(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5676046
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】部材貼り合わせ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
C09J5/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-187598(P2014-187598)
(22)【出願日】2014年9月16日
【審査請求日】2014年10月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】山下 卓人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昌弘
【審査官】
富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/136069(WO,A1)
【文献】
特許第5486705(JP,B1)
【文献】
特開2010−024321(JP,A)
【文献】
特開2014−141679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
G02F1/1335−1/13363
G02F1/13;1/137−1/14
G09F9/00
B29D9/00;B32B1/00−33/00;37/00−43/00
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記接着剤塗布装置で塗布された接着剤を介して前記2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み前記2つの部材の接合面を接合し接合部材を得る部材接合装置と、
前記部材接合装置で接合された接合部材の2つの部材の接合面における前記接着剤の展延状態の画像をカメラで取得し前記接合部材の端部から前記接着剤の端部までの前記接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、前記未展延部の大きい方に前記接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整する傾き調整装置と、
前記カメラで取得した前記未展延部の大きさに応じて前記未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して前記接着剤の展延を調整する展延調整装置と、
前記展延調整装置の調整により前記未展延部がなくなると前記接合部材の縁部の接着剤を硬化させる接着剤硬化処理装置とを備えたことを特徴とする部材貼り合わせ装置。
【請求項2】
前記展延調整装置は、前記未展延部の大きさが大きいときは押込量を大きくし前記未展延部の大きさが小さいときは前記押込量を小さくし、前記未展延部の大きさが小さくなるにつれて前記押込時間間隔を長くすることを特徴とする請求項1に記載の部材貼り合わせ装置。
【請求項3】
前記未展延部の大きさは、前記未展延部の距離または面積であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部材貼り合わせ装置。
【請求項4】
貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布し、
塗布された接着剤を介して2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み2つの部材の接合面を接合し、
前記接着剤で接合された接合部材の2つの部材の接合面における前記接着剤の展延状態の画像を取得し前記接合部材の端部から前記接着剤の端部までの前記接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、前記未展延部の大きい方に前記接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整し、
前記未展延部の大きさに応じて前記未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して前記接着剤の展延を調整し、
前記未展延部がなくなると前記接合部材の縁部の接着剤を硬化させることを特徴とする部材貼り合わせ方法。
【請求項5】
前記未展延部の大きさが大きいときは押込量を大きくし前記未展延部の大きさが小さいときは前記押込量を小さくし、前記未展延部の大きさが小さくなるにつれて前記押込時間間隔を長くすることを特徴とする請求項4に記載の部材貼り合わせ方法。
【請求項6】
前記未展延部の大きさは、前記未展延部の距離または面積であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の部材貼り合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を接着剤で貼り合わせて接合部材を作成する部材貼り合わせ装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部材、例えば液晶パネルと保護ガラスとを接着剤で貼り合わせて接合部材を製造するものとして、2つの部材の間に接着剤を塗布し加圧して接着剤を展延させて接合する加圧式がある。例えば、一方の部材の貼り合わせ面の一部に接着剤を塗布し、2つの部材の貼り合わせ面を対面させて接着剤を他方の部材に接触させ、2つの部材を加圧して接着剤を展延させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、2つの部材の一方の部材の傾きを判定し、X軸回転方向(YZ平面上での回転方向)に駆動するα軸駆動部、Y軸回転方向(ZX平面上での回転方向)に駆動するβ軸駆動部、Z軸回転方向(XY平面上での回転方向)に駆動するθ軸駆動部を有し、部材をαβθ軸方向に調整して部材の傾きやねじれを補正し、部材が平坦となるように2つの部材の傾きを調整するようにしたものがある(特許文献2参照)
さらに、接合された2つの部材間の接着剤が全体として硬化しない状態であっても、接合部材の縁部の接着剤だけを先行的に硬化させ、接合部材の接着剤が接合部材の縁部からはみ出すことを防止するようにしたものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−024321号公報
【特許文献2】特許第5486704号公報
【特許文献3】特許第5486705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、加圧式のものは、貼り合わせる部材の大きさや接着剤の物性値により接着剤の展延時間が影響され、接合部材の製造に時間がかかる。特に、接着剤の展延は、部材と接着剤との界面の摩擦が大きいほど、接着剤の粘性が大きいほど、さらに、接着剤のぬれ性が悪いほど遅くなる。また、部材が平行でない場合や接着剤の塗布量が一定でない場合には、部材の端部まで接着剤が展延するのに時間がかかることがある。
【0006】
そこで、特許文献2のように、部材の傾きやねじれを補正し、部材が平坦となるように2つの部材の傾きを調整したり、特許文献3のように、接合部材の縁部の接着剤だけを先行的に硬化させ、接合部材の接着剤が接合部材の縁部からはみ出すことを防止するようにしているが、いずれのものも、接着剤が部材の端部まで展延したか否かを確認していないので、接着剤が過不足なく部材の全面に展延していない場合がある。また、接着剤を過不足なく部材の全面に展延させるには時間がかかることがある。
【0007】
本発明の目的は、接着剤が部材の端部まで展延したか否かを確認しつつ、しかも短時間で接着剤を展延させることができる部材貼り合わせ装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る部材貼り合わせ装置は、貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、前記接着剤塗布装置で塗布された接着剤を介して前記2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み前記2つの部材の接合面を接合し接合部材を得る部材接合装置と、前記部材接合装置で接合された接合部材の2つの部材の接合面における前記接着剤の展延状態の画像をカメラで取得し前記接合部材の端部から前記接着剤の端部までの前記接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、前記未展延部の大きい方に前記接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整する傾き調整装置と、前記カメラで取得した前記未展延部の大きさに応じて前記未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して前記接着剤の展延を調整する展延調整装置と、前記展延調整装置の調整により前記未展延部がなくなると前記接合部材の縁部の接着剤を硬化させる接着剤硬化処理装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る部材貼り合わせ装置は、請求項1の発明において、前記展延調整装置は、前記未展延部の大きさが大きいときは押込量を大きくし前記未展延部の大きさが小さいときは前記押込量を小さくし、前記未展延部の大きさが小さくなるにつれて前記押込時間間隔を長くすることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る部材貼り合わせ装置は、請求項1または請求項2の発明において、前記未展延部の大きさは、前記未展延部の距離または面積であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係る部材貼り合わせ方法は、貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布し、塗布された接着剤を介して2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み2つの部材の接合面を接合し、前記接着剤で接合された接合部材の2つの部材の接合面における前記接着剤の展延状態の画像を取得し前記接合部材の端部から前記接着剤の端部までの前記接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、前記未展延部の大きい方に前記接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整し、前記未展延部の大きさに応じて前記未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して前記接着剤の展延を調整し、前記未展延部がなくなると前記接合部材の縁部の接着剤を硬化させることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係る部材貼り合わせ方法は、請求項4の発明において、前記未展延部の大きさが大きいときは押込量を大きくし前記未展延部の大きさが小さいときは前記押込量を小さくし、前記未展延部の大きさが小さくなるにつれて前記押込時間間隔を長くすることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明に係る部材貼り合わせ方法は、請求項4または請求項5の発明において、前記未展延部の大きさは、前記未展延部の距離または面積であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、4の発明によれば、接合された接合部材の2つの部材の接合面における接着剤の展延状態の画像をカメラで取得するので、接着剤が接合部材の端部まで展延したか否かを容易に確認できる。そして、その画像で得られた接合部材の端部から接着剤の端部までの未展延部の大きさに偏りがあるときは、未展延部の大きい方に接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整し、未展延部の大きさに応じて未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して前記接着剤の展延を調整するので、短時間で接着剤を展延させることができる。さらに、未展延部がなくなると、接合部材の縁部の接着剤を硬化させるので、接着剤のはみ出しと接着剤の不足を解消した接合部材を得ることができる。
【0015】
請求項2、5の発明によれば、請求項1、4の発明の効果に加え、未展延部の大きさが大きいときは押込量を大きくし未展延部の大きさが小さいときは押込量を小さくし、未展延部の大きさが小さくなるにつれて押込時間間隔を長くするので、接着剤の展延調整を精度良く行える。
【0016】
請求項3、6の発明によれば、請求項1、4または請求項2、5の発明の効果に加え、未展延部の大きさは、未展延部の距離または面積であるので、未展延部の確認を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る部材貼り合わせ装置の一例を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施形態における部材接合装置による2つの部材の貼り合わせの一例の説明図。
【
図3】本発明の実施形態における傾き調整装置及び展延調整装置の一例を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態における傾き調整装置による部材の傾き調整の一例の説明図。
【
図5】本発明の実施形態における部材接合装置で接合された接合部材の2つの部材の接合面における接着剤の展延状態を示す接着剤展延状態画像の一例の平面図
【
図6】本発明の実施形態に係る部材貼り合わせ方法の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図6のステップS3における傾き調整の処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図6のステップS4における展延調整の処理内容の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る部材貼り合わせ装置の一例を示すブロック図である。部材受け取り装置11は、貼り合わせ対象の2つの部材を受け取るための治具を有し、部材はその治具の位置に合わせて搭載される。接着剤塗布装置12は、部材受け取り装置11で受け取った2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布するものであり、接着剤の厚さが一定となる量の接着剤が塗布される。そして、部材接合装置13は、接着剤塗布装置12で塗布された接着剤を介して、2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み2つの部材の接合面を接合し接合部材を作成する。
【0019】
傾き調整装置14は、部材接合装置13で接合された接合部材の2つの部材の接合面における接着剤の展延状態の画像をカメラから取得し、接合部材の端部から接着剤の端部までの接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるか否かを判定し、接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、未展延部の大きい方に接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整する。
【0020】
展延調整装置15は、カメラで取得した接着剤の展延状態の画像における未展延部の大きさに応じて未展延部が所定の大きさ以下になるまで、押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して接着剤の展延を調整する。そして、接着剤硬化処理装置16は、展延調整装置15の調整により、未展延部がなくなると接合部材の縁部の接着剤を硬化させる。
【0021】
図2は、部材接合装置13による2つの部材の貼り合わせの一例の説明図である。
図2では、部材接合装置13は、把持具17で一方の部材18aを吸着して把持し、部材搭載台19に搭載された他方の部材18bの上に持っていき、駆動装置20により、部材搭載台19を上方に押し上げ、他方の部材18bを押圧して他方の部材18bを一方の部材18a側に押し込み2つの部材18a、18bの接合面を接着剤を介して接合する。これに代えて、一方の部材18aを把持した把持具17の押圧力で一方の部材18aを他方の部材18b側に押し込むようにしてもよい。
【0022】
図3は傾き調整装置14及び展延調整装置15の一例を示す斜視図である。
図3では、部材接合装置13(把持具17)やカメラの図示を省略している。
【0023】
一方の部材18aは、図示省略の部材接合装置の把持具で把持され、把持具の半回転により、部材搭載台19に搭載された他方の部材18bの上に位置するように移動させられる。そして、部材搭載台19は駆動装置20により駆動される。
【0024】
駆動装置20は、部材搭載台19をX軸方向に駆動するX軸駆動部21、部材搭載台19をY軸方向に駆動するY軸駆動部22、部材搭載台19をZ軸方向に駆動するZ軸駆動部23、部材搭載台19をX軸回転方向(YZ平面上での回転方向)に駆動するα軸駆動部24、部材搭載台19をY軸回転方向(ZX平面上での回転方向)に駆動するβ軸駆動部25、部材搭載台19をZ軸回転方向(XY平面上での回転方向)に駆動するθ軸駆動部26を有する。
【0025】
図4は、傾き調整装置14による部材の傾き調整の一例の説明図である。傾き調整装置14は、一方の部材18aと他方の部材18bとを接合した接合部材27を搭載した部材搭載台19の位置を調整する。部材搭載台19に搭載した接合部材27の傾きを調整するには、部材接合装置13の駆動装置20におけるα軸駆動部24、β軸駆動部25を用いて、未展延部の大きい方に接着剤が移動するように接合部材27の傾きを調整する。
【0026】
図5は、部材接合装置13で接合された接合部材27の2つの部材18a、18bの接合面における接着剤28の展延状態を示す接着剤展延状態画像29の一例の平面図である。この接着剤展延状態画像29はカメラで取得され、展延調整装置15に入力される。展延調整装置15は、接着剤展延状態画像29を入力すると、
図5に示すように、接合部材27の端部から接着剤28の端部までの接着剤28の未展延部30の大きさを常時監視する。
【0027】
未展延部30の大きさは、未展延部30の距離Laまたは未展延部30の面積とする。
図5では、未展延部30の大きさとして距離Laとした場合を示している。以下の説明では、未展延部30の大きさは、未展延部30の距離Laとした場合を説明する。未展延部30の距離Laは、未展延部30をいくつかの領域(例えばi)に分割し、分割した分割線での未展延部30の距離Laiを測定し、距離Laiの平均値または距離Laiの最大値を使用する。
【0028】
図5の上側の未展延部30Aでは未展延部30の距離LaはLAa、
図4の下側の未展延部30Bでは未展延部30の距離LaはLBa、
図4の左側の未展延部30Cでは未展延部30の距離LaはLCa、
図4の右側の未展延部30Dでは、未展延部30の距離LaはLDaである場合を示している。
【0029】
展延調整装置15は、接合部材27の未展延部30の大きさ(距離La)を常時算出している。そして、展延調整装置15は、その未展延部30の大きさ(距離La)に応じて、未展延部30が所定の大きさ以下になるまでの押圧側の部材の押込量W及び押込時間間隔Tを算出し、部材接合装置13を介して、算出した押込量W及び押込時間間隔Tで押圧側の部材を押圧し接合部材27の接合面における接着剤28の展延状態を調整する。展延調整装置15で調整される押込量W及び押込時間間隔Tの一例を表1に示す。
【0030】
【表1】
表1に示すように、展延調整装置15は、未展延部30の大きさ(距離La)が大きいときは押込量Wを大きくし、未展延部30の大きさが小さいときは押込量Wを小さくし、未展延部30の大きさが小さくなるにつれて押込時間間隔Tを長くする。
【0031】
接合部材27の未展延部30の距離Laが第1設定値L1以上のとき(第1領域のとき)は、他方の部材18bの押込量Wを第1所定値W1とし、押込時間間隔Tを第1所定時間間隔T1とする。未展延部30の距離Laが第1設定値L1より小さく第2設定値L2以上のとき(第2領域のとき)は、他方の部材18bの押込量Wを第2所定値W2(W2≦W1)とし、押込時間間隔Tを第2所定時間間隔T2(T2≧T1)とする。以下、同様に、未展延部30の距離Laが第2設定値L2より小さく第3設定値L3以上のとき(第3領域のとき)は、他方の部材18bの押込量Wを第3所定値W3(W3≦W2)とし、押込時間間隔Tを第3所定時間間隔T3(T3≧T2)とする。また、未展延部30の距離Laが第3設定値L3より小さく第4設定値L4以上のとき(第4領域のとき)は、他方の部材18bの押込量Wを第4所定値W4(W4≦W3)とし、押込時間間隔Tを第4所定時間間隔T4(T4≧
T3)とする。そして、未展延部30の距離Laが第4設定値L4より小さくなる(第5領域となる)と、他方の部材18bの押込を中止し、未展延部30の距離Laが0になるのを待つ。
【0032】
このように、押込量Wと時間間隔Tを制御する。未展延部30の距離Laが大きい場合(展延が十分でない状態の場合)は押込量Wを大きくして2つの部材18a、18bの間の距離を詰め、押込時間間隔Tは短くし、接着剤の展延を促進する。そして、ある程度、接着剤が展延されていけば徐々に押込量Wを小さくし、押込時間間隔Tを長くすることで接合部材27の外へ接着剤28がはみ出さないようにする。
【0033】
すなわち、未展延部30の距離Laが大きいときは接着剤を短時間で展延させるべく押込量Wを大きく押込時間間隔Tは短くし、未展延部30の距離Laが小さくなると押込量Wを小さく押込時間間隔Tを長くし、接着剤がはみ出すことを防止する。
【0034】
図6は、本発明の実施形態に係る部材貼り合わせ方法の一例を示すフローチャートである。まず、貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布する(S1)。一方の部材への接着剤の塗布は接着剤塗布装置で行われる。接着剤塗布装置で塗布された接着剤を介して、2つの部材のいずれかの部材を押圧して押圧側の部材を反対側の部材側に押し込み2つの部材の接合面を接合する(S2)。2つの部材の接合は部材接合装置で行われる。
【0035】
次に、接着剤で接合された接合部材の傾き調整を行うともに(S3)、接着剤の展延調整を行う(S4)。接合部材の傾き調整は傾き調整装置で行われる。接合部材の傾き調整は、後述するが、接着剤で接合された接合部材の2つの部材の接合面における接着剤の展延状態の画像を取得し、接合部材の端部から接着剤の端部までの接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、未展延部の大きい方に接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整して行われる。
【0036】
一方、接着剤の展延調整は展延調整装置15で行われる。接着剤の展延調整は、後述するが、未展延部の大きさに応じて未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して行われる。そして、接着剤の展延調整及び接着剤の展延調整により、未展延部がなくなると接合部材の縁部の接着剤を硬化する(S5)。接着剤の硬化は、接着剤硬化処理装置で行われる。接着剤の硬化は、例えば紫外線を照射して行ったり熱を与えて行う。
【0037】
図7は、
図6のステップS3における傾き調整の処理内容の一例を示すフローチャートである。まず、カメラで取得した接着剤展延状態画像29を取り込み(V1)、
図5に示すように、接着剤展延状態画像29に基づいて、接合部材27の端部から接着剤28の端部までの未展延部30の距離Laを算出する(V2)。そして、未展延部の距離Laは目標距離か否かを判定し(V3)、未展延部の距離Laが目標距離を満たすときは傾き調整処理は終了する。目標距離は、通常は0である。なお、接着剤の粘度により、未展延部30が少しだけ残った状態とし、0としない場合もある。そこで、これらに対応させるため、例えば表1の第5領域を満たす距離(L4>La≧0)とする。
【0038】
一方、未展延部の距離Laが目標距離まで接着剤が展延していないときは、未展延部の距離に偏りがあるか否かを判定し(V4)、未展延部の距離Laに偏りがないときはステップT1に戻る。一方、未展延部の距離Laに偏りがあるときは、未展延部30の大きい方に接着剤が移動するように傾き調整を行ってからステップT1に戻る(V5)。
【0039】
図8は、
図6のステップS4における展延調整の処理内容の一例を示すフローチャートである。まず第i領域制御として変数iに1をセットする(U1)。そして、カメラで取得した接着剤展延状態画像29を取り込み(U2)、接着剤展延状態画像29に基づいて、接合部材27の端部から接着剤28の端部までの未展延部30の距離Laを算出する(U3)。
【0040】
そして、未展延部30の距離Laが設定値Li以下か否かを判定する(U4)。スタート時には、ステップU1において、変数iには1がセットされているので、未展延部30の距離Laが第1設定値L1以下か否かを判定することになる。ステップU4の判定で未展延部30の距離Laが第1設定値L1より大きいときは、表1に示す第1領域となり、第1領域の押込量W0分の押込操作が行われ(U5)、第1領域の時間間隔T0分の停止時間を確保しステップU2に戻る(U6)。
【0041】
ステップU5の押込操作及びステップU6の停止時間の確保により、接着剤の展延が促進された状態となる。その状態で、再度、接着剤展延状態画像29を取り込み(U2)、未展延部30の距離Laを算出し(U3)、未展延部30の距離Laが第1設定値L1以下か否かを判定する(U4)。このステップU4の判定で未展延部30の距離Laが第1設定値L1以下であるときは、未展延部30の距離Laが目標距離となったか否かを判定し(U7)、未展延部30の距離Laが目標距離となっていないときは、変数iに1を加算する(U8)。
【0042】
そして、変数iは最大値(表1の場合はi=5)以上か否かを判定し(S9)、変数iが最大値以上であるときはステップU7に戻る。変数iが最大値以上でないときはステップU1に戻り、第2領域制御(i=2)が開始される。以下同様に、ステップU2〜ステップU9の処理を行い、ステップU7の判定で、目標距離まで接着剤が展延したときは展延調整処理は終了する。目標距離は、通常は0である。なお、接着剤の粘度により、未展延部30が少しだけ残った状態とし、0としない場合もある。例えば表1の第5領域を満たす距離(L4>La≧0)とする。
【0043】
接着剤硬化処理装置16は、接合部材27の端部から接着剤28の端部までの接着剤28の未展延部30がなくなると、接合部材27の縁部の接着剤を硬化する。例えば、接合部材27の縁部に紫外線を照射したり熱を加え接着剤を硬化する。接着剤28の未展延部30がなくなったことは、未展延部30の大きさとして平均距離を用いている場合は、未展延部30の大きさが0となった条件ではなく、接合部材27の端部から接着剤28の端部までの最大距離が0となったときである。
【0044】
以上の説明では、未展延部30の大きさは未展延部30の距離Laとした場合について説明したが、接着剤が展延していない面積としてもよい。面積とした場合には、接着剤28の未展延部30がなくなったことは、未展延部30の面積が0となったことで判断する。また、以上の説明では、2つの部材18a、18bは平坦なパネル状のものについて説明したが、2つの部材はブロック体であってもよく、接合面が傾斜しており接着剤が斜めに流れる場合であっても適用できる。
【符号の説明】
【0045】
11…部材受け取り装置、12…接着剤塗布装置、13…部材接合装置、14…傾き調整装置、15…展延調整装置、16…接着剤硬化処理装置、17…把持具、18…部材、19…部材搭載台、20…駆動装置、21…X軸駆動部、22…Y軸駆動部、23…Z軸駆動部、24…α軸駆動部、25…β軸駆動部、26…θ軸駆動部、27…接合部材、28…接着剤、29…接着剤展延状態画像、30…未展延部
【要約】
【課題】接着剤が部材の端部まで展延したか否かを確認しつつ、しかも短時間で接着剤を展延できるようにすることである。
【解決手段】貼り合わせ対象の2つの部材の一方の部材の接合面に接着剤を塗布して部材接合装置13で2つの部材を接合して接合部材を得るにあたり、傾き調整装置14は、接合部材の2つの部材の接合面における接着剤の展延状態の画像をカメラで取得し、接合部材の端部から接着剤の端部までの接着剤の未展延部の大きさに偏りがあるときは、未展延部の大きい方に接着剤が移動するように接合部材の傾きを調整し、展延調整装置15は、カメラで取得した未展延部の大きさに応じて未展延部が所定の大きさ以下になるまで押圧側の部材の押込量及び押込時間間隔を制御して接着剤の展延を調整し、未展延部がなくなると接合部材の縁部の接着剤を硬化させる。
【選択図】
図1