯またはカム等の成形部を有する構成部分であってよい。これらの歯またはカムは、例えば直近に存在するかまたは直近で生ぜしめられた磁界に、歯またはカムの位置的な変化つまり強磁性の特性を有するエレメントの変化によって影響を及ぼすことができる。同様に、ポジションセンサは、その伸長を介して永久磁石的な特性を有しており、この永久磁石的な特性によって、ポジションセンサの周囲に、ポジションセンサと共に移動する磁界が生ぜしめられる。ポジションセンサは、例えばラックまたはセンサホイールであってよい。センサホイールは、このセンサホイールの縁部に複数の切欠を有する回転可能に配置されたディスクであってよく、またラックは、このラックの延在方向に亘って複数の切欠を有していてよい。センサホイールが永久磁石的な特性を有していれば、センサホイールは、切欠または歯の角度に応じて所定の位置に変化する、センサホイールと共に回転する磁界を生ぜしめる。センサホイールは、回転運動が監視される軸に堅固に結合されている。ラックが永久磁石的な特性を有していれば、ラックは、このラックと共に移動する磁界を生ぜしめる。磁界の変化は、磁界センサ例えばホールセンサによって検出され、電気信号に変換される。磁界センサは、固有の磁界を生ぜしめるように構成されている。強磁性の対象物例えばセンサホイールまたはラックの磁界に関連した変化はセンサによって記録される。同様に、永久磁石的な特性を有するセンサホイールは、磁石なしのセンサによって検出される。強磁性のセンサホイール、組み込まれた磁石を備えたセンサまたは、磁石なしのセンサによって測定される磁気化されたセンサホイール(いわゆる多極式センサホイール)を使用してもよい。
【0012】
磁界センサは、センサホイールまたはラックに対して相対的に堅固に配置されてよい。同様に、磁界センサは、回転可能または可動に配置されてよい。この場合、センサホイールは定置のセンサリングであってよい。
【0013】
センサの信号またはセンサ信号は、センサとポジションセンサの要素との間の相対運動による磁界の変化を表わす。運動は、所定の時間に亘って進んだ距離であってよい。したがって、センサ信号は磁界の時間的な経過を表わしている。「最小値に基づく値」は、演算ベースとして後続のステップにおいて使用され、最小値を用いて所定の時間間隔内で決定された演算に基づく最小値であってよい。この演算に基づく最小値は、例えば個別の最小値であってよく、この最小値は、前記時間間隔内で発生するかまたは複数の周期を介して平均値が算出された最小値であって、平均化は、所定の時点または所定の時間間隔内で発生する最小値を介して行われる。所定の時間間隔とは、センサ信号の見込まれる信号傾斜の範囲であってよい。例えばこの時間間隔は、数マイクロ秒から数ミリ秒までである。同様に「最大値に基づく値」は、演算ベースとして後続のステップにおいて使用され、最大値を用いて所定の時間間隔内で決定された演算に基づく最大値であってよい。この演算に基づく最大値は、例えば個別の最大値であってよく、この最大値は、前記時間間隔内で発生するかまたは複数の周期を介して平均値が算出された最大値であって、平均化は、所定の時点または所定の時間間隔内で発生する最大値を介して行われる。さらに、差分値は、センサ信号の最大値に基づく値と最小値に基づく値との間の差に、所定のパーセンテージが乗算されることによって得られる値であってよい。この差分値は、認識閾値を得るために、例えば最小値に基づく値に加算される値である。したがって、最大値に基づく値と最小値に基づく値との間の差の所定の部分だけ高められた値が、認識閾値として決定される。
【0014】
本発明は、センサと、認識しようとする成形部との間のエアギャップの大きさが信号レベルに影響する、という認識に基づいている。エアギャップが走査区間に沿って不均一に延在していると、結果として生じた信号は変動を有している。例えばポジションセンサまたはセンサホイールにおける半径方向の振れが、ポジションセンサとしてのセンサホイールの複数の歯によって生ぜしめられた信号の変動を引き起こす。同様に、例えばポジションセンサとしての線形のセンサユニット上に複数の歯が配置される。この場合、種々異なる高さの歯が信号強度の変動を引き起こす。信号は、複数の歯と、これらの歯の間に存在する歯ミゾとの間で、無限の勾配を有していないので、固定レベルまたは固定された信号強度の検出において位置誤差が発生する。センサホイールがポジションセンサとして設けられている場合、半径方向の振れから信号の角度誤差が生じ、線形のユニットがポジションセンサとして設けられている場合、線形の位置誤差が生じる。したがって、各歯の最適なポイントにおいて、つまり所属のセンサ信号のレベルにおいて、歯がセンサを通過したことを検出すれば、有利である。このために、例えば各歯のために、個別の値、すなわち所定の歯がセンサを通過したことが認識される個別の値が、閾値(ここでは認識閾値と称呼されている)として算出される。大抵の場合、複数の測定連続、複数の測定過程または複数の回転を介して得られる、信号におけるこの測定ポイント若しくは閾値は、センサ信号内で最小の変動幅を有しており、したがって測定のために最も適している。歯の個別の高さをセンサの信号から測定するために、先行するおよび/または後続の歯ミゾのうちの1つに対応配置された信号レベルが検出され、またこれに対して相対的な歯の信号レベルが検出される。測定のために最も有利なポイントは、各歯における、歯先を表わす信号に対する歯元を表わす信号の比が同じ個所であってよい。この場合、個別の歯と歯ミゾの対または歯ミゾと歯の対の認識閾値のために絶対的に異なる値が決定され、この際に予め規定されたパーセンテージを選択することによって、各対においてできるだけ僅かな変動幅を有する認識閾値を使用することが、保証されている。特に、種々異なる前記対のために、センサ信号が僅かな変動幅を有する値として顕著である、予め規定された同じパーセンテージが選択される。特に、本発明においては、歯の数が既知であるので、ポジションセンサの種々異なる歯のために種々異なる認識閾値が決定されてよい。これによって、種々異なる認識閾値を使用することによって、種々異なる歯を非常に正確に認識することが保証される。このような形式で、歯または歯ミゾがセンサの前に存在することを非常に正確に認識することができ、この場合、ポジションセンサの歯の数を知ることによって、その都度使用される認識閾値若しくは切換り閾値を、種々異なる切換り閾値から選択することができ、これらの切換り閾値に基づいて、得ようとする歯が決定される。
【0015】
本発明は、種々異なる歯および/または歯ミゾがセンサの前を通過することを表わす、またはセンサに対する前記歯または歯ミゾの相応の間隔を表わす、種々異なるセンサ信号セクションのために、種々異なる認識閾値が提供される、という利点を有している。これによって好適には、センサの次の作動時に、これら個別の種々異なる認識閾値を種々異なる歯を認識するために使用することができ、この際に、高い認識精度が可能である。
【0016】
好適にはさらに、第2の差分値を演算する前記演算ステップで、前記第2の予め規定されたパーセンテージとして、前記差分値を演算する演算ステップにおいて使用される予め規定されたパーセンテージに相当する値が使用される。本発明のこのような実施例は、きわめて簡単な実行可能性の利点を提供する。何故ならば、それぞれの差分値を決定するために、唯一の所定のパーセンテージを使用するだけでよいからである。それと同時に、この所定のパーセンテージは、最小値と最大値(若しくは平均値が算出された最小値と平均値が算出された最大値)との間の信号変化が、所定の時間間隔内でどの個所において最小の変動幅を有しているかに関する経験値に関連して最適でもある。
【0017】
前記方法によって、実際に使用可能な認識閾値だけが可能であり、非常に小さい(例えば測定誤差に基づく)信号変動においても既に認識閾値を決定することがないことを保証するために、最小値に基づく第1の値と最大値に基づく第1の値との間の差および/または最小値に基づく第2の値と最大値に基づく第2の値との間の差が、予め規定された差分値よりも小さいときに、第1の算出ステップにおいてセンサ信号の最小値に基づく第1の値および/若しくは前記センサ信号の最大値に基づく第1の値が拒絶され、かつ/または第2の算出ステップにおいて最小値に基づく第2の値および/若しくは最大値に基づく第2の値が拒絶されてよい。
【0018】
認識閾値を決定する前に、信号変化の最小値の平均化および最大値の平均化が、ポジションセンサの特別な歯に該当する時間ウインドウ内で行われるようにすれば、この方法は特に確実である。この場合、ポジションセンサの歯の数nが知られていなければならない。このために、信号変化における連続する高い値(個別の歯を表わす)およびこれらの値間に存在する低い値(歯ミゾを表わす)より成るパターンが得られる。平均化は、信号変化において、最小値に基づく値が小さい値のそれぞれn個のグループの最小値の平均化によって得られ、最大値に基づく値が大きい値のそれぞれn個のグループの最大値の平均化によって得られるようにして、行われる。歯数nを有するポジションセンサがセンサと組み合わせて使用されている場合、読み取りステップにおいて小さい値の複数のグループおよび大きい値の複数のグループを有するセンサ信号が読み取られ、算出ステップにおいて、センサ信号の最小値に基づく値が、小さい値のそれぞれn個のグループの最小値の平均化によって得られ、センサ信号の最大値に基づく値が、大きい値のそれぞれn個のグループの最大値の平均化によって得られるようにすれば、好適である。
【0019】
ポジションセンサの歯の正確な位置決定を可能にするために、本発明による上記の方法は、予め規定された第1および/または第2の認識閾値を使用してもよい。これによって、一方では最適な認識閾値(工場で予め設定された認識閾値とは異なる)を決定することを可能にし、また他方では例えば劣化時または摩耗時に認識閾値を新たに調整することを可能にする適応センサシステムが実現される。このために、本発明による方法はさらに、センサ信号が認識閾値または第2の認識閾値よりも大きい値を有するときに、ポジションセンサの歯を検出するステップを有していてよい。
【0020】
前もって決定された認識閾値が場合によってはまだ提供されていない、センサのスイッチオン過程の直近において、ポジションセンサの歯の学習若しくは認識を可能にするために、歯の認識が、例えばすべての歯のために同じ一様な初期閾値に基づいて行われてよい。このために、この方法はさらに、算出ステップの前に、ポジションセンサの歯を検出するためのステップを有していてよく、この場合、ポジションセンサの歯は、センサ信号が初期閾値よりも大きい値を有しているときに、検出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例による方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施例による装置を備えた、概略的に示された車両のブロック図である。
図3】検出角度に関する、磁界強度の変化およびこれに対応するアウトプット信号の変化を示すグラフである。
図4】本発明を実行するために用いられる、検出角度および最小閾値に関する、周期的に繰り返し検出されるセンサ信号の複数の磁界強度の変化を示すグラフである。
図5】本発明を実行するために用いられる、検出角度および一様な閾値に関する、周期的に繰り返し検出される、振幅変化を有するセンサ信号の複数の磁界強度の変化を示すグラフである。
図6】本発明を実行するために用いられる、歯における検出角度範囲および歯のための最適な閾値に関する、周期的に繰り返し検出されるセンサ信号の複数の磁界強度の変化を示すグラフである。
図7】本発明を実行するために用いられる、検出角度および複数の最適化された閾値に関する、周期的に繰り返し検出される、振幅変化を有するセンサ信号の複数の磁界強度の変化を示すグラフである。
図8】本発明を実行するために用いられる、周期的に繰り返し検出されるセンサ信号の、複数の標準化された磁界強度の、検出角度範囲に亘る変化を示すグラフである。
図9】本発明の一実施例によるポジションセンサの歯および/または歯ミゾの位置を決定するための別の方法のフローチャートである。
図10】本発明の一実施例による、番号付けされた歯の回転角度に亘って磁界に影響を与えるためのセンサホイールを示す概略図である。
図11】本発明の一実施例による、別の番号付けされた歯を有する、図10に示したセンサホイールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を添付の図面を用いて例を挙げて詳しく説明する。
【0023】
同じまたは類似の要素には、図面では同じまたは類似の符号が付けられており、繰り返しの説明は省かれる。図面の各図、各図の説明並びに請求項は、多くの特徴の組み合わせを含有している。これらの特徴は、個別のものとみなすことも、またはここでは詳しく記載されていない別の組み合わせで組み合わせてもよいことは、当業者にとって明らかである。また本発明は、以下の説明において場合によっては種々異なる手段および寸法を用いて説明されているが、本発明はこのような手段および寸法に限定されるものではない。さらに、本発明による方法ステップは、繰り返し実行することができ、またこの実施例に記載した順序とは異なる順序で実行することができる。一実施例が、第1の特徴/ステップと第2の特徴/ステップとの間の「および/または」接続を有している場合、これは、1つの実施形態による実施例が第1の特徴/第1のステップも第2の特徴/第2のステップも有していて、その他の実施形態による実施例が第1の特徴/ステップだけまたは第2の特徴/ステップだけを有している、ということである。
【0024】
図1は、本発明の一実施例によるセンサの前にポジションセンサの歯または歯ミゾが存在することを認識するための第1および第2の認識閾値を決定するための方法100のフローチャートを示す。この方法は、読み取りステップ110と、算出ステップ120と、演算ステップ130と、決定ステップ140とを有している。読み取りステップ110でセンサ信号が読み取られる。センサ信号は、例えば測定された磁界の時間的な経過を表わす。この信号を得るために、先行する測定ステップ(必ずしもこの実施例による方法の一部である必要はない)において、ポジションセンサ、特にセンサホイールまたはラックの歯および歯ミゾがセンサに沿って案内される。算出ステップ120で、センサ信号の最小値に基づく値、およびセンサ信号の最大値に基づく値が、予め規定された時間間隔内でセンサ信号から算出される。演算ステップ130で差分値が演算される。この差分値は、センサ信号の少なくとも1つの最大値に基づく値と、センサ信号の少なくとも1つの最小値に基づく値との間の差の、予め規定されたパーセンテージを表わす。決定ステップ140において、認識閾値を次のように、つまり認識閾値が差分値をセンサ信号の最小値に基づく値に加算した結果に相当する値を表わすように、決定する。これらのステップは、好適な形式ですべての「歯と歯ミゾの対」若しくは「歯ミゾと歯の対」のために繰り返される。これによって特に、センサ信号から、センサ信号の最小値に基づく第2の値およびセンサ信号の最大値に基づく第2の値を算出する算出ステップ150が、予め規定された時間間隔に続く第2の予め規定された時間間隔内に設けられている。第2の差分値の演算ステップ160も設けられており、第2の差分値は、センサ信号の最大値に基づく第2の値と最小値に基づく第2の値との間の差の、第2の予め規定されたパーセンテージを表わす。最後にこの方法は、第1の認識閾値とは異なる第2の認識閾値を決定するためのステップ170を有しており、したがって第2の認識閾値は、第2の差分値をセンサ信号の最小値に基づく第2の値に加算した結果に相当する値を表わす。
【0025】
言い換えれば、図1は、例えばランナウト“Run-Out”(半径方向の振れ)を有するセンサホイールにおける位相センサのための評価アルゴリズムまたは認識閾値決定アルゴリズムの典型的なフローチャートを示す。この場合、センサホイールまたはラックつまり一般的にポジションセンサのランナウトが考慮されるので、より正確な切換り動作が可能である。この場合、切換りとは、センサ信号が閾値を上回ったかまたは下回ったことが認識されるように、センサ信号の評価が行われる、という意味である。歯および歯ミゾの様々な形状がランナウトと称呼される。この実施例におけるアルゴリズムは、例えば各歯と歯ミゾの対のために固有の閾値を記憶している。したがって、例えば歯と歯ミゾの各対のために、好適な形式で、それぞれの歯と歯ミゾの振幅(歯または歯ミゾを表わす信号レベル)のx%の一様な切換り閾値が用いられる。このために、歯の数がメモリーに保存される。パワーオン後に、初期閾値としてB@TPO閾値を有するセンサが始動する。始動時に、どの具体的な歯若しくはどの具体的な歯ミゾがセンサの前に存在するかは未知である。この場合、B@TPO切換り閾値が、すべての歯のスタート切換り閾値として用いられる。センサホイールまたはラックの開始点は未知であるので、歯および歯ミゾのそれぞれの割り当ては、始動時に新たに決定される。それぞれ第1の有効な最大値と最小値若しくは最大値と最小値が共に、1つの対を形成する。これは、歯と歯ミゾの対または歯ミゾと歯の対のことであってよい。アルゴリズムは、振幅のx%に決定された切換り閾値が、センサホイールの1回転または全ラック運動とみなされるのではなく、所定の歯と歯ミゾの対とみなされるように最適化される。この場合、それぞれの歯と歯ミゾの対のために最大値および最小値が検出され、振幅のx%の切換り閾値が演算される。これによって、各歯と歯ミゾの対のために、別の絶対的な切換りポイントがmTとして演算される。図10および図11に示した4つの歯を有するセンサホイールのために、図7に示されているように4つの異なる切換り閾値T1〜T4が演算される。これらの切換り閾値T1〜T4は、この実施例では、それぞれの歯と歯ミゾの対の振幅のそれぞれ70%に相当する。このような形式で、個別の切換り閾値が歯のランナウトも形成する。大きいほうの2つの歯Z1およびZ2は、相応により高い絶対的な切換り閾値を有している。
【0026】
図2は、本発明の一実施例によるポジションセンサの歯および/または歯ミゾの実際の位置を決定するための装置を備えた車両を示す。この装置は、読み取りのための装置210と、算出するための装置220と、演算するための装置230と、決定するための装置240とを有している。車両は、フランジ結合されたセンサホイールを備えたモータ250と、磁界センサ260と、モータ制御装置270とを有している。モータ250に設けられたセンサホイールは、モータ250の軸の回転運動で回転する。この際に、センサホイール上における歯および歯ミゾは磁界センサ260周囲の磁界を変化させる。磁界センサ260は、この磁界の変化を表わす信号を提供する。この信号は読み取りのための装置210によって読み取られる。算出するための装置220が、センサ信号から、センサ信号の最小値に基づく値およびセンサ信号の最大値に基づく値を予め規定された時間間隔内で算出する。演算するための装置230において、センサ信号の少なくとも1つの最小値に基づく値と少なくとも1つの最大値に基づく値との差の所定のパーセンテージを表わす差分値が演算される。決定するための装置240において、認識閾値は次のように、つまり、認識閾値が差分値をセンサ信号の最小値に基づく値に加算した結果に相当する値を表わすように、決定される。この過程が、例えば各歯と歯ミゾの対若しくは歯ミゾと歯の対のために繰り返される。
【0027】
図3は、回転角度に亘る、磁束密度の信号変化302を示すグラフである。横座標に回転角度が度で示され、縦座標に無次元の磁束密度Bが示されている。追加的に、縦座標に、閾値を上回るかまたは下回る磁束密度に相当する、初期信号304の信号レベルが示されている。磁束密度の信号変化302は、磁界センサによって検出される、センサホイールの回転角度に関するセンサホイールの歯および歯ミゾの連続を表わす。センサに対する歯若しくは歯ミゾの間隔が、センサにおける磁束密度に影響を及ぼし、位相センサによるセンサホイール形状の検出に影響を及ぼす。磁束密度が所定の切換り閾値、例えば最大値の70%を越えると、初期信号304のレベルが変わる。これによって、初期信号304が、回転角度[°CAM]に関するセンサホイール上の歯および歯ミゾの連続を2進形で表わす。図3に示した例は、逆の論理で、つまり1つの歯が論理的な「0」としてアウトプットされ、1つの歯ミゾが論理的な「1」としてアウトプットされる。
【0028】
図4は、回転角度に亘る、磁束密度の複数の信号変化402または磁界特性曲線のグラフを示す。横座標には回転角度が度で示されていて、縦座標には磁束密度が示されている。各個別の信号変化402は、似たような推移変化を有している。何故ならば、これらの信号変化402は、同じ歯または歯ミゾの信号変化を表わしているが、これらの歯または歯ミゾは、回転時に異なる周期つまり異なる時点で、同じ角度位置において検出されているからである。磁束密度の変化は、同じ角度位置において発生するが、異なる強さで表わされている。信号変化402は、センサホイールと磁界センサとの間の中間スペースと、磁界を変化させる歯との間のエアギャップのそれぞれ異なる大きさを表わしている。グラフには、すべての曲線402上の、示されたすべてのケースにおける最小点よりも大きい閾値B@TPOが示されている。これによって、この(閾)値と信号変化402とを比較することによって、センサホイール上の複数の歯の間の歯ミゾを確実に認識することができる。
【0029】
図5は、すべての歯のための一様な閾値Tを有する、回転角度に亘る磁束密度の複数の信号変化502のグラフを示す。横座標に回転角度が度で示されており、縦座標に標準化された無次元の磁束密度が示されている。信号変化502は、センサホイールの1回転に
亘る磁界を表している。センサホイール上の歯またはカムは、より高い信号レベルとして示され、歯ミゾはより低い信号レベルとして示される。グラフは、種々異なるエアギャップにおける標準化された信号変化を示す。高い信号レベルは、最小信号レベルに対する最大信号レベルに関連して、360°の回転角度に亘ってほぼ20%の変化を有している。歯と歯ミゾとの間で、特性曲線502は、信号傾斜領域(Signalflank)を有している。このグラフにおいて閾値は、最大値の70%に記載されている。この閾値を特性曲線が通過する際に角度評価が行われる。信号の傾斜勾配に基づいて、高い信号レベルによって表わされる歯と、低い信号レベルによって表わされる歯との間を認識する際の角度誤差が生じる。
【0030】
センサホイール評価時に、一般的に1つのセンサホイールの個体だけが検査される。劣化および製品公差に基づいて、ランナウト(換言すれば、真円回転)の劣化が生じる。したがって図5において、最大の歯のための信号の最大値は1(標準化された)であるのに対して、最小の歯のための信号は、(標準化された)最大値の80%だけで得られる。すべてのエアギャップのための一様な閾値(T)を用いることによって、大きいランナウトにおいて安全性の理由により、僅かな切換り閾値例えば50%を使用しなければならなくなる。図5は、センサホイールの使用時におけるこのような信号を示す。70%の切換り閾値を使用することは、標準化された最大の信号振幅の今現在80%を有する最も劣化した歯が、より広い公差に基づいてより小さくされると、困難である。最も劣化した歯が標準化された最大信号振幅の70%を下回ると、歯は全体的にまたは部分的にもはや認識されなくなる。位相センサは、将来的にランナウトに対して頑丈でなければならない。これは、特により狭い公差を有するセンサホイールを使用することによって得られる。それと同時にセンサの精度は維持されなければならない。
【0031】
各センサホイールのために、および場合によってはそれぞれの歯と歯ミゾの対のために、例えば70%の最適な切換り閾値が得られる。このような最適な切換り閾値において、エアギャップ依存性は最小である。実際例において、切換り閾値は最大の歯と歯ミゾの対のためにだけ最適に選択されるので、その他の歯のために、位置決定時、特にエアギャップが変わるときに、誤差が発生する。
【0032】
図6は、図5に示した歯のための信号変化の例における閾値の最適な高さを示す。一群の信号変化は、変化の所定の範囲においてその他の範囲におけるよりも幅広い変動幅を有している。例えば変動幅は、低いレベルの範囲において、高いレベルの範囲におけるよりも幅広く、例えば標準化された最大信号振幅の70%である。標準化された最大信号振幅の90%の最大レベルの範囲において、変動幅は新たにより大きい幅を有している。したがって好適には、この例では、標準化された最大信号振幅の70%の範囲内で閾値を確定する必要がある。この場合、例えば標準化された最大の信号振幅の25%の範囲と比較して最小の角度誤差が得られる。その結果、センサホイールの種々異なるエアギャップに亘って良好な再現精度が得られる。しかしながら標準化された最大信号振幅の70%の値は、変動幅に応じて別の値であってよい。このために、センサ信号の変動幅の測定が実施され、以下に詳しく記載される信号閾値は、この閾値がセンサ信号の変動幅が最小である値に固定されるように、確定される。
【0033】
言い換えれば、図6は、70%の切換り閾値において非常に低いエアギャップ依存性、また25%の切換り閾値において高いエアギャップ依存性(図6の2重矢印の範囲)を示している。この場合、閾値は、エアギャップ依存性が最小化されるように選定され得る。エアギャップ依存性は、エアギャップに依存する切換りポイントの変位を描く。したがって、図6では、エアギャップ依存性は、標準化された最大信号振幅の25%の閾値において約4°CAMであり、これに対して、標準化された最大信号振幅の70%においては0.2°CAMだけである。車両に使用する場合は、エアギャップの変化時における切換り特性曲線の傾斜を一定に保つために、エアギャップ依存性を最小化する必要がある。
【0034】
図7は、本発明の一実施例によるセンサホイールの各歯のための最適な閾値を使用した例を示す。信号変化502は、図5の実施例に相当する。図5に示した実施例とは異なり、各歯は、角度認識のための切換り閾値として、最適化された異なる閾値T1,T2,T3若しくはT4を有している。これらの閾値は、例えば、前記実施例による歯および/または歯ミゾを認識するためのセンサ信号の変動幅が、特にエアギャップに関して、最小となるように、演算される。その結果、低い信号レベルを有する歯のための切換り閾値は、高い信号レベルを有する歯のための切換り閾値よりも低くなる。これによって、各歯の位置認識における角度誤差が僅かとなり、角度に依存するプロセスをより正確にコントロールすることができる。図7は、各歯と歯ミゾの対または歯ミゾと歯の対のための種々異なる絶対的な切換り閾値T1,T2,T3若しくはT4を示す。歯および歯ミゾの位置を決定するためのアルゴリズムを実行するために、好適には歯および歯ミゾの数が記憶される。これは、顧客に納入する前にセンサをプログラミングすることによって行われる。
【0035】
図8は、本発明の実施例による図7の個別の歯における閾値、図示の実施例では閾値T3を個別に確定するための例を示す。このために、歯の前の歯ミゾにおける最小のレベルから歯の変化の最大レベルまで、0から1までの標準化された相対的な磁束によって表わされた、歯若しくは歯と歯ミゾとの間の移行部が図示されている。信号変化802は、上昇する信号傾斜の0.7において最小の変動幅のポイントを有している。このポイントにおいて、好適な形式で、歯3のための個別の閾値T3が確定される。これによって歯は、センサホイールの複数の回転において同じ位置で検出することができる。
【0036】
効率を明らかにするために、図8は、歯と歯ミゾの対のための信号変化の標準化された図を示す。図面で明らかなように、個別の切換り閾値T3のために、標準化された信号振幅の、図示の実施例では70%が選択されれば、非常に良好な結果が得られる。
【0037】
前記ステップによって、第1および第2の移行部が存在することが認識されると、例えば歯および/または歯ミゾの数を知ることによって、ポジションセンサが実際にどの位置を占めているかを決定することができる。このために、例えば、所定の歯および/または歯ミゾがポジションセンサの位置の所定の角度に配置されていることが利用されるので、どの歯および/または歯ミゾがまさにセンサの直前に位置しているかを知ることによって、ポジションセンサの実際の位置を推測することができる。
【0038】
図9は、本発明の一実施例による、アルゴリズム記載としての、ポジションセンサの歯および/または歯ミゾの個別の切換り閾値を決定するための方法のフローチャートを示す。この方法のスタート902において、メモリー904から、使用されたセンサホイールまたはラックの歯の数nおよび最小閾値B@TPOが読み取られる。1からnまでの数の歯のそれぞれのために、読み込みステップ906において、最小閾値が個別のメモリーZ1_L1,Z2_L2〜Zn_Lnに読み込まれる。これによって、歯と歯ミゾとの間の差、または歯ミゾと歯との間の差も確実に認識することができる。歯と歯ミゾ(または歯ミゾと歯)Z1_L1〜Zn_Lnのための迅速な学習アルゴリズム908において、センサホイールの1回転以内またはラックの運動内で認識精度が改善される。この場合、歯を表わす信号レベルのための閾値は、センサに歯が存在するときの信号の振幅に適合される。この閾値は、歯毎にメモリーZ1_L1,Z2_L2〜Zn_Lnに保存される。次いで、歯と歯ミゾ(または歯ミゾと歯)Z1_L1〜Zn_Lnのためのゆっくりとした学習アルゴリズム910において、センサホイールの複数回転(例えば5回転以上)またはラックの複数の運動周期を介して閾値の改善が行われる。この場合、閾値は、相応の歯を表わす個別の信号振幅の発生を用いて、経過した複数の回転数または複数の運動を介して、歯毎に適合される。改善された閾値は、メモリーZ1_L1,Z2_L2〜Zn_Lnに書き込まれる。種々異なる理由、例えば電圧降下後またはセンサ若しくはラックのスイッチオフ後の方法の再スタート等により、この方法が中断されることによって、センサのリセット912または再スタート902が行われる。
【0039】
これによってセンサは、まず初期のB@TPO切換り閾値(つまり初期閾値)で始動し、次いで各歯と歯ミゾの対(歯ミゾと歯の対)のために、新たな切換り閾値とは無関係に学習する。それに応じて、各歯と歯ミゾの対のための、つまり第1の回転または運動のための第1の切換り閾値として、B@TPO切換り閾値(初期閾値とも称呼される)が用いられる。学習アルゴリズム自体は、例えば迅速な学習アルゴリズムとランニングモードでの保存的な学習アルゴリズムとから成っている。迅速な学習アルゴリズムは、最適な切換り閾値をできるだけ迅速に得るのに好都合であり、保存的な学習アルゴリズムは妨害に対して強い。各歯と歯ミゾの対のために、同じアルゴリズム、しかしながら互いに独立しているアルゴリズムが使用される。リセットが行われると、センサは再び歯数およびB@TPO切換り閾値の読み取りから開始する。
【0040】
図10は、本発明の一実施例によるセンサホイールの、番号付けされた歯および歯ミゾを有するセンサホイールの一実施例を示す。センサの位置は矢印によりマーキングされている。センサに向き合って1つの歯が存在する。この実施例による方法を開始する際に、この歯は符号Z1を得る。センサホイールがセンサの下から離れる方向に回転し、第1の歯ミゾがセンサに達すると、この第1の歯ミゾは符号L1を得る。これによって、前記第1の歯Z1と共に、第1の歯と歯ミゾの対Z1_L1が得られる。第2の歯がセンサに達すると、この第2の歯は符号Z2を得る。同様に第2の歯ミゾは符号L2を得る。第2の歯Z2は第2の歯ミゾL2と共に、第2の歯と歯ミゾの対Z2_L2を形成する。同様の方法が後続の歯および歯ミゾによって、センサホイールの予め設定された数の歯および歯ミゾがセンサの下を通過するまで実施される。次いで、センサは新たに歯Z1の前に位置する。回転中にそれぞれ歯と歯ミゾが切換わる正確な時点を決定するために、センサ信号が高いレベルから低いレベルへジャンプし再び戻る際に、各歯と歯ミゾの対Z1_L1〜Zn_Lnのための最適な閾値Tが決定される。これは、半径方向の振れとは無関係に行われる。選択的に、歯ミゾから、ポジションセンサの回転方向または運動方向で後ろに位置する歯への移行部の決定も利用される。この場合、前記で詳しく記載したように、歯ミゾから歯へのそれぞれのジャンプが、閾値を最適化するためにまたは歯ミゾと歯との間の移行部を決定するために利用される。
【0041】
図11は、本発明の一実施例によるセンサホイールの歯および歯ミゾの別の番号付けを有する、センサホイールの別の実施例を示す。センサの位置は矢印によりマーキングされている。センサに向き合って1つの歯ミゾが位置している。本発明の一実施例によるこの方法を開始する際に、この歯ミゾが符号L1を得る。センサホイールがセンサの下から離れる方向に回転し、第1の歯がセンサに達すると、この第1の歯は符号Z1を得る。これによって、前記第1の歯ミゾL1と共に、第1の歯ミゾ_歯の対L1_Z1が得られる。第2の歯ミゾがセンサに達すると、この第2の歯ミゾは符号L2を得る。同様に、第2の歯は符号Z2を得る。前記第2の歯ミゾL2と前記第2の歯Z2とは共に、第2の歯ミゾと歯の対L2_Z2を形成する。同様の方法が後続の歯ミゾおよび歯によって、センサホイールの予め設定された数の歯ミゾおよび歯がセンサの下を通過するまで実施される。次いでセンサは新たに歯ミゾL1の前に位置する。回転中にそれぞれ歯ミゾと歯が切換わる正確な時点を決定するために、センサ信号が低いレベルから高いレベルへジャンプし再び戻る際に、各歯ミゾと歯の対L1_Z1〜Ln_Znのための最適な閾値Tが決定される。これは半径方向の振れとは無関係に行われる。
【符号の説明】
【0042】
100 方法
110 読み取りステップ
120 算出ステップ
130 演算ステップ
140 決定ステップ
150 第2の値の算出ステップ
160 第2の差分値の演算ステップ
170 第2の認識閾値を決定するためのステップ
210 読み取りのための装置/インターフェース
220 算出するための装置/ユニット
230 演算するための装置/ユニット
240 決定するための装置/ユニット
250 モータ
260 (磁界)センサ
270 モータ制御装置
302 磁束密度の信号変化
304 初期信号
402 磁束密度の信号変化
502 センサ信号、信号変化、特性曲線
802 信号変化
902 スタート、再スタート
904 メモリー
906 読み込みステップ
908,910 学習アルゴリズム
912 リセット
B 磁束密度
T,T1,T2,T3,T4 閾値、認識閾値
Z1_L1,Z2_L2,Zn_Ln メモリー、歯と歯ミゾの対
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11